説明

基台付スイッチ基板及びその製造方法

【課題】構造が簡単で製造が容易で精度の良い出力波形を得ることができ、強い強度を維持できる基台付スイッチ基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】スイッチパターン23,25の摺動子が摺接する摺接軌跡上に開口45を設けることでスイッチパターン端辺23a,23a,25a,25aを形成してなるフレキシブルスイッチ基板20と、フレキシブルスイッチ基板20の下面に接して設置され且つフレキシブルスイッチ基板20の開口45を設けた部分に対向する部分に開口部63を設けてなる補強板60と、補強板60とフレキシブルスイッチ基板20の周囲にこれらを保持するように成形され且つ開口部63を介して開口45に充填されてその表面をスイッチパターン23,25の面と一致させてなる成形樹脂製の基台90と、を具備して構成される基台付スイッチ基板10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面に設けたスイッチパターン上を摺動子が摺接することでそのオンオフ出力が変化する構造の基台付スイッチ基板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、摺動子を回転しながら摺接させることで所望のオンオフ波形を出力するロータリーエンコーダ用の基台付スイッチ基板がある。この種の基台付スイッチ基板は、例えば特許文献1の図1に示すように、合成樹脂フイルム製の絶縁基板上にスイッチパターンを設け、さらに絶縁基板の一端に金属端子を取り付けた状態で絶縁基板の裏面及びその外周側部に成形樹脂製の基台を取り付けて構成されている。しかしながら上記従来の基台付スイッチ基板には、以下のような問題点があった。
【0003】
(1)前記基台付スイッチ基板から正確な出力波形を得るためには、各スイッチパターンの外周を囲む端辺の内、特に各スイッチパターン上を摺接していく摺動子の摺動軌跡を横切る各スイッチパターンの端辺を、精度良く形成しておく必要がある。しかしながら上記従来の基台付スイッチ基板において、前記スイッチパターンを例えば導体ペーストをスクリーン印刷することによって形成した場合、必ずしも前記端辺の精度を良くすることはできなかった。
【0004】
(2)前記基台付スイッチ基板は、合成樹脂フイルム製の絶縁基板を成形樹脂製の基台のみで支持しているので、必ずしも基台付スイッチ基板全体の強度が十分強いとは言えず、特に前記基台の厚みを基台付スイッチ基板の薄型化の要望に対応して薄くした場合は問題となり、その強度の強化が求められていた。
【0005】
(3)前記基台付スイッチ基板のスイッチパターンに外部から入り込もうとする静電気の侵入を防止する場合は、別途静電気防止用のアース板を取り付ける等の静電気侵入防止機構を設置しなければならないが、そうすると構造が複雑化してしまい製造工程も煩雑となってしまう。
【特許文献1】特開平2−220314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、構造が簡単で製造が容易であり、同時に精度の良い出力波形を得ることができ、またその厚みを薄型化しても十分強い強度を維持することができ、さらに外部から入り込もうとする静電気の侵入を防止できる基台付スイッチ基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の発明は、フイルム状の絶縁基板の一方の面上に摺動子が摺接するスイッチパターンを形成し且つ前記スイッチパターンの摺動子が摺接する摺接軌跡上に貫通する開口を設けることでスイッチパターン端辺を形成してなるフレキシブルスイッチ基板と、前記フレキシブルスイッチ基板のスイッチパターンを設けた反対側の面に設置され、且つ前記フレキシブルスイッチ基板の開口を設けた部分に対向する部分に貫通する開口部を設けてなる補強板と、前記補強板とフレキシブルスイッチ基板の周囲にこれら補強板とフレキシブルスイッチ基板とを保持するように成形され且つ前記補強板の開口部を介してフレキシブルスイッチ基板の開口に充填されてその表面をフレキシブルスイッチ基板のスイッチパターンの面と一致させてなる成形樹脂製の基台と、を具備して構成されることを特徴とする基台付スイッチ基板にある。
