説明

埋設管推進装置

【課題】 小型の装置において一回のシリンダ操作によって所望ストロークの推進を実現できる埋設管推進装置を提供する。
【解決手段】 基台1に設けられた基台レール11,12と、この基台レールに沿って進退可能に搭載されたスライド部2と、このスライド部に設けられた推進レール71,72と、このレールに沿って進退可能に設けられた推進部3と、上記基台およびスライド部の間に介在されてなる第一のアクチュエータ24,25と、上記スライド部および推進部の間に介在されてなる第二のアクチュエータ31,32とを備える。基台レールと推進レールは平行に配置される。第二のアクチュエータは、その本体部が上記推進部に貫通されつつ保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め掘削して設けられた発進立坑から到達立坑までの間に、塩化ビニルパイプなどの埋設管を埋設する工事に使用する装置であって、小口径の先導管またはオーガスクリュを回転させながら推進させるとともに、埋設管を推進する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水管等を地中に埋設する工事においては、埋設すべき位置を掘削した後、所定の勾配で下水管を配置し、掘削部分を埋め戻すことが知られている。しかしながら、交通量の多い道路にあっては、工事が長期化すると往来を妨げることとなり、近隣住民や通行者に迷惑を掛けることとなるものであった。そこで、最近では、下水管等を埋設すべき場所を測量した後、その埋設位置の始点と終点に予め立坑を設け、始点の立坑(これを発進立坑という)から終点の立坑(これを到達立坑という)に向かって地中を推進させる工事方法が採用されている。
【0003】
本発明は、上記のような工事方法において使用する推進装置に係るものであるが、従来の推進装置は、基台に対して進退可能に設けられた押込台によって推進させるものであって、上記押込台の両側に配置した油圧シリンダによって進退が操作される構成であった(特許文献1、2および3参照)。
【特許文献1】実開平7−4592号公報
【特許文献2】実開平6−49595号公報
【特許文献3】特開平10−46984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は、いずれも同時に伸縮する2個の同種の油圧シリンダが設けられており、推進すべき埋設管が装着される位置を中心として対称に配置されていた。しかし、上記推進装置は発進立坑内に設置され限られた空間で作業するため、油圧シリンダを大型にすることができず、その結果、伸縮可能なストローク長を短くした比較的小型の油圧シリンダによって、複数回の伸縮を繰り返すことによって、所定長さの推進をさせるものであった。
【0005】
そのために、油圧シリンダは押込台に搭載されるとともに、シリンダのピストン部先端には、基台のレールに係止およびその解除を可能にするクランプを設けてなる構成としており、ピストン部先端をクランプによって基台レールに係止した上でシリンダを伸張させて第一段階の推進を行い、ピストン部先端の係止を解除してシリンダを収縮させることによりクランプを押込台まで移動させ、引き続きクランプによってピストン部先端を基台レールに再度係止し、シリンダを伸張させて第二段階の推進を行うようにして、第二段階または第三段階の推進によって所望のストローク長の推進を行っていた。
【0006】
しかしながら、上記のような複数回に分けて推進させる装置にあっては、各回の推進が終了するごとに、ピストン部先端のクランプによる係止を解除し、ピストン先端を移動した押込台付近まで移動させることとなるため、確実な推進を実現できる反面、所望ストロークに到達するまでに時間を要することとなっていた。そのため、一回のシリンダ操作によって所望ストロークの推進を実現できる推進装置が切望されていた。他方、一回のシリンダ操作により所望ストロークの推進を実現するためには、大型の油圧シリンダを使用することが案出されるところ、上述のとおり限定された発進立坑内で操作される推進装置に大型の油圧シリンダを使用することは実質的に不可能な状況であった。
