説明

基地局装置、識別子割当方法及び識別子割当プログラム

【課題】帯域が保証された端末装置による通信開始の遅延を防止し、要求されるQoSを達成すること。
【解決手段】端末情報取得部100aは、基地局装置100に対してプリアンブルの割り当てを要求する端末装置の優先度に関する端末情報を取得する。優先度判定部100bは、端末情報取得部100aによって取得された端末情報に基づいて、端末装置の優先度が所定基準以上であるか否かを判定する。プリアンブル割当部100cは、優先度判定部100bから通知される判定結果を参照し、端末装置の優先度が所定基準以上である場合には、この端末装置に対してプリアンブルを割り当てる。そして、プリアンブル割当部100cは、割り当てたプリアンブルを示す割当情報を送信部100dへ出力する。送信部100dは、プリアンブル割当部100cから出力された割当情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置、識別子割当方法及び識別子割当プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話機などの端末装置が用いられる無線通信システムでは、端末装置が基地局装置との通信を開始する際などに、ランダムアクセス(Random Access)と呼ばれるアクセス方法で基地局装置にアクセスすることがある。ランダムアクセスでは、端末装置がRACH(Random Access CHannel:ランダムアクセスチャネル)を用いてプリアンブルと呼ばれる識別子を基地局装置に対して送信することにより、端末装置と基地局装置の同期が確立される。
【0003】
このようなランダムアクセスには、端末装置主導のランダムアクセスと基地局装置を含むネットワーク主導のランダムアクセスとの2種類がある。端末装置主導のランダムアクセスにおいては、端末装置は、あらかじめ定められた利用可能なプリアンブル群の中からランダムに1つのプリアンブルを選択し、基地局装置に対して送信する。したがって、複数の端末装置が同じタイミングで同一のプリアンブルを送信する場合があり、端末装置主導のランダムアクセスでは競合が生じることがある。このため、端末装置主導のランダムアクセスは、競合ランダムアクセス(contention based random access)とも呼ばれる。競合が生じると競合を解消する処理が必要となり、端末装置と基地局装置との同期確立は遅延することとなる。
【0004】
一方、ネットワーク主導のランダムアクセスにおいては、端末装置は、あらかじめ基地局装置に対してプリアンブルの割り当てを要求し、基地局装置によって割り当てられたプリアンブルをこの基地局装置に対して送信する。したがって、端末装置が送信するプリアンブルの競合が発生することがなく、ネットワーク主導のランダムアクセスは、非競合ランダムアクセス(non-contention based random access)とも呼ばれる。
【0005】
無線通信システムにおいては、競合ランダムアクセス及び非競合ランダムアクセスの一方のみを採用することも可能であるが、両者を組み合わせてランダムアクセスを実現することも可能である。すなわち、利用可能なプリアンブル群の一部のプリアンブルを競合ランダムアクセス用のプリアンブルとし、残りのプリアンブルを非競合ランダムアクセス用のプリアンブルとすることも可能である。そして、このようなランダムアクセスは、例えば端末装置がハンドオーバする場合や、端末装置から基地局装置へ向かう上り回線の同期確立が必要な場合に実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−219852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、非競合ランダムアクセスによればプリアンブルの競合が発生せず、端末装置と基地局装置との同期確立の遅延を防止することができる。しかしながら、非競合ランダムアクセスにおいて各基地局装置が端末装置に割り当て可能なプリアンブルの数は限られており、多くの端末装置がプリアンブルの割り当てを要求する場合には、プリアンブルが不足するという問題がある。すなわち、プリアンブルが一度端末装置に割り当てられると、このプリアンブルは、数十ミリ秒から数秒の間占有され、他の端末装置が使用することは不可能となる。したがって、同時期に非競合ランダムアクセスを実行する端末装置の数が増大すると、一部の端末装置にはプリアンブルが割り当てられないこととなる。
【0008】
特に、競合ランダムアクセス及び非競合ランダムアクセスを組み合わせたランダムアクセスの場合、プリアンブルの割り当て要求が基地局装置に到着した順でプリアンブルの割り当てを行うと、非競合ランダムアクセス用のプリアンブルが不足することがある。そして、プリアンブルの不足により非競合ランダムアクセス用のプリアンブルが割り当てられなかった端末装置は、競合ランダムアクセスを行うことになる。このとき、例えば一定のQoS(Quality of Service)が要求される端末装置に非競合ランダムアクセス用のプリアンブルが割り当てられないと、要求されたQoSが達成されない可能性がある。つまり、他の端末装置よりも高いQoSが要求される端末装置にとって必要な帯域が確保されないという問題がある。
【0009】
この問題について、図22を参照して具体的に説明する。図22においては、プリアンブル#1〜#16が非競合ランダムアクセス用のプリアンブルであり、プリアンブル#17〜#64が競合ランダムアクセス用のプリアンブルである。また、図中斜線で示す端末装置は、帯域保証(Guaranteed Bit Rate)型のQoSの端末装置であり、図中白抜きで示す端末装置は、ベストエフォート(Best Effort)型のQoSの端末装置である。すなわち、図中斜線で示す端末装置には、図中白抜きで示す端末装置よりも高いQoSが要求されている。
【0010】
図22では、プリアンブルの割り当てを要求する端末装置に対して、先着順でプリアンブルを割り当てている。このため、プリアンブル#1〜#16がすべて割り当て済みの状態になると、その後は帯域が保証されたQoSの端末装置であってもプリアンブル#17〜#64のいずれかを利用して競合ランダムアクセスをすることになる。そして、競合ランダムアクセスによれば、端末装置が選択するプリアンブルの競合が発生する場合があり、端末装置と基地局装置の通信開始が遅延する。結果として、端末装置のQoSに見合った帯域を保証できないことがある。
【0011】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、帯域が保証された端末装置による通信開始の遅延を防止し、要求されるQoSを達成することができる基地局装置、識別子割当方法及び識別子割当プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願が開示する基地局装置は、1つの態様において、自装置との間で同期未確立の端末装置の優先度を示す端末情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された端末情報に基づいて前記端末装置の優先度が所定の基準以上であるか否かを判定する判定部と、前記判定部による判定の結果、前記端末装置の優先度が所定の基準以上である場合に、ランダムアクセスによる同期確立の際に用いられる識別子を前記端末装置に割り当てる割当部と、前記割当部によって割り当てられた識別子の情報を含む割当情報を送信する送信部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本願が開示する基地局装置、識別子割当方法及び識別子割当プログラムの1つの態様によれば、帯域が保証された端末装置による通信開始の遅延を防止し、要求されるQoSを達成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施の形態1に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施の形態2に係るネットワーク構成の一例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態2に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、端末情報の具体例を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態2に係るハンドオーバ手順を示すシーケンス図である。
【図6】図6は、実施の形態2に係る基地局装置の動作を示すフロー図である。
【図7】図7は、実施の形態2に係るプリアンブル予約時の処理を示すフロー図である。
【図8】図8は、実施の形態3に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、実施の形態3に係る基地局装置の動作を示すフロー図である。
【図10】図10は、実施の形態4に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、実施の形態4に係る基地局装置の動作を示すフロー図である。
【図12】図12は、実施の形態5に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、実施の形態5に係る下りデータ送信手順を示すシーケンス図である。
【図14】図14は、実施の形態5に係る基地局装置の動作を示すフロー図である。
【図15】図15は、実施の形態6に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図16】図16は、実施の形態6に係る基地局装置の動作を示すフロー図である。
【図17】図17は、実施の形態7に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図18】図18は、実施の形態7に係る基地局装置の動作を示すフロー図である。
