説明

基地局、制御信号送信方法及び通信システム

【課題】交換局と移行元基地局との間で通信できないことを示す情報が、移行先基地局から移動局に通知されたことに応じて、移動局による以後の通信が移行先基地局を介して行われることとなった場合に、移行先基地局におけるアクセストラフィックの輻輳を少なくとも軽減させること。
【解決手段】基地局は、複数の交換局の内の少なくとも1つの交換局と通信することが可能である第1の通信状態において、アクティブ状態又はインアクティブ状態が、複数の交換局の各々について示されている制御信号を生成する制御信号生成部と、制御信号を移動局に送信する無線送信部とを有し、第1の通信状態から、何れの交換局とも通信できない第2の通信状態に変化した場合において、第1の通信状態でアクティブ状態が示されていた交換局についてアクティブ状態を示す制御信号を引き続き生成し、制御信号を移動局に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基地局、制御信号送信方法及び通信システムに関連する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおいて、移動局は、基地局よりも上位に位置する交換局に対して位置登録を行うことで、以後の通信が可能になる。移動局及び基地局間の無線通信は、直接的に行われてもよいし、人工衛星又は通信衛星(以下、単に「衛星」という)を介して行われてもよい。負荷分散及び冗長化等の観点から、基地局は複数の(N個の)交換局に接続されていることが多い。N個の交換局各々との通信を適切に実行できるか否かを示す状態情報を移動局に通知又は報知することで、移動局は、位置登録を行う交換局を選択することができる。状態情報は、一例として、(状態1,状態2,...,状態N)のような交換機N個分の列挙形式で移動局に通知されてもよい。基地局及びn番目(n=1,...,N)の交換局の間の通信が、良好に実行可能である場合、n番目の交換局の状態である状態nはアクティブ状態(Active)である一方、良好に実行可能でない場合、状態nはインアクティブ状態(InActive)である。この場合、移動局は、状態がアクティブ状態である交換局の中から、位置登録を行う交換局を選択する。
【0003】
図1は、従来技術における動作概要を説明するための図である。第1の交換局#1と、第2の交換局#2と、第1及び第2の交換局に接続された第1の基地局#1と、第1及び第2の交換局に接続された第2の基地局#2と、第1の基地局#1を介して通信を行う第1の移動局#1及び第2の移動局#2と、第2の基地局#2を介して通信を行う第3の移動局#3及び第4の移動局#4とが存在している。第1の基地局#1は、当初、第1及び第2の交換局双方と良好に通信可能であり、(状態1,状態2)=(アクティブ,アクティブ)を報知している。この報知信号を受信した第1の移動局#1は第1の交換局#1に対して位置登録を行っている。また、この報知信号を受信した第2の移動局#2は第2の交換局#2に対して位置登録を行っている。同様に、第2の基地局#2は、当初、第1及び第2の交換局双方と良好に通信可能であり、(状態1,状態2)=(アクティブ,アクティブ)を報知している。この報知信号を受信した第3の移動局#3は第1の交換局#1に対して位置登録を行っている。また、この報知信号を受信した第4の移動局#4は第2の交換局#2に対して位置登録を行っている。
【0004】
この種の従来の通信システムについては特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−157881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
次に、第1の基地局#1が故障により又は伝送路障害により第1及び第2の交換局双方と通信できなくなったとする。故障や伝送路障害は例えば災害時に生じるおそれがある。この場合、基地局は第1の交換局#1についてインアクティブ状態であること及び第2の交換局#2についてもインアクティブ状態であることを移動局に報知する。すなわち、状態情報(状態1,状態2)=(インアクティブ,インアクティブ)という状態情報が第1の基地局#1から報知される。その後、第1の基地局#1は移動局の通信信号を適切に中継できないので、通信信号を受け付けないようにする必要がある。例えば、故障による規制がかかっていることを報知することで、移動局の通信を拒否することが考えられる。あるいは、第1の基地局#1が無線信号の送受信を停止することで(停波することで)、移動局の通信を拒否することが考えられる。いずれにせよ、第1及び第2の移動局は第1の基地局#1を通じては通信できないので、別の基地局にアクセスする。図示の例の場合、第1及び第2の移動局#1、#2は、第2の基地局#2を通じて通信することになる。
【0007】
第1及び第2の移動局#1、#2は、第2の基地局#2を通じて位置登録をやり直す。具体的には、第1及び第2の移動局#1、#2は、第2の基地局#2における共通制御チャネルを使用して、位置登録を行う。共通制御チャネルは、第2の基地局#2を通じて通信する全ての移動局が何らかの通信を行う際に必要な信号が送受信されるチャネルである。したがって、第1の基地局#1から第2の基地局へ移行してきた第1及び第2の移動局#1、#2が一斉に位置登録を開始すると、トラフィック(アクセストラフィック)が輻輳し、第2の基地局#2の側に当初から存在している第3、第4の移動局#3、#4の通信を適切に行うことができなくなってしまうおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、交換局と移行元基地局との間で通信できないことを示す情報が、移行元基地局から移動局に通知されたことに応じて、移動局による以後の通信が移行先基地局を介して行われることとなった場合に、移行先基地局におけるアクセストラフィックの輻輳を軽減させることである。また、移行元基地局から移行先基地局へ移行した移動機は位置登録することなくサービス利用ができる効果もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施例による基地局は、
複数の交換局各々と通信する網側通信部と、
前記網側通信部が前記複数の交換局の内の少なくとも1つの交換局と通信することが可能である第1の通信状態において、通信が可能であることに対応するアクティブ状態又は通信が不可能であることに対応するインアクティブ状態が、前記複数の交換局の各々について示されている制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記制御信号を1つ以上の移動局に送信する無線送信部と
