説明

埃検知装置

【課題】電気機器に堆積する埃を早期に検知して機器の損傷を可能な限り減らす埃検知装置を提供する。
【解決手段】電子機器12に取付けて使用する埃検知装置10であって、電子機器10の基板に対となる第1、第2の電極13、14を小間隔かつ露出状態で配置し、第1、第2の電極13、14間の抵抗Rを監視手段15で監視し、抵抗Rが一定値以下になった場合に警報出力を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の内部に侵入する埃を検知し、漏電等による事故を未然に防止可能な埃検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常大電力を用いる生産設備は、操業時に発生する電力損失による温度上昇を冷却ファンによって防いでいる。このため、冷却ファンが設備周囲の埃を吸い込み、電源設備に堆積していく。この堆積した埃は高湿度状態において、設備を損傷させることがある。
【0003】
この具体例を、図7を参照しながら説明すると、整流回路60には通常平滑用のコンデンサ61が設けられ直流出力の安定化を図っているが、一次側の電力を遮断してもコンデンサ61に電荷が残り危険であるので、放電回路62が設けられている。この放電回路62は、直流出力側に接続された放電抵抗63〜66、制限抵抗70、FET67、及び押しボタンスイッチ71からなり、一次側の電源を落とした場合には、FET67のゲートに制限抵抗70及び押しボタンスイッチ71(即ち、押しボタンスイッチ71を押して)から信号を加えてFET67をオンにし、コンデンサ61の電荷を短時間で放電抵抗63〜66を通じて放電させている。
【0004】
ところが、露出したFET67の端子の周囲に吸い込んだ埃が溜まり、湿度が上がるとFET67のドレインとゲートの間を抵抗68で繋いだ状態となり、FET67がオンとなって、放電抵抗63〜66を通じて整流された電流が常時流れることになる。通常、放電抵抗63〜66及びFET67は、コンデンサ61の残留電荷を放電させる容量しか持たないので、継続的にFET67がオンになると、これらが焼損する危険性がある。
従来、埃に関する出願として、例えば、特許文献1には、塵や埃を検出する装置が提案され、空気中に飛散する埃の微粒子に光を当てて、その屈折光を測定して埃を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開平9−89755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、空気中に飛散する埃を検知するもので、堆積した埃は検知できないという問題がある。そこで、本発明者は、埃の状況と湿度の関係を計測し、堆積した埃が湿れば電気抵抗が小さくなることに注目して、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、電気機器に堆積する埃を早期に検知して機器の損傷を可能な限り減らす埃検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る埃検知装置は、電子機器に取付けて使用する埃検知装置であって、前記電子機器の基板に対となる第1、第2の電極を小間隔(隙間を有して)かつ露出状態で配置し、前記第1、第2の電極間の抵抗を監視手段で監視し、前記抵抗が一定値以下になった場合に警報出力を発する。
【0009】
第1の発明に係る埃検知装置において、前記監視手段は、コンパレータであるのが好ましい。なお、コンパレータ(比較器)とは、基準値(例えば、電圧、抵抗)と測定対象値を比較して、測定対象値が基準値を超えた場合、又は基準値より下回った場合、出力を発生する装置をいう。
【0010】
第2の発明に係る埃検知装置は、電子機器に取付けて使用する埃検知装置であって、前記電子機器の基板に対となる第1、第2の電極を小間隔かつ露出状態で配置し、前記第1、第2の電極間の抵抗を測定し、A/D変換して監視用のパソコンに送っている。パソコンでは情報処理を行い、第1、第2の電極間の抵抗値から埃及び湿度の状況を判断し、警報を発する等の処理を行う。
【0011】
第1、第2の発明に係る埃検知装置において、前記電子機器は電池の充放電装置であるのが好ましく、特に、出力側にコンデンサが設けられているものに適用するのがよい。
第1、第2の発明に係る埃検知装置において、湿度センサーが併せて設けられ、前記湿度センサーによって検知した周囲の湿度が設定値以上若しくは急激に変化した場合は、前記警報出力とは別の警報出力(第2の警報出力)を発するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係る埃検知装置においては、電子機器の基板に対となる第1、第2の電極を小間隔かつ露出状態で配置し、第1、第2の電極間の抵抗を監視手段で監視しているので、湿度によって変化する埃の状況を把握でき、危険な状態となった場合は、警報を発することができる。これによって、埃に起因する回路の焼損等の事故を未然に対処できる。
【0013】
第2の発明に係る埃検知装置においては、電子機器の基板に対となる第1、第2の電極を小間隔かつ露出状態で配置し、第1、第2の電極間の抵抗を測定し、A/D変換して監視用のパソコンに送っているので、埃の量と湿度によって決まる第1、第2の電極間の抵抗値をパソコンでデータ処理でき、事故の発生を未然に防止できる。
特に、第1、第2の発明に係る埃検知装置において、湿度センサーを併せて設けた場合は、周囲の湿度を埃による抵抗値変化よりも早く検知できるので、より早く事故の発生を予見できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る埃検知装置の取付け状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る埃検知装置の取付け状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1、第2の実施の形態に係る埃検知装置に使用する監視手段の回路の第1例である。
【図4】本発明の第1、第2の実施の形態に係る埃検知装置に使用する監視手段の回路の第2例である。