【0007】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、小型の装置において一回のシリンダ操作によって所望ストロークの推進を実現できる埋設管推進装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、基台に設けられた基台レールと、この基台レールに沿って進退可能に搭載されたスライド部と、このスライド部に設けられた推進レールと、このレールに沿って進退可能に設けられた推進部と、上記基台およびスライド部の間に介在されてなる第一のアクチュエータと、上記スライド部および推進部の間に介在されてなる第二のアクチュエータとを備え、上記基台レールと推進レールは平行に配置され、上記第二のアクチュエータは、その本体部が上記推進部に貫通されつつ保持されてなる第二のアクチュエータであることを特徴とする埋設管推進装置を要旨とする。
【0009】
このような構成であるから、第一のアクチュエータを操作することにより、基台レールに沿ってスライド部を進退させることができ、第二のアクチュエータを操作することにより、推進レールに沿って推進部を進退させることができることとなる。従って、推進部を前進させるときは、基台を基準として第一および第二の両アクチュエータの作動する範囲内で移動が可能となり、後退させるときは、両アクチュエータを操作することで当初の状態に復元し得るものである。
【0010】
上記発明においては、基台レールについて、前記推進部が進退すべき領域の両側において基準面を上向きにしてなる平行な2本で構成することができ、前記スライド部について、上記基台レールの基準面に個別に摺接される2個の摺接部と、この両摺接部の中間に配置されて両摺接部を連続させるスライド本体とで構成することができ、さらに、前記第一のアクチュエータについて、上記基台レールの基準面の上方において上記スライド部の摺接部に横設する構成とすることができる。このような構成にすることにより、スライド部の摺接部に対して第一のアクチュエータが進退方向に駆動力を付与する際、スライド部が2本の平行な基台レールによって進退方向を規制されることとなる。
【0011】
また、上記発明においては、前記スライド本体について、前記摺接部の後端付近に連続して設けられるとともに、さらに後方に張り出して構成することができ、前記推進レールについて、上記摺接部が相互に対向する位置に形成してなる構成とすることができる。このような構成によって、第一および第二のアクチュエータを収縮させた状態において、推進部を基台の後部付近に配置させることができる。また、基台レールに近接して推進レールを設けることができることから、推進部を進退させるとき、スライド部に作用する反力を基台レールに分散させることができることとなる。
【0012】
さらに、上記発明においては、前記基台について、2本で構成される前記基台レールの内側かつ下方において、該基台レールに平行な底部レールを有する構成とすることができ、前記スライド部について、前記摺接部が前記基台レールの基準面に摺接するとき、前記スライド本体の下端縁が上記底部レールに当接するように構成することができる。このような構成とすることで、スライド部は、摺接部が基台レールによって規制され、スライド本体が底部レールによって規制されることとなり、スライド部の姿勢を安定させることができる。
【0013】
また、本発明は、基台上を進退する推進部が、埋設管の端部を支持するとともに、先導管またはオーガスクリュを回転可能に支持してなる埋設管推進装置において、上記推進部が進退すべき領域の両側に分離して上記基台に設けられた2本の基台レールと、この基台レールに沿って進退可能に搭載されたスライド部と、このスライド部および上記基台の中間に介在されてなる第一のアクチュエータと、上記スライド部を起点として上記推進部を進退させるとき、この推進部の進退方向を規制するために該スライド部に設けられた推進レールと、上記基台の底部において上記基台レールの内側に設けられた少なくとも1本の底部レールと、上記スライド部および上記推進部の中間に介在されてなる第二のアクチュエータとを備え、上記スライド部は、その下部が上記底部レールに摺接するように配置されてなり、第一のアクチュエータの本体部を保持するとともに、第二のアクチュエータの作動部が連結されてなるスライド部であることを特徴とする埋設管推進装置をも要旨とするものである。
【0014】