【図19】図19は、実施の形態8に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図20】図20は、実施の形態8に係る閾値変更処理を示すフロー図である。
【図21】図21は、コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
【図22】図22は、プリアンブル割当の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願が開示する基地局装置、識別子割当方法及び識別子割当プログラムの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。図1に示す基地局装置100は、端末情報取得部100a、優先度判定部100b、プリアンブル割当部100c及び送信部100dを有している。
【0017】
端末情報取得部100aは、基地局装置100に対してプリアンブルの割り当てを要求する図示しない端末装置の優先度に関する情報(以下「端末情報」という)を取得する。そして、端末情報取得部100aは、取得した端末情報を優先度判定部100bへ出力する。
【0018】
優先度判定部100bは、端末情報取得部100aから出力された端末情報に基づいて、図示しない端末装置の優先度が所定基準以上であるか否かを判定する。すなわち、優先度判定部100bは、例えば閾値比較などにより、図示しない端末装置の優先度を判定する。そして、優先度判定部100bは、優先度の判定結果をプリアンブル割当部100cへ通知する。
【0019】
プリアンブル割当部100cは、優先度判定部100bから通知された判定結果を参照し、図示しない端末装置の優先度が所定基準以上である場合には、この端末装置に対してプリアンブルを割り当てる。そして、プリアンブル割当部100cは、割り当てたプリアンブルを示す割当情報を送信部100dへ出力する。なお、プリアンブル割当部100cは、図示しない端末装置の優先度が所定基準未満である場合には、この端末装置に対してプリアンブルを割り当てない。
【0020】
送信部100dは、プリアンブル割当部100cから出力された割当情報を送信する。具体的には、送信部100dは、図示しない端末装置へ割当情報を直接送信したり、図示しない他の基地局装置を介して送信したりする。
【0021】
次いで、上記のように構成された基地局装置100の動作について説明する。以下では、図示しない端末装置が非競合ランダムアクセスを実行するためにプリアンブルの割り当てを要求する場合の基地局装置100の動作について説明する。
【0022】
図示しない端末装置からのプリアンブルの割り当ての要求があると、端末情報取得部100aによって、この端末装置の端末情報が取得される。取得された端末情報は、優先度判定部100bへ出力され、所定基準と比較される。この結果、図示しない端末装置の優先度が判定される。
【0023】
そして、図示しない端末装置の優先度が所定基準以上である場合には、プリアンブル割当部100cによって、この端末装置にプリアンブルが割り当てられ、送信部100dによって、割当情報が送信される。一方、図示しない端末装置の優先度が所定基準未満である場合には、この端末装置にプリアンブルが割り当てられることはない。
【0024】
これにより、優先度が所定基準以上の端末装置は、送信部100dから送信された割当情報を受信し、割り当てられたプリアンブルを基地局装置100へ送信して非競合ランダムアクセスを実行する。このため、優先度が高い端末装置は、通信開始が遅延する可能性がある競合ランダムアクセスをする必要がなく、要求されるQoSを達成することができる。これに対して、優先度が所定基準未満の端末装置は、プリアンブルが割り当てられないため、ランダムに選択したプリアンブルを基地局装置100へ送信して競合ランダムアクセスを実行する。
【0025】
以上のように、本実施の形態によれば、プリアンブルの割り当てを要求する端末装置の端末情報からこの端末装置の優先度を判定し、優先度が所定基準以上である場合にプリアンブルを割り当てる。このため、比較的高いQoSが要求される端末装置が優先的に非競合ランダムアクセスを実行することができ、帯域が保証された端末装置による通信開始の遅延を防止し、要求されるQoSを達成することができる。
【0026】
(実施の形態2)
実施の形態2では、3GPP(3rd Generation Partnership Project)によって規定されるQCI(QoS Class Identifier)に対応する優先順位によって、端末装置へのプリアンブルの割り当ての有無が判定される。
【0027】
図2は、実施の形態2に係るネットワーク構成の一例を示す図である。図2に示すように、基地局装置100−1と端末装置200が無線通信を行っており、基地局装置100−1、100−2及び制御局装置300は、互いに有線接続されている。また、制御局装置300は、外部ネットワークNに接続している。端末装置200は、通信相手を基地局装置100−1から基地局装置100−2に変更するハンドオーバを行う際、基地局装置100−2との同期を確立するためにランダムアクセスを実行する。
【0028】
基地局装置100−1は、端末装置200との間の無線通信状況などに応じて、端末装置200にハンドオーバさせることを決定する。そして、基地局装置100−1は、端末装置200の端末情報をハンドオーバ先の基地局装置100−2へ送信する。
【0029】
基地局装置100−2は、無線リソースなどの余裕を考慮して、端末装置200のハンドオーバを受け入れるか否かを判定する。そして、基地局装置100−2は、ハンドオーバを受け入れる場合、基地局装置100−1から受信する端末情報に基づいて端末装置200の優先度を判定し、プリアンブルの割り当ての有無を決定する。プリアンブルを割り当てる場合には、基地局装置100−2は、割り当てたプリアンブルを端末装置200のために確保し、基地局装置100−1を介して割当情報を端末装置200へ送信する。
【0030】
端末装置200は、基地局装置100−1から割当情報を受信し、割当情報に含まれるプリアンブルを基地局装置100−2へ送信する。これにより、端末装置200は、基地局装置100−2との間で同期を確立し、ハンドオーバが完了する。
【0031】
制御局装置300は、基地局装置100−1、100−2と例えばS1インタフェースによって接続し、基地局装置100−1、100−2と外部ネットワークNとの間のデータのやり取りや、基地局装置100−1、100−2間のデータのやり取りを制御する。なお、制御局装置300には、基地局装置100−1、100−2以外の基地局装置が接続されていても良い。また、図2中破線で示したように、基地局装置100−1、100−2は、例えばX2インタフェースによって直接接続されていても良い。
【0032】
図3は、実施の形態2に係る基地局装置100−1、100−2の構成を示すブロック図である。図3においては、説明の便宜上、基地局装置100−1、100−2の構成が異なっているが、実際は2つの基地局装置100−1、100−2が同一の構成を有していても良い。
【0033】
基地局装置100−1は、無線通信部101、ハンドオーバ判定部(以下「HO判定部」と略記する)102、端末情報記憶部103、端末情報取得部104及び有線通信部105を有している。
【0034】
無線通信部101は、アンテナを介して端末装置200と無線通信する。具体的には、無線通信部101は、例えば端末装置200における信号強度の測定結果など、ハンドオーバの有無を決定する情報を含む信号をアンテナを介して受信する。また、無線通信部101は、有線通信部105から出力されるハンドオーバメッセージ(以下「HOメッセージ」と略記する)をアンテナを介して端末装置200へ送信する。HOメッセージには、端末装置200のハンドオーバの有無を示す情報が含まれるとともに、端末装置200にプリアンブルが割り当てられた場合には、割り当てられたプリアンブルを指定する情報とが含まれている。
【0035】
HO判定部102は、端末装置200における信号強度の測定結果を含む受信信号に基づいて、端末装置200にハンドオーバさせるか否かを判定する。具体的には、HO判定部102は、例えば基地局装置100−1と端末装置200の間の信号強度が所定レベル以下であり、かつ基地局装置100−2と端末装置200の間の信号強度が所定レベル以上である場合に、端末装置200にハンドオーバさせると判定する。そして、HO判定部102は、端末装置200にハンドオーバさせると判定すると、その旨を端末情報取得部104へ通知する。
【0036】
端末情報記憶部103は、端末装置200を含むネットワーク内の端末装置の端末情報を記憶する。具体的には、端末情報記憶部103は、例えば端末装置が確立するコネクションそれぞれに設定された通信品質の指標値となるQCIを各端末装置の端末情報として記憶する。すなわち、端末装置と基地局装置の間には、通常、複数のコネクションが確立されており、それぞれのコネクションは伝送されるデータが異なるため、要求されるQoSも異なる。そこで、端末情報記憶部103は、それぞれの端末装置が確立するすべてのコネクションのQCIを端末装置に対応付けて記憶している。QCIは、例えば図4に示すように、複数の項目に関して各コネクションのQoSを表している。すなわち、QCIは、例えばコネクションのリソースタイプ、優先順位、許容遅延及び許容損失率に対応している。
【0037】
そして、例えばQCIが「1」のコネクションは、リソースタイプが帯域保証された「GBR(Guaranteed Bit Rate)」の接続であり、優先順位が2番目に高く、許容遅延及び許容損失率がそれぞれ「100ms(ミリ秒)」及び「10-2」である。また、QCIが「5」のコネクションは、リソースタイプが帯域保証されていない「Non−GBR」の接続であり、優先順位が1番高く、許容遅延及び許容損失率がそれぞれ「100ms」及び「10-6」である。端末情報記憶部103は、ネットワーク内のそれぞれの端末装置について、端末装置が確立するすべてのコネクションのQCIを端末情報として記憶している。
