埋設コンクリート基礎の形状測定方法及び装置
【課題】埋設コンクリート基礎の形状寸法測定に利用する振動モードと埋設コンクリート基礎に発生するその他の振動モードとの区別を明瞭にしてノイズを低減し、測定精度を向上させる。
【解決手段】コンクリート基礎2の軸周りに捩れ振動が起きるように加振して捩れ振動の加速度を検出し、その加速度検出値の複数の共振振動数fを抽出し、その抽出した複数の共振振動数fと、捩れ振動の共振振動数fとコンクリート基礎2の各部の寸法との関係を表した共振条件式に基づいて、コンクリート基礎2の寸法を求める。
【解決手段】コンクリート基礎2の軸周りに捩れ振動が起きるように加振して捩れ振動の加速度を検出し、その加速度検出値の複数の共振振動数fを抽出し、その抽出した複数の共振振動数fと、捩れ振動の共振振動数fとコンクリート基礎2の各部の寸法との関係を表した共振条件式に基づいて、コンクリート基礎2の寸法を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非掘削により埋設コンクリート基礎の形状寸法を測定する方法及び装置に係り、特に埋設コンクリート基礎の形状寸法を捩れ振動により解析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非掘削により埋設構造物の形状寸法を測定する従来の方法として、特許文献1に記載されているように埋設構造物の共振振動を利用する方法がある。特許文献1の方法は、測定対象の埋設構造物を加振して複数の共振振動数を抽出しその複数の共振振動数と、共振振動数と埋設構造物の各部の寸法との関係を表した共振条件式とに基づいて、その埋設構造物の形状寸法を演算により求める方法である。
【0003】
例えば、特許文献1は、角錐台又は円錐台の柱体部と矩形又は円形の断面を有する床盤部とを連結して形成された鉄塔基礎である逆T字型コンクリート基礎の形状寸法を測定するにあたり、共振振動数とコンクリート基礎の各部寸法との関係を表した共振条件式を設定する。そして、柱体部の頂部の幅a、柱体部の側面の傾斜角度θ及び縦波の伝播速度V等を測定し、柱体部の頂部を鉛直軸方向に加振して得られる共振振動数を3つ抽出する。抽出した3つの共振振動数を設定した共振条件式にあてはめて連立方程式を立て、その連立方程式を解いて地中に埋設された部分である柱体部の高さh、柱体部の底部の幅b、床盤部の幅B、床盤部の厚さt等を求めるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特許第2555517号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1は、逆T字型コンクリート基礎の頂部を鉛直軸方向に加振して起きる伸縮振動である縦波の共振振動を用いている。しかし、埋設コンクリート基礎の伸縮振動は、減衰が大きく、振動スペクトルの共振ピークがノイズに埋もれることがある。また、曲げ振動やその他の振動モードとの区別がつけ難く、振動スペクトルから伸縮の共振振動数を特定することが困難な場合がある。その結果、振動スペクトルから共振振動数を誤って選択する場合があり、解析値の誤差が大きくなることがある。
【0006】
また、特許文献1では超音波伝播速度測定器により、埋設コンクリート基礎の地上部分の横方向の振動の伝播速度を測定しているので、解析に用いる伸縮振動の伝播速度とは厳密には一致しない。一般に、伝播速度は、縦波・横波等の波の形態や種々の物体の各共振モード等によってそれぞれ異なる。したがって、共振振動数と伝播速度を別個に測定する特許文献1の方法は、伝播速度が実際の数値と大きく異なることがある。そこで、共振振動数とその振動の伝播速度の測定の精度を向上することが望まれている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、埋設コンクリート基礎の形状寸法測定に利用する振動モードと埋設コンクリート基礎に発生するその他の振動モードとの区別を明瞭にしてノイズを低減し、測定精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、角錐台又は円錐台の柱体部と矩形又は円形の断面を有する床盤部とを連結して形成された埋設コンクリート基礎の形状測定方法において、埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振して捩れ振動の加速度を検出し、その加速度検出値の複数の共振振動数を抽出し、その抽出した複数の共振振動数と、捩れ振動の共振振動数と埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した共振条件式に基づいて、埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、測定に用いる振動モードとして埋設コンクリート基礎で最も強く起こる捩れ振動を用いているので、振動スペクトルの共振ピークが鋭く明瞭に現れる。このため、その他の振動モードとの区別がしやすくなり、また、共振ピークがノイズに埋もれることもなくなる。その結果、共振振動数の抽出が正確にできるようになり、共振振動数と共振条件式に基づいて求められる埋設コンクリート基礎の寸法の測定精度が向上する。
【0010】
また、捩れ振動の伝播速度は横波の伝播速度であり、この横波の伝播速度は振動モードによって異ならない。よって、コンクリート基礎の地上部分と埋設部分が振動媒質的に均一なら、コンクリート基礎の地上部分の側面で超音波伝播速度測定器により測定する横波の伝播速度を解析に用いることができる。
【0011】
この場合において、埋設コンクリート基礎の柱体部の頂部の幅又は直径、高さ、底部の幅又は直径、捩れ振動の伝播速度の値のうちいくつか、あるいは全てを共振条件式にあてはめることもできる。なお、底部の幅又は直径の値は、柱体部の頂部の幅又は直径と側面の傾斜角度と高さとの値に基づいた推定値とすることができる。このように、埋設コンクリート基礎の各部寸法の実測数を増やせば、それだけ共振条件式の未知数が少なくなるので誤差が小さくなり精度が上がる。
【0012】
また、上記課題を解決するため、埋設コンクリート基礎の軸周りの捩れ振動の共振振動数と埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した捩れ振動の共振条件式に基づいて、埋設コンクリート基礎の埋設部の未知寸法の特定の組み合わせにおける設定次の伝播定数を基準とするその他の埋設部の未知寸法の組み合わせにおける伝播定数の比を求め、寸法の組み合わせと伝播定数の比との対応関係を記載したテーブルを予めデータベースに格納しておき、埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振して捩れ振動の加速度を検出し、その加速度検出値の複数の共振振動数を抽出し、その抽出した複数の共振振動数のうち設定次の共振振動数を基準とするその他の共振振動数の比を求め、その比と伝播定数の比との誤差が最小になる寸法の組み合わせを前記データベースより検索して、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする方法をとることもできる。
【0013】
これによれば、予め未知寸法の組み合わせと伝播定数の比との対応関係を記載したテーブルを格納したデータベースを作成しておくことにより、共振振動数の測定のみで埋設コンクリート基礎の形状測定ができる。すなわち、一般に、埋設コンクリート基礎の形状、寸法は決まっているので基礎ごとに分類することができ、各分類についてのデータベースを予め作成しておけば、共振振動数の測定のみで形状測定ができるようになる。よって、埋設コンクリート基礎の寸法を実測する手間を省くことができる。また、測定に伝播速度の値を用いないので精度があがり、伝播速度を測る必要もなくなり、さらに手間が省けることになる。
【0014】
この場合において、埋設コンクリート基礎の柱体部の頂部の幅又は直径と高さの2つの実測値、あるいは、柱体部の頂部の幅又は直径と高さと底部の幅又は直径の3つの実測値を共振条件式にあてはめることもできる。なお、底部の幅又は直径の値は、柱体部の頂部の幅又は直径と側面の傾斜角度と高さの値に基づいた推定値である。このように、埋設コンクリート基礎の各部の寸法の実測数を増やせば、それだけ共振条件式の未知数が少なくなるのでデータベースの作成、検索が容易となる。
【0015】
またこの場合において、柱体部の回転軸が柱体部の途中を中心に中心軸から傾いているときに、柱体部は第1柱体部と第2柱体部の2つの柱体を接続して構成されているとみなし、第1柱体部の頂部の幅又は直径と第2柱体部の底部の幅又は直径と柱体部全体の高さとを実測して共振条件式にあてはめ、その共振条件式に基づいて埋設コンクリート基礎の各部の寸法の組み合わせと伝播定数との比を求めてテーブルを作成することを特徴とする形状測定方法をとることもできる。
【0016】
これによれば、回転軸が柱体部の途中を中心に鉛直軸から傾いている場合でも、柱体部は2つの第1柱体部と第2第2柱体部が接続されて構成されていると考えることによりデータベースを作成して、埋設コンクリート基礎の各部の寸法を求めることができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、埋設コンクリート基礎の形状寸法測定に利用する振動モードと埋設コンクリート基礎に発生するその他の振動モードとの区別を明瞭にしてノイズを低減し、測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について数式及び図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
本実施例では、図1に示すような逆T字型のコンクリート基礎2を測定対象とする。逆T字型のコンクリート基礎2は図2のような鉄塔4用の基礎である。ここでは、逆T字型のコンクリート基礎2を柱体部6と床盤部8からなっているとみなす。図1を参照して全実施例で使用する捩れ共振条件式の導出について説明する。なお、捩れ共振条件式の導出では説明を簡単にするため、柱体部6と床盤部8のそれぞれの断面は、正方形又は円であるとする。
【0020】
まず、ここで導出する捩れ共振条件式について簡単に説明をする。図1のコンクリート基礎2の柱体部6の頂部の幅又は直径をa、柱体部6の底部の幅又は直径をb、柱体部6の高さをh、床盤部8の幅又は直径をB、床盤部8の厚さをt、捩れ振動の伝播定数をβとする。導出する捩れ共振条件式は、a、b、t、B、h、βの関数であるので、F(a、b、t、B、h、β)=0で表すことができる。また、βは後述する式(6)により捩れの共振振動数fと捩れ振動の伝播速度Vsで表すことができるので、捩れ共振条件式はf、Vsの関数でもあり、F(a、b、t、B、h、f、Vs)=0と表すことができる。なお、伝播速度Vsは理想的には定数であるが、実際には基礎ごとにある程度の変動があるのでここでは変数とした。以降より、この捩れ共振条件式の導出をする。
【0021】
弾性体の振動解析には電気回路の分布回路理論を用いる。そこで、柱体部6と床盤部8のそれぞれの電気回路の4端子に対応したマトリックスを求め縦続接続する。ここで、軸(鉄骨10)の周りの捩れ振動を考えると、電気回路の分布回路理論との対応は、軸の周りのトルクTが電圧に対応し、捩れ角φの回転角速度ω=dφ/dtが電流に対応する。
