坑道の施工方法および放射性廃棄物の処分方法
【課題】放射性廃棄物の処分施設を製造するための具体的な製造技術を提供すること。
【解決手段】定置装置1は、資材をトンネル内に定置して坑道を形成する定置装置である。定置装置1では、エレクタ3が、坑道の一部分を構成する資材を把持して、トンネル内の所定の位置に配置する。また、定置装置1では、エレクタ3が、移動手段6に坑道の他の部分を構成する資材を移動手段6に搭載し、移動手段6が、この資材を搭載しつつトンネル内を所定の位置まで移動する。そして、資材卸手段7が、移動手段に搭載された資材を卸してトンネル内の所定の位置に配置する。
【解決手段】定置装置1は、資材をトンネル内に定置して坑道を形成する定置装置である。定置装置1では、エレクタ3が、坑道の一部分を構成する資材を把持して、トンネル内の所定の位置に配置する。また、定置装置1では、エレクタ3が、移動手段6に坑道の他の部分を構成する資材を移動手段6に搭載し、移動手段6が、この資材を搭載しつつトンネル内を所定の位置まで移動する。そして、資材卸手段7が、移動手段に搭載された資材を卸してトンネル内の所定の位置に配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、坑道の施工方法および放射性廃棄物の処分方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物を処分するにあたり、トンネル内にベントナイトブロックやセグメント等の資材を定置して施工した坑道内に収納容器に格納した前記放射性廃棄物を定置し、その後モルタル等の充填材により封止して処分する技術が知られている。かかる従来技術には、例えば特許文献1に記載される技術がある。
【0003】
【特許文献1】特開平9−304596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1中には、地下水の流入等を遅延させるためにベントナイトブロックをトンネル内へ環状に配置して外殻を形成し、その内側にコンクリートブロックを配置した放射性廃棄体の処分施設が開示されている。しかし、これらの具体的な配置方法や配置手順は開示されていない。そこで、この発明は、放射性廃棄物の処分施設を製造するための具体的な製造技術を提供できる坑道の施工方法および放射性廃棄物の処分方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る坑道の施工方法は、外殻と内殻とを備える積層構造を有する坑道を、トンネル内に形成するにあたり、断面円弧状の外殻用資材をトンネル内に複数配置して、前記外殻の略下半分を形成する工程と、配置された略下半分の前記外殻の内周上に断面円弧状の内殻用資材を複数配置して、前記内殻を環状に形成する工程と、前記内殻の外周上に前記外殻用資材を配置して、残りの外殻を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、この発明に係る坑道の施工方法は、前記坑道の施工方法において、少なくとも前記外殻は、前記外殻用資材が配置された後に当該外殻用資材をトンネルの軸方向から押し込んで、当該外殻用資材と既に配置された外殻用資材との隙間を詰めて形成されることを特徴とする。
【0007】
また、この発明に係る放射性廃棄物の処分方法は、上記施工方法により形成された坑道に、放射性廃棄物を収容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、外殻と内殻とを備える積層構造を有する坑道を、トンネル内に形成するにあたり、断面円弧状の外殻用資材をトンネル内に複数配置して、前記外殻の略下半分を形成する工程と、配置された略下半分の前記外殻の内周上に断面円弧状の内殻用資材を複数配置して、前記内殻を環状に形成する工程と、前記内殻の外周上に前記外殻用資材を配置して、残りの外殻を形成する工程と、を含んで構成されるので、放射性廃棄物処分施設の具体的な製造技術を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
近年、原子炉の炉内構造物その他の放射性廃棄物を、処分場の地下に埋設する計画がある。この計画では、地下に坑道を形成し、この坑道内に坑道を形成して放射性廃棄物の収容容器を配置する。ここで、坑道は、ブロックから成る外殻層とセグメントから成る内殻層との2層構造を有する。かかるブロックには、例えば、粘土質の鉱物から成るベントナイトブロックが採用される。ベントナイトブロックは、その特性により、外部から坑道内部への地下水の浸水を抑制する。これにより、放射性廃棄物から出る放射性物質が地下水の浸水により外部に漏出する事態が抑制される。ここで、坑道を構成する資材(例えば、ブロックおよびセグメント)は、定置装置によりトンネル内に配列される。以下において、先ず、この定置装置の構成を説明し、次に、定置装置の使用方法を説明しつつ坑道の施工方法を説明する。
【0011】
図1は、この発明の実施の形態に係る定置装置を示す構成図である。図2〜図5は、図1に記載した定置装置を示すA−A視図(図2)、B−B視図(図3)、C−C視図(図4)およびD−D視図(図5)である。この定置装置1は、第1ベース2と、エレクタ3と、第2ベース4と、第一資材詰手段である資材詰手段5と、移動手段6と、資材卸手段7とを含み構成される。
【0012】
なお、この実施の形態では、定置装置1がトンネル内に配置された状態を基準として、トンネルの方向により定置装置1の方向を表現する。例えば、定置装置1の軸方向とは、定置装置1の作業時にて、トンネルの軸方向に対応する方向をいうものとする。径方向および周方向についても同様である。また、第一資材であるセグメント101により坑道の内殻を構成し、第二資材であるブロック100によって坑道の外殻を形成する。
【0013】
