説明

埋め込み導電性裏面コーティングを有する熱現像可能材料

フォトサーモグラフィおよびサーモグラフィ材料を含む熱現像可能材料は、1つ以上のバインダポリマを含み、その中に、少なくとも2つのタイプの導電性材料、(1)1つ以上の導電性金属化合物のナノ粒子、および(2)1つ以上の有機溶媒可溶性無機アルカリ金属塩帯電防止化合物のそれぞれが分散されている埋め込み導電性裏面層を有する。これらの埋め込み導電性裏面コーティングは、湿度による影響が最低限度である導電性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み導電性裏面コーティングを有する熱現像可能材料およびこれらの材料を用いて画像化する方法に関する。特に本発明は、サーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱を用い、液体処理なしで画像形成および/または現像をする、銀を含有する直接のサーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ画像形成材料(すなわち熱現像可能な画像形成材料)は、長年にわたって当技術分野では知られている。
【0003】
銀を含有する直接のサーモグラフィ画像形成材料は、処理液なしで熱エネルギを直接適用することによって画像が生み出される記録方法において使用される非感光性材料である。これらの材料は一般に、支持体を含んでおり、そこには、(a)比較的または完全に非感光性の被還元性銀イオン源、(b)その被還元性銀イオンのための還元性組成物(白黒の銀現像剤として作用する)、および(c)適切なバインダが配置されている。サーモグラフィ材料は、それらが画像または画像形成性材料の別の要素への転写(例えば色素熱転写におけるような)は少しもなく、熱エネルギ源によって直接画像形成されるために当技術分野では時に「ダイレクトサーマル」材料と呼ばれる。
【0004】
典型的なサーモグラフィ構造においては、画像形成サーモグラフィ層は、長鎖脂肪酸の非感光性被還元性銀塩を含む。好ましい非感光性の被還元性銀源は、10〜30個の炭素原子数を有する長鎖脂肪族カルボン酸、例えばベヘン酸または同様の分子量の酸の混合物の銀塩である。高温において、カルボン酸銀塩の銀は、銀イオンに対する還元剤(現像剤としても知られる)によって還元され、これにより、元素としての銀が形成される。好ましい還元剤としては、没食子酸メチル、ヒドロキノン、置換型ヒドロキノン類、ヒンダードフェノール類、カテコール類、ピロガロール、アスコルビン酸、およびアスコルビン酸誘導体が挙げられる。
【0005】
いくつかのサーモグラフィ構造は、これらの構造を、サーモグラフィ記録装置のサーマルヘッド、例えばサーマルプリンタまたはサーマルファクシミリのサーマルヘッドと接触させることにより、画像が形成される。このような構造においては、利用される装置のサーマルヘッドに対するサーモグラフィ構造の付着を防止するために画像形成層の上側に付着防止層をコートする。次いで、その結果生じたサーモグラフィ構造を高温、一般的には60℃〜225℃の範囲に像様に加熱し、その結果として白黒の銀の画像が形成される。
【0006】
化学線により画像形成し、次いで熱を用い、処理液なしで現像する銀含有フォトサーモグラフィ画像形成材料(すなわち感光性熱現像可能な画像形成材料)もまた、長年にわたって当技術分野では知られている。かかる材料は、フォトサーモグラフィ材料の像様露光を特定の電磁線(例えばX線、もしくは紫外線、可視光、または赤外線)に対して施すことにより画像を形成し、熱エネルギの使用により現像するような記録方法において使用される。これらの材料は、「ドライシルバ」材料としても知られており、一般に、そこに(a)上記露光の際に露光された粒子に潜像を提供し、これが現像ステップにおけるその後の銀画像を形成するための触媒として作用することができる光触媒(すなわちハロゲン化銀のような感光性化合物)、(b)比較的または完全に非感光性の被還元性銀イオン源、(c)被還元性銀イオンのための還元性組成物(通常は現像剤を含む)、および(d)バインダ、がコートされている支持体を含む。この潜像は次いで熱エネルギを加えることにより現像される。
【0007】
フォトサーモグラフィ材料において、感光性ハロゲン化銀の露光は、銀原子(Agを含有する小さい塊を生ずる。技術的には潜像として知られるこれらの塊の像様分布は、通常の手段によっては一般に見ることはできない。従って、感光性材料は、可視画像を生ずるためにさらに現像しなければならない。これは、潜像の銀を含む塊を持つハロゲン化銀粒子に触媒的に接近した状態の銀イオンの還元によって達成することができる。これによって白黒の画像が形成される。非感光性銀源は、触媒的に還元されて可視性の白黒の銀のネガティブ画像を形成し、一方ハロゲン化銀の多くは、一般に、ハロゲン化銀として残り、還元されない。
【0008】
フォトサーモグラフィ材料において、しばしば「現像剤」と呼ばれる被還元性銀イオンのための還元剤は、潜像の存在下で銀イオンを金属銀に還元することができ、好ましくは、反応を引き起こすのに十分な温度に加熱されるまでは活性が比較的低い任意の化合物であり得る。フォトサーモグラフィ材料のための現像剤として機能する多種多様な種類の化合物が、文献に開示されている。加熱と同時に、高温において、被還元性銀イオンは還元剤によって還元される。この反応は、潜像を取り囲む領域内に優先的に発生する。この反応は、(1つ以上の)画像形成層内の調色剤およびその他の成分の存在に応じて、黄色から濃い黒までの範囲の色を有する金属銀のネガティブ画像を形成する。
【0009】
<フォトサーモグラフィと写真との違い>
画像形成業者は以前より、フォトサーモグラフィ分野は写真分野とは明らかに区別されることを認識している。フォトサーモグラフィ材料は、水性処理溶液による処理を必要とする従来のハロゲン化銀写真材料とは著しく異なる。
【0010】
フォトサーモグラフィ画像形成材料において、可視画像は、処理液の存在しない中で、材料内に組み込まれた還元剤の反応の結果としての熱によって形成される。この乾式現像については50℃以上での加熱が必要である。対照的に、従来の写真画像形成材料は、可視像を提供するために、より穏やかな温度(30℃〜50℃)の水性処理浴内で処理することを必要とする。
【0011】
フォトサーモグラフィ材料においては、光を取り込むためのハロゲン化銀は少量しか使用せずに、熱現像を用いて可視像を発生させるために、非感光性の被還元性銀イオン源(例えばカルボン酸銀塩または銀ベンゾトリアゾール)を使用する。このように、画像形成される感光性ハロゲン化銀は、非感光性の被還元性銀イオン源および組み込まれた還元剤を必要とする物理的現像のための触媒として役立つ。対照的に、従来の湿式処理型白黒写真材料は銀の1形態(すなわちハロゲン化銀)のみを使用する。この銀形態は、化学的現像時には、それ自体が少なくとも部分的に銀画像に変換され、または物理的現像時には、外部銀源(または、対応する金属に還元されると黒画像を形成する他の被還元性金属イオン)の添加を必要とする。このように、フォトサーモグラフィ材料が必要とする単位面積当りのハロゲン化銀の量は、従来の湿式処理型写真材料中に使用される量のわずかな割合に過ぎない。
【0012】
フォトサーモグラフィ材料においては、画像形成のための「化学物質」のすべてが、材料自体の中に組み込まれる。例えば、このような材料は現像剤(すなわち、被還元性銀イオンのための還元剤)を含むのに対して、従来の写真材料は通常これを含まない。フォトサーモグラフィ材料内に還元剤を組み込むことにより、様々なタイプの「カブリ(fog)」またはその他の望ましくないセンシトメトリックな副作用の形成が増大する恐れがある。従って、これらの問題を最小限に抑えるべく、フォトサーモグラフィ材料の調製および製造には多大の努力が注がれている。
【0013】
さらに、フォトサーモグラフィ材料の場合、未露光のハロゲン化銀は一般に、現像後に無傷のまま残り、材料はさらなる画像形成および現像に対して安定化しなければならない。対照的に、ハロゲン化銀は、溶液現像後に従来の写真材料から除去され、さらなる画像形成は防止される(すなわち水性定着ステップにおいて)。
【0014】
フォトサーモグラフィ材料は乾式熱処理を必要とするために、従来の湿式処理型ハロゲン化銀写真材料と比較して、明らかに異なる問題を示し、製造時および使用時に異なる材料を必要とする。従来のハロゲン化銀写真材料においてある効果を有する添加剤は、内在する化学反応が著しくより複雑なフォトサーモグラフィ材料中に組み込まれると、全く異なった挙動を示すことがあり得る。従来の写真材料における例えば安定剤、カブリ防止剤、スピード促進剤、超色増感剤(supersensitizer)、ならびに分光増感剤および化学増感剤のような添加剤を組み込んでも、このような添加剤がフォトサーモグラフィ材料において有益であるか有害であるかは予測できない。例えば、従来の写真材料において有用な写真カブリ防止剤がフォトサーモグラフィ材料中に組み込まれると様々のタイプのカブリを引き起こすこと、または、写真材料において効果的な超色増感剤が、フォトサーモグラフィ材料中では不活性であることは珍しいことではない。
【0015】
フォトサーモグラフィ材料と写真材料とのこれらの違いおよびその他の違いは、「Unconventional Imaging Processes」、E.ブリンクマンら(編)、The Focal Press、ロンドンおよびニューヨーク、1978年、74〜75頁;D.H.クロスタボーア、「Imaging Processes and Materials」、(Nebletteの第8版)、J.スタージ、V.ウォルワース、およびA.シェップ編、Van Nostrand−Reinhold、ニューヨーク、1989年、第9章、279〜292頁;ゾウら、J.Imaging Sci.Technol.、1996年、40、94〜103頁、およびM.R.V.サーユン、J.Imaging Sci.Technol.1998年、42、23に記載されている。
【0016】
<解決すべき問題>
フォトサーモグラフィおよびサーモグラフィ材料は、1つ以上の裏面(非画像形成面)層のあるものが何年間も設計され、商品化されてきた。そのような層は、導電(または帯電防止)特性、ハレーション防止特性、保護性、ならびに改良された機械による供給および輸送特性を含む様々な機能特性を有するように設計される。改良された機能特性を備えた裏面層を提供するためならびに製造および部品コストを低減するための努力が継続している。
【0017】
熱現像可能な材料中の支持体または支持された層を製造するために使用される多くの化学物質は、電気絶縁特性、および製造、包装および使用中にその材料にしばしば蓄積される静電荷を有する。蓄積された電荷は様々な問題を引き起こし得る。例えば、感光性ハロゲン化銀を含有するフォトサーモグラフィ材料において蓄積された静電荷はハロゲン化銀が敏感に反応する光を発生し得る。これは、画像が医学的診断のために使用される場合は特に問題となる画像欠陥をもたらし得る。
【0018】
静電荷の蓄積は、また、熱的に処理できる材料のシートをくっつけて、処理装置内での送り誤り(misfeed)および詰り(jamming)を引き起こす原因となり得る。さらには、蓄積された静電荷は、ほこりまたはその他の粒子状物質をその材料に引き付け、それによって処理装置を通る迅速な輸送および高品質の画像を確保するために、より多くの掃除が必要となる。
【0019】
静電荷の蓄積は、また、画像化した材料の現像したシートの取り扱いをより困難にする。例えば、X線技師は、ライトボックスを見るために静電気が起きないシートを必要とする。この問題は、長期間保存した画像化フィルムを見直すとき、多くの帯電防止材料は時間が経つとそれらの効果を失うために特に厳しいことがあり得る。
【0020】
一般に、静電荷の蓄積は、表面抵抗率[オーム/スクエアの対数(log ohm/sq)で測定]および電荷減衰の速度と関係する。帯電制御剤(「帯電防止剤」または「静電防止剤」としても知られる)を画像形成材料の任意の層に含めることができるが、静電荷の蓄積は、表面抵抗率を減少することによるか電荷レベルを低下することによって防止することができる。これらの結果は、保護膜などの表面層中または埋め込み層中に電荷制御剤を含めることによって殆どの場合達成することができる。熱処理ができる材料においては、電荷制御剤を、画像形成層としての支持体の反対側にある裏側の層の中に使用すればよい。
【0021】
上記のような画像形成材料中で使用するための多くの導電性化合物が記載されている。しかしながら、文献から単純に選択して、特定タイプの画像形成材料中で使用するための帯電防止用組成物中にそれを含めることは一般に不可能である。各コーティング成分によって影響され、所望の導電性が得られても他の特性が悪影響を受ける可能性のある非常に多くの要因および特性が存在する。できるだけ多くの望ましい特性を達成する最良の導電性化合物を見出すためには、産業界の研究者による注意深い均衡の取れた活動が必要である。すべての望ましい特性を達成するための最適化は、大抵は定常業務を超えるものである。
【0022】
例えば、非極性有機溶媒からコートした疎水性バインダ中の「埋め込み」導電性裏面層において役立つためには、導電性化合物は、一般に、疎水性バインダと相溶性であり、オーバーコート層中の成分に有害な影響がなく、オーバーコート層または隣接する層の中への移行はごくわずかであり、裏面に発生させるヘーズは最小であり、湿度の変化によって相対的に変動しない1012ohm/sq未満の対数抵抗率を提供しなければならない。さらに、その導電性材料は、ポリマ支持体とオーバーコート層またはアンダーコート層の間の接着を損なってはならない。それはすぐに電荷を消散し、100秒以下(好ましくは25秒以下)の静電気減衰時間を有さなければならない。
【0023】
好ましくは、その導電性材料は、オーバーコート層上に、白化(blush)、汚れ(smearing)、またはコーティングの空隙などの表面のむらを引き起こしてはならず、熱現像可能な材料のその他の裏面層中のポリマバインダまたはその他の材料と、保存、画像形成、現像、または現像後の保存中に反応してはならない。
【0024】
多種多様の有機および無機の電荷制御剤が考案されており、帯電制御のために使用されている。例えば、金属酸化物が、米国特許第5,340,676号(アンダーソン他)、同第5,368,995号(クリスチャン他)、同第5,457,013号(クリスチャン他)、同第6,464,413号(小山田)、および同第5,731,119号(エイコースト他)における導電層中に記載されている。
【0025】
米国特許第6,355,405号(ルーデマン他)は、支持体の両側に非常に薄い接着促進層を含む熱現像可能材料を記載している。これらの接着促進層は、「キャリヤ」層としても知られている。米国特許第6,689,546号(ラベル他)は、非針状のアンチモン金属粒子を含む埋め込み導電性裏面「キャリヤ」層を含有する熱現像可能な材料を記載している。
【0026】
様々なフルオロケミカルが、例えば、米国特許第5,674,671号(ブランドン他)、同第6,171,707号(ゴメツ他)、同第6,287,754号(メルポルダー他)、および同第6,699,648号(サキザデー他)に記載されているように、表面静電荷の発生を減少させるために使用されている。そのようなフッ素化有機塩を製造するために有用なポリオキシアルキレンアミン類としては、JEFFAMINE(登録商標)化合物(Huntsman Corp.から現在入手可能)が挙げられる。そのような帯電制御剤の1つは、米国特許第4,975,363号(カバロ他)において化合物1として記載されているポリオキシアルキレンアミンのペルフルオロオクチルスルホニル(PFOS)塩である。
【0027】
米国特許第6,811,724号(マジュムダール他)および米国特許出願公開第2005/0006629号(マジュムダール他)は、帯電防止層中のポリエチレンエーテルグリコールと硝酸リチウムの組合せの使用を記載している。
【0028】
【特許文献1】米国特許第5,340,676号明細書
【特許文献2】米国特許第5,368,995号明細書
【特許文献3】米国特許第5,457,013号明細書
【特許文献4】米国特許第6,464,413号明細書
【特許文献5】米国特許第5,731,119号明細書
【特許文献6】米国特許第6,355,405号明細書
【特許文献7】米国特許第6,689,546号明細書
【特許文献8】米国特許第5,674,671号明細書
【特許文献9】米国特許第6,171,707号明細書
【特許文献10】米国特許第6,287,754号明細書
【特許文献11】米国特許第6,699,648号明細書
【特許文献12】米国特許第4,975,363号明細書
【特許文献13】米国特許第6,811,724号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2005/0006629号明細書
【非特許文献1】「Unconventional Imaging Processes」、E.ブリンクマンら(編)、The Focal Press、ロンドンおよびニューヨーク、1978年、74〜75頁
【非特許文献2】D.H.クロスタボーア、「Imaging Processes and Materials」、(Nebletteの第8版)、J.スタージ、V.ウォルワース、およびA.シェップ編、Van Nostrand−Reinhold、ニューヨーク、1989年、第9章、279〜292頁
【非特許文献3】ゾウら、J.Imaging Sci.Technol.、1996年、40、94〜103頁
【非特許文献4】M.R.V.サーユン、J.Imaging Sci.Technol.1998年、42、23
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
導電性組成物および画像形成材料における様々な導電性ポリマ、金属酸化物粒子、フルオロケミカル、およびその他の材料に関する当技術分野における多数の研究および知見にもかかわらず、低コストであり、有機溶媒を含む様々な溶媒により被覆することができる、導電性または帯電防止層のための上記の一般的または特定の要件のすべてでなくても多くを満たす熱現像可能な材料の裏面層用のさらなる効果的な導電性材料が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0030】
この必要性に対処するため、本発明は、熱現像可能材料であって、バインダと、反応する取合せで非感光性の被還元性銀イオン源(non−photosensitive source of reductive silver ion)および該非感光性の被還元性銀イオン源のための還元剤組成物とを含む1つ以上の熱現像可能な画像形成層を、そのおもて面に有する支持体と、
該支持体の裏面に配置されている、
共に21.1℃および50%相対湿度において1012 ohm/sqの水電極抵抗率(water electrode resistivity)、ならびに21.1℃および20%相対湿度において100秒未満の静電気減衰時間(static decay time)を提供するのに十分な量で存在する、導電性金属化合物のナノ粒子および有機溶媒可溶性の無機アルカリ金属塩である帯電防止化合物をそこに分散した1つ以上のバインダポリマを含む有機溶媒系の埋め込み導電性裏面層と、
有機溶媒系の最も外側の裏面層と、
を含む熱現像可能材料を提供する。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明は、白黒の有機溶媒系フォトサーモグラフィ材料であって、支持体を含み、
A)前記支持体の画像形成面に、1つ以上のフォトサーモグラフィエマルジョン層と、前記フォトサーモグラフィエマルジョン層上に配置された保護層と、反応する取合せで、
少なくとも600nmの露光波長に感光する臭化銀またはヨウ化臭化銀の感光性粒子と、
ベヘン酸銀を含む1つ以上の脂肪族脂肪酸の銀塩と、
ヒンダードフェノール、ヒンダードビスフェノール、またはそれらの組合せを含む還元剤組成物と、
疎水性の有機溶媒可溶性バインダと、
を有し、
B)該支持体の裏面側に、
1つ以上の導電性金属酸化物のナノ粒子および有機溶媒可溶性の無機アルカリ金属塩を含む1つ以上の帯電防止化合物が、共に0.05から2g/mの量で存在していて、21.1℃および50%相対湿度において11 log ohm/sqの水電極抵抗率を提供するように分散されている1つ以上の第1の有機溶媒可溶性の疎水性バインダポリマを含む疎水性有機溶媒系の埋め込み導電性裏面層と、
該埋め込み導電性裏面層上に直接配置された、少なくともその1つが該第1の疎水性バインダポリマとは異なる1つ以上の第2の疎水性バインダポリマ、およびポリシロキサン、非晶質シリカ粒子、第四級アンモニウム化合物により変性されているスメクタイト粘土、ワックスまたはポリテトラフルオロエチレン粒子の1つ以上を含む有機溶媒系の最も外側の裏面層と、
を有し、
C)該フォトサーモグラフィ材料の銀コーティング重量が1から2g/mであり、
露光波長における該画像形成面の吸光度が少なくとも0.6であり、
露光波長における該裏面の吸光度が少なくとも0.2であり、
該埋め込み導電性裏面層および前記最も外側の裏面層が13%以下のヘーズを示し、
該埋め込み導電性裏面層が25秒以下の静電気減衰時間を示す、
フォトサーモグラフィ材料を提供する。
【0032】
さらに本発明は、支持体を含み、その片面に、バインダと、反応する取合せで非感光性の被還元性銀イオン源および該非感光性の被還元性銀イオン源のための還元剤組成物とを含む1つ以上の熱現像可能な画像形成層を有し、かつ、
該支持体の裏面に配置された、導電性金属化合物のナノ粒子および有機溶媒可溶性の無機アルカリ金属塩を含む1つ以上の帯電防止化合物が、共に21.1℃および50%相対湿度において1012ohm/sqの水電極抵抗率、ならびに21.1℃および20%相対湿度において100秒未満の静電気減衰時間を提供するのに十分な量で存在するように分散されている1つ以上のバインダポリマを含む埋め込み導電性裏面層と、最も外側の裏面層とを有する熱現像可能材料を調製する方法であって、
該埋め込み導電性裏面層および該最も外側の裏面層が、全体の有機溶媒容量を基準として10%以下の量となるようにメタノールを除去または含めた同一または異なる疎水性有機溶媒中の埋め込み導電性裏面層および最も外側の裏面層の配合物を塗布することによって提供される方法を提供する。