【0022】
柱体部6の4端子マトリックスを式(1)で表すとする。
【0023】
【数1】
式(1)の、Ah、Bh、Ch、Dhは、それぞれ次式(2)、(3)、(4)、(5)で表される。
【0024】
【数2】
【0025】
【数3】
【0026】
【数4】
【0027】
【数5】
ここで、波長をλ、振動数をf、剛性率をG、密度をρとする。また、伝播定数βは次式(6)で表される。
【0028】
【数6】
柱体部6の特性インピーダンスは錐体台であるため一定ではなく、式(2)、式(3)のαabが平均化された特性インピーダンスに相当する。αは、柱体部6の断面が円の場合は次式(7)、断面が正方形の場合は次式(8)で表される。
【0029】
【数7】
【0030】
【数8】
捩れ振動の波長が骨材の大きさ、鉄骨・鉄筋の太さよりかなり大きい1次乃至5次ぐらい迄の低次の共振モードでは、骨材や鉄骨・鉄筋はコンクリート内で一様分布と見なしてよく、剛性率Gや密度ρ等の共振振動数fに関わる物理量を、均一な弾性体のものとして扱うことができる。ただし、それらの値はコンクリートのみのときより増加する。骨材や鉄骨・鉄筋は軸に垂直方向の断面積がコンクリートの断面積に比べてかなり小さいので、伝播速度Vsに関しては、コンクリートだけに比べて数パーセント増加したものとして扱えばよい。
【0031】
床盤部8の4端子マトリックスは次式(9)となる。
【0032】
【数9】
ここで、ZBは特性インピーダンスであり、床盤部8の断面が円の場合は、Bを直径として次式(10)で表され、床盤部8の断面が正方形の場合は、Bを幅として次式(11)で表される。
【0033】
【数10】
【0034】
【数11】
柱体部6と床盤部8とを縦続接続したコンクリート基礎2の4端子マトリックスは積を計算をして、次式(12)となる。
【0035】
【数12】
ここで、柱体部6の上面と床盤部8の底面のトルク−回転角速度の縦ベクトルをそれぞれ次式(13)、次式(14)で表す。
【0036】
【数13】
【0037】
【数14】
式(13)と(14)の間の関係式は次式(15)で表される。
【0038】
【数15】
ここで、柱体部6の上面から見たインピーダンスZ(1)は、前述したトルクT、捩れ角の回転角速度ωと電圧、電流との対応関係から次式(16)で表される。
【0039】
【数16】
図1のように、コンクリート基礎2の周囲が空気や土である場合は、T(3)≒0としてよい。したがって、Z(1)=BT1/DT1と与えられる。共振はインピーダンスが0のときに起こるので、式(16)の分子BT1を式(17)で表し、これを0とおいた式を式(18)とすると、式(18)が捩れ振動の共振条件式である。
【0040】
【数17】
【0041】
【数18】
また、図3のように、床盤部8の下にさらに栗石とコンクリート(捨てコンクリート12)がある場合には、コンクリート基礎2全体の4端子マトリックスは、柱体部6、床盤部8、捨てコンクリート12の3段の4端子マトリックスを縦続接続する。説明を簡単にするために、捨てコンクリート12の断面は正方形であるとする。
【0042】
捨てコンクリート12の4端子マトリックスは次式(19)で表される。
【0043】
【数19】
ここで、ZBsは特性インピーダンスで、捨てコンクリート12の断面が正方形の場合はBsを幅として次式(20)で表される。
【0044】
【数20】
柱体部6と床盤部8と捨てコンクリート12を縦続接続したコンクリート基礎2の4端子マトリックスは、積を計算して次式(21)となる。
【0045】
【数21】
ここで、柱体部6の上面と捨てコンクリート12の底面のトルク−回転角速度の縦ベクトルをそれぞれ次式(22)、次式(23)で表す。
【0046】
【数22】
【0047】
【数23】
すると、この間の関係式は次式(24)で表される。
【0048】
【数24】
ここで、柱体部6の上面から見たインピーダンスZ(1)は、前述したトルクT、捩れ角の回転角速度ωと電圧、電流との対応関係から次式(25)で表される。
【0049】
【数25】
図1の場合と同様に、T(4)≒0としてよい。したがって、Z(1)=BT2/DT2と与えられる。共振はインピーダンスが0のときに起こるので、式(25)の分子BT2を式(26)で表し、これを0とおいた式を式(27)とすると、式(27)が捩れ振動の共振条件式である。
【0050】
【数26】
【0051】
【数27】
式(18)や式(27)から分かるように伝播定数βに振動数fが含まれているので、コンクリート基礎2の各部寸法や伝播速度Vsが与えられると、この式から多数の0点、即ち共振振動数が求められる。逆に、共振振動数が既知の場合は、未知のコンクリート基礎2の各部寸法や伝播速度Vsを求めることもできる。
【0052】
次に、図4に沿って、コンクリート基礎2の形状測定装置の構成を説明する。柱体部6の点線14は地面位置であり、点線14より下が地面に埋まっている。コンクリート基礎2に振動を与える加振方法として、ハンマー等で特定の部位を叩く方法と、正弦波振動を発生する振動子により振動を付与し、その周波数を掃引する方法が適用できる。本実施例では正弦波信号を掃引する加振器16を用いる。また、加振器16の加振力を検出するためにフォースセンサー18をコンクリート基礎2と加振器16との間に設ける。フォースセンサー18で検出された加振力は電気信号に変換され、信号処理装置20に入力される。また、発振器21は、加振器16に掃引するための正弦波信号を発生させるものである。この正弦波信号は増幅器22を介して増幅され、加振器16に入力される。振動を検出する手段として、加速度センサー24を用いる。加速度センサー24で検出された加速度は電気信号に変換され、信号処理装置20に入力される。信号処理装置20に入力された加振力信号、加速度信号はそれぞれA/D変換され、演算処理によりそれぞれ振動数スペクトルに変換される。この振動数スペクトルは、信号処理装置20からコンピュータ26に入力されディスプレイ等に表示される。
【0053】
コンピュータ26は、入力装置、記憶装置、演算処理装置、出力装置等により構成されている。記憶装置には、前述の共振条件式や関連演算式等形状測定の演算処理に必要な事項が予め格納されており、また、入力装置から入力された実測データや振動数スペクトル等が格納される。そして、実測データや共振条件式に基づいて演算処理を行い、コンクリート基礎2の形状寸法を求め、その結果をディスプレイ等の出力装置を介して出力するようになっている。
【0054】
次に、コンクリート基礎2の形状測定の手順を説明する。まず、コンクリート基礎2の柱体部6の頂部の幅a、柱体部6の側面の傾斜角度θ、柱体部6の高さhをそれぞれ必要に応じて実測する。柱体部6の頂部の幅a、柱体部6の側面の傾斜角度θは、柱体部6の頂部が地上に露出していることより測定できる。また、柱体部6の高さhは鉄棒等を地面に貫入して測定する。なお、コンクリート基礎2中を伝播する捩れ振動の伝播速度Vsは予め測定しておいた値を用いる(伝播速度の測定方法については、例えば、特許文献1に記載の方法参照。)。
【0055】
次に、図5(a)、(b)を参照して、加振器16、フォースセンサー18、加速度センサー24の柱体部6への取り付け方について説明する。図5(a)、(b)は柱体部6の平面図である。まず、加振器16とフォースセンサー18は、捩れ振動を起こすために用いる冶具28に取り付ける。なお、冶具28は、断面が直角二等辺三角形の三角柱状のものである。冶具28と、加速度センサー24用の冶具30を、柱体部6に接着剤等を使用して取り付ける。冶具28の取り付け位置は、柱体部6の頂部側面で、捩れ振動を起こせる位置ならどこでもよいが、本実施例では柱体部6の頂部側面の角に取り付ける。冶具30の取り付け位置については、捩れ振動を検出できる位置ならどこでもよいが、本実施例では柱体部6の頂部側面の角に取り付ける。なお、柱体部6が円柱の場合は、ねじれ振動を起こすために用いる冶具として、図5(b)のように三角プリズム形の冶具32を取り付ける。
【0056】
次に、冶具28にフォースセンサー18を取り付け、フォースセンサー18の上に加振器16を蝶ナット等で締めて取り付ける。また、冶具30に加速度センサー24を蝶ナット等で締めて取り付ける。なお、捩れ振動の確認のためには図6に示した2ヶ所で捩れ振動を測定する必要があるので、もう1つの冶具34と加速度センサー36を取り付ける。なお、1箇所で複数方向の加速度を測定するには3極x、y、z方向加速度センサーを用いるとよい。
【0057】
そして、加振器16に増幅器22で増幅した正弦波信号を入力し、その正弦波信号の周波数を掃引させながらコンクリート基礎2に図7の矢印方向の加振力を加えて、コンクリート基礎2の軸周りに捩れ振動を与え、捩れ振動の振動数を測定する。次に、加振力及び加速度信号から変換された振動数スペクトルから捩れ共振振動数の同定を行う。
【0058】
ここで、捩れ共振振動数を同定する方法を説明する。捩れ共振振動数の同定は、柱体部6に取り付けた加振器16、加速度センサー24の位置関係より、振動数スペクトルの信号の符号と、信号のピークにより同定する。捩れ共振振動数は振動の節が1つの基準振動から、節がn個の振動数までを同定するが、nは自然数で、ここではおおよそ1から5である。なお、振動の節がn個の振動数をn次共振振動数と呼び、1次共振振動数をf1、2次共振振動数をf2と表し、図8のようになる。捩れ振動数は加振を行なう方向により決まり、振動の方向は加速度センサー24により検出でき、その方向は信号の符号に現れる。よって、加速度センサー24を取り付けた位置と、加振器16を取り付けた位置から、加速度センサー24が検出する信号の符号を確認し、捩れ振動の方向を確認する。図7に示した位置でのコンクリート基礎2の振動を測定した場合の捩れ振動の方向を表1に示す。
【0059】
【表1】
測定した振動数スペクトルをコンピュータ26のディスプレイに表示させ、捩れ振動が起きる方向と振動数スペクトルのピークより、共振振動数を読み取る。図7に示した位置でのコンクリート基礎2の振動を測定した場合の振動数スペクトルの例を図8に示す。なお、図8に示すように、一般に1次共振振動数f1はノイズに埋もれてピークが明瞭でないことが多い。
【0060】
以上のようにして得られたコンクリート基礎2の実測寸法と共振振動数を前述の共振条件式(18)又は(27)に代入して、コンクリート基礎2の未知寸法が得られる。以下、計算に用いる数値の違いにより、方法1乃至3に分けて説明する。なお、以降は柱体部6及び床盤部8の断面は正方形であるとする。
【0061】
(方法1)柱体部6の頂部の幅aと側面の傾斜角度θと、伝播速度Vsの値を用いる。これらの値を、共振条件式(18)又は(27)に代入する。そして、前述の捩れ共振振動数f1、f2、…fnから3点の共振振動数を選び、連立方程式を立てる。仮に、f1、f2、f3を選ぶと次の連立方程式(28)が成り立つ。
【0062】
【数28】
式(28)を解いて、柱体部6の高さh、床盤部8の幅Bと厚さtを未知数として求めることができる。
【0063】
(方法2)柱体部6の頂部の幅aと側面の傾斜角度θと高さhの実測値を用いる。なお、柱体部6の底部の幅bをaとθとhにより幾何学的に計算して近似し、値を求めておく必要がある。これらの値と3点の捩れの共振振動数fnから、方法1と同様にして、床盤部8の幅Bと厚さtを未知数として求める。また、方法1と異なり、伝播速度Vsの値は必要ない。