【0008】
本願請求項2に記載の発明は、前記補強板は導電性を有する材料で構成され、これによってアース板として兼用されることを特徴とする請求項1に記載の基台付スイッチ基板にある。
【0009】
本願請求項3に記載の発明は、前記フレキシブルスイッチ基板の少なくとも前記スイッチパターン端辺は、前記補強板の開口部の内側に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の基台付スイッチ基板にある。
【0010】
本願請求項4に記載の発明は、前記フレキシブルスイッチ基板の開口は複数あり、前記補強板の開口部もフレキシブルスイッチ基板の各開口毎に設けられていることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の基台付スイッチ基板にある。
【0011】
本願請求項5に記載の発明は、予めフイルム状の絶縁基板の一方の面上に摺動子が摺接するスイッチパターンを形成し且つ前記スイッチパターンの摺動子が摺接する摺接軌跡上に貫通する開口を設けることでスイッチパターン端辺を形成してなるフレキシブルスイッチ基板と、前記フレキシブルスイッチ基板の開口を設けた部分に対向する部分に貫通する開口部を設けてなる補強板と、を用意し、前記フレキシブルスイッチ基板のスイッチパターンを設けた反対側の面に前記補強板を積層して設置する工程と、前記積層したフレキシブルスイッチ基板と補強板とを金型内に設置し、その際前記フレキシブルスイッチ基板のスイッチパターン形成面を金型表面に面接触させると共に、前記金型によって前記フレキシブルスイッチ基板と補強板とを挟持し、同時にこれらフレキシブルスイッチ基板と補強板の周囲にキャビティーを形成する工程と、前記金型のキャビティー内に溶融成形樹脂を注入することでこのキャビティーと、補強板の開口部を介してフレキシブルスイッチ基板の開口とに成形樹脂を充填する工程と、前記成形樹脂が固化した後に金型を取り外して成形樹脂製の基台に補強板とフレキシブルスイッチ基板を取り付け且つ補強板の開口部を介してフレキシブルスイッチ基板の開口に充填された基台の表面をフレキシブルスイッチ基板のスイッチパターンの面と一致させてなる基台付スイッチ基板を取り出す工程と、を具備することを特徴とする基台付スイッチ基板の製造方法にある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、フレキシブルスイッチ基板に補強板を積層して設置した上で成形樹脂製の基台を取り付けているので、基台付スイッチ基板全体の強度を補強板によって十分強くすることができる。従って基台付スイッチ基板の厚みをその薄型化のために薄くしても、十分な強度を維持することができる。また基台を構成する成形樹脂をフレキシブルスイッチ基板の開口に充填してその表面をスイッチパターンの面と一致させたので、その上を摺動する摺動子の動きがスムーズになり、その出力波形も正確なものとなる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、補強板をアース板として兼用するので、スイッチパターン等の導体パターンへの静電気の侵入を確実に防止できる。しかも別途静電気侵入防止用のアース板を取り付ける必要はなく、構造が簡単で製造も容易になる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、スイッチパターン端辺と補強板とが導通する恐れを確実に防止できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、補強板の強度を強く維持できる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、補強板に設けた開口部を介してフレキシブルスイッチ基板に設けた開口に成形樹脂を容易に注入でき、上記基台付スイッチ基板を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1乃至図3は本発明の一実施形態にかかる基台付スイッチ基板10を示す図であり、図1は側断面図(図3(a)のA−A断面図、但し開口45部分の断面も示している)、図2は側面図、図3(a)は平面図、図3(b)は裏面図である。これらの図に示すように基台付スイッチ基板10は、フレキシブルスイッチ基板20と補強板60と端子板80を成形樹脂製の基台90にインサート成形して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0018】