このような構成であるから、スライド部は、推進部が進退すべき領域の両側および下部において基台レールに規制され、基台と密接に関連する位置関係を維持することができるので、推進部が推進する際の基準となり得るものである。そして、スライド部が第一のアクチュエータの本体部を保持することから、その作動部を基台に固定的に連結することにより、当該アクチュエータの作動によってスライド部の進退が自在となるものである。さらに、第二のアクチュエータの作動部がスライド部に固定的に連結されることによって、第二のアクチュエータを操作するときにはスライド部が基準となって推進部を進退させることができる。
【0015】
上記発明においては、前記第二のアクチュエータについて、推進部の前方表面のうち、2本のアクチュエータが前記埋設管または先導管若しくはオーガスクリュを支持すべき位置を中心に対称に配置され、その本体部が推進部に貫通するように設けられた構成とすることができる。このような構成により、まず、第二のアクチュエータによって推進部を前進させるとき、埋設管等に付与すべき駆動力を均等に負担することができる。従って、推進時の基準として機能するスライド部に対する反力も均等に作用することとなる。また、当該アクチュエータの本体部が推進部に貫通する状態であるから、当該アクチュエータを収縮させた状態において、推進部をスライド部に接近させることができる。しかも、推進部の進退方向の厚さ寸法分だけアクチュエータの長さ寸法を重ねて設計できることから、第二のアクチュエータを使用することによるデッドスペースを縮小できる。
【0016】
また、上記発明においては、前記基台レールについて、前記推進部が進退すべき領域の両側において基準面を上向きにして配置された平行な2本で構成することができ、前記スライド部について、上記基台レールの基準面に個別に摺接される2個の摺接部と、この両摺接部の中間に配置されて両摺接部を連続させるとともに下端が前記底部レール上に摺接されるスライド本体とで構成することができ、さらに、前記第一のアクチュエータについて、上記基台レールの基準面の上方において上記スライド部の摺接部に横設する構成とすることができる。このような構成により、スライド部は、摺接部が基台レールに沿って、スライド本体が底部レールに沿って、それぞれ忠実に進退することができる。
【0017】
さらに、上記発明においては、前記スライド本体について、前記摺接部の後端付近に連続して設けられるとともに、さらに後方に張り出して構成することができ、前記推進レールについて、上記摺接部が相互に対向する位置に形成された構成とすることができる。このような構成によって、第一のアクチュエータを収縮された状態において推進部を基台の後部付近に後退させることができる。また、スライド部の摺接部に推進レールを構成するから、推進時における推進部に作用する反力を基台レールを介して基台に分散させることができる。
【0018】
なお、前記第一のアクチュエータは、その軸心が前記埋設管または先導管若しくはオーガスクリュを支持すべき位置と同じ高さとなるように配置し、前記推進レールは、その中心線が上記第一のアクチュエータの軸心と同じ高さとなるように形成することにより、第一のアクチュエータのみを作動させて推進力を付与する際、埋設管等に作用すべき駆動力を両側2本のアクチュエータが均等に負担することとなる。また、推進させる際に生じる反力は、直接的にはスライド部に作用するが、このスライド部を支えるための力は第一のアクチュエータが推進レールに平行な方向に作用することによって効率的に付与されることとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第一のアクチュエータと第二のアクチュエータを同時または順次に操作することにより、スライド部が基台レールに沿って前進し、さらに、推進部がスライド部の推進レールに沿って前進して、埋設管またはオーガスクリュなどを支持する推進部を所定の位置まで前進させることが可能となる。これにより、所望ストロークの推進を実現するのである。そして、これらのアクチュエータはそれぞれ一回の操作によって可能となるものである。
【0020】
また、本発明によれば、埋設管等の推進後において、推進部を後退させる場合にも一回の操作によって実現可能になっている。すなわち、上記第一および第二のアクチュエータを収縮させることによって、推進部はスライド部の推進レールに沿って所定の位置まで後退し、スライド部は基台レールに沿って所定の位置まで後退するから、上記二種類の後退が総合された結果、当初の状態に戻すことができるのである。
