基地局から無線端末へ計画的に通信サービスを提供する無線通信システム及び方法
【課題】稼働停止の基地局のカバーエリアを補償し、無線端末に通信機会を提供すると共に、通信要求の集中による基地局の輻輳を和らげ、且つ、無線端末の電池切れを少なくすることできる無線通信システム及び方法を提供する。
【解決手段】基地局は、無線端末における無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を作成し、そのスケジュール情報を含む同報メッセージを無線端末へ同報送信する。基地局は、スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射する。無線端末は、同報メッセージのスケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する。これによって、基地局の電波の放射方向及び/又は放射角度が当該無線端末へ向くタイミングと、無線端末の無線通信部に電源供給をオンにするタイミングとを同期させる。
【解決手段】基地局は、無線端末における無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を作成し、そのスケジュール情報を含む同報メッセージを無線端末へ同報送信する。基地局は、スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射する。無線端末は、同報メッセージのスケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する。これによって、基地局の電波の放射方向及び/又は放射角度が当該無線端末へ向くタイミングと、無線端末の無線通信部に電源供給をオンにするタイミングとを同期させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局及び無線端末を有する無線通信システムについて、基地局の障害時に適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、複数の基地局と複数の無線端末とが分散配置された無線通信網におけるシステム構成図である。
【0003】
図1によれは、分散配置された3つの基地局1a〜1cは、多数の無線端末2a〜2eが位置する広いエリアをカバーしている。複数のアンテナを備えた基地局1から放射される電波は、一般に無指向性であって(例えばMIMO(Multiple Input Multiple Output))、全方位に位置する無線端末2へ到達する。
【0004】
図2は、一部の基地局に障害が発生した場合における無線通信網のシステム構成図である。
【0005】
図2によれば、2つの基地局1b及び1cに、障害が発生している。基地局1b及び1cの通信圏内のみに位置する無線端末は、通信できない。基地局の障害としては、故障のような小規模なものに限られず、災害のような大規模なものも含まれる。特に、大災害時における基地局の稼働停止は、通信インフラの停止につながり、社会全体に対して被害の増大を招く。
【0006】
一部の基地局に障害が発生した場合、他の基地局及び無線端末には、以下のような4つの問題が生じる。
[問題1]通信圏外となった無線端末は、通信できない。
図2によれば、基地局1b及び1cが障害を発生することによって、無線端末d及びeは、通信できない。
[問題2]通信圏外となった無線端末は、基地局捕捉処理(サーチ処理)を繰り返す。そのために、通信圏内にある無線端末の電力消費量よりも、通信圏外の無線端末の電力消費量が大きくなり、電池切れを起こしやすくなる。
図2によれば、無線端末d及びeは、電池切れを起こしやすくなる。
[問題3]稼働中の基地局は、多数の無線端末からの通信要求が集中し、輻輳状態に陥りやすくなる。
図2によれば、基地局1aは、通信要求が集中することによって、輻輳状態に陥りやすくなる。
[問題4]災害時には、ユーザは他の人と連絡を取るために、無線端末を用いて発呼を実行するが、発呼先の基地局が輻輳状態に陥っていたり、通話規制を実施して受付可能台数が制限されている場合など、基地局との接続を確立できず、結果としてユーザは発呼を繰り返すこととなる(接続リトライ)。無線端末は、輻輳状態に陥り発信規制のかかった基地局に対して発呼を繰り返すことによって、無線端末の電力消費量が大きくなり、電池切れを起こしやすくなる。災害時におけるシステム全体の発呼率は、平常時よりも急増する。
図2によれば、無線端末2a、b及びcのユーザが、何度も発呼操作を繰り返することによって、無線端末2a、b及びcの電力を無駄に消費し、電池切れを起こしやすくなる。
【0007】
従来技術によれば、複数のセクタにより構成する基地局であって、一部のセクタの無線通信部が故障した際に、他の故障していないセクタにおける無線通信部のアンテナ指向性を制御する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、隣接基地局を使用することなく、故障した無線通信部が担っていたセクタを、他の無線通信部のセクタによってカバーすることができる。
【0008】
また、複数の基地局(アクセスポイント)から構成される移動通信システム(無線LANシステム)について、ある基地局が故障した際に、それに隣接する他の基地局がアンテナ指向性を制御する技術がある(例えば特許文献2及び3参照)。この技術によれば、故障した基地局によってカバーされていたエリアが、それに隣接する他の基地局によってカバーされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−228481号公報
【特許文献2】特開2008−311815号公報
【特許文献3】特開2003−264866号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「アクティブ・アンテナ・システム」、[online]、[平成23年8月6日検索]、インターネット<URL:http://wirelesswire.jp/NSN_in_WWN/201105181206.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1〜3に記載された技術によれば、確かに、前述した[問題1]及び[問題2]を解決することはできる。即ち、稼働停止の基地局のカバーエリアを、稼働中の他の基地局がカバーすることができるからである。
【0012】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された技術によれば、前述した[問題3]及び[問題4]を解決することはできない。むしろ、稼働中の基地局には、より多くの無線端末が発呼を繰り返すことによって通信要求が集中し得ることから、一層、輻輳状態に陥りやすくなり、[問題3]及び[問題4]の課題度合いは大きくなる。
【0013】
そこで、本発明は、稼働停止の基地局のカバーエリアを補償し、無線端末に通信機会を提供すると共に、通信要求の集中による基地局の輻輳を和らげ、且つ、無線端末の電池切れを少なくすることできる無線通信システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、電波の放射方向及び/又は放射角度を可変制御できるアンテナを有する基地局と、該基地局と通信する無線通信部を有する無線端末とを有する無線通信システムにおいて、
基地局は、
無線端末における無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を作成するスケジュール情報作成手段と、
スケジュール情報を含む同報メッセージを作成し、アンテナを介して無線端末へ同報送信する同報メッセージ作成手段と、
スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射するべく、当該アンテナを制御する電波放射制御手段と
を有し、
無線端末は、
同報メッセージのスケジュール情報に基づいて制御する同報メッセージ制御手段と、
スケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する通電制御手段と
を有し、
基地局の電波の放射方向及び/又は放射角度が当該無線端末へ向くタイミングと、無線端末の無線通信部に電源供給をオンにするタイミングとを同期させることを特徴とする。
【0015】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、無線端末の通電制御手段は、無線通信手段に対する電源供給をオンにした後、所定時間経過後又は所定基地局サーチ回数経過後であっても、基地局を発見できない場合、再度、電源供給をオフにし、次回オンにするタイミングまではオフの状態を継続することも好ましい。
【0016】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、基地局の電波放射制御手段における電波の放射方向は、地表面に対する水平方向及び/又は垂直方向に制御されることも好ましい。
【0017】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、基地局のスケジュール情報作成手段は、電波の放射方向及び/又は放射角度毎に、当該電波の放射方向及び/又は放射角度のエリアに含まれる無線端末の数及び/又は通信量に応じて異なる放射方向及び/又は放射角度を、スケジュール情報に規定することも好ましい。
【0018】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、
基地局には、平常時モード及び障害時モードがあり、
スケジュール情報作成手段、同報メッセージ作成手段及び電波放射制御手段を、障害時モードでのみ実行され、