を有し、前記複数の交換局と前記網側通信部との間の通信状態が、前記第1の通信状態から、前記網側通信部が前記複数の交換局の内の何れの交換局とも通信できない第2の通信状態に変化した場合において、前記制御信号生成部は、前記第1の通信状態においてアクティブ状態が示されていた少なくとも1つの交換局についてアクティブ状態を示す制御信号を引き続き生成し、該制御信号を前記無線送信部が前記1つ以上の移動局に送信する、基地局である。
【発明の効果】
【0010】
一実施例によれば、交換局と移行元基地局との間で通信できないことを示す情報が、移行先基地局から移動局に通知されたことに応じて、移動局による以後の通信が移行先基地局を介して行われることとなった場合に、移行先基地局におけるアクセストラフィックの輻輳を軽減させることができる。また、移行元基地局から移行先基地局へ移行した移動機は位置登録することなくサービス利用ができる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術における動作概要を説明するための図。
【図2】通信システムの一例を示す図。
【図3】第1の動作例の概要を示す図。
【図4】第1の動作例を詳細に示す動作シーケンス。
【図5】図4に示す動作例と比較するための従来の動作例を示す図。
【図6】第2の動作例の概要を示す図。
【図7】第2の動作例を詳細に示す動作シーケンス。
【図8】第3の動作例の概要を示す図。
【図9】第3の動作例を詳細に示す動作シーケンス。
【図10】基地局の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の観点から実施例を説明する。
【0013】
1.通信システム
2.第1の動作例
2.1 概要
2.2 第1の動作例の詳細
3.第2の動作例
3.1 概要
3.2 第2の動作例の詳細
4.第3の動作例
5.変形動作例
6.基地局
【実施例1】
【0014】
<1.通信システム>
図2は実施例を使用することが可能な通信システムの一例を示す。概して通信システムは衛星を使用しない移動通信システム(右側)と衛星を使用する衛星移動通信システム(左側)とを含んでいる。ただし、実施例はこのような形態に限定されず、適切な他の如何なる形態にも適用可能である。衛星を使用しない移動通信システムは、第3世代の移動通信システム(既存3G)と、LTE方式の移動通信システムとを含む。
【0015】
第3世代の移動通信システムの場合、セルに在圏するユーザ装置UEと基地局BTSとが直接的に無線通信を行う。基地局BTSは無線ネットワーク制御局IP−RNCに接続される。無線ネットワーク制御局IP−RNCは無線リソースの管理等を実行する。「IP−」はInternet Protocolに基づくパケット処理を行うことを示す。無線ネットワーク制御局IP−RNCはIPルータネットワークを経由してパケット交換機xGSNに接続される。無線ネットワーク制御局IP−RNCは、シグナリングインターワーキングノードSINにも接続され、SINにより、第3世代の移動通信システムがIPマルチメディアサブシステム(IMS)に接続される。
【0016】
LTE方式の移動通信システムの場合も、セルに在圏するユーザ装置UEと基地局(eNodeB又はeNB)とが直接的に無線通信を行うが、第3世代の移動通信システムにおける無線ネットワーク制御局IP−RNCに対応する処理部がない。LTE方式の移動通信システムの場合、無線リソースの制御は基地局eNB毎に行われるからである。基地局eNBはエボルブドパケットコアEPCに接続される。
【0017】
ユーザ装置は、典型的には携帯電話であるが、情報端末、高機能携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、パーソナルディジタルアシスタント、携帯用パーソナルコンピュータ、パームトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ等でもよい。
【0018】
衛星を使用しない移動通信システムに関し、呼制御やセッション制御を行うとともに、アプリケーションサービスを提供するノードCSN/ASNがオールIPネットワークに含まれている。メディアゲートウェイとしての機能及びリソース管理に関するメディアリソースノードとしての機能を発揮するノードMGN/MRNもオールIPネットワークに含まれている。CSN/ASN及びMGN/MRNは、IPマルチメディアサブシステムIMSを形成する。
【0019】
衛星を使用する移動通信システムの場合、衛星通信端末S−MSと衛星アクセス装置S−APxとの無線通信は(x=1、2、3、4)、2つの通信衛星(通信衛星1又は通信衛星2)の内の何れかを介して行われる。衛星通信端末S−MSは衛星と無線通信を行うことが可能な適切な如何なる通信端末でもよい。図示の例の場合、衛星通信端末S−MSは、一方の通信衛星1を介して第1及び第3の衛星アクセス装置S−AP1、S−AP3に接続することが可能である。また、衛星通信端末S−MSは、他方の通信衛星2を介して第2及び第4の衛星アクセス装置S−AP2、S−AP4に接続することが可能である。このように衛星通信端末S−MSが複数のアクセス装置に接続できるようにしているのは、負荷分散及び冗長化等のためである。衛星アクセス装置S−APx(x=1、2、3、4)は、IPルータネットワークを介してコアノード1及び2に接続される。コアノード1、2の各々は、衛星用のアクセスゲート機能を有するAGS、衛星用のアプリケーションサービスを提供する機能を有するS−ASN、衛星用の呼制御やセッション制御を行う機能を有するS―CSN、メディアゲートウェイとしての機能MGNを有する、及び衛星用のリソース管理に関するメディアリソースノードとしての機能を有するS−MRN等のノードから構成される。
【0020】
オールIPネットワーク上に構築した衛星移動通信システムは、保守監視ノード(
OPeration System:OPS)が設けられ、ネットワークに存在する各ノードの動作及び状態を運用管理する。オールIPネットワークには、メディアプロセシングノードMPNが設けられており、メディア系付加価値サービスシステムを統合することが可能である。さらに、右上側に示されているようにインターネット上の何らかのサービスプロバイダや他通信網が接続されていてもよい。
【0021】
概して、衛星を使用しない移動通信システムにおけるSIN、xGSN、EPCは、基地局(BTS、eNB)より上位に位置する交換局に対応する。衛星を使用する移動通信システムにおけるS−APx(x=1−4)は基地局に対応する。また、衛星を使用する移動通信システムにおけるAGSは交換局に対応する。上述したように、交換局は、加入者情報の管理、移動管理、発着信制御、課金制御、QoS制御等を行う。以下に説明する動作例は、主に、衛星通信端末(又はユーザ装置)、基地局及び交換局に関連する。
【0022】
以下、実施例による動作例を説明する。説明の便宜上、動作例は、第1−第3の3つの観点から説明される。
【0023】
<2.第1の動作例>
<<2.1 概要>>