【0021】
さらに、基台の底部に底部レールを構成してなる発明においては、基台と推進部の中間に位置する最も不安定なスライド部の姿勢を安定させることができるのである。つまり、基台は発進立坑内に据え付けられるため、その位置は安定することとなり、推進部は、支持する埋設管またはオーガスクリュなどが地中に圧入されることによって姿勢が規制される。スライド部は、基台と推進部の中間に位置し、両者から受ける推進力と反力によって不安定となり得るが、基台レールおよび推進レールから離れた位置において底部レールが規制することにより、スライド部の姿勢を安定させるのである。
【0022】
なお、第二のアクチュエータを埋設管等が支持される位置を中心に対称となるように設けることにより、推進部が埋設管等を推進する際の推進力が、第二のアクチュエータによって均等に付与されることとなる。また、スライド本体を第一のアクチュエータが設けられる摺接部の後端付近に連続して構成することにより、基台の後端付近までスライド部を後退させることができ、その結果、全体として、基台の後端付近を基点として推進部を前進させることができ、推進部の移動距離を長くすることとなる。これにより、小型の推進装置でありながら所望ストロークの推進を実現し得るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の埋設管推進装置は、図1に示すように、基台1、スライド部2および推進部3で構成されており、先導管4、オーガスクリュ5または埋設管6が同時または個別に支持される推進部3を進退させることにより、最終的に埋設管6を地中に埋設するものである。
【0024】
基台1には、推進部3の進退する領域の両側において平行な基台レール11,12が設けられており、このレール11,12に沿ってスライド部2が進退するようになっている。スライド部2は、上記基台レール11,12に摺接できる二つの摺接部21,22が設けられ、この摺接部21,22はスライド本体23によって連続する一体的な構造となっている。
【0025】
ここで、図2に示すように、スライド部2の上記摺接部21,22には、第一のアクチュエータである油圧シリンダ24,25が搭載されており、この油圧シリンダ24,25のピストン部先端26,27は、基台1の後端付近に設けられた連結部13,14に固定的に連結されている。従って、この油圧シリンダ24,25を伸縮させるとき、ピストン部先端26,27を起点として、油圧シリンダ24,25の本体部分が進退することとなる。そして、この進退により、摺接部21,22が連結部13,14との距離を変化させることにより、基台1の基台レール11,12に沿って前進および後退することとなる。
【0026】
また、上述のとおり、摺接部21,22はスライド本体23とともにスライド部2を構成しており、さらに、スライド本体23は、第二のアクチュエータである油圧シリンダ31,32を介在させつつ推進部3を支持している。この油圧シリンダ31,32は、その本体部が推進部3を貫通するように設けられており、ピストン部先端は、スライド本体23に連結されている。従って、第二の油圧シリンダ31,32を伸縮させるとき、スライド本体23を起点として、油圧シリンダ31,32の本体を含む推進部3が前進または後退できるようになっている。
【0027】
スライド部2は、図3に示すように、摺接部21,22の後方にスライド本体23が構成されている(図3(a)参照)。そして、スライド本体23を中心として両側に摺接部21,22が配置された構成となっている(図3(b)参照)。摺接部21,22の上部は油圧シリンダ24,25の本体部を搭載できる容器状に構成され、下部は、基台レール11,12(図1)の上面(基準面)に摺接できる摺接面28,29を含む略C字形に構成されている。また、両摺接部21,22が対向する位置には、推進レール71,72が設けられている。この推進レール71,72は、摺接部21,22を構成する壁面(スライド本体23と共通の壁面)の一部が直線状に切り欠かれ、または、直線状の間隙によって構成されている。この推進レール71,72に後述の推進部3の摺接部33,34を係入することにより、推進部3を支持しつつ進退方向の移動を規制するようになっている。そのため、上記推進レール71,72は、上述した基台レール11,12と平行に設けられ、スライド部が基台レール11,12に沿って移動する方向と、推進部3が推進レール71,72に沿って移動する方向とを一致させているのである。また、推進レール71,72は、推進部3の進退に必要となる程度の十分な長さを有して構成されている(図3(a)参照)。