同報メッセージ作成手段は、平常時モード又は障害時モードを含む同報メッセージを、BC−SMS(BroadCast - Short Message Service)を用いて送信することも好ましい。
【0019】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、
システムは、基地局のモードを制御する制御装置を更に有し、
制御装置は、
各基地局から、障害発生の有無を表す基地局運用情報を収集し、
障害発生の基地局に隣接する基地局に対して、障害時モードを指示し、
障害復旧後、障害時モードを指示した基地局に対して、平常時モードを指示する
ことも好ましい。
【0020】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、
基地局の同報メッセージ作成手段は、同報メッセージに、無線端末を操作するユーザに対して通知すべき、当該スケジュール情報に関するテキストを更に含んでおり、
無線端末の同報メッセージ受信手段は、同報メッセージに含まれるテキストを、当該無線端末のディスプレイ部に表示するべく指示することも好ましい。
【0021】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、無線端末の通電制御部は、無線通信部に対する電源供給をオンにする際に、所定時間範囲で乱数に基づく時間だけ、ゆらぎを持って遅延することも好ましい。
【0022】
本発明によれば、電波の放射方向及び/又は放射角度を可変制御できるアンテナを有する基地局と、該基地局と通信する無線通信部を有する無線端末とを有するシステムにおける無線通信方法において、
基地局が、無線端末における無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を作成する第1のステップと、
スケジュール情報を含む同報メッセージを作成し、アンテナを介して無線端末へ同報送信する第2のステップと、
無線端末が、同報メッセージを受信し、スケジュール情報を取得する第3のステップと、
無線端末が、スケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する第4のステップと、
スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射するべく、当該アンテナを制御する第5のステップと
を有し、
基地局の電波の放射方向及び/又は放射角度が当該無線端末へ向くタイミングと、無線端末の無線通信部に電源供給をオンにするタイミングとを同期させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の無線通信システム及び方法によれば、稼働停止の基地局のカバーエリアを補償し、無線端末に通信機会を提供すると共に、通信要求の集中による基地局の輻輳を和らげ、且つ、無線端末の電池切れを少なくすることできる。特に、前述した[問題1〜4]を全て解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】複数の基地局と複数の無線端末とが分散配置された無線通信網におけるシステム構成図である。
【図2】一部の基地局に障害が発生した場合における無線通信網のシステム構成図である。
【図3】基地局からの電波の放射方向が、地表面に対して水平方向に制御される説明図である。
【図4】基地局からの電波の放射方向が、地表面に対して垂直方向に制御される説明図である。
【図5】本発明における基地局及び無線端末の機能構成図である。
【図6】本発明における基地局及び無線端末のフローチャートである。
【図7】同報メッセージを送信するための電波の放射方向を表す説明図である。
【図8】基地局から放射される電波における第1の放射方向を表す説明図である。
【図9】基地局から放射される電波における第2の放射方向を表す説明図である。
【図10】基地局から放射される電波における第3の放射方向を表す説明図である。
【図11】放射方向のエリア内に位置する無線端末の数に応じて、電波の異なる放射範囲を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
本発明は、例えば停電や災害によって基地局に障害が発生した場合であっても、稼働中の隣接基地局が、無線端末に対して計画的に通信サービスを提供することができる(SCoP(Scheduled Coverage Provision))。基地局は、「平常時モード」又は「障害時モード」として動作する。「障害時モード」とは、当該基地局に対する隣接基地局に障害が発生したことを意味する。
【0027】
基地局は、電波放射の指向性を制御可能なアンテナを有し、モードに応じてその指向性を切り替える。
平常時モード:指向性無し(無指向性)
障害時モード:指向性有り
「障害時モード」の当該基地局は、電波の指向性を絞り込むことよって、できる限り電波放射の距離を伸長する。これによって、障害を発生した基地局がカバーするエリアまで、電波を放射することができる。
【0028】
図3は、基地局からの電波の放射方向が、地表面に対して水平方向に制御される説明図である。
【0029】
図3によれば、基地局1aからの電波は、地表面に対して水平方向に6つの放射方向に区分されている。そして、基地局1aは、指向性を持つ電波を、所定の時間(例えば20分)毎に又は所定の角速度で、回転するように切り替える。これによって、特定のエリア(放射方向)内に位置する無線端末2に対してのみ、所定の時間だけ通信サービスが提供される。このとき、物理的に、放射方向にある特定のエリアにのみ通信機会を付与することができるため、同時に接続試行を行う端末数を減らすことができる([問題3、4]の解決)。
【0030】
また、図3によれば、基地局1aの周囲には、当該基地局と通信する多数の無線端末2a〜2eが存在する。ここで、無線端末2a〜2cは、基地局1aが「平常時モード」である場合、その無指向性の電波を受信できるエリアに位置している。一方で、無線端末2d及び2eは、基地局1aの「平常時モード」で電波を受信できるエリアには位置していない。勿論、無線端末2d及び2eは、障害を発生した基地局1d及び1eとも通信できない。
【0031】
ここで、基地局1aが「障害時モード」になった場合、指向性を持った電波を方向を切り替えながら放射する。即ち、図3によれば、基地局1aの放射方向が無線端末2dの位置へ向けられた場合、当該無線端末2dは基地局1aと通信することができる。その後、基地局1aの放射方向が無線端末2eの位置へ向けられた場合、当該無線端末2eは基地局1aと通信することができる。一方で、無線端末2a〜2cは、基地局1aの放射方向が各無線端末2a〜2cの位置へ向けられない限り、当該無線端末2a〜2cは基地局1aと通信することができない。
【0032】
図3によれば、全ての基地局1と通信事業者網を介して接続された制御装置3を更に有する。制御装置3は、全ての基地局1から、障害発生の有無を表す基地局運用情報を収集する。そして、その基地局運用情報に基づくSCoP情報(モード移行命令及び送信出力値)を、各基地局1へ送信する。モード移行命令は、「平常時モード/障害時モード」を表す。送信出力値は、当該通信不能エリア(障害を発生した基地局のカバーエリア)をカバーできるレベルを表す。
【0033】
制御装置3は、障害発生の基地局に隣接する基地局に対して、SCoP情報(障害時モード及び送信出力値)を送信する。そして、障害復旧後、障害時モードを指示した基地局に対して、SCoP情報(平常時モード)を送信する。
【0034】
図4は、基地局からの電波の放射方向が、地表面に対して垂直方向に制御される説明図である。
【0035】
前述した図3によれば、基地局は、例えばアレイアンテナを用いて、電波の放射方向を水平方向に制御している。これに対し、図4によれば、例えば電気チルトを備えたセクタアンテナを用いて、電波の放射方向を垂直方向に制御している。このようなアンテナとして、例えばアクティブ・アンテナ・システムがある(例えば非特許文献1参照)。また、勿論、本発明によれば、水平方向及び垂直方向を同時に変化させるものであってもよい。本発明によれば、エリアを限定した通信圏内を計画的に作り出すことが重要である。
【0036】
図5は、本発明における基地局及び無線端末の機能構成図である。
【0037】
図5によれば、基地局1は、アンテナ通信部101と、通信事業者網インタフェース部102と、符号化・復号部11と、スケジュール情報作成部12と、同報メッセージ作成部13と、電波放射制御部14とを有する。
【0038】
アンテナ通信部101は、指向性を有する電波を放射するアンテナであって、その放射方向を変化させるために、多数のアンテナ素子を有する。アンテナ通信部101は、平面状に多数配列されたアンテナ素子と、各アンテナに対する位相レベル調整部と、1つの分配部とを有する。分配部は、各アンテナ素子に対して送信信号を分配すると共に、各アンテナ素子からの受信信号を統合する。アンテナ毎の位相レベル調整部は、電波放射制御部14からの指示に応じて、電波の振幅及び位相を調整する(送信アレイ重みベクトルを制御する)。これによって、電波の放射方向及び/又は放射角度が可変制御される。アンテナは、個々のアンテナ素子の出力は微弱であっても、複数のアンテナ素子からの出力が合成されることによって、結果として大出力が得られる。
【0039】
電波の送信について、各アンテナから同時に放射された合成波は、アンテナ面と直角な方向に向かって進行する。ここで、アンテナ毎の電波の位相をずらすことによって、合成波は、アンテナ面から斜め方向に放射される。一方で、電波の受信について、アンテナ毎の位相の差を検出することによって、電波の入射方向を検出することができる。
【0040】