【0038】
端末情報取得部104は、端末装置200にハンドオーバさせる旨がHO判定部102から通知されると、端末装置200の端末情報を端末情報記憶部103から取得する。すなわち、端末情報取得部104は、端末装置200に対応付けて記憶された全コネクションのQCIを端末情報記憶部103から取得する。
【0039】
有線通信部105は、端末情報取得部104によって取得された端末装置200の端末情報をハンドオーバ要求と共に基地局装置100−2へ送信する。また、有線通信部105は、HOメッセージを基地局装置100−2から受信し、HOメッセージを無線通信部101へ出力する。なお、有線通信部105は、S1インタフェースにより制御局装置300を介して基地局装置100−2と接続していても良く、X2インタフェースにより直接基地局装置100−2と接続していても良い。
【0040】
一方、基地局装置100−2は、有線通信部106、ハンドオーバ処理部(以下「HO処理部」と略記する)107、優先順位取得部108、閾値比較部109、プリアンブル管理部110、HOメッセージ生成部111、タイマ部112、無線通信部113及びランダムアクセス処理部(以下「RA処理部」と略記する)を有している。
【0041】
有線通信部106は、基地局装置100−1から送信された端末装置200の端末情報をハンドオーバ要求と共に受信する。また、有線通信部106は、HOメッセージ生成部111によって生成されるHOメッセージを基地局装置100−1へ送信する。なお、有線通信部106も有線通信部105と同様に、S1インタフェースにより制御局装置300を介して基地局装置100−1と接続していても良く、X2インタフェースにより直接基地局装置100−1と接続していても良い。
【0042】
HO処理部107は、有線通信部106によってハンドオーバ要求が受信されると、無線リソースの余裕などを考慮して、端末装置200のハンドオーバを許可するか否かを判定する。すなわち、HO処理部107は、例えば既に基地局装置100−2と無線通信中の端末装置の数が所定数未満であり、無線リソースに余裕がある場合には、端末装置200のハンドオーバを許可する。そして、HO処理部107は、ハンドオーバの可否を閾値比較部109へ通知する。
【0043】
優先順位取得部108は、有線通信部106によって受信された端末情報から最も高い優先順位を取得する。すなわち、上述したように、端末情報は、端末装置200が確立する複数のコネクションのQCIを含んでいるため、複数のQCIにそれぞれ優先順位が対応している。そこで、優先順位取得部108は、これらのQCIに対応する優先順位のうち最も高い優先順位を取得する。例えば有線通信部106が端末情報として図4に例示したQCIのうちQCI「1」、「3」及び「6」を受信すると、優先順位取得部108は、QCI「1」に対応する優先順位「2」を取得する。
【0044】
閾値比較部109は、HO処理部107によって端末装置200のハンドオーバが許可されると、優先順位取得部108によって取得された優先順位と所定の閾値とを比較する。そして、閾値比較部109は、優先順位が所定の順位より高く、優先順位の値が所定の閾値未満の場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定する。一方、閾値比較部109は、優先順位が所定の順位より低く、優先順位の値が所定の閾値以上の場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定する。なお、閾値比較部109は、HO処理部107によって端末装置200のハンドオーバが許可されない場合には、優先順位に関する閾値比較をせずに、ハンドオーバ不許可の旨をHOメッセージ生成部111へ通知する。
【0045】
プリアンブル管理部110は、基地局装置100−2へのランダムアクセスに利用可能なプリアンブル群を記憶しており、それぞれのプリアンブルの端末装置への割り当て状況を管理する。すなわち、プリアンブル管理部110は、HOメッセージ生成部111によって端末装置にプリアンブルが割り当てられると、このプリアンブルが割り当て済みであることを記憶する。また、プリアンブル管理部110は、RA処理部114における同期確立に使用されたプリアンブルやタイマ部112の対応するタイマが満了したプリアンブルを解放し、これらのプリアンブルが未割り当てであることを記憶する。
【0046】
HOメッセージ生成部111は、閾値比較部109による比較の結果、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定されると、プリアンブル管理部110における割り当て状況を参照し、未割り当てのプリアンブルを端末装置200に割り当てる。そして、HOメッセージ生成部111は、端末装置200のハンドオーバを許可する旨と端末装置200に割り当てるプリアンブルの割当情報とを含むHOメッセージを生成する。また、HOメッセージ生成部111は、閾値比較部109による比較の結果、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定されると、端末装置200にプリアンブルは割り当てられないもののハンドオーバを許可する旨を含むHOメッセージを生成する。なお、HOメッセージ生成部111は、端末装置200のハンドオーバが許可されない場合には、その旨のHOメッセージを生成する。
【0047】
タイマ部112は、プリアンブル管理部110によって管理されるプリアンブル群それぞれに対応するタイマを備えており、HOメッセージ生成部111によって端末装置にプリアンブルが割り当てられると、対応するタイマを開始する。そして、タイマ部112は、タイマが満了すると、対応するプリアンブルを解放するようプリアンブル管理部110に指示する。
【0048】
無線通信部113は、アンテナを介して端末装置200と無線通信する。具体的には、無線通信部113は、端末装置200から送信されたプリアンブルをアンテナを介して受信し、RA処理部114へ出力する。また、ランダムアクセス処理を経た同期確立によりハンドオーバが完了すると、無線通信部113は、端末装置200との間でアンテナを介して信号の送受信を行う。
【0049】
RA処理部114は、無線通信部113から出力されるプリアンブルを用いてランダムアクセス処理を実行し、端末装置200との同期を確立する。そして、RA処理部114は、同期確立に使用されたプリアンブルが使用済みであることをプリアンブル管理部110へ通知する。
【0050】
次いで、端末装置200のハンドオーバ手順について、図5を参照しながら説明する。図5は、端末装置200が基地局装置100−1から基地局装置100−2へハンドオーバする際のハンドオーバ手順を示すシーケンス図である。
【0051】
初期状態では、基地局装置100−1と端末装置200が無線通信を行っており、端末装置200は、基地局装置100−1との間の信号強度を測定するとともに、周辺の基地局装置100−2との間の信号強度を測定する(ステップS101)。そして、端末装置200は、測定した信号強度を基地局装置100−1へ報告する(ステップS102)。信号強度は、端末装置200がハンドオーバをすべきか否かの指標となる。そこで、基地局装置100−1の無線通信部101によって信号強度が受信されると、HO判定部102によって、端末装置200のハンドオーバの有無が判定される。ここでは、例えば基地局装置100−1との間の信号強度よりも基地局装置100−2との間の信号強度の方が高く、端末装置200がハンドオーバすべきであると決定されたものとして説明を続ける(ステップS103)。
【0052】
HO判定部102によってハンドオーバすべきであると決定されると、端末情報取得部104によって、端末装置200が確立する全コネクションのQCIが端末情報として端末情報記憶部103から取得される。取得された端末情報は、有線通信部105によって、ハンドオーバ要求と共に基地局装置100−2へ送信される(ステップS104)。
【0053】
そして、ハンドオーバ要求及び端末情報は、基地局装置100−2の有線通信部106によって受信され、優先順位取得部108によって、端末情報に含まれるQCIから最も高い優先順位が取得される。取得された優先順位の値は、閾値比較部109へ出力される。一方、HO処理部107によって無線リソースの余裕などが判定され(ステップS105)、端末装置200のハンドオーバを許可するか否かが決定される。ここでは、例えば基地局装置100−2と無線通信中の端末装置の数が所定数未満であり、端末装置200のハンドオーバを許可すると決定されたものとして説明を続ける。
【0054】
HO処理部107によってハンドオーバが許可されると、閾値比較部109によって、優先順位取得部108から出力された優先順位の値と所定の閾値とが比較される。そして、優先順位が所定の順位よりも高い場合には、端末装置200が確立するコネクションの中に少なくとも1つ優先度が高いコネクションが存在することを意味するため、端末装置200にプリアンブルを割り当てることが決定される。ここで、優先順位が所定の順位よりも低い場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てないことが決定されるが、以下では優先順位が所定の順位よりも高かったものとして説明を続ける。
【0055】