【0033】
本発明は、さらに、可視画像を形成する方法であって、
A)フォトサーモグラフィ材料である本発明の熱現像可能材料を電磁放射線に像様露光して潜像を形成させるステップと、
B)同時にまたは連続して、該露光されたフォトサーモグラフィ材料を加熱して該潜像を可視画像に現像するステップと、
を含む方法を提供する。
【0034】
本発明の別法において、可視画像を形成する方法は、
(A’)サーモグラフィ材料である本発明の熱現像可能材料を熱画像化するステップを含む。
【0035】
本発明者らは、導電性金属化合物のナノ粒子と有機溶媒可溶性の無機アルカリ金属塩との組合せが、効果的な埋め込み導電性裏面層を提供することを見出した。これらの無機アルカリ金属塩は、疎水性のバインダに都合よく組み込み、非極性有機溶媒によって被覆することができる。加えて、導電性金属化合物の一部を低コストの無機アルカリ金属塩と交換することによって、導電特性またはその他の特性、例えばヘーズ、接着性、およびコーティング品質のいずれにも悪影響を与えることなく、裏面層の製造コストは削減される。下記の最も好ましい化合物類も、25秒以下の静電気減衰時間を有する裏面構造を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本明細書に記載の熱現像可能材料は、サーモグラフィ材料およびフォトサーモグラフィ材料の両方である。以下の論議は、多くの場合好ましいフォトサーモグラフィの実施形態に主として向けられるが、サーモグラフィ材料も同様に組み立てられ、適切な画像形成化学反応、特に非感光性有機銀塩、還元剤、トナー、バインダ、およびその他の熟練技術者には既知のその他の成分を用いて白黒またはカラー画像を提供することができることは当業者には容易に理解されよう。サーモグラフィ材料およびフォトサーモグラフィ材料の双方において、本明細書に記載の導電性材料は、支持体の裏側の埋め込み導電性裏面層中に組み込まれる。
【0037】
本発明の熱現像可能材料は、白黒またはカラーサーモグラフィおよびカラーフォトサーモグラフィならびに電子的に生成される白黒またはカラーハードコピー記録に使用することができる。これらは、マイクロフィルム用途、ラジオグラフィ画像形成(例えば、医療用デジタル画像形成)、X線ラジオグラフィ、および工業用ラジオグラフィにおいて使用することができる。さらに、グラフィックアート分野(例えば、イメージセッティングおよび写真植字)、印刷版の製造、密着印画、複製(「デューピング」)および校正刷りにおける使用を可能ならしめるために、これらのフォトサーモグラフィ材料の350nm〜450nmの間の吸光度は低い(0.5未満)ことが望ましい。
【0038】
この熱現像可能材料は、医療診断の際に使用するための可視光、X線放射、または赤外線放射に応じてのヒトまたは動物被験者の画像形成にとって特に有用である。このような用途には、胸部撮像、マンモグラフィ、歯科撮像、整形外科撮像、一般医療用ラジオグラフィ、治療用ラジオグラフィ、獣医用ラジオグラフィ、およびオートラジオグラフィが挙げられるが、これらに限定されない。X線放射で使用する場合、本発明のフォトサーモグラフィ材料は、1つ以上の蛍光増感スクリーンと、そのフォトサーモグラフィエマルジョン中に組み込まれた燐光体と、またはこれらの組合せとを併用することができる。このような材料は、歯科用ラジオグラフィに対して、それらがX線放射によって直接撮像される場合に特に有用である。この材料は、また、X線放射の非医療用途、例えばX線リソグラフィおよび工業用ラジオグラフィにとっても有用である。
【0039】
フォトサーモグラフィ材料は、任意の適切な波長の放射線に感光するようにすることができる。従って、実施形態によっては、これらの材料は、電磁スペクトルの紫外波長、可視波長、赤外波長または近赤外波長で感光する。好ましい実施形態において、これらの材料は、600nm以上の放射線に感光する(好ましくは700nmから950nmまでの赤外放射線に感光する)。特定のスペクトル領域に対する感光度増大は、様々なスペクトル増感色素の使用により与えられる。
【0040】
このフォトサーモグラフィ材料において、画像形成に必要な成分は、支持体の片面(「おもて面(frontside)」)の1つ以上のフォトサーモグラフィ画像形成層の中にあり得る。感光性光触媒(例えば、感光性ハロゲン化銀)もしくは非感光性の被還元性銀イオン源またはこれら両方を含有するその層(1つ以上)を本明細書ではフォトサーモグラフィエマルジョン層(1つ以上)と呼ぶ。光触媒および非感光性の被還元性銀イオン源は、触媒的近接状態にあり、好ましくは同じエマルジョン層中にある。
【0041】
同様に、本発明のサーモグラフィ材料において、画像形成のために必要な成分は、1つ以上の層中にあることができる。非感光性の被還元性銀イオン源を含有する層(1つ以上)は、本明細書ではサーモグラフィエマルジョン層(1つ以上)と呼ぶ。
【0042】
これらの材料が、支持体の片面のみに画像形成層を含有する場合、これらの支持体の「裏面」(非エマルジョンまたは非画像形成面)には、本明細書に記載の導電性材料を含む埋め込み導電性裏面層に加えて、中間層、接着促進層、およびハレーション防止層(1つ以上)を含む様々な非画像形成層が配置され得る。
【0043】
その支持体の「おもて面」または画像形成面もしくはエマルジョン面には、保護おもて面オーバーコート層、プライマー層、中間層、不透明化層、静電防止層、ハレーション防止層、アキュータンス(acutance)層、補助層、および当業者には容易に思いつく他の層を含む様々な非画像形成層も配置することができる。
【0044】
これらの熱現像可能材料を、像様露光後または像様露光と同時に、実質的に無水状態で、以下で説明するように熱現像すると、銀画像(好ましくは白黒の銀画像)が得られる。
【0045】
<定義>
本明細書において用いる場合、熱現像可能材料の説明において、「1つ(「a」または「an」)」の成分は、「少なくとも1つ」のその成分(例えば、本明細書に記載されている導電性金属化合物および帯電防止化合物)を指す。
【0046】
本明細書において用いる場合、「白黒」とは、金属銀によって形成された画像を指す。
【0047】
他に指摘がない限り、本明細書で、用語「熱現像可能材料」、「フォトサーモグラフィ材料」、および「サーモグラフィ材料」が使用されるとき、それらの用語は本発明の材料を指す。
【0048】
本明細書で用いる場合、実質的に無水状態での加熱は、周囲の水蒸気の存在より少ない状態で、50℃から250℃の温度で加熱することを意味する。用語「実質的に無水状態」は、その反応系が、空気中の水とほぼ平衡状態であり、その反応を誘発または促進するための水または他の溶媒が、その材料の外側から特にまたは積極的に供給されないことを意味する。このような状態は、T.H.ジェームス、The Theory of the Photographic Process、第4版、Eastman Kodak Company、ロチェスター、ニューヨーク州、1977年、374頁に記載されている。
【0049】
「フォトサーモグラフィ材料(1つ以上)」は、支持体および少なくとも1つのフォトサーモグラフィエマルジョン層またはフォトサーモグラフィエマルジョン層セット(感光性ハロゲン化銀および被還元性銀イオン源が1つの層内にあり、他の必須成分または添加剤が、必要に応じて同じ層内または隣接被覆層内に分配されている)を含む乾式処理が可能な一体要素を意味する。白黒熱現像可能材料の場合は白黒の銀画像が生成される。これらの材料は、また、1つ以上の画像形成成分が異なる層内にあるが、「反応する取合せ(reactive association)」状態にある多層構造体も含む。例えば、1つの層は、非感光性の被還元性銀イオン源を含むことができ、もう1つの層は、還元性組成物を含むことができるが、これら2つの反応性成分は、相互に反応する取合せの状態にある。「一体(integral)」によって、本発明者らは、画像形成に必要なすべての画像形成化学要素が、画像形成化学要素または反応生成物(例えば色素など)がその他の要素(例えばレシーバー要素など)からまたはそこに拡散することなく存在することを意味する。
【0050】
「サーモグラフィ材料」は、感光性ハロゲン化銀触媒が意図的に加えられないか生成されないこと以外は同様に定義される。
【0051】
フォトサーモグラフィに関して用いる場合、用語「像様露光するステップ(imagewise exposing)」または「像様露光(imagewise exposure)」は、材料を、電磁放射線を使用して潜像を生じさせる任意の露光手段を用いる乾式処理材料として画像形成することを意味する。これには、例えば、感光性材料への投影により画像が形成されるアナログ露光によるもの、ならびに走査レーザ光の調節などにより一度に1画素の画像が形成されるデジタル露光によるものが挙げられる。
【0052】
サーモグラフィにおいて使用される場合、用語「像様露光するステップ」または「像様露光」は、材料を、熱を用いて画像を提供する任意の手段を用いて乾式処理できる材料として画像形成することを意味する。これには、例えば、画像がサーマルブランケットまたは赤外線加熱源を用いるマスクによる微分接触型加熱(differential contact heating)により形成されるアナログ露光によるもの、ならびにサーマルプリントヘッド調節などにより一度に1画素の画像が形成されるデジタル露光によるものまたは走査レーザ放射を用いるサーマルヒーティングによるものが挙げられる。
【0053】
「触媒的近接」または「反応する取合せ」は、反応性成分が同じ層内または隣接層内にあり、そのためこれらが、画像形成中および熱現像中に相互に容易に接触することを意味する。
【0054】
用語「エマルジョン層」、「画像形成層」、「サーモグラフィエマルジョン層」または「フォトサーモグラフィエマルジョン層」は、感光性ハロゲン化銀(使用される場合)および/または非感光性の被還元性銀イオン源、または還元性組成物を含有するサーモグラフィ材料の層またはフォトサーモグラフィ材料の層を意味する。かかる層は、また、さらなる成分または望ましい添加剤を含むことができる。これらの層は、支持体の「おもて面」と称されるものの上にある。
【0055】
「光触媒」は、放射線照射と同時に、画像形成材料の後続の現像のための触媒として作用することができる化合物を提供するハロゲン化銀などの感光性化合物を意味する。
【0056】
「同時コーティング」または「ウェットオンウェット(wet−on−wet)」コーティングは、複数層をコートする場合、最初にコーティングした層が乾燥する前に後の層を最初にコートした層の上にコートすることを意味する。同時コーティングは、層を支持体のおもて面、裏面、またはその両方に塗布するために用いることができる。
【0057】
「透明な」は、可視光または画像形成放射線を、感知できる散乱または吸収なしで伝達することができることを意味する。
【0058】
熟語「銀塩」および「有機銀塩」は、銀原子への結合を有する有機分子を指す。そのように形成されている化合物は、専門的には銀の配位錯体または銀化合物であっても、それらも多くの場合銀塩と呼ばれる。
【0059】
熟語「アリール基」は、芳香族炭化水素から1個の原子の除去によって誘導される有機基、例えばベンゼンから1個の水素原子の除去によって形成されるフェニル基などを指す。
【0060】
用語「アルカリ金属」は、その通常の意味を有し、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムを指す。アルカリ金属のカチオンは、(+1)原子価を有する。
【0061】
用語「ペルフルオロ化」は、分子中の実質的にすべての水素原子がフッ素原子によって置換されていることを意味する。
【0062】
用語「埋め込み層(buried layer)」は、層上に少なくとも1つの他の層(例えば「埋め込み」導電性裏面層)が存在することを意味する。
【0063】
用語「埋め込み導電性裏面層(buried conductive backside layer)」は、ポリマ支持体の間に導電層が広がっており、その上にコートされた1つ以上のさらなる層を有することを意味する。その「オーバーコート」層は、最も外側の裏面層であることが好ましい。
【0064】
用語「コーティング重量」、「コート重量」、および「被覆率(coverage)」は同義語であり、単位面積当りの重量またはモル数、例えばg/mまたはモル/mで通常表される。
【0065】
「ヘーズ」は、全方向に光を均一に拡散し、その場合に角度当りの光の強度が小さい広角の散乱である。ヘーズは、コントラストを低下し、乳状もしくは曇った外観をもたらす。ヘーズは、入射ビームから平均2.5度を超えてそれる透過光線の百分率である。ヘーズ数が低いほどその材料は霞んでいない。
【0066】
有機溶媒は、0以上の「clogP」(オクタノール−水分配係数)値を有する有機疎水性溶媒をここでは意味する。
【0067】
当技術分野においてはよく理解されているように、特に明記されていない限り、本明細書に記載の化合物については、置換が許容されるばかりでなく、多くの場合望ましく、本発明において使用される化合物については様々な置換基が見込まれる。従って、ある化合物が、与えられた式の「構造を有する」、または化合物の誘導体であると言われる場合、その式の結合構造またはその構造中に示されている原子を変化させないどんな置換も、そのような置換が、言語により特に除外されていない限り、その式内には含まれる。
【0068】
一定の置換基の論議および列挙を単純化する手段として、用語「基」は、置換されていてもよい化学種、ならびにそのように置換されない化学種を指す。従って、用語「アルキル基」は、メチル、エチル、n−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、イソオクチルおよびオクタデシルなどの純粋な炭化水素アルキル鎖ばかりでなく、ヒドロキシル、アルコキシ、フェニル、ハロゲン原子(F、Cl、BrおよびI)、シアノ、ニトロ、アミノおよびカルボキシなどの当技術分野において知られている置換基を有するアルキル鎖も含むことを意味する。例えば、アルキル基には、エーテルおよびチオエーテル基(例えば、CH3−CH2−CH2−O−CH2−およびCH3−CH2−CH2−S−CH2−)、ハロアルキル、ニトロアルキル、アルキルカルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキサミド、ヒドロキシアルキル、スルホアルキル、および当業者には容易にわかるその他の基が含まれる。非常に強い求電子性または酸化性置換基などの他の活性成分と不都合に反応する置換基は、不活性または無害ではないので、勿論、当業者により除外される。
【0069】
Research Disclosure(http://www.researchdisclosure.com)は、Kenneth Mason Publications Ltd.,The Book Barn,Westbourne,Hampshire PO10 8RS,UKの出版物である。それは、また、Emsworth Design Inc.,200 Park Avenue South,Room 1101,New York,NY 10003からも入手することができる。
【0070】
本発明の他の態様、利点および恩恵は、本出願において提供する詳細な説明、実施例および特許請求の範囲から明らかである。
【0071】
<光触媒>
上記のように、フォトサーモグラフィ材料は、フォトサーモグラフィエマルジョン層(1つ以上)中に1つ以上の光触媒を含む。有用な光触媒は、一般的には感光性ハロゲン化銀、例えば、臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、臭ヨウ化銀、塩臭ヨウ化銀、塩臭化銀、および当業者には容易にわかる他のものである。任意の適切な比率でのハロゲン化銀の混合物も使用することができる。臭化銀およびヨウ化銀が好ましい。より好ましいのはヨウ化物の任意の適当量が殆ど100モル%までのヨウ化物が存在する臭ヨウ化銀である。さらにより好ましくは、この臭ヨウ化銀は、少なくとも70モル%(好ましくは少なくとも85モル%、最も好ましくは少なくとも90モル%)の臭化物(全体のハロゲン化銀を基準とする)を含む。そのハロゲン化物の残りは、ヨウ化物または塩化物のいずれかおよびヨウ化物である。好ましくはさらなるハロゲン化物はヨウ化物である。臭化銀および臭ヨウ化銀が最も好ましく、後者のハロゲン化銀は、一般に、10モル%までのヨウ化銀を有する。
【0072】
水性フォトサーモグラフィ材料のいくつかの実施形態においては、より多量のヨウ化物が、均質な感光性ハロゲン化銀粒子中に、存在することができ、例えば米国特許出願公開第2004/0053173号(マスカスキー他)に記載されているように、特に20モル%からヨウ化物の飽和限界まで存在することができる。
【0073】
これらのハロゲン化銀粒子は、立方体、八面体、四面体、斜方晶系(orthorombicおよびrhombic)、十二面体、他の多面体、平板、層状、双晶または小板形態を含むがこれらに限定されない、いずれの晶癖(crystalline habit)または結晶形態を有してもよく、それらに関する結晶のエピタキシャル成長を有してもよい。必要に応じて、異なる形態の粒子の混合物を使用することができる。立方および平面形態(または両方)を有するハロゲン化銀粒子が好ましい。
【0074】
ハロゲン化銀粒子は、全体を通して均一なハロゲン化物比を有し得る。それらは、さらに、例えば臭化銀とヨウ化銀の比が連続的に変化する段階的ハロゲン化物含有率を有するものであってもよいし、または1つ以上のハロゲン化銀の個別のコアおよび1つ以上の異なるハロゲン化銀の個別のシェルを有するコア−シェル型のものであってもよい。フォトサーモグラフィ材料およびこれらの材料の調製方法において有用なコア−シェル型ハロゲン化銀粒子は、米国特許第5,382,504号(ショー他)に記載されている。イリジウムおよび/または銅がドープされたコア−シェル型および非コア−シェル型粒子は、米国特許第5,434,043号(ゾウ他)および同第5,939,249号)に記載されている。フォトサーモグラフィ材料用のビスマス(+3)をドープした高ヨウ化銀エマルジョンが、米国特許第6,942,960号(マスカスキー他)に記載されている。
【0075】
場合によっては、米国特許第6,413,710号(ショー他)に記載されているように、ヒドロキシテトラアザインデン(4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデンなど)、または少なくとも1つのメルカプト基を含むN−複素環式化合物(1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールなど)の存在下で感光性ハロゲン化銀粒子を調製することが有用であり得る。
【0076】
感光性ハロゲン化銀は、非感光性の被還元性銀イオン源と触媒的近接状態にありさえすれば、いかなるやり方でもエマルジョン層(1つ以上)に添加(または、その層内で形成)することができる。
【0077】
そのハロゲン化銀は、エクスシチュ法(ex−situ process)により予め形成または調製することが好ましい。この技術により、ハロゲン化銀の粒度、粒度分布、ドーパント濃度、および組成をより正確に制御する可能性が得られ、その結果、ハロゲン化銀粒子および結果として生じるフォトサーモグラフィ材料の両方により特異的な性質を与えることができる。
【0078】
構造によっては、エクスシチュで調製されたハロゲン化銀の存在下で非感光性の被還元性銀イオン源を形成するのが好ましい。この方法においては、長鎖脂肪酸カルボン酸銀塩(一般に、銀「石鹸(soap)」またはホモジネートと呼ばれている)などの被還元性銀イオン源が予め形成されたハロゲン化銀粒子の存在下で形成される。ハロゲン化銀の存在下での被還元性銀イオン源の共沈により、しばしば「予め形成された石鹸」と呼ばれる2つの材料のより完全な混合物が生じる[米国特許第3,839,049号(シモンズ)参照]。
【0079】
構造によっては、予め形成されたハロゲン化銀粒子は、非感光性の被還元性銀イオン源に添加して、それと「物理的に混合」するのが好ましい。
【0080】
好ましいハロゲン化銀エマルジョンは、水性または有機系の方法によって調製することができ、洗浄しなくてもよく、あるいは洗浄して可溶性の塩を除去することができる。可溶性塩は、例えば、米国特許第2,489,341号(ウォーラー他)、同第2,565,418号(ヤッケル)、同第2,614,928号(ユツィー他)、同第2,618,556号(ヒューイットソン)、および同第3,241,969号(ハルト他)に記載されているような任意の望ましい方法によって除去することができる。
【0081】
ハロゲン化物含有化合物またはハロゲン含有化合物を有機銀塩に添加して、その有機銀塩の銀を部分的にハロゲン化銀に変換するインサイチュ(in situ)法の使用も有効である。無機ハロゲン化物(臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化カルシウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムもしくはこれらの混合物など)または有機ハロゲン含有化合物(N−ブロモスクシンイミドもしくは臭化水素酸ピリジニウム過臭化物など)を使用することができる。ハロゲン化銀のこのようなインサイチュ生成の詳細は周知であり、米国特許第3,457,075号(モーガン他)に記載されている。
【0082】
予め形成されたハロゲン化銀とインサイチュ法で生成されたハロゲン化銀の両方の混合物の使用が特に有効である。その予め形成されたハロゲン化銀は、好ましくは予め形成された石鹸中に存在する。
【0083】
ハロゲン化銀および有機銀塩を調製し、それらをブレンドするさらなる方法は、Research Disclosure、1978年6月、第17029項、米国特許第3,700,458号(リンドホルム)、同第4,076,539号(池上他);特開昭49−013224(富士写真フィルム株式会社)、特開昭50−017216(富士写真フィルム株式会社)、および特開昭51−042529(富士写真フィルム株式会社)に記載されている。
【0084】