第1ベース2は、一対の胴部21、22と、複数の脚部23とを含み構成され、主としてエレクタ3が取り付けられる側のベースを構成する(図1および図3参照)。胴部21、22は、シリンダ24を介して軸方向に接続される。脚部23は、シリンダ25を介して胴部21、22の外周に4体ずつ取り付けられる。第1ベース2は、作業時に、脚部23を既に形成された坑道の壁面に付勢して突っ張り、胴部21、22を坑道内の所定の位置に固定にする。また、第1ベース2は、胴部21、22間のシリンダ24を駆動させて、これらの隙間を軸方向に伸縮させ、尺取り虫が這うように坑道内を軸方向に移動できる(図示省略)。なお、第1ベース2は、この移動時に、シリンダ25の駆動により脚部23の突っ張りを順次解除し、また、移動後に、脚部23を再度突っ張ってその位置を固定する。
【0014】
図6は、図1に記載したエレクタの機能を示す説明図である。エレクタ3は、フレーム部31と、レール部32と、腕部33と、把持部34とを含み構成される(図1、図2および図6参照)。フレーム部31は、第1ベース2の胴部21に取り付けられ、胴部21に対して周方向への回転変位が可能である(図2および図6(b)参照)。レール部32は、フレーム部31から軸方向に突出して設けられる。腕部33は、伸縮可能に連接された複数のパイプ部材から成り、その伸縮方向を径方向に向けつつ、レール部32に対して軸方向にスライド可能に設置されている(図1および図6(a)参照)。
【0015】
把持部34は、ブロックおよびセグメントをそれらの側方から把持可能な構造を有し、腕部33の先端に設けられる。エレクタ3は、作業時に、把持部34によりブロック100(またはセグメント101)を把持するとともに、腕部33をレール部32に沿って軸方向にスライド変位する(図6(a)参照)。また、エレクタ3は、フレーム部31を駆動させて腕部33を周方向に回転変位させ、腕部33を径方向に伸縮させる(図6(b)および図6(c)参照)。これにより、エレクタ3は、ブロック100(またはセグメント101)をトンネル内の所定の位置に配列することができるとともに、移動手段6上にもブロック100(またはセグメント101)を搭載することもできる。
【0016】
第2ベース4は、一対の胴部41、42と、複数の脚部43とを含み構成され、主として移動手段6が取り付けられる側のベースを構成する(図1および図5参照)。胴部41、42は、シリンダ44を介して軸方向に接続される。また、胴部41、42には、これらの中央部を軸方向に貫通する搬入路47が設けられる。搬入路は、ブロックやセグメントを外部からエレクタ3に搬送するための通路となる。
【0017】
脚部43は、シリンダ45を介して胴部41、42の外周に4体ずつ取り付けられる。なお、脚部43の個数はこれに限定されるものではない。第2ベース4は、作業時に、脚部43をトンネル壁面に付勢して突っ張り、胴部41、42をトンネル内の所定の位置に固定にする。また、第2ベース4は、胴部41、42間のシリンダ44を駆動させて、これらの隙間を軸方向に伸縮させることによって、尺取り虫が這うようにトンネル内を軸方向に移動できる(図示省略)。
【0018】
なお、第2ベース4は、この移動時に、シリンダ45の駆動により脚部43の突っ張りを順次解除し、また、移動後には、脚部43を再度突っ張ってその位置を固定する。なお、この定置装置1では、第1ベース2と第2ベース4とは、構造上別構成としている(図1参照)。これは移動機構23〜25、43〜45およびその制御を簡素化できる点で好ましい。しかし、これに限らず、第1ベース2および第2ベース4は、一体として構成してもよい。
【0019】
図4に示すように、第一資材詰手段である資材詰手段5は、平面略U字状の板状部51を有し、この板状部51を第2ベース4の胴部42に取り付けて構成される。板状部51は、胴部42が有する第1ベース2側の壁面にシリンダ52を介して取り付けられ、その平面が第1ベース2側に向きつつ胴部42の下方側の周辺に沿うように配置される。資材詰手段5は、作業時に、シリンダ52を駆動して板状部51の平面を軸方向に押し出し、トンネル内の下方に配列されたブロックを軸方向に押し込む。これにより、資材詰手段5は、新たに配置されたブロックと、既に定置されたブロックとの隙間を詰める。なお、この資材詰手段5の板状部51を軸方向に駆動する手段としては、例えば、油圧や空気圧により伸縮する挿入ジャッキである。
【0020】
図7は、図1に記載した移動手段および資材卸手段を示す斜視図である。図8は、図7に記載した移動手段および資材卸手段の機能を示す説明図である。移動手段6は、第2ベース4が有する胴部42のエレクタ3側の壁面上に例えば2機設けられ、胴部42が有する環状部46の回転により周方向に移動可能である(図1および図4参照)。移動手段6は、ブロック100を搭載して、胴部42の壁面上を周方向に移動し、ブロック100をトンネル内の所定の位置まで搬送する。
【0021】
移動手段6は、テーブル部61と、ストッパ部62とを含み構成される(図7参照)。テーブル部61は、板状部材から成り、複数段のブロック100を搭載できる(図8(a)参照)。なお、テーブル61には、一度に複数段のブロック100を搭載してもよいし、一度に一段のブロック100を搭載してもよい。また、この実施の形態では、エレクタ3が、ブロック100を、移動手段6のテーブル部61上に搭載する。言い換えれば、エレクタ3が、ブロック100を搭載する第二資材搭載手段を兼ねる。これにより、第二資材搭載手段を別途設ける場合(図示省略)と比較して、定置装置1の構成を簡素化できる利点がある。また、第二資材搭載手段を別個に用意して、エレクタ3を第二資材搭載手段として用いなくてもよい。
【0022】