【図5】本発明の第1、第2の実施の形態に係る埃検知装置に使用する監視手段の回路の第3例である。
【図6】埃と湿度との関係を示すグラフである。
【図7】従来例に係る電子機器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る埃検知装置10は、大電力制御用のFET11を有する電子機器(例えば、電池の充放電装置、図7参照)12に設けられ、それぞれ接続端子からなる対となる第1、第2の電極13、14と、第1、第2の電極13、14間の抵抗を監視する監視手段の第1例であるコンパレータ15と、湿度センサー15aを有した湿度検知器16aを有している。第1、第2の電極13、14は、電子機器12の基板に小間隔(例えば、2〜15mm)かつ露出状態で配置されている。
【0016】
コンパレータ15は、図3に示すように、オペアンプ(差動アンプ)16を使用し、抵抗17、18によって分圧された基準電圧Vsより、埃検出部20を構成する第1、第2の電極13、14間の抵抗Rと抵抗21によって分圧された電圧Vd1が、高くなった場合に、出力端子22に出力を発生するようになっている。この出力端子22の出力は、リレー等に接続されて、警報出力を外部に発生するようになっている。
【0017】
別の例に係るコンパレータ24(監視手段の第2例)を図4に示すが、同じくオペアンプ(差動アンプ)16を使用し、抵抗17、18によって分圧された基準電圧Vsより、抵抗25と埃検出部20を構成する第1、第2の電極13、14間の抵抗Rとによって分圧された電圧Vd2が低くなった場合に、出力端子26に出力を発生するようになっている。この出力端子26の出力は、リレー等に接続されて、警報出力を外部に発生するようになっている。
そして、湿度センサー15aは周囲の湿度を検知し、内部に含まれる湿度検知器16aに設けられた設定器(コンパレータを使用している)によって設定された湿度より高くなると、第2の警報出力(即ち、別の警報出力)を発するようになっている。
【0018】
図5は監視手段の第3例を示すが、埃検出部20の抵抗Rに直列に抵抗28を接続して、その分圧Vd3を検知し、バッファアンプ29で必要レベルに増幅した後、A/Dコンバータ30を介してA/D変換して、デジタル信号として図示しない監視用のパソコンに送っている。パソコンでは、内部にコンパレータを有して、埃検出部20の抵抗Rが予め決められた所定値よりも小さくなった場合は、所定の警報信号を出力している。
パソコンを用いる場合には、埃検出部20の抵抗Rを経時的に監視することができる。
【0019】
図2には、本発明の第2の実施の形態に係る埃検知装置32を示すが、プリント基板33の上に電子回路34が設けられ、これらの入出力端子35がプリント基板33の下部に設けられている。そして、プリント基板33の下部には、入出力端子35とは別に接続端子となる第1、第2の電極36、37が設けられている。この第1、第2の電極36、37は埃検知部を構成し、この抵抗Rを前記した監視手段によって検知し、抵抗Rが基準値より下がった場合には、警報を発するようにしている。
【0020】
図6は、例えば間隔3mmで設定した第1、第2の電極13、14間の抵抗Rと、湿度の関係を示すが、湿度が73%になると、抵抗Rが5MΩとなっている。湿度は経過時間に沿って30〜90%に設定した。なお、埃の積層値は約1mmであった。抵抗Rが5MΩ以下になると、回路の動作に異常が発生する場合が多いので、1〜10MΩ(好ましくは、5〜10MΩ)程度で動作するようにするのが好ましい。
【0021】
前記実施の形態においては具体的に数字を用いて説明したが、本発明の要旨を変更しない範囲での数値変更、設計変更を行うことは可能である。
また、前記実施の形態においては、電池の充放電装置向けで説明したが、一般的な電気設備に対しても本発明は適用される。
【符号の説明】
【0022】
10:埃検知装置、11:FET、12:電子機器、13:第1の電極、14:第2の電極、15:コンパレータ、15a:湿度センサー、16a:湿度制御器、16:オペアンプ、17、18:抵抗、20:埃検出部、21:抵抗、22:出力端子、24:コンパレータ、25:抵抗、26:出力端子、28:抵抗、29:バッファアンプ、30:A/Dコンバータ、32:埃検知装置、33:プリント基板、34:電子回路、35:入出力端子、36:第1の電極、37:第2の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に取付けて使用する埃検知装置であって、前記電子機器の基板に対となる第1、第2の電極を隙間を有して露出状態で配置し、前記第1、第2の電極間の抵抗を監視手段で監視し、前記抵抗が一定値以下になった場合に警報出力を発することを特徴とする埃検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の埃検知装置において、前記監視手段は、コンパレータであることを特徴とする埃検知装置。
【請求項3】
電子機器に取付けて使用する埃検知装置であって、前記電子機器の基板に対となる第1、第2の電極を隙間を有して露出状態で配置し、前記第1、第2の電極間の抵抗を測定し、A/D変換して監視用のパソコンに送ることを特徴とする埃検知装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の埃検知装置において、前記電子機器は電池の充放電装置であることを特徴とする埃検知装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の埃検知装置において、湿度センサーが併せて設けられ、前記湿度センサーによって検知した周囲の湿度が設定値以上となった場合は、前記警報出力とは別の警報出力を発することを特徴とする埃検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−7716(P2013−7716A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142000(P2011−142000)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000233697)株式会社日鉄エレックス (51)
【Fターム(参考)】