説明

垂直磁気記録媒体

【課題】 垂直磁気記録媒体に関し、下部層を構成する軟磁性層としてフェライト等の軟磁性酸化物を使用することなく陽極酸化工程における磁気記録層の剥離を防止する。
【解決手段】 規則的に配列された孔8を有する多孔性非磁性層7と孔8に充填された強磁性体材料9からなる磁気記録層6の直下に設ける下部層2の端面が露出しない構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は垂直磁気記録媒体に関するものであり、特に、アルマイト垂直磁気記録媒体等のパターンドメディアにおける陽極酸化工程で生ずるアルマイト膜の剥離を防止するための構成に特徴のある垂直磁気記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムの陽極酸化により形成されるアルマイトポアは、通常、アルミナポアがハニカム型の六方最密格子状に自己組織化的に発生するため、リソグラフィ的手法で1ドットずつドット形成する方法に較べて安価に製造できるメリットがある。
【0003】
特に、二段陽極酸化法による自己組織化やインプリント法を用いることにより、サブミクロンサイズ〜数十ナノサイズのアルミナポア、即ち、ナノホールをより規則的に配列することも可能となり、研究・開発が盛んに行われている。
【0004】
このようなナノホールの応用として、光学素子、量子効果デバイス、ガスセンサー、電解放出型ディスプレー、分子センサー、など多方面への応用が期待されている。
【0005】
このようなナノホールの応用として、アルマイトポアの中に金属を充填し、センサーや磁気記録媒体を作成する研究も古くから行われており(例えば、特許文献1参照)、陽極酸化の場合、アルミナポアが膜面に垂直方向に細長く、即ち、高アスペクト比で成長し、その中に磁性材料を充填すると、形状異方性効果により垂直方向に磁化するため垂直記録膜として使用できる。
【0006】
ここで図10及び図11を参照して従来のアルマイト垂直磁気記録媒体を説明する。
図10参照
まず、Si等の基板41上にスパッタリング法を用いてパーマロイ等の下地軟磁性層42、Cu等の下地電極層43、及び、Al膜44を順次成膜する。
なお、この様な成膜工程等は基板の両面に行うものであるが、ここでは、図示を簡単にするために一方の面側のみを図示する。
【0007】
次いで、例えば、硫酸、リン酸、シュウ酸等の水溶液からなる酸性電解液からなる陽極酸化液45中でAl膜44を陽極酸化することによって、Al膜44をアルマイト化して垂直方向に細長い高アスペクト比の多数のポア47を有するアルマイトポア膜46に変換する。
【0008】
この場合のポア47は、通常、ハニカム型の六方最密格子状に自己組織化的に発生するため、リソグラフィ的手法で1ドットずつドット形成する方法に較べて安価に製造できるメリットがある。
因に、ポア47の直径は50nm程度で、間隔は100nm程度になる。
【0009】
次いで、下地電極層43を電極として用いてCoFe、CoFeB、FePt、CoPt、CoFePt等の強磁性体48を電解メッキしてポア47を埋め込むことによって磁気記録層49を構成する。
なお、電解メッキ法を用いるのは、ポア47のアスペクト比が高いため、蒸着法やスパッタ法などのPVD法ではポア47の奥まで充填することが困難な為である。
【0010】
次いで、CMP(化学機械研磨)法、イオンミリング法、ラッピング法等を用いてアルマイトポア膜46が露出するまで研磨してメッキで荒れた表面を平坦化するとともに、強磁性体48がポア47内に隔離されて埋め込まれるようにする。
【0011】
最後に、DLC(ダイアモンドライクカーボン)等の保護膜50を成膜したのち、表面に例えば、フッ素系潤滑剤を塗布或いはディッピングにより付着させて潤滑膜51を形成することによってアルマイト垂直磁気記録媒体の基本構成が完成する。
【0012】
図11参照
図11は、アルマイト垂直磁気記録媒体に情報を書き込んだ場合の概念的説明図であり、ポア47はハニカム型の六方最密格子状に配列され、また、ポア47内の強磁性体48は複雑な磁区構造を取ることなく、垂直方向に磁化された単磁区構造となる。
【特許文献1】特開2002−175621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、従来の積層構造では、陽極酸化工程において、端部において磁気記録層が下地電極層毎剥離し、極端な場合には、磁気記録層全体が剥離するという問題があるので、図12を参照して説明する。