【0064】
(方法3)方法2で計算に用いる値に伝播速度Vsを追加する。これにより未知数が1つ減るので、計算に必要な捩れの共振振動数fnが2点に減り、連立方程式は2つとなる。これらを解いて、床盤部8の幅Bと厚さtを未知数として求める。
【0065】
以上説明したように、本実施例によれば、測定に用いる振動モードとして埋設コンクリート基礎で最も強く起こる捩れ振動を用いているので、振動スペクトルの共振ピークが鋭く明瞭に現れる。このため、その他の振動モードとの区別がしやすくなり、また、共振ピークがノイズに埋もれることもなくなる。よって、共振振動数fnの同定が正確にできるようになり、共振振動数fnと共振条件式(18)又は(27)に基づいて求められるコンクリート基礎2の埋設部分の寸法の測定精度が向上する。
【0066】
また、方法1乃至3で説明したように、コンクリート基礎2の各部寸法の実測数を増やせば、それだけ共振条件式の未知数が少なくなるので誤差が小さくなり精度を上げることができる。
【実施例2】
【0067】
実施例1では、コンクリート基礎2の実測可能な部分の実測値を用いて共振振動数と共振条件式からコンクリート基礎2の各部寸法を求めたが、見方を変えれば、コンクリート基礎2の各部寸法を用いて共振条件式から伝播定数(又は共振振動数)を求めることができるということである。そこで、本実施例ではこれを利用して、予めコンクリート基礎2の各部寸法と伝播定数(又は共振振動数)の関係を示したデータベースを作成しておき、実測した共振振動数に基づいてデータベースを照合して、コンクリート基礎2の各部寸法を求める。この方法を以下、作成するデータベースの違いにより、本実施例及び実施例3、4に分けて説明する。なお、前述したように、測定では1次共振振動数はノイズに埋もれてピークが明瞭でないことが多い。よって、本実施例及び実施例3、4では、1次共振振動数に対応する伝播定数と1次共振振動数は用いないものとする。
【0068】
まず、柱体部6の頂部の幅aと高さhを実測する。そして、a、hの値を式(18)又は式(27)に代入する。次に、柱体部6の底部の幅bと床盤部8の幅Bと厚さtの数値を適切な範囲内において、適切な刻み幅で変えて、複数の伝播定数βを求める。このとき、1組の(b、B、t)の値に対し、βの値は共振振動数の数と同様に、β=βi(i=2、3…)のように無数に求まる。また、βiはi次共振振動数に対応する伝播定数であることを示す。数値の大きさは、β2<β3<β4<…となっている。
【0069】
このようにして求めたβiの中の1つ、例えばβ2を基準にして、ki=βi/β2(i=3、4…)のような伝播定数の比kiを求める。kiはすなわち、計算により求めた理論値の伝播定数の比である。そして、kiの、(b、B、t)に対する3次元マトリックスのデータベースを作成する。例えば、表2のようなデータベースとなる。なお、表2中のk3(1,1,1)は、(b、B、t)=(b1、B1、t1)のときのβ2とβ3から求めたk3であることを示す。ちなみに、例えば、(b、B、t)=(b1、B1、t1)のときのβ2と、(b、B、t)=(b1、B2、t2)のときのβ2は違う値であることは言うまでもない。表2のようなデータベースがb=b2、b3、…のそれぞれの場合について存在し、さらに、kiのi=4、5、…のそれぞれの場合について存在する。
【0070】
【表2】
次に、上記のデータベースを寸法推定に用いる手順について説明する。まず、捩れの共振振動数fmi(i=2、3…)を測定する。測定する共振振動数fmiの数は多ければ精度はよいが、2点でもよい。次に、伝播定数の比kiを求める際に第2次共振振動数に対応するβ2を基準としたので、ここでは共振振動数fm2を基準にしてkmi=fmi/fm2(i=3、4…)のような共振振動数の比kmiを求める。kmiはすなわち、実測値の共振振動数の比である。
【0071】
ここで、式(6)から分かるように、伝播定数の比は共振振動数の比に等しい。よって、kiは理論値の共振振動数の比と等しく、kiとkmiを比較するということは理論値の共振振動数の比と実測値の共振振動数の比の比較をするということになる。これにより誤差を求め、誤差がより小さい(b、B、t)の組み合わせを選択すれば、精度よく(b、B、t)を推定することができる。誤差の算出は次式(29)の計算により行う。
【0072】
【数29】
ここで、pは誤差である。pが最小になるki(i=3、4…)を求め、この時の(b、B、t)を柱体部6の底部の幅b、床盤部8の幅B、床盤部8の厚さtとして求める。
【0073】
ここで、上記の理論を用いた解析プログラムによる解析方法を説明する。鉄塔基礎の形状解析には、解析結果の表現方法により2つの解析方法があり、標準鉄塔基礎の基礎型を解析結果とする方法と、鉄塔基礎の各部寸法を解析結果とする方法である。基礎型を解析結果とする方法は、解析対象とする鉄塔基礎が明らかに標準鉄塔基礎であることが分かっている場合に適用し、各部寸法を解析結果とする方法は、解析対象とする鉄塔基礎の情報が全くない場合に適用する。
【0074】
まず、標準鉄塔基礎の基礎型を解析結果とする方法について、図9のフローチャートに沿って説明する。
(ステップ101)解析プログラムに、実測したコンクリート基礎2の柱体部6の幅a、柱体部6の高さhと複数の捩れ共振振動数、ここではf2、f3、f4を入力する。
(ステップ102)入力したa、hの値を検索条件とし、解析プログラム内に格納された標準鉄塔基礎表から、コンクリート基礎2の形状、寸法等の条件にあう鉄塔基礎型を選択する。なお、標準鉄塔基礎表には、一般的な標準鉄塔基礎の形状、寸法が記載されている。
(ステップ103)選択された鉄塔基礎型の各部寸法より、柱体部6の幅b、床盤部8の幅B、厚さtそれぞれの最小値と最大値を決定する。
(ステップ104)ステップ103の最小値と最大値の範囲内において、(b、B、t)の3次元マトリックスを作成する。なお、ここでは各寸法の刻み幅は、Δb=0.01(m)、ΔB=0.1(m)、Δt=0.05(m)である。
(ステップ105)実測したa、hと3次元マトリックスの値(b、B、t)を式(18)又は式(27)に代入し、理論値の伝播定数(共振振動数)の比kiを算出する。
(ステップ106)実測値の共振振動数の比kmiを算出する。
(ステップ107)理論値の伝播定数(共振振動数)の比kiと実測値の共振振動数の比kmiを比較し、式(29)により誤差を算出する。誤差が最も小さくなる(b、B、t)の組合せを選択する。
(ステップ108)求めた(a、h、b、B、t)の組合せと、標準鉄塔基礎表の各部寸法の組合せを比較して誤差を算出する。
(ステップ109)誤差が最小となる標準鉄塔基礎型を解析結果として出力して処理を終了する。
【0075】
図10に上記の方法で得られる三次元マトリックスデータの1例を示し、表3に解析結果の1例を示す。なお、表3のa、hの解析結果の数値は実測値である。表3から分かるように高い精度でコンクリート基礎2の埋設部分の寸法が推定できた。
【0076】
【表3】
次に、図11のフローチャートに沿って鉄塔基礎の各部寸法を解析結果とする方法について説明する。
(ステップ201)解析プログラムに、実測したコンクリート基礎2の柱体部6の幅a、柱体部6の高さh、柱体部6の側面の傾斜角度θと複数の捩れ共振振動数f2、f3、f4を入力する。
(ステップ202)a、h、θより柱体部6の底部の幅bを計算し推定する。
(ステップ203)推定したbを基に、計算用マトリックスの範囲を計算する。ここでは、bの範囲は0.8b(m)〜1.2b(m)、Bの範囲は0.88b(m)〜2.4b(m)、tの範囲は0.3(m)〜0.8(m)である。
(ステップ204)ステップ203の最小値と最大値の範囲内において、(b、B、t)の3次元マトリックスを作成する。なお、各寸法の刻み幅は、Δb=0.01(m)、ΔB=0.1(m)、Δt=0.05(m)である。
(ステップ205)実測したa、hと3次元マトリックスの値(b、B、t)を式(18)又は式(27)に代入し、理論値の伝播定数(共振振動数)の比kiを算出する。
(ステップ206)実測値の共振振動数の比kmiを算出する。
(ステップ207)理論値の伝播定数(共振振動数)の比kiと実測値の共振振動数の比kmiを比較し、式(29)により誤差を算出する。誤差が最も小さくなる(b、B、t)の組合せを選択する。
(ステップ208)上記ステップで求めた(a、h、b、B、t)の組合せを解析結果として出力して処理を終了する。
【0077】
以上、本実施例のように、予めコンクリート基礎2の各部寸法と理論値の伝播定数(共振振動数)の比kiのデータベースを作成しておくことにより、実測共振振動数比のみで形状寸法が測定できるようになる。また、測定に伝播速度の値を用いないので精度が上がり、伝播速度を測る必要もなくなり、さらに手間が省けることになる。なお、データベースを作成する際の各部の寸法の刻み幅を小さくすれば、より高い精度で寸法測定ができる。
【実施例3】
【0078】
実施例2で、式(18)又は式(27)に、柱体部6の頂部の幅aと高さhを代入するが、これらに加えて柱体部6の底部の幅bを代入する。このbは、側面の傾斜角度θとaとhにより幾何学的に計算して値を求めておく。以降は実施例2と同様に行う。なお、本実施例において作成するデータベースは、kiと(B、t)の2次元マトリックスとなり、求める寸法は、床盤部8の幅B、床盤部8の厚さtである。
【0079】
本実施例によれば、作成するデータベースが(B、t)の2次元マトリックスとなり、データベースの作成、検索が容易になる。
【0080】
なお、本実施例で寸法を求めることもできるが、柱体部6の側面の傾斜角度θから求める柱体部6の底部の幅bは、柱体部6の側面の平面度がよくないため誤差が大きいことがあり、床盤部8の幅Bと厚さtの解析結果が悪くなることがあるので、実施例2の測定の方が望ましい。
【実施例4】
【0081】
実施例2、3で式(18)又は式(27)に代入する値として伝播速度Vsを加える。実施例2、3では、理論値の伝播定数の比kiと実測値の伝播定数の比kmiという伝播定数の比を比較したが、本実施例では伝播速度Vsがあるので式(6)により理論値の共振振動数fiが導出できる。よって、理論値の共振振動数fiと実測値の共振振動数fmiを比を用いることなくそのまま比較することができる。そのため、本実施例において作成するデータベースは、共振振動数fiと各部寸法の3次元又は2次元マトリックスのデータベースとなる。また、実測する共振振動数fmiの数は、多ければ精度はよいが2つでもよい。その他の方法は実施例2,3と同様である。なお、誤差の算出は次式(30)の計算により行う。
【0082】
【数30】
pが最小になるfi(i=3、4…)を求め、この時の(b、B、t)又は(B、t)の組み合わせを求める。
【0083】
本実施例によれば、伝播定数の比を用いることなく共振振動数のまま比較することができるので、作成すべきデータベースは共振振動数fiと各部寸法のものでよい。よって、データベースの作成が容易になる。
【実施例5】
【0084】
本実施例では、図12aのように回転軸(捩れ軸)38が柱体部6の鉛直軸40上の点Pを中心に傾いている場合を考える。この場合、図12bで示すように、柱体部6は点Pを通る床盤部8と平行な面42を境として、2つの第1柱体部44と第2第2柱体部46を接続して構成されていると考える。第1柱体部44と第2柱体部46及び床盤部8を接続してなる基礎の4端子マトリックスは次式(31)になる。