図4はフレキシブルスイッチ基板20の平面図である。同図に示すようにフレキシブルスイッチ基板20は、フイルム状(上部が円形で下部が矩形状)の絶縁基板21の一方の面上に下記する摺動子530(図9参照)が摺接するスイッチパターン23,25及びコモンパターン27を形成しさらに各スイッチパターン23,25とコモンパターン27とからそれぞれ絶縁基板21の下端外周辺まで端子接続パターン29,31,33を引き出して構成されている。絶縁基板21は絶縁製で熱可塑性の合成樹脂フイルム板(例えばポリエチレンテレフタレートフイルム等、もちろん熱硬化性の合成樹脂フイルムでも良い)からなる。絶縁基板21の中央(両スイッチパターン23,25の中間位置)には下記する基台90に設けた軸部97を貫通する円形の軸挿通孔35が設けられ、また両側の端子接続パターン31,33の上部中には貫通する円形の位置決め孔37,39が設けられ、さらに絶縁基板21の下端外周辺近傍であって各端子接続パターン29,31,33の間の位置には貫通する円形の樹脂挿通孔41,43が設けられている。一対のスイッチパターン23,25は何れも中央の軸挿通孔35の周囲を囲むように円弧状に形成されており、それらの上を摺動する下記する摺動子530の摺接軌跡L1上の両端部には扇形状に貫通する開口45が設けられている。言い換えればスイッチパターン23,25の摺動子530が摺接する摺接軌跡L1上に貫通する開口45を設けることでスイッチパターン23,25の各スイッチパターン端辺23a,23a,25a,25aを形成している。一方コモンパターン27は、スイッチパターン23,25の外周を囲むように円弧状に形成されている。なお各スイッチパターン23,25及びコモンパターン27から各端子接続パターン29,31,33に引き出される導電パターン部分の上には、その上を摺動する摺動子530がこれら導電パターン部分に接触しないように点線の斜線で示すレジスト層47がオーバーコートされている。
【0019】
図5は前記フレキシブルスイッチ基板20の製造方法説明図である。同図に示すようにフレキシブルスイッチ基板20を製造するには、まず大きな寸法のフイルム状の絶縁基板21A(前記絶縁基板21と同じフイルム)の一方の面上に導電ペースト(例えば銀ペースト〔溶剤に溶かしたウレタン系,フェノール系等の樹脂材に銀粉を混練したもの〕等)を印刷(例えばスクリーン印刷等)することによってスイッチパターン23,25とコモンパターン27と端子接続パターン29,31,33とを同時に形成する。このとき両スイッチパターン23,25の少なくとも下記する摺動子530の摺動軌跡L1上の両端部(開口45が形成される部分)は、実際の両スイッチパターン23,25の各スイッチパターン端辺23a,23a,25a,25a(図4参照)よりも明らかにはみ出す寸法(開口45内にはみ出す寸法)に形成しておく。さらに各スイッチパターン23,25及びコモンパターン27から各端子接続パターン29,31,33に引き出される導電パターン部分の上にレジスト層47をオーバーコートする。そしてこの絶縁基板21Aをプレス金型によってカットすることで、図4に示す絶縁基板21の外形と各軸挿通孔35と位置決め孔37,39と樹脂挿通孔41,43と各開口45とを同時に形成することでフレキシブルスイッチ基板20を製造する。このとき各開口45によってスイッチパターン23,25の各スイッチパターン端辺23a,23a,25a,25bが形成されることとなるが、各スイッチパターン端辺23a,23a,25a,25bの位置はプレス金型によって正確な極めて精度の良い位置に形成されることとなる。従って精度の良いオンオフ波形を出力できる。
【0020】