符号化・復号部11は、通信事業者網インタフェース部102から受信したデータを符号化し、そのデータをアンテナ通信部101へ出力する。また、アンテナ通信部101から受信したデータを復号し、通信事業者網インタフェース部102へ出力する。
【0041】
スケジュール情報作成部12は、無線端末の無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を生成する。スケジュール情報作成部12は、制御装置3からSCoP情報を受信し、そのSCoP情報に基づいて、放射方向毎のスケジュール情報を作成する。作成されたスケジュール情報は、同報メッセージ作成部13へ出力される。
SCoP情報 :「障害時モード」+「送信出力値」
スケジュール情報:無線端末の無線通信部の起動時間タイミング(例えば20分毎)
(開始時間〜終了時間及び時間間隔、又は、開始時間及び時間間隔)
ユーザに通知すべきテキストメッセージ
また、スケジュール情報作成部12は、スケジュール情報及び送信出力値を、電波放射制御部14へ出力する。
【0042】
同報メッセージ作成部13は、スケジュール情報を含む同報メッセージを作成する。同報メッセージは、例えばBC−SMS(BroadCast - Short Message Service)として作成される。BC−SMSとは、例えば現在緊急地震速報に用いられる同報送信可能なショートメッセージサービスであって、短いテキストも送信することができる。そして、同報メッセージ作成部13から出力された同報メッセージは、符号化・符号部11へ出力される。
【0043】
尚、BC−SMSのフォーマットは、例えばTIA/EIA(The US Telecommunications Industry Association/Electronic Industries Alliance)IS−637の規定に従っている。このメッセージフォーマットは、ブロードキャストアドレスを含み、全ての無線端末が受信できる。本発明によれば、BC−SMSのデータバーストメッセージ内のユーザデータパラメータとして、障害時モードの開始/終了フラグ、障害時モード開始時間、起動時間タイミング、及び、フライトモード解除時間を含む。
【0044】
電波放射制御部14は、スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射するべく、アンテナ通信部101を制御する。電波放射制御部14は、アンテナ通信部101の送信アレイ重みベクトルを制御する。また、電波放射制御部14は、スケジュール情報作成部12から入力された送信出力値に応じて、アンテナ通信部101からの送信出力電力を制御する。尚、セクタアンテナの基地局については、セクタ内でビームを水平方向に変える場合、反射器の位置も制御することも好ましい。また、ビームを垂直方向に変える場合、チルト角を制御することも好ましい。
【0045】
基地局1について、前述したスケジュール情報作成部12と、同報メッセージ作成部13と、電波放射制御部14とは、「障害時モード」でのみ実行される。
【0046】
無線端末2は、無線通信部201と、ディスプレイ部202と、電池200と、同報メッセージ制御部21と、通電制御部22とを有する。
【0047】
無線通信部201は、電池200からの電源供給を受けて、基地局1との間で電波を送受信することができる。無線通信部201は、電池200からの電源供給が遮断されることによって、無駄に電力を消費することがなくなる。尚、無線通信部201が電池200からの電源供給を遮断される状態を、「フライトモード」と称する場合がある。
【0048】
同報メッセージ制御部21は、無線通信部201を介して基地局1から同報メッセージを受信する。その同報メッセージは、当該無線端末2が無線通信部201を通電するスケジュール情報を含む。そして、同報メッセージ制御部21は、そのスケジュール情報に含まれる起動時間タイミングを、通電制御部22へ出力する。また、同報メッセージ制御部21は、そのスケジュール情報に含まれる「ユーザに通知すべきテキストメッセージ」を、ディスプレイ部202へ出力し、当該無線端末2を操作するユーザに明示する。
【0049】
通電制御部22は、同報メッセージ制御部21から入力した起動時間タイミングに応じて、無線通信部201に対する電源供給をオン・オフする。これによって、基地局1が放射方向及び/又は放射角度を変えるタイミングと、当該無線端末2の無線通信部201に電源供給をオンにするタイミングとを同期させることができる。即ち、基地局1からの放射電波のエリアが、当該無線端末2の位置に向かう可能性があるタイミングでのみ無線通信部201に対する電源供給はオンとなり、それ以外の場合、当該無線端末2の無線通信部201に対する電源供給はオフになる。
【0050】
また、通電制御部22は、無線通信部201に対する電源供給をオンにする際に、所定時間範囲で乱数に基づく時間だけ、「ゆらぎ」を持って遅延することも好ましい。基地局1が放射方向を切り替えた直後に、切り替え後の放射方向に含まれるエリアに位置する無線端末2が、一斉に、基地局1へ通信要求を送信することとなる。このような状況は、基地局1を、瞬間的な輻輳状態へ導くこととなる。そこで、本発明によれば、切り替え直後の放射方向に含まれる多数の無線端末2からの通信要求が、基地局1へばらついて到着するようにする。また、通電制御部22は、所定時間内に無線端末2が基地局1を発見できない場合や、無線端末2が基地局サーチを所定回数実行しても基地局1を発見できない場合は、再度電源供給をオフにし、次回のオンのタイミングまではオフの状態(フライトモード状態)を継続する。
【0051】
図6は、本発明における基地局及び無線端末のフローチャートである。
【0052】
(S110)最初に、基地局1は、制御装置3からSCoP情報を受信し、障害時モードへ移行する。そして、基地局1は、無線端末の無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を生成する(図5のスケジュール情報生成部12参照)。
【0053】
(S120)次に、基地局1は、スケジュール情報を含む同報メッセージを作成し、アンテナを介して無線端末2へ同報送信する(図5の同報メッセージ作成部13参照)。
(S121)無線端末2は、障害時モードの同報メッセージを受信した場合、「障害時モード」へ移行する。
【0054】
図7は、同報メッセージを送信するための電波の放射方向を表す説明図である。
【0055】
基地局1は、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射することによって、全ての無線端末2へ、同報メッセージを一斉送信する。同報メッセージには、その放射方向における「起動時間タイミング」及び「ユーザに通知すべきテキストメッセージ」が含まれる。
【0056】
図7によれば、無線端末2eによって受信された同報メッセージには、例えば以下のような起動時間タイミングが含まれる。
「9:00(5分後)から、20分毎に、基地局をサーチすること」
「10秒間サーチをして基地局を発見できなければ、フライトモードへ移行すること」
「10回サーチをして基地局を発見できなければ、フライトモードへ移行すること」
【0057】
ここで、「フライトモード」(機内モード)とは、一般に飛行機内のモードであって、無線端末が電波を一切放射又は受信しないようにするモードである。勿論、既存のフライトモードに限られず、電波を放射又は受信しないモードであればよい。これによって、通信圏外となった無線端末が、基地局捕捉処理(サーチ処理)を繰り返すことがなくなり、[問題2]が解決される。
【0058】
また、この同報メッセージには、例えば以下のようなテキストメッセージが含まれる。
「[a社からのお知らせ] 災害時モードへ移行します。20分毎に画面確認をお願いします。2時間以内に通信可能になります。通信可能になった際は再度画面でお知らせ致します。それまではフライトモードになりますが、異常ではございません。」
【0059】
(S122)無線端末2は、同報メッセージに含まれるテキストメッセージを、無線端末2のディスプレイに表示し、ユーザに明示する。
【0060】
(S123)無線端末2eは、フライトモードへ移行し、当該無線端末2eの起動時間まで、通電制御部22の通電をオフにする。
【0061】
(S130)基地局1は、スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射する。一方で、無線端末2は、スケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する。
【0062】
図8は、基地局から放射される電波における第1の放射方向を表す説明図である。
【0063】
図8によれば、平常時モードでは、基地局1aと通信できない無線端末2dであっても、障害時モードでは、基地局1aと通信することができるようになる。これによって、通信圏外となった無線端末2dも通信できるようになり、[問題1]が解決される。
【0064】
一方で、平常時モードでも基地局1aと通信できた無線端末2a〜2cは、基地局1aと通信できない。無線端末2a〜2cは、障害時モードでは、基地局1aから放射される電波の放射方向及び/又は放射角度が、自らの位置を含まない限り、通信することができない。
【0065】
例えば、無線端末2aは、基地局1aから放射されている電波の放射方向の通信圏外であるために、基地局1aと通信することができない。無線端末2aは、基地局1aが第1の放射方向に電波の放射方向を変えるタイミングで電池から無線通信部に通電するが、10秒間基地局をサーチしても、基地局1aを発見できないため、「フライトモード」へ移行する。このような通信圏外である時に、無線端末2aを操作するユーザは、無線端末2aのアプリケーションに対してデータ送信を予約することもできる。例えばメールの送信予約であってもよい。