【0085】
【数31】
また、図13のように床盤部8の下に捨てコンクリート12が接続されてなる基礎の4端子マトリックスは次式(32)になる。
【0086】
【数32】
式(31)、式(32)から実施例1で述べたように共振条件式を求める。なお、式(31)のAh1、Bh1、Ch1、Dh1は、式(2)のAh、式(3)のBh、式(4)のCh、式(5)のDh中のbがcに、hがh1となった式であり、式(32)のAh2、Bh2、Ch2、Dh2は、式(2)のAh、式(3)のBh、式(4)のCh、式(5)のDh中のaがcに、hがh2となった式である。なお、h1は第1柱体部44の高さ、h2は第2柱体部46の高さ、cは第1柱体部44の底部の幅(第2柱体部46の頂部の幅)である。以下この場合の形状測定方法を、方法4、5に分けて説明する。
【0087】
(方法4)実施例2と同様の方法を用いる。第1柱体部44の頂部の幅a、第1柱体部44と第2柱体部46の高さの合計h、第2柱体部46の底部の幅bを測定する。次に、式(31)又は(32)から求められる共振条件式に基づいて、適切な範囲内において、aとbとB及びtに対する伝播定数βの比に関する4次元マトリックスのデータベースを作成する。ここで、cは相似の関係を用いて、h1/h、a、bから求めることができる。よって、cの値を固定しておき、(a、b、B、t)の数値を変えてデータベースを作成する。以降は、実施例2と同様に行う。
(方法5)方法4ではcの値を固定したが、ここではh1/hの値を固定する。第1柱体部44の頂部の幅a、第1柱体部44と第2柱体部46の高さの合計h、第2柱体部46の底部の幅bを測定する。次に、式(31)又は(32)から求められる共振条件式に基づいて、適切な範囲内において、Bとt及びcに対する伝播定数βの比に関する3次元マトリックスのデータベースを作成する。以降は、実施例2と同様に行う。
【0088】
以上説明したように、本実施例によれば、回転軸38が柱体部6の点Pを中心に鉛直軸40から傾いている場合においても、2つの第1柱体部44と第2第2柱体部46が接続されていると考えることにより、コンクリート基礎2の寸法を求めることができるようになる。
【0089】
上述したように、実施例1乃至5によれば捩れ共振条件式と共振振動数を用いることにより、埋設コンクリート基礎の各部寸法を高い精度で求めることができる。
【0090】
また、実施例1の図3における捨てコンクリート12よりさらに下に構造物があることが想定される場合は、その構造物についての式(19)のような4端子マトリックスを求め、以降は式(27)を求める方法と同様に式を求めることで対応できる。また、実施例2の解析プログラムでは伝播定数の比を用いて解析を行っているが、実施例4のように共振振動数を用いる解析プログラムを適用することもできる。その際は、伝播速度の値が必要となる。
【0091】
なお、本実施例では柱体部6と床盤部8及び捨てコンクリート12の断面が正方形又は円である場合について説明したが、矩形の場合についても、未知数は多くなるが共振条件式を設定することで対応できる。つまり、図1のような埋設コンクリート基礎以外でも、その基礎の形状に対応する捩れの共振条件式を設定できれば本発明の方法で形状測定をすることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】コンクリート基礎の側面図である。
【図2】コンクリート基礎を使用する鉄塔である。
【図3】床盤部の下に捨てコンクリートがある場合の側面図である。
【図4】コンクリート基礎2の形状測定装置の構成図である。
【図5】捩れ共振振動数を測定する各センサーを取り付ける際の柱体部の平面図である。
【図6】加速度センサーを2つ付ける際の柱体部の平面図である。
【図7】捩れ共振振動数を同定するための参照図である。
【図8】コンクリート基礎の振動を測定した場合の振動数スペクトルの例である。
【図9】実施例2の標準鉄塔基礎の基礎型を解析結果とする解析プログラムのフローチャートである。
【図10】実施例2の(b、B、t)の三次元マトリックスデータの1例である。
【図11】実施例2の鉄塔基礎の各部寸法を解析結果とする解析プログラムのフローチャートである。
【図12】実施例5の回転軸が柱体部の途中を中心に鉛直軸から傾いている場合の側面図である。
【図13】実施例5の床盤部の下に捨てコンクリートがある場合の側面図である。
【符号の説明】
【0093】
2 コンクリート基礎
6 柱体部
8 床盤部
12 捨てコンクリート
16 加振器
18 フォースセンサー
20 信号処理装置
24 加速度センサー
44 第1柱体部
46 第2柱体部
【技術分野】
【0001】
本発明は、非掘削により埋設コンクリート基礎の形状寸法を測定する方法及び装置に係り、特に埋設コンクリート基礎の形状寸法を捩れ振動により解析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非掘削により埋設構造物の形状寸法を測定する従来の方法として、特許文献1に記載されているように埋設構造物の共振振動を利用する方法がある。特許文献1の方法は、測定対象の埋設構造物を加振して複数の共振振動数を抽出しその複数の共振振動数と、共振振動数と埋設構造物の各部の寸法との関係を表した共振条件式とに基づいて、その埋設構造物の形状寸法を演算により求める方法である。
【0003】
例えば、特許文献1は、角錐台又は円錐台の柱体部と矩形又は円形の断面を有する床盤部とを連結して形成された鉄塔基礎である逆T字型コンクリート基礎の形状寸法を測定するにあたり、共振振動数とコンクリート基礎の各部寸法との関係を表した共振条件式を設定する。そして、柱体部の頂部の幅a、柱体部の側面の傾斜角度θ及び縦波の伝播速度V等を測定し、柱体部の頂部を鉛直軸方向に加振して得られる共振振動数を3つ抽出する。抽出した3つの共振振動数を設定した共振条件式にあてはめて連立方程式を立て、その連立方程式を解いて地中に埋設された部分である柱体部の高さh、柱体部の底部の幅b、床盤部の幅B、床盤部の厚さt等を求めるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特許第2555517号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1は、逆T字型コンクリート基礎の頂部を鉛直軸方向に加振して起きる伸縮振動である縦波の共振振動を用いている。しかし、埋設コンクリート基礎の伸縮振動は、減衰が大きく、振動スペクトルの共振ピークがノイズに埋もれることがある。また、曲げ振動やその他の振動モードとの区別がつけ難く、振動スペクトルから伸縮の共振振動数を特定することが困難な場合がある。その結果、振動スペクトルから共振振動数を誤って選択する場合があり、解析値の誤差が大きくなることがある。
【0006】
また、特許文献1では超音波伝播速度測定器により、埋設コンクリート基礎の地上部分の横方向の振動の伝播速度を測定しているので、解析に用いる伸縮振動の伝播速度とは厳密には一致しない。一般に、伝播速度は、縦波・横波等の波の形態や種々の物体の各共振モード等によってそれぞれ異なる。したがって、共振振動数と伝播速度を別個に測定する特許文献1の方法は、伝播速度が実際の数値と大きく異なることがある。そこで、共振振動数とその振動の伝播速度の測定の精度を向上することが望まれている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、埋設コンクリート基礎の形状寸法測定に利用する振動モードと埋設コンクリート基礎に発生するその他の振動モードとの区別を明瞭にしてノイズを低減し、測定精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、角錐台又は円錐台の柱体部と矩形又は円形の断面を有する床盤部とを連結して形成された埋設コンクリート基礎の形状測定方法において、埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振して捩れ振動の加速度を検出し、その加速度検出値の複数の共振振動数を抽出し、その抽出した複数の共振振動数と、捩れ振動の共振振動数と埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した共振条件式に基づいて、埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、測定に用いる振動モードとして埋設コンクリート基礎で最も強く起こる捩れ振動を用いているので、振動スペクトルの共振ピークが鋭く明瞭に現れる。このため、その他の振動モードとの区別がしやすくなり、また、共振ピークがノイズに埋もれることもなくなる。その結果、共振振動数の抽出が正確にできるようになり、共振振動数と共振条件式に基づいて求められる埋設コンクリート基礎の寸法の測定精度が向上する。
【0010】
また、捩れ振動の伝播速度は横波の伝播速度であり、この横波の伝播速度は振動モードによって異ならない。よって、コンクリート基礎の地上部分と埋設部分が振動媒質的に均一なら、コンクリート基礎の地上部分の側面で超音波伝播速度測定器により測定する横波の伝播速度を解析に用いることができる。
【0011】
この場合において、埋設コンクリート基礎の柱体部の頂部の幅又は直径、高さ、底部の幅又は直径、捩れ振動の伝播速度の値のうちいくつか、あるいは全てを共振条件式にあてはめることもできる。なお、底部の幅又は直径の値は、柱体部の頂部の幅又は直径と側面の傾斜角度と高さとの値に基づいた推定値とすることができる。このように、埋設コンクリート基礎の各部寸法の実測数を増やせば、それだけ共振条件式の未知数が少なくなるので誤差が小さくなり精度が上がる。
【0012】
また、上記課題を解決するため、埋設コンクリート基礎の軸周りの捩れ振動の共振振動数と埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した捩れ振動の共振条件式に基づいて、埋設コンクリート基礎の埋設部の未知寸法の特定の組み合わせにおける設定次の伝播定数を基準とするその他の埋設部の未知寸法の組み合わせにおける伝播定数の比を求め、寸法の組み合わせと伝播定数の比との対応関係を記載したテーブルを予めデータベースに格納しておき、埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振して捩れ振動の加速度を検出し、その加速度検出値の複数の共振振動数を抽出し、その抽出した複数の共振振動数のうち設定次の共振振動数を基準とするその他の共振振動数の比を求め、その比と伝播定数の比との誤差が最小になる寸法の組み合わせを前記データベースより検索して、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする方法をとることもできる。
【0013】