画像形成配合物中に使用されるハロゲン化銀粒子は、所望される用途によって最高数マイクロメートル(μm)まで平均直径が変化し得る。カルボキシル化銀を含有する予め形成されるエマルジョン中で使用するための好ましいハロゲン化銀粒子は、0.01から1.0μmの数平均粒径を有する立方体粒子、より好ましくは0.03から0.1μmの数平均粒径を有するものである。その粒子は、0.06μm以下の数平均粒径を有するのがより好ましく、それらは0.03から0.06μmの数平均粒径を有することが最も好ましい。様々な平均粒径の粒子の混合物も使用することができる。高速フォトサーモグラフィ構造用の好ましいハロゲン化銀粒子は、少なくとも0.02μmおよび最高0.10μm以内の平均厚さと、少なくとも0.5μmおよび最高8μm以内の円の相当直径と、少なくとも5:1のアスペクト比とを有する平板粒子である。より好ましいのは、少なくとも0.03μmおよび最高0.08μm以内の平均厚さと、少なくとも0.75μmおよび最高6μm以内の円の相当直径と、少なくとも10:1のアスペクト比とを有するものである。
【0085】
感光性ハロゲン化銀粒子の平均寸法は、それらの粒子が球形である場合には平均直径により表され、それらの粒子が立方形、または他の非球形の形状である場合には、それらの投影画像に対する相当円の直径の平均により表される。代表的な粒子の定寸方法は、「Particle Size Analysis」,ASTM Symposium on Light Microscopy R.P.ラブランド、1955、pp.94〜122、およびC.E.K.ミーズおよびT.H.ジェームス、The Theory of the Photographic Process,Third Edition,Macmillan,New York,1966,Chapter 2に記載されている。粒径測定値は、粒子の投影面積またはそれらの直径の近似値について表される。これらは、対象となる粒子の形が実質的に均一である場合には相当正確な結果をもたらす。
【0086】
1つ以上の感光性ハロゲン化銀は、非感光性の被還元性銀イオン源1モル当り、好ましくは0.005から0.5モル、より好ましくは0.01から0.25モル、最も好ましくは0.03から0.15モルの量で存在する。
【0087】
<化学増感>
感光性ハロゲン化銀は、硫黄、テルルまたはセレンを含むか、または金、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、またはこれらの組合せ、ハロゲン化錫などの還元剤、またはこれらのいずれかの組合せを含有する化合物を含んでもよい任意の有用な化合物を用いて化学的に感度を増すことができる。これらの材料の詳細は、例えば、T.H.ジェームス、The Theory of the Photographic Process、第4版、Eastman Kodak Company、Rochester、NY、1977年、第5章、149〜169頁に提供されている。好適な従来の化学増感処置は、米国特許第1,623,499号明細書(シェパード他)、同第2,399,083号明細書(ウォーラー他)、同第3,297,446号明細書(ダン)、同第3,297,447号明細書(マクベイ)、同第5,049,485号明細書(ディートン)、同第5,252,455号明細書(ディートン)、同第5,391,727号明細書(ディートン)、同第5,759,761号明細書(ラシントン他)、および同第5,912,111号明細書(ロック他)、ならびに欧州特許出願公開第0915371号明細書(ロック他)にも記載されている。
【0088】
さらに、本明細書に引用されている米国特許第5,691,127号明細書(ダウベンディーク他)に記載されているようなメルカプトテトラゾールおよびテトラアザインデンを、平板状ハロゲン化銀粒子に適した添加物として使用することができる。
【0089】
米国特許第6,368,779号(リンチ他)に記載されているものを含む一定の置換および非置換チオ尿素化合物を化学増感剤として使用することができる。
【0090】
なおもその他のさらなる化学増感剤としては、米国特許第6,699,647号(リンチ他)に記載されている一定のテルル含有化合物、および米国特許第6,620,577号(リンチ他)に記載されている一定のセレン含有化合物が挙げられる。
【0091】
米国特許第6,423,481号(シンプソン他)に記載されているような金(III)含有化合物と硫黄含有化合物、テルル含有化合物、またはセレン含有化合物のいずれかとの組合せもまた化学増感剤として有用である。
【0092】
さらに、米国特許第5,891,615号(ウィンスロー他)の教示によれば、硫黄含有化合物は、酸化環境中でハロゲン化銀粒子によって分解することができる。このやり方で使用することができる硫黄含有化合物の例としては、硫黄含有スペクトル増感色素が挙げられる。酸化環境中で分解することができるその他の有用な硫黄含有化学増感化合物は、米国特許第7,026,105号(シンプソン他)および同時係属中の同一出願人による米国特許出願公開第2005/0123871号(バーレバ他)および同第2005/123872号(バーレバ他)に記載されているジフェニルホスフィンスルフィドである。
【0093】
化学増感剤は、一般にハロゲン化銀粒子の平均寸法に依存する通常の量で存在させることができる。一般に、全体量は、0.01から2μmの平均寸法を有するハロゲン化銀粒子に対して全体の銀のモル当り少なくとも10−10モル、好ましくは全体の銀のモル当り10−8から10−2モルである。
【0094】
<スペクトル増感>
感光性ハロゲン化銀は、紫外線、可視光線、および/または赤外線に対するハロゲン化銀の感度(すなわち、300から1200nmの範囲における感度)を高めることが知られている1つ以上のスペクトル増感色素によりスペクトル増感させることができる。感光性ハロゲン化銀を赤外線(すなわち700から950nm)に対して増感させるのが好ましい。採用することができるスペクトル増感色素の非限定の例としては、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素、およびヘミオキサノール色素が挙げられる。それらはフォトサーモグラフィエマルジョンの化学仕上げの任意の段階で添加することができるが、大抵は化学増感が達成された後に加える。
【0095】
適当なスペクトル増感色素、例えば、米国特許第3,719,495号(リー)、同第4,396,712号(キノシタ他)、同第4,439,520号(コフロン他)、同第4,690,883号(クボデラ他)、同第4,840,882号(イワガキ他)、同第5,064,753号(コーノ他)、同第5,281,515号(デルプラート他)、同第5,393,654号(バロウズ他)、同第5,441,866号(ミラー他)、同第5,508,162号(ダンコシュ)、同第5,510,236号(ダンコシュ)、および同第5,541,054号(ミラー他)、特開2000−063690(田中他)、特開2000−112054(福坂他)、特開2000−273329(田中他)、特開2001−005145(荒井)、特開2001−064527(押山他)および特開2001−154305(喜多他)に記載されているものを使用することができる。有用なスペクトル増感色素は、また、Research Disclosure、1989年12月、第308119項、IV節およびResearch Disclosure、1994年、第36544項、V節にも記載されている。
【0096】
スペクトル増感色素の特定の組合せに関する教示としては、さらに、米国特許第4,581,329号(スギモト他)、同第4,582,786号(イケダ他)、同第4,609,621号(スギモト他)、同第4,675,279号(シュトー他)、同第4,678,741号(ヤマダ他)、同第4,720,451号(シュトー他)、同第4,818,675号(ミヤサカ他)、同第4,945,036号(アライ他)、および同第4952491号(ニシカワ他)が挙げられる。
【0097】
米国特許第4,524,128号(エドワーズ他)、ならびに特開2001−109101(足立)、特開2001−154305(喜多他)、および特開2001−183770(羽生他)に記載されている光または熱によって脱色するスペクトル増感色素もまた有用である。
【0098】
色素は、各色素単独を用いることによって得られる感度の和よりはるかに高い感度を得る超色増感(supersensitization)のために選択することができる。
【0099】
添加するスペクトル増感色素の適切な量は、一般にハロゲン化銀1モル当り10−10から10−1モル、好ましくは10−7から10−2モルである。
【0100】
<非感光性の被還元性銀イオン源>
熱現像可能材料中の非感光性の被還元性銀イオン源は、被還元性銀(I)イオンを含有する銀有機化合物である。このような化合物は一般に、配位子の有機銀塩である。これらの化合物は、光に対して比較的安定であり、露光された光触媒(例えば、フォトサーモグラフィ材料中で使用される場合はハロゲン化銀)および還元剤組成物の存在下で50℃以上に加熱されると銀画像を形成する銀有機配位子の銀塩である。
【0101】
主要な有機銀塩は、多くの場合脂肪族カルボン酸の銀塩(下記)である。脂肪族カルボン酸の銀塩の混合物は、その混合物が少なくともベヘン酸銀を含む場合、特に有用である。
【0102】
有用なカルボン酸銀塩としては、長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が挙げられる。その脂肪族カルボン酸は、10から30個、好ましくは15から28個の炭素原子を含む脂肪族鎖を一般に有する。そのような好ましい銀塩の例としては、ベヘン酸銀、アラキン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロ酸銀、リノール酸銀、酪酸銀、ショウノウ酸塩、およびそれらの混合物が挙げられる。最も好ましくは少なくともベヘン酸銀を、単独またはその他のカルボン酸銀塩との混合物として使用する。
【0103】
上記のカルボン酸銀塩以外の銀塩もまた使用することができる。そのような銀塩としては、米国特許第3,330,663号(ワイデ他)に記載されているチオエーテル基を含有する脂肪族カルボン酸の銀塩、米国特許第5,491,059号(ホイットコム)に記載されているエーテルもしくはチオエーテル結合またはα位(炭化水素基の)もしくはオルト位(芳香族基の)に立体障害のある置換を組み込んでいる炭化水素鎖を含む可溶性カルボン酸銀塩、ジカルボン酸の銀塩、米国特許第4,504,575号(リー)に記載されているスルホン酸の銀塩、欧州特許出願公開第0227141号(リーンダーズ他)に記載されているスルホコハク酸の銀塩、アリールカルボン酸の銀塩(例えば安息香酸銀など)、例えば米国特許第4,761,361号(オザキ他)および同第4,775,613号(ヒライ他)に記載されているアセチレンの銀塩、ならびに米国特許第4,123,274号(ナイト他)および同第3,785,830号(サリバン他)に記載されているメルカプト基もしくはチオン基を含有する複素環化合物およびその誘導体の銀塩が挙げられる。
【0104】
銀のハーフソープ、例えば分析するとブレンド中に14.5重量%の銀の固体が存在し、市販されている脂肪カルボン酸アンモニウム塩またはアルカリ金属塩の水溶液からの沈殿によってかまたは銀石鹸への遊離の脂肪酸の添加によって調製されるカルボン酸銀塩とカルボン酸との等モルのブレンドなどを使用するのも便利である。
【0105】
銀石鹸エマルジョンを製造するために使用される方法は、当技術分野では周知であり、Research Disclosure、1983年4月,第22812項、Research Disclosure、1983年10月、第23419項、米国特許第3,985,565号(ガブリエルセン他)および上で引用した参考文献に開示されている。
【0106】
非感光性の被還元性銀イオン源は、また、米国特許第6,355,408号(ホイットコム他)に記載されているコア−シェル型銀塩であり得、この場合、コアは1種以上の銀塩を有し、銀塩の1つがカルボン酸銀塩である限りは、シェルは1種以上の異なる銀塩を有する。他の有用な非感光性の被還元性銀イオン源は、米国特許第6,472,131号(ホイットコム)に記載されている2つの異なる銀塩を含む銀二量体化合物である。さらに他の有用な非感光性の被還元性銀イオン源は、1つ以上の感光性ハロゲン化銀、または1つ以上の非感光性無機金属塩もしくは銀を含有しない有機塩を含む第1のコアと、その第1のコアを少なくとも部分的に覆っているシェルとを含む銀のコア−シェル化合物であって、そのシェルは1つ以上の非感光性銀塩を含み、その銀塩のそれぞれは有機銀配位子を含む。そのような化合物は、米国特許第6,802,177号(ボコーノフ他)に記載されている。
【0107】
有機溶媒系サーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ材料において特に有用である有機銀塩としては、カルボン酸銀塩(脂肪族カルボン酸塩およびアリールカルボン酸塩の両方)、ベンゾトリアゾール銀塩、スルホン酸銀塩、スルホコハク酸銀塩、および銀アセチリドが挙げられる。15から28個の炭素原子を含有する長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩およびベンゾトリアゾールの銀塩が特に好ましい。
【0108】
水性サーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ材料において特に有用である有機銀塩としては、イミノ基を含有する化合物の銀塩が挙げられる。これら化合物の好ましい例としては、非限定で、ベンゾトリアゾールの銀塩およびこれらの置換型誘導体(例えば、銀メチルベンゾトリアゾールおよび銀5−クロロベンゾトリアゾール)、1,2,4−トリアゾールまたは1−H−テトラゾール、例えば米国特許第4,220,709号(ドモーリアック)に記載されているフェニルメルカプトテトラゾールなどの銀塩、および、米国特許第4,260,677号(ウィンスロー他)に記載されているようなイミダゾールおよびイミダゾール誘導体の銀塩が挙げられる。このタイプの特に有用な銀塩は、ベンゾトリアゾールの銀塩およびその置換型誘導体の銀塩である。水性サーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ配合物においては、ベンゾトリアゾールの銀塩が特に好ましい。
【0109】
有用な窒素含有有機銀塩およびそれらを調製する方法は、米国特許第6,977,139号(ハスベルグ他)に記載されている。そのような銀塩(特にベンゾトリアゾール銀塩)は、形状が棒状であり、少なくとも3:1の平均アスペクト比および粒径に対して1.25以下の幅指数(width index)を有する。銀塩粒子の長さは一般に1μm未満である。イミノ基を含有する窒素含有複素環化合物の銀塩、およびメルカプトトリアゾールの銀塩を含む銀塩を含む銀塩トナー共沈ナノ結晶もまた有用である。そのような共沈させた塩は、米国特許第7,008,748号(ハスベルグ他)に記載されている。
【0110】
1つ以上の非感光性の被還元性銀イオン源は、エマルジョン層の全体の乾燥重量を基準として好ましくは5%から70%、より好ましくは10%から50%の量で存在する。別の言い方をすれば、被還元性銀イオン源の量は、一般に、乾燥フォトサーモグラフィ材料の0.001から0.2モル/m(好ましくは0.01から0.05モル/m)である。
【0111】
サーモグラフィ材料およびフォトサーモグラフィ材料中の銀の全体量(すべての銀源からの)は、一般に、少なくとも0.002モル/m、好ましくは0.01から0.05モル/m、より好ましくは0.01から0.02モル/mである。他の態様においては、全体の銀(ハロゲン化銀および被還元性銀塩の両方からの)は、2.3g/mより少なく、好ましくは1g/m以上2g/m未満のコーティング重量で用いることが望ましい。
【0112】
<還元剤>
被還元性銀イオン源のための還元剤(または2つ以上の成分を含む還元剤組成物)は、銀(I)イオンを金属銀に還元することができる化合物(好ましくは有機材料)である。「還元剤」は、時々「現像剤(developer)」または「現像主薬(developing agent)」と呼ばれる。
【0113】
銀ベンゾトリアゾール銀源を使用する場合には、アスコルビン酸還元剤が好ましい。「アルコルビン酸」還元剤(現像剤または現像主薬とも呼ばれる)は、アルコルビン酸、それらの複合体および誘導体を意味する。「アルコルビン酸」還元剤は、アルコルビン酸、それらの複合体および誘導体を意味する。アスコルビン酸還元剤は、米国特許第5,236,816号(ピュロール他)およびそこに引用されている参考文献を含む、相当数の出版物に記載されている。有用なアスコルビン酸現像主薬としては、アスコルビン酸およびその類似体、それらの異性体および誘導体が挙げられる。このような化合物としては、欧州特許出願公開第0573700号(リンジャー他)、欧州特許出願公開第0585792号(パッサレラ他)、欧州特許出願公開第0588408号(ヒエロニムス他)、米国特許第2,688,549号(ジェイムズ他)、同第5,089,819号(クナップ)、同第5,278,035号(クナップ)、同第5,376,510号(パーカー他)、同第5,384,232号(ビショップ他)、同第5,498,511号(ヤマシタ他)、特開平07−56286(豊田)、およびResearch Disclosure、第37152項、1995年3月に記載されているような、D−またはL−アスコルビン酸、それらの糖型誘導体(例えば、ソルボアスコルビン酸、γ−ラクトアスコルビン酸、6−デスオキシ−L−アスコルビン酸、L−ラムノアスコルビン酸、イミノ−6−デスオキシ−L−アスコルビン酸、グルコアスコルビン酸、フコアスコルビン酸、グルコヘプトアスコルビン酸、マルトアスコルビン酸、L−アラボアスコルビン酸)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、イソアスコルビン酸(またはL−エリトロアスコルビン酸)、およびそれらの塩(例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩または当技術分野において知られている他の塩)、エンジオール型アスコルビン酸、エナミノール型アスコルビン酸、チオエノール型アスコルビン酸ならびにエナミン−チオール型アスコルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。必要に応じて、これらの現像主薬の混合物を使用することができる。
【0114】
さらに有用なのは、同時係属中の同一出願人による米国特許出願公開第2005/0164136号(ラムスデン他)に記載されているアスコルビン酸還元剤である。米国特許出願公開第2006/0051714号(ブリック他)に記載されている粒子成長調節剤の存在下で調製される一定のアスコルビン酸エステルの固体粒子分散物もまた有用である。
【0115】
カルボン酸銀塩の銀源をフォトサーモグラフィ材料中に使用する場合には、1つ以上のヒンダードフェノールまたはヒンダードビスフェノール還元剤が好ましい。場合によっては、この還元剤組成物は、2つ以上の成分、例えばヒンダードフェノールまたはヒンダードビスフェノール現像剤および下記の様々な種類の補助現像剤(co−developer)および還元剤から選択することができる補助現像剤などを含む。コントラスト増強剤のさらなる添加を伴う三元性現像剤混合物も有用である。このようなコントラスト増強剤は、下記の様々な種類の還元剤から選択することができる。
【0116】
「ヒンダードフェノール還元剤」は、所与のフェノール環上にヒドロキシ基を1つだけ含有し、そのヒドロキシ基に対してオルトに位置する少なくとも1つのさらなる置換基を有する化合物である。
【0117】
ヒンダードフェノール還元剤の1つのタイプは、ヒンダードフェノールおよびヒンダードナフトールである。このタイプのヒンダードフェノールとしては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ベンジルフェノール、2−ベンジル−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルシクロヘキシル)フェノール、および3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸2,2−ビス[[3−[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロポキシ]メチル]−1,3−プロパンジイルエステル(IRGANOX(登録商標)1010)が挙げられる。
【0118】
ヒンダードフェノール還元剤の別のタイプは、ヒンダードビスフェノールである。「ヒンダードビスフェノール」は、それぞれ異なるフェニル環に位置する1個より多いヒドロキシ基を含有する。このタイプのヒンダードフェノールとしては、例えば、ビナフトール(すなわち、ジヒドロキシビナフチル)、ビフェノール(すなわち、ジヒドロキシビフェニル)、ビス(ヒドロキシナフチル)メタン、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、およびビス(ヒドロキシフェニル)チオエーテルが挙げられ、それぞれさらなる置換基を有することができる。
【0119】
好ましいヒンダードビスフェノール還元剤は、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1’−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンビス[2−ヒドロキシ−3−(1−メチルシクロヘキシル)−5−メチルフェニル]メタン、2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、1,1’−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)イソブタン、および2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノールなどである。そのようなヒンダードビスフェノール化合物は、また、ヒドロキシル基に対してオルトの少なくとも1つの置換基を有し、しばしば「ヒンダードオルト−ビスフェノール」と呼ばれる。
【0120】