次に図6は補強板60の平面図である。補強板60は金属板製であって導電性を有し、その上部が円形で下部が矩形状に形成されている。即ち前記フレキシブルスイッチ基板20の外形形状寸法とほぼ同一形状寸法(但しフレキシブルスイッチ基板20の端子接続パターン29,31,33を設けた下部の部分に対応する部分を除く)に形成され、前記フレキシブルスイッチ基板20の軸挿通孔35に対向する位置にはこれより少し大きい寸法形状の円形の軸貫通孔61が設けられ、前記フレキシブルスイッチ基板20の各開口45に対向する位置にはそれぞれこれらより少し大きい寸法形状の扇形状の貫通する開口部63が設けられ、また前記フレキシブルスイッチ基板20の一対の位置決め孔37,39に対向する位置にはそれぞれこれらより少し大きい寸法形状の貫通する円形の位置決め用孔65,67が設けられている。また補強板60の上端部には外方向に向かって突出する舌片状の突起からなる避雷部69が設けられ、補強板60の左右両側部からは帯状に突出する一対の取付部71,71が設けられている。なお図1乃至図3に示す端子板80は、金属板を直線状で平板状に形成して構成されている。
【0021】
次に基台90について、図1乃至図3を用いて、基台付スイッチ基板10の全体構造と共に説明する。基台90は成形樹脂製であり、積層したフレキシブルスイッチ基板20及び補強板60の下面側の略全体に形成される基台本体部91と、フレキシブルスイッチ基板20の外周を囲むように形成される側壁部93と、フレキシブルスイッチ基板20の端子板80を取り付けた部分の上面を押さえる押え部95と、前記基台本体部91の中央部分から前記補強板60の軸貫通孔61とフレキシブルスイッチ基板20の軸挿通孔35を貫通してフレキシブルスイッチ基板20の上部に突出する円形で柱状の軸部97とを一体に具備して構成されている。また基台本体部91の下面の上下中央部分からは柱状の位置決め部99,100が突設され、また前記補強板60の位置決め用孔65,67とフレキシブルスイッチ基板20の位置決め孔37,39の部分は一致して上下に貫通しており、また基台本体部91の前記軸部97を突出しているその下面中央には円形の凹部105が設けられ、また凹部105の周囲5ヶ所にも凹部101,103,107,109,111が設けられている。凹部111は前記一対の位置決め用孔65,67を含む領域に形成され、さらに凹部111の下部の前記3本の端子板80の一端部に対応する位置にもそれぞれ凹部113が設けられている。一方フレキシブルスイッチ基板20の上面にはスイッチパターン23,25とコモンパターン27が露出している。また側壁部93の外周からは前記補強板60に設けた避雷部69と一対の取付部71,71とが突出している。また各端子板80の一端はフレキシブルスイッチ基板20の各端子接続パターン29,31,33(図4参照)に当接された状態でその上下を押え部95及び基台本体部91によって挟持され、固定されている。軸部97の上端面からは四本の小突起部117が突出している。
【0022】
即ち基台付スイッチ基板10は、フイルム状の絶縁基板21の一方の面上に下記する摺動子530が摺接するスイッチパターン23,25を形成し且つ前記スイッチパターン23,25の摺動子530が摺接する摺接軌跡L1上に貫通する開口45を設けることでスイッチパターン端辺23a,23a,25a,25aを形成してなるフレキシブルスイッチ基板20と、前記フレキシブルスイッチ基板20のスイッチパターン23,25を設けた反対側の面に接して設置され、且つ前記フレキシブルスイッチ基板20の開口45を設けた部分に対向する部分に貫通する開口部63を設けてなる補強板60と、前記補強板60とフレキシブルスイッチ基板20の周囲にこれら補強板60とフレキシブルスイッチ基板20とを保持するように成形され且つ前記補強板60の開口部63を介してフレキシブルスイッチ基板20の開口45内に充填されてその表面をフレキシブルスイッチ基板20のスイッチパターン23,25の面の高さと一致させてなる成形樹脂製の基台90と、前記フレキシブルスイッチ基板20に設けた端子接続パターン29,31,33にその一端を当接し他端を基台90の外部に突出しその上下を前記基台90によって挟持して固定してなる端子板80とを具備して構成されている。
【0023】
次に上記基台付スイッチ基板10の製造方法を説明する。基台付スイッチ基板10を製造するにはまず、予め前記フレキシブルスイッチ基板20と前記補強板60と端子板80とを用意する。そしてまずフレキシブルスイッチ基板20のスイッチパターン23,25を設けた反対側の面に補強板60を接するように設置する。
【0024】