【0014】
図12参照
陽極酸化工程において、積層構造の端部において陽極酸化液45と下地軟磁性層42が接触すると電気分解反応によって水素が発生し、発生した水素とともに下地電極層43との界面において膜剥がれが生じる。
【0015】
このような陽極酸化工程を陽極酸化液を機械的に攪拌しながら行っているので、剥離により浮き上がった磁気記録層49が機械的に揺すられて離脱していくことになる。
なお、下地軟磁性層42としてフェライト等の軟磁性酸化物を使用することで解決できるが、フェライト膜の作製は難しいという問題がある。
【0016】
したがって、本発明は、下部層を構成する軟磁性層としてフェライト等の軟磁性酸化物を使用することなく陽極酸化工程における磁気記録層の剥離を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記課題を解決するために、本発明は、垂直磁気記録媒体において、規則的に配列された孔8を有する多孔性非磁性層7と孔8に充填された強磁性体材料9からなる磁気記録層6の直下に設ける下部層2の端面が露出しない構造を有することを特徴とする。
【0018】
このように、下部層2の端面を露出させないことによって、下部層2の剥離が、したがって、磁気記録層6の剥離が防止される。
【0019】
この場合、下部層2の端面をAl膜10またはAl膜10/Al2 3 で覆っても良いし、或いは、Ta、Nb、Hf、Zr、Zn、W、Bi、或いは、Sbまたはこれらの合金等のバルブ金属(弁金属)で覆っても良いものであり、バルブ金属を用いる場合には、バルブ金属を、下部層2と磁気記録層6との間にも設けても良い。
なお、バルブ金属とは、O2 やH2 O等の酸素供給源があると、金属自体が酸化されて表面に自己酸化膜を形成するが、ある程度の膜厚以上になると酸化が実質的にそれ以上進行しなくなる金属を言い、上述の列挙した金属元素が相当する。
【0020】
また、多孔性非磁性層7としては、二段陽極酸化法による自己組織化やインプリント法により規則的に配列した孔8の形成が可能な多孔性陽極酸化アルミナが典型的なものである。
【0021】
また、この場合の下部層2としては、各種の構成が可能であるが、基板1側から下地層3/軟磁性層4/中間層5の三層構造或いは軟磁性層4/中間層5の二層構造のいずれかが好適である。
【0022】
また、上述の構造の垂直磁気記録媒体を製造するためには、基板1上に下部層2を設けたのち、下部層2の上表面及び下部層2の側端部を被覆するようにAl膜を堆積させ、次いで、Al膜を陽極酸化することによって、多孔性陽極酸化アルミナに変換したのち、多孔性陽極酸化アルミナに設けられた孔8を強磁性体材料9で充填すれば良い。
即ち、陽極酸化工程において、下部層2の側端部が陽極酸化液に接触することがないので、電気分解反応によって発生する水素に起因する剥離が生じなくなる。
【0023】
或いは、基板1上に下部層2を設けたのち、下部層2の上表面及び下部層2の側端部を被覆するようにバルブ金属膜を堆積させ、次いで、バルブ金属膜を被覆するようにAl膜を設けたのち、Al膜を陽極酸化することによって、多孔性陽極酸化アルミナに変換し、次いで、多孔性陽極酸化アルミナに設けられた孔8を強磁性体材料9で充填しても良い。
【0024】
なお、孔8を有する多孔性陽極酸化アルミナを形成する場合には、二段陽極酸化法による自己組織化法を用いても良いし、或いは、フォトリソグラフィー工程、典型的にはインプリント法を用いて規則正しい配置パターンで孔8を形成しても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、陽極酸化工程において、下部層の側端部が陽極酸化液に接触することがないので、電気分解反応によって水素が発生することがなく、それによって、剥離も生じなくなるので、パターンドメディアの製造歩留りを大幅に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、基板上に基板側から下地層/軟磁性層/中間層の三層構造或いは軟磁性層/中間層の二層構造のいずれかの下部層を設けたのち、下部層の上表面及び下部層の側端部を被覆するようにバルブ金属膜を介して或いは直接Al膜を設けたのち、Al膜を陽極酸化することによって、多孔性陽極酸化アルミナに変換し、次いで、多孔性陽極酸化アルミナに設けられた孔を電解メッキ法によって強磁性体材料で充填するものである。