【0066】
図9は、基地局から放射される電波における第2の放射方向を表す説明図である。
【0067】
図9によれば、図8から20分後における基地局の電波放射の制御を表している。図9の電波の放射方向は、図8における電波の放射方向から回転している。これによって、図8では圏外であった無線端末2a及び2eは、図9では基地局1aの圏内となる。一方で、図8では圏内であった無線端末2dは、図9では基地局1aの圏外となる。無線端末2aは、圏外時に、データ送信の予約がなされていた場合、そのデータは、このタイミングで自動的に送信される。
【0068】
これによって、稼働中の基地局は、特定の放射方向のみとしか通信しないために、通信すべき無線端末が増加することもない。即ち、多数の無線端末からの通信要求が集中することもなく、輻輳状態が和らぎ、[問題3][問題4]が解決される。
【0069】
(S131)無線端末2a及び2eは、電池から無線通信部に通電することによって、フライトモードを解除する。ここで、無線端末2a及び2eは、基地局をサーチすることによって、基地局1aからのパイロット信号を発見することができる。
【0070】
(S132)そして、無線端末2a及び2eは、起動時間タイミング(起動時間間隔)の間、基地局1aから通信サービスが提供される。
【0071】
このとき、基地局1aは、当該放射方向の継続時間を、BC−SMS又は制御メッセージによって報知することも好ましい。これによって、その継続時間経過後に、無線端末2a及び2eは、再度、フライトモードへ自動的に移行することができる。尚、このBC−SMS又は制御メッセージは、当該放射方向の圏内にのみ報知され、他の放射方向へ報知されることはない。
【0072】
(S133)その後、無線端末2a及び2eは、起動時間タイミングが経過した後、再び、通電制御部22をオフにし、フライトモードへ移行する。
【0073】
図10は、基地局から放射される電波における第3の放射方向を表す説明図である。
【0074】
図10によれば、図9から20分後における基地局の電波放射の制御を表している。図10の電波の放射方向は、図9における電波の放射方向から回転している。これによって、図8及び図9では圏外であった無線端末2bは、図10では基地局1aの圏内となる。一方で、図9では圏内であった無線端末2a及び2eは、図9では基地局1aの圏外となる。
【0075】
(S140)基地局1aは、全ての放射方向を一巡(例えば360度回転)した後、今だに「障害時モード」が維持されているか否かを判定する。
【0076】
(S150)「障害時モード」が維持されている場合、スケジュール情報を更新する。ここで、スケジュール情報は、放射方向及び/又は放射角度毎に、エリアに含まれる無線端末の数及び/又は通信量に応じて、起動時間タイミング、並びに/又は、放射方向及び/若しくは放射角度が、再度規定される。
【0077】
図11は、放射方向のエリア内に位置する無線端末の数に応じて、電波の異なる放射範囲を表す説明図である。
【0078】
図11によれば、無線端末の数又は通信量が多いエリアについては、アンテナからのビームの幅を狭く絞り込む。一方で、無線端末の数又は通信量が少ないエリアについては、ビームの幅を広くする。例えば、第1の放射方向のエリアに位置する無線端末の数が、第2の放射方向のエリアに位置する無線端末の数よりも2倍であった場合、第1の放射方向のビーム角を、第2の放射方向のビーム角の1/2に設定する。例えば、第1の放射方向のビーム角を15度に設定し、第2の放射方向のビーム角を30度に設定する。
【0079】
他の実施形態として、ビーム角は同じであっても、第1の放射方向の割当時間を、第2の放射方向の割当時間の2倍に設定するものであってもよい。例えば、第1の放射方向の割当時間を40分に設定し、第2の放射方向の割当時間を20分に設定する。
【0080】
(S160)「平常時モード」となった場合、基地局1は、放射方向及び/又は放射角度を変えながら、同報メッセージ(平常時モード)が報知される。
【0081】
(S161)無線端末2は、同報メッセージ(平常時モード)のを受信することによって、平常時モードへ移行する。
【0082】
(S170)基地局2は、平常時モードへ移行し、無指向性で電波を放射する。
【0083】
以上、詳細に説明したように、本発明の無線通信システム及び方法によれば、稼働停止の基地局のカバーエリアを補償し、無線端末に通信機会を提供すると共に、通信要求の集中による基地局の輻輳を和らげ、且つ、無線端末の電池切れを少なくすることできる。特に、前述した[問題1〜4]を全て解決することができる。
【0084】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0085】
1 基地局
101 アンテナ通信部
102 通信事業者網インタフェース部
11 符号化・復号部
12 スケジュール情報作成部
13 同報メッセージ作成部
14 電波放射制御部
2 無線端末
200 電池
201 無線通信部
202 ディスプレイ部
21 同報メッセージ制御部
22 通電制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局及び無線端末を有する無線通信システムについて、基地局の障害時に適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、複数の基地局と複数の無線端末とが分散配置された無線通信網におけるシステム構成図である。
【0003】
図1によれは、分散配置された3つの基地局1a〜1cは、多数の無線端末2a〜2eが位置する広いエリアをカバーしている。複数のアンテナを備えた基地局1から放射される電波は、一般に無指向性であって(例えばMIMO(Multiple Input Multiple Output))、全方位に位置する無線端末2へ到達する。
【0004】
図2は、一部の基地局に障害が発生した場合における無線通信網のシステム構成図である。
【0005】
図2によれば、2つの基地局1b及び1cに、障害が発生している。基地局1b及び1cの通信圏内のみに位置する無線端末は、通信できない。基地局の障害としては、故障のような小規模なものに限られず、災害のような大規模なものも含まれる。特に、大災害時における基地局の稼働停止は、通信インフラの停止につながり、社会全体に対して被害の増大を招く。
【0006】
一部の基地局に障害が発生した場合、他の基地局及び無線端末には、以下のような4つの問題が生じる。
[問題1]通信圏外となった無線端末は、通信できない。
図2によれば、基地局1b及び1cが障害を発生することによって、無線端末d及びeは、通信できない。
[問題2]通信圏外となった無線端末は、基地局捕捉処理(サーチ処理)を繰り返す。そのために、通信圏内にある無線端末の電力消費量よりも、通信圏外の無線端末の電力消費量が大きくなり、電池切れを起こしやすくなる。
図2によれば、無線端末d及びeは、電池切れを起こしやすくなる。
[問題3]稼働中の基地局は、多数の無線端末からの通信要求が集中し、輻輳状態に陥りやすくなる。
図2によれば、基地局1aは、通信要求が集中することによって、輻輳状態に陥りやすくなる。
[問題4]災害時には、ユーザは他の人と連絡を取るために、無線端末を用いて発呼を実行するが、発呼先の基地局が輻輳状態に陥っていたり、通話規制を実施して受付可能台数が制限されている場合など、基地局との接続を確立できず、結果としてユーザは発呼を繰り返すこととなる(接続リトライ)。無線端末は、輻輳状態に陥り発信規制のかかった基地局に対して発呼を繰り返すことによって、無線端末の電力消費量が大きくなり、電池切れを起こしやすくなる。災害時におけるシステム全体の発呼率は、平常時よりも急増する。
図2によれば、無線端末2a、b及びcのユーザが、何度も発呼操作を繰り返することによって、無線端末2a、b及びcの電力を無駄に消費し、電池切れを起こしやすくなる。
【0007】
従来技術によれば、複数のセクタにより構成する基地局であって、一部のセクタの無線通信部が故障した際に、他の故障していないセクタにおける無線通信部のアンテナ指向性を制御する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、隣接基地局を使用することなく、故障した無線通信部が担っていたセクタを、他の無線通信部のセクタによってカバーすることができる。
【0008】
また、複数の基地局(アクセスポイント)から構成される移動通信システム(無線LANシステム)について、ある基地局が故障した際に、それに隣接する他の基地局がアンテナ指向性を制御する技術がある(例えば特許文献2及び3参照)。この技術によれば、故障した基地局によってカバーされていたエリアが、それに隣接する他の基地局によってカバーされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−228481号公報
【特許文献2】特開2008−311815号公報
【特許文献3】特開2003−264866号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「アクティブ・アンテナ・システム」、[online]、[平成23年8月6日検索]、インターネット<URL:http://wirelesswire.jp/NSN_in_WWN/201105181206.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1〜3に記載された技術によれば、確かに、前述した[問題1]及び[問題2]を解決することはできる。即ち、稼働停止の基地局のカバーエリアを、稼働中の他の基地局がカバーすることができるからである。