そしてこれら積層したフレキシブルスイッチ基板20と補強板60と端子板80とを、図7に示すように、金型(第一金型と第二金型)200,300内に設置して挟持して固定する。このときフレキシブルスイッチ基板20の一対の位置決め孔37,39と補強板60の一対の位置決め用孔65,67に何れかの金型200,300に設けたピンを挿入することで両者の位置を一致させるので、同時にフレキシブルスイッチ基板20の軸挿通孔35と各開口45とが、それぞれ補強板60の軸貫通孔61と各開口部63に正確に対向する。またこのときフレキシブルスイッチ基板20のスイッチパターン23,25の形成面を金型表面(具体的には第一金型200の基板当接面201)に面接触させ、同時に第二金型300に設けた5ヶ所の突出部301(図7では1ヶ所のみ示す)の表面を補強板60の下面に当接することでフレキシブルスイッチ基板20と補強板60とを挟持する。またこのとき同時にこれらフレキシブルスイッチ基板20と補強板60の周囲に基台90の外形形状と同じキャビティーC1が形成される。さらにこのとき同時に端子板80もフレキシブルスイッチ基板20の端子接続パターン29,31,33にその一端を当接した状態でその上下が第一金型200の基板当接面201と第二金型300に設けた突出部303(実際には各端子板80毎に三本ある)とによって挟持され固定される。なお突出部301は図7に示す位置以外に4ヶ所設けられ、これら突出部301によって前記図3(b)に示す凹部101,103,107,109,111が形成される。また三本の突出部303によって前記図3(b)に示す三つの凹部113が形成される。
【0025】
そして前記第二金型300のキャビティーC1の前記図1に示す位置決め部100となる部分の下端部に設けた樹脂注入口Gから溶融成形樹脂を注入(圧入)することで前記キャビティーC1内全てにこの溶融成形樹脂を充填する。このとき同時に補強板60の開口部63を介してフレキシブルスイッチ基板20の開口45中にも成形樹脂が充填される。そして成形樹脂が固化した後に第一,第二金型200,300を取り外せば、成形樹脂製の基台90に補強板60とフレキシブルスイッチ基板20と端子板80とを取り付けてなる図1乃至図3に示す基台付スイッチ基板10を取り出すことができる。
【0026】
以上のようにして製造された基台付スイッチ基板10は、フレキシブルスイッチ基板20の下面に補強板60を積層して設置した上で成形樹脂製の基台90を取り付けているので、基台付スイッチ基板10全体の強度を前記補強板60によって十分強くすることができる。従って例え基台90を含む基台付スイッチ基板10の厚みをその薄型化のために薄くしても、十分な強度を維持することができる。
【0027】
また補強板60は金属板製で導電性を有するのでアース板としての機能も兼用する。特に避雷部69と一対の取付部71は、基部90の外周からその外側に向けて突出しており、従って静電気は基台付スイッチ基板10の内部に入り込む前に、基台付スイッチ基板10の外側部分でこれらの部分に入射する。従ってスイッチパターン23,25等の導体パターンへの静電気の侵入を確実に防止できる。そして補強板60が静電気侵入防止機能を兼用するので、別途静電気侵入防止用のアース板を取り付ける必要はなく、構造が簡単で製造も容易になる。さらにこの補強板60は前記一対の取付部71によって他の固定側部材にこの基台付スイッチ基板10を取り付ける取付機能も兼用している。
【0028】
またこの基台付スイッチ基板10においては、基台90を構成する成形樹脂をフレキシブルスイッチ基板20の開口45内に充填してその表面をフレキシブルスイッチ基板20のスイッチパターン23,25の面の高さと一致させたので、その上(摺接軌跡L1上)を下記する摺動子530の摺動冊子533(図9参照)がスムーズに移動できるようになる。この基台付スイッチ基板10は、フレキシブルスイッチ基板20の下面側に補強板60を設置しているが、この補強板60に開口部63を設けたので、その下側の基台90を構成する成形樹脂とフレキシブルスイッチ基板20に設けた開口45とを連通でき、フレキシブルスイッチ基板20の開口45内に容易に成形樹脂を充填することができるのである。ところで前述のように開口部63は開口45よりも少し大きい寸法形状に形成されているが、これは以下の理由による。