説明

垂直搬送機

【課題】搬送物が軽量である場合に経済的で搬送のスピードが速い垂直搬送機を提供する。
【解決手段】搬送物の搬入口と搬出口を前面に備える箱型のフレーム10内に、上部2個の輪体41,42、51,52,61,62及び下部2個の輪体43,44、53,54,63,64からなる輪体群に張架される3本の無端条体31、32、33を設けて、各無端条体31、32、33に保持される複数の搬送台20がフレーム10内を循環して上昇及び下降する垂直搬送機1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を連続して垂直方向に搬送する垂直搬送機に関し、特に、製造工程等において軽量の物品を搬送するための垂直搬送機に関する。
【背景技術】
【0002】
物流センター等において、物品を連続して垂直方向に搬送する垂直搬送機は、物品を水平に保持した状態で移送することを要求されることが多い。すなわち、搬送物はダンボール箱等のように整然と置かれるものが多く、搬送の過程で転倒したり反転したりすることは許されない。この点で、不定形のバラ物を搬送するバケットコンベア等の垂直搬送機とは異なっている。
【0003】
このような目的の垂直搬送機は、例えば特許文献1に紹介されている。すなわち、図6に示すように、この垂直搬送機80は箱型のフレーム81内に、上部2個の輪体及び下部2個の輪体からなる輪体群に張架される無端条体82を複数備え、無端条体に保持される複数の搬送台83がフレーム81内を循環して上昇及び下降する垂直搬送機80である。
【0004】
この場合の無端条体82は、フレーム81内で前後に対峙する一対の内側チェーンと、この内側チェーンよりも外側で前後に対峙する一対の外側チェーンとで構成されている。すなわち、循環する複数の搬送台83は4本のチェーンによって保持されている。したがって、この垂直搬送機は100kg以上の重量物を搬送することも可能である。
【0005】
しかしながら、近年では製造工程等において、10kg以下の軽量物を搬送するための垂直搬送機や、場合によっては1kg以下の軽量物を搬送するための垂直搬送機が要求されるようになった。このため、前述のような従来の垂直搬送機ではコストアップとなり、適当でないことが分かった。
【0006】
また、製造工程等においては、搬送のスピードアップが更に要求されるようになった。スピードアップは、特許文献1にも記載されているように、チェーンに取付ける搬送台の間隔を狭くすることが効果的である。しかしながら、搬送物の受け渡しに使用する荷受台は、搬送物の受け渡しの際には水平にし、搬送台を通過させる際には垂直にする必要がある。すなわち、搬送台が通過する度に水平と垂直を繰り返す必要がある。したがって、搬送台の間隔を狭くすることは、荷受台により大きな制約を受けている。
【特許文献1】特開平11−208811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は搬送物が軽量である場合に適切な、経済的な垂直搬送機を提供することである。また同時に、搬送のスピードアップが可能な垂直搬送機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る垂直搬送機は、搬送物の搬入口と搬出口を前面に備える箱型のフレーム内に、上部2個の輪体及び下部2個の輪体からなる輪体群に張架される無端条体を複数備え、前記無端条体に保持される複数の搬送台が前記フレーム内を循環して上昇及び下降する垂直搬送機において、前記複数の無端条体が、前記フレーム内の前部に設けられる第1の輪体群に張架される第1の無端条体と、前記フレーム内の後部に第1の輪体群に対峙して設けられる第2の輪体群に張架される第2の無端条体と、前記第2の輪体群よりも後方でこれより左右何れかに移動した位置に設けられる第3の輪体群に張架される第3の無端条体とで構成される手段を採用している。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る垂直搬送機は、請求項1に記載の垂直搬送機において、前記第3の輪体群の上部1個の輪体が、前記第2の輪体群の上部1個の輪体と前後に対峙している手段を採用している。また、本発明の請求項3に係る垂直搬送機は、請求項2に記載の垂直搬送機において、前記フレームの上部で前後に対峙する3個の輪体が、同一の回転軸に取付けられている手段を採用している。さらに、本発明の請求項4に係る垂直搬送機は、請求項1乃至3の何れかに記載の垂直搬送機において、前記フレームが、前記第1の無端条体及び前記第3の無端条体を支持するためのガイドを備えている手段を採用している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の垂直搬送機は、上記の手段を採用することにより、軽量の搬送物を水平に保持したまま搬送することが可能であり、経済的に搬送することができる。また、搬入口と搬出口とを箱型フレームの前面に設けたために、搬送のスピードアップを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図1乃至図5により説明するが、これらの図は本願発明を何ら限定するものではない。図1は本発明の垂直搬送機の一例を示す概略斜視図であり、図2は概略正面断面図、図3は概略側面断面図である。また、図4は搬送台の取り付け例を示す概略平面断面図であり、図5はガイドの一例を示す概略斜視図である。