図3は、第1の動作例の概要を説明するための図である。第1の交換局#1と、第2の交換局#2と、第1及び第2の交換局に接続された第1の基地局#1と、第1及び第2の交換局に接続された第2の基地局#2と、第1の基地局#1を介して通信を行う第1の移動局#1及び第2の移動局#2と、第2の基地局#2を介して通信を行う第3の移動局#3及び第4の移動局#4とが存在している。移動局及び基地局間の無線通信は、直接的に行われてもよいし、人工衛星又は通信衛星(以下、単に「衛星」という)を介して行われてもよい。一般に、負荷分散及び冗長化等の観点から、基地局は複数の(N個の)交換局に接続される。図示の例の場合、N=2であるが、Nは3以上でもよい。
【0024】
N個の交換局各々との通信を適切に実行できるか否かを示す状態情報を各基地局が移動局に通知又は報知することで、移動局は、位置登録を行う交換局を選択することができる。状態情報は、一例として、(状態1,状態2,...,状態N)のような交換機N個分の列挙形式で移動局に通知されてもよい。基地局及びn番目(n=1,2, ...,N)の交換局の間の通信が、良好に実行可能である場合、状態nはアクティブ状態(Active)である一方、良好に実行可能でない場合、状態nはインアクティブ状態(InActive)である。ここで、交換機N個分の中に将来的に増設予定との交換局が含まれる場合もあり、それらの交換機とは良好に実行可能でないため、状態nはインアクティブ状態(InActive)となる。この場合、移動局は、状態がアクティブ状態である交換局の中から、位置登録を行う交換局を選択する。一般に、位置登録は、移動局のユーザの加入者情報を交換局に登録し、移動局及び交換局間の論理パスを確立するアタッチ(attach)の手順を含む。
【0025】
基地局と交換局との間の通信が良好に実行できなくなる場合として、次の4つの障害の種類が考えられる。(1)基地局の交換局側接続点(網側通信部、交換局側インタフェース)の故障による障害、(2)基地局及び交換局間の接続経路の故障による障害、(3)交換局の基地局側接続点(基地局側インタフェース)の故障による障害、及び(4)交換局自体の故障による障害。本実施例は、これらの障害の何れに対しても対応可能である。基地局と交換局との間の通信が良好に実行可能である場合とは、これらの障害が発生していない状態である。
【0026】
なお、図3では1つの基地局と1つの交換局との間が1本の線で接続されているように示されているが、図3は論理的な接続関係を示しているにすぎず、物理的な接続状態が反映されているとは限らない。例えば、1つの基地局と1つの交換局との間が物理的には2つの経路で冗長的に接続されていてもよい。例えば、第1の交換局#1及び第1の基地局#1が、有線による通信経路(例えば、IPリンク)と無線による通信経路(例えば、マイクロ波リンク)とにより二重に接続されていてもよい。二重に接続されていた場合において、第1の基地局#1と第1の交換局#1との間の通信が良好に実行できない場合とは、2つの通信経路の何れによっても通信できない状態を言う。基地局の交換局側インタフェース機能を具備するカード、あるいは交換局の基地局側インタフェースを具備するカードが冗長構成である場合、冗長構成の両カードが障害時に第1の基地局#1と第1の交換局#1との間の通信が良好に実行できない状態となる。
【0027】
動作説明の前提として、第1の基地局#1は、当初、第1及び第2の交換局双方と良好に通信可能であり、状態情報:(状態1,状態2)=(アクティブ,アクティブ)を少なくとも1つ以上の共通制御CHで報知しているものとする。この報知信号を受信した第1の移動局#1は第1の交換局#1に対して位置登録を行っている。また、この報知信号を受信した第2の移動局#2は第2の交換局#2に対して位置登録を行っている。同様に、第2の基地局#2は、当初、第1及び第2の交換局双方と良好に通信可能であり、状態情報(状態1,状態2)=(アクティブ,アクティブ)を報知している。この報知信号を受信した第3の移動局#3は第1の交換局#1に対して位置登録を行っている。また、この報知信号を受信した第4の移動局#4は第2の交換局#2に対して位置登録を行っている。
【0028】
次に、第1の基地局#1が第1の交換局#1とも第2の交換局#2とも良好に通信できなくなったとする。例えば、第1及び第2の交換局双方に対する第1の基地局#1の交換局側インタフェースが災害により故障したような場合である。この場合、第1の基地局#1は、移動局への及び移動局からの通信信号を中継できないので、規制が行われることを示す報知信号を送信する又は制御信号の送信を停止(停波)することになる。従来は、規制をかける又は停波することとは別に、基地局は、何れの交換局とも通信できなくなった場合に、その旨を示す状態情報を報知する。具体的には、状態情報(状態1,状態2)は、第1の交換局#1と通信できなくなったこと、及び第2の交換局#1と通信できなくなったことを示すように、
(アクティブ,アクティブ)から
(インアクティブ,インアクティブ)
に変更され、報知されていた。その後、第1の基地局#1は規制をかける又は停波する。その結果、第1の移動局#1は移行可能な基地局#2に移行し、第1又は第2の交換局#1、#2に対して位置登録をやり直す。第2の移動局#2も隣接する基地局#2に移行し、第1又は第2の交換局#1、#2に対して位置登録をやり直す。その結果、第2の基地局#2において、位置登録に関するアクセストラフィックの著しい増加を招くおそれがある。
【0029】
ところで、第1及び第2の移動局が第2の基地局#2を通じて第1及び第2の交換局に対してそれぞれ位置登録を行った場合、第1の交換局#1に第1の移動局の加入者情報が登録され、第1の交換局#1及び第1の移動局#1の間に論理パスが設定される。しかしながら、第1の交換局#1に第1の移動局の加入者情報を登録することや、第1の交換局#1及び第1の移動局#1の間に論理パスを設定することは、第1の移動局#1が第1の基地局#1を通じて(第2の基地局#2に移行する前に)行っていた内容と同じである。また、第2の交換局#2に第2移動局の加入者情報を登録することや、第2の交換局#2及び第2の移動局#2の間に論理パスを設定することは、第2の移動局#2が第1の基地局#1を通じて(第2の基地局#2に移行する前に)行っていた内容と同じである。
【0030】
本実施例はこの点に着目し、第1及び第2の交換局になされている位置登録の状態を不必要に解除せず、むしろ可能な限り維持することで、移行先基地局(上記の例では第2の基地局)におけるアクセストラフィックの増加を効果的に抑制する。具体的には、第1の基地局#1が第1の交換局#1とも第2の交換局#2とも良好に通信できなくなった場合であっても、第1の基地局#1は、
(インアクティブ,インアクティブ)
という状態情報を報知するのではなく、敢えて、
(アクティブ,アクティブ)