ここで図10は開口45と開口部63の位置関係を示す図であり、図10(a)はスイッチパターン端辺25aを形成した1つの開口45部分の要部拡大平面図、図10(b)は図10(a)のF−F断面図、図10(c)は開口45と開口部63に基台90を成形した状態の図10(a)のF−F断面図である。同図に示すように開口部63を開口45よりも少し大きい寸法形状に形成することで、フレキシブルスイッチ基板20の少なくともスイッチパターン端辺25aが、補強板60の開口部63の内側に位置するように構成している。これは開口45を機械的カット等によって形成する際に、図10(b),(c)に示すように、スイッチパターン端辺25aの部分が開口45の内側にダレてしまう場合があり、そのような場合にこの近傍に導電性を有する補強板60が位置していると、両者間にショート等を生じる恐れがある。そこでこのような恐れを確実に防止するため、開口部63を開口45よりも少し大きい寸法形状に形成することとした。なおフレキシブルスイッチ基板20の少なくともスイッチパターン端辺25aが補強板60に接近していなければ良いので、必ずしも開口部63全体を開口45より大きい寸法形状に形成する必要はなく、開口部63のスイッチパターン端辺25a近傍部分のみをスイッチパターン端辺25aから離せば良い。言い換えれば少なくともスイッチパターン端辺25aを補強板60の開口部63の内側に位置するように構成すれば良い。もちろんこのような問題が生じない場合は、開口部63と開口45の寸法形状を同一に形成しても良いし、逆に下記するように開口45よりも開口部63を小さく形成しても良い。
【0029】
即ち補強板60に設ける開口部63の形状や数には種々の変更が可能である。開口部63は基台90を構成する成形樹脂を開口45に導くためのものであるから、例えば、図8(a)に示すように複数の開口45に対して一つの大き目の開口部63としても良く、また図8(b)に示すように開口45よりも小さい外形寸法の開口部63としても良い。要は各開口45に基台90を構成する成形樹脂を導くことができる形状の開口部63であればどのような形状であってもよい。なお上記図6に示す実施形態において、複数あるフレキシブルスイッチ基板20の開口45毎に補強板60の開口部63を設けたのは、図8(a)に示すように複数の開口45に対して一つの開口部63を設けると、補強板60の強度がその分弱くなってしまうためである。即ち上記図6に示す実施形態は、各開口45毎に開口部63を設けることで、補強板60の強度を強く維持するようにしている。
【0030】
図9は以上のようにして製造された基台付スイッチ基板10を用いて組み立てられた回転式スイッチ500の概略断面図である。同図に示すようにこの回転式スイッチ500は、基台付スイッチ基板10と、その下面に摺動子530を取り付けた成形樹脂製の摺動型物兼用回転つまみ510と、摺動型物兼用回転つまみ510の上面に設けたクリック機構収納部515内に設置されるクリック機構550とを具備して構成されている。なお基台付スイッチ基板10の各端子板80と取付部71とは、基台90の外部に突出した位置において基台90の下面側に直角に折り曲げられ、その下側に設置する基板や外装ケース等の固定側部材600に固定される。このとき各端子板80は固定側部材600の回路に電気的に接続され、また取付部71は固定側部材600のアース部材に電気的に接続される。また基台付スイッチ基板10の位置決め部材99,100は固定側部材600に設けた図示しない穴内に挿入され位置決めされる。一方摺動型物兼用回転つまみ510は略円板状の摺動型物部511と、摺動型物部511の周囲に設けられるつまみ部513と、摺動型物部511の上部に設けられる前記クリック機構収納部515とを有し、摺動型物部511の中央に前記基台付スイッチ基板10の軸部97を回動自在に貫通する軸支孔517を設けて構成されている。摺動子530は弾性金属板製であって前記摺動型物兼用回転つまみ510の下面に固定され、その基部531から前記フレキシブルスイッチ基板20のスイッチパターン23,25とコモンパターン27とにそれぞれ摺接させる摺動冊子533を突出させて構成されている。クリック機構550はクリック機構収納部515の底面に固定されるクリック板560と、前記軸部97の上部に固定されその下面にクリックバネ580を固定してなる合成樹脂製で略円板状の押え部材570とを具備して構成されている。