【実施例1】
【0027】
ここで、図2乃至図7を参照して、本発明の実施例1のアルマイト垂直磁気記録媒体の製造工程を説明する。
なお、実際には基板の表裏両面に同じ構造を形成するものであるが、ここでは、図示を簡単にするために片面のみを図示・説明する。
【0028】
図2参照
まず、結晶化ガラスからなるHDD媒体基板11上に厚さが、例えば、50nmのTaからなる下地層14、厚さが、例えば、100nmの軟磁性層15、及び、厚さが、例えば、10nmのWからなる中間層16を順次HDD媒体基板11の端面より0.3〜0.5mm程度内側にくるように、マスク12を用いてスパッタ法により形成して下部層13とする。
【0029】
図3参照
次いで、HDD媒体基板11の全面にスパッタ法を用いて厚さが、例えば、200nmのAl膜17を成膜する。
このとき、下部層13は十分薄いので、下部層13の端面はAl膜17に覆われることになる。
【0030】
図4参照
次いで、例えば、0.3M/lの希硫酸浴からなる陽極酸化液18を用いて中間層16を陽極として対向電極との間に40Vの電圧を1分印加して陽極酸化を行うことによって、Al膜17を酸化するとともに自己組織化されて所定のピッチで配列されたポア20を有するアルマイトポア膜19を形成する。
【0031】
この時、下部層13の端部に堆積したAl膜17もアルマイトポア膜19に変換されるが、下部層13の端部に堆積したAl膜17の膜厚は図示の尺度と異なり0.3〜0.5mm程度あるので下部層13の端部に堆積したAl膜17全体が陽極酸化されることはなく、下部層13の端部は常にAl膜17の残部で覆われているので、下部層13が剥離することはない。
【0032】
この場合のポア20のピッチは、
ポアピッチ〔nm〕=陽極酸化時の直流電圧〔V〕×2.5 ・・・(1)
で求められる。
この実施例においては、40Vの電圧で陽極酸化しているので、形成したポアピッチは約100nmとなる。
【0033】
図5参照
次いで、ポアサイズを調整するために、例えば、4%のリン酸21を用いて1分間のポアワイドニングを行うことによって、直径を50nmに拡大したポア23を有するアルマイトポア膜22とする。
【0034】
図6参照
次いで、ACメッキ法により、硫酸塩系のCoメッキ浴中で対向電極との間に10Vの交流電圧を3分間印加して交流メッキを行うことによってCoメッキ膜24を成膜してポア23の内部を強磁性体のCo埋込層25で充填する。
【0035】
図7参照
次いで、CMP法によりアルマイトポア膜22が露出するまで研磨して表面を平坦化処理して、アルマイトポア膜22の表面にあふれたCoメッキ膜24を除去する。
【0036】
次いで、スパッタリング法を用いて厚さが、例えば、5nmのDLCからなる保護膜26を設けるとともに、ディップ法を用いて厚さが、例えば、4nmのフッ素樹脂系の潤滑膜27を塗布することによってアルマイト垂直磁気記録媒体の基本構成が得られる。
【0037】
このように、本発明の実施例1においては、陽極酸化工程において下部層13の端部をAl膜17で被覆しているので、下部層13を構成する軟磁性層15と陽極酸化液18とが接触することがなく、したがって、電気分解反応によって発生する水素に起因する剥離が生ずることがない。
【実施例2】
【0038】
次に、図8及び図9を参照して、本発明の実施例2のアルマイト垂直磁気記録媒体の製造工程を説明する。
なお、実際には基板の表裏両面に同じ構造を形成するものであるが、ここでは、図示を簡単にするために片面のみを断面図として図示・説明する。
【0039】
図8参照
まず、結晶化ガラスからなるHDD媒体基板11上に厚さが、例えば、50nmのTaからなる下地層14、厚さが、例えば、100nmの軟磁性層15、及び、厚さが、例えば、10nmのWからなる中間層16を順次HDD媒体基板11の端面より0.3〜0.5mm程度内側にくるように、マスク12を用いてスパッタ法により形成して下部層13とする。
【0040】
次いで、HDD媒体基板11の全面にスパッタ法を用いて厚さが、例えば、10〜50nm、例えば、20nmのバルブ金属、例えば、Nbからなる酸化停止層31を成膜する。