【0012】
本発明の垂直搬送機1は、箱型のフレーム10内で、3本の無端条体31、32、33に保持される複数の搬送台20が、循環して上昇及び下降している。各無端条体31、32、33は、上部2個の輪体及び下部2個の輪体からなる輪体群40、50、60にそれぞれ張架されている。
【0013】
すなわち、第1の輪体群40は、上部左側輪体41、上部右側輪体42、下部右側輪体43、及び下部左側輪体44で構成され、これらに第1の無端条体31が張架されている。また、第2の輪体群50は、上部左側輪体51、上部右側輪体52、下部右側輪体53、及び下部左側輪体54で構成され、これらに第2の無端条体32が張架されている。また、第3の輪体群60は、上部左側輪体61、上部右側輪体62、下部右側輪体63、及び下部左側輪体64で構成され、これらに第3の無端条体33が張架されている。
【0014】
各輪体群を構成する4個の輪体は、必ずしも同一の直径とする必要はないが、同一の直径とすることにより装置が簡略化されるので好ましい。無端条体を張架するために、4個の輪体はその板面を同一垂直平面に配列する必要がある。輪体相互の配列は、略四角形であれば特に限定されないが、装置の簡略化や強度等により、張架された無端条体が上下部では水平となり、左右両側では垂直となることが好ましい。
【0015】
このため、図に示す例においても、各輪体群の4個の輪体は同一の直径を備えており、同一垂直平面上で長方形に配列されている。例えば、第1の輪体群40では、上部左側輪体41と上部右側輪体42とは水平に、上部右側輪体42と下部右側輪体43とは垂直に、下部右側輪体43と下部左側輪体44とは水平に、下部左側輪体44と上部左側輪体41とは垂直に配置されている。
【0016】
第1の輪体群40は、フレーム10内の前部に設けられている。また、第2の輪体群50は、フレーム10内の後部に、第1の輪体群40に対峙して設けられている。第1の輪体群40を構成する輪体と第2の輪体群50を構成する輪体とは、必ずしも同一の直径にする必要はなく、また、同一の配列とする必要もないが、装置の簡略化のために、同一の直径で同一の配列とすることが好ましい。
【0017】
第1の輪体群40に張架される無端条体31と第2の輪体群50に張架される無端条体32とは、必ずしも同一の長さにする必要はないが、装置の簡略化のために、同一の長さとすることが好ましい。そして、第1の輪体群40と第2の輪体群50とが前後に対峙するということは、必ずしも厳密に重なり合うことを意味しないが、装置の簡略化のために、輪体41と輪体51、輪体42と輪体52、輪体43と輪体53、輪体44と輪体54は、それぞれの軸心が同一線上になるように配置されることが好ましい。
【0018】
また、第3の輪体群60は、フレーム10内で第2の輪体群50よりも後方でこれよりも左右何れかに移動した位置に設けられる。第3の輪体群60を構成する輪体も、第1又は第2の輪体群40、50を構成する輪体と、必ずしも同一の直径にする必要はなく、また、同一の配列とする必要もないが、装置の簡略化のために、同一の直径で同一の配列とすることが好ましい。
【0019】
第3の輪体群60に張架される無端条体33も、第1又は第2の輪体群40、50に張架される無端条体31、32と、必ずしも同一の長さにする必要はないが、装置の簡略化のために、同一の長さとすることが好ましい。そして、第2の輪体群50に対して左右何れかに移動する位置は特に限定されないが、装置の簡略化のために、同じ高さで移動することが好ましく、左右の輪体の軸間距離に等しい距離だけ移動することが好ましい。
【0020】
このようにすると、第3の輪体群60の上部1個の輪体が、第2の輪体群50の上部1個の輪体と前後に対峙することになる。すなわち図に示すように、第3の輪体群60を第2の輪体群50よりも右側に移動した場合には、第3の輪体群60の上部左側輪体61と第2の輪体群50の上部右側輪体52とを対峙させることができる。また、第3の輪体群60を第2の輪体群50よりも左側に移動した場合には、第3の輪体群60の上部右側輪体62と第2の輪体群50の上部左側輪体51とを対峙させることができる。
【0021】
前述のように、第2の輪体群50は、第1の輪体群40に対峙して設けられているので、第3の輪体群60の上部1個の輪体が、第2の輪体群50の上部1個の輪体と前後に対峙すると、これらは、第1の輪体群40の上部1個の輪体とも対峙することになる。例えば、図に示す場合では、第1の輪体群40の上部右側輪体42と、第2の輪体群50の上部右側輪体52と、第3の輪体群60の上部左側輪体61が前後に対峙することになる。
【0022】
したがって、フレーム10の上部で前後に対峙するこれら3個の輪体42、52、61を同一の回転軸70に取付けることができる。そして、図示していない動力源によって回転軸70を回転することにより、3本の無端条体31、32、33を同時に、同じ速度で循環させることが可能となる。なお、各無端条体31、32、33を、それぞれ別の駆動源で駆動することも可能であるが、装置が複雑化するだけである。回転軸70は、どちらの方向に回転することもできる。例えば、図においてフレーム10の前面から見て時計回りに回転した場合には、フレーム10の左側で搬送台20が上昇し、右側で下降することになる。
【0023】