【0012】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された技術によれば、前述した[問題3]及び[問題4]を解決することはできない。むしろ、稼働中の基地局には、より多くの無線端末が発呼を繰り返すことによって通信要求が集中し得ることから、一層、輻輳状態に陥りやすくなり、[問題3]及び[問題4]の課題度合いは大きくなる。
【0013】
そこで、本発明は、稼働停止の基地局のカバーエリアを補償し、無線端末に通信機会を提供すると共に、通信要求の集中による基地局の輻輳を和らげ、且つ、無線端末の電池切れを少なくすることできる無線通信システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、電波の放射方向及び/又は放射角度を可変制御できるアンテナを有する基地局と、該基地局と通信する無線通信部を有する無線端末とを有する無線通信システムにおいて、
基地局は、
無線端末における無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を作成するスケジュール情報作成手段と、
スケジュール情報を含む同報メッセージを作成し、アンテナを介して無線端末へ同報送信する同報メッセージ作成手段と、
スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射するべく、当該アンテナを制御する電波放射制御手段と
を有し、
無線端末は、
同報メッセージのスケジュール情報に基づいて制御する同報メッセージ制御手段と、
スケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する通電制御手段と
を有し、
基地局の電波の放射方向及び/又は放射角度が当該無線端末へ向くタイミングと、無線端末の無線通信部に電源供給をオンにするタイミングとを同期させることを特徴とする。
【0015】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、無線端末の通電制御手段は、無線通信手段に対する電源供給をオンにした後、所定時間経過後又は所定基地局サーチ回数経過後であっても、基地局を発見できない場合、再度、電源供給をオフにし、次回オンにするタイミングまではオフの状態を継続することも好ましい。
【0016】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、基地局の電波放射制御手段における電波の放射方向は、地表面に対する水平方向及び/又は垂直方向に制御されることも好ましい。
【0017】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、基地局のスケジュール情報作成手段は、電波の放射方向及び/又は放射角度毎に、当該電波の放射方向及び/又は放射角度のエリアに含まれる無線端末の数及び/又は通信量に応じて異なる放射方向及び/又は放射角度を、スケジュール情報に規定することも好ましい。
【0018】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、
基地局には、平常時モード及び障害時モードがあり、
スケジュール情報作成手段、同報メッセージ作成手段及び電波放射制御手段を、障害時モードでのみ実行され、
同報メッセージ作成手段は、平常時モード又は障害時モードを含む同報メッセージを、BC−SMS(BroadCast - Short Message Service)を用いて送信することも好ましい。
【0019】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、
システムは、基地局のモードを制御する制御装置を更に有し、
制御装置は、
各基地局から、障害発生の有無を表す基地局運用情報を収集し、
障害発生の基地局に隣接する基地局に対して、障害時モードを指示し、
障害復旧後、障害時モードを指示した基地局に対して、平常時モードを指示する
ことも好ましい。
【0020】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、
基地局の同報メッセージ作成手段は、同報メッセージに、無線端末を操作するユーザに対して通知すべき、当該スケジュール情報に関するテキストを更に含んでおり、
無線端末の同報メッセージ受信手段は、同報メッセージに含まれるテキストを、当該無線端末のディスプレイ部に表示するべく指示することも好ましい。
【0021】
本発明の無線通信システムにおける他の実施形態によれば、無線端末の通電制御部は、無線通信部に対する電源供給をオンにする際に、所定時間範囲で乱数に基づく時間だけ、ゆらぎを持って遅延することも好ましい。
【0022】
本発明によれば、電波の放射方向及び/又は放射角度を可変制御できるアンテナを有する基地局と、該基地局と通信する無線通信部を有する無線端末とを有するシステムにおける無線通信方法において、
基地局が、無線端末における無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を作成する第1のステップと、
スケジュール情報を含む同報メッセージを作成し、アンテナを介して無線端末へ同報送信する第2のステップと、
無線端末が、同報メッセージを受信し、スケジュール情報を取得する第3のステップと、
無線端末が、スケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する第4のステップと、
スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射するべく、当該アンテナを制御する第5のステップと
を有し、
基地局の電波の放射方向及び/又は放射角度が当該無線端末へ向くタイミングと、無線端末の無線通信部に電源供給をオンにするタイミングとを同期させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の無線通信システム及び方法によれば、稼働停止の基地局のカバーエリアを補償し、無線端末に通信機会を提供すると共に、通信要求の集中による基地局の輻輳を和らげ、且つ、無線端末の電池切れを少なくすることできる。特に、前述した[問題1〜4]を全て解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】複数の基地局と複数の無線端末とが分散配置された無線通信網におけるシステム構成図である。
【図2】一部の基地局に障害が発生した場合における無線通信網のシステム構成図である。
【図3】基地局からの電波の放射方向が、地表面に対して水平方向に制御される説明図である。
【図4】基地局からの電波の放射方向が、地表面に対して垂直方向に制御される説明図である。
【図5】本発明における基地局及び無線端末の機能構成図である。
【図6】本発明における基地局及び無線端末のフローチャートである。
【図7】同報メッセージを送信するための電波の放射方向を表す説明図である。
【図8】基地局から放射される電波における第1の放射方向を表す説明図である。
【図9】基地局から放射される電波における第2の放射方向を表す説明図である。
【図10】基地局から放射される電波における第3の放射方向を表す説明図である。
【図11】放射方向のエリア内に位置する無線端末の数に応じて、電波の異なる放射範囲を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
本発明は、例えば停電や災害によって基地局に障害が発生した場合であっても、稼働中の隣接基地局が、無線端末に対して計画的に通信サービスを提供することができる(SCoP(Scheduled Coverage Provision))。基地局は、「平常時モード」又は「障害時モード」として動作する。「障害時モード」とは、当該基地局に対する隣接基地局に障害が発生したことを意味する。
【0027】
基地局は、電波放射の指向性を制御可能なアンテナを有し、モードに応じてその指向性を切り替える。
平常時モード:指向性無し(無指向性)
障害時モード:指向性有り
「障害時モード」の当該基地局は、電波の指向性を絞り込むことよって、できる限り電波放射の距離を伸長する。これによって、障害を発生した基地局がカバーするエリアまで、電波を放射することができる。
【0028】
図3は、基地局からの電波の放射方向が、地表面に対して水平方向に制御される説明図である。
【0029】
図3によれば、基地局1aからの電波は、地表面に対して水平方向に6つの放射方向に区分されている。そして、基地局1aは、指向性を持つ電波を、所定の時間(例えば20分)毎に又は所定の角速度で、回転するように切り替える。これによって、特定のエリア(放射方向)内に位置する無線端末2に対してのみ、所定の時間だけ通信サービスが提供される。このとき、物理的に、放射方向にある特定のエリアにのみ通信機会を付与することができるため、同時に接続試行を行う端末数を減らすことができる([問題3、4]の解決)。
【0030】
また、図3によれば、基地局1aの周囲には、当該基地局と通信する多数の無線端末2a〜2eが存在する。ここで、無線端末2a〜2cは、基地局1aが「平常時モード」である場合、その無指向性の電波を受信できるエリアに位置している。一方で、無線端末2d及び2eは、基地局1aの「平常時モード」で電波を受信できるエリアには位置していない。勿論、無線端末2d及び2eは、障害を発生した基地局1d及び1eとも通信できない。
【0031】