閾値比較部109によって端末装置200にプリアンブルを割り当てることが決定されると、HOメッセージ生成部111によって、プリアンブル管理部110において未割り当てとなっているプリアンブルが端末装置200に割り当てられる(ステップS106)。そして、HOメッセージ生成部111によって、割り当てたプリアンブルに関する割当情報とハンドオーバを許可する旨とを含むHOメッセージが生成され、有線通信部106から基地局装置100−1へ送信される(ステップS107)。なお、端末装置200へのプリアンブルの割り当てと同時に、プリアンブル管理部110においては、端末装置200に割り当てられたプリアンブルが割り当て済みと記憶され、このプリアンブルに対応するタイマ部112のタイマが開始する。すなわち、タイマ部112のタイマが満了するまでは、端末装置200によるプリアンブルの使用が予約され、このプリアンブルが他の端末装置に割り当てられることはない。
【0056】
有線通信部106から送信されたHOメッセージは、基地局装置100−1の有線通信部105及び無線通信部101を経由して、端末装置200へ転送される(ステップS108)。端末装置200は、受信したHOメッセージにプリアンブルが含まれているため、RACHを用いてこのプリアンブルを基地局装置100−2へ送信する(ステップS109)。これにより、基地局装置100−2においては、RA処理部114によるランダムアクセス処理が実行され、端末装置200との間の同期が確立され、端末装置200のハンドオーバが完了する。
【0057】
次に、上述したハンドオーバ手順における基地局装置100−2の動作について、図6に示すフロー図を参照しながら詳細に説明する。図6は、実施の形態2に係る基地局装置100−2の動作を示すフロー図である。以下では、ハンドオーバ要求と共に端末装置200の端末情報が基地局装置100−2の有線通信部106によって受信された後の動作について説明する。
【0058】
有線通信部106によって、ハンドオーバ要求及び端末装置200の端末情報が受信されると、優先順位取得部108によって、端末情報に含まれるQCIに対応する優先順位の中から最も高い優先順位が取得される(ステップS201)。すなわち、優先順位取得部108によって、端末装置200が確立する複数のコネクションの優先順位のうち最も高い優先順位の値が取得され、閾値比較部109へ出力される。
【0059】
一方、有線通信部106によってハンドオーバ要求も受信されているため、HO処理部107によって、無線リソースの余裕などが判定され、端末装置200のハンドオーバを許可するか否かが判定される(ステップS202)。この判定の結果、ハンドオーバが許可されない場合は(ステップS202No)、HOメッセージ生成部111によってハンドオーバ不許可の旨のHOメッセージが生成され、有線通信部106から基地局装置100−1を介して端末装置200へ送信される(ステップS207)。
【0060】
また、端末装置200のハンドオーバが許可される場合は(ステップS202Yes)、閾値比較部109によって、優先順位取得部108によって取得された優先順位が所定の順位より高いか否かが判定される(ステップS203)。換言すれば、端末装置200が確立するコネクションの中に優先順位が所定基準より高いコネクションが存在し、端末装置200の優先度が高いか否かが判定される。
【0061】
この判定の結果、優先順位が所定の順位より低く優先順位の値が所定の閾値以上であるため、端末装置200の優先度が低いと判断された場合には(ステップS203No)、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定される(ステップS206)。したがって、この場合には、端末装置200は、ランダムに選択したプリアンブルを送信する競合ランダムアクセスを実行することになる。
【0062】
一方、優先順位が所定の順位より高く優先順位の値が所定の閾値未満であるため、端末装置200の優先度が高いと判断された場合には(ステップS203Yes)、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定される(ステップS204)。そして、HOメッセージ生成部111によって、プリアンブル管理部110におけるプリアンブルの割り当て状況が参照され、未割り当てのプリアンブルが端末装置200に割り当てられる。これにより、プリアンブル管理部110においては、端末装置200に割り当てられたプリアンブルが割り当て済みとして記憶される。同時に、タイマ部112によって、端末装置200に割り当てられたプリアンブルに対応するタイマが開始される(ステップS205)。
【0063】
このように、本実施の形態においては、各コネクションのQCIが示す優先順位に基づいて端末装置200の優先度を判断し、端末装置200の優先度が高ければプリアンブルを割り当てる一方、優先度が低ければプリアンブルを割り当てない。このため、優先度が高い端末装置は、割り当てられたプリアンブルを使用して非競合ランダムアクセスを実行することが可能になる。結果として、要求されるQoSが比較的高い優先すべき端末装置の同期確立及び通信開始が遅延することはなく、要求されるQoSを達成することができる。また、優先度が低い端末装置は、プリアンブルが割り当てられないため、競合ランダムアクセスを実行することになる。結果として、要求されるQoSが比較的低くあまり優先しなくても良い端末装置にプリアンブルが割り当てられることを防止し、プリアンブルの不足の発生を抑制することができる。
【0064】
端末装置200へのプリアンブルの割り当てが行われると、HOメッセージ生成部111によって、割り当てられたプリアンブルを通知するためのHOメッセージが生成される。具体的には、端末装置200にプリアンブルが割り当てられた場合には、割り当てられたプリアンブルによりハンドオーバを実行することを指示するHOメッセージがHOメッセージ生成部111によって生成される。また、端末装置200にプリアンブルが割り当てられなかった場合には、競合ランダムアクセスによりハンドオーバを実行することを指示するHOメッセージがHOメッセージ生成部111によって生成される。
【0065】
そして、HOメッセージ生成部111によって生成されたHOメッセージは、有線通信部106によって、基地局装置100−1へ送信される(ステップS207)。その後、割当情報を含むHOメッセージは、基地局装置100−1の有線通信部105及び無線通信部101を経て、端末装置200へ送信される。
【0066】
HOメッセージを受信した端末装置200は、RACHを用いて、割り当てられたプリアンブルを基地局装置100−2へ送信し、非競合ランダムアクセスを実行することになる。この間、基地局装置100−2においては、端末装置200に割り当てられたプリアンブルの使用が予約されている。そこで、端末装置200に対するプリアンブルの割り当てにより、プリアンブルの使用が予約されている際の基地局装置100−2の動作について、図7に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0067】
有線通信部106からHOメッセージが送信された後は、無線通信部113によって、端末装置200からのプリアンブルの受信が待機される(ステップS301)。ここで、プリアンブルが受信されない間は(ステップS301No)、プリアンブル管理部110によって、端末装置200に割り当てられたプリアンブルに対応するタイマ部112のタイマが満了したか否かが継続的に確認される(ステップS303)。そして、タイマが満了していない場合には(ステップS303No)、引き続き無線通信部113によって端末装置200からのプリアンブルの受信が待機される。
【0068】
また、プリアンブルが受信されないままタイマが満了した場合には(ステップS303Yes)、端末装置200に割り当てられたプリアンブルの有効性が失われ、プリアンブル管理部110によって、このプリアンブルが解放される(ステップS304)。すなわち、プリアンブル管理部110によって割り当て済みと記憶されていたプリアンブルの割り当て状況が未割り当てに変更される。これにより、このプリアンブルを他の端末装置に対して割り当てることが可能となる。このように、割り当てられたプリアンブルに有効期限を設けることにより、プリアンブルの使用が予約されたままになることを防止し、プリアンブルの不足の発生をより抑制することができる。
【0069】
一方、プリアンブル受信の待機中に無線通信部113によってプリアンブルが受信された場合は(ステップS301Yes)、RA処理部114によって、ランダムアクセス処理により端末装置200との同期が確立される(ステップS302)。そして、端末装置200に対するプリアンブルの割り当ては不要になることから、プリアンブル管理部110によって、このプリアンブルが解放される(ステップS304)。すなわち、プリアンブル管理部110によって割り当て済みと記憶されていたプリアンブルの割り当て状況が未割り当てに変更される。
【0070】
以上のように、本実施の形態によれば、プリアンブルの割り当てを要求する端末装置が確立するコネクションの優先順位のうち最も高い優先順位によって端末装置の優先度を判定し、優先順位が所定の順位より高い場合にプリアンブルを割り当てる。このため、優先順位が比較的高い端末装置が優先的に非競合ランダムアクセスを実行することができ、帯域が保証された端末装置による通信開始の遅延を防止し、要求されるQoSを達成することができる。
【0071】
(実施の形態3)
実施の形態3では、QCIに対応する許容遅延によって、端末装置へのプリアンブルの割り当ての有無が判定される。
【0072】
本実施の形態に係るネットワーク構成は、図2に示した実施の形態2のネットワーク構成と同様であるため、その説明を省略する。すなわち、本実施の形態においても、実施の形態2と同様に、端末装置200がハンドオーバする際のランダムアクセスについて説明する。
【0073】
図8は、実施の形態3に係る基地局装置100−2の構成を示すブロック図である。図8において、図3と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。また、図8においては、基地局装置100−1の内部構成を省略しているが、基地局装置100−1の内部構成は、図3と同様である。