このとき、下部層13は十分薄いので、下部層13の端面は酸化停止層31に覆われることになる。
【0041】
次いで、HDD媒体基板11の全面にスパッタ法を用いて厚さが、例えば、200nmのAl膜17を成膜する。
【0042】
次いで、例えば、0.3M/lの希硫酸浴からなる陽極酸化液18を用いて中間層16を陽極として対向電極との間に40Vの電圧を1分印加して陽極酸化を行うことによって、Al膜17を酸化するとともに自己組織化されて所定のピッチで配列されたポア20を有するアルマイトポア膜19を形成する。
【0043】
この時、酸化停止層31の酸化による酸化被膜32が生じた時点で陽極酸化は自動的に停止し、陽極酸化液と下部層13とが直接接触することがないので、下部層13の剥離は生じない。
即ち、バルブ金属は、金属自体が酸化されて表面に自己酸化からなる酸化被膜32を形成するが、ある程度の膜厚以上になると酸化が実質的にそれ以上進行しなくなるため、陽極酸化が自動的に停止し、下部層13が露出することはない。
【0044】
図9参照
以降は、上記の実施例1と全く同様に、ポアサイズを調整するために、例えば、4%のリン酸21を用いて1分間のポアワイドニングを行うことによって、直径を50nmに拡大したポア23を有するアルマイトポア膜22とする。
【0045】
次いで、ACメッキ法により、硫酸塩系のCoメッキ浴中で対向電極との間に10Vの交流電圧を3分間印加して交流メッキを行うことによってCoメッキ膜を成膜してポア24の内部を強磁性体のCo埋込層25で充填する。
【0046】
次いで、CMP法によりアルマイトポア膜22が露出するまで研磨して表面を平坦化処理して、アルマイトポア膜22の表面にあふれたCoメッキ膜を除去する。
【0047】
次いで、スパッタリング法を用いて厚さが、例えば、5nmのDLCからなる保護膜26を設けるとともに、ディップ法を用いて厚さが、例えば、4nmのフッ素樹脂系の潤滑膜27を塗布することによってアルマイト垂直磁気記録媒体の基本構成が得られる。
【0048】
このように、本発明の実施例2においては、陽極酸化工程において下部層13の端部をバルブ金属からなる酸化停止層31で被覆しているので、下部層13を構成する軟磁性層15と陽極酸化液18とが接触することがなく、したがって、電気分解反応によって発生する水素に起因する剥離が生ずることがない。
【0049】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載した条件・構成に限られるものではなく、各種の変更が可能であり、例えば、各実施例においてはHDD媒体基板として結晶化ガラスを用いているが、結晶化ガラスに限られるものではなく、サファイア基板を用いても良いし或いは表面を絶縁被覆したAl基板を用いても良いものである。
【0050】
また、上記の各実施例においては、下部層をマスクスパッタ法によって成膜しているが、マスクスパッタ法に限られるものではなく、全面にスパッタ法により堆積させたのち、フォトリソグラフィー工程を用いて下部層の周辺部を選択的に除去して、下部層がHDD媒体基板の端面より0.3〜0.5mm程度内側にくるようにしても良いものである。
【0051】
また、上記の各実施例においては、密着性を改善する下地層としてTaを用いているが、Taに限られるものではなく、Ti或いはNb等を用いても良いものである。
【0052】
また、上記の各実施例においては、軟磁性層としてパーマロイを用いているが、パーマロイに限られるものではなく、他の公知の軟磁性体を用いても良いものである。
【0053】
また、上記の実施例1においては、Al膜を全て酸化してアルマイトポア膜に変換しているが、下部層の側端面及び上表面と接触している部分を薄くAlのままにしておいても良いものである。
【0054】
また、上記の実施例2においては、酸化停止層としてNbを用いているが、Nbに限られるものではなく、Nbと同じバルブ金属に属するTa、Hf、Zr、Zn、W、Bi、或いは、Sbまたはこれらの合金を用いても良いものである。
【0055】
また、上記の各実施例においては、埋込強磁性体としてCoを用いているが、Coに限られるものではなく、CoFe、CoFeB、FePt、CoPt、CoFePt等の強磁性体を用いても良いものである。
【0056】