ここで、基地局1aが「障害時モード」になった場合、指向性を持った電波を方向を切り替えながら放射する。即ち、図3によれば、基地局1aの放射方向が無線端末2dの位置へ向けられた場合、当該無線端末2dは基地局1aと通信することができる。その後、基地局1aの放射方向が無線端末2eの位置へ向けられた場合、当該無線端末2eは基地局1aと通信することができる。一方で、無線端末2a〜2cは、基地局1aの放射方向が各無線端末2a〜2cの位置へ向けられない限り、当該無線端末2a〜2cは基地局1aと通信することができない。
【0032】
図3によれば、全ての基地局1と通信事業者網を介して接続された制御装置3を更に有する。制御装置3は、全ての基地局1から、障害発生の有無を表す基地局運用情報を収集する。そして、その基地局運用情報に基づくSCoP情報(モード移行命令及び送信出力値)を、各基地局1へ送信する。モード移行命令は、「平常時モード/障害時モード」を表す。送信出力値は、当該通信不能エリア(障害を発生した基地局のカバーエリア)をカバーできるレベルを表す。
【0033】
制御装置3は、障害発生の基地局に隣接する基地局に対して、SCoP情報(障害時モード及び送信出力値)を送信する。そして、障害復旧後、障害時モードを指示した基地局に対して、SCoP情報(平常時モード)を送信する。
【0034】
図4は、基地局からの電波の放射方向が、地表面に対して垂直方向に制御される説明図である。
【0035】
前述した図3によれば、基地局は、例えばアレイアンテナを用いて、電波の放射方向を水平方向に制御している。これに対し、図4によれば、例えば電気チルトを備えたセクタアンテナを用いて、電波の放射方向を垂直方向に制御している。このようなアンテナとして、例えばアクティブ・アンテナ・システムがある(例えば非特許文献1参照)。また、勿論、本発明によれば、水平方向及び垂直方向を同時に変化させるものであってもよい。本発明によれば、エリアを限定した通信圏内を計画的に作り出すことが重要である。
【0036】
図5は、本発明における基地局及び無線端末の機能構成図である。
【0037】
図5によれば、基地局1は、アンテナ通信部101と、通信事業者網インタフェース部102と、符号化・復号部11と、スケジュール情報作成部12と、同報メッセージ作成部13と、電波放射制御部14とを有する。
【0038】
アンテナ通信部101は、指向性を有する電波を放射するアンテナであって、その放射方向を変化させるために、多数のアンテナ素子を有する。アンテナ通信部101は、平面状に多数配列されたアンテナ素子と、各アンテナに対する位相レベル調整部と、1つの分配部とを有する。分配部は、各アンテナ素子に対して送信信号を分配すると共に、各アンテナ素子からの受信信号を統合する。アンテナ毎の位相レベル調整部は、電波放射制御部14からの指示に応じて、電波の振幅及び位相を調整する(送信アレイ重みベクトルを制御する)。これによって、電波の放射方向及び/又は放射角度が可変制御される。アンテナは、個々のアンテナ素子の出力は微弱であっても、複数のアンテナ素子からの出力が合成されることによって、結果として大出力が得られる。
【0039】
電波の送信について、各アンテナから同時に放射された合成波は、アンテナ面と直角な方向に向かって進行する。ここで、アンテナ毎の電波の位相をずらすことによって、合成波は、アンテナ面から斜め方向に放射される。一方で、電波の受信について、アンテナ毎の位相の差を検出することによって、電波の入射方向を検出することができる。
【0040】
符号化・復号部11は、通信事業者網インタフェース部102から受信したデータを符号化し、そのデータをアンテナ通信部101へ出力する。また、アンテナ通信部101から受信したデータを復号し、通信事業者網インタフェース部102へ出力する。
【0041】
スケジュール情報作成部12は、無線端末の無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を生成する。スケジュール情報作成部12は、制御装置3からSCoP情報を受信し、そのSCoP情報に基づいて、放射方向毎のスケジュール情報を作成する。作成されたスケジュール情報は、同報メッセージ作成部13へ出力される。
SCoP情報 :「障害時モード」+「送信出力値」
スケジュール情報:無線端末の無線通信部の起動時間タイミング(例えば20分毎)
(開始時間〜終了時間及び時間間隔、又は、開始時間及び時間間隔)
ユーザに通知すべきテキストメッセージ
また、スケジュール情報作成部12は、スケジュール情報及び送信出力値を、電波放射制御部14へ出力する。
【0042】
同報メッセージ作成部13は、スケジュール情報を含む同報メッセージを作成する。同報メッセージは、例えばBC−SMS(BroadCast - Short Message Service)として作成される。BC−SMSとは、例えば現在緊急地震速報に用いられる同報送信可能なショートメッセージサービスであって、短いテキストも送信することができる。そして、同報メッセージ作成部13から出力された同報メッセージは、符号化・符号部11へ出力される。
【0043】
尚、BC−SMSのフォーマットは、例えばTIA/EIA(The US Telecommunications Industry Association/Electronic Industries Alliance)IS−637の規定に従っている。このメッセージフォーマットは、ブロードキャストアドレスを含み、全ての無線端末が受信できる。本発明によれば、BC−SMSのデータバーストメッセージ内のユーザデータパラメータとして、障害時モードの開始/終了フラグ、障害時モード開始時間、起動時間タイミング、及び、フライトモード解除時間を含む。
【0044】
電波放射制御部14は、スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射するべく、アンテナ通信部101を制御する。電波放射制御部14は、アンテナ通信部101の送信アレイ重みベクトルを制御する。また、電波放射制御部14は、スケジュール情報作成部12から入力された送信出力値に応じて、アンテナ通信部101からの送信出力電力を制御する。尚、セクタアンテナの基地局については、セクタ内でビームを水平方向に変える場合、反射器の位置も制御することも好ましい。また、ビームを垂直方向に変える場合、チルト角を制御することも好ましい。
【0045】
基地局1について、前述したスケジュール情報作成部12と、同報メッセージ作成部13と、電波放射制御部14とは、「障害時モード」でのみ実行される。
【0046】
無線端末2は、無線通信部201と、ディスプレイ部202と、電池200と、同報メッセージ制御部21と、通電制御部22とを有する。
【0047】
無線通信部201は、電池200からの電源供給を受けて、基地局1との間で電波を送受信することができる。無線通信部201は、電池200からの電源供給が遮断されることによって、無駄に電力を消費することがなくなる。尚、無線通信部201が電池200からの電源供給を遮断される状態を、「フライトモード」と称する場合がある。
【0048】
同報メッセージ制御部21は、無線通信部201を介して基地局1から同報メッセージを受信する。その同報メッセージは、当該無線端末2が無線通信部201を通電するスケジュール情報を含む。そして、同報メッセージ制御部21は、そのスケジュール情報に含まれる起動時間タイミングを、通電制御部22へ出力する。また、同報メッセージ制御部21は、そのスケジュール情報に含まれる「ユーザに通知すべきテキストメッセージ」を、ディスプレイ部202へ出力し、当該無線端末2を操作するユーザに明示する。
【0049】
通電制御部22は、同報メッセージ制御部21から入力した起動時間タイミングに応じて、無線通信部201に対する電源供給をオン・オフする。これによって、基地局1が放射方向及び/又は放射角度を変えるタイミングと、当該無線端末2の無線通信部201に電源供給をオンにするタイミングとを同期させることができる。即ち、基地局1からの放射電波のエリアが、当該無線端末2の位置に向かう可能性があるタイミングでのみ無線通信部201に対する電源供給はオンとなり、それ以外の場合、当該無線端末2の無線通信部201に対する電源供給はオフになる。
【0050】
また、通電制御部22は、無線通信部201に対する電源供給をオンにする際に、所定時間範囲で乱数に基づく時間だけ、「ゆらぎ」を持って遅延することも好ましい。基地局1が放射方向を切り替えた直後に、切り替え後の放射方向に含まれるエリアに位置する無線端末2が、一斉に、基地局1へ通信要求を送信することとなる。このような状況は、基地局1を、瞬間的な輻輳状態へ導くこととなる。そこで、本発明によれば、切り替え直後の放射方向に含まれる多数の無線端末2からの通信要求が、基地局1へばらついて到着するようにする。また、通電制御部22は、所定時間内に無線端末2が基地局1を発見できない場合や、無線端末2が基地局サーチを所定回数実行しても基地局1を発見できない場合は、再度電源供給をオフにし、次回のオンのタイミングまではオフの状態(フライトモード状態)を継続する。
【0051】
図6は、本発明における基地局及び無線端末のフローチャートである。
【0052】
(S110)最初に、基地局1は、制御装置3からSCoP情報を受信し、障害時モードへ移行する。そして、基地局1は、無線端末の無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を生成する(図5のスケジュール情報生成部12参照)。
【0053】
(S120)次に、基地局1は、スケジュール情報を含む同報メッセージを作成し、アンテナを介して無線端末2へ同報送信する(図5の同報メッセージ作成部13参照)。
(S121)無線端末2は、障害時モードの同報メッセージを受信した場合、「障害時モード」へ移行する。
【0054】
図7は、同報メッセージを送信するための電波の放射方向を表す説明図である。
【0055】