【0074】
図8に示す基地局装置100−2は、図3に示す優先順位取得部108及び閾値比較部109をそれぞれ許容遅延取得部201及び閾値比較部202に代えた構成を有している。
【0075】
許容遅延取得部201は、有線通信部106によって受信された端末情報から最も小さい許容遅延を取得する。すなわち、実施の形態2で述べたように、端末情報は、端末装置200が確立する複数のコネクションのQCIを含んでいるため、複数のQCIにそれぞれ許容遅延が対応している。そこで、許容遅延取得部201は、これらのQCIに対応する許容遅延のうち最も小さい許容遅延を取得する。例えば有線通信部106が端末情報として図4に例示したQCIのうちQCI「1」、「3」及び「6」を受信すると、許容遅延取得部201は、QCI「3」に対応する許容遅延「50ms」を取得する。許容遅延は、小さいほど条件が厳しいといえるため、許容遅延が小さいコネクションは、優先度が高いコネクションといえる。
【0076】
閾値比較部202は、HO処理部107によって端末装置200のハンドオーバが許可されると、許容遅延取得部201によって取得された許容遅延と所定の閾値とを比較する。そして、閾値比較部202は、許容遅延が所定の閾値より小さい場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定する。一方、閾値比較部202は、許容遅延が所定の閾値より大きい場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定する。
【0077】
次いで、上記のように構成された基地局装置100−2の動作について、図9に示すフロー図を参照しながら説明する。図9において、図6と同じ部分には同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。以下では、ハンドオーバ要求と共に端末装置200の端末情報が基地局装置100−2の有線通信部106によって受信された後の動作について説明する。
【0078】
有線通信部106によって、ハンドオーバ要求及び端末装置200の端末情報が受信されると、許容遅延取得部201によって、端末情報に含まれるQCIに対応する許容遅延の中から最も小さい許容遅延が取得される(ステップS211)。すなわち、許容遅延取得部201によって、端末装置200が確立する複数のコネクションの許容遅延のうち最も小さい許容遅延が取得され、閾値比較部202へ出力される。
【0079】
一方、有線通信部106によってハンドオーバ要求も受信されているため、HO処理部107によって、端末装置200のハンドオーバを許可するか否かが判定される(ステップS202)。この判定の結果、ハンドオーバが許可されない場合は(ステップS202No)、HOメッセージ生成部111によってハンドオーバ不許可の旨のHOメッセージが生成され、有線通信部106から基地局装置100−1を介して端末装置200へ送信される(ステップS207)。
【0080】
また、端末装置200のハンドオーバが許可される場合は(ステップS202Yes)、閾値比較部202によって、許容遅延取得部201によって取得された許容遅延が所定の閾値より小さいか否かが判定される(ステップS212)。換言すれば、端末装置200が確立するコネクションの中に許容遅延が所定基準より小さく条件が厳しいコネクションが存在し、端末装置200の優先度が高いか否かが判定される。
【0081】
この判定の結果、許容遅延が所定の閾値より大きく、端末装置200の優先度が低いと判断された場合には(ステップS212No)、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定される(ステップS206)。一方、許容遅延が所定の閾値より小さく、端末装置200の優先度が高いと判断された場合には(ステップS212Yes)、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定される(ステップS204)。以後、実施の形態2と同様に、HOメッセージ生成部111によってHOメッセージが生成され、有線通信部106から基地局装置100−1へ送信される(ステップS207)。
【0082】
このように、本実施の形態においては、各コネクションのQCIが示す許容遅延に基づいて端末装置200の優先度を判断し、端末装置200の優先度が高ければプリアンブルを割り当てる一方、優先度が低ければプリアンブルを割り当てない。このため、優先度が高い端末装置は、割り当てられたプリアンブルを使用して非競合ランダムアクセスを実行することが可能になる。結果として、要求されるQoSが比較的高い優先すべき端末装置の同期確立及び通信開始が遅延することはなく、要求されるQoSを達成することができる。また、優先度が低い端末装置は、プリアンブルが割り当てられないため、競合ランダムアクセスを実行することになる。結果として、要求されるQoSが比較的低くあまり優先しなくても良い端末装置にプリアンブルが割り当てられることを防止し、プリアンブルの不足の発生を抑制することができる。
【0083】
以上のように、本実施の形態によれば、プリアンブルの割り当てを要求する端末装置が確立するコネクションの許容遅延のうち最も小さい許容遅延によって端末装置の優先度を判定し、許容遅延が所定の閾値より小さい場合にプリアンブルを割り当てる。このため、許容遅延が比較的小さい端末装置が優先的に非競合ランダムアクセスを実行することができ、帯域が保証された端末装置による通信開始の遅延を防止し、要求されるQoSを達成することができる。
【0084】
なお、上記実施の形態3においては、QCIに対応する許容遅延によって端末装置200の優先度を判定することとした。しかし、QCIに対応する許容損失率によって端末装置200の優先度を判定することも可能である。許容損失率は、小さいほど条件が厳しいといえるため、許容損失率が小さいコネクションは、優先度が高いコネクションといえる。したがって、端末情報から最も小さい許容損失率を取得し、取得した許容損失率が所定の閾値より小さい場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てるようにしても良い。
【0085】
(実施の形態4)
実施の形態4では、QCIに対応するリソースタイプによって、端末装置へのプリアンブルの割り当ての有無が判定される。
【0086】
本実施の形態に係るネットワーク構成は、図2に示した実施の形態2のネットワーク構成と同様であるため、その説明を省略する。すなわち、本実施の形態においても、実施の形態2と同様に、端末装置200がハンドオーバする際のランダムアクセスについて説明する。
【0087】
図10は、実施の形態4に係る基地局装置100−2の構成を示すブロック図である。図10において、図3と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。また、図10においては、基地局装置100−1の内部構成を省略しているが、基地局装置100−1の内部構成は、図3と同様である。
【0088】
図10に示す基地局装置100−2は、図3に示す優先順位取得部108及び閾値比較部109をそれぞれリソースタイプ取得部301及びリソースタイプ判定部302に代えた構成を有している。
【0089】
リソースタイプ取得部301は、有線通信部106によって受信された端末情報から各コネクションのQCIに対応するリソースタイプを取得する。すなわち、実施の形態2で述べたように、端末情報は、端末装置200が確立する複数のコネクションのQCIを含んでいるため、複数のQCIにそれぞれリソースタイプが対応している。そこで、リソースタイプ取得部301は、これらのQCIに対応するリソースタイプ「GBR」又は「Non−GBR」をそれぞれ取得する。例えば有線通信部106が端末情報として図4に例示したQCIのうちQCI「1」、「3」及び「6」を受信すると、リソースタイプ取得部301は、それぞれ「GBR」、「GBR」及び「Non−GBR」を取得する。リソースタイプは、GBRである場合に帯域を保証する必要があることから、GBRに対応するコネクションは、優先度が高いコネクションといえる。
【0090】
リソースタイプ判定部302は、HO処理部107によって端末装置200のハンドオーバが許可されると、リソースタイプ取得部301によって取得されたリソースタイプの中に「GBR」があるか否かを判定する。そして、リソースタイプ判定部302は、1つでも「GBR」がある場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定する。一方、リソースタイプ判定部302は、「Non−GBR」しかない場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定する。
【0091】
次いで、上記のように構成された基地局装置100−2の動作について、図11に示すフロー図を参照しながら説明する。図11において、図6と同じ部分には同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。以下では、ハンドオーバ要求と共に端末装置200の端末情報が基地局装置100−2の有線通信部106によって受信された後の動作について説明する。
【0092】
有線通信部106によって、ハンドオーバ要求及び端末装置200の端末情報が受信されると、リソースタイプ取得部301によって、端末情報に含まれる全コネクションのQCIに対応するリソースタイプが取得される(ステップS221)。すなわち、リソースタイプ取得部301によって、端末装置200が確立する複数のコネクションのリソースタイプが取得され、リソースタイプ判定部302へ出力される。
【0093】