また、上記の各実施例においては、両面タイプの磁気ディスクとしているが、片面タイプの磁気ディスクの場合にも適用されることは言うまでもない。
【0057】
また、上記の各実施例においては、陽極酸化工程においてハニカム型の六方最密格子状に自己組織化的に発生するため工程は簡単に説明しているが、ポアをより再現性良く自己組織化するためには、二段陽極酸化法或いはインプリント法を用いれば良い。
【0058】
例えば、二段陽極酸化法においては、Al膜を厚く成膜しておき、まず、第1の陽極酸化工程でランダムにポアを発生させ、このポアは底部ではハニカム型の六方最密格子状に自然に収斂していくので、表面部を除去し、この状態で第2の陽極酸化を行うことによってハニカム型の六方最密格子状に自己組織化されたポアがさらに深くエッチングされることになる。
【0059】
また、インプリント法の場合には、Al膜の表面にハニカム型の六方最密格子状の凹部を予めフォトリソグラフィー工程を用いて形成しておき、この状態で陽極酸化することによってこの凹部が深くエッチングされることになる。
【0060】
また、上記の各実施例においては、主表面に堆積したAl膜を完全にアルマイトポア膜に変換しているが、中間層或いは酸化停止層との間にAlが多少残存しても良いものである。
【0061】
また、上記の各実施例においては、下部層を下地層/軟磁性層/中間層の三層構造としているが、このような層構造に限られるものではなく、例えば、軟磁性層/中間層の二層構造としても良いし、或いは、下地層/軟磁性層の二層構造としても良く、下地層/軟磁性層の二層構造とする場合には、軟磁性層を陽極として陽極酸化を行えば良い。
【0062】
ここで再び図1を参照して、本発明の詳細な特徴を改めて説明する。
再び、図1参照
(付記1) 規則的に配列された孔8を有する多孔性非磁性層7と前記孔8に充填された強磁性体材料9からなる磁気記録層6の直下に設ける下部層2の端面が露出しない構造を有することを特徴とする垂直磁気記録媒体。
(付記2) 上記下部層2の端面がAl膜10或いはAl膜10/Al2 3 で覆われていることを特徴とする付記1記載の垂直磁気記録媒体。
(付記3) 上記下部層2の端面がバルブ金属で覆われていることを特徴とする付記1記載の垂直磁気記録媒体。
(付記4) 上記バルブ金属が、上記下部層2と上記磁気記録層6との間にも設けられていることを特徴とする付記3記載の垂直磁気記録媒体。
(付記5) 上記バルブ金属が、Ta、Nb、Hf、Zr、Zn、W、Bi、或いは、Sbまたはこれらの合金のいずれかであることを特徴とする付記3または4に記載の垂直磁気記録媒体。
(付記6) 上記多孔性非磁性層7が、多孔性陽極酸化アルミナであることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1に記載の垂直磁気記録媒体。
(付記7) 上記下部層2が、基板1側から下地層3/軟磁性層4/中間層5の三層構造或いは軟磁性層4/中間層5の二層構造のいずれかであることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1に記載の垂直磁気記録媒体。
(付記8) 基板1上に下部層2を設けたのち、前記下部層2の上表面及び前記下部層2の側端部を被覆するようにAl膜を堆積させ、次いで、前記Al膜を陽極酸化することによって、多孔性陽極酸化アルミナに変換したのち、前記多孔性陽極酸化アルミナに設けられた孔8を強磁性体材料9で充填する工程を備えたことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
(付記9) 基板1上に下部層2を設けたのち、前記下部層2の上表面及び前記下部層2の側端部を被覆するようにバルブ金属膜を堆積させ、次いで、前記バルブ金属膜を被覆するようにAl膜を設けたのち、前記Al膜を陽極酸化することによって、多孔性陽極酸化アルミナに変換し、次いで、前記多孔性陽極酸化アルミナに設けられた孔8を強磁性体材料9で充填する工程を備えたことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