【0028】
また、このスライド部2を構成するスライド本体23の下端両側には、基台1の底部レール15,16(図2)に当接する当接部81,82が設けられている。この当接部81,82は、摺接部21,22とスライド本体23とで共通する壁面83,84の底部85の下面に設けられており、この底部85よりも下方に突出している。また、スライド部2が進退する方向に適宜な長さで構成され、基台1の底部レール15,16に対して十分な範囲で当接できるようになっている。従って、基台1に搭載されたスライド部2の全体は、摺接部21,22が基台レール11,12によって支持されるとともに、当接部81,82が底部レール15,16によっても支持されることとなり、当該スライド部2および推進部3の重量を支えることができるとともに、スライド部2の姿勢を安定させるようになっている。
【0029】
推進部3は、図4に示すように、略直方体形状の箱体で構成された両側に突出する摺接部33,34が構成されている。この摺接部33,34は、推進部3が進退する方向(推進部3の幅方向)に沿って長尺に設けられており(図4(b)参照)、前記スライド部2の推進レール71,72に係入されて、進退方向が規制されるものである。また、この摺接部33,34の上下には、推進部3から僅かに突出するスペーサ35a,35b,36a,35bが設けられており、推進部3の本体がスライド部2との間に所定の間隙を有することできるようになっており、推進部3の水平面内における傾きを規制するとともに、両者の接触を防止するものである。
【0030】
なお、この推進部3には油圧モータ91が設けられ、さらに減速ギア(図4(b)の一点鎖線)が組み込まれており、先導管4およびオーガスクリュ5の接続部92に回転力を付与するものである。また、図4(a)に示したように、第二の油圧シリンダ31,32は、推進部3を貫通させるように設け、その軸心は、支持部92を中心に対称な位置に設けてられている。このように、第二の油圧シリンダ31,32を水平方向に一列に並べないことにより、推進時に土圧抵抗が集中する接続部92に対して、その接続部92の両側から均等に推進力を作用させることができるとともに、接続部92の周辺に所定の空間を確保できることとなり、先導管4、オーガスクリュ5または埋設管7を支持部92の装着を可能にし、かつ、その着脱作業を容易にするものである。これに比較して、第一の油圧シリンダ24,25は、その軸線が支持部92と同じ高さで水平方向に並んで配置されている。これは、第一の油圧シリンダ24,25を設ける位置には先導管4などを着脱する必要がないためであり、支持部92と同じ高さにすることで、第二の油圧シリンダ24,25により推進させる際の土圧抵抗を均等に負担するためである。
【0031】
次に、本実施形態の作動態様について説明する。図5は、スライド部2および推進部3の進退の概略を示す図である。本実施形態の推進装置は、事前に発進立坑(図2の一点鎖線による円)内に設置される。そして、図5(a)に示すように、スライド部2および推進部3は装置の後方(図中右側)移動させておき、推進部3の全面に設けられる支持部92に先導管4、オーガスクリュ5または埋設管6などが設置される。このとき、第一の油圧シリンダ24,25および第二の油圧シリンダ31,32は、いずれも収縮した状態となっている(図5(a))。
【0032】
工程に応じて選択される先導管4などを装着したうえで、必要であれば油圧モータ91を作動させつつ、第一の油圧シリンダ24,25を伸張させると、スライド部2が基台1の基台レール11,12に沿って前進することとなる。このスライド部2の前進により、このスライド部3とともに推進部3も前進することとなり、装着した上記先導管4などの先端から地中に推進されることとなる(図5(b))。そして、上記第一の油圧シリンダ24,25が最も長くなる状態まで伸張すると、この油圧シリンダ24,25による前進が停止する。