という状態情報を報知する。第1の交換局#1との通信状態が「アクティブ」であるので、第1の移動局#1は位置登録をやり直そうとはしない。ただし、第1の基地局#1は規制を報知する又は停波するので、以後、第1の移動局#1は第2の基地局#2を介して通信を行うことになる。第1の移動局#1は移行先の第2の基地局#2において、無駄な位置登録をすることなく、既になされている位置登録に基づいて、通信を実行できる。第1の基地局#1が報知する状態情報では、第2の交換局#2との通信状態も「アクティブ」なので、第2の移動局#2も位置登録をやり直そうとはしない。ただし、第1の基地局#1は規制を報知する又は停波するので、以後、第2の移動局#2は第2の基地局#2を介して通信を行うことになる。第2の移動局#2も移行先の第2の基地局#2において、無駄な位置登録をすることなく、既になされている位置登録に基づいて、速やかに通信を実行できる。
【0031】
<<2.2 第1の動作例の詳細>>
図4は図3を参照しながら説明した第1の動作例を詳細に示す動作シーケンスである。図示の簡明化のため、第3及び4の移動局#3、#4は図示されていないが、実際には第2の基地局#2との通信エリアに在圏している。
【0032】
ステップS401、S403において、第1の基地局#1は、第1及び第2の交換局#1、#2各々と良好に通信できることを示す状態情報(状態1,状態2)=(アクティブ,アクティブ)を報知情報として少なくとも1つ以上の共通制御CHを通じて配下の移動局に通知する。説明の簡明化のため、第1の基地局#1の配下に第1及び第2の移動局#1、#2しか存在していないものとするが、移動局数は任意である。第1及び第2の移動局#1、#2は未だ位置登録を行っていないものとする。例えば、第1及び第2の移動局#1、#2は電源を投入したばかりであるとする。あるいは第1及び第2の移動局#1、#2は圏外から圏内に復帰したばかりであるとしてもよい。
【0033】
ステップS405において、第1の移動局#1は、共通制御チャネル(共通制御CH)を用いて第1の基地局#1と通信し、ステップS407において、個別チャネル(個別CH)による通信リンクを確立する。
【0034】
ステップS409において、第1の移動局#1は、状態情報(アクティブ,アクティブ)に基づいて、第1の交換局#1に位置登録(アタッチ)することを決定し、第1の交換局#1に対して位置登録を行う。具体的には、第1の移動局#1のユーザの加入者情報が第1の交換局#1に登録され、第1の移動局#1及び第1の交換局#1の間の論理パスが確立される。
【0035】
ステップS411において、第2の移動局#2は、共通制御チャネル(共通制御CH)を用いて第1の基地局#1と通信し、ステップS413において、個別チャネル(個別CH)による通信リンクを確立する。
【0036】
ステップS415において、第2の移動局#2は、状態情報(アクティブ,アクティブ)に基づいて、第2の交換局#2に位置登録することを決定し、第2の交換局#2に対して位置登録を行う。具体的には、第2の移動局#2のユーザの加入者情報が第2の交換局#2に登録され、第2の移動局#2及び第2の交換局#2の間の論理パスが確立される。
【0037】
これにより、第1及び第2の移動局#1、#2はそれぞれ第1及び第2の交換局#1、#2を通じて通信を行うことができる。
【0038】
ステップS417において、第1の基地局#1は、第1及び第2の交換局#1、#2の双方とも通信できなくなったとする。一例として、第1の基地局#1の交換局側インタフェースが故障した場合に、通信できなくなる現象が同時に発生する。
【0039】
従来技術の場合、第1の基地局#1は、第1及び第2の交換局#1、#2双方との通信が良好に実行できないことを示す状態情報(インアクティブ,インアクティブ)を報知する。しかしながら実施例の場合、第1の基地局#1は、ステップS419、S421において、
(インアクティブ,インアクティブ)
という状態情報を報知するのではなく、敢えて、
(アクティブ,アクティブ)
という状態情報を報知する。あるいは、ステップS417の故障発生より前の状態情報(アクティブ,アクティブ)から変化させない。
【0040】
ステップS423、S425において、第1の基地局#1は、移動局の通信を受け付けることができないので、故障による規制(故障規制)が行われていることを示す報知情報を報知する。この報知情報を受信した移動局は、発信しても規制により拒否されてしまうので、以後の通信は別の基地局を通じて行う必要があることを知る。目下の例の場合、第1及び第2の移動局#1、#2は第2の基地局#2を通じて通信を行うこととなる。
【0041】
ステップS427において、第1の移動局#1が第2の基地局#2に遷移し在圏し、以後の通信に備える。
【0042】
ステップS429において、第2の移動局#2が第2の基地局#2に遷移し在圏し、以後の通信に備える。
【0043】
本動作例の場合、ステップS419、S421で報知される情報の内容(状態情報)は、ステップS401、S403において報知される情報と同じ内容である。このため、第1及び第2の移動局#1、#2は、位置登録をやり直すべきであるとは判断しない。この点、従来技術と大きく異なる。その結果、第1及び第2の移動局#1、#2は、第2の基地局#2を介して通信することになったとしても、位置登録をやり直すことはなく、即座にサービス利用が可能である。また、ステップS409、S415において行われた位置登録は、第1及び第2の交換局#1、#2で有効であるため、位置登録をやり直す必要がない。第1及び第2の移動局#1、#2が第2の基地局#2を通じて位置登録をやり直さないことは、図4において破線で示されている。そのため、第2の基地局#2の共通制御チャネル利用が瞬時的に発生しないため、第2の基地局#2の通信エリアで在圏している第3及び4の移動局#3、#4の共通制御チャネル利用やサービス利用の影響は殆どない。
【0044】
図5は、従来の動作例を示す動作シーケンスであり、図4に示す実施例の動作例と対比するためのものである。図5において、図4に示すものと同じ処理については同じ参照番号が付されている。図5に示す従来例の場合、図4のステップS419、S421の代わりに、ステップS501、S503が行われ、第1の基地局#1は、第1及び第2の交換局#1、#2双方との通信が良好に実行できないことを示す状態情報(インアクティブ,インアクティブ)を報知する。その結果、ステップS505、S507において、第1及び第2の移動局#1、#2は位置登録をやり直す必要があると判断する。なお、説明及び図示の便宜上、ステップS505とステップS507が同時に行われているように示されているが、実際には同時でなくても良い。ステップS427、S429において第1及び第2の移動局#1、#2は、第2の基地局#2に遷移し在圏し、以後の通信に備える。そして、本実施例とは異なり、ステップS509、S511において、第1及び第2の移動局#1、#2はそれぞれ第2の基地局#2における共通制御チャネル(共通制御CH)を用いて位置登録を開始する。その結果、ステップS409、S415において行われたのと同様な位置登録の処理が無駄にやり直され、共通制御チャネルのリソースを無駄に消費してしまうことになる。また、第1の基地局#1が停波することによって、第1及び第2の移動局#1、#2が第2の基地局#2が移行した場合、ステップS509、S511での共通制御チャネル(共通制御CH)利用は、ほぼ同時に実施されるので、第1の基地局#1で通信していた移動機が多い場合、第2の基地局#2の共通制御チャネルでのアクセストラフィックの輻輳が発生する。その結果、第2の基地局#2の通信エリアで在圏している第3及び4の移動局#3、#4は、第2の基地局#2の共通制御チャネル利用が競合・輻輳するため、サービス影響を伴う場合がある。