(付記10) 上記孔8を自己組織化法を用いて規則正しい配置パターンで形成することを特徴とする付記8または9に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(付記11) 上記孔8をフォトリソグラフィー工程により規則正しい配置パターンで形成することを特徴とする付記8または9に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の活用例としては、アルマイト垂直磁気記録媒体の剥離防止が典型的なものであるが、アルマイト垂直磁気記録媒体に限られるものではなく、同じように陽極酸化法を用いてナノホールを形成するその他のパターンドメディアの剥離防止法としても適用されることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施例1のアルマイト垂直磁気記録媒体の途中までの製造工程の説明図である。
【図3】本発明の実施例1のアルマイト垂直磁気記録媒体の図2以降の途中までの製造工程の説明図である。
【図4】本発明の実施例1のアルマイト垂直磁気記録媒体の図3以降の途中までの製造工程の説明図である。
【図5】本発明の実施例1のアルマイト垂直磁気記録媒体の図4以降の途中までの製造工程の説明図である。
【図6】本発明の実施例1のアルマイト垂直磁気記録媒体の図5以降の途中までの製造工程の説明図である。
【図7】本発明の実施例1のアルマイト垂直磁気記録媒体の図6以降の製造工程の説明図である。
【図8】本発明の実施例2のアルマイト垂直磁気記録媒体の途中までの製造工程の説明図である。
【図9】本発明の実施例2のアルマイト垂直磁気記録媒体の図8以降の製造工程の説明図である。
【図10】従来のアルマイト垂直磁気記録媒体の製造工程の説明図である。
【図11】アルマイト垂直磁気記録媒体に情報を書き込んだ場合の概念的説明図である。
【図12】陽極酸化工程における剥離現象の説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 基板
2 下部層
3 下地層
4 軟磁性層
5 中間層
6 磁気記録層
7 多孔性非磁性層
8 孔
9 強磁性体材料
10 Al膜
11 HDD媒体基板
12 マスク
13 下部層
14 下地層
15 軟磁性層
16 中間層
17 Al膜
18 陽極酸化液
19 アルマイトポア膜
20 ポア
21 リン酸
22 アルマイトポア膜
23 ポア
24 Coメッキ膜
25 Co埋込層
26 保護膜
27 潤滑膜
31 酸化停止層
32 酸化被膜
41 基板
42 下地軟磁性層
43 下地電極層
44 Al膜
45 陽極酸化液
46 アルマイトポア膜
47 ポア
48 強磁性体
49 磁気記録層
50 保護膜
51 潤滑膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則的に配列された孔を有する多孔性非磁性層と前記孔に充填された強磁性体材料からなる磁気記録層の直下に設ける下部層の端面が露出しない構造を有することを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
上記下部層の端面がAl膜或いはAl膜/Al2 3 で覆われていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項3】
上記下部層の端面がバルブ金属で覆われていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項4】
上記多孔性非磁性層が、多孔性陽極酸化アルミナであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項5】
上記下部層が、基板側から下地層/軟磁性層/中間層の三層構造或いは軟磁性層/中間層の二層構造のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−26531(P2007−26531A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206523(P2005−206523)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人科学技術振興機構、「ナノホール垂直パターンドメディアの開発に関する研究」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505088765)株式会社山形富士通 (14)
【Fターム(参考)】