これによれば、予め未知寸法の組み合わせと伝播定数の比との対応関係を記載したテーブルを格納したデータベースを作成しておくことにより、共振振動数の測定のみで埋設コンクリート基礎の形状測定ができる。すなわち、一般に、埋設コンクリート基礎の形状、寸法は決まっているので基礎ごとに分類することができ、各分類についてのデータベースを予め作成しておけば、共振振動数の測定のみで形状測定ができるようになる。よって、埋設コンクリート基礎の寸法を実測する手間を省くことができる。また、測定に伝播速度の値を用いないので精度があがり、伝播速度を測る必要もなくなり、さらに手間が省けることになる。
【0014】
この場合において、埋設コンクリート基礎の柱体部の頂部の幅又は直径と高さの2つの実測値、あるいは、柱体部の頂部の幅又は直径と高さと底部の幅又は直径の3つの実測値を共振条件式にあてはめることもできる。なお、底部の幅又は直径の値は、柱体部の頂部の幅又は直径と側面の傾斜角度と高さの値に基づいた推定値である。このように、埋設コンクリート基礎の各部の寸法の実測数を増やせば、それだけ共振条件式の未知数が少なくなるのでデータベースの作成、検索が容易となる。
【0015】
またこの場合において、柱体部の回転軸が柱体部の途中を中心に中心軸から傾いているときに、柱体部は第1柱体部と第2柱体部の2つの柱体を接続して構成されているとみなし、第1柱体部の頂部の幅又は直径と第2柱体部の底部の幅又は直径と柱体部全体の高さとを実測して共振条件式にあてはめ、その共振条件式に基づいて埋設コンクリート基礎の各部の寸法の組み合わせと伝播定数との比を求めてテーブルを作成することを特徴とする形状測定方法をとることもできる。
【0016】
これによれば、回転軸が柱体部の途中を中心に鉛直軸から傾いている場合でも、柱体部は2つの第1柱体部と第2第2柱体部が接続されて構成されていると考えることによりデータベースを作成して、埋設コンクリート基礎の各部の寸法を求めることができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、埋設コンクリート基礎の形状寸法測定に利用する振動モードと埋設コンクリート基礎に発生するその他の振動モードとの区別を明瞭にしてノイズを低減し、測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について数式及び図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
本実施例では、図1に示すような逆T字型のコンクリート基礎2を測定対象とする。逆T字型のコンクリート基礎2は図2のような鉄塔4用の基礎である。ここでは、逆T字型のコンクリート基礎2を柱体部6と床盤部8からなっているとみなす。図1を参照して全実施例で使用する捩れ共振条件式の導出について説明する。なお、捩れ共振条件式の導出では説明を簡単にするため、柱体部6と床盤部8のそれぞれの断面は、正方形又は円であるとする。
【0020】
まず、ここで導出する捩れ共振条件式について簡単に説明をする。図1のコンクリート基礎2の柱体部6の頂部の幅又は直径をa、柱体部6の底部の幅又は直径をb、柱体部6の高さをh、床盤部8の幅又は直径をB、床盤部8の厚さをt、捩れ振動の伝播定数をβとする。導出する捩れ共振条件式は、a、b、t、B、h、βの関数であるので、F(a、b、t、B、h、β)=0で表すことができる。また、βは後述する式(6)により捩れの共振振動数fと捩れ振動の伝播速度Vsで表すことができるので、捩れ共振条件式はf、Vsの関数でもあり、F(a、b、t、B、h、f、Vs)=0と表すことができる。なお、伝播速度Vsは理想的には定数であるが、実際には基礎ごとにある程度の変動があるのでここでは変数とした。以降より、この捩れ共振条件式の導出をする。
【0021】
弾性体の振動解析には電気回路の分布回路理論を用いる。そこで、柱体部6と床盤部8のそれぞれの電気回路の4端子に対応したマトリックスを求め縦続接続する。ここで、軸(鉄骨10)の周りの捩れ振動を考えると、電気回路の分布回路理論との対応は、軸の周りのトルクTが電圧に対応し、捩れ角φの回転角速度ω=dφ/dtが電流に対応する。
【0022】
柱体部6の4端子マトリックスを式(1)で表すとする。
【0023】
【数1】
式(1)の、Ah、Bh、Ch、Dhは、それぞれ次式(2)、(3)、(4)、(5)で表される。
【0024】
【数2】
【0025】
【数3】
【0026】
【数4】
【0027】
【数5】
ここで、波長をλ、振動数をf、剛性率をG、密度をρとする。また、伝播定数βは次式(6)で表される。
【0028】
【数6】
柱体部6の特性インピーダンスは錐体台であるため一定ではなく、式(2)、式(3)のαabが平均化された特性インピーダンスに相当する。αは、柱体部6の断面が円の場合は次式(7)、断面が正方形の場合は次式(8)で表される。
【0029】
【数7】
【0030】
【数8】
捩れ振動の波長が骨材の大きさ、鉄骨・鉄筋の太さよりかなり大きい1次乃至5次ぐらい迄の低次の共振モードでは、骨材や鉄骨・鉄筋はコンクリート内で一様分布と見なしてよく、剛性率Gや密度ρ等の共振振動数fに関わる物理量を、均一な弾性体のものとして扱うことができる。ただし、それらの値はコンクリートのみのときより増加する。骨材や鉄骨・鉄筋は軸に垂直方向の断面積がコンクリートの断面積に比べてかなり小さいので、伝播速度Vsに関しては、コンクリートだけに比べて数パーセント増加したものとして扱えばよい。
【0031】
床盤部8の4端子マトリックスは次式(9)となる。
【0032】
【数9】
ここで、ZBは特性インピーダンスであり、床盤部8の断面が円の場合は、Bを直径として次式(10)で表され、床盤部8の断面が正方形の場合は、Bを幅として次式(11)で表される。
【0033】
【数10】
【0034】
【数11】
柱体部6と床盤部8とを縦続接続したコンクリート基礎2の4端子マトリックスは積を計算をして、次式(12)となる。
【0035】
【数12】
ここで、柱体部6の上面と床盤部8の底面のトルク−回転角速度の縦ベクトルをそれぞれ次式(13)、次式(14)で表す。
【0036】
【数13】
【0037】
【数14】
式(13)と(14)の間の関係式は次式(15)で表される。
【0038】
【数15】
ここで、柱体部6の上面から見たインピーダンスZ(1)は、前述したトルクT、捩れ角の回転角速度ωと電圧、電流との対応関係から次式(16)で表される。
【0039】
【数16】
図1のように、コンクリート基礎2の周囲が空気や土である場合は、T(3)≒0としてよい。したがって、Z(1)=BT1/DT1と与えられる。共振はインピーダンスが0のときに起こるので、式(16)の分子BT1を式(17)で表し、これを0とおいた式を式(18)とすると、式(18)が捩れ振動の共振条件式である。
【0040】
【数17】
【0041】
【数18】
また、図3のように、床盤部8の下にさらに栗石とコンクリート(捨てコンクリート12)がある場合には、コンクリート基礎2全体の4端子マトリックスは、柱体部6、床盤部8、捨てコンクリート12の3段の4端子マトリックスを縦続接続する。説明を簡単にするために、捨てコンクリート12の断面は正方形であるとする。
【0042】
捨てコンクリート12の4端子マトリックスは次式(19)で表される。
【0043】
【数19】
ここで、ZBsは特性インピーダンスで、捨てコンクリート12の断面が正方形の場合はBsを幅として次式(20)で表される。
【0044】
【数20】
柱体部6と床盤部8と捨てコンクリート12を縦続接続したコンクリート基礎2の4端子マトリックスは、積を計算して次式(21)となる。
【0045】
【数21】
ここで、柱体部6の上面と捨てコンクリート12の底面のトルク−回転角速度の縦ベクトルをそれぞれ次式(22)、次式(23)で表す。
【0046】
【数22】
【0047】
【数23】
すると、この間の関係式は次式(24)で表される。
【0048】
【数24】
ここで、柱体部6の上面から見たインピーダンスZ(1)は、前述したトルクT、捩れ角の回転角速度ωと電圧、電流との対応関係から次式(25)で表される。
【0049】
【数25】
図1の場合と同様に、T(4)≒0としてよい。したがって、Z(1)=BT2/DT2と与えられる。共振はインピーダンスが0のときに起こるので、式(25)の分子BT2を式(26)で表し、これを0とおいた式を式(27)とすると、式(27)が捩れ振動の共振条件式である。
【0050】
【数26】
【0051】
【数27】
式(18)や式(27)から分かるように伝播定数βに振動数fが含まれているので、コンクリート基礎2の各部寸法や伝播速度Vsが与えられると、この式から多数の0点、即ち共振振動数が求められる。逆に、共振振動数が既知の場合は、未知のコンクリート基礎2の各部寸法や伝播速度Vsを求めることもできる。
【0052】
次に、図4に沿って、コンクリート基礎2の形状測定装置の構成を説明する。柱体部6の点線14は地面位置であり、点線14より下が地面に埋まっている。コンクリート基礎2に振動を与える加振方法として、ハンマー等で特定の部位を叩く方法と、正弦波振動を発生する振動子により振動を付与し、その周波数を掃引する方法が適用できる。本実施例では正弦波信号を掃引する加振器16を用いる。また、加振器16の加振力を検出するためにフォースセンサー18をコンクリート基礎2と加振器16との間に設ける。フォースセンサー18で検出された加振力は電気信号に変換され、信号処理装置20に入力される。また、発振器21は、加振器16に掃引するための正弦波信号を発生させるものである。この正弦波信号は増幅器22を介して増幅され、加振器16に入力される。振動を検出する手段として、加速度センサー24を用いる。加速度センサー24で検出された加速度は電気信号に変換され、信号処理装置20に入力される。信号処理装置20に入力された加振力信号、加速度信号はそれぞれA/D変換され、演算処理によりそれぞれ振動数スペクトルに変換される。この振動数スペクトルは、信号処理装置20からコンピュータ26に入力されディスプレイ等に表示される。
【0053】
コンピュータ26は、入力装置、記憶装置、演算処理装置、出力装置等により構成されている。記憶装置には、前述の共振条件式や関連演算式等形状測定の演算処理に必要な事項が予め格納されており、また、入力装置から入力された実測データや振動数スペクトル等が格納される。そして、実測データや共振条件式に基づいて演算処理を行い、コンクリート基礎2の形状寸法を求め、その結果をディスプレイ等の出力装置を介して出力するようになっている。
【0054】
次に、コンクリート基礎2の形状測定の手順を説明する。まず、コンクリート基礎2の柱体部6の頂部の幅a、柱体部6の側面の傾斜角度θ、柱体部6の高さhをそれぞれ必要に応じて実測する。柱体部6の頂部の幅a、柱体部6の側面の傾斜角度θは、柱体部6の頂部が地上に露出していることより測定できる。また、柱体部6の高さhは鉄棒等を地面に貫入して測定する。なお、コンクリート基礎2中を伝播する捩れ振動の伝播速度Vsは予め測定しておいた値を用いる(伝播速度の測定方法については、例えば、特許文献1に記載の方法参照。)。
【0055】