【0033】
引き続き、第二の油圧シリンダ31,32を伸張させることにより、推進部3のみが、スライド部3を基準としてさらに前進することとなる(図5(c))。このとき、推進部3の移動する方向は、推進レール71,72によって規制されているが、この推進レール71,72は、基台レール11,12と平行であるため、スライド部2が前進する際に移動する方向と同一であり、スライド部2による推進を延長する状態で推進部3が前進することとなる。
【0034】
第二の油圧シリンダ31,32が最も長くなる状態まで移動することにより、当該第二の油圧シリンダ31,32による推進部3の移動が停止し、推進工程が終了することとなる。このとき、推進部3が移動する全体の距離は、所望のストロークに一致させている。すなわち、第一の油圧シリンダ24,25によりスライド部2を全ストローク中の約3分の2に相当する距離を移動させ、これにより基台1に相対的に推進部3を同じ距離だけ推進させる。さらに、残りの約3分の1に相当する距離を第二の油圧シリンダ31,32によって推進部3のみを移動させるのである。
【0035】
次に、推進部3の支持部92から先導管4などを切り離し、推進部3を後退させる。このとき、第二の油圧シリンダ31,32を収縮させて推進部3をスライド部2まで後退させ、さらに、第一の油圧シリンダ24,25を収縮させてスライド部2とともに推進部3を基台1の後端付近まで後退させるのである。
【0036】
その後、次に推進させるべきオーガスクリュ5などを支持させて上記推進および後退を繰り返し、到達立坑まで順次推進させるのである。なお、通常の埋設管推進工法においては、先導管4を発進立坑から到達立坑まで盲進させる第一工程と、この先導管4の後端にオーガスクリュ5を連続させるとともにオーガスクリュ5を埋設管6で包囲させ、オーガスクリュ5および埋設管6を同時に推進させる第二工程とによるものである。先導管4は、先端を斜状にしてなる方向修正用先端部を備え、通常推進では回転しつつ推進され、方向修正時には回転させずに推進するものである。先導管に後続する継ぎ足し管は円筒の鋼管を使用し、発進立坑から到達立坑までの長区間を一本の細管で連続させるのである。この先導管4が到達立坑に到達した後は、連続する細管に誘導されてオーガスクリュ5が掘削しつつ推進し、発進立坑では余分な先導管4などの細管が回収される。さらに、オーガスクリュ5および埋設管6が到達立坑まで到達した後は、オーガスクリュ5のみが引き抜かれて回収され、地中に残存された埋設管6によって配管が完了するのである。上記オーガスクリュ5の引抜き作業も、本実施形態の推進装置が使用される。その使用方法は、上記推進時の逆の工程で行われる。
【0037】
本実施形態では、上記のように、第一の油圧シリンダ24,25および第二の油圧シリンダ31,32を二段階で進退する方法を採用している。このような方法により進退させる理由は、一回のシリンダ操作によって所望のストロークを可能にするためである。すなわち、第一の油圧シリンダ24,25および第二の油圧シリンダ31,32の双方を収縮させた状態において、推進部3を基台1の後部付近に配置させることができること、および、第一の油圧シリンダ24,25により移動させた後(または同時)に、推進部3をスライド部2の先方、すなわち基台1の先端付近まで移動できることによるものである。これは、例えば、単一の油圧シリンダ24,25のみで全ストロークを移動させる場合には、当該油圧シリンダ24,25が伸張できる範囲内に限り推進部3を移動させることが可能となるが、油圧シリンダ24,25と推進部3の位置関係のみで推進部3の移動範囲が決定することとなり、基台1の後端付近から先端付近までの範囲を移動させることができないのである。換言すると、単一の油圧シリンダ24,25のストロークを所望の長さにするとすれば、基台1をそれだけ大型に設ける必要があり、これに伴って発進立坑を大きく設けることが必要となるものである。
【0038】