一方、有線通信部106によってハンドオーバ要求も受信されているため、HO処理部107によって、端末装置200のハンドオーバを許可するか否かが判定される(ステップS202)。この判定の結果、ハンドオーバが許可されない場合は(ステップS202No)、HOメッセージ生成部111によってハンドオーバ不許可の旨のHOメッセージが生成され、有線通信部106から基地局装置100−1を介して端末装置200へ送信される(ステップS207)。
【0094】
また、端末装置200のハンドオーバが許可される場合は(ステップS202Yes)、リソースタイプ判定部302によって、リソースタイプ取得部301によって取得されたリソースタイプの中に「GBR」が含まれる否かが判定される(ステップS222)。換言すれば、端末装置200が確立するコネクションの中に帯域が保証されたリソースタイプ「GBR」のコネクションが存在し、端末装置200の優先度が高いか否かが判定される。
【0095】
この判定の結果、すべてのリソースタイプが「Non−GBR」であり、端末装置200の優先度が低いと判断された場合には(ステップS222No)、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定される(ステップS206)。一方、少なくとも1つのリソースタイプが「GBR」であり、端末装置200の優先度が高いと判断された場合には(ステップS222Yes)、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定される(ステップS204)。以後、実施の形態2と同様に、HOメッセージ生成部111によってHOメッセージが生成され、有線通信部106から基地局装置100−1へ送信される(ステップS207)。
【0096】
このように、本実施の形態においては、各コネクションのQCIが示すリソースタイプに基づいて端末装置200の優先度を判断し、端末装置200の優先度が高ければプリアンブルを割り当てる一方、優先度が低ければプリアンブルを割り当てない。このため、優先度が高い端末装置は、割り当てられたプリアンブルを使用して非競合ランダムアクセスを実行することが可能になる。結果として、要求されるQoSが比較的高い優先すべき端末装置の同期確立及び通信開始が遅延することはなく、要求されるQoSを達成することができる。また、優先度が低い端末装置は、プリアンブルが割り当てられないため、競合ランダムアクセスを実行することになる。結果として、要求されるQoSが比較的低くあまり優先しなくても良い端末装置にプリアンブルが割り当てられることを防止し、プリアンブルの不足の発生を抑制することができる。
【0097】
以上のように、本実施の形態によれば、プリアンブルの割り当てを要求する端末装置が確立するコネクションのリソースタイプによって端末装置の優先度を判定し、帯域保証をするリソースタイプが含まれる場合にプリアンブルを割り当てる。このため、一定の帯域が必要なコネクションを有する端末装置が優先的に非競合ランダムアクセスを実行することができ、帯域が保証された端末装置による通信開始の遅延を防止し、要求されるQoSを達成することができる。
【0098】
(実施の形態5)
上記実施の形態2〜4においては、端末装置200がハンドオーバする際のランダムアクセスについて説明した。しかしながら、ランダムアクセスは、ハンドオーバの際のみならず、例えば上り回線の同期確立が必要な場合などにも実行される。そこで、実施の形態5においては、上り回線の同期外れが発生している場合に端末装置200が実行するランダムアクセスについて説明する。すなわち、実施の形態5では、基地局装置及び端末装置間のデータを送受信する特定のコネクションについて端末情報から優先度が判定され、端末装置へのプリアンブルの割り当ての有無が判定される。
【0099】
本実施の形態に係るネットワーク構成は、図2に示した実施の形態2のネットワーク構成と同様であるが、本実施の形態においては、端末装置200はハンドオーバをしない。そこで、以下においては、基地局装置100と端末装置200の間におけるランダムアクセスについて説明する。具体的には、基地局装置100から下り回線によって端末装置200へ送信すべきデータがある場合に、再送要求などに用いられる上り回線の同期外れが発生している際のランダムアクセスについて説明する。
【0100】
図12は、実施の形態5に係る基地局装置100の構成を示すブロック図である。図12に示す基地局装置100は、有線通信部401、同期外れ判定部402、端末情報記憶部403、優先順位取得部404、閾値比較部405、プリアンブル管理部406、RA要求生成部407、タイマ部408、下りデータ送出部409、無線通信部410及びRA処理部411を有している。
【0101】
有線通信部401は、端末装置200を送信先とするユーザデータを制御局装置300から受信する。換言すれば、有線通信部401は、下り回線によって端末装置200へ送信すべきデータ(以下「下りデータ」という)を制御局装置300から受信する。なお、有線通信部401は、S1インタフェースにより制御局装置300と接続している。
【0102】
同期外れ判定部402は、有線通信部401によって下りデータが受信されると、端末装置200との間の上り回線の同期外れが発生しているか否かを判定する。具体的には、同期外れ判定部402は、例えば上り回線の同期が確立されてから所定時間以上経過した場合に、上り回線の同期外れが発生していると判定する。すなわち、上り回線は、端末装置200から基地局装置100へ向かう回線であるため、端末装置200がデータを送信しない時間が継続すると、同期外れが発生する。このため、同期外れ判定部402は、同期確立から長時間が経過している場合に、上り回線の同期外れが発生していると判定する。
【0103】
そして、同期外れ判定部402は、下りデータを下りデータ送出部409へ出力するが、上り回線の同期外れが発生している場合には、上り回線の同期確立後に下りデータを送出するように下りデータ送出部409へ指示する。上り回線の同期外れが発生していると、下りデータを送信しても、端末装置200によるACKの返送や自動再送要求(HARQ)などの実行が不可能となる。このため、同期外れ判定部402は、下りデータ送出部409に対して、下りデータの送出を待機させる。
【0104】
端末情報記憶部403は、端末装置200を含むネットワーク内の端末装置の端末情報を記憶する。具体的には、端末情報記憶部403は、例えば端末装置が確立するコネクションそれぞれに設定されたQoSの指標値となるQCIを各端末装置の端末情報として記憶する。すなわち、端末情報記憶部403は、実施の形態2に係る端末情報記憶部103と同様の端末情報を記憶している。
【0105】
優先順位取得部404は、同期外れ判定部402によって上り回線の同期外れが発生していると判定されると、端末情報記憶部403に記憶された端末装置200の端末情報から、下りデータの伝送に用いられるコネクションに対応する優先順位を取得する。すなわち、上り回線の同期外れが発生している場合には、同期確立のためのランダムアクセスが実行されることになるため、優先順位取得部404は、端末装置200に対するプリアンブルの割り当ての有無を決定するために優先順位を取得する。また、上述したように、端末情報は、端末装置200が確立する複数のコネクションのQCIを含んでいるため、複数のQCIにそれぞれ優先順位が対応している。そこで、優先順位取得部404は、これらのQCIに対応する優先順位のうち実際の下りデータの伝送及び自動再送要求などに用いられるコネクションの優先順位を取得する。
【0106】
閾値比較部405は、優先順位取得部404によって取得された優先順位と所定の閾値とを比較する。そして、閾値比較部405は、優先順位が所定の順位より高い(すなわち、優先順位の値が所定の閾値未満)場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定する。一方、閾値比較部405は、優先順位が所定の順位より低く、優先順位の値が所定の閾値以上の場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定する。
【0107】
プリアンブル管理部406は、利用可能なプリアンブル群を記憶しており、それぞれのプリアンブルの端末装置への割り当て状況を管理する。すなわち、プリアンブル管理部406は、RA要求生成部407によって端末装置にプリアンブルが割り当てられると、このプリアンブルが割り当て済みであることを記憶する。また、プリアンブル管理部406は、RA処理部411における同期確立に使用されたプリアンブルやタイマ部408の対応するタイマが満了したプリアンブルを解放し、これらのプリアンブルが未割り当てであることを記憶する。
【0108】
RA要求生成部407は、閾値比較部405による比較の結果、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定されると、プリアンブル管理部406における割り当て状況を参照し、未割り当てのプリアンブルを端末装置200に割り当てる。そして、RA要求生成部407は、端末装置200に割り当てるプリアンブルを含むRA要求を生成する。また、RA要求生成部407は、閾値比較部405による比較の結果、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定されると、端末装置200にプリアンブルは割り当てられない旨のRA要求を生成する。
【0109】
タイマ部408は、プリアンブル管理部406によって管理されるプリアンブル群それぞれに対応するタイマを備えており、RA要求生成部407によって端末装置にプリアンブルが割り当てられると、対応するタイマを開始する。そして、タイマ部408は、タイマが満了すると、対応するプリアンブルを解放するようプリアンブル管理部406に指示する。
【0110】