さらなる有用な還元剤としては、例えば米国特許第6,699,649号(ニシジマ他)に記載されているような結合メチレン基に結合した非芳香環を有するビスフェノール類、例えば米国特許出願公開第2005/0221237号(サカイ他)に記載されているような結合メチレン基に結合した脂環式基またはアルキレン基を有するビスフェノール類、および例えば米国特許第6,485,898号(ヨシオカ他)に記載されているようなフェノール環に第二級または第三級置換基を有するビスフェノール類が挙げられる。
【0121】
特に有用な還元剤は、芳香環上にヒドロキシル基に対してオルトの二環式および三環式置換基を組み込んでいるビスフェノール現像剤(オルト二環式または三環式置換ビスフェノール現像剤)である。そのような還元剤は、同時係属中の同一出願人による米国特許仮出願第11/351,593号(リンチ、ラムスデン、ハンセン、およびウルリッヒにより2006年2月10日に出願)に記載されている。
【0122】
ヒンダードフェノール還元剤の混合物、例えば米国特許第6,413,712号(ヨシオカ他)および同第6,645,714号(オーヤ他)に記載されているヒンダードフェノールおよびヒンダードビスフェノールの混合物を必要に応じて使用することができる。
【0123】
さらなる還元剤として、米国特許第6,514,684号(スズキ他)に記載されているビスフェノールリン化合物、米国特許第6,787,298号(ヨシオカ)に記載されているビスフェノール、芳香族カルボン酸、水素結合化合物の混合物、米国特許出願公開第2005/0214702号(オオゼキ)に記載されている1個以上の電子を放出する一電子酸化生成物を提供するように一電子酸化することができる化合物、および米国特許第5,464,738号(リンチ他)に記載されているスルホニルヒドラジドを含む置換ヒドラジンが挙げられる。さらに他の有用な還元剤は、米国特許第3,074,809号(オーウェン)、同第3,080,254号(グラント、ジュニア)、同第3,094,417号(ワークマン)、同第3,887,417号(クライン他)、同第4,030,931号(ノグチ他)、および同第5,981,151号(リーンダー他)に記載されている。
【0124】
還元剤は、また、米国特許第6,958,209号(モリタ他)、同第6,800,431号(ミウラ他)、米国特許出願公開第2003/0143500号(オヤマダ他)、同第2004/0063050号(ナカムラ他)、同第2004/0152023号(オクツ他)、同第2004/0202970号(サカイ他)および同第2005/0221237号(上記)にも記載されている。
【0125】
使用することができるさらなる還元剤としては、アミドキシム、アジン、脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ、リダクトンおよび/またはヒドラジン、ピペリジノヘキソースリダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジン、ヒドロキサム酸、アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ、α−シアノフェニル酢酸誘導体、リダクトン、インダン−1,3−ジオン、クロマン、1,4−ジヒドロピリジン、および3−ピラゾリドンが挙げられる。
【0126】
米国特許第6,387,605号(リンチ他)に記載されているように、有用な補助現像剤還元剤もまた使用することができる。補助現像剤還元剤として使用することができる還元剤のさらなる種類は、米国特許第5,496,695号(シンプソン他)に記載されているトリチルヒドラジドおよびホルミルフェニルヒドラジド、米国特許第5,654,130号(マリー)に記載されている2−置換マロンジアルデヒド化合物、および米国特許第5,705,324号(マリー)に記載されている4−置換イソオキサゾール化合物である。さらなる現像剤が米国特許第6,100,022号(イノウエ他)に記載されている。補助現像剤のさらに別の種類としては、置換アクリロニトリル化合物、例えば米国特許第5,635,339号(マリー)にHET−01およびHET−02として分類されている化合物および米国特許第5,545,515号(マリー他)におけるCN−01からCN−13の化合物が挙げられる。
【0127】
様々なコントラスト増強剤を添加することができる。そのような材料は、グラフィックアーツにおいて有用な印刷版および複製用フィルムを調製するため、または医学診断フィルムの核形成に対して有用である。そのような薬剤の例は、米国特許第6,150,084号(イトー他)、同第6,620,582号(ヒラバヤシ)、および同第6,764,385号(ワタナベ他)に記載されている。一定のコントラスト増強剤を、特定の補助還元剤を含むあるフォトサーモグラフィ材料中では好ましくは使用する。有用なコントラスト増強剤としては、米国特許第5,545,505号(シンプソン)に記載されているヒドロキシルアミン、アルカノールアミンおよびアンモニウムフタラメート化合物、例えば米国特許第5,545,507号(シンプソン他)に記載されているようなヒドロキサム酸化合物、例えば米国特許第5,558,983号(シンプソン他)に記載されているN−アシルヒドラジン化合物、および米国特許第5,637,449号(ハリング他)に記載されている水素原子ドナー化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0128】
サーモグラフィ材料中にカルボン酸銀塩による銀源を使用する場合、好ましい還元剤は、少なくとも2つのヒドロキシ基を同じ芳香核にオルトまたはパラの関係で有する芳香族ジおよびトリヒドロキシ化合物である。例は、ヒドロキノンおよび置換ヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、没食子酸および没食子酸エステル(例えば、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル)、ならびにタンニン酸である。
【0129】
特に好ましいのは、オルト関係において2個までのヒドロキシ基を有するカテコールタイプの還元剤である。
【0130】
カテコールタイプの還元剤の1つの特に好ましい種類は、ベンゼン化合物であって、そのベンゼン核が、核の2,3−位に存在する2つまでのヒドロキシ基によって置換されており、核の1位にその核にカルボニル基によって結合している置換基を有するものである。このタイプの化合物としては、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、および2,3−ジヒドロキシ安息香酸エステル(例えば、2,3−ジヒドロキシ安息香酸メチル、および2,3−ジヒドロキシ安息香酸エチルなど)が挙げられる。
【0131】
カテコールタイプの還元剤の別の特に好ましい種類は、ベンゼン化合物であって、そのベンゼン核が、核の3,4−位に存在する2つまでのヒドロキシ基によって置換されており、核の1位にその核にカルボニル基によって結合している置換基を有するものである。このタイプの化合物としては、例えば、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エステル(例えば、3,4−ジヒドロキシ安息香酸メチル、および3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルなど)、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、およびフェニル(3,4−ジヒドロキシフェニル)ケトンが挙げられる。3,4−ジヒドロキシベンゾニトリルも有用である。そのような化合物は、例えば米国特許第5,582,953号(オイテンデール他)に記載されている。
【0132】
還元剤のさらにもう1つの有用な種類としては、米国特許第3,440,049号(メーデ)に写真タンニング剤として記載されているポリヒドロキシスピロ−ビス−インダン化合物が挙げられる。
【0133】
芳香族ジおよびトリヒドロキシ還元剤は、また、ヒンダードフェノール還元剤との組合せで、さらに1つ以上のハイコントラストの補助現像主薬および補助現像剤コントラスト増強剤との組合せで使用することもできる。
【0134】
本明細書中に記載されている還元剤(またはその混合物)は一般に、エマルジョン層の1から15%(乾燥重量)として存在する。多層構造において、還元剤がエマルジョン層以外の層に添加される場合、それより少し高い比率の2から20重量%がより望ましい。さらに、本明細書に記載の還元剤(またはそれらの混合物)は、銀全体の少なくとも0.10および0.50モル/モル以下までの量で一般に存在し、好ましくは銀全体の0.10から0.30モル/モルの量で存在する。補助現像剤は、一般に、エマルジョン層コーティングの0.001%から1.5%(乾燥重量)の量で存在してよい。
【0135】
従って、好ましい実施形態において、この熱現像可能な材料は、感光性臭化銀またはヨウ化臭化銀、疎水性バインダ、有機カルボン酸の銀塩である非感光性被還元性銀イオン源、およびヒンダードフェノール、ヒンダードビスフェノールまたはそれらの組合せを含む還元剤組成物を含むフォトサーモグラフィ材料である。
【0136】
<その他の添加物>
当該サーモグラフィ材料は、他の添加剤、例えば保存寿命安定剤、カブリ防止剤、コントラスト増強剤(上記)、現像促進剤、アキュータンス色素、加工後安定剤または安定剤前駆物質、熱溶剤(メルトフォーマとしても知られている)および当業者には容易にわかる他の画像改質剤、も含有することができる。
【0137】
単独または組合せで使用することができる適当な安定剤としては、米国特許第2,131,038号(ブルッカー)および同第2,694,716号(アレン)に記載されているチアゾリウム塩、米国特許第2,886,437号(パイパー)に記載されているアザインデン、米国特許第2,444,605号(ハイムバッハ)に記載されているトリアザインドリジン、米国特許第3,287,135号(アンダーソン)に記載されているウラゾール、米国特許第3,235,652号(ケナード)に記載されているスルホカテコール、英国特許第623,448号(キャロル他)に記載されているオキシム、米国特許第2,839,405号(ジョーンズ)に記載されている多価金属塩、米国特許第3,220,839号(ヘルツ)に記載されているチウロニウム塩、米国特許第2,566,263号(トリレリ)および同第2,597,915号(ダムシュローダー)に記載されているパラジウム塩、白金塩、および金塩および欧州特許第0559228号(フィリップ他)に記載されているヘテロ芳香族メルカプト化合物またはヘテロ芳香族ジスルフィド化合物が挙げられ、これらはすべて本明細書に引用する。
【0138】
ヘテロ芳香族メルカプト化合物が最も好ましい。好ましいヘテロ芳香族メルカプト化合物としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールおよび2−メルカプトベンズオキサゾールならびにこれらの混合物が挙げられる。ヘテロ芳香族メルカプト化合物は、一般に、エマルジョン層中の全銀1モル当り少なくとも0.0001モル(好ましくは0.001から1.0モル)の量でエマルジョン層中に存在する。
【0139】
上記の超色増感剤に加えて米国特許第6,475,710号(クドー他)に開示されているヘテロ原子を特徴とする大きな環式化合物を超色増感剤として使用することができる。
【0140】
他の有用なカブリ防止剤/安定剤は、米国特許第6,083,681号(リンチ他)に記載されている。さらに他のカブリ防止剤は、米国特許第5,028,523号(スコウグ)に記載されているような複素環式化合物の臭化水素酸塩(例えば、臭化水素酸ピリジニウム過臭化物)、米国特許第4,784,949号(ファム)に記載されているようなベンゾイル酸化合物、米国特許第5,686,228号(マリー他)に記載されているような置換プロペンニトリル化合物、米国特許第5,358,843号(サキザデー他)に記載されているようなシリルブロック型化合物、同時係属中の同一出願人による米国特許仮出願第11/284,928号(ハントおよびサキザデーにより2005年11月22日に出願)に記載されている1,3−ジアリール−置換尿素化合物、および欧州特許出願公開第0600587号(オリフ他)に記載されているようなトリブロモメチルケトンである。
【0141】
暗所安定性およびデスクトップ印刷安定性を改良するための安定剤として有用な添加剤は、同一出願人による米国特許出願公開第2006/0141404号(フィリップ他)に記載されている様々なホウ素化合物である。そのホウ素化合物は、0.010から0.50g/mの量で好ましくは添加する。
【0142】
画像形成した材料の加工後の印刷物の保存中の熱に対する安定性(「高温−暗所印刷物安定性」として知られる)を改善するための安定剤としても有用であるのは、同時係属中の同一出願人による米国特許仮出願第11/351,773号(チェン−ホおよびサキザデーにより2006年2月10日に出願)に記載されているアリールボロン酸化合物である。
【0143】
当該フォトサーモグラフィ材料は、式Q−(Y)−C(ZX)であって、式中Qは、アルキル基、アリール(ヘテロアリールを含む)基または複素環基を表し、Yは、二価の結合基を表し、nは、0または1を表し、ZおよびZは、それぞれハロゲン原子を表し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、または電子吸引基を表す式によって表すことができる1つ以上のポリハロゲン安定剤も好ましくは含む。このタイプの特に有用な化合物は、Qがアリール基を表し、Yが(C=O)またはSOを表し、nが1であり、Z、Z、およびXがそれぞれ臭素原子を表すポリハロゲン安定剤である。−SOCBr基を含有するそのような化合物の例は、米国特許第3,874,946号(コスタ他)、同第5,369,000号(サキザデー他)、同第5,374,514号(カーク他)、同第5,460,938号(カーク他)、同第5,464,737号(サキザデー他)、同第5,594,143号(カーク他)、および米国特許出願公開第2003/0134238号(ヨシオカ)に記載されている。そのような化合物の例としては、2−トリブロモメチルスルホニルベンゼン、2−トリブロモメチルスルホニルピリジン、2−トリブロモメチルスルホニルキノリン、および2−トリブロモメチルスルホニル−5−メチル−1,3,4−チアジアゾールが挙げられるが、これらには限定されない。このポリハロゲン安定剤は、1つ以上の層中に銀全体の0.005から0.01モル/モル、好ましくは銀全体の0.01から0.05モル/モルの全体量で存在させることができる。
【0144】
画像形成中の熱の適用時に安定剤を放出することができる安定剤前駆化合物もまた、米国特許第5,158,866号(シンプソン他)、同第5,175,081号(クレプスキー他)、同第5,298,390号(サキザデー他)、および同第5,300,420号(ケニー他)に記載されているように使用することができる。さらに有用であるのは、同一出願人による米国特許出願公開第2006/0141403号(ラムスデン他)に記載されているブロックした脂肪族チオール化合物である。
【0145】
さらに、ベンゾトリアゾールの一定の置換スルホニル誘導体を、米国特許第6,171,767号(コング他)に記載されているように安定化化合物として使用することができる。
【0146】
画像を改良する「トナー」またはその誘導体は、熱現像可能材料の望ましい成分である。これらの化合物は、画像形成層に添加されたとき、画像の色を、黄色を帯びたオレンジ色から黒褐色または青黒色に変化させる。一般に、本明細書に記載の1つ以上のトナーが、そのトナーが含まれる層の全乾燥重量を基準にして0.01%から10%(より好ましくは0.1%から10%)の量で存在する。トナーは、フォトサーモグラフィまたはサーモグラフィエマルジョン層中または隣接する非画像形成層中に組み込むことができる。
【0147】
トナーとして有用な化合物は、米国特許第3,080,254号(グラント、ジュニア)、同第3,847,612号(ウィンスロー)、同第4,123,282号(ウィンスロー)、同第4,082,901号(ラリドン他)、同第3,074,809号(オーウェン)、同第3,446,648号(ワークマン)、同第3,844,797号(ウィレムス他)、同第3,951,660号(ハーゲマン他)、同第5,599,647号(デフィーウ他)および英国特許第1,439,478号(AGFA)に記載されている。
【0148】
さらなる有用なトナーは、米国特許第3,832,186号(マスダ他)、同第6,165,704号(ミヤケ他)、同第5,149,620号(シンプソン他)、同第6,713,240号(リンチ他)、および同第6,841,343号(リンチ他)に記載されているような置換および非置換メルカプトトリアゾールである。
【0149】
フタラジンおよびフタラジン誘導体[例えば、本明細書に引用する米国特許第6,146,822号(アサムラ他)に記載されているもの]、フタラジノン、およびフタラジノン誘導体もまた有用なトナーである。
【0150】
1つ以上のヒドロキシフタル酸と1つ以上のフタラジノン化合物との組合せをサーモグラフィ材料中に含むことができる。ヒドロキシフタル酸化合物は、少なくとも1つのカルボキシ基に対してメタ位にある単一のヒドロキシ置換基を有する。好ましくは、これらの化合物は4位にヒドロキシ基と1位および2位にカルボキシ基を有する。このヒドロキシフタル酸は、置換基がサーモグラフィ材料中でそれらの意図した効果に悪影響を及ぼさない限り、ベンゼン環のその他の位置においてさらに置換することができる。ヒドロキシフタル酸の混合物を、必要に応じて使用することができる。
【0151】
有用なフタラジノン化合物は、それらがコートされる配合物中に完全に溶解する十分な溶解性を有するものである。好ましいフタラジノン化合物としては、6,7−ジメトキシ−1−(2H)フタラジノン、4−(4−ペンチルフェニル)−1−(2H)−フタラジノン、および4−(4−シクロヘキシルフェニル)−1−(2H)−フタラジノンが挙げられる。上記フタラジノン化合物の混合物を必要に応じて使用することができる。
【0152】
この組合せは、処理後に安定な青味がかった黒い画像を得ることを容易にする。好ましい実施形態において、ヒドロキシフタル酸対フタラジノンのモル比は、その材料を300から400℃のサーマルプリントヘッドを用いて50ミリ秒(50msec)未満、多くの場合20msec未満で画像形成する場合に、CIELABカラーシステムにより定義して、1.2の光学密度において−2よりマイナス(好ましくは−2.5よりマイナス)のa値を提供するのに十分なものである。好ましい実施形態において、フタラジノンのモル比は、ヒドロキシフタル酸と対比して1:1から3:1である。より好ましくは、その比は、2:1から3:1である。
【0153】
さらに、その画像形成された材料は、上の画像形成された材料が次いで70℃および30%RHで3時間保存された場合、CIELABカラーシステムにより定義して、1.2の光学密度において−1よりマイナスのa値を有する画像を提供する。
【0154】
直接のサーモグラフィ材料は、また、1つ以上のサーモグラフィ層中の被還元性銀イオン源との熱加工関係にある1つ以上のさらなるポリカルボン酸(上記のヒドロキシフタル酸以外のもの)および/またはそれらの無水物も含むことができる。そのようなポリカルボン酸は、置換または非置換の脂肪族化合物(例えば、グルタル酸およびアジピン酸)または芳香族化合物であり得、銀に対して少なくとも5モル%の比率の量で存在し得る。それらは、2つの遊離のカルボン酸が分子中に残存する限り、無水物または部分的にエステル化した形態のものを使用することができる。有用なポリカルボン酸は、例えば、米国特許第6,096,486号(エンメルズ他)に記載されている。
【0155】
画像の現像の速度を増し、銀のコーティング重量の減少を可能にする現像促進剤の添加もまた有用である。適当な現像促進剤としては、フェノール、ナフトール、およびヒドラジンカルボキサミドが挙げられる。そのような化合物は、例えば、吉岡康弘、山根勝敏、大関智之、Development of Rapid Dry Photothermographic Materials with Water−Base Emulsion Coating Method,AgX 2004:The International Symposium on Silver Halide Technology “At the Forefront of Silver Halide Imaging”,Final Program and Proceedings of IS&T and SPSTJ,Ventura,CA,Sept.13−15,2004,pp.28−31,Society for Imaging Science and Technology,Springfield,VA,米国特許第6,566,042号(ゴトウ他)、米国特許出願公開第2004/234906号(オオゼキ他)、同第2005/048422号(ナカガワ)、同第2005/118542号(モリ他)、および同第2006/0014111号(ゴトウ他)に記載されている。
【0156】
熱溶剤(またはメルトフォーマ)もまた、そのような化合物の組合せ(例えばスクシンイミドとジメチル尿素との組合せ)を含めて使用することができる。熱溶剤は、周囲温度においては固体であるが加工のために使用する温度では融解する化合物である。熱溶剤は、熱現像可能な感光性材料の様々な成分の溶媒として作用し、それは熱現像を促進する助けをし、それは銀イオンおよび/または複合体、および還元剤を含む様々な材料の拡散のための媒体を提供する。既知の熱溶剤は、米国特許第3,438,776号(ユデルソン)、同第5,064,753号(上記)、同第5,250,386号(アオノ他)、同第5,368,979号(フリードマン他)、同第5,716,772号(タグチ他)、および同第6,013,420号(ウインデンダー)に開示されている。熱溶剤はまた、同一出願人による米国特許出願公開第2006/0240366号(チェン−ホ他)にも記載されている。
【0157】