【0045】
第1の動作例では、ステップS419、S421において本来の状態情報の代わりに、擬似的な状態情報(アクティブ,アクティブ)を報知しているので、第1及び第2の移動局#1、#2が無駄に位置登録を行ってしまうことを効果的に防ぐことができる。すなわち、ステップS419、S421において、第1及び第2の交換局#2について「アクティブ」であることは、事実に即したものではなく、不要な位置登録を防止するための擬似的なものである。すなわち、第1の動作例では、第1の基地局#1が、第1及び第2の交換局#1、#2の双方と通信できなくなる直前に報知していた状態情報(アクティブ,アクティブ)を、第1及び第2の交換局#1、#2の双方と通信できなくなった後も、引き続き報知する。これにより、第2の基地局#2を介して通信を行うこととなった第1及び第2の移動局#1、#2が無駄な位置登録を行って共通制御チャネルを浪費してしまうことを効果的に防止できる。
【0046】
なお、説明及び図示の便宜上、ステップS401の後にステップS403が行われているように示されているが、実際には第1の基地局#1から少なくとも1つ以上の共通制御CHを通じて第1及び第2の移動局#1、#2に報知信号が送信されている。同様に、ステップS419の後にステップS421が行われているように示されているが、実際には第1の基地局#1から少なくとも1つ以上の共通制御CHを通じて第1及び第2の移動局#1、#2に報知信号が送信されている。さらに、ステップS423の後にステップS425が行われているように示されているが、実際には第1の基地局#1から少なくとも1つ以上の共通制御CHを通じて第1及び第2の移動局#1、#2に報知信号が送信されている。ステップS405、S407、S409の後に、ステップS411、S413、S415が行われるように示されているが、ステップS405−S409の処理は、ステップS411−S415の処理の全部又は一部と同時に行われてもよいし、ステップS411−S415の処理の後に行われてもよい。
【0047】
<3.第2の動作例>
<<3.1 概要>>
第1の動作例の場合、第1の基地局#1は、同じタイミングで、第1及び第2の交換局#1、#2と通信できなくなっていた。しかしながら、本実施例はこのような形態に限定されない。双方の交換局と通信できていた後に、一方の交換局と通信できなくなり、その後に双方の交換局と通信できなくなる場合が考えられる。例えば、基地局及び交換局間の伝送路障害の場合、そのような状況が生じるおそれがある。第2の動作例はこのように伝送路障害の発生時刻が異なる場合に関連する。
【0048】
図6は、第2の動作例の概要を説明するための図である。第1及び第2の交換局#1、#2、第1及び第2の基地局#1、#2、第1−第4の移動局#1−#4については図3に示すものと同じである。
【0049】
第2の動作例の場合も、当初は、第1の基地局#1は、第1及び第2の交換局#1、#2の双方と良好に通信できている。したがって、(アクティブ,アクティブ)を示す少なくとも1つ以上の共通制御チャネルの報知情報が報知される。次に、第1の基地局#1と第1の交換局#1との間の伝送路に障害が生じ、第1の基地局#1は第1の交換局#1と通信できなくなってしまう。その結果、(インアクティブ,アクティブ)を示す報知情報が報知される。ここで、第1の基地局#1は第2の交換局#2と良好に通信できているため、第1の基地局#1との通信エリアに在圏通信している移動機は第2の基地局#2へ移行することなくサービス利用が可能である。このような場合に(インアクティブ,アクティブ)を示す報知情報が報知される点は従来と同じである。その結果、第1の交換局#1に位置登録している移動局#1は、アクティブである第2の交換局#2に対して位置登録を行う。
【0050】
次に、第1の基地局#1と第2の交換局#2との間の伝送路にも障害が生じ、第1の基地局#1は第1及び第2の交換局#1、#2双方と通信できなくなってしまう。従来技術の場合、(インアクティブ,インアクティブ)を示す報知情報が報知され、第1の基地局#1の通信エリアに在圏している全ての移動機は位置登録のやり直しの手順が引き起こされる。しかしながら、本実施例の第2の動作例の場合、第1の基地局#1が第1及び第2の交換局#1、#2双方と通信できなくなってしまう直前に報知していた情報(インアクティブ,アクティブ)が、引き続き移動局に報知される。第2の交換局#2については「アクティブ」なので、第2の交換局に位置登録している移動局は位置登録が必要であるとは判断しない。目下の例の場合、第1及び第2の移動局#1、#2の双方とも位置登録が必要であるとは判断しない。
【0051】
第1の基地局#1が第1及び第2の交換局#1、#2双方と通信できなくなると、第1の基地局#1は移動局の通信を受け付けることができないので、規制を示す報知情報を送信する又は停波する。その結果、第1及び第2の移動局#1、#2は第2の基地局#2を通じて通信を行うことになる。この段階において、第1及び第2の移動局#1、#2はいずれも第2の交換局#2に位置登録している。第1及び第2の移動局#1、#2は、第2の基地局#2を通じて位置登録をやり直す必要がなく、即座にサービス利用が可能である点は、第1の動作例の場合と同じである。また、第2の基地局#2の共通制御チャネル利用が位置登録で瞬時的に発生しないため、第2の基地局#2の通信エリアで在圏している第3及び4の移動局#3、#4の共通制御チャネル利用やサービス利用への影響は殆どない点も第1の動作例の場合と同じである
<<3.2 第2の動作例の詳細>>
図7は図6を参照しながら説明した第2の動作例を詳細に示す動作シーケンスである。図示の簡明化のため、第3及び4の移動局#3、#4は図示されていないが、実際には第2の基地局#2との通信エリアに在圏している。図7に示す処理の内、図4を参照しながら説明したものと同じものについては、同じ参照番号が付されている。
【0052】
