説明

型枠吊り上げ用具

【課題】木製型枠などの型枠の吊り上げ作業を簡単に行えるようにした型枠吊り上げ用具を提供する。
【解決手段】一対のバー10、11の両端部の挿通穴にロッド12を螺進退可能に挿通する。一対のバーの両端部をパネル21から突出させて両バーによってパネルとフレーム22を挟む。ハンドル14によってロッド12を回転操作することによって対向するバーの間隔を狭め、型枠20のパネル21とフレーム22を強圧保持する。一方のロッド中央のフック受け15にフック30を引っ掛けてクレーンなどによって吊り上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は型枠吊り上げ用具に関し、特に木製型枠などの型枠の吊り上げ作業を簡単に行えるようにした吊り上げ用具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート躯体を構築する場合、一対の型枠を対向して起立させ、型枠パネルに設けた穴にセパレータを挿通して型枠の間隔を一定に保持するとともに、型枠背面に鋼管端太などを設けて型枠の倒れを防止し、組み立てた型枠間にコンクリートを打設することが行われる。
【0003】
ところで、型枠には鋼製型枠と木製型枠とがある。鋼製型枠の場合、型枠側端面に連結リングを設け、クレーン等から吊り下げたチェーンの先端フックを連結リングに引っ掛けて吊り上げることができる(特許文献1)。
【0004】
他方、木製型枠の場合、眼鏡ボルトを型枠にねじ込んで利用すると、強度的に弱くて何度も吊り上げることが難しく、セパレータ用の挿通穴に吊り上げ用の治具を挿通し、ナットによって締め付け、この治具にチェーンの先端フックを引っ掛けて吊り上げることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−60138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の方法では降ろした木製型枠から吊り上げ用の治具を1つずつ外す必要があって作業が煩わしいという問題があった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、木製型枠などの型枠の吊り上げ作業を簡単かつ確実に行えるようにした型枠吊り上げ用具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係る型枠吊り上げ用具は、パネルの上側縁及び下側縁をフレームで補強してなる型枠を吊り上げるための用具であって、両端部に挿通穴が形成され、両端部を上記パネルから突出させて上記パネルとフレームをその正面及び背面の両側から挟む一対のバーと、該一対のうちの少なくとも一方のバーに取付けられ、吊り上げるためのフックが引っ掛けられるフック受けと、上記一対のうちの一方のロッドの両端部の挿通穴に設けられた雌ねじ部と、上記一対のうちの他方のバーの両端部の挿通穴に回転自在に挿通され、先端部に雄ねじが形成され、後端に抜止め部が形成され、上記雄ねじが上記一方のバー両端の雌ねじ部に螺合され、上記パネルとフレームを強圧保持する一対のロッドと、該ロッドの後端部に設けられて上記ロッドを回転操作することによって対向するバーの間隔を狭めるハンドルと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴の1つは型枠を一対のバーで挟んで強圧保持するようにした点にある。これにより、型枠を一対のバーによって強圧挟持して確実に保持できるので、木製型枠だけでなく、重い鋼製型枠も確実に吊り上げることができる。
【0010】
また、ハンドル操作によって一対のバーの間に型枠を強圧挟持しているので、ハンドルを逆転操作すればバーを簡単に外すことができ、セパレータ用の挿通穴に治具を挿通してナットで締め付ける場合のような作業の煩わしさがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る型枠吊り上げ用具の好ましい実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】上記実施形態の使用例を示す図である。
【図3】他の実施形態における雌ねじの取付け方法を模式的に示す図である。
【図4】上記実施形態における雌ねじとロッドとの螺合状態を説明するための図である。
【図5】さらに他の実施形態を示す概略斜視図である。
【図6】上記実施形態における組立前の状態を示す拡大斜視図である。
【図7】上記実施形態における要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は本発明に係る型枠吊り上げ用具の好ましい実施形態を示す。図において、型枠吊り上げ用具は一対のバー10、11を備え、バー10、11はその両端部が型枠20のパネル21の高さ方向の両側に突き出る長さの角パイプによって構成されている。
【0013】
バー10、11の両端部には挿通穴10A、11Aが形成され、一方のバー11内部には挿通穴11Aの周縁にナット(雌ねじ部)13及び座金13Aが溶接によって固定されている。
【0014】
また、他方のバー10の挿通穴10Aには六角ボルト製のロッド12が挿通され、ロッド12の先端部は一方のバー11の溶接ナット13に螺合されており、これによって吊り上げ用具は分解組立て可能となっている。
【0015】
また、ロッド12は一対のバー10、11を型枠20を挟持したときにその先端が一方のバー11の背面側に突き出ない長さに設定されており、吊り上げ作業時にロッド12の先端部がバー11から突き出て他の構造物などに引っ掛からないようになっている。
【0016】
また、ロッド12の頭部12Aにはロッド12を螺進退させるためのハンドル14が取付けられている。このハンドル14の先端部14AはU字状に形成されている一方、ロッド12の頭部12Aには取付け金具12Bが溶接などによって固定され、ハンドル14の先端部14Aはロッド12の取付け金具12Bにかぶせられ、両者の挿通穴に連結ピン12Cが挿通されて抜け止めされることによってロッド12の頭部12Aにハンドル14が連結ピン12C回りに回転可能に連結されている。