クリック板560はリング状平板(金属板)で等間隔に開口部561を設けて構成される。押え部材570の中央には前記軸部97上端の小突起部117を嵌合する嵌合部571が設けられている。またクリックバネ580は弾性金属板製であってそのリング状の基部581の一部を円弧状に下方向に屈曲することで弾発アーム部583を形成し、その中央に図示しない弾発部を設けて構成されている。そして摺動子530とクリック板560とを取り付けた摺動型物兼用回転つまみ510の軸支孔517に基台付スイッチ基板10の軸部97を回動自在に挿入し、軸部97上端の小突起部117を、クリックバネ580を取り付けた押え部材570の嵌合部571に挿入して小突起部117の先端を熱カシメすれば、回転式スイッチ500が完成する。そして指等によって摺動型物兼用回転つまみ510の外周を回動すれば、摺動子530の摺動冊子533がスイッチ接点パターン23,25とコモンパターン27上を摺接し、各端子板80間のオンオフ出力が変化する。このとき前述のようにスイッチ接点パターン23,25の各スイッチパターン端辺23a,23a,25a,25aは精度良く形成されているので、そのオンオフ波形も所望の精度の良い出力となる。一方摺動型物兼用回転つまみ510を回動した際、クリックバネ580の弾発部がクリック板560の開口部561へ係合離脱してクリック感覚が生じる。なおこの回転式スイッチ500においては、軸部97に押え部材570を取り付け、この押え部材570の摺動型物部511に対向する側の面にクリックバネ580を取り付けているので、クリックバネ580を外部(摺動型物兼用回転つまみ510の上面側)から確実に保護でき、従ってクリックバネ580を単独で軸部97に取り付ける場合と比較してクリックバネ580がその外部から引き上げられて破壊されることはなく、またクリックバネ580全体をしっかりと支持できるので、良好なクリック感覚が得られる。
【0031】
ところで図9に示す固定側部材600の形状は、摺動型物兼用回転つまみ510を駆動する位置が一方の位置(点Bの位置)となるように形成されている。従って帯電した指等はこの位置Bにおいて摺動型物兼用回転つまみ510を回動することとなる。そしてその指等が帯電していた場合、その静電気はこの指等に近い位置にある避雷部69に落ちてアースされる。つまり基台付スイッチ基板10上の回路パターンへの静電気の入射を防止できる。
【0032】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態では本発明を回転式電子部品用の基台付スイッチ基板に適用した場合を説明したが、本発明はスライド式スイッチ等のスライド式電子部品等の他の電子部品用の基台付スイッチ基板にも適用できる。またフレキシブルスイッチ基板20や補強板60や基台90の形状・構造、またスイッチパターン23,25や開口45や開口部63の形状や数等に種々の変更が可能であることは言うまでもない。また上記実施形態では端子板80を取り付けたが、端子板80は必ずしも取り付けなくても良く、省略しても良い。この場合は例えばフレキシブルスイッチ基板20の端子接続パターン29,31,33を設けた部分を基台90の外部にそのまま突出させる等すれば良い。また上記実施形態ではスイッチパターンを導電ペーストを塗布することによって形成したが、銅箔などの金属箔からなるスイッチパターンであってもよく、さらにそれ以外の方法で形成されるスイッチパターンであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】基台付スイッチ基板10の側断面図(図3(a)のA−A断面図)である。
【図2】基台付スイッチ基板10の側面図である。
【図3】図3(a),(b)は基台付スイッチ基板10の平面図と裏面図である。
【図4】フレキシブルスイッチ基板20の平面図である。
【図5】フレキシブルスイッチ基板20の製造方法説明図である。
【図6】補強板60の平面図である。
【図7】基台付スイッチ基板10の製造方法説明図である。
【図8】図8(a),(b)は補強板60の他の実施形態の平面図である。
【図9】基台付スイッチ基板10を用いて組み立てられた回転式スイッチ500の概略断面図である。