ストッパ部62は、ジャッキ部63により駆動されて、テーブル部61上に突出し、また、テーブル部61下に収納される。ストッパ部62は、ブロック100をテーブル部61上に搭載するときは、テーブル部61下に収納され、ブロック100の搭載後にテーブル部61上に突出して、ブロック100を係止する。これにより、ストッパ部62は、移動手段6が移動してテーブル部61が傾いたときに、ブロック100がテーブル部上からズレ落ちる事態を防止する(図8(a)および(b)参照)。
【0023】
第二資材卸手段である資材卸手段7は、板状部71と、ジャッキ部72とを含み構成される。この資材卸手段7は、板状部71の平面を、移動手段6のテーブル部61面上に対して略垂直に設置される(図7参照)。資材卸手段7は、ジャッキ部72の駆動により板状部71の平面を軸方向にスライド変位させて、テーブル部61上に搭載されたブロック100を軸方向に押し出す(図8(c)参照)。これにより、資材卸手段7は、ブロック100を移動手段6から卸して、トンネル内の所定の位置に定置する。また、資材卸手段7は、移動手段6からブロック100を卸すにあたり、ブロック100を押し込んで、新たに卸したブロック100と、既に配列されたブロック100との隙間を詰める。すなわち、この資材卸手段7は、ブロック100を押し込んで軸方向におけるブロック100間の隙間を詰める第二資材詰手段と兼用してもよい。これにより、定置装置の構成を簡素化できる利点がある。なお、この資材卸手段7は、例えば、油圧や空気圧によって伸縮可能な挿入ジャッキである。また、第二資材詰手段を別個に設けてもよい。
【0024】
図9〜図17は、図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。これらの図は、坑道の施工に要する工程を順に示している。坑道111の施工は、既に施工された坑道111に、さらに軸方向に向かって1リング分ずつブロック100の環およびセグメント101の環(以下、単位環という。)を継ぎ足して行われる。初期状態では、定置装置1は、第1ベース2側の機構を、トンネル110内に既に形成された坑道111上に位置させる(図9参照)。このとき、第1ベース2は、胴部21、21の脚部23を坑道111の壁面に突っ張って、定置装置1の位置を固定する。なお、定置装置1は、坑道111が未だ形成されていない状態、すなわち、坑道の最初の単位環を定置する場合には、トンネル110または予め形成したプラットフォーム上に、第1ベース2側の機構を乗せて固定される(図示省略)。また、第1ベース2を固定できる長さだけ、予め坑道111を形成してから、第1ベース2を坑道111内に配置してもよい。
【0025】
一方、定置装置1は、第2ベース4側の機構を、坑道111が未だ形成されていない側のトンネル110内の壁面上に位置させる(図9参照)。このとき、第2ベース4は、胴部41、41の脚部43をトンネル110の壁面に突っ張って、定置装置1の位置を固定する。また、第2ベース4の搬入路47には、搬送レール81が層通される。搬送レール81には、ホイスト82が設けられる。搬送レール81およびホイスト82は、定置装置1に対して外部から断面円弧状のブロック100や断面円弧状のセグメント101を搬送して供給する搬送手段8を構成する。
【0026】
施工にあたり、定置装置1は、先ず、搬入路47を介してブロック100を供給され、このブロック100をエレクタ3の把持部34で把持する(図9参照)。次に、エレクタ3は、腕部33をレール部32に沿って軸方向にスライド変位させ、フレーム部31を周方向に旋回させるとともに、腕部33を径方向に延長させて、ブロック100をトンネル110内の所定の位置に配置する(図10および図6参照)。そして、定置装置1は、この配置作業を順次繰り返して、径方向に複数段(この実施の形態では4段)、並びに、周方向に単位環の略下半分(略半円弧分)のブロック100を配列する(図17参照)。
【0027】
次に、定置装置1は、資材詰手段5を用いて、配列されたブロック100を軸方向に押し込み、既に定置されたブロック100群に押し付けて、既に定置されているブロック100と、新たに挿入されたブロック100との隙間を詰める(図11参照)。これにより、ブロック100間の隙間が狭められるので、外部からの地下水の浸入が抑制され、また、坑道の構造上の強度が高められる。なお、このように定置されたブロック100、100間には、施工直後にて、多少の隙間が残る。しかし、ブロック100は、地下水位が回復した後にトンネル110内に浸入する地下水を吸って膨張するため、多少の隙間は潰されて解消される。
【0028】
次に、定置装置1は、搬入路47を介してセグメント101を供給され、このセグメント101をエレクタ3の把持部34にて把持する。そして、エレクタ3は、腕部33を軸方向にスライド変位させ、フレーム部31(図2参照)を周方向に旋回させるとともに、腕部33を径方向に延長させて、セグメント101を所定の位置に配置する(図12、図13および図6参照)。定置装置1は、この工程を順次行うことにより、単位環の下半分および上半分のセグメント101を定置する。このとき、単位環の下半分のセグメント101は、先の工程により定置されたブロック100上に配置され(図12参照)、上半分のセグメント101は、既に形成された単位環に隣接して新たに配置される(図13参照)。
【0029】
次に、定置装置1は、新たに搬入路47から供給されたブロック100を、エレクタ3の把持部34にて把持し、移動手段6のテーブル部61上に順次搭載する(図14および図8(a)参照)。このとき、テーブル部61上には、1列分(この実施の形態では、4段)のブロック100が搭載される。移動手段6は、ブロック100の搭載後に、ストッパ部62を突出させて、テーブル部61上のブロック100を係止する。そして、移動手段6は、環状部46の回転により、第2ベース4上を周方向に移動して、ブロック100を所定の位置に搬送する(図15および図8(b)参照)。このとき、ストッパ部62は、テーブル部61上からのブロック100のズリ落ちを防止する。なお、この実施の形態では、ブロック100が、エレクタ3によりテーブル部61上に搭載される。言い換えれば、この実施の形態では、エレクタ3が、資材(ブロック100)を移動手段6に搭載する資材搭載手段を兼ねる。これは、定置装置1の構成を簡素化できる点で好ましい。しかし、これに限らず、エレクタ3以外の資材搭載手段が、資材を移動手段6に搭載しても良い(図示省略)。