下りデータ送出部409は、同期外れ判定部402から出力される下りデータを無線通信部410へ送出し、無線通信部410から端末装置200へ送信する。ただし、下りデータ送出部409は、同期外れ判定部402から下りデータの送出を待機するように指示された場合は、下りデータの送出を待機する。そして、下りデータ送出部409は、上り回線の同期が確立された旨がRA処理部411から通知されると、待機していた下りデータの送出を実行する。また、下りデータ送出部409は、RA要求生成部407によって生成されたRA要求を無線通信部410から端末装置200へ送信する。
【0111】
無線通信部410は、アンテナを介して端末装置200と無線通信する。具体的には、無線通信部410は、下りデータ及びRA要求をアンテナを介して端末装置200へ送信する。また、無線通信部410は、端末装置200から送信されたプリアンブルをアンテナを介して受信し、RA処理部411へ出力する。
【0112】
RA処理部411は、無線通信部410から出力されるプリアンブルを用いてランダムアクセス処理を実行し、端末装置200との同期を確立する。そして、RA処理部411は、同期確立に使用されたプリアンブルが使用済みであることをプリアンブル管理部406へ通知する。同時に、RA処理部411は、上り回線の同期が確立されたことを下りデータ送出部409に通知する。
【0113】
次いで、基地局装置100から端末装置200への下りデータ送信手順について、図13を参照しながら説明する。図13は、上り回線の同期外れが発生している場合の、下りデータ送信手順を示すシーケンス図である。
【0114】
端末装置200から基地局装置100へのデータ伝送がないまま所定時間が経過すると、上り回線の同期外れが発生する。この状態で基地局装置100が制御局装置300から下りデータを受信した場合(ステップS401)、端末装置200に対して下りデータを送信しても、端末装置200からのACKの返送や自動再送要求が不可能である。同様に、基地局装置100において端末装置200へ送信すべき制御データが発生した場合にも、端末装置200からのACKの返送や自動再送要求が不可能である。
【0115】
そこで、同期外れ判定部402によって上り回線の同期外れが発生していると判定されると、下りデータ送出部409から下りデータが即座に送出されることはなく、上り回線の同期が再確立するまで待機される。そして、優先順位取得部404によって、実際に下りデータの伝送及び自動再送要求などに用いられるコネクションの優先順位が取得される。取得された優先順位の値は、閾値比較部405へ出力される。そして、閾値比較部405によって、優先順位取得部404から出力された優先順位の値と所定の閾値とが比較される。優先順位が所定の順位よりも高い場合には、実際に下りデータの伝送及び自動再送要求などに用いられるコネクションの優先度が高いことを意味するため、端末装置200にプリアンブルを割り当てることが決定される。ここで、優先順位が所定の順位よりも低い場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てないことが決定されるが、以下では優先順位が所定の順位よりも高かったものとして説明を続ける。
【0116】
閾値比較部405によって端末装置200にプリアンブルを割り当てることが決定されると、RA要求生成部407によって、プリアンブル管理部406において未割り当てとなっているプリアンブルが端末装置200に割り当てられる(ステップS402)。そして、RA要求生成部407によって、割り当てたプリアンブルを含むRA要求が生成され、無線通信部410から端末装置200へ送信される(ステップS403)。なお、端末装置200へのプリアンブルの割り当てと同時に、プリアンブル管理部406においては、端末装置200に割り当てられたプリアンブルが割り当て済みと記憶され、このプリアンブルに対応するタイマ部408のタイマが開始する。すなわち、タイマ部408のタイマが満了するまでは、端末装置200によるプリアンブルの使用が予約され、このプリアンブルが他の端末装置に割り当てられることはない。
【0117】
端末装置200は、受信したRA要求にプリアンブルが含まれているため、RACHを用いてこのプリアンブルを基地局装置100へ送信する(ステップS404)。これにより、基地局装置100においては、RA処理部411によるランダムアクセス処理が実行され、端末装置200との間の同期が再確立される。そして、RA処理部411から下りデータ送出部409に対して、上り回線の同期が再確立されたことが通知され、下りデータ送出部409によって、待機されていた下りデータの送出が再開される。これにより、無線通信部410からアンテナを介して下りデータが端末装置200へ送信される(ステップS405)。
【0118】
次に、上述した下りデータ送信手順における基地局装置100の動作について、図14に示すフロー図を参照しながら詳細に説明する。図14は、実施の形態5に係る基地局装置100の動作を示すフロー図である。
【0119】
有線通信部401によって端末装置200宛てのユーザデータが受信されたり、基地局装置100において端末装置200宛ての制御データが発生したりすると、端末装置200に対する下りデータの送信が要求されることになる(ステップS501)。下りデータの送信が要求されると、同期外れ判定部402によって、端末装置200から基地局装置100へ向かう上り回線の同期が確立中であるか否かが判定される(ステップS502)。この判定の結果、上り回線の同期が確立中であれば(ステップS502Yes)、下りデータは、即座に下りデータ送出部409から無線通信部410を経て端末装置200へ送信される(ステップS510)。これは、上り回線の同期が確立中であれば、端末装置200に対して即座に下りデータを送信しても、端末装置200は、ACKの返送や自動再送要求が可能なためである。
【0120】
一方、上り回線の同期外れが発生している場合には(ステップS502No)、下りデータ送出部409からの下りデータの送出が停止され、上り回線の同期の再確立が待機される。そして、優先順位取得部404によって、実際に端末装置200が使用するコネクションのQCIに対応する優先順位が端末情報記憶部403から取得される(ステップS503)。すなわち、優先順位取得部404によって、実際の下りデータの伝送及び自動再送要求などに使用されるコネクションの優先順位の値が取得され、閾値比較部405へ出力される。
【0121】
そして、閾値比較部405によって、優先順位取得部404によって取得された優先順位が所定の順位より高いか否かが判定される(ステップS504)。換言すれば、実際の下りデータの伝送及び自動再送要求などに使用されるコネクションの優先順位が所定基準より高く、端末装置200の優先度が高いか否かが判定される。
【0122】
この判定の結果、優先順位が所定順位より低く(すなわち、優先順位の値が所定の閾値以上)、端末装置200の優先度が低いと判断された場合には(ステップS504No)、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定される(ステップS507)。したがって、この場合には、端末装置200は、ランダムに選択したプリアンブルを送信する競合ランダムアクセスを実行することになる。
【0123】
一方、優先順位が所定の順位より高く(すなわち、優先順位の値が所定の閾値未満)、端末装置200の優先度が高いと判断された場合には(ステップS504Yes)、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定される(ステップS505)。そして、RA要求生成部407によって、プリアンブル管理部406におけるプリアンブルの割り当て状況が参照され、未割り当てのプリアンブルが端末装置200に割り当てられる。これにより、プリアンブル管理部406においては、端末装置200に割り当てられたプリアンブルが割り当て済みとして記憶される。同時に、タイマ部408によって、端末装置200に割り当てられたプリアンブルに対応するタイマが開始される(ステップS506)。
【0124】
端末装置200へのプリアンブルの割り当てが行われると、RA要求生成部407によって、割り当てられたプリアンブルを通知するためのRA要求が生成される。具体的には、端末装置200にプリアンブルが割り当てられた場合には、割り当てられたプリアンブルを含むRA要求がRA要求生成部407によって生成される。また、端末装置200にプリアンブルが割り当てられなかった場合には、競合ランダムアクセスにより上り回線の同期の再確立をすることを指示するRA要求がRA要求生成部407によって生成される。
【0125】
そして、RA要求生成部407によって生成されたRA要求は、下りデータ送出部409及び無線通信部410を経由して、端末装置200へ送信される(ステップS508)。送信されたRA要求は、端末装置200によって受信され、端末装置200は、RA要求に従って非競合ランダムアクセス又は競合ランダムアクセスを実行する。すなわち、端末装置200は、RA要求に含まれるプリアンブルを基地局装置100へ送信し、送信されたプリアンブルが基地局装置100の無線通信部410によって受信される。そして、RA処理部411によって、ランダムアクセス処理により上り回線の同期が再確立される(ステップS509)。上り回線の同期が再確立されると、その旨がRA処理部411から下りデータ送出部409へ通知され、下りデータ送出部409によって下りデータの送出が再開され、無線通信部410から下りデータが送信される(ステップS510)。
【0126】
以上のように、本実施の形態によれば、下りデータの送信先となる端末装置との間で再送要求などに用いられる上り回線の同期外れが発生しているか否かを判定する。そして、同期外れが発生している場合には、下りデータの送信に使用されるコネクションの優先順位によって端末装置の優先度を判定し、優先順位が所定の順位より高い場合にプリアンブルを割り当てる。このため、優先順位が比較的高い端末装置が優先的に非競合ランダムアクセスを実行することができ、上り回線の同期が迅速に確立される。結果として、帯域が保証された端末装置への下りデータの送信遅延を防止し、要求されるQoSを達成することができる。