【0017】
また、バー10の中央にはクレーンなどから吊り下げられたチェーン31のフック30を引っ掛けるためのフック受け15が固定されている。
【0018】
鋼製型枠20は鋼製パネル21の上下両側に鋼製角パイプ製のフレーム22が固定されて補強されている。
【0019】
型枠20を吊り上げる場合、図2に示されるように、一対のバー10、11の間に型枠20のパネル21及びフレーム22を挿入し、両側のハンドル14を交互に回転させながら、バー10、11の間隔を狭め、バー10、11によってパネル21及びフレーム22を挟み込むことができると、ハンドル14を更に回転させ、バー10、11によってパネル21及びフレーム22を強圧させると、バー10、11によって型枠20を保持することができる。
【0020】
そこで、クレーンなどから延びるチェーン31のフック3をバー10のフック受け15に引っ掛けると、型枠20を安全かつ確実に吊り上げることができる。
【0021】
型枠20を所定の場所に運び、降ろした後、ハンドル14を逆転操作すると、バー10、11の間隔が広がり、型枠20をバー10、11の間から外すことができる。
【0022】
また、本例の吊り上げ用具はロッド12を溶接ナット13から外すことによって分解できるので、保管時や輸送時には吊り上げ用具を分解してコンパクトにして保管し輸送することができる。
【0023】
図3及び図4は第2の実施形態を示す。本例では座金33Aに雌ねじ部材33が溶接などによって固定され、座金33Aには挿通穴の周囲に4つのねじ穴33Cが形成され、雌ねじ部材33の下端には小径部33Eが形成されている。他方、バー11の一方の壁面には挿通穴11Dが形成され、その周囲には4つのねじ挿通穴11Eが形成され、バー11の他方の壁面には小径の挿通穴11Fが形成されている。
【0024】
雌ねじ部材33は挿通穴11D及び座金33Bの挿通穴を挿通して小径の挿通穴11Fに差し込まれ、座金33A、33Bのねじ穴33Cにはバー11のねじ挿通穴11Eを挿通してねじ33Dが螺合されて締め付けられることによって雌ねじ部材33がバー11に固定されている。
【0025】
ロッド12の先端には小径部12Eが形成され、小径部12Eにはストッパーリング12Fが外嵌されており、ロッド12がバー10を挿通してバー11の雌ねじ部材33に螺合され、ストッパーリング12Fが雌ねじ部材33の雌ねじの前方部位の段部と当接することによって抜け止めされるようになっている。
【0026】
なお、上記では鋼製型枠を吊り上げる場合について説明したが、木製型枠も同様に吊り上げることができる。
【0027】
また、上記ではバー11内部にナット13を溶接するようにしたが、バー11の挿通穴11Aに雌ねじを刻設するようにしてもよい。
【0028】
図5ないし図7はさらに他の実施形態を示し、図において図1及び図2と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではバー10、11の内側面にはゴム製シートが貼着され、一方のバー11の挿通穴11A内部にはナット(雌ねじ部)13が溶接によって固定されている。
【0029】
他方のバー10の挿通穴10Aには六角ボルト製のロッド12が挿通され、ロッド12の先端部は一方のバー11のナット13に螺合されている一方、ロッド12の頭部12Aはソケット16に嵌め込まれて廻り止めされ、さらにソケット16にはハンドル14の先端球部14Aが嵌め込まれ、ソケット16及びハンドル14の球部14Aの挿通穴16A、14Bには連結ピン12Cが挿通されて抜止めリングなどの嵌め込みによって抜け止めされており、これによって吊り上げ用具は分解組立て可能となっている。
【0030】
また、一方のバー11の端部にはワイヤーがビス止めされ、ワイヤーの先端にはリング17が固定され、リング17はバー10を挿通したロッド12の雄ねじに嵌め合わされ、ロッド12がバー11のナット13から外れたときにリング17がロッド12の雄ねじに引っ掛かってバー11が不意に外れないようにしている。
【符号の説明】
【0031】
10、11 バー
10A、11A 挿通穴
12 ロッド
13 ナット
14 ハンドル
15 フック受け
20 型枠
21 パネル
22 フレーム
30 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル(21)の上側縁及び下側縁をフレーム(22)で補強してなる型枠(20)を吊り上げるための用具であって、
両端部に挿通穴(10A、11A)が形成され、両端部を上記パネル(21)から突出させて上記パネル(21)とフレーム(22)をその正面及び背面の両側から挟む一対のバー(10、11)と、
該一対のうちの少なくとも一方のバー(10)に取付けられ、吊り上げるためのフック(30)が引っ掛けられるフック受け(15)と、
上記一対のうちの一方のロッド(11)の両端部の挿通穴(11A)に設けられた雌ねじ部(13)と、
上記一対のうちの他方のバー(10)の両端部の挿通穴(10A)に回転自在に挿通され、先端部に雄ねじが形成され、後端に抜止め部(12A)が形成され、上記雄ねじが上記一方のバー両端の雌ねじ部(13)に螺合され、上記パネル(21)とフレーム(22)を強圧保持する一対のロッド(12)と、
該ロッド(12)の後端部に設けられて上記ロッド(12)を回転操作することによって対向するバー(10、11)の間隔を狭めるハンドル(14)と、
を備えたことを特徴とする型枠吊り上げ用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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