基地局1は、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射することによって、全ての無線端末2へ、同報メッセージを一斉送信する。同報メッセージには、その放射方向における「起動時間タイミング」及び「ユーザに通知すべきテキストメッセージ」が含まれる。
【0056】
図7によれば、無線端末2eによって受信された同報メッセージには、例えば以下のような起動時間タイミングが含まれる。
「9:00(5分後)から、20分毎に、基地局をサーチすること」
「10秒間サーチをして基地局を発見できなければ、フライトモードへ移行すること」
「10回サーチをして基地局を発見できなければ、フライトモードへ移行すること」
【0057】
ここで、「フライトモード」(機内モード)とは、一般に飛行機内のモードであって、無線端末が電波を一切放射又は受信しないようにするモードである。勿論、既存のフライトモードに限られず、電波を放射又は受信しないモードであればよい。これによって、通信圏外となった無線端末が、基地局捕捉処理(サーチ処理)を繰り返すことがなくなり、[問題2]が解決される。
【0058】
また、この同報メッセージには、例えば以下のようなテキストメッセージが含まれる。
「[a社からのお知らせ] 災害時モードへ移行します。20分毎に画面確認をお願いします。2時間以内に通信可能になります。通信可能になった際は再度画面でお知らせ致します。それまではフライトモードになりますが、異常ではございません。」
【0059】
(S122)無線端末2は、同報メッセージに含まれるテキストメッセージを、無線端末2のディスプレイに表示し、ユーザに明示する。
【0060】
(S123)無線端末2eは、フライトモードへ移行し、当該無線端末2eの起動時間まで、通電制御部22の通電をオフにする。
【0061】
(S130)基地局1は、スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射する。一方で、無線端末2は、スケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する。
【0062】
図8は、基地局から放射される電波における第1の放射方向を表す説明図である。
【0063】
図8によれば、平常時モードでは、基地局1aと通信できない無線端末2dであっても、障害時モードでは、基地局1aと通信することができるようになる。これによって、通信圏外となった無線端末2dも通信できるようになり、[問題1]が解決される。
【0064】
一方で、平常時モードでも基地局1aと通信できた無線端末2a〜2cは、基地局1aと通信できない。無線端末2a〜2cは、障害時モードでは、基地局1aから放射される電波の放射方向及び/又は放射角度が、自らの位置を含まない限り、通信することができない。
【0065】
例えば、無線端末2aは、基地局1aから放射されている電波の放射方向の通信圏外であるために、基地局1aと通信することができない。無線端末2aは、基地局1aが第1の放射方向に電波の放射方向を変えるタイミングで電池から無線通信部に通電するが、10秒間基地局をサーチしても、基地局1aを発見できないため、「フライトモード」へ移行する。このような通信圏外である時に、無線端末2aを操作するユーザは、無線端末2aのアプリケーションに対してデータ送信を予約することもできる。例えばメールの送信予約であってもよい。
【0066】
図9は、基地局から放射される電波における第2の放射方向を表す説明図である。
【0067】
図9によれば、図8から20分後における基地局の電波放射の制御を表している。図9の電波の放射方向は、図8における電波の放射方向から回転している。これによって、図8では圏外であった無線端末2a及び2eは、図9では基地局1aの圏内となる。一方で、図8では圏内であった無線端末2dは、図9では基地局1aの圏外となる。無線端末2aは、圏外時に、データ送信の予約がなされていた場合、そのデータは、このタイミングで自動的に送信される。
【0068】
これによって、稼働中の基地局は、特定の放射方向のみとしか通信しないために、通信すべき無線端末が増加することもない。即ち、多数の無線端末からの通信要求が集中することもなく、輻輳状態が和らぎ、[問題3][問題4]が解決される。
【0069】
(S131)無線端末2a及び2eは、電池から無線通信部に通電することによって、フライトモードを解除する。ここで、無線端末2a及び2eは、基地局をサーチすることによって、基地局1aからのパイロット信号を発見することができる。
【0070】
(S132)そして、無線端末2a及び2eは、起動時間タイミング(起動時間間隔)の間、基地局1aから通信サービスが提供される。
【0071】
このとき、基地局1aは、当該放射方向の継続時間を、BC−SMS又は制御メッセージによって報知することも好ましい。これによって、その継続時間経過後に、無線端末2a及び2eは、再度、フライトモードへ自動的に移行することができる。尚、このBC−SMS又は制御メッセージは、当該放射方向の圏内にのみ報知され、他の放射方向へ報知されることはない。
【0072】
(S133)その後、無線端末2a及び2eは、起動時間タイミングが経過した後、再び、通電制御部22をオフにし、フライトモードへ移行する。
【0073】
図10は、基地局から放射される電波における第3の放射方向を表す説明図である。
【0074】
図10によれば、図9から20分後における基地局の電波放射の制御を表している。図10の電波の放射方向は、図9における電波の放射方向から回転している。これによって、図8及び図9では圏外であった無線端末2bは、図10では基地局1aの圏内となる。一方で、図9では圏内であった無線端末2a及び2eは、図9では基地局1aの圏外となる。
【0075】
(S140)基地局1aは、全ての放射方向を一巡(例えば360度回転)した後、今だに「障害時モード」が維持されているか否かを判定する。
【0076】
(S150)「障害時モード」が維持されている場合、スケジュール情報を更新する。ここで、スケジュール情報は、放射方向及び/又は放射角度毎に、エリアに含まれる無線端末の数及び/又は通信量に応じて、起動時間タイミング、並びに/又は、放射方向及び/若しくは放射角度が、再度規定される。
【0077】
図11は、放射方向のエリア内に位置する無線端末の数に応じて、電波の異なる放射範囲を表す説明図である。
【0078】
図11によれば、無線端末の数又は通信量が多いエリアについては、アンテナからのビームの幅を狭く絞り込む。一方で、無線端末の数又は通信量が少ないエリアについては、ビームの幅を広くする。例えば、第1の放射方向のエリアに位置する無線端末の数が、第2の放射方向のエリアに位置する無線端末の数よりも2倍であった場合、第1の放射方向のビーム角を、第2の放射方向のビーム角の1/2に設定する。例えば、第1の放射方向のビーム角を15度に設定し、第2の放射方向のビーム角を30度に設定する。
【0079】
他の実施形態として、ビーム角は同じであっても、第1の放射方向の割当時間を、第2の放射方向の割当時間の2倍に設定するものであってもよい。例えば、第1の放射方向の割当時間を40分に設定し、第2の放射方向の割当時間を20分に設定する。
【0080】
(S160)「平常時モード」となった場合、基地局1は、放射方向及び/又は放射角度を変えながら、同報メッセージ(平常時モード)が報知される。
【0081】
(S161)無線端末2は、同報メッセージ(平常時モード)のを受信することによって、平常時モードへ移行する。
【0082】
(S170)基地局2は、平常時モードへ移行し、無指向性で電波を放射する。
【0083】
以上、詳細に説明したように、本発明の無線通信システム及び方法によれば、稼働停止の基地局のカバーエリアを補償し、無線端末に通信機会を提供すると共に、通信要求の集中による基地局の輻輳を和らげ、且つ、無線端末の電池切れを少なくすることできる。特に、前述した[問題1〜4]を全て解決することができる。
【0084】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0085】
1 基地局
101 アンテナ通信部
102 通信事業者網インタフェース部
11 符号化・復号部
12 スケジュール情報作成部
13 同報メッセージ作成部
14 電波放射制御部
2 無線端末
200 電池
201 無線通信部
202 ディスプレイ部
21 同報メッセージ制御部
22 通電制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の放射方向及び/又は放射角度を可変制御できるアンテナを有する基地局と、該基地局と通信する無線通信部を有する無線端末とを有する無線通信システムにおいて、
前記基地局は、
前記無線端末における無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を作成するスケジュール情報作成手段と、
前記スケジュール情報を含む同報メッセージを作成し、アンテナを介して無線端末へ同報送信する同報メッセージ作成手段と、
前記スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射するべく、当該アンテナを制御する電波放射制御手段と
を有し、
前記無線端末は、
前記同報メッセージのスケジュール情報に基づいて制御する同報メッセージ制御手段と、
前記スケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する通電制御手段と
を有し、