【0030】
次に、定置装置1は、資材卸手段7を駆動して、移動手段6が搭載するブロック100を押し出し、先に配置されたセグメント101の外周上に配置する(図16および図8(c)参照)。このとき、セグメント101は、配置されたブロック100の落下を防止する内殻となる。また、このとき、定置装置1は、ブロック100を軸方向に押し込んで、ブロック100、100間の隙間を詰める。これにより、ブロック100が密に定置されて、外部からの地下水の浸入が抑制され、また、坑道の構造上の強度が高められる利点がある。定置装置1は、この工程を順次行うことにより、ブロック100をセグメント101の外周上に配列する。これにより、坑道111の単位環分のブロック100およびセグメント101が定置される。
【0031】
次に、定置装置1は、第1ベース2および第2ベース4を駆動して、トンネル110内(坑道内111)を尺取り虫が這うように軸方向に移動する。このときの定置装置1の移動量は、単位環分の距離である。そして、定置装置1は、上記の工程を順次繰り返して、坑道111を形成する。
【0032】
この定置装置1によれば、ブロック100およびセグメント101の2層構造を有する坑道111を施工できる新規な手段が提供される。また、この定置装置1では、ブロック100を配置した後に、資材詰手段5および資材卸手段7を用いて、新たに配列されたブロック100と、既に配置されたブロック100との隙間を詰める。これにより、外部から坑道111内への地下水の浸入が抑制され、また、坑道111の構造上の強度が高められる利点がある。特に、坑道111内に放射性廃棄物を収容する場合において、地下水が坑道111内に浸入し、また、処分直後に外部に浸み出すと、深刻な環境汚染を招くおそれがある。この点において、この定置装置1は、かかる事態を未然に防止できる点で好ましい。また、この発明によれば、従来存在しなかった新規な定置装置、坑道の施工方法および放射性廃棄物の処分方法が提供されるので、技術の多様化が図られる。また、この発明によれば、放射性廃棄物処分施設の坑道を現実に製造できるので、放射性廃棄物処分施設の具体的な製造技術を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明に係る坑道の施工方法および放射性廃棄物の処分方法は、放射性廃棄物処分施設の具体的な製造技術を提供することに有用であり、特に、放射性廃棄物処分施設の坑道の施工に適している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施の形態に係る定置装置を示す構成図である。
【図2】図1に記載した定置装置を示すA−A視図である。
【図3】図1に記載した定置装置を示すB−B視図である。
【図4】図1に記載した定置装置を示すC−C視図である。
【図5】図1に記載した定置装置を示すD−D視図である。
【図6】図1に記載したエレクタの機能を示す説明図である。
【図7】図1に記載した移動手段および資材卸手段を示す斜視図である。
【図8】図7に記載した移動手段および資材卸手段の機能を示す説明図である。
【図9】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図10】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図11】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図12】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図13】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図14】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図15】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図16】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図17】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 定置装置
2 第1ベース
3 エレクタ
4 第2ベース
5 資材詰手段
6 移動手段
7 資材卸手段
8 搬送手段
47 搬入路
61 テーブル部
62 ストッパ部
100 ブロック
101 セグメント
111 坑道
【技術分野】
【0001】
この発明は、坑道の施工方法および放射性廃棄物の処分方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物を処分するにあたり、トンネル内にベントナイトブロックやセグメント等の資材を定置して施工した坑道内に収納容器に格納した前記放射性廃棄物を定置し、その後モルタル等の充填材により封止して処分する技術が知られている。かかる従来技術には、例えば特許文献1に記載される技術がある。
【0003】