蛍光体(phosphor)は、励起時に赤外線、可視光、または紫外線を放射する材料であり、フォトサーモグラフィ材料中に組み込むことができる。特に有用な蛍光体は、X線放射に敏感であり、主としてスペクトルの紫外、近紫外、または可視領域(すなわち、100から700nm)の放射線を放射する。本質的蛍光体は、自然(すなわち本質的)に蛍光を発する材料である。「活性化された」蛍光体は、1種以上のドーパントが意図的に添加された、本質的蛍光体であってもなくてもよい基礎材料から構成された蛍光体である。これらのドーパントまたは活性剤は、蛍光体を「活性化」し、それに紫外線または可視光線を放射させる。複合的なドーパントを使用することができ、それ故蛍光体は、「活性剤(activator)」および「補助活性剤(co−activator)」の両方を含む。
【0158】
任意の通常のまたは有用な蛍光体を単独または混合物で使用することができる。例えば、有用な蛍光体が、蛍光増感紙に関する数多くの参考文献ならびにフォトサーモグラフィ材料を対象とする米国特許第6,440,649号(シンプソン他)および同第6,573,033号(シンプソン他)に記載されている。特に有用な蛍光体のいくつかは、主としてリン酸塩蛍光体およびホウ酸塩蛍光体として知られる「活性化された」蛍光体である。これら蛍光体の例は、米国特許出願公開第2005/0233269号(シンプソン他)に記載されている希土類リン酸塩、リン酸イットリウム、リン酸ストロンチウム、またはフルオロホウ酸ストロンチウム(セリウム活性化希土類またはリン酸イットリウム、あるいはユウロピウム活性化フルオロホウ酸ストロンチウムを含む)である。
【0159】
1つ以上の蛍光体を、フォトサーモグラフィ材料中の全体の銀の1モル当り少なくとも0.1モル、好ましくは0.5から20モルの量でフォトサーモグラフィ材料中に存在させることができる。上記のように、一般に、全体の銀の量は、少なくとも0.002モル/mである。蛍光体は、支持体の片面または両面の任意の画像形成層中に組み込むことができるが、それらは支持体の片面または両面の感光性ハロゲン化銀(1つ以上)としての同じ層(1つ以上)の中にあるのが好ましい。
【0160】
<バインダ>
感光性ハロゲン化銀(存在する場合)、非感光性の被還元性銀イオン源、還元剤組成物および他のあらゆる画像形成層添加剤は、一般に、本来疎水性または親水性である1つ以上のバインダと組合せる。従って、熱現像可能な材料を調製するためには水系配合物または有機溶媒系配合物のいずれを使用してもよい。どちらかまたは両方のタイプのバインダの混合物も使用することもできる。このバインダは、多くが疎水性の高分子材料(全体のバインダの少なくとも50乾燥重量%)から選択することが好ましい。
【0161】
典型的な疎水性バインダの例としては、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、メタクリル酸エステルコポリマ、無水マレイン酸エステルコポリマ、ブタジエン−スチレンコポリマ、および当業者には容易にわかる他の物質が挙げられる。コポリマ(ターポリマを含む)もポリマの定義に含まれる。ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールおよびポリビニルホルマール)およびビニルコポリマ(例えば、ポリ酢酸ビニルおよびポリ塩化ビニル)が特に好ましい。特に適する疎水性バインダは、品名MOWITAL(登録商標)(Kuraray America、ニューヨーク、ニューヨーク州)、S−LEC(登録商標)(Sekisui Chemical Company、トロイ、ミシガン州)、BUTVAR(登録商標)(Solutia,Inc.、セントルイス、ミズーリ州)およびPIOLOFORM(登録商標)(Wacker Chemical Company、エードリアン、ミシガン州)で入手できるポリビニルブチラール樹脂である。
【0162】
親水性バインダまたは水分散性ポリマラテックスポリマも配合物中に存在させることができる。有用な親水性バインダの例としては、タンパク質およびタンパク質誘導体、ゼラチンおよびゼラチン様誘導体(硬化されているものまたは未硬化のもの)、セルロース材料、例えばヒドロキシメチルセルロースおよびセルロースエステル、アクリルアミド/メタクリルアミドポリマ、アクリル/メタクリルポリマ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルラクタム)、アクリル酸スルホアルキルまたはメタクリル酸スルホアルキルのポリマ、加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、多糖類および水性写真用エマルジョンとして一般に知られている他の合成または天然素材のビヒクル(例えば、上記のResearch Disclosure、第38957項を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。カチオン性デンプンも、米国特許第5,620,840号(マスカスキー)および同第5,667,995号(マスカスキー)に記載されているように、ハロゲン化銀平板粒子用の解膠剤(peptizer)として使用することができる。
【0163】
水性溶媒中に分散させることができる一実施形態のポリマとしては、疎水性ポリマ類、例えばアクリルポリマ、ポリ(エステル)、ゴム(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(オレフィン)などが挙げられる。上記ポリマで使用できるのは、直鎖ポリマ、分枝ポリマ、または架橋ポリマである。単一のモノマが重合しているいわゆるホモポリマ、または2種類以上のモノマが重合しているコポリマもまた使用可能である。コポリマの場合、それはランダムコポリマまたはブロックコポリマであり得る。これらポリマの分子量は、数平均分子量で、5,000から1,000,000、好ましくは10,000から200,000の範囲である。小さ過ぎる分子量を有するものは画像形成層を形成するときに不十分な機械的強度を示し、大き過ぎる分子量を有するものは、フィルム化特性が劣ることになるため、同様に好ましくない。さらに、架橋性ポリマラテックスは使用するのに特に好ましい。好ましいポリマラテックスの具体例としては以下のものが挙げられる。
メタクリル酸メチル(70)−アクリル酸エチル(27)−メタクリル酸(3)のラテックス。
メタクリル酸メチル(70)−アクリル酸2−エチルヘキシル(20)−スチレン(5)−アクリル酸(5)のラテックス。
スチレン(50)−ブタジエン(47)−メタクリル酸(3)のラテックス。
スチレン(68)−ブタジエン(29)−アクリル酸(3)のラテックス。
スチレン(71)−ブタジエン(26)−アクリル酸(3)のラテックス。
スチレン(70)−ブタジエン(27)−イタコン酸(3)のラテックス。
スチレン(75)−ブタジエン(24)−アクリル酸(1)のラテックス。
スチレン(60)−ブタジエン(35)−ジビニルベンゼン(3)−メタクリル酸(2)のラテックス。
スチレン(70)−ブタジエン(25)−ジビニルベンゼン(2)−アクリル酸(3)のラテックス。
塩化ビニル(50)−メタクリル酸メチル(20)−アクリル酸エチル(20)−アクリロニトリル(5)−アクリル酸(5)のラテックス。
塩化ビニリデン(85)−メタクリル酸メチル(5)−アクリル酸エチル(5)−メタクリル酸(5)のラテックス。
エチレン(90)−メタクリル酸(10)のラテックス。
スチレン(70)−アクリル酸−2−エチルヘキシル(27)−アクリル酸(3)のラテックス。
メタクリル酸メチル(63)−アクリル酸エチル(35)−アクリル酸(2)のラテックス。
スチレン(70.5)−ブタジエン(26.5)−アクリル酸(3)のラテックス。
スチレン(69.5)−ブタジエン(27.5)−アクリル酸(3)のラテックス。
【0164】
括弧内の数字は重量%を表す。上記のポリマラテックスは、市販されている。それらは単独で使用してもよく、または2つ以上の種類をブレンドして使用することもできる。
【0165】
バインダとして使用するためのポリマラテックスとして特に好ましいのは、スチレン−ブタジエンコポリマのそれである。スチレン−ブタジエンコポリマを構成するスチレンのモノマ単位対ブタジエンのそれの重量比は、好ましくは40:60から95:5の範囲である。さらに、スチレンのモノマ単位およびブタジエンのそれは、コポリマに対して60重量%から99重量%の割合を好ましくは占める。その上、そのポリマラテックスは、アクリル酸またはメタクリル酸を、スチレンのモノマ単位およびブタジエンのそれの全体重量に対して、好ましくは1重量%から6重量%、より好ましくは2重量%から5重量%の範囲で含有する。分子量の好ましい範囲は、上記のものと同じである。
【0166】
好ましいラテックスとしては、スチレン(50)−ブタジエン(47)−メタクリル酸(3)、スチレン(60)−ブタジエン(35)−ジビニルベンゼン−メタクリル酸メチル(3)−メタクリル酸(2)、スチレン(70.5)−ブタジエン(26.5)−アクリル酸(3)および市販のLACSTAR−3307B、7132C、およびNipol Lx416が挙げられる。そのようなラテックスは、米国特許出願公開第2005/0221237号(サカイ他)に記載されている。
【0167】
様々なバインダ用の硬化剤が必要に応じて存在してもよい。有用な硬化剤は周知であり、そのような硬化剤としては、例えば欧州特許第0600586号(フィリップ,ジュニア他)に記載されているようなジイソシアネート化合物、米国特許第6,143,487号(フィリップ,ジュニア他)および欧州特許出願公開第0640589号(ガスマン他)に記載されているようなビニルスルホン化合物、米国特許第6,190,822号(ディカーソン他)に記載されているようなアルデヒドおよび様々なその他の硬化剤が挙げられる。フォトサーモグラフィ材料に使用される親水性バインダは、一般に、いずれかの従来型硬化剤を使用して部分的または完全に硬化される。有用な硬化剤は周知であり、例えば、T.H.ジェームス、The Theory of the Photographic Process,Fourth Edition,Eastman Kodak Company,ロチェスター、ニューヨーク州、1977年、第2章、77〜78頁に記載されている。
【0168】
熱現像可能材料の比率および活性が特定の現像時間および温度を必要とする場合、バインダ(1つ以上)はこれらの条件に耐えることができなければならない。疎水性バインダが使用される場合、そのバインダ(またはそれらの混合物)は、120℃で60秒間は分解しないか、その構造的完全性を失わないことが好ましい。親水性バインダが使用される場合、そのバインダは、150℃で60秒間は分解しないか、その構造の完全性を失わないことが好ましい。そのバインダは、177℃で60秒間は分解しないか、その構造の完全性を失わないことがさらに好ましい。
【0169】
ポリマバインダ(1つ以上)は、そこに分散される成分を担持するために十分な量で使用される。好ましくは、そのバインダは、層の全乾燥重量を基準にして10重量%から90重量%のレベル(さらに好ましくは20重量%から70重量%のレベル)で使用される。熱現像可能な材料は、支持体の両面上の画像形成層および非画像形成層(特に支持体の画像形成側)の中に少なくとも50重量%の疎水性バインダを含むことが特に役立つ。
【0170】
<支持体材料>
熱現像可能な材料は、望ましい厚さを有し、1つ以上のポリマ材料を含む、好ましくは可撓性の透明フィルムであるポリマの支持体を含む。それらは、熱現像中に寸法安定性を示すこと、および上積層との適切な接着性を有することが求められる。このような支持体の製造に有用なポリマ材料としては、ポリエステル[例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンナフタレート)]、酢酸セルロースおよび他のセルロースエステル類、ポリビニルアセタール、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ならびにポリスチレンが挙げられる。好ましい支持体は、良好な熱安定性を有するポリマ、例えばポリエステルおよびポリカーボネートを含む。支持体材料は、また、収縮を減少し、寸法安定性を上昇させるために処理またはアニールをすることができる。
【0171】
米国特許第6,630,283号(シンプソン他)に記載されているような少なくとも2つの異なるポリマ材料の多数の交互層を含む透明多層ポリマ支持体の使用もまた有用である。別の支持体は、米国特許第5,795,708号(ブテット)に記載されているように、二色性のミラー層を含む。
【0172】
高温に対して安定である着色ポリマフィルムおよび樹脂コート紙などの不透明支持体も使用することができる。
【0173】
支持体材料は、必要に応じて様々な着色剤、顔料、ハレーション防止色素またはアキュータンス色素を含有することができる。例えば、支持体は、得られる画像形成されたフィルムに青色を提供する1つ以上の色素を含むことができる。支持体材料は、上積層の接着を改善するために従来の手順(コロナ放電など)を用いて処理してもよいし、または下引き層(subbing layer)もしくは他の接着促進層を使用することができる。
【0174】
<サーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ配合物ならびに構造物>
サーモグラフィおよびフォトサーモグラフィエマルジョン層(1つ以上)のための有機溶媒系コーティング配合物は、様々な成分を、1つ以上の溶媒、例えばトルエン、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、アセトン、メタノール、またはテトラヒドロフラン、あるいはそれらの混合物を通常は含む適当な有機溶媒系の中で1つ以上のバインダと混合することによって調製することができる。メチルエチルケトンが好ましいコーティング溶媒である。
【0175】
別法では、望ましい画像形成成分は、水もしくは水−有機溶媒混合物中の親水性バインダ(ゼラチン、またはゼラチン誘導体など)、または疎水性の水分散性ポリマラテックス(スチレン−ブタジエンラテックスなど)と共に配合して水性コーティング配合物を提供することができる。
【0176】
熱現像可能な材料は、米国特許第2,960,404号(ミルトン他)に記載されているポリ(アルコール)およびジオール、米国特許第2,588,765号(ロビンス)および同第3,121,060号(デュアン)に記載されている脂肪酸またはエステル、および英国特許第955,061号(デュポン)に記載されているシリコーン樹脂などの可塑剤および潤滑剤を含有することができる。この材料は、また、米国特許第2,992,101号(ジェリー他)および同第2,701,245号(リン)に記載されているような無機および有機の艶消し剤を含むこともできる。ポリマ状フッ素化界面活性剤も、米国特許第5,468,603号(クブ)に記載されているように、1つ以上の層において有用であり得る。
【0177】
フォトサーモグラフィ材料は、また、1つ以上のエマルジョン層の上に表面保護層を含むことができる。材料からの発光を減少する層も存在させることができ、米国特許第6,352,819号(ケニー他)、同第6,352,820号(バウアー他)、同第6,420,102号(バウアー他)、同第6,667,148号(ラオ他)、および同第6,746,831号(ハント)に記載されているポリマ状のバリヤー層が含まれる。
【0178】
本明細書に引用されている米国特許第6,436,616号(ガイスラー他)は、フォトサーモグラフィ材料を改質して「木目調」効果として知られているもの、すなわち均等でない光学密度を低減する様々な手段について記載している。
【0179】
1つの層の別の層への接着性を促進する層も知られており、米国特許第4,741,992号(プシェズジーキ)、同第5,804,365号(バウアー他)、および同第5,891,610号(バウアー他)に記載されている。接着性は、米国特許第5,928,857号(ガイスラー他)に記載されているような特定のポリマ粘着性物質を用いて促進することもできる。
【0180】
材料からの発光を減少する層も存在させることができ、米国特許第6,352,819号(ケニー他)、同第6,352,820号(バウアー他)、同第6,420,102号(バウアー他)、同第6,667,148号(ラオ他)、および同第6,746,831号(ハント)に記載されているポリマ状のバリヤー層が含まれる。
【0181】
まだらおよびその他の表面異常は、米国特許第5,532,121号(ヨンコスキー他)に記載されているフッ素化ポリマを組み込むか、または例えば米国特許第5,621,983号(ルーデマン他)に記載されているような特定の乾燥技術を用いることによって減少させることができる。
【0182】
熱現像可能な材料は、また、支持体のおもて面上に1つ以上の帯電防止層または導電層を含めることができる。かかる層は、以下に記されているようなナノ粒子類(金属酸化物など)、またはこの目的のために技術的に知られているその他の従来の帯電防止剤、例えば、可溶性塩(例えば塩化物もしくは硝酸塩)、蒸着した金属層、またはイオン性もしくは導電性ポリマ、例えばポリチオフェンおよび米国特許第2,861,056号(ミンスク)および同第3,206,312号(ステルマン他)に記載されているものなど、あるいは不溶性無機塩、例えば米国特許第3,428,451号(トレボイ)に記載されているものなど、導電性下層、例えば米国特許第5,310,640号(マーキン他)に記載されているものなど、電子的導体金属のアンチモン酸塩粒子、例えば下記のものおよび米国特許第5,368,995号(クリスチャン他)に記載されているものなど、ポリマバインダに分散されている導電性金属含有粒子、例えば米国特許第5,547,821号(メルポルダー他)および米国特許第7,056,651号(シンプソン他)に記載されているもの、ならびに多くの出版物に記載されているフルオロケミカル物質を含むことができる。
【0183】
フォトサーモグラフィおよびサーモグラフィ材料は、また、Research Disclosure、1992年11月、第34390項に記載されている磁気記録材料、または透明な磁気記録層、例えば米国特許第4,302,523号(オードラン他)に記載されているような透明支持体の下面に磁粉を含有する層を役立つように含めることができる。
【0184】
画像鮮鋭度を推進するため、フォトサーモグラフィ材料は、アキュータンス色素および/またはハレーション防止色素を含有する1つ以上の層を含むことができる。これらの色素は、露光波長に近いところの吸収を有するように選択し、散乱光を吸収するように設計する。1つ以上のハレーション防止組成物を、支持体、裏面層、下層、または上塗り中に組み込むことができる。さらに、1種以上のアキュータンス色素を1つ以上のおもて面の画像形成層中に組み込むことができる。
【0185】
ハレーション防止色素およびアキュータンス色素として有用な色素としては、米国特許第5,380,635号(ゴメツ他)、同第6,063,560号(スズキ他)、および欧州特許出願公開第1083459号(キムラ)に記載されているスクアレン色素、欧州特許出願公開第0342810号(ライヒテル)に記載されているインドレニン色素、および米国特許第6,689,547号(ハント他)に記載されているシアニン色素が挙げられる。
【0186】
米国特許第5,135,842号(キッチン他)、同第5,266,452号(キッチン他)、同第5,314,795号(ヘランド他)、同第6,306,566号(サクラダ他)、特開2001−142175(羽生他)および特開2001−183770(羽生他)に記載されている、加工中に熱で脱色または漂白するアキュータンス色素またはハレーション防止色素を含む組成物の利用も有用である。特開平11−302550(藤原)、特開2001−109101(安達)、特開2001−51371(矢吹他)および特開2000−029168(野呂)にもまた、有用な漂白組成物が記載されている。
【0187】
その他の有用な熱漂白可能なハレーション防止組成物としては、オキソノール色素などの赤外線吸収化合物、またはヘキサアリールビイミダゾール(「HABI」としても知られている)と併用される様々なその他の化合物、あるいはそれらの混合物を挙げることができる。HABI化合物は、米国特許第4,196,002号(レビンソン他)、同第5,652,091号(ペリー他)、および同第5,672,562号(ペリー他)に記載されている。このような熱漂白可能な組成物の例は、米国特許第6,455,210号(アービング他)、同第6,514,677号(ラムスデン他)、および同第6,558,880号(ゴスワミ他)に記載されている。
【0188】
使用の実際の条件下では、これらの組成物は、漂白を与えるために、少なくとも90℃の温度で少なくとも0.5秒間(好ましくは100℃から200℃の温度で5から20秒間)加熱する。
【0189】
フォトサーモグラフィ材料にとっては、一般に1つ以上のフォトサーモグラフィ層(1つ以上)に組み込んで、フォトサーモグラフィ材料の露光波長において少なくとも0.1(好ましくは少なくとも0.6)の支持体の画像形成側のすべての層の全体の吸光度(または光学密度)を提供する1つ以上の放射線吸収物質を含むことが望ましい。支持体の裏面(非画像形成)側のすべての層についての露光波長における全体の吸光度(または光学密度)が、少なくとも0.2であることもまた望ましい。
【0190】
熱現像可能な配合物は、線巻ロッドコーティング、浸漬コーティング、エアナイフコーティング、カーテンコーティング、スライドコーティング、スロット−ダイコーティング、または米国特許第2,681,294号(ベギン)に記載されているタイプのホッパーを使用する押出コーティングを含む様々なコーティング手順によりコートすることができる。層は、一度に一層をコートすることができ、または米国特許第2,761,791号(ラッセル)、同第4,001,024号(ディットマン他)、同第4,569,863号(キオプケ他)、同第5,340,613号(ハンザリク他)、同第5,405,740号(ラベル)、同第5,415,993号(ハンザリク他)、同第5,525,376号(レオナード)、同第5733608号(ケッセル他)、同第5849363号(ヤペル他)、同第5,843,530号(ジェリー他)、同第5,861,195号(バーヴェ他)、および英国特許第837,095号(イルフォード)に記載されている手順により2つ以上の層を同時にコートすることができる。エマルジョン層の代表的なコーティングギャップは、10から750μmであり得、その層は、20℃から100℃の温度で、押し込み空気(forced air)の中で乾燥させることができる。層の厚さは、X-rite Corporation(グランビル、ミシガン州)から入手できる301ビジュアルオプティクスを装備したX-rite Model 361/V濃度計により測定して、0.2より大きく、より好ましくは0.5から5以上の最大画像濃度を生じさせるように選択することが好ましい。