基地局の電波の放射方向及び/又は放射角度が当該無線端末へ向くタイミングと、無線端末の無線通信部に電源供給をオンにするタイミングとを同期させることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記無線端末の通電制御手段は、前記無線通信手段に対する電源供給をオンにした後、所定時間経過後又は所定基地局サーチ回数経過後であっても、基地局を発見できない場合、再度、電源供給をオフにし、次回オンにするタイミングまではオフの状態を継続することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記基地局の前記電波放射制御手段における電波の放射方向は、地表面に対する水平方向及び/又は垂直方向に制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記基地局の前記スケジュール情報作成手段は、電波の放射方向及び/又は放射角度毎に、当該電波の放射方向及び/又は放射角度のエリアに含まれる無線端末の数及び/又は通信量に応じて異なる放射方向及び/又は放射角度を、前記スケジュール情報に規定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記基地局には、平常時モード及び障害時モードがあり、
前記スケジュール情報作成手段、前記同報メッセージ作成手段及び前記電波放射制御手段を、前記障害時モードでのみ実行され、
前記同報メッセージ作成手段は、前記平常時モード又は前記障害時モードを含む前記同報メッセージを、BC−SMS(BroadCast - Short Message Service)を用いて送信することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記システムは、前記基地局のモードを制御する制御装置を更に有し、
前記制御装置は、
各基地局から、障害発生の有無を表す基地局運用情報を収集し、
障害発生の基地局に隣接する基地局に対して、前記障害時モードを指示し、
障害復旧後、前記障害時モードを指示した前記基地局に対して、前記平常時モードを指示する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記基地局の同報メッセージ作成手段は、前記同報メッセージに、無線端末を操作するユーザに対して通知すべき、当該スケジュール情報に関するテキストを更に含んでおり、
前記無線端末の同報メッセージ受信手段は、前記同報メッセージに含まれる前記テキストを、当該無線端末のディスプレイ部に表示するべく指示する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記無線端末の前記通電制御部は、前記無線通信部に対する電源供給をオンにする際に、所定時間範囲で乱数に基づく時間だけ、ゆらぎを持って遅延することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項9】
電波の放射方向及び/又は放射角度を可変制御できるアンテナを有する基地局と、該基地局と通信する無線通信部を有する無線端末とを有するシステムにおける無線通信方法において、
前記基地局が、前記無線端末における無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を作成する第1のステップと、
前記スケジュール情報を含む同報メッセージを作成し、アンテナを介して無線端末へ同報送信する第2のステップと、
前記無線端末が、前記同報メッセージを受信し、前記スケジュール情報を取得する第3のステップと、
前記無線端末が、前記スケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、前記無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する第4のステップと、
前記スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射するべく、当該アンテナを制御する第5のステップと
を有し、
前記基地局の電波の放射方向及び/又は放射角度が当該無線端末へ向くタイミングと、無線端末の無線通信部に電源供給をオンにするタイミングとを同期させることを特徴とする無線通信方法。
【請求項1】
電波の放射方向及び/又は放射角度を可変制御できるアンテナを有する基地局と、該基地局と通信する無線通信部を有する無線端末とを有する無線通信システムにおいて、
前記基地局は、
前記無線端末における無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を作成するスケジュール情報作成手段と、
前記スケジュール情報を含む同報メッセージを作成し、アンテナを介して無線端末へ同報送信する同報メッセージ作成手段と、
前記スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射するべく、当該アンテナを制御する電波放射制御手段と
を有し、
前記無線端末は、
前記同報メッセージのスケジュール情報に基づいて制御する同報メッセージ制御手段と、
前記スケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する通電制御手段と
を有し、
基地局の電波の放射方向及び/又は放射角度が当該無線端末へ向くタイミングと、無線端末の無線通信部に電源供給をオンにするタイミングとを同期させることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記無線端末の通電制御手段は、前記無線通信手段に対する電源供給をオンにした後、所定時間経過後又は所定基地局サーチ回数経過後であっても、基地局を発見できない場合、再度、電源供給をオフにし、次回オンにするタイミングまではオフの状態を継続することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記基地局の前記電波放射制御手段における電波の放射方向は、地表面に対する水平方向及び/又は垂直方向に制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記基地局の前記スケジュール情報作成手段は、電波の放射方向及び/又は放射角度毎に、当該電波の放射方向及び/又は放射角度のエリアに含まれる無線端末の数及び/又は通信量に応じて異なる放射方向及び/又は放射角度を、前記スケジュール情報に規定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記基地局には、平常時モード及び障害時モードがあり、
前記スケジュール情報作成手段、前記同報メッセージ作成手段及び前記電波放射制御手段を、前記障害時モードでのみ実行され、
前記同報メッセージ作成手段は、前記平常時モード又は前記障害時モードを含む前記同報メッセージを、BC−SMS(BroadCast - Short Message Service)を用いて送信することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記システムは、前記基地局のモードを制御する制御装置を更に有し、
前記制御装置は、
各基地局から、障害発生の有無を表す基地局運用情報を収集し、
障害発生の基地局に隣接する基地局に対して、前記障害時モードを指示し、
障害復旧後、前記障害時モードを指示した前記基地局に対して、前記平常時モードを指示する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記基地局の同報メッセージ作成手段は、前記同報メッセージに、無線端末を操作するユーザに対して通知すべき、当該スケジュール情報に関するテキストを更に含んでおり、
前記無線端末の同報メッセージ受信手段は、前記同報メッセージに含まれる前記テキストを、当該無線端末のディスプレイ部に表示するべく指示する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記無線端末の前記通電制御部は、前記無線通信部に対する電源供給をオンにする際に、所定時間範囲で乱数に基づく時間だけ、ゆらぎを持って遅延することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項9】
電波の放射方向及び/又は放射角度を可変制御できるアンテナを有する基地局と、該基地局と通信する無線通信部を有する無線端末とを有するシステムにおける無線通信方法において、
前記基地局が、前記無線端末における無線通信部の起動時間タイミングを規定したスケジュール情報を作成する第1のステップと、
前記スケジュール情報を含む同報メッセージを作成し、アンテナを介して無線端末へ同報送信する第2のステップと、
前記無線端末が、前記同報メッセージを受信し、前記スケジュール情報を取得する第3のステップと、
前記無線端末が、前記スケジュール情報の起動時間タイミングに応じて、前記無線通信部に対する電源供給をオン・オフ制御する第4のステップと、
前記スケジュール情報に応じたタイミングで、放射方向及び/又は放射角度を変えながら電波を放射するべく、当該アンテナを制御する第5のステップと
を有し、
前記基地局の電波の放射方向及び/又は放射角度が当該無線端末へ向くタイミングと、無線端末の無線通信部に電源供給をオンにするタイミングとを同期させることを特徴とする無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−46096(P2013−46096A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180404(P2011−180404)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】
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