【特許文献1】特開平9−304596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1中には、地下水の流入等を遅延させるためにベントナイトブロックをトンネル内へ環状に配置して外殻を形成し、その内側にコンクリートブロックを配置した放射性廃棄体の処分施設が開示されている。しかし、これらの具体的な配置方法や配置手順は開示されていない。そこで、この発明は、放射性廃棄物の処分施設を製造するための具体的な製造技術を提供できる坑道の施工方法および放射性廃棄物の処分方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る坑道の施工方法は、外殻と内殻とを備える積層構造を有する坑道を、トンネル内に形成するにあたり、断面円弧状の外殻用資材をトンネル内に複数配置して、前記外殻の略下半分を形成する工程と、配置された略下半分の前記外殻の内周上に断面円弧状の内殻用資材を複数配置して、前記内殻を環状に形成する工程と、前記内殻の外周上に前記外殻用資材を配置して、残りの外殻を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、この発明に係る坑道の施工方法は、前記坑道の施工方法において、少なくとも前記外殻は、前記外殻用資材が配置された後に当該外殻用資材をトンネルの軸方向から押し込んで、当該外殻用資材と既に配置された外殻用資材との隙間を詰めて形成されることを特徴とする。
【0007】
また、この発明に係る放射性廃棄物の処分方法は、上記施工方法により形成された坑道に、放射性廃棄物を収容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、外殻と内殻とを備える積層構造を有する坑道を、トンネル内に形成するにあたり、断面円弧状の外殻用資材をトンネル内に複数配置して、前記外殻の略下半分を形成する工程と、配置された略下半分の前記外殻の内周上に断面円弧状の内殻用資材を複数配置して、前記内殻を環状に形成する工程と、前記内殻の外周上に前記外殻用資材を配置して、残りの外殻を形成する工程と、を含んで構成されるので、放射性廃棄物処分施設の具体的な製造技術を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
近年、原子炉の炉内構造物その他の放射性廃棄物を、処分場の地下に埋設する計画がある。この計画では、地下に坑道を形成し、この坑道内に坑道を形成して放射性廃棄物の収容容器を配置する。ここで、坑道は、ブロックから成る外殻層とセグメントから成る内殻層との2層構造を有する。かかるブロックには、例えば、粘土質の鉱物から成るベントナイトブロックが採用される。ベントナイトブロックは、その特性により、外部から坑道内部への地下水の浸水を抑制する。これにより、放射性廃棄物から出る放射性物質が地下水の浸水により外部に漏出する事態が抑制される。ここで、坑道を構成する資材(例えば、ブロックおよびセグメント)は、定置装置によりトンネル内に配列される。以下において、先ず、この定置装置の構成を説明し、次に、定置装置の使用方法を説明しつつ坑道の施工方法を説明する。
【0011】
図1は、この発明の実施の形態に係る定置装置を示す構成図である。図2〜図5は、図1に記載した定置装置を示すA−A視図(図2)、B−B視図(図3)、C−C視図(図4)およびD−D視図(図5)である。この定置装置1は、第1ベース2と、エレクタ3と、第2ベース4と、第一資材詰手段である資材詰手段5と、移動手段6と、資材卸手段7とを含み構成される。
【0012】
なお、この実施の形態では、定置装置1がトンネル内に配置された状態を基準として、トンネルの方向により定置装置1の方向を表現する。例えば、定置装置1の軸方向とは、定置装置1の作業時にて、トンネルの軸方向に対応する方向をいうものとする。径方向および周方向についても同様である。また、第一資材であるセグメント101により坑道の内殻を構成し、第二資材であるブロック100によって坑道の外殻を形成する。
【0013】
第1ベース2は、一対の胴部21、22と、複数の脚部23とを含み構成され、主としてエレクタ3が取り付けられる側のベースを構成する(図1および図3参照)。胴部21、22は、シリンダ24を介して軸方向に接続される。脚部23は、シリンダ25を介して胴部21、22の外周に4体ずつ取り付けられる。第1ベース2は、作業時に、脚部23を既に形成された坑道の壁面に付勢して突っ張り、胴部21、22を坑道内の所定の位置に固定にする。また、第1ベース2は、胴部21、22間のシリンダ24を駆動させて、これらの隙間を軸方向に伸縮させ、尺取り虫が這うように坑道内を軸方向に移動できる(図示省略)。なお、第1ベース2は、この移動時に、シリンダ25の駆動により脚部23の突っ張りを順次解除し、また、移動後に、脚部23を再度突っ張ってその位置を固定する。
【0014】
図6は、図1に記載したエレクタの機能を示す説明図である。エレクタ3は、フレーム部31と、レール部32と、腕部33と、把持部34とを含み構成される(図1、図2および図6参照)。フレーム部31は、第1ベース2の胴部21に取り付けられ、胴部21に対して周方向への回転変位が可能である(図2および図6(b)参照)。レール部32は、フレーム部31から軸方向に突出して設けられる。腕部33は、伸縮可能に連接された複数のパイプ部材から成り、その伸縮方向を径方向に向けつつ、レール部32に対して軸方向にスライド可能に設置されている(図1および図6(a)参照)。
【0015】
把持部34は、ブロックおよびセグメントをそれらの側方から把持可能な構造を有し、腕部33の先端に設けられる。エレクタ3は、作業時に、把持部34によりブロック100(またはセグメント101)を把持するとともに、腕部33をレール部32に沿って軸方向にスライド変位する(図6(a)参照)。また、エレクタ3は、フレーム部31を駆動させて腕部33を周方向に回転変位させ、腕部33を径方向に伸縮させる(図6(b)および図6(c)参照)。これにより、エレクタ3は、ブロック100(またはセグメント101)をトンネル内の所定の位置に配列することができるとともに、移動手段6上にもブロック100(またはセグメント101)を搭載することもできる。