【0191】
支持体へのエマルジョン配合物の塗布後または塗布と同時に保護オーバーコート配合物をそのエマルジョン配合物上に塗布することができる。
【0192】
好ましくは、2つ以上の層配合物は、スライドコーティングを用いて、第2の層がまだ湿潤している間にその第2の層の表面に第1の層をコートすることにより支持体に同時に塗布する。これらの層をコートするために用いる第1の流体および第2の流体は、同一かまたは異なる溶媒であり得る。例えば、保護オーバーコート配合物は、支持体へのエマルジョン配合物(1つ以上)の塗布と同時に塗布することができる。同時コーティングを用いて、支持体のおもて面、裏面または両面に層を塗布することができる。
【0193】
他の実施形態では、米国特許第6,355,405号(ルーデマン他)に記載されているように、下記の2つ以上のポリマの単一相混合物を含む「キャリヤ」層配合物を支持体に直接塗布することができ、それによって、それらをエマルジョン層(1つ以上)の下に配置することができる。そのキャリヤ層配合物は、エマルジョン層配合物(1つ以上)および任意のオーバーコート層または表面保護層と同時に塗布することができる。
【0194】
<裏面組成物および層>
熱現像可能な材料は、その最も単純な形態において、サーモグラフィまたはフォトサーモグラフィ画像形成化学作用をその片面(すなわちおもて面または画像形成面)に有するポリマ支持体を含み、そのポリマ支持体の裏面には、少なくとも2つのタイプの「導電体」:(1)1つ以上の導電性金属化合物のナノ粒子、および(2)1つ以上の有機溶媒可溶性無機アルカリ金属塩帯電防止性化合物、のそれぞれを含む少なくとも1つの埋め込み導電性裏面層が配置されている。
【0195】
無機アルカリ金属塩帯電防止性化合物について、有用なアルカリ金属カチオンの例は、リチウム(+1)およびナトリウム(+1)である。有用なアニオンの例としては、硝酸塩(−1)およびテトラフルオロホウ酸塩(−1)が挙げられる。代表的な有機溶媒可溶性アルカリ金属塩帯電防止性化合物としては、硝酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、およびテトラフルオロホウ酸ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。硝酸リチウムが最も好ましい。
【0196】
1つ以上の有機溶媒可溶性無機アルカリ金属塩帯電防止性化合物は、導電性金属ナノ粒子の量に対して5重量%から200重量%の量で存在する。好ましくは、それらは15重量%から150重量%の量で存在する。
【0197】
有用な導電性金属化合物のナノ粒子としては、ホウ化物、窒化物、および炭化物の導電性ナノ粒子、例えば、TiB、ZrB、NbB、TaB、CrB、MoB、WB、LaB、ZrN、TiN、TiC、WC、HfC、HfNおよびZrC、二元金属酸化物の導電性ナノ粒子、例えば、TiO、SnO、Al、ZrO、In、ZnO、WO、VおよびMoO、ならびに複合金属酸化物の導電性ナノ粒子、例えば針状および非針状アンチモン酸亜鉛(ZnSb)、インジウムをドープした酸化スズ、アンチモンをドープした酸化スズ、アルミニウムをドープした酸化亜鉛およびニオブをドープした酸化チタンが挙げられるがこれらには限定されない。導電性金属酸化物のナノ粒子が好ましく、技術的に導電性「複合」金属酸化物として知られている(技術的に「三元」金属酸化物または「化合物」金属酸化物としても知られている)もののナノ粒子はより好ましい。複合金属酸化物は、その構造が2種以上の金属および酸素を含む金属酸化物である。その構造は結晶性であるかまたは無定形であり得る。複合金属酸化物のアンチモン酸亜鉛のナノ粒子が最も好ましい。その酸化物の化学量論は、正確であっても正確でなくてもよく、あるいは1つの金属は「ドーパント」として存在してもよい。
【0198】
導電性金属化合物の好ましいナノ粒子は、0.01〜0.5g/mの量で好ましくは存在する。それらは埋め込み導電性裏面層の重要な導電性成分であり、すべての導電性材料により供給される導電性の20〜80%を提供することができる。
【0199】
上記の導電性金属アンチモン酸塩ナノ粒子は一般に次の構造IまたはIIによって表される組成を有する。
+2Sb+5 (I)
(式中、Mは、亜鉛、ニッケル、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、またはコバルトである)
Ma+3Sb+5 (II)
(式中Maは、インジウム、アルミニウム、スカンジウム、クロム、鉄、またはガリウムである)。
【0200】
従って、これらの粒子は、一般にアンチモンをドープした金属酸化物である。
【0201】
好ましくは、非針状金属アンチモン酸塩ナノ粒子は、アンチモン酸亜鉛(ZnSb)である。いくつかの導電性金属アンチモン酸塩が、CELNAX(登録商標)CX−Z641Mの商標名のもとで60%(固形分)のメタノール中のオルガノゾル分散体として入手できる、好ましい非針状アンチモン酸亜鉛(ZnSb)を含めてNissan Chemical America Corporationから市販されている。別法では、金属アンチモン酸塩粒子は、例えば米国特許第5,457,013号(クリスチャン他)およびそこに引用されている参考文献に記載されている方法を用いて調製することができる。
【0202】
好ましい金属アンチモン酸塩粒子は、「針状」粒子とは対照的に主に非針状粒子の形をしている。「非針状」粒子とは、針に似ていない、すなわち針状ではないことを意味する。従って、金属アンチモン酸塩粒子の形状は、粒状、球状、卵形、立方体、ひし形、平板状、4面体、8面体、20面体、面どりされた立方体、面どりされたひし形、または任意のその他の非針状形であり得る。一般に、これらの金属粒子は、BET法を用いて粒子の最大寸法を測定して、15〜20nmの平均直径を有する。
【0203】
埋め込み導電性裏面層は、1つ以上のバインダ(以下に詳細が記されている)を、乾燥した埋め込み導電性裏面層の5〜50重量%、好ましくは5〜40重量%の量で含む。導電性材料の全体量を定義するもう1つの方法は、それらが埋め込み導電性裏面層中に、乾燥した層状被覆の0.05〜2g/m(好ましくは0.1〜0.4g/m、より好ましくは0.1〜0.2g/m)の量で一般に存在するというものである。異なるタイプの金属ナノ粒子と異なるタイプの有機溶媒可溶性無機アルカリ金属塩帯電防止化合物との混合物を必要に応じて使用することができる。全体のバインダ対全体の導電性材料の最適な比率は、使用される特定のバインダ、導電性材料の被覆率、および導電層の乾燥した厚さによって変動し得る。当業者であれば望ましい導電性および隣接する層および/または支持体への接着を達成するための最適条件を究明することができよう。
【0204】
支持体がポリエステル樹脂である1つの構造において、埋め込み導電性裏面層配合物は、本明細書に記載の2つ以上のポリマの単一相の混合物ならびに1つ以上の金属酸化物および1つ以上の有機溶媒可溶性無機アルカリ金属塩帯電防止化合物を含む。好ましいバインダは、第1のポリマとしてのポリエステル樹脂と、第2のポリマとしてのポリビニルアセタール、例えばポリビニルブチラールまたはセルロースエステルポリマ、例えば酢酸酪酸セルロースとの単一相の混合物である。好ましいポリビニルブチラールは、少なくとも8,000であり30,000未満の分子量を有するポリビニルブチラールである。好ましいセルロースエステルポリマは、70,000の分子量を有する酢酸酪酸セルロース(CAB)である。
【0205】
埋め込み導電性裏面層中の「第1の」ポリマ対「第2の」ポリマの重量比は、一般には10:90〜60:40、好ましくは20:80〜50:50である。より好ましいポリマの組合せは、40:60の重量比を有するポリエステルと酢酸酪酸セルロースとの組合せである。
【0206】
埋め込み導電性裏面層は、また、本明細書で第1のポリマまたは第2のポリマとして定義しないさらに別のポリマを含むことができる。これらの追加のポリマは、疎水性ポリマまたは有機物可溶性親水性ポリマのいずれかであり得る。存在することができるいくつかの親水性ポリマとしては、タンパク質またはポリペプチド、例えばゼラチンおよびゼラチン誘導体、多糖類、アラビアゴム、デキストラン、ポリアクリルアミド(ポリメタクリルアミドを含む)、ポリビニルピロリドンおよび当業者には容易に思いつくその他のものが挙げられるがこれらには限定されない。
【0207】
導電性金属ナノ粒子および有機溶媒可溶性アルカリ金属塩帯電防止化合物を含む「導電性材料」は、共に、70°F(21.1℃)および50%相対湿度において1×1012ohm/sq(12 log ohm/sq)以下、好ましくは1×1011ohm/sq(11 log ohm/sq)以下の裏面水電極抵抗(WER)を提供し、同時に、70°F(21.1℃)および20%相対湿度において100秒未満(好ましくは25秒以下)の静電気減衰時間を提供するために十分な量で一般に存在する。この値を獲得するために、すべての導電性材料の量は、乾燥した埋め込み導電性裏面層の重量の大まかには50%を超えて最高95%まで、好ましくは60〜95%を含む。従って、乾燥した埋め込み導電性裏面層中のポリマ混合物の重量%は、5〜50重量%、好ましくは5〜40重量%である。全体の導電性材料の量を定義するもう1つの方法は、それらは埋め込み導電性裏面層中に、乾燥した層のコーティング重量に対して大まかに0.05〜2g/m(好ましくは0.1〜0.4g/m)の量で存在するというものである。異なるタイプの導電性材料の混合物を、少なくとも1つの導電性材料が導電性金属ナノ粒子の形をしており、もう1つが有機溶媒可溶性アルカリ金属塩を含む限りは、必要に応じて使用することができる。全体のバインダ対全体の導電性材料の最適な比率は、使用される特定の化合物およびバインダ、導電層の乾燥した厚さ、および隣接層の乾燥した厚さによって変動し得る。当業者であれば望ましい導電性および隣接する層および/または支持体への接着を達成するための最適条件を究明することができよう。
【0208】
最も好ましい実施形態においては、埋め込み導電性裏面層は、支持体プラスすべての裏面層の全体のヘーズが、ASTM D1003を用い、さらに下記のようにして測定して、15%以下、好ましくは13%以下、最も好ましくは10%以下であるために、ヘーズには少ししか関与しないことが望ましい。
【0209】
埋め込み導電性裏面層の支持体への接着性は、ASTM D3359−92Aを用い、さらに下記のようにして測定して、少なくとも3の値を有することが、最も好ましい実施形態においてはさらに望ましい。
【0210】
上記の導電性金属ナノ粒子および有機溶媒可溶性無機アルカリ金属塩化合物を含有する埋め込み導電性裏面層は、一般に1つ以上の有機溶媒からコートする。本発明において有用な有機溶媒は、0以上の「clogP」値を有する疎水性溶媒である。そのような溶媒としては、ケトン類[例えばメチルエチルケトン(2−ブタノン、MEK)、またはメチルイソブチルケトン(MIBK)]、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、または任意の2つ以上のこれら溶媒の任意の混合物が挙げられるがそれらに限定されない。これらの疎水性有機溶媒は、少量(10%未満、より好ましくは5%未満)の親水性有機溶媒、例えばメタノールまたはエタノールおよび4%未満の水を含有することができる。
【0211】
clogP値は、オクタノール−水分配係数(P)の計算された推定値であり、化学物質の親油性または疎水性を説明するために広く用いられている物理的特性である。それは化学物質の2相系の平衡状態におけるオクタノール相中の濃度対水層中のその濃度の比である。測定値は<10−4〜>10+8(少なくとも12の桁数)に及ぶため、その値を特徴付けるために対数(logP)を普通は用いる。対数オクタノール−水分配係数プログラム(Log Octanol−Water Partition Coefficient Program)KOWWIN(登録商標)を用いて有機化合物のオクタノール−水分配係数の対数(logP)を推測することができる。このプログラムは、ウェブページ<www.epa.gov/oppt/exposure/docs/episuitedl.htm>からの無料のインターネットダウンロードを介して米国環境保護庁から入手できる。KOWWIN(登録商標)は、logP値を推測するために化学構造のみを必要とする。構造は、SMILES(Simplified Molecular Input Line Entry System)記法によりKOWWIN(登録商標)に入力する。このKOWWIN(登録商標)プログラムおよび推定方法は、Syracuse Research Corporation(ノースシラキュース、ニューヨーク州)のW.メランにより開発され、W.M.メランおよびP.H.ハワード、J.Pharm.Sci.1995,84,83−92、表題:Atom/fragment Method for Estimating Octanol−Water Partition Coefficientsに記載されている。本明細書で用いられているすべての「clogP」の値はKOWWIN(登録商標)バージョン1.661を用いて計算した。
【0212】
埋め込み導電性裏面層は、比較的薄くてよい。例えば、それは0.05〜2μm、好ましくは0.1〜1μmの乾燥した厚さを有することができる。この薄い埋め込み導電性裏面層は、「キャリヤ」層として有用である。用語「キャリヤ層」は、複数の層がスライドコーティングを用いてコートされ、埋め込み伝導性裏面層が支持体に隣接する薄い層である場合にしばしば使用される。
【0213】
1つの好ましい実施形態において、埋め込み導電性裏面層は、ポリマおよび本明細書に記載の導電性材料を含有するキャリヤ層であり、支持体にプライマー層もしくは下引き層またはその他の接着促進手段、例えば支持体表面処理などを使用することなく支持体に直接配置される。従って、支持体は、埋め込み導電性裏面キャリヤ層が使用される場合、「未処理」のおよび「コートされていない」形のまま使用することができる。キャリヤ層配合物は、これらの他の裏面層配合物の塗布と同時に塗布され、それによってこれらの他の裏面層の下に位置づけられる。
【0214】
埋め込み導電性裏面層の任意選択成分としては、塗装適性または接着性を改善することができる材料、架橋剤(例えばジイソシアナート)、ハレーション防止色素、および貯蔵熟成促進剤(shelf−aging promoter)が挙げられる。
【0215】
さらに、最も外側の裏面層が埋め込み裏面層と直接隣接していることも好ましい。すなわち、それらの間には層は存在しない。
【0216】
1つの好ましい実施形態においては、最も外側の裏面層は1つ以上のポリシロキサンをさらに含む。シリコーン流動体とも呼ばれるポリシロキサンは、コーティングに、潤滑性、耐表面磨耗性、および耐ブロッキング性を提供するその能力で知られる液体の化合物である。ポリシロキサンは、また、上記コーティングに低い摩擦係数を提供する。それらの特性は、シリコーンポリマ鎖の間の低い分子間力の作用であると考えられる。ポリシロキサンは、以下の一般構造(III)を有する。
【0217】
【化1】


(III)
【0218】
最も単純なポリシロキサン化合物は、すべてのR基がメチルであるポリジメチルシロキサンである。ポリシロキサンは、末端R基(すなわち、R、R、R、R、R、およびR)としての様々な置換基、ポリシロキサン鎖内のケイ素に結合しているR基(すなわち、R、およびR)としての様々な置換基、または両方の部分における様々な置換基により変性することができる。さらに、それぞれが異なる置換基を有する、異なるシロキサン基を、ポリシロキサン鎖の中に組み込むことができる。いくつかの共通する代表的な末端置換基としては、メチル、水素、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル(例えばビニル、ヒドロキシメチル)、アルキルアミノ(例えばアミノプロピル)、およびアルキルカルボキシ基(例えばカルボキシプロピル)が挙げられる。好ましい末端基としてはメチル基およびアルキルアミノ基が挙げられる。ポリシロキサン鎖中の共通の置換基としては、アルキルアミノ、フェニル、ベンジル、ペルフルオロアルキル(例えば、トリフルオロプロピル)、およびアルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、およびオクタデシル基)が挙げられる。アルキル基は、例えば、シクロアルキル基およびエポキシシクロアルキル基などによってさらに置換することができる。ポリシロキサン鎖中の好ましい置換基としては、ジフェニル基、フェニルメチル基、ジメチル基、フェニル−メチル基とジメチル基との混合物、または(エポキシシクロヘキシル−エチル)メチル基とジメチル基との混合物が挙げられる。
【0219】
ポリシロキサンは、有機溶媒、特に最も外側の裏面層のコーティングで使用される有機溶媒中に溶解することが好ましい。好ましい溶媒は、MEK(メチルエチルケトン)およびMEKの50%未満のその他の有機溶媒、例えばメタノールとの混合物である。構造(III)において「n」は、ポリシロキサンが25,000より大きく、好ましくは25,000〜35,000の分子量を有するような整数であることがさらに好ましい。
【0220】
ポリシロキサンは、最も外側の裏面層中に、バインダの乾燥重量を基準として、少なくとも0.5重量%、好ましくは0.5〜6重量%、より好ましくは1.5〜6重量%の量で存在する。
【0221】
ポリシロキサンは、多数の市販元、例えば、Aldrich Chemical Company(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)、Dow Corning(ミドランド、ミシガン州)(http://www.dowcorning.com)、Gelest Inc.(モリスビル、ペンシルベニア州)(http://www.gelest.com)、Polymer Products(オンタリオ、ニューヨーク州)、およびUnited Chemical Technologies(ブリストル、ペンシルベニア州)から入手することができる。
【0222】
別の実施形態において、最も外側の裏面層は、1つ以上のタイプのワックス微粒子またはポリテトラフルオロエチレン微粒子あるいはそれらの混合物(またはブレンド)を含有する。これらの微粒子は、形状が一様ではなく、15μm以下、好ましくは10μm以下の最大寸法における平均粒径、および93℃以上の軟化温度を有する。この微粒子は、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜8μmの最大寸法における平均粒径を有する。この微粒子は、バインダの乾燥重量を基準として少なくとも0.1重量%、好ましくは0.2〜3重量%、より好ましくは0.3〜2重量%の量で最も外側の裏面層中に存在する。有用な微粒子の多くが、エチレン、プロピレン、またはその両方、あるいはそれらの誘導体の重合単位を含んでいる。
【0223】
様々なタイプのワックスおよびポリテトラフルオロエチレン微粒子を多数の販売元から入手することができる。これらタイプの微粒子の1つの際立った源は、商標名SLIP−AYD(登録商標)のもとでElementis Specialties社(ハイツタウン、ニュージャージー州)により販売されている。代表的な有用な微粒子としては、次のものが含まれる。
【0224】
熱現像可能な材料のための裏面オーバーコート層中のワックスまたはポリテトラフルオロエチレン微粒子と併せたポリシロキサンの使用は、同時係属中で同一出願人による米国特許出願第11/311547号(カブ、ラベル、およびルーデマンにより2005年12月19日出願)に記載されている。
【0225】
別の好ましい実施形態において、最も外側の裏面層は無定形シリカ粒子を含む。かかる無定形シリカ粒子は狭い粒径分布を有することがより好ましい。最も外側の裏面層中に狭い粒径分布を有する無定形シリカ粒子を使用することによって、熱現像可能な画像形成材料には低いヘーズが提供されると同時に、ブロッキングを低減して画像プロセスに効率的な供給を提供するために必要な表面粗さが維持される。ポリシロキサンを含有しない熱現像可能な材料の最も外側の裏面層中の無定形シリカ粒子の使用を説明しているさらなる詳細は、米国特許第7,105,284号(フィリップ他)に記載されている。
【0226】
無定形シリカ粒子により得られる粗さは、その粒子の直径、使用量、およびそれらを加えるバインダ層の厚さに依存する。これは、最も外側の裏面層の表面上にある無定形シリカ粒子量の関数であると考えられる。例えば、1〜1.5μmの最も外側の裏面層の乾燥した厚さに対して、好ましい粒子は、標準偏差が2μm未満の4〜8.5μmの平均容積径(mean volume diameter)のものである。無定形シリカ粒子は、20〜100mg/m、好ましくは30〜70mg/mのコーティング重量で使用することができる。無定形シリカの平均容積径は、最も外側の裏面層の乾燥した厚さより少なくとも3μm大きいことが好ましい。無定形シリカ粒子は、乾燥した最も外側の裏面層の表面の少なくとも5μm上に広がっていることがより好ましい。平均粒径で割った標準偏差が0.28μm未満であることもまた好ましい。
【0227】
さらなる実施形態において、最も外側の裏面層は、第四級アンモニウム化合物(アンモニウム塩としても知られる)により改質されているスメクタイト粘土を含有することができる。好ましいスメクタイト粘土は、おおよその式R0.33(Al,Mg)Si10(OH).n(HO)(式中、Rは、カチオンNa、K、Mg2+、NH、およびCa2+の1つ以上およびおそらく他のものを含む)を有するアルミニウムマグネシウムケイ酸塩粘土のモンモリロナイトである(Merck Index、第9版、Merck & Co.、ローウェー、ニュージャージー州、を参照されたい)。それはR基を置換することによって改質することができる。本発明において有用な任意選択のスメクタイト粘土は、R基の一部を剥離して様々な第四級アンモニウム化合物と交換することによって改質されている。これによりその粘土を有機溶媒により容易に分散させることが可能となる。そのような粘土は、商品名CLOISITE(登録商標)およびCLAYTONE(登録商標)のもとでSouthern Clay Products社から市販されている。多くのCLOISITE(登録商標)粘土において、アンモニウム化合物は、水素化獣脂アミンである。改質粘土のさらなる詳細は、米国特許第7,018,787号および同第7,153,636号(ルーデマン他)に記載されている。