次に、図5(a)、(b)を参照して、加振器16、フォースセンサー18、加速度センサー24の柱体部6への取り付け方について説明する。図5(a)、(b)は柱体部6の平面図である。まず、加振器16とフォースセンサー18は、捩れ振動を起こすために用いる冶具28に取り付ける。なお、冶具28は、断面が直角二等辺三角形の三角柱状のものである。冶具28と、加速度センサー24用の冶具30を、柱体部6に接着剤等を使用して取り付ける。冶具28の取り付け位置は、柱体部6の頂部側面で、捩れ振動を起こせる位置ならどこでもよいが、本実施例では柱体部6の頂部側面の角に取り付ける。冶具30の取り付け位置については、捩れ振動を検出できる位置ならどこでもよいが、本実施例では柱体部6の頂部側面の角に取り付ける。なお、柱体部6が円柱の場合は、ねじれ振動を起こすために用いる冶具として、図5(b)のように三角プリズム形の冶具32を取り付ける。
【0056】
次に、冶具28にフォースセンサー18を取り付け、フォースセンサー18の上に加振器16を蝶ナット等で締めて取り付ける。また、冶具30に加速度センサー24を蝶ナット等で締めて取り付ける。なお、捩れ振動の確認のためには図6に示した2ヶ所で捩れ振動を測定する必要があるので、もう1つの冶具34と加速度センサー36を取り付ける。なお、1箇所で複数方向の加速度を測定するには3極x、y、z方向加速度センサーを用いるとよい。
【0057】
そして、加振器16に増幅器22で増幅した正弦波信号を入力し、その正弦波信号の周波数を掃引させながらコンクリート基礎2に図7の矢印方向の加振力を加えて、コンクリート基礎2の軸周りに捩れ振動を与え、捩れ振動の振動数を測定する。次に、加振力及び加速度信号から変換された振動数スペクトルから捩れ共振振動数の同定を行う。
【0058】
ここで、捩れ共振振動数を同定する方法を説明する。捩れ共振振動数の同定は、柱体部6に取り付けた加振器16、加速度センサー24の位置関係より、振動数スペクトルの信号の符号と、信号のピークにより同定する。捩れ共振振動数は振動の節が1つの基準振動から、節がn個の振動数までを同定するが、nは自然数で、ここではおおよそ1から5である。なお、振動の節がn個の振動数をn次共振振動数と呼び、1次共振振動数をf1、2次共振振動数をf2と表し、図8のようになる。捩れ振動数は加振を行なう方向により決まり、振動の方向は加速度センサー24により検出でき、その方向は信号の符号に現れる。よって、加速度センサー24を取り付けた位置と、加振器16を取り付けた位置から、加速度センサー24が検出する信号の符号を確認し、捩れ振動の方向を確認する。図7に示した位置でのコンクリート基礎2の振動を測定した場合の捩れ振動の方向を表1に示す。
【0059】
【表1】
測定した振動数スペクトルをコンピュータ26のディスプレイに表示させ、捩れ振動が起きる方向と振動数スペクトルのピークより、共振振動数を読み取る。図7に示した位置でのコンクリート基礎2の振動を測定した場合の振動数スペクトルの例を図8に示す。なお、図8に示すように、一般に1次共振振動数f1はノイズに埋もれてピークが明瞭でないことが多い。
【0060】
以上のようにして得られたコンクリート基礎2の実測寸法と共振振動数を前述の共振条件式(18)又は(27)に代入して、コンクリート基礎2の未知寸法が得られる。以下、計算に用いる数値の違いにより、方法1乃至3に分けて説明する。なお、以降は柱体部6及び床盤部8の断面は正方形であるとする。
【0061】
(方法1)柱体部6の頂部の幅aと側面の傾斜角度θと、伝播速度Vsの値を用いる。これらの値を、共振条件式(18)又は(27)に代入する。そして、前述の捩れ共振振動数f1、f2、…fnから3点の共振振動数を選び、連立方程式を立てる。仮に、f1、f2、f3を選ぶと次の連立方程式(28)が成り立つ。
【0062】
【数28】
式(28)を解いて、柱体部6の高さh、床盤部8の幅Bと厚さtを未知数として求めることができる。
【0063】
(方法2)柱体部6の頂部の幅aと側面の傾斜角度θと高さhの実測値を用いる。なお、柱体部6の底部の幅bをaとθとhにより幾何学的に計算して近似し、値を求めておく必要がある。これらの値と3点の捩れの共振振動数fnから、方法1と同様にして、床盤部8の幅Bと厚さtを未知数として求める。また、方法1と異なり、伝播速度Vsの値は必要ない。
【0064】
(方法3)方法2で計算に用いる値に伝播速度Vsを追加する。これにより未知数が1つ減るので、計算に必要な捩れの共振振動数fnが2点に減り、連立方程式は2つとなる。これらを解いて、床盤部8の幅Bと厚さtを未知数として求める。
【0065】
以上説明したように、本実施例によれば、測定に用いる振動モードとして埋設コンクリート基礎で最も強く起こる捩れ振動を用いているので、振動スペクトルの共振ピークが鋭く明瞭に現れる。このため、その他の振動モードとの区別がしやすくなり、また、共振ピークがノイズに埋もれることもなくなる。よって、共振振動数fnの同定が正確にできるようになり、共振振動数fnと共振条件式(18)又は(27)に基づいて求められるコンクリート基礎2の埋設部分の寸法の測定精度が向上する。
【0066】
また、方法1乃至3で説明したように、コンクリート基礎2の各部寸法の実測数を増やせば、それだけ共振条件式の未知数が少なくなるので誤差が小さくなり精度を上げることができる。
【実施例2】
【0067】
実施例1では、コンクリート基礎2の実測可能な部分の実測値を用いて共振振動数と共振条件式からコンクリート基礎2の各部寸法を求めたが、見方を変えれば、コンクリート基礎2の各部寸法を用いて共振条件式から伝播定数(又は共振振動数)を求めることができるということである。そこで、本実施例ではこれを利用して、予めコンクリート基礎2の各部寸法と伝播定数(又は共振振動数)の関係を示したデータベースを作成しておき、実測した共振振動数に基づいてデータベースを照合して、コンクリート基礎2の各部寸法を求める。この方法を以下、作成するデータベースの違いにより、本実施例及び実施例3、4に分けて説明する。なお、前述したように、測定では1次共振振動数はノイズに埋もれてピークが明瞭でないことが多い。よって、本実施例及び実施例3、4では、1次共振振動数に対応する伝播定数と1次共振振動数は用いないものとする。
【0068】
まず、柱体部6の頂部の幅aと高さhを実測する。そして、a、hの値を式(18)又は式(27)に代入する。次に、柱体部6の底部の幅bと床盤部8の幅Bと厚さtの数値を適切な範囲内において、適切な刻み幅で変えて、複数の伝播定数βを求める。このとき、1組の(b、B、t)の値に対し、βの値は共振振動数の数と同様に、β=βi(i=2、3…)のように無数に求まる。また、βiはi次共振振動数に対応する伝播定数であることを示す。数値の大きさは、β2<β3<β4<…となっている。
【0069】
このようにして求めたβiの中の1つ、例えばβ2を基準にして、ki=βi/β2(i=3、4…)のような伝播定数の比kiを求める。kiはすなわち、計算により求めた理論値の伝播定数の比である。そして、kiの、(b、B、t)に対する3次元マトリックスのデータベースを作成する。例えば、表2のようなデータベースとなる。なお、表2中のk3(1,1,1)は、(b、B、t)=(b1、B1、t1)のときのβ2とβ3から求めたk3であることを示す。ちなみに、例えば、(b、B、t)=(b1、B1、t1)のときのβ2と、(b、B、t)=(b1、B2、t2)のときのβ2は違う値であることは言うまでもない。表2のようなデータベースがb=b2、b3、…のそれぞれの場合について存在し、さらに、kiのi=4、5、…のそれぞれの場合について存在する。
【0070】
【表2】
次に、上記のデータベースを寸法推定に用いる手順について説明する。まず、捩れの共振振動数fmi(i=2、3…)を測定する。測定する共振振動数fmiの数は多ければ精度はよいが、2点でもよい。次に、伝播定数の比kiを求める際に第2次共振振動数に対応するβ2を基準としたので、ここでは共振振動数fm2を基準にしてkmi=fmi/fm2(i=3、4…)のような共振振動数の比kmiを求める。kmiはすなわち、実測値の共振振動数の比である。
【0071】
ここで、式(6)から分かるように、伝播定数の比は共振振動数の比に等しい。よって、kiは理論値の共振振動数の比と等しく、kiとkmiを比較するということは理論値の共振振動数の比と実測値の共振振動数の比の比較をするということになる。これにより誤差を求め、誤差がより小さい(b、B、t)の組み合わせを選択すれば、精度よく(b、B、t)を推定することができる。誤差の算出は次式(29)の計算により行う。
【0072】
【数29】
ここで、pは誤差である。pが最小になるki(i=3、4…)を求め、この時の(b、B、t)を柱体部6の底部の幅b、床盤部8の幅B、床盤部8の厚さtとして求める。
【0073】
ここで、上記の理論を用いた解析プログラムによる解析方法を説明する。鉄塔基礎の形状解析には、解析結果の表現方法により2つの解析方法があり、標準鉄塔基礎の基礎型を解析結果とする方法と、鉄塔基礎の各部寸法を解析結果とする方法である。基礎型を解析結果とする方法は、解析対象とする鉄塔基礎が明らかに標準鉄塔基礎であることが分かっている場合に適用し、各部寸法を解析結果とする方法は、解析対象とする鉄塔基礎の情報が全くない場合に適用する。
【0074】
まず、標準鉄塔基礎の基礎型を解析結果とする方法について、図9のフローチャートに沿って説明する。
(ステップ101)解析プログラムに、実測したコンクリート基礎2の柱体部6の幅a、柱体部6の高さhと複数の捩れ共振振動数、ここではf2、f3、f4を入力する。
(ステップ102)入力したa、hの値を検索条件とし、解析プログラム内に格納された標準鉄塔基礎表から、コンクリート基礎2の形状、寸法等の条件にあう鉄塔基礎型を選択する。なお、標準鉄塔基礎表には、一般的な標準鉄塔基礎の形状、寸法が記載されている。
(ステップ103)選択された鉄塔基礎型の各部寸法より、柱体部6の幅b、床盤部8の幅B、厚さtそれぞれの最小値と最大値を決定する。
(ステップ104)ステップ103の最小値と最大値の範囲内において、(b、B、t)の3次元マトリックスを作成する。なお、ここでは各寸法の刻み幅は、Δb=0.01(m)、ΔB=0.1(m)、Δt=0.05(m)である。
(ステップ105)実測したa、hと3次元マトリックスの値(b、B、t)を式(18)又は式(27)に代入し、理論値の伝播定数(共振振動数)の比kiを算出する。
(ステップ106)実測値の共振振動数の比kmiを算出する。
(ステップ107)理論値の伝播定数(共振振動数)の比kiと実測値の共振振動数の比kmiを比較し、式(29)により誤差を算出する。誤差が最も小さくなる(b、B、t)の組合せを選択する。
(ステップ108)求めた(a、h、b、B、t)の組合せと、標準鉄塔基礎表の各部寸法の組合せを比較して誤差を算出する。
(ステップ109)誤差が最小となる標準鉄塔基礎型を解析結果として出力して処理を終了する。
【0075】
図10に上記の方法で得られる三次元マトリックスデータの1例を示し、表3に解析結果の1例を示す。なお、表3のa、hの解析結果の数値は実測値である。表3から分かるように高い精度でコンクリート基礎2の埋設部分の寸法が推定できた。
【0076】
【表3】
次に、図11のフローチャートに沿って鉄塔基礎の各部寸法を解析結果とする方法について説明する。
(ステップ201)解析プログラムに、実測したコンクリート基礎2の柱体部6の幅a、柱体部6の高さh、柱体部6の側面の傾斜角度θと複数の捩れ共振振動数f2、f3、f4を入力する。
(ステップ202)a、h、θより柱体部6の底部の幅bを計算し推定する。