搬送台20は、図4に示すように、第1の無端条体31と第2の無端条体32を結ぶ支持材21と、第2の無端条体32と第3の無端条体33を結ぶ支持材22と、物品を載せる荷台23等が一体に構成されている。そして、支持材21及び支持材22は、各無端条体31、32、33に対して回動可能に取付けられている。また、荷台23は、循環に際して各無端状態31、32、33と干渉しないように配置されている。したがって、水平に取付けられた荷台23は、水平を保持した状態で循環することができる。
【0024】
搬送台20の荷台23の形状は、搬送物の受け渡しを行う搬入機及び搬出機の荷台の形状と合わせて選定し、図4に示すような凹型や櫛歯状等とすることが好ましい。すなわち、凹型の場合は、相手側の荷台をこれと噛み合う凸型とし、櫛歯状の場合は、相手側の荷台をこれと噛み合う櫛歯状として、互いに噛み合った部分で搬送物の受け渡しを行う。
【0025】
本発明の垂直搬送機1は、搬送台20の荷台23に対して、搬入機及び搬出機の荷台を直接アプローチできることを特徴としている。すなわち、図4に示すように、凹型の荷台23の凹みがフレーム10の前面に向けられている。また、搬送台20の前面側には、支持材等の構成部材を全く有しない。したがって、搬入機及び搬出機の荷台を、荷台23の中央まで挿入することができるのである。
【0026】
この結果、本発明の垂直搬送機1は、フレーム10の前面に搬送物の搬入口と搬出口とを備え、ここから搬入機及び搬出機の荷台を直接アプローチさせることになる。そして、従来設けられていた荷受台を必要としないために、搬送台20の取付け間隔を狭くして、搬送のスピードアップを図ることができる。
【0027】
軽量物の搬送においては、搬送台20の小さな振動や揺れによって、荷台23に置かれた搬送物が動き易くなる。したがって、各無端条体31、32、33の振れ止めを行うことが好ましく、フレーム10内に適宜ガイドを設けることが好ましい。そして、本発明の垂直搬送機1においては、搬送台20の形状的な特徴から、最も離れて位置する2つの条体を支持するようにガイドを設けることが好ましい。
【0028】
すなわち、図4に示すように、フレーム10内において、搬送台20の上昇部及び下降部それぞれに、第1の無端条体31を支持するガイド11と、第3の無端条体33を支持するガイド12とを設けることが特に好ましい。なお、ガイド11、12の一例を図5に示す。この結果、本発明の垂直搬送機1は、振動や揺れを防止して軽量物を確実に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の垂直搬送機の一例を示す概略斜視図である。
【図2】同じく概略正面断面図である。
【図3】同じく概略側面断面図である。
【図4】搬送台の取り付け例を示す概略平面断面図である。
【図5】ガイドの一例を示す概略斜視図である。
【図6】従来の垂直搬送機を示す概略正面断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1、80 垂直搬送機
10、81 フレーム
11、12 ガイド
20、83 搬送台
21、22 支持材
23 荷台
31 第1の無端条体
32 第2の無端条体
33 第2の無端条体
40 第1の輪体群
41、51、61 上部左側輪体
42、52、62 上部右側輪体
43、53、63 下部右側輪体
44、54、64 下部左側輪体
50 第2の輪体群
60 第3の輪体群
70 回転軸
82 無端条体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物の搬入口と搬出口を前面に備える箱型のフレーム内に、上部2個の輪体及び下部2個の輪体からなる輪体群に張架される無端条体を複数備え、前記無端条体に保持される複数の搬送台が前記フレーム内を循環して上昇及び下降する垂直搬送機において、
前記複数の無端条体が、前記フレーム内の前部に設けられる第1の輪体群に張架される第1の無端条体と、前記フレーム内の後部に第1の輪体群に対峙して設けられる第2の輪体群に張架される第2の無端条体と、前記第2の輪体群よりも後方でこれより左右何れかに移動した位置に設けられる第3の輪体群に張架される第3の無端条体とで構成されることを特徴とする垂直搬送機。
【請求項2】
前記第3の輪体群の上部1個の輪体が、前記第2の輪体群の上部1個の輪体と前後に対峙していることを特徴とする請求項1に記載の垂直搬送機。
【請求項3】
前記フレームの上部で前後に対峙する3個の輪体が、同一の回転軸に取付けられていることを特徴とする請求項2に記載の垂直搬送機。
【請求項4】
前記フレームが、前記第1の無端条体及び前記第3の無端条体を支持するためのガイドを備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の垂直搬送機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−217134(P2007−217134A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40584(P2006−40584)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(392024909)ホクショー株式会社 (16)
【Fターム(参考)】