【0228】
改質スメクタイト粘土は、使用する場合、最も外側の裏面層中に全体の乾燥バインダ重量を基準として、0.5〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%の量で一般に存在させる。別法では、その改質スメクタイト粘土は、耐磨耗性、ヘーズの量、およびその他の所望される物理的特性によってはワックスまたはポリエチレン微粒子の一部を置き換えることができる。スメクタイト粘土は、これら微粒子の0〜99重量%を置き換えることができるが、それは50重量%を超えないことが好ましい。
【0229】
最も外側の裏面層は、また、そのような配合物に普通に添加するその他の添加物を含むことができ、そのようなものとしては、いずれも通常の量の、保存寿命延長剤、ハレーション防止色素、色合いおよび明暗を調節する着色剤、データを記録するための磁気記録材料、ライトボックス安定性を改良するためのUV吸収材料、および高品質のコーティングを獲得するための界面活性剤などのコーティング助剤が挙げられるがこれらには限定されない。最も外側の裏面層は、また、1つ以上の画像安定化化合物を含むことができる。そのような化合物としては、特に米国特許第6,599,685号(コング)に記載されているような、フタラジノンおよびその誘導体、ピリダジンおよびその誘導体、ベンゾオキサジンおよびベンゾオキサジン誘導体、ベンゾチアジンジオンおよびその誘導体、ならびにキナゾリンジオンおよびその誘導体が挙げられる。その他の有用な裏面画像安定剤としては、アントラセン化合物、クマリン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ナフタル酸イミド化合物、ピラゾリン化合物、または米国特許第6,465,162号(コング他)、および英国特許第1,565,043号(フジフォト)に記載されている化合物が挙げられる。
【0230】
最も外側の裏面層は、0.5〜5μm、好ましくは0.5〜1.5μmの乾燥した厚さを一般に有する。別の言い方をすれば、最も外側の裏面層は、0.5〜4g/m、好ましくは0.5〜2g/mの乾燥したコーティング重量を一般に有する。
【0231】
埋め込み導電性裏面層の乾燥した厚さ対最も外側の裏面層の乾燥した厚さの比は、0.01:1〜2:1、好ましくは0.1:1〜1:1である。
【0232】
上記のように、熱現像可能な材料は、上で説明した金属ナノ粒子および有機溶媒可溶性無機アルカリ金属塩帯電防止化合物を含む少なくとも1つの埋め込み導電性裏面層を、ポリマ支持体の裏面(画像形成面ではない)上に1つ以上のさらなる裏面オーバーコート層と共に有する。この最も外側の裏面層は、上で説明した、ポリシロキサン、改質スメクタイト粘土、無定形シリカ粒子、およびワックスまたはポリテトラフルオロエチレン微粒子、またはそれらの任意の組合せの1つ以上をさらに含むことができる。
【0233】
埋め込み導電性裏面層(1つ以上)とポリマ支持体もしくは層または直接隣接した複数層との関係は、これらの層中のポリマおよびバインダのタイプが互いに優れた接着性を与え、さらに各層の成分を容認できる程度に分散してコーティングを容易にするように設計されているために重要である。
【0234】
埋め込み導電性裏面層上に直接配置されている層は、本明細書においては「裏面オーバーコート」層として知られ、「裏面保護」層としても知っておくことができる。最も好ましくは、それは「最も外側の裏面」層であり、上で説明したポリシロキサン、およびワックスまたはポリテトラフルオロエチレン微粒子の両方を含有する。この裏面オーバーコート層は、フィルム形成性ポリマを含む。直下の埋め込み導電性裏面層は、その埋め込み導電性裏面層のポリマ支持体への直接の接着を促進するために役立つ「第1の」ポリマと第1のポリマとは異なりその第1のポリマと共に単一相の混合物を形成して裏面オーバーコート層への接着を促進する「第2の」ポリマとを含む2つ以上のポリマの混合物の中に導電性物質を含む。例えば、支持体がポリエステルフィルムである場合、そのとき埋め込み導電性裏面層中の好ましいポリマの混合物は、ポリエステル樹脂とポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタールまたは酢酸酪酸セルロースなどのセルロースエステルポリマとの単一相混合物である。
【0235】
裏面オーバーコート層のフィルム形成性ポリマは、埋め込み導電性裏面層の第2のポリマと同じ種類であるか少なくとも混合が可能であることが好ましい。裏面オーバーコート層の好ましいフィルム形成性ポリマは、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール、またはセルロースエステルポリマである。酢酸酪酸セルロースなどのセルロースエステルポリマはより好ましい。酢酸酪酸セルロースが最も好ましい。
【0236】
別の実施形態において、埋め込み導電性裏面層は、裏面オーバーコート層と支持体に直接接着している「アンダーコート」層の間に配置されている。この実施形態において、裏面オーバーコート層は、この場合もやはり埋め込み導電性裏面層の真上にあり、この場合もやはり、本明細書では裏面オーバーコート層、「中間層」、または「保護」層として知られる。この裏面オーバーコート層はフィルム形成性ポリマを含む。それは最も外側の裏面層であるかその上に配置されたさらなる層(1つ以上)を有することができる。好ましくは、これは最も外側の裏面層であり、上で説明した、ポリシロキサン、改質スメクタイト粘土、無定形シリカ粒子、およびワックスまたはポリテトラフルオロエチレン微粒子、あるいはそれらの任意の組合せの1つ以上を含有する。裏面オーバーコート層の真下の埋め込み導電性裏面層は、その埋め込み導電性裏面層の裏面オーバーコート層ならびにその真下のアンダーコート層への接着を促進するのに役立つポリマの中に溶解されている1つ以上の導電性材料を含む。この接着を促進するアンダーコート層は、支持体に直接接着しており、2つ以上のポリマの混合物を含む。第1のポリマは、アンダーコート層のポリマ支持体への直接の接着を促進するのに役立つ。第2のポリマは、アンダーコート層の埋め込み導電性裏面層への接着を促進するのに役立つ。
【0237】
裏面オーバーコート層のフィルム形成性ポリマは、埋め込み導電性裏面層のポリマと同じ種類であるか少なくとも混合が可能であることが好ましい。埋め込み導電性裏面層のポリマは、アンダーコート層の第2のポリマと同じ種類であるか混合が可能であることが同様に好ましい。
【0238】
接着促進アンダーコート層は、「第1の」ポリマとしてのポリエステル樹脂と「第2の」ポリマとしてのポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタールまたは酢酸酪酸セルロースなどのセルロースエステルポリマとの単一相混合物を使用するのが好ましい。
【0239】
さらに別の実施形態において、埋め込み導電性裏面層は、裏面オーバーコート層と支持体に直接接着しているアンダーコート層との間に配置されている。この実施形態において、裏面オーバーコート層は、この場合もやはり埋め込み導電性裏面層の真上にあり、この場合もやはり本明細書では、裏面オーバーコート層、「中間層」または「保護」層として知られる。この裏面オーバーコート層はフィルム形成性ポリマを含む。それは最も外側の裏面層であるかその上に配置されたさらなる層(1つ以上)を有することができる。好ましくは、それは最も外側の裏面層であり、上で説明した、ポリシロキサン、改質スメクタイト粘土、無定形シリカ粒子、およびワックスまたはポリテトラフルオロエチレン微粒子、あるいはそれらの任意の組合せの1つ以上を含有する。裏面オーバーコート層の真下の埋め込み導電性裏面層は、2つ以上のポリマ、埋め込み導電性裏面層のアンダーコート層への接着を促進するのに役立つ「第1の」ポリマ、および埋め込み導電性裏面層の裏面オーバーコート層への接着を促進するのに役立つ「第2の」ポリマの混合物中に上で説明した1つ以上の導電性材料を含む。
【0240】
裏面オーバーコート層のフィルム形成性ポリマは、埋め込み導電性裏面層の第2のポリマと同じ種類であるか少なくとも混合が可能であることが好ましい。裏面オーバーコート層の好ましいフィルム形成性ポリマは、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール、またはセルロースエステルポリマである。酢酸酪酸セルロースなどのセルロースエステルポリマはより好ましい。酢酸酪酸セルロースが最も好ましい。接着促進層のポリマおよび埋め込み導電性裏面層の第1のポリマが同じか異なるポリエステル樹脂であることも好ましい。
【0241】
代表的な「第1の」ポリマは、1つ以上の次の種類、ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、およびポリビニルホルマールなど)、セルロースエステルポリマ(例えば、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、硝酸セルロース、および酢酸酪酸セルロースなど)、ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ロジンポリマ、ポリケトン樹脂、ビニルポリマ(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、およびブタジエン−スチレンコポリマなど)、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルポリマ、および無水マレイン酸エステルコポリマ、から選択することができる。ポリビニルアセタール、ポリエステル、セルロースエステルポリマ、およびビニルポリマ、例えばポリ酢酸ビニルおよびポリ塩化ビニルが特に好ましく、ポリビニルアセタール、ポリエステル、およびセルロースエステルポリマがより好ましい。ポリエステル樹脂が最も好ましい。従って、接着を促進するポリマは一般に事実上疎水性である。
【0242】
代表的な「第2の」ポリマとしては、ポリビニルアセタール、セルロースエステルポリマ、ビニルポリマ(「第1の」ポリマに対して上で定義したものと同じ)、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルポリマ、および無水マレイン酸エステルコポリマが挙げられる。最も好ましい「第2の」ポリマは、ポリビニルアセタールおよびセルロースエステルポリマ(例えば、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、硝酸セルロース、および酢酸酪酸セルロースなど)である。酢酸酪酸セルロースおよびポリビニルブチラールは特に好ましい第2のポリマである。勿論これら第2のポリマの混合物を埋め込み導電性裏面層中に使用することができる。これら第2のポリマは、また、上で説明した有機溶媒中に溶解または分散することができる。
【0243】
「第1の」および「第2の」ポリマは、互いに相容することができるか同じポリマの種類のものであることが望ましい。当業者であれば本明細書における教示からそのようなフィルム形成性ポリマとしてどのポリマが「互いに相容することができ」または「同じ種類のもの」であるかを容易に理解しよう。例えば、「第1の」ポリマとしてのポリエステル樹脂と「第2の」ポリマとしてのポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタールまたは酢酸酪酸セルロースなどのセルロースエステルポリマとの単一相混合物を使用するのが最も好ましい。裏面オーバーコート層において有用な多数のフィルム形成性ポリマが、本明細書の他の場所(例えば、画像形成層およびまたはその他従来の裏面層において使用されるバインダ)に記載されている。
【0244】
埋め込み導電性裏面層、裏面オーバーコート層(存在する場合は)、および最も外側の裏面層の有機溶媒系配合物は、様々なコーティング手順、例えば線巻ロッドコーティング、浸漬コーティング、エアナイフコーティング、カーテンコーティング、スライドコーティング、スロット−ダイコーティング、または押出コーティングなどを用いて同時に(ウェットオンウェットで)コートすることができる。これらの手順は、サーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ画像形成層について上で説明したものと同じである。
【0245】
<画像形成/現像>
熱現像可能な材料は、その材料のタイプと調和する任意の適当なやり方で、それらが感応する任意の適当な画像形成源(一般的にはフォトサーモグラフィ材料用のいくつかのタイプの放射線または電子信号およびサーモグラフィ材料用の熱エネルギ源)を用いて画像形成することができる。殆どの実施形態においてその材料は少なくとも100nmから1400nmの範囲の放射線に感応する。実施形態によって、それら材料は300nm〜600nmの範囲、より好ましくは300〜450nm、さらにより好ましくは360〜420nmの波長の放射線に感応する。好ましい実施形態において、その材料は600〜1200nmの赤または赤外光、より好ましくは700〜950nmの赤外光に感光する。必要に応じて特定波長への感度は、適切なスペクトル増感色素を使用することによって得ることができる。
【0246】
画像形成は、フォトサーモグラフィ材料をそれらが感応する、X線、紫外線、可視光線、近赤外線、および赤外線を含む適当な照射源に露光して潜像を与えることによって行うことができる。適当な露光手段は周知であり、蛍光体放出照射(特にX線誘導蛍光体放出照射)、白熱ランプまたは蛍光ランプ、キセノン閃光ランプ、レーザ光線、レーザダイオード、発光ダイオード、赤外レーザ、赤外レーザダイオード、赤外線発光ダイオード、赤外線ランプ、またはResearch Disclosure、第38957項(上記)に記載されているような当業者には容易にわかる任意のその他の紫外線、可視光、または赤外線の源が挙げられる。特に有用な赤外線露光手段としては、米国特許第5,780,207号(モハパトラ他)に記載されているような縦モードがマルチの(multi−longitudinal)露光技術として知られているものを用いて画像形成効率を向上するように調節されたレーザダイオードを含むレーザダイオードが挙げられる。その他の露光技術は、米国特許第5,493,327号(マッカラム他)に記載されている。
【0247】
フォトサーモグラフィ材料は、また、X線画像形成源およびフォトサーモグラフィ材料と隣接した1つ以上の即放射性または保存X線感応性蛍光スクリーンを用いて間接的に画像形成することができる。その蛍光体はフォトサーモグラフィ材料を露光するのに適切な放射線を放射する。好ましいX線スクリーンは、近紫外領域のスペクトル(300〜400nm)、青色領域のスペクトル(400〜500nm)、および緑色領域のスペクトル(500〜600nm)において放射する蛍光体を有するものである。
【0248】
他の実施形態においては、フォトサーモグラフィ材料は、潜像を提供するX線画像形成源を直接使用して画像形成することができる。
【0249】
熱現像条件は、使用される構造によって変化するであろうが、画像が形成されるように露光したフォトサーモグラフィ材料を適当に高めた温度、例えば、50℃〜250℃(好ましくは80℃〜200℃、より好ましくは100℃から200℃)で十分な時間、殆どの場合1〜120秒間加熱するステップを一般的には含む。加熱は、その材料を加熱したドラム、板金、またはローラーと接触させるか、あるいはその材料の裏面上に耐熱性の層を準備し、その層に電流を供給してその材料を加熱することによるなど任意の適当な加熱手段を用いて達成することができる。フォトサーモグラフィ材料に対する好ましい熱現像手順は、130℃〜165℃で3〜25秒間(好ましくは20秒以下)加熱するステップを含む。61cm/分より速い61〜200cm/分の現像時のラインスピードを使用することができる。熱現像は、フォトサーモグラフィ材料では実質的に水がない環境中で、かつその材料に溶媒は一切使用しないで行う。
【0250】
サーモグラフィ材料を直接画像形成する場合、その画像は、適当な温度での現像と同時に、熱ペン、熱プリントヘッドまたはレーザを用いて、あるいは熱を吸収する物質と接触している間に加熱することによって「書き込む」ことができる。サーモグラフィ材料は、レーザ照射への曝露による直接現像を容易にするために色素(例えば、IR吸収色素)を含むことができる。
【0251】
熱現像は、サーモグラフィまたはフォトサーモグラフィ材料のどちらとも、実質的に水がない環境中で、かつその材料に溶媒は一切使用しないで行う。
【0252】
<フォトマスクとしての使用>
当該サーモグラフィおよびフォトサーモグラフィ材料は、非画像形成領域が350から450nmの範囲において十分透過性であるので、紫外線または短波長可視光に感光する画像形成可能な媒体を引き続き露光する方法においても使用することができる。これらの熱現像済みの材料は、可視像がある領域では紫外線または短波長可視光を吸収し、可視像がない場所では、紫外線または短波長可視光を透過させる。その熱現像済み材料は次いでマスクとして使用し、画像形成用放射線源(例えば、紫外線または短波長可視光エネルギ源)と、このような画像形成用放射線に感光する画像形成可能な材料、例えばフォトポリマ、ジアゾ材料、フォトレジストまたは感光性印刷版との間に配置することができる。画像形成可能な材料を、露光および熱現像済みのサーモグラフィまたはフォトサーモグラフィ材料内の可視像を通して画像形成用放射線に露光することにより、その画像形成可能な材料に画像が提供される。この方法は、画像形成可能な媒体が印刷版を含み、そのフォトサーモグラフィ材料がイメージセッティングフィルムとしての役割を果たす場合に特に有用である。
【0253】
従って、サーモグラフィまたはフォトサーモグラフィ材料が透明な支持体を含む、いくつかのその他の実施形態において、この画像形成方法は、さらに上記のステップ(A)および(B)または(A’)の後に、
(C)画像形成用放射線源とその画像形成用放射線に感光する画像形成可能な材料との間に、画像形成され、熱現像済みフォトサーモグラフィまたはサーモグラフィ材料を配置するステップ、および
(D)その後、その露光および熱現像済みフォトサーモグラフィ材料内の可視像を通して、その画像形成可能な材料をその画像形成用放射線に露光して、画像形成可能な材料中に画像を提供するステップ、
をさらに含む。
【実施例】
【0254】
以下の実施例は、本発明の実践を説明するために提供するものであり、それによって本発明を限定する意味は持たない。
【0255】
<実験および実施例のための材料および方法>
以下の実施例において使用するすべての材料は、特に他の指定がない限り、標準的な市場の供給業者、例えばAldrich Chemical Co.(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から容易に入手することができる。すべての百分率は、他に指示のない限り重量パーセントである。次の追加の方法および材料を使用した。
【0256】
本件で使用される多くの化学成分は、溶液として提供される。用語「有効成分」とは、試料中に含有される所望の化学成分の量または百分率を意味する。本明細書に掲げられているすべての量は、他に特定されていない限り加えられる有効成分の量である。
【0257】
CAB 381−20は、Eastman Chemical Co.(キングズポート、テネシー州)から入手できる酢酸酪酸セルロース樹脂である。それは、37%のブチリル含量、13.5%のアセチル含量、1.8%のヒドロキシル含量、およびゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量70,000を有する。
【0258】
CELNAX(登録商標)CX−Z641Mは、メタノール中に60%の非針状アンチモン酸亜鉛ナノ粒子を含有するオルガノゾル分散体である。それは、Nissan Chemical America Corporation(ヒューストン、テキサス州)から入手した。
【0259】
CLOISITE(登録商標)20Aは、ジメチル二水素化獣脂第四級アンモニウム塩化物との反応により改質した天然のモンモリロナイトである。それは Southern Clay Products社(ゴンザレス、テキサス州)(http://www.nanoclay.com)から入手できる。
【0260】
DRYVIEW(登録商標)医学画像フィルム(Medical Imaging Film)は、Eastman Kodak Health Group(ロチェスター、ニューヨーク州)から入手できるフォトサーモグラフィックフィルムである。
【0261】
Mayer Barsは、直径1/2インチの303型ステンレススチールコーティングロッドであり、R.D.Specialties,Inc.(ウェブスター、ニューヨーク州)から入手できる。
【0262】
MEKは、メチルエチルケトン(または2−ブタノン)である。
【0263】
MeOHは、メタノールである。
【0264】
SLIP−AYD(登録商標)SL 1606は、微粉化したポリエチレンワックスである。それは、6μmの平均粒径および135〜138℃の軟化領域を有する。
【0265】
SYLOID(登録商標)74X6000は、Grace−Davison社(コロンビア、メリーランド州)から入手できる合成非球形無定形シリカである。それは使用前に「分級」し、標準偏差1.7μmで5.7μmの平均粒径を有した。
【0266】
VITEL(登録商標)PE−2700B LMWは、Bostik,Inc.(ミドルトン、マサチューセッツ州)から入手できるポリエステル樹脂である。
【0267】
バックコート色素(Backcoat Dye)BC−1は、シクロブテンジイリウム、1,3−ビス[2,3−ジヒドロ−2,2−ビス[[1−オキソヘキシル)オキシ]メチル]−1H−ペリミジン−4−イル]−2,4−ジヒドロキシ−,ビス(分子内塩)である。それは下に示す構造を有するものと考えられる。