ステップS401、S403において、第1の基地局#1は、第1及び第2の交換局#1、#2各々と良好に通信できることを示す状態情報(状態1,状態2)=(アクティブ,アクティブ)を少なくとも1つ以上の共通制御チャネルの報知情報として配下の移動局に通知する。
【0053】
ステップS405において、第1の移動局#1は、共通制御チャネル(共通制御CH)を用いて第1の基地局#1と通信し、ステップS407において、個別チャネル(個別CH)による通信リンクを確立する。
【0054】
ステップS409において、第1の移動局#1は、状態情報(アクティブ,アクティブ)に基づいて、第1の交換局#1に位置登録することを決定し、第1の交換局#1に対して位置登録を行う。
【0055】
ステップS411において、第2の移動局#2は、共通制御チャネル(共通制御CH)を用いて第1の基地局#1と通信し、ステップS413において、個別チャネル(個別CH)による通信リンクを確立する。
【0056】
ステップS415において、第2の移動局#2は、状態情報(アクティブ,アクティブ)に基づいて、第2の交換局#2に位置登録することを決定し、第2の交換局#2に対して位置登録を行う。
【0057】
ステップS701において、第1の基地局#1及び第1の交換局#1の間に伝送路障害が発生し、第1の基地局#1は第1の交換局#1と通信できなくなる。
【0058】
ステップS703、S705において、第1の基地局#1は、第1の交換局#1とは良好に通信できないが、第2の交換局#2とは良好に通信できることを示す状態情報(状態1,状態2)=(インアクティブ,アクティブ)を報知情報として配下の移動局に通知する。
【0059】
ステップS707において、第1の交換局#1に位置登録していた第1の移動局#1は、「インアクティブ」を確認すると、位置登録をやり直す必要があると判断する。
【0060】
ステップS709において、第1の移動局#1は、共通制御チャネル(共通制御CH)を用いて第1の基地局#1と通信し、ステップS711において、個別チャネル(個別CH)による通信リンクを確立する。
【0061】
ステップS713において、第1の移動局#1は、状態情報(インアクティブ,アクティブ)に基づいて、第2の交換局#2に位置登録することを決定し、第2の交換局#2に対して位置登録を行う。
【0062】
ステップS715において、第1の基地局#1及び第2の交換局#2の間にも伝送路障害が発生し、第1の基地局#1は、第1及び第2の交換局#1、#2双方とも通信できなくなる。
【0063】
ステップS717、S719において、第1の基地局#1は、状態情報(インアクティブ,アクティブ)を報知情報として配下の移動局に報知する。あるいは、ステップS715の故障発生より前の状態情報(インアクティブ,アクティブ)から変化させない。この場合、第1の交換局#1と通信できないことを示す「インアクティブ」は、事実に即したものである。しかしながら、第2の交換局#2について「アクティブ」であることは、事実に即したものではなく、不要な位置登録を防止するための擬似的なものである。
【0064】
ステップS721において、第1の移動局#1は、移動局の通信を受け付けることができないので、報知信号の送信を停止(停波)する。目下の例の場合、第1の基地局#1自体は故障していないので、故障規制は報知されない。
【0065】
ステップS427において、第1の移動局#1が第2の基地局#2に遷移し在圏し、以後の通信に備える。
【0066】
ステップS429において、第2の移動局#2が第2の基地局#2に遷移し在圏し、以後の通信に備える。
【0067】
本動作例の場合、ステップS717、S719において擬似的なアクティブを含む報知情報(インアクティブ,アクティブ)が報知される。このため、第1及び第2の移動局#1、#2は、位置登録をやり直すべきであるとは判断しない。その結果、第1及び第2の移動局#1、#2は、第2の基地局#2を介して通信することになったとしても、位置登録をやり直すことはなく、即座にサービス利用が可能である。また、ステップS409、S713において行われた位置登録は、第2の交換局#2で有効であるため、位置登録をやり直す必要もない。第1及び第2の移動局#1、#2が第2の基地局#2を通じて位置登録をやり直さないことは、図7において破線で示されている。
【0068】
第2の動作例においては、第1の基地局#1が、第1及び第2の交換局#1、#2の双方と通信できなくなる直前に報知していた状態情報(インアクティブ,アクティブ)を、第1及び第2の交換局#1、#2の双方と通信できなくなった後も、引き続き報知する。これにより、第2の基地局#2を介して通信を行うこととなった第1及び第2の移動局#1、#2が無駄な位置登録を行って共通制御チャネルを浪費してしまうことを効果的に防止できる。また、第2の基地局#2の共通制御チャネル利用が瞬時的に発生しないため、第2の基地局#2の通信エリアで在圏している第3及び4の移動局#3、#4の共通制御チャネル利用やサービス利用への影響は殆どない。
【0069】
<4.第3の動作例>
第1の動作例において第1の基地局#1が故障規制を報知するステップS423、S425(図4)、及び第2の動作例において第1の基地局#1が停波するステップS721(図7)の近辺において、伝送路障害が復旧する可能性がある。例えば、図7のステップS715の伝送路障害が、マイクロ波リンクに対する伝送路障害であった場合、無線伝搬状況は変わりやすいので、直ぐに復旧する場合がある。このため、ステップS721のような停波を行うタイミングは、バタツキを防止する観点からは、伝送路障害が確実であると判定された後であることが望ましい。
【0070】
図8は、第3の動作例の概要を説明するための図である。第1及び第2の交換局#1、#2、第1及び第2の基地局#1、#2、第1−第4の移動局#1−#4については図3に示すものと同じである。
【0071】
第3の動作例の場合も、当初は、第1の基地局#1は、第1及び第2の交換局#1、#2の双方と良好に通信できている。したがって、(アクティブ,アクティブ)を示す報知情報が少なくとも1つ以上の共通制御チャネルで報知される。次に、第1の基地局#1と第1の交換局#1との間の伝送路に障害が生じ、第1の基地局#1は第1の交換局#1と通信できなくなってしまう。その結果、(インアクティブ,アクティブ)を示す報知情報が報知される。その結果、第1の交換局#1に位置登録している移動局#1は、アクティブである第2の交換局#2に対して位置登録を行う。
【0072】
次に、第1の基地局#1と第2の交換局#2との間の伝送路にも障害が生じ、第1の基地局#1は第1及び第2の交換局#1、#2双方と通信できなくなってしまう。本実施例の第3の動作例の場合、第1の基地局#1が第1及び第2の交換局#1、#2双方と通信できなくなってしまう直前に報知していた情報(インアクティブ,アクティブ)が、引き続き移動局に報知される。第2の交換局#2については「アクティブ」なので、第2の交換局に位置登録している移動局は位置登録が必要であるとは判断しない。目下の例の場合、第1及び第2の移動局#1、#2の双方とも位置登録が必要であるとは判断しない。