【図10】開口45と開口部63の位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10 基台付スイッチ基板
20 フレキシブルスイッチ基板
21 絶縁基板
23,25 スイッチパターン
23a,25a スイッチパターン端辺
L1 摺接軌跡
27 コモンパターン
29,31,33 端子接続パターン
45 開口
60 補強板
63 開口部
80 端子板
90 基台
200,300 金型(第一金型と第二金型)
C1 キャビティー
500 回転式スイッチ
510 摺動型物兼用回転つまみ
530 摺動子
550 クリック機構
560 クリック板
570 押え部材
580 クリックバネ
600 固定側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フイルム状の絶縁基板の一方の面上に摺動子が摺接するスイッチパターンを形成し且つ前記スイッチパターンの摺動子が摺接する摺接軌跡上に貫通する開口を設けることでスイッチパターン端辺を形成してなるフレキシブルスイッチ基板と、
前記フレキシブルスイッチ基板のスイッチパターンを設けた反対側の面に設置され、且つ前記フレキシブルスイッチ基板の開口を設けた部分に対向する部分に貫通する開口部を設けてなる補強板と、
前記補強板とフレキシブルスイッチ基板の周囲にこれら補強板とフレキシブルスイッチ基板とを保持するように成形され且つ前記補強板の開口部を介してフレキシブルスイッチ基板の開口に充填されてその表面をフレキシブルスイッチ基板のスイッチパターンの面と一致させてなる成形樹脂製の基台と、
を具備して構成されることを特徴とする基台付スイッチ基板。
【請求項2】
前記補強板は導電性を有する材料で構成され、これによってアース板として兼用されることを特徴とする請求項1に記載の基台付スイッチ基板。
【請求項3】
前記フレキシブルスイッチ基板の少なくとも前記スイッチパターン端辺は、前記補強板の開口部の内側に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の基台付スイッチ基板。
【請求項4】
前記フレキシブルスイッチ基板の開口は複数あり、前記補強板の開口部もフレキシブルスイッチ基板の各開口毎に設けられていることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の基台付スイッチ基板。
【請求項5】
予めフイルム状の絶縁基板の一方の面上に摺動子が摺接するスイッチパターンを形成し且つ前記スイッチパターンの摺動子が摺接する摺接軌跡上に貫通する開口を設けることでスイッチパターン端辺を形成してなるフレキシブルスイッチ基板と、
前記フレキシブルスイッチ基板の開口を設けた部分に対向する部分に貫通する開口部を設けてなる補強板と、を用意し、
前記フレキシブルスイッチ基板のスイッチパターンを設けた反対側の面に前記補強板を積層して設置する工程と、
前記積層したフレキシブルスイッチ基板と補強板とを金型内に設置し、その際前記フレキシブルスイッチ基板のスイッチパターン形成面を金型表面に面接触させると共に、前記金型によって前記フレキシブルスイッチ基板と補強板とを挟持し、同時にこれらフレキシブルスイッチ基板と補強板の周囲にキャビティーを形成する工程と、
前記金型のキャビティー内に溶融成形樹脂を注入することでこのキャビティーと、補強板の開口部を介してフレキシブルスイッチ基板の開口とに成形樹脂を充填する工程と、
前記成形樹脂が固化した後に金型を取り外して成形樹脂製の基台に補強板とフレキシブルスイッチ基板を取り付け且つ補強板の開口部を介してフレキシブルスイッチ基板の開口に充填された基台の表面をフレキシブルスイッチ基板のスイッチパターンの面と一致させてなる基台付スイッチ基板を取り出す工程と、
を具備することを特徴とする基台付スイッチ基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−313688(P2006−313688A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136062(P2005−136062)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】