【0016】
第2ベース4は、一対の胴部41、42と、複数の脚部43とを含み構成され、主として移動手段6が取り付けられる側のベースを構成する(図1および図5参照)。胴部41、42は、シリンダ44を介して軸方向に接続される。また、胴部41、42には、これらの中央部を軸方向に貫通する搬入路47が設けられる。搬入路は、ブロックやセグメントを外部からエレクタ3に搬送するための通路となる。
【0017】
脚部43は、シリンダ45を介して胴部41、42の外周に4体ずつ取り付けられる。なお、脚部43の個数はこれに限定されるものではない。第2ベース4は、作業時に、脚部43をトンネル壁面に付勢して突っ張り、胴部41、42をトンネル内の所定の位置に固定にする。また、第2ベース4は、胴部41、42間のシリンダ44を駆動させて、これらの隙間を軸方向に伸縮させることによって、尺取り虫が這うようにトンネル内を軸方向に移動できる(図示省略)。
【0018】
なお、第2ベース4は、この移動時に、シリンダ45の駆動により脚部43の突っ張りを順次解除し、また、移動後には、脚部43を再度突っ張ってその位置を固定する。なお、この定置装置1では、第1ベース2と第2ベース4とは、構造上別構成としている(図1参照)。これは移動機構23〜25、43〜45およびその制御を簡素化できる点で好ましい。しかし、これに限らず、第1ベース2および第2ベース4は、一体として構成してもよい。
【0019】
図4に示すように、第一資材詰手段である資材詰手段5は、平面略U字状の板状部51を有し、この板状部51を第2ベース4の胴部42に取り付けて構成される。板状部51は、胴部42が有する第1ベース2側の壁面にシリンダ52を介して取り付けられ、その平面が第1ベース2側に向きつつ胴部42の下方側の周辺に沿うように配置される。資材詰手段5は、作業時に、シリンダ52を駆動して板状部51の平面を軸方向に押し出し、トンネル内の下方に配列されたブロックを軸方向に押し込む。これにより、資材詰手段5は、新たに配置されたブロックと、既に定置されたブロックとの隙間を詰める。なお、この資材詰手段5の板状部51を軸方向に駆動する手段としては、例えば、油圧や空気圧により伸縮する挿入ジャッキである。
【0020】
図7は、図1に記載した移動手段および資材卸手段を示す斜視図である。図8は、図7に記載した移動手段および資材卸手段の機能を示す説明図である。移動手段6は、第2ベース4が有する胴部42のエレクタ3側の壁面上に例えば2機設けられ、胴部42が有する環状部46の回転により周方向に移動可能である(図1および図4参照)。移動手段6は、ブロック100を搭載して、胴部42の壁面上を周方向に移動し、ブロック100をトンネル内の所定の位置まで搬送する。
【0021】
移動手段6は、テーブル部61と、ストッパ部62とを含み構成される(図7参照)。テーブル部61は、板状部材から成り、複数段のブロック100を搭載できる(図8(a)参照)。なお、テーブル61には、一度に複数段のブロック100を搭載してもよいし、一度に一段のブロック100を搭載してもよい。また、この実施の形態では、エレクタ3が、ブロック100を、移動手段6のテーブル部61上に搭載する。言い換えれば、エレクタ3が、ブロック100を搭載する第二資材搭載手段を兼ねる。これにより、第二資材搭載手段を別途設ける場合(図示省略)と比較して、定置装置1の構成を簡素化できる利点がある。また、第二資材搭載手段を別個に用意して、エレクタ3を第二資材搭載手段として用いなくてもよい。
【0022】
ストッパ部62は、ジャッキ部63により駆動されて、テーブル部61上に突出し、また、テーブル部61下に収納される。ストッパ部62は、ブロック100をテーブル部61上に搭載するときは、テーブル部61下に収納され、ブロック100の搭載後にテーブル部61上に突出して、ブロック100を係止する。これにより、ストッパ部62は、移動手段6が移動してテーブル部61が傾いたときに、ブロック100がテーブル部上からズレ落ちる事態を防止する(図8(a)および(b)参照)。
【0023】
第二資材卸手段である資材卸手段7は、板状部71と、ジャッキ部72とを含み構成される。この資材卸手段7は、板状部71の平面を、移動手段6のテーブル部61面上に対して略垂直に設置される(図7参照)。資材卸手段7は、ジャッキ部72の駆動により板状部71の平面を軸方向にスライド変位させて、テーブル部61上に搭載されたブロック100を軸方向に押し出す(図8(c)参照)。これにより、資材卸手段7は、ブロック100を移動手段6から卸して、トンネル内の所定の位置に定置する。また、資材卸手段7は、移動手段6からブロック100を卸すにあたり、ブロック100を押し込んで、新たに卸したブロック100と、既に配列されたブロック100との隙間を詰める。すなわち、この資材卸手段7は、ブロック100を押し込んで軸方向におけるブロック100間の隙間を詰める第二資材詰手段と兼用してもよい。これにより、定置装置の構成を簡素化できる利点がある。なお、この資材卸手段7は、例えば、油圧や空気圧によって伸縮可能な挿入ジャッキである。また、第二資材詰手段を別個に設けてもよい。
【0024】
図9〜図17は、図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。これらの図は、坑道の施工に要する工程を順に示している。坑道111の施工は、既に施工された坑道111に、さらに軸方向に向かって1リング分ずつブロック100の環およびセグメント101の環(以下、単位環という。)を継ぎ足して行われる。初期状態では、定置装置1は、第1ベース2側の機構を、トンネル110内に既に形成された坑道111上に位置させる(図9参照)。このとき、第1ベース2は、胴部21、21の脚部23を坑道111の壁面に突っ張って、定置装置1の位置を固定する。なお、定置装置1は、坑道111が未だ形成されていない状態、すなわち、坑道の最初の単位環を定置する場合には、トンネル110または予め形成したプラットフォーム上に、第1ベース2側の機構を乗せて固定される(図示省略)。また、第1ベース2を固定できる長さだけ、予め坑道111を形成してから、第1ベース2を坑道111内に配置してもよい。