本実施形態の構成および作動態様は上記のとおりであるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様をとることができる。例えば、上記実施形態において、第一の油圧シリンダ24,25と、第二の油圧シリンダ31,32とを、いずれかを先に伸縮させ、他方を後に伸縮させるような作動態様について説明したが、これらを同時に作動させるものであってもよい。すなわち、両油圧シリンダ24,25、31,32は、単一の加圧装置から定量のオイルを流入することにより、同時に均等な油圧が作用するが、いずれか一方が作動しても同時に作動しても推進部3を移動させる速度に差異はなく、また、土圧などの抵抗が作用することによって、作用する抵抗力が異なる場合は、より抵抗力の小さなものが先に前進することとなるだけである。これは、特に第一の油圧シリンダ24,25と第二の油圧シリンダ31,32との切換操作を不要とする点で好適である。
【0039】
また、上記実施形態では、油圧シリンダを使用したが、他のアクチュエータを使用することも可能である。そして、本実施形態では、両油圧シリンダ24,25、31,32は、いずれも二段式シリンダを使用している(図5(c)参照)。これは、油圧シリンダ24,25、31,32の本体の長さ寸法が比較的短尺でありながら、長いストロークの伸縮が可能となるからである。例えば、全長500mmの油圧シリンダにより650mmのストロークを得ることができ、また、350mmの油圧シリンダにより350mmのストロークを得ることができる。そして、上記二種類の油圧シリンダを組み合わせることによって、1000mmのストロークを得ることができる。
【0040】
さらに、スライド本体23の下部に設けられた当接部81,82は、スライド部2の姿勢を安定するために設けられたものであるから、摺接部21,22が基台レール11,12の基準面に摺接される状態においてスライド部2の姿勢が安定する場合は、下部の当接部81,82を設けるには及ばない。この場合、当然のことではあるが、基台1の底部レール15,16も不要となる。
【0041】
また、上記実施形態においては、推進部3が基台1の中央を進退する構成としたことから、基台レール11,12、推進レール71,72、第一の油圧シリンダ24,25および第二の油圧シリンダ31,32は、推進部3の両側に配置するように構成したが、推進部3に無駄なく推進力を伝達でき、また、進退方向を規制できる構成であれば、単一のレールまたは油圧シリンダで構成してもよい。
【0042】
さらに、本実施形態では、推進レール71,72の位置関係について、詳細を説明していないが、スライド部2に推進部3を搭載した状態において、推進レール71,72が推進部3の支持部92と同じ高さであることが好適である。本実施形態においても、図4(a)において図示されているように、推進部3に設けられる摺接部33,34が、支持部92と同じ高さに配置され、その結果として、この摺接部33,34を規制すべき推進レール71,72も同様に支持部92と同じ高さとなる構成としている。このように、推進レール71,72を支持部92と同じ高さとすることにより、推進部3が土圧抵抗に抗して推進する際、支持部92に作用する抵抗力が推進レール71,72に対して有角的に作用することを回避でき、当該レール71,72および摺接部33,34に無用の負荷を作用させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の平面図である。
【図3】(a)はスライド部の側面図であり、(b)はIIIB−IIIB断面図である。
【図4】(a)は推進部の正面図であり、(b)は側面図である。
【図5】本発明の実施形態の作動態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 基台
2 スライド部
3 推進部
4 先導管
5 オーガスクリュ
6 埋設管
11,12 基台レール
13,14 連結部
15,16 底部レール
21,22 摺接部
23 スライド本体
24,25 第一の油圧シリンダ
26,27 シリンダピストン
28,29 摺接面
31,32 第二の油圧シリンダ
33,34 摺接部
35a,35b,36a,36b スペーサ
71,72 推進レール
81,82 当接部
83,84 壁面
85 スライド本体底部
91 油圧モータ