【0073】
第1の基地局#1が第1及び第2の交換局#1、#2双方と通信できなくなると、第1の基地局#1は移動局の通信を受け付けることができないが、速やかには停波しない。その後、第1の基地局#1と第2の交換局#2との間の伝送路の障害が復旧する。したがって、状態情報(インアクティブ,アクティブ)が、引き続き移動局に報知されつづける。復旧により、第1の基地局#1は停波することなく、動作し続ける。従来技術の場合、第1の基地局#1において、第1,2の移動局#1、#2から第2の交換局#2に対する位置登録が発生していたが、本動作例ではそのような無駄な位置登録は不要である。
【0074】
図9は図8を参照しながら説明した第3の動作例を詳細に示す動作シーケンスである。図示の簡明化のため、第3及び4の移動局#3、#4は図示されていないが、実際には第2の基地局#2との通信エリアに在圏している。図9に示す処理の内、図7を参照しながら説明したものと同じものについては、同じ参照番号が付されている。
【0075】
概して、ステップS401からステップS719までは図7におけるものと同様である。本動作例の場合、第1の基地局#1は速やかには停波を行わず、状態情報(インアクティブ,アクティブ)を報知する。ステップS901において、第1の基地局#1と第2の交換局#2との間の伝送路の障害が復旧する。これにより、第1の基地局#1は停波することなく、動作し続ける。
【0076】
<5.変形動作例>
次に、第2ないし第3の動作例では、第1の基地局#1(移行元基地局)が、擬似的なアクティブを含む状態情報を報知することで、第2の基地局#2(移行先基地局)において、第1及び第2の移動局#1、#2が無駄な位置登録をしないようにしていた。しかしながら、第1及び第2の移動局#1、#2が、そのような報知情報を適切に受信する前、あるいはステップS713の位置登録が完了する前に、第2の基地局#2を通じて通信しようとした場合、第2の基地局#2における共通制御チャネルが過剰に使用されてしまうおそれがある。このような観点からは、第2の基地局#2において、位置登録のために共通制御チャネルを利用すること(アクセストラフィック)を規制又は禁止することが考えられる。そのような規制を行う方法として、少なくとも以下の3種類の方法が考えられる。
【0077】
(1)第1の方法は、第1及び第2の交換局#1、#2と適切に通信できるか否かの情報を、第1の基地局#1及び第2の基地局#2が互いにやりとりすることである。これにより、例えば、第2の基地局#2は、第1の基地局#1の側からどの程度の移動局が移行してくるか、位置登録の要求がどの程度増えるか等を予測することができる。第2の基地局#2は、予測した結果に応じて(例えば、予測した増加量が閾値を越えた場合)、第1の基地局#1の側からの移動局をどの程度規制すればよいかを適切に決定することができる。
【0078】
(2)第2の方法の場合、第1及び第2の交換局#1、#2と適切に通信できるか否かの情報が、第1及び第2の交換局#1、#2から、第1及び第2の基地局#1、#2に通知される。これにより、例えば、第2の基地局#2は、第1の基地局#1の側からどの程度の移動局が移行してくるか、位置登録の要求がどの程度増えるか等を予測することができる。第2の基地局#2は、予測した結果に応じて(例えば、予測した増加量が閾値を越えた場合)、第1の基地局#1の側からの移動局をどの程度規制すればよいかを適切に決定することができる。
【0079】
(3)第3の方法の場合、第2の基地局#2は、輻輳度を自ら計測し、輻輳度に応じて(例えば、輻輳度が閾値を超えていた場合)、規制をかける。輻輳度は、当該技術分野において使用可能な適切な如何なる方法で測定されてもよい。一例として、CPU使用率にしたがって、輻輳度が決定されてもよい。別の例として、基地局が単位時間当たりに受信した共通制御チャネルの受信レベルの積分値にしたがって、輻輳度が決定されてもよい。さらに別の例として、統計データに輻輳度が決定されてもよい。例えば、正月の年明けのような特定の日時にトラフィックが急増することが統計的に既知であった場合、そのような統計データにしがたって輻輳度が決定されてもよい。
【0080】
<6.基地局>
図10は、実施例において使用可能な基地局の機能ブロック図を示す。図示の基地局は、実施例における第1及び第2の基地局#1、#2として使用することが可能である。図10には基地局に備わる様々な機能部又は処理部のうち実施例に特に関連するものが示されている。基地局は、無線受信部101、呼処理制御部103、網側通信部105、伝送路信号処理部107、保守管理機能部109、制御信号生成部111及び無線送信部113を少なくとも有する。
【0081】
無線受信部101は、移動局からの無線信号を受信する。移動局からの無線信号は、衛星通信システムの場合は衛星から受信され、衛星通信システムでない移動通信システムの場合は移動局から直接受信される。
【0082】
呼処理制御部103は、呼処理を行う。
【0083】
網側通信部105は、1つ以上の交換局との接続インタフェースとして機能する。接続インタフェースは適宜冗長化されていてもよい。
【0084】
伝送路信号処理部107は、1つ以上の交換局との間でやり取りされる信号の生成及び処理を行う。
【0085】
保守管理機能部109は、1つ以上の交換局各々との接続状態を保守及び管理する。例えば、網側通信部105を通じて1つ以上の交換局各々との間で伝送路信号処理部107において生成されたヘルスチェック信号を網側通信部105を通じて送信し、応答信号を確認することで、基地局と交換局が通信できるか否か(接続の正常性)を監視することができる。 制御信号生成部111は、報知情報のような制御信号を生成する。特に、制御信号生成部111は、1つ以上の交換局各々と適切に通信できるか否かを示す状態情報を報知情報として生成する。この場合において、基地局が全ての交換局と通信できなくなった場合、そうなる直前に報知していた報知情報が、引き続き報知されるように報知情報が生成又は設定される。
【0086】
無線送信部113は、移動局へ通知する制御信号、パイロット信号、データ信号等を送信する。
【0087】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。例えば、本発明は、基地局が交換局と適切に通信できるか否かを報知している適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。ソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、EPROM、EEPROM、レジスタ、ハードディスク(HDD)、リムーバブルディスク、CD−ROM、データベース、サーバその他の適切な如何なる記憶媒体に用意されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【符号の説明】