【0268】
【化2】


(BC−1)
【0269】
<抵抗率の測定>
帯電防止コーティングの抵抗率は、2つの異なる方法、「減衰時間」試験および「水電極抵抗率」(WER)試験を用いて測定した。
【0270】
「減衰時間」試験においては、ETS Model 406D静電気減衰計(Static Decay Meter)(Electro−Tech Systems Inc.、グレンサイド、ペンシルバニア州)を使用して、試料の静電荷減衰速度を測定した。試料には固定電圧を供して、その表面に静電荷を誘発させた。その電荷を、次に、地面へ電流の通り道を提供することによって放散し(徐々に減らし)、一定の予め選択されたレベル(本発明者らの試験では10%)まで電荷が放散される時間を記録した。
【0271】
減衰時間は、他に特に規定がない限り、70°F(21.1℃)および20%の相対湿度(RH)に維持した部屋で測定した。すべての試験は、試料を18時間順応させた後、この部屋で行った。+5kVの電荷をかけ、その電荷が10%に達する(90%の減衰)時間を記録した。劣った帯電防止特性を示す試料は電荷を放散させず、その減衰時間は「>100秒」と記録する。帯電防止物質として機能するためには、化合物は、70°F(21.1℃)の温度および20%の相対湿度において、100秒以下、好ましくは25秒以下、より好ましくは5秒以下の減衰時間を有するコーティングを提供すべきである。
【0272】
「水電極抵抗率」(WER)試験においてオーバーコートされている埋め込み導電性裏面層の内部抵抗率は、本明細書に引用するR.A.エルダーのResistivity Measurements on Buried Conductive Layers、EOS/ESDシンポジウム議事録、レイクブエナビスタ、フロリダ州、1990年、251〜254頁[EOS/ESDは、電気的過剰応力(Electrical Overstress)/静電気放電(Electrostatic Discharge)を表す]に記載されている塩橋濡れ電極抵抗率(salt bridge wet electrode resistivity)の技術を用いて測定する。ケイスレー(Keithley)社電位計Model 6517Aを使用した。水電極抵抗率は、200Vの電位で測定した。一般的には、50%相対湿度におけるWERの対数値が12 log ohm/sqを超える帯電防止層は、写真画像形成要素に対する帯電防止に効果がないと考えられる。50%相対湿度の70°F(21.1℃)において、11 log ohm/sq以下のWERの対数値が好ましい。本発明者らは、また、WERの測定により、帯電防止材料が商品に使用される場合に如何に機能するかをよりよく予測できることを見出した。
【0273】
<ヘーズの測定>
ヘーズ(%)は、BYK-Gardner(コロンビア、メリーランド州)から入手できるHaze−gard Plus Hazemeterを用いて従来の手段によりASTM D1003に従って測定した。熱現像可能な材料に対する全体のヘーズは、できるだけ低くなければならない。それは40%を超えてはならず、好ましくは、それは30%を超えるべきではない。支持体のヘーズ値は、2.5±1%である。低い全体のヘーズを得るために、裏面コーティングについてのヘーズもできるだけ低くなければならない。好ましくは支持体プラス裏面コーティング(1つ以上)のヘーズは、15%以下、好ましくは13%以下であり、最も好ましくは、それは10%以下である。一貫したヘーズ測定値を提供するため、各実施例中の全ての試料は、同じロットの支持体上にコートした。
【0274】
<接着性の測定>
試料をASTM D3359−92Aに従って実施した「クロスハッチ」接着試験を用いて評価した。コートしたフィルムをかみそりの刃でクロスハッチ型に切断し、1インチ(2.54cm)幅の市販の3Mタイプ610半透明感圧テープをその型に貼り付け、素早く引き上げた。フィルム上に残ったコーティングの量が接着性の測定値である。接着試験の評価は、0から5であり、0は、コーティングの完全な除去を表し、5は、コーティングの除去がないかごくわずかであることを表す。「3」以上の評価が許容できるものと考えられる。3Mタイプ610半透明感圧テープは、3M Company(メープルウッド、ミネソタ州)から入手した。
【0275】
(実施例1)
[埋め込み導電性裏面層配合物]
アンチモン酸亜鉛を含有する埋め込み導電性裏面層配合物を下記のようにして調製した。すべての試料においてCELNAX(登録商標)CX−Z641M対バインダの比率は2.73:1で一定に保持し、帯電防止化合物対CELNAX(登録商標)の比率を変化させた。
【0276】
33.76部のMEKを15.8部のCELNAX(登録商標)CX−Z641M(メタノール中60%の非針状アンチモン酸亜鉛固形分−正味9.51部を含有する)に加えて分散体を調製した。添加は強力な混合のもとで15分間にわたって行った。撹拌をさらに15分間維持した。
【0277】
1.38部のVITEL(登録商標)PE−2700B LMWおよび2.09部のCAB 381−20を82.5部のMEKに溶解してポリマ溶液を調製した。そのポリマバインダは、米国特許第6,689,546号(上記)に記載されているように、下塗りなしのポリエチレンテレフタレート支持体と最も外側の裏面層との間の優れた接着性を提供するように選択した。そのバインダは、なんらの感知できる導電性は有さない。
【0278】
完全に溶解した時点でそのポリマ溶液をCELNAX(登録商標)分散体に強力に混合しながら15分かけて加えた。追加の64.42部のMEKを次に5分間かけて加えた。混合を10分間続けた。最終の「マスターバッチ」は、6.5重量%の固形分で200部を収容した。
【0279】
マスターバッチのアリコート(20部)を取った。表Iにおいて調査した様々な無機アルカリ金属塩を、次に、表Iにおける試料のコーティング重量を獲得するために固形分1〜3.9重量%を有するコーティング配合物を提供するのに必要な量のMEKに加えた。
【0280】
埋め込み導電性裏面層配合物を、7ミル(178μm)の青色がかった下塗りしてないポリエチレン支持体に様々なMayer Rodを用いてコートし、93℃で3分間乾燥した。その埋め込み導電性裏面層の全体の乾燥コーティング重量は、0.14g/mと0.46g/mの間で変化し、乾燥した厚さは約0.15μmから約0.6μmまで変化した。
【0281】
CELNAX(登録商標)のコーティング重量は、X線蛍光分析(XRF)を用いて測定した。有機溶媒可溶性アルカリ金属化合物の被覆率は、そのときそのCELNAX(登録商標)に対する比率から測定することができた。
【0282】
[最も外側の裏面層配合物]
最も外側の裏面層配合物は、次の材料を混合することによって調製した。
MEK 93.10部
CAB 381−20 6.20部
SYLOID(登録商標)74X6000 0.26部
バックコート色素BC−1 0.16部
SLIP−AYD(登録商標)SL 1606 0.09部
Dow DC510−500cst 0.19部
【0283】
最も外側の裏面層配合物は、各埋め込み裏面層上に実験室スケールの直列のドライヤーを備えた自動化されているナイフコータを用いてコートした。試料は、93℃で3分間乾燥した。その最も外側の裏面層は、17μmのウェット厚さでコートし、1.0g/mの乾燥コーティング重量を与えた。
【0284】
[裏面コーティングの評価]
試料のすべては、表面に汚れを有する塩化リチウムを除けば良好な物理的性質を有していた。
【0285】
コートした試料中の無機アルカリ金属塩の溶解性を評価した。コートした試料は、ヘーズ、支持体への接着性、コーティング品質、水電極抵抗率(WER)、および静電気減衰時間についても評価した。
【0286】
試料は指紋および汚染を防ぐために綿の手袋で扱った。試験片はWERを測定する前に24時間室内の環境にそのまま順応させた。試験片は、測定の前2分間はそのまま安定させた。
【0287】
下の表I、II、III、およびIVに示されているデータは、次のことを示す。
【0288】
硝酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、およびテトラフルオロホウ酸ナトリウムは、導電性金属化合物も含有する有機溶媒可溶性埋め込み導電性裏面層において使用するためのすべての好ましい要件を満たす。それらはバインダと相容し、低いヘーズの透明なコーティングを提供する。それらは支持体に対して良好な接着性を維持し、迅速な静電気減衰時間を有する。それらの水電極抵抗率が、湿度の変化による変動を殆ど示さないようであるのは格別重要である。20%および50%相対湿度で測定したWERは、0.5 log ohm/sq未満の違いである。
【0289】
表IIIのデータは、表IおよびIIのいくつかの試料を比較しており、CELNAX(登録商標)CX−Z641Mの同じ埋め込み裏面コーティング重量を有する試料への無機アルカリ金属塩の添加によって得られる水電極抵抗率における改良を示している。比較した試料はすべて互いに0.01g/m以内のCELNAX(登録商標)コーティング重量を有していた。そのデータは、テトラフルオロホウ酸リチウム、硝酸リチウム、またはテトラフルオロホウ酸ナトリウムの添加が、接着性、物理的品質、または静電気減衰時間における損失なしでウェット電極抵抗率Δ(WER)における改良を提供することを示している。負のΔ(WER)値は、抵抗率の低下(すなわち、導電率の向上)を示す。
【0290】
表IIIのデータは、また、多くの有機溶媒可溶性有機化合物が導電性金属酸化物と混合したとき導電性の改善に効果のないことを示している。これはこれら有機溶媒可溶性有機化合物の多くが単独で大量に使用したときは効果的な帯電防止材料であるので意外なことである。
【0291】
表IV中のデータは、水電極抵抗率に影響を及ぼさないで除去することができるCELNAX(登録商標)CX−Z641Mの量を決定する表IおよびIIにおけるいくつかの試料を比較している。比較された試料は、すべて、互いに0.3 log ohm/sq以内の水電極抵抗率を有した。そのデータは、少なくとも45%の導電性金属化合物を、テトラフルオロホウ酸リチウムまたは硝酸リチウムと、導電性、接着性、物理的品質、または静電気減衰時間の損失なしで、置き換えることができることを示している。同様に、少なくとも20%の導電性金属化合物を、テトラフルオロホウ酸ナトリウムと、導電性、接着性、物理的品質、または静電気減衰時間の損失なしで、置き換えることができる。
【0292】
表IVのデータは、また、多くの有機溶媒可溶性有機化合物が、導電性金属酸化物と混合したとき導電性の改善に有効ではないことを示している。
【0293】
【表1】

【0294】
【表2】

【0295】
【表3】

【0296】
【表4】

【0297】
【表5】

【0298】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱現像可能材料であって、
バインダと、反応する取合せで非感光性の被還元性銀イオン源および前記非感光性の被還元性銀イオン源のための還元剤組成物とを含む1つ以上の熱現像可能な画像形成層を、そのおもて面に有する支持体と、
前記支持体の裏面に配置されている、
共に21.1℃および50%相対湿度において1012ohm/sqの水電極抵抗率、ならびに21.1℃および20%相対湿度において100秒未満の静電気減衰時間を提供するのに十分な量で存在する、導電性金属化合物のナノ粒子および有機溶媒可溶性の無機アルカリ金属塩である帯電防止化合物をそこに分散した1つ以上のバインダポリマを含む有機溶媒系の埋め込み導電性裏面層と、
有機溶媒系の最も外側の裏面層と、
を含むことを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項2】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、前記導電性金属化合物のナノ粒子が、導電性金属酸化物のナノ粒子であることを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項3】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、前記導電性金属化合物のナノ粒子が、導電性複合金属酸化物のナノ粒子であることを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項4】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、前記導電性金属化合物のナノ粒子が、0.01から0.5g/mの量で存在することを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項5】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、前記有機溶媒可溶性の無機アルカリ金属塩である帯電防止化合物が、前記導電性金属化合物のナノ粒子に対して5重量%から200重量%の割合で存在することを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項6】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、前記1つ以上の熱現像可能な画像形成層が、感光性ハロゲン化銀をさらに含むフォトサーモグラフィエマルジョン層を含むことを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項7】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、前記導電性金属化合物のナノ粒子が、アンチモン酸亜鉛のナノ粒子を含み、前記有機溶媒可溶性の無機アルカリ金属塩が、硝酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、またはテトラフルオロホウ酸ナトリウムの1つ以上であることを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項8】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、前記最も外側の裏面層が、ポリシロキサン、非晶質シリカ粒子、第四級アンモニウム化合物により変性されているスメクタイト粘土、ワックスもしくはポリテトラフルオロエチレン粒子、またはそれらの組合せをさらに含むことを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項9】
請求項8に記載の熱現像可能材料であって、前記ポリシロキサンが、前記最も外側の裏面層中の前記バインダポリマの乾燥重量を基準として1.5から6重量%の量で存在することを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項10】
請求項8に記載の熱現像可能材料であって、前記非晶質シリカ粒子が、2μm未満の標準偏差で4から8.5μmの平均体積直径を有することを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項11】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、全体の導電性化合物が、前記埋め込み導電性裏面層中に、21.1℃および50%相対湿度において1011log ohm/sq以下の水電極抵抗率、ならびに21.1℃および20%相対湿度において25秒以下の静電気減衰時間を提供するのに十分な量で存在することを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項12】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、前記埋め込み導電性裏面層および前記最も外側の裏面層が、前記支持体の裏面側の唯一の層であることを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項13】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、前記支持体プラスすべての裏面層の全体のヘーズが15%以下であることを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項14】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、前記埋め込み導電性裏面層の乾燥した厚さ対前記最も外側の裏面層の乾燥した厚さの比が0.01:1から2:1であることを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項15】
感光性臭化銀またはヨウ化臭化銀を含むフォトサーモグラフィ材料である請求項1に記載の熱現像可能材料であって、前記1つ以上の熱現像可能な画像形成層のバインダが疎水性バインダであり、前記非感光性の被還元性銀イオン源が有機カルボン酸の銀塩であり、前記還元剤組成物がヒンダードフェノール、ヒンダードビスフェノール、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項16】
請求項1に記載の熱現像可能材料であって、銀のコーティング重量が2.3g/m未満であることを特徴とする熱現像可能材料。
【請求項17】
白黒の有機溶媒系フォトサーモグラフィ材料であって、
支持体を含み、
A)前記支持体の画像形成面に、1つ以上のフォトサーモグラフィエマルジョン層と、前記フォトサーモグラフィエマルジョン層上に配置された保護層と、反応する取合せで、
少なくとも600nmの露光波長に感光する臭化銀またはヨウ化臭化銀の感光性粒子と、
ベヘン酸銀を含む1つ以上の脂肪族脂肪酸の銀塩と、
ヒンダードフェノール、ヒンダードビスフェノール、またはそれらの組合せを含む還元剤組成物と、
疎水性の有機溶媒可溶性バインダと、
を有し、
B)前記支持体の裏面側に、
1つ以上の導電性金属酸化物のナノ粒子および有機溶媒可溶性の無機アルカリ金属塩を含む1つ以上の帯電防止化合物が、共に0.05から2g/mの量で存在し、21.1℃および50%相対湿度において11 log ohm/sqの水電極抵抗率を提供するように分散されている1つ以上の第1の有機溶媒可溶性の疎水性バインダポリマを含む疎水性有機溶媒系の埋め込み導電性裏面層と、
前記埋め込み導電性裏面層上に直接配置された、少なくともその1つが前記第1の疎水性バインダポリマとは異なる1つ以上の第2の疎水性バインダポリマ、およびポリシロキサン、非晶質シリカ粒子、第四級アンモニウム化合物により変性されているスメクタイト粘土、ワックスまたはポリテトラフルオロエチレン粒子の1つ以上を含む有機溶媒系の最も外側の裏面層と、
を有し、
C)前記フォトサーモグラフィ材料の銀コーティング重量が1から2g/mであり、
露光波長における前記画像形成面の吸光度が少なくとも0.6であり、
露光波長における前記裏面の吸光度が少なくとも0.2であり、
前記埋め込み導電性裏面層および前記最も外側の裏面層が13%以下のヘーズを示し、
前記埋め込み導電性裏面層が25秒以下の静電気減衰時間を示す、
ことを特徴とするフォトサーモグラフィ材料。
【請求項18】
支持体を含み、その片面に、バインダと、反応する取合せで非感光性の被還元性銀イオン源および前記非感光性の被還元性銀イオン源のための還元剤組成物とを含む1つ以上の熱現像可能な画像形成層を有し、かつ、
前記支持体の裏面に配置された、導電性金属化合物のナノ粒子および有機溶媒可溶性の無機アルカリ金属塩を含む1つ以上の帯電防止化合物が、共に21.1℃および50%相対湿度において1012ohm/sqの水電極抵抗率、ならびに21.1℃および20%相対湿度において100秒未満の静電気減衰時間を提供するのに十分な量で存在するように分散されている1つ以上のバインダポリマを含む埋め込み導電性裏面層と、最も外側の裏面層とを有する熱現像可能材料を調製する方法であって、
前記埋め込み導電性裏面層および前記最も外側の裏面層が、全体の有機溶媒容量を基準として10%以下の量となるようにメタノールを除去またはメタノールを含めた同一または異なる疎水性有機溶媒中の埋め込み導電性裏面層および最も外側の裏面層の配合物を塗布することによって提供されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記埋め込み導電性裏面層および最も外側の裏面層の配合物が、2−ブタノン、トルエン、テトラヒドロフラン、またはそれらの混合物によって同時に塗布されることを特徴とする方法。
【請求項20】
可視画像を形成する方法であって、
A)フォトサーモグラフィ材料である請求項1に記載の熱現像可能材料を電磁放射線に像様露光して潜像を形成させるステップと、
B)同時にまたは連続して、前記露光されたフォトサーモグラフィ材料を加熱して前記潜像を可視画像に現像するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記現像が15秒以下で行われることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法であって、前記像様露光が700から950nmにおけるレーザイメージングを用いて行われることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法であって、前記像様露光および現像が、前記フォトサーモグラフィ材料を少なくとも61cm/分のライン速度で移動させる間に行われることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−533713(P2009−533713A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505451(P2009−505451)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/008921
【国際公開番号】WO2007/120698
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(507224587)ケアストリーム ヘルス インク (76)
【Fターム(参考)】