(ステップ203)推定したbを基に、計算用マトリックスの範囲を計算する。ここでは、bの範囲は0.8b(m)〜1.2b(m)、Bの範囲は0.88b(m)〜2.4b(m)、tの範囲は0.3(m)〜0.8(m)である。
(ステップ204)ステップ203の最小値と最大値の範囲内において、(b、B、t)の3次元マトリックスを作成する。なお、各寸法の刻み幅は、Δb=0.01(m)、ΔB=0.1(m)、Δt=0.05(m)である。
(ステップ205)実測したa、hと3次元マトリックスの値(b、B、t)を式(18)又は式(27)に代入し、理論値の伝播定数(共振振動数)の比kiを算出する。
(ステップ206)実測値の共振振動数の比kmiを算出する。
(ステップ207)理論値の伝播定数(共振振動数)の比kiと実測値の共振振動数の比kmiを比較し、式(29)により誤差を算出する。誤差が最も小さくなる(b、B、t)の組合せを選択する。
(ステップ208)上記ステップで求めた(a、h、b、B、t)の組合せを解析結果として出力して処理を終了する。
【0077】
以上、本実施例のように、予めコンクリート基礎2の各部寸法と理論値の伝播定数(共振振動数)の比kiのデータベースを作成しておくことにより、実測共振振動数比のみで形状寸法が測定できるようになる。また、測定に伝播速度の値を用いないので精度が上がり、伝播速度を測る必要もなくなり、さらに手間が省けることになる。なお、データベースを作成する際の各部の寸法の刻み幅を小さくすれば、より高い精度で寸法測定ができる。
【実施例3】
【0078】
実施例2で、式(18)又は式(27)に、柱体部6の頂部の幅aと高さhを代入するが、これらに加えて柱体部6の底部の幅bを代入する。このbは、側面の傾斜角度θとaとhにより幾何学的に計算して値を求めておく。以降は実施例2と同様に行う。なお、本実施例において作成するデータベースは、kiと(B、t)の2次元マトリックスとなり、求める寸法は、床盤部8の幅B、床盤部8の厚さtである。
【0079】
本実施例によれば、作成するデータベースが(B、t)の2次元マトリックスとなり、データベースの作成、検索が容易になる。
【0080】
なお、本実施例で寸法を求めることもできるが、柱体部6の側面の傾斜角度θから求める柱体部6の底部の幅bは、柱体部6の側面の平面度がよくないため誤差が大きいことがあり、床盤部8の幅Bと厚さtの解析結果が悪くなることがあるので、実施例2の測定の方が望ましい。
【実施例4】
【0081】
実施例2、3で式(18)又は式(27)に代入する値として伝播速度Vsを加える。実施例2、3では、理論値の伝播定数の比kiと実測値の伝播定数の比kmiという伝播定数の比を比較したが、本実施例では伝播速度Vsがあるので式(6)により理論値の共振振動数fiが導出できる。よって、理論値の共振振動数fiと実測値の共振振動数fmiを比を用いることなくそのまま比較することができる。そのため、本実施例において作成するデータベースは、共振振動数fiと各部寸法の3次元又は2次元マトリックスのデータベースとなる。また、実測する共振振動数fmiの数は、多ければ精度はよいが2つでもよい。その他の方法は実施例2,3と同様である。なお、誤差の算出は次式(30)の計算により行う。
【0082】
【数30】
pが最小になるfi(i=3、4…)を求め、この時の(b、B、t)又は(B、t)の組み合わせを求める。
【0083】
本実施例によれば、伝播定数の比を用いることなく共振振動数のまま比較することができるので、作成すべきデータベースは共振振動数fiと各部寸法のものでよい。よって、データベースの作成が容易になる。
【実施例5】
【0084】
本実施例では、図12aのように回転軸(捩れ軸)38が柱体部6の鉛直軸40上の点Pを中心に傾いている場合を考える。この場合、図12bで示すように、柱体部6は点Pを通る床盤部8と平行な面42を境として、2つの第1柱体部44と第2第2柱体部46を接続して構成されていると考える。第1柱体部44と第2柱体部46及び床盤部8を接続してなる基礎の4端子マトリックスは次式(31)になる。
【0085】
【数31】
また、図13のように床盤部8の下に捨てコンクリート12が接続されてなる基礎の4端子マトリックスは次式(32)になる。
【0086】
【数32】
式(31)、式(32)から実施例1で述べたように共振条件式を求める。なお、式(31)のAh1、Bh1、Ch1、Dh1は、式(2)のAh、式(3)のBh、式(4)のCh、式(5)のDh中のbがcに、hがh1となった式であり、式(32)のAh2、Bh2、Ch2、Dh2は、式(2)のAh、式(3)のBh、式(4)のCh、式(5)のDh中のaがcに、hがh2となった式である。なお、h1は第1柱体部44の高さ、h2は第2柱体部46の高さ、cは第1柱体部44の底部の幅(第2柱体部46の頂部の幅)である。以下この場合の形状測定方法を、方法4、5に分けて説明する。
【0087】
(方法4)実施例2と同様の方法を用いる。第1柱体部44の頂部の幅a、第1柱体部44と第2柱体部46の高さの合計h、第2柱体部46の底部の幅bを測定する。次に、式(31)又は(32)から求められる共振条件式に基づいて、適切な範囲内において、aとbとB及びtに対する伝播定数βの比に関する4次元マトリックスのデータベースを作成する。ここで、cは相似の関係を用いて、h1/h、a、bから求めることができる。よって、cの値を固定しておき、(a、b、B、t)の数値を変えてデータベースを作成する。以降は、実施例2と同様に行う。
(方法5)方法4ではcの値を固定したが、ここではh1/hの値を固定する。第1柱体部44の頂部の幅a、第1柱体部44と第2柱体部46の高さの合計h、第2柱体部46の底部の幅bを測定する。次に、式(31)又は(32)から求められる共振条件式に基づいて、適切な範囲内において、Bとt及びcに対する伝播定数βの比に関する3次元マトリックスのデータベースを作成する。以降は、実施例2と同様に行う。
【0088】
以上説明したように、本実施例によれば、回転軸38が柱体部6の点Pを中心に鉛直軸40から傾いている場合においても、2つの第1柱体部44と第2第2柱体部46が接続されていると考えることにより、コンクリート基礎2の寸法を求めることができるようになる。
【0089】
上述したように、実施例1乃至5によれば捩れ共振条件式と共振振動数を用いることにより、埋設コンクリート基礎の各部寸法を高い精度で求めることができる。
【0090】
また、実施例1の図3における捨てコンクリート12よりさらに下に構造物があることが想定される場合は、その構造物についての式(19)のような4端子マトリックスを求め、以降は式(27)を求める方法と同様に式を求めることで対応できる。また、実施例2の解析プログラムでは伝播定数の比を用いて解析を行っているが、実施例4のように共振振動数を用いる解析プログラムを適用することもできる。その際は、伝播速度の値が必要となる。
【0091】
なお、本実施例では柱体部6と床盤部8及び捨てコンクリート12の断面が正方形又は円である場合について説明したが、矩形の場合についても、未知数は多くなるが共振条件式を設定することで対応できる。つまり、図1のような埋設コンクリート基礎以外でも、その基礎の形状に対応する捩れの共振条件式を設定できれば本発明の方法で形状測定をすることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】コンクリート基礎の側面図である。
【図2】コンクリート基礎を使用する鉄塔である。
【図3】床盤部の下に捨てコンクリートがある場合の側面図である。
【図4】コンクリート基礎2の形状測定装置の構成図である。
【図5】捩れ共振振動数を測定する各センサーを取り付ける際の柱体部の平面図である。
【図6】加速度センサーを2つ付ける際の柱体部の平面図である。
【図7】捩れ共振振動数を同定するための参照図である。
【図8】コンクリート基礎の振動を測定した場合の振動数スペクトルの例である。
【図9】実施例2の標準鉄塔基礎の基礎型を解析結果とする解析プログラムのフローチャートである。
【図10】実施例2の(b、B、t)の三次元マトリックスデータの1例である。
【図11】実施例2の鉄塔基礎の各部寸法を解析結果とする解析プログラムのフローチャートである。
【図12】実施例5の回転軸が柱体部の途中を中心に鉛直軸から傾いている場合の側面図である。
【図13】実施例5の床盤部の下に捨てコンクリートがある場合の側面図である。
【符号の説明】
【0093】
2 コンクリート基礎
6 柱体部
8 床盤部
12 捨てコンクリート
16 加振器
18 フォースセンサー
20 信号処理装置
24 加速度センサー
44 第1柱体部
46 第2柱体部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角錐台又は円錐台の柱体部と矩形又は円形の断面を有する床盤部とを連結して形成された埋設コンクリート基礎の形状測定方法において、
前記埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振して捩れ振動の加速度を検出し、該加速度検出値の複数の共振振動数を抽出し、該抽出した複数の共振振動数と、前記捩れ振動の共振振動数と前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した共振条件式に基づいて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項2】
請求項1において、前記埋設コンクリート基礎の前記柱体部の頂部の幅又は直径を実測し、前記共振条件式にあてはめて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記埋設コンクリート基礎の前記柱体部の高さを実測し、前記共振条件式にあてはめて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記埋設コンクリート基礎の前記柱体部の頂部の幅又は直径と側面の傾斜角度と高さとを実測し、該実測値に基づいて前記柱体部の底部の幅又は直径を推定し、前記共振条件式にあてはめて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、前記埋設コンクリート基礎の前記捩れ振動の伝播速度を実測し、前記共振条件式にあてはめて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項6】
角錐台又は円錐台の柱体部と矩形又は円形の断面を有する床盤部とを連結して形成された埋設コンクリート基礎の形状測定方法において、
前記埋設コンクリート基礎の軸周りの捩れ振動の共振振動数と前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した捩れ振動の共振条件式に基づいて、前記埋設コンクリート基礎の埋設部の未知寸法の特定の組み合わせにおける設定次の伝播定数を基準とするその他の埋設部の未知寸法の組み合わせにおける伝播定数の比を求め、寸法の組み合わせと前記伝播定数の比との対応関係を記載したテーブルを予めデータベースに格納しておき、前記埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振して捩れ振動の加速度を検出し、該加速度検出値の複数の共振振動数を抽出し、該抽出した複数の共振振動数のうち前記設定次の共振振動数を基準とするその他の共振振動数の比を求め、該比と前記伝播定数の比との誤差が最小になる寸法の組み合わせを前記データベースより検索して、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項7】