【0025】
一方、定置装置1は、第2ベース4側の機構を、坑道111が未だ形成されていない側のトンネル110内の壁面上に位置させる(図9参照)。このとき、第2ベース4は、胴部41、41の脚部43をトンネル110の壁面に突っ張って、定置装置1の位置を固定する。また、第2ベース4の搬入路47には、搬送レール81が層通される。搬送レール81には、ホイスト82が設けられる。搬送レール81およびホイスト82は、定置装置1に対して外部から断面円弧状のブロック100や断面円弧状のセグメント101を搬送して供給する搬送手段8を構成する。
【0026】
施工にあたり、定置装置1は、先ず、搬入路47を介してブロック100を供給され、このブロック100をエレクタ3の把持部34で把持する(図9参照)。次に、エレクタ3は、腕部33をレール部32に沿って軸方向にスライド変位させ、フレーム部31を周方向に旋回させるとともに、腕部33を径方向に延長させて、ブロック100をトンネル110内の所定の位置に配置する(図10および図6参照)。そして、定置装置1は、この配置作業を順次繰り返して、径方向に複数段(この実施の形態では4段)、並びに、周方向に単位環の略下半分(略半円弧分)のブロック100を配列する(図17参照)。
【0027】
次に、定置装置1は、資材詰手段5を用いて、配列されたブロック100を軸方向に押し込み、既に定置されたブロック100群に押し付けて、既に定置されているブロック100と、新たに挿入されたブロック100との隙間を詰める(図11参照)。これにより、ブロック100間の隙間が狭められるので、外部からの地下水の浸入が抑制され、また、坑道の構造上の強度が高められる。なお、このように定置されたブロック100、100間には、施工直後にて、多少の隙間が残る。しかし、ブロック100は、地下水位が回復した後にトンネル110内に浸入する地下水を吸って膨張するため、多少の隙間は潰されて解消される。
【0028】
次に、定置装置1は、搬入路47を介してセグメント101を供給され、このセグメント101をエレクタ3の把持部34にて把持する。そして、エレクタ3は、腕部33を軸方向にスライド変位させ、フレーム部31(図2参照)を周方向に旋回させるとともに、腕部33を径方向に延長させて、セグメント101を所定の位置に配置する(図12、図13および図6参照)。定置装置1は、この工程を順次行うことにより、単位環の下半分および上半分のセグメント101を定置する。このとき、単位環の下半分のセグメント101は、先の工程により定置されたブロック100上に配置され(図12参照)、上半分のセグメント101は、既に形成された単位環に隣接して新たに配置される(図13参照)。
【0029】
次に、定置装置1は、新たに搬入路47から供給されたブロック100を、エレクタ3の把持部34にて把持し、移動手段6のテーブル部61上に順次搭載する(図14および図8(a)参照)。このとき、テーブル部61上には、1列分(この実施の形態では、4段)のブロック100が搭載される。移動手段6は、ブロック100の搭載後に、ストッパ部62を突出させて、テーブル部61上のブロック100を係止する。そして、移動手段6は、環状部46の回転により、第2ベース4上を周方向に移動して、ブロック100を所定の位置に搬送する(図15および図8(b)参照)。このとき、ストッパ部62は、テーブル部61上からのブロック100のズリ落ちを防止する。なお、この実施の形態では、ブロック100が、エレクタ3によりテーブル部61上に搭載される。言い換えれば、この実施の形態では、エレクタ3が、資材(ブロック100)を移動手段6に搭載する資材搭載手段を兼ねる。これは、定置装置1の構成を簡素化できる点で好ましい。しかし、これに限らず、エレクタ3以外の資材搭載手段が、資材を移動手段6に搭載しても良い(図示省略)。
【0030】
次に、定置装置1は、資材卸手段7を駆動して、移動手段6が搭載するブロック100を押し出し、先に配置されたセグメント101の外周上に配置する(図16および図8(c)参照)。このとき、セグメント101は、配置されたブロック100の落下を防止する内殻となる。また、このとき、定置装置1は、ブロック100を軸方向に押し込んで、ブロック100、100間の隙間を詰める。これにより、ブロック100が密に定置されて、外部からの地下水の浸入が抑制され、また、坑道の構造上の強度が高められる利点がある。定置装置1は、この工程を順次行うことにより、ブロック100をセグメント101の外周上に配列する。これにより、坑道111の単位環分のブロック100およびセグメント101が定置される。
【0031】
次に、定置装置1は、第1ベース2および第2ベース4を駆動して、トンネル110内(坑道内111)を尺取り虫が這うように軸方向に移動する。このときの定置装置1の移動量は、単位環分の距離である。そして、定置装置1は、上記の工程を順次繰り返して、坑道111を形成する。
【0032】