【0088】
101 無線受信部
103 呼処理制御部
105 網側通信部
107 伝送路信号処理部
109 保守管理機能部
111 制御信号生成部
113 無線送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の交換局各々と通信する網側通信部と、
前記網側通信部が前記複数の交換局の内の少なくとも1つの交換局と通信することが可能である第1の通信状態において、通信が可能であることに対応するアクティブ状態又は通信が不可能であることに対応するインアクティブ状態が、前記複数の交換局の各々について示されている制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記制御信号を1つ以上の移動局に送信する無線送信部と
を有し、前記複数の交換局と前記網側通信部との間の通信状態が、前記第1の通信状態から、前記網側通信部が前記複数の交換局の内の何れの交換局とも通信できない第2の通信状態に変化した場合において、前記制御信号生成部は、前記第1の通信状態においてアクティブ状態が示されていた少なくとも1つの交換局についてアクティブ状態を示す制御信号を引き続き生成し、該制御信号を前記無線送信部が前記1つ以上の移動局に送信する、基地局。
【請求項2】
前記複数の交換局と前記網側通信部との間の通信状態が、前記第1の通信状態から前記第2の通信状態に変化した後に、規制が行われることを示す制御信号を前記制御信号生成部が生成する、又は前記無線送信部による送信が停止される、請求項1記載の基地局。
【請求項3】
前記網側通信部が、少なくとも前記インアクティブ状態の情報を当該基地局とは別の基地局に通知する、請求項1又は2に記載の基地局。
【請求項4】
基地局が複数の交換局の内の少なくとも1つの交換局と通信することが可能である第1の通信状態において、通信が可能であることに対応するアクティブ状態又は通信が不可能であることに対応するインアクティブ状態が、前記複数の交換局の各々について示されている制御信号を、前記基地局により生成し、該制御信号を1つ以上の移動局に送信する無線送信ステップと
前記基地局と前記複数の交換局との間の通信状態が、前記第1の通信状態から、前記基地局が前記複数の交換局の内の何れの交換局とも通信できない第2の通信状態に変化した場合、前記第1の通信状態においてアクティブ状態が示されていた少なくとも1つの交換局についてアクティブ状態を示す制御信号を引き続き生成し、該制御信号を前記1つ以上の移動局に送信するステップと
を有する制御信号送信方法。
【請求項5】
複数の交換局と、
前記複数の交換局の内の少なくとも1つの交換局と通信することが可能である第1の通信状態において、通信が可能であることに対応するアクティブ状態又は通信が不可能であることに対応するインアクティブ状態が、前記複数の交換局の各々について示されている制御信号を生成し、該制御信号を1つ以上の移動局に送信する移行元基地局と、
前記複数の交換局及び前記移行元基地局と通信することが可能な移行先基地局と
を有し、前記移行元基地局と前記複数の交換局との間の通信状態が、前記第1の通信状態から、前記複数の交換局の内の何れの交換局とも通信できない第2の通信状態に変化した場合において、前記移行元基地局は、前記第1の通信状態においてアクティブ状態が示されていた少なくとも1つの交換局についてアクティブ状態を示す制御信号を引き続き生成し、該制御信号を前記1つ以上の移動局に送信し、
前記移行先基地局は、少なくとも前記インアクティブ状態の情報を前記移行元基地局から取得し、前記移行元基地局が通信を規制した場合又は停波した場合に、該移行先基地局における位置登録のためのトラフィックが、どの程度増加するかを予測し、閾値以上増加することが予測される場合、前記移行先基地局は、位置登録のためのトラフィックを規制するための制御信号を送信する、通信システム。
【請求項6】
複数の交換局と、
前記複数の交換局の内の少なくとも1つの交換局と通信することが可能である第1の通信状態において、通信が可能であることに対応するアクティブ状態又は通信が不可能であることに対応するインアクティブ状態が、前記複数の交換局の各々について示されている制御信号を生成し、該制御信号を1つ以上の移動局に送信する移行元基地局と、
前記複数の交換局及び前記移行元基地局と通信することが可能な移行先基地局と
を有し、前記移行元基地局と前記複数の交換局との間の通信状態が、前記第1の通信状態から、前記複数の交換局の内の何れの交換局とも通信できない第2の通信状態に変化した場合において、前記移行元基地局は、前記第1の通信状態においてアクティブ状態が示されていた少なくとも1つの交換局についてアクティブ状態を示す制御信号を引き続き生成し、該制御信号を前記1つ以上の移動局に送信し、
前記移行先基地局は、前記1つ以上の移動局各々がどの交換局に位置登録しているかを示す情報を前記複数の交換局から取得し、前記移行元基地局が通信を規制した場合又は停波した場合に、該移行先基地局における位置登録のためのトラフィックが、どの程度増加するかを予測し、閾値以上増加することが予測される場合、前記移行先基地局は、位置登録のためのトラフィックを規制するための制御信号を送信する、通信システム。
【請求項7】
複数の交換局と、
前記複数の交換局の内の少なくとも1つの交換局と通信することが可能である第1の通信状態において、通信が可能であることに対応するアクティブ状態又は通信が不可能であることに対応するインアクティブ状態が、前記複数の交換局の各々について示されている制御信号を生成し、該制御信号を1つ以上の移動局に送信する移行元基地局と、
前記複数の交換局及び前記移行元基地局と通信することが可能な移行先基地局と
を有し、前記移行元基地局と前記複数の交換局との間の通信状態が、前記第1の通信状態から、前記複数の交換局の内の何れの交換局とも通信できない第2の通信状態に変化した場合において、前記移行元基地局は、前記第1の通信状態においてアクティブ状態が示されていた少なくとも1つの交換局についてアクティブ状態を示す制御信号を引き続き生成し、該制御信号を前記1つ以上の移動局に送信し、
前記移行先基地局は、該移行先基地局の輻輳レベルを監視し、該輻輳レベルが閾値以上になった場合、位置登録のためのトラフィックを規制するための制御信号を送信する、通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−256979(P2012−256979A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127508(P2011−127508)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】