請求項6において、前記埋設コンクリート基礎の前記柱体部の頂部の幅又は直径と高さとを実測して前記共振条件式にあてはめて、該共振条件式に基づいて前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法の組み合わせと前記伝播定数との比を求め、前記テーブルを作成して前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項8】
請求項6において、前記埋設コンクリート基礎の前記柱体部の頂部の幅又は直径と高さと側面の傾斜角度とを実測し、該実測値に基づいて前記柱体部の底部の幅又は直径を推定して前記共振条件式にあてはめ、該共振条件式に基づいて前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法の組み合わせと前記伝播定数との比を求め、前記テーブルを作成して前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項9】
請求項6において、前記柱体部の回転軸が前記柱体部の途中を中心に中心軸から傾いているときに、前記柱体部は第1柱体部と第2柱体部の2つの柱体を接続して構成されているとみなし、第1柱体部の頂部の幅又は直径と第2柱体部の底部の幅又は直径と前記柱体部全体の高さとを実測して前記共振条件式にあてはめ、該共振条件式に基づいて前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法の組み合わせと前記伝播定数との比を求め、前記テーブルを作成して前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項10】
埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振する加振手段と、前記捩れ振動の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の出力信号から前記埋設コンクリート基礎の捩れの共振振動数を含む振動数スペクトルを分析する振動数分析手段と、前記共振振動数と前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した共振条件式を有し、前記振動数分析手段により分析された複数の共振振動数と前記共振条件式とに基づいて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を演算により求める演算手段とを備えてなる埋設コンクリート基礎の形状測定装置。
【請求項11】
捩れの共振振動数と埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した共振条件式に基づいて、前記埋設コンクリート基礎の埋設部の未知寸法の特定の組み合わせにおける設定次の伝播定数を基準とするその他の伝播定数の比を求め、寸法の組み合わせと前記伝播定数の比との対応関係を記載したテーブルを記憶する記憶手段と、前記埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振する加振手段と、前記捩れ振動の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の出力信号から前記埋設コンクリート基礎の捩れの共振振動数を含む振動数スペクトルを分析する振動数分析手段と、該振動数分析手段により分析された複数の共振振動数のうちの前記設定次の共振振動数を基準とするその他の共振振動数の比と前記伝播定数の比との誤差を演算する演算手段と、該演算手段の演算結果に基づいて前記記憶手段を検索する検索手段とを備えてなる埋設コンクリート基礎の形状測定装置。
【請求項1】
角錐台又は円錐台の柱体部と矩形又は円形の断面を有する床盤部とを連結して形成された埋設コンクリート基礎の形状測定方法において、
前記埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振して捩れ振動の加速度を検出し、該加速度検出値の複数の共振振動数を抽出し、該抽出した複数の共振振動数と、前記捩れ振動の共振振動数と前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した共振条件式に基づいて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項2】
請求項1において、前記埋設コンクリート基礎の前記柱体部の頂部の幅又は直径を実測し、前記共振条件式にあてはめて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記埋設コンクリート基礎の前記柱体部の高さを実測し、前記共振条件式にあてはめて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記埋設コンクリート基礎の前記柱体部の頂部の幅又は直径と側面の傾斜角度と高さとを実測し、該実測値に基づいて前記柱体部の底部の幅又は直径を推定し、前記共振条件式にあてはめて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、前記埋設コンクリート基礎の前記捩れ振動の伝播速度を実測し、前記共振条件式にあてはめて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項6】
角錐台又は円錐台の柱体部と矩形又は円形の断面を有する床盤部とを連結して形成された埋設コンクリート基礎の形状測定方法において、
前記埋設コンクリート基礎の軸周りの捩れ振動の共振振動数と前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した捩れ振動の共振条件式に基づいて、前記埋設コンクリート基礎の埋設部の未知寸法の特定の組み合わせにおける設定次の伝播定数を基準とするその他の埋設部の未知寸法の組み合わせにおける伝播定数の比を求め、寸法の組み合わせと前記伝播定数の比との対応関係を記載したテーブルを予めデータベースに格納しておき、前記埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振して捩れ振動の加速度を検出し、該加速度検出値の複数の共振振動数を抽出し、該抽出した複数の共振振動数のうち前記設定次の共振振動数を基準とするその他の共振振動数の比を求め、該比と前記伝播定数の比との誤差が最小になる寸法の組み合わせを前記データベースより検索して、前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項7】
請求項6において、前記埋設コンクリート基礎の前記柱体部の頂部の幅又は直径と高さとを実測して前記共振条件式にあてはめて、該共振条件式に基づいて前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法の組み合わせと前記伝播定数との比を求め、前記テーブルを作成して前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項8】
請求項6において、前記埋設コンクリート基礎の前記柱体部の頂部の幅又は直径と高さと側面の傾斜角度とを実測し、該実測値に基づいて前記柱体部の底部の幅又は直径を推定して前記共振条件式にあてはめ、該共振条件式に基づいて前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法の組み合わせと前記伝播定数との比を求め、前記テーブルを作成して前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項9】
請求項6において、前記柱体部の回転軸が前記柱体部の途中を中心に中心軸から傾いているときに、前記柱体部は第1柱体部と第2柱体部の2つの柱体を接続して構成されているとみなし、第1柱体部の頂部の幅又は直径と第2柱体部の底部の幅又は直径と前記柱体部全体の高さとを実測して前記共振条件式にあてはめ、該共振条件式に基づいて前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法の組み合わせと前記伝播定数との比を求め、前記テーブルを作成して前記埋設コンクリート基礎の寸法を求めることを特徴とする埋設コンクリート基礎の形状測定方法。
【請求項10】
埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振する加振手段と、前記捩れ振動の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の出力信号から前記埋設コンクリート基礎の捩れの共振振動数を含む振動数スペクトルを分析する振動数分析手段と、前記共振振動数と前記埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した共振条件式を有し、前記振動数分析手段により分析された複数の共振振動数と前記共振条件式とに基づいて、前記埋設コンクリート基礎の寸法を演算により求める演算手段とを備えてなる埋設コンクリート基礎の形状測定装置。
【請求項11】
捩れの共振振動数と埋設コンクリート基礎の各部の寸法との関係を表した共振条件式に基づいて、前記埋設コンクリート基礎の埋設部の未知寸法の特定の組み合わせにおける設定次の伝播定数を基準とするその他の伝播定数の比を求め、寸法の組み合わせと前記伝播定数の比との対応関係を記載したテーブルを記憶する記憶手段と、前記埋設コンクリート基礎の軸周りに捩れ振動が起きるように加振する加振手段と、前記捩れ振動の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の出力信号から前記埋設コンクリート基礎の捩れの共振振動数を含む振動数スペクトルを分析する振動数分析手段と、該振動数分析手段により分析された複数の共振振動数のうちの前記設定次の共振振動数を基準とするその他の共振振動数の比と前記伝播定数の比との誤差を演算する演算手段と、該演算手段の演算結果に基づいて前記記憶手段を検索する検索手段とを備えてなる埋設コンクリート基礎の形状測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−30994(P2009−30994A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192241(P2007−192241)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000222015)株式会社ユアテック (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000222015)株式会社ユアテック (26)
【Fターム(参考)】
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