この定置装置1によれば、ブロック100およびセグメント101の2層構造を有する坑道111を施工できる新規な手段が提供される。また、この定置装置1では、ブロック100を配置した後に、資材詰手段5および資材卸手段7を用いて、新たに配列されたブロック100と、既に配置されたブロック100との隙間を詰める。これにより、外部から坑道111内への地下水の浸入が抑制され、また、坑道111の構造上の強度が高められる利点がある。特に、坑道111内に放射性廃棄物を収容する場合において、地下水が坑道111内に浸入し、また、処分直後に外部に浸み出すと、深刻な環境汚染を招くおそれがある。この点において、この定置装置1は、かかる事態を未然に防止できる点で好ましい。また、この発明によれば、従来存在しなかった新規な定置装置、坑道の施工方法および放射性廃棄物の処分方法が提供されるので、技術の多様化が図られる。また、この発明によれば、放射性廃棄物処分施設の坑道を現実に製造できるので、放射性廃棄物処分施設の具体的な製造技術を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明に係る坑道の施工方法および放射性廃棄物の処分方法は、放射性廃棄物処分施設の具体的な製造技術を提供することに有用であり、特に、放射性廃棄物処分施設の坑道の施工に適している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施の形態に係る定置装置を示す構成図である。
【図2】図1に記載した定置装置を示すA−A視図である。
【図3】図1に記載した定置装置を示すB−B視図である。
【図4】図1に記載した定置装置を示すC−C視図である。
【図5】図1に記載した定置装置を示すD−D視図である。
【図6】図1に記載したエレクタの機能を示す説明図である。
【図7】図1に記載した移動手段および資材卸手段を示す斜視図である。
【図8】図7に記載した移動手段および資材卸手段の機能を示す説明図である。
【図9】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図10】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図11】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図12】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図13】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図14】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図15】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図16】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【図17】図1に記載した定置装置の使用方法および本発明に係る坑道の施工方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 定置装置
2 第1ベース
3 エレクタ
4 第2ベース
5 資材詰手段
6 移動手段
7 資材卸手段
8 搬送手段
47 搬入路
61 テーブル部
62 ストッパ部
100 ブロック
101 セグメント
111 坑道
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻と内殻とを備える積層構造を有する坑道を、トンネル内に形成するにあたり、
断面円弧状の外殻用資材をトンネル内に複数配置して、前記外殻の略下半分を形成する工程と、
配置された略下半分の前記外殻の内周上に断面円弧状の内殻用資材を複数配置して、前記内殻を環状に形成する工程と、
前記内殻の外周上に前記外殻用資材を配置して、残りの外殻を形成する工程と、
を含むことを特徴とする坑道の施工方法。
【請求項2】
少なくとも前記外殻は、前記外殻用資材が配置された後に当該外殻用資材をトンネルの軸方向から押し込んで、当該外殻用資材と既に配置された外殻用資材との隙間を詰めて形成されることを特徴とする請求項1に記載の坑道の施工方法。
【請求項3】
請求項2に記載の施工方法により形成された坑道に、放射性廃棄物を収容することを特徴とする放射性廃棄物の処分方法。
【請求項1】
外殻と内殻とを備える積層構造を有する坑道を、トンネル内に形成するにあたり、
断面円弧状の外殻用資材をトンネル内に複数配置して、前記外殻の略下半分を形成する工程と、
配置された略下半分の前記外殻の内周上に断面円弧状の内殻用資材を複数配置して、前記内殻を環状に形成する工程と、
前記内殻の外周上に前記外殻用資材を配置して、残りの外殻を形成する工程と、
を含むことを特徴とする坑道の施工方法。
【請求項2】
少なくとも前記外殻は、前記外殻用資材が配置された後に当該外殻用資材をトンネルの軸方向から押し込んで、当該外殻用資材と既に配置された外殻用資材との隙間を詰めて形成されることを特徴とする請求項1に記載の坑道の施工方法。
【請求項3】
請求項2に記載の施工方法により形成された坑道に、放射性廃棄物を収容することを特徴とする放射性廃棄物の処分方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−13783(P2009−13783A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202260(P2008−202260)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【分割の表示】特願2003−190423(P2003−190423)の分割
【原出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【分割の表示】特願2003−190423(P2003−190423)の分割
【原出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
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