92 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に設けられた基台レールと、この基台レールに沿って進退可能に搭載されたスライド部と、このスライド部に設けられた推進レールと、このレールに沿って進退可能に設けられた推進部と、上記基台およびスライド部の間に介在されてなる第一のアクチュエータと、上記スライド部および推進部の間に介在されてなる第二のアクチュエータとを備え、上記基台レールと推進レールは平行に配置され、上記第二のアクチュエータは、その本体部が上記推進部に貫通されつつ保持されてなる第二のアクチュエータであることを特徴とする埋設管推進装置。
【請求項2】
前記基台レールは、前記推進部が進退すべき領域の両側において基準面を上向きにしてなる平行な2本で構成された基台レールであり、前記スライド部は、上記2本の基台レールの基準面に個別に摺接される2個の摺接部と、この両摺接部の中間に配置されて両摺接部を連続させるスライド本体とで構成されたスライド部であり、前記第一のアクチュエータは、上記基台レールの基準面の上方において上記スライド部の摺接部に横設された第一のアクチュエータである請求項1記載の埋設管推進装置。
【請求項3】
前記スライド本体は、前記摺接部の後端付近に連続して設けられるとともに、さらに後方に張り出して構成されたスライド本体であり、前記推進レールは、上記摺接部が相互に対向する位置に形成されてなる2本の推進レールである請求項2記載の埋設管推進装置。
【請求項4】
前記基台は、2本で構成される前記基台レールの内側かつ下方において該基台レールに平行な底部レールを有する基台であり、前記スライド部は、前記摺接部が前記基台レールの基準面に摺接するとき、前記スライド本体の下端縁が上記底部レールに当接してなるスライド部である請求項3記載の埋設管推進装置。
【請求項5】
基台上を進退する推進部が、埋設管の端部を支持するとともに、先導管またはオーガスクリュを回転可能に支持してなる埋設管推進装置において、上記推進部が進退すべき領域の両側に分離して上記基台に設けられた2本の基台レールと、この基台レールに沿って進退可能に搭載されたスライド部と、このスライド部および上記基台の中間に介在されてなる第一のアクチュエータと、上記スライド部を起点として上記推進部を進退させるとき、この推進部の進退方向を規制するために該スライド部に設けられた推進レールと、上記基台の底部において上記基台レールの内側に設けられた少なくとも1本の底部レールと、上記スライド部および上記推進部の中間に介在されてなる第二のアクチュエータとを備え、上記スライド部は、その下部が上記底部レールに摺接するように配置されてなり、第一のアクチュエータの本体部を保持するとともに、第二のアクチュエータの作動部が連結されてなるスライド部であることを特徴とする埋設管推進装置。
【請求項6】
前記第二のアクチュエータは、推進部の前方表面のうち、2本のアクチュエータが前記埋設管または先導管若しくはオーガスクリュを支持すべき位置を中心に対称に配置され、その本体部が推進部に貫通するように設けられた第二のアクチュエータである請求項5記載の埋設管推進装置。
【請求項7】
前記基台レールは、前記推進部が進退すべき領域の両側において基準面を上向きにして配置された基台レールであり、前記スライド部は、上記基台レールの基準面に個別に摺接される2個の摺接部と、この両摺接部の中間に配置されて両摺接部を連続させるとともに下端が前記底部レール上に摺接されるスライド本体とで構成されたスライド部であり、前記第一のアクチュエータは、上記基台レールの基準面の上方において上記スライド部の摺接部に横設された第一のアクチュエータである請求項5または6記載の埋設管推進装置。
【請求項8】
前記スライド本体は、前記摺接部の後端付近に連続して設けられるとともに、さらに後方に張り出して構成されたスライド本体であり、前記推進レールは、上記摺接部が相互に対向する位置に形成された2本の推進レールである請求項7記載の埋設管推進装置。
【請求項9】
前記第一のアクチュエータは、その軸心が前記埋設管または先導管若しくはオーガスクリュを支持すべき位置と同じ高さとなるように配置された第一のアクチュエータであり、前記推進レールは、その中心線が上記第一のアクチュエータの軸心と同じ高さとなるように形成された推進レールである請求項5ないし8のいずれかに記載の埋設管推進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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