【0127】
なお、上記実施の形態5においては、QCIに対応する優先順位によって端末装置200の優先度を判定することとした。しかし、実施の形態3、4と同様に、QCIに対応する許容遅延、許容損失率及びリソースタイプによって端末装置200の優先度を判定することも可能である。
【0128】
(実施の形態6)
実施の形態6では、端末装置にプリアンブルが割り当てられた際、この端末装置のためにプリアンブルが確保される時間が端末装置の優先度に応じて適応的に設定される。
【0129】
本実施の形態に係るネットワーク構成は、図2に示した実施の形態2のネットワーク構成と同様であるが、本実施の形態においては、実施の形態5と同様に、基地局装置100と端末装置200の間におけるランダムアクセスについて説明する。具体的には、基地局装置100から下り回線によって端末装置200へ送信すべきデータがある場合に、再送要求などに用いられる上り回線の同期外れが発生している際のランダムアクセスについて説明する。
【0130】
図15は、実施の形態6に係る基地局装置100の構成を示すブロック図である。図15において、図12と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図15に示す基地局装置100は、図12に示すタイマ部408を適応タイマ部501に代えた構成を有している。
【0131】
適応タイマ部501は、プリアンブル管理部406によって管理されるプリアンブル群それぞれに対応するタイマを備えており、RA要求生成部407によって端末装置にプリアンブルが割り当てられると、対応するタイマを開始する。このとき、適応タイマ部501は、閾値比較部405によって所定の閾値と比較された優先順位に応じた時間をタイマの満了時間として設定する。すなわち、適応タイマ部501は、優先順位が高いほど満了時間を長く設定し、優先順位が比較的高い端末装置200に割り当てられたプリアンブルが確保される時間を長くする。そして、適応タイマ部501は、タイマが満了すると、対応するプリアンブルを解放するようプリアンブル管理部406に指示する。
【0132】
次いで、上記のように構成された基地局装置100の動作について、図16に示すフロー図を参照しながら説明する。図16において、図14と同じ部分には同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
【0133】
端末装置200に対する下りデータの送信が要求されると(ステップS501)、同期外れ判定部402によって、端末装置200から基地局装置100へ向かう上り回線の同期が確立中であるか否かが判定される(ステップS502)。この判定の結果、上り回線の同期が確立中であれば(ステップS502Yes)、下りデータは、即座に下りデータ送出部409から無線通信部410を経て端末装置200へ送信される(ステップS510)。
【0134】
一方、上り回線の同期外れが発生している場合には(ステップS502No)、下りデータ送出部409からの下りデータの送出が停止され、上り回線の同期の再確立が待機される。そして、優先順位取得部404によって、実際に端末装置200が使用するコネクションのQCIに対応する優先順位が端末情報記憶部403から取得される(ステップS503)。
【0135】
そして、閾値比較部405によって、優先順位取得部404によって取得された優先順位が所定の順位より高いか否かが判定される(ステップS504)。この判定の結果、優先順位が所定の順位より低く(すなわち、優先順位の値が所定の閾値以上)、端末装置200の優先度が低いと判断された場合には(ステップS504No)、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定される(ステップS507)。
【0136】
一方、優先順位が所定の順位より高く(すなわち、優先順位の値が所定の閾値未満)、端末装置200の優先度が高いと判断された場合には(ステップS504Yes)、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定される(ステップS505)。そして、RA要求生成部407によって、プリアンブル管理部406におけるプリアンブルの割り当て状況が参照され、未割り当てのプリアンブルが端末装置200に割り当てられる。これにより、プリアンブル管理部406においては、端末装置200に割り当てられたプリアンブルが割り当て済みとして記憶される。
【0137】
また、適応タイマ部501によって、端末装置200に割り当てられたプリアンブルに対応するタイマの満了時間が設定される(ステップS601)。具体的には、閾値比較部405における端末装置200の優先度判定に用いられた優先順位が高いほど、端末装置200に割り当てられたプリアンブルが確保される時間を長くする。すなわち、端末装置200の優先度が比較的高ければ、適応タイマ部501によって、端末装置200に割り当てられたプリアンブルに対応するタイマの満了時間が長く設定される。同様に、プリアンブルは割り当てられたものの、端末装置200の優先度が比較的低ければ、適応タイマ部501によって、端末装置200に割り当てられたプリアンブルに対応するタイマの満了時間が短く設定される。
【0138】
これにより、端末装置200の優先度に応じてプリアンブルが確保される時間が異なり、優先順位が比較的高い端末装置200は、確実に割り当てられたプリアンブルを使用することが可能となる。また、優先順位が比較的低い端末装置200に割り当てられたプリアンブルが必要以上に長時間占有されることがなく、プリアンブルの不足を効率的に抑制することができる。
【0139】
適応タイマ部501によってタイマの満了時間が設定されると、同時に、このタイマが開始される(ステップS506)。そして、RA要求生成部407によって、割り当てられたプリアンブルを通知するためのRA要求が生成される。RA要求生成部407によって生成されたRA要求は、下りデータ送出部409及び無線通信部410を経由して、端末装置200へ送信される(ステップS508)。送信されたRA要求は、端末装置200によって受信され、端末装置200は、RA要求に従って非競合ランダムアクセス又は競合ランダムアクセスを実行する。そして、RA処理部411によって、ランダムアクセス処理により上り回線の同期が再確立される(ステップS509)。上り回線の同期が再確立されると、その旨がRA処理部411から下りデータ送出部409へ通知され、下りデータ送出部409によって下りデータの送出が再開され、無線通信部410から下りデータが送信される(ステップS510)。
【0140】
なお、端末装置200から送信されたプリアンブルが受信されないまま、適応タイマ部501におけるタイマが満了すると、このタイマに対応するプリアンブルが解放される。上述したように、本実施の形態においては、プリアンブルが解放されるまでの時間が、端末装置200の優先度に応じて異なっている。
【0141】
以上のように、本実施の形態によれば、下りデータの送信に使用されるコネクションの優先順位によって端末装置の優先度を判定し、優先順位が所定の順位より高い場合にプリアンブルを割り当てる。そして、プリアンブルが確保される時間を計時するタイマの満了時間を端末装置の優先順位に応じて設定する。このため、端末装置の優先度に応じてプリアンブルが確保される時間が異なり、優先度が比較的高い端末装置は、確実に割り当てられたプリアンブルを使用することが可能となる。また、優先度が比較的低い端末装置に割り当てられたプリアンブルが必要以上に長時間占有されることがなく、プリアンブルの不足を効率的に抑制することができる。
【0142】
(実施の形態7)
実施の形態7では、基地局装置における非競合ランダムアクセスに係る処理の処理量によって、プリアンブルの割り当てに制限を課するか否かが決定される。
【0143】
本実施の形態に係るネットワーク構成は、図2に示した実施の形態2のネットワーク構成と同様であるが、本実施の形態においては、実施の形態5と同様に、基地局装置100と端末装置200の間におけるランダムアクセスについて説明する。具体的には、基地局装置100から下り回線によって端末装置200へ送信すべきデータがある場合に、再送要求などに用いられる上り回線の同期外れが発生している際のランダムアクセスについて説明する。
【0144】
図17は、実施の形態7に係る基地局装置100の構成を示すブロック図である。図17において、図12と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図17に示す基地局装置100は、図12に示すRA要求生成部407をRA要求生成部601に代え、処理量判定部602を追加した構成を有している。
【0145】
RA要求生成部601は、閾値比較部405による比較の結果、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定されると、プリアンブル管理部406における割り当て状況を参照し、未割り当てのプリアンブルを端末装置200に割り当てる。そして、RA要求生成部601は、端末装置200に割り当てるプリアンブルを含むRA要求を生成する。また、RA要求生成部601は、閾値比較部405による比較の結果、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定されると、端末装置200にプリアンブルは割り当てられない旨のRA要求を生成する。
【0146】
さらに、RA要求生成部601は、端末装置に対するプリアンブルの割り当ての処理量を処理量判定部602へ報告する。RA要求生成部601が報告する処理量は、プリアンブルが割り当てられる端末装置の数が増えれば増大する。すなわち、非競合ランダムアクセスを実行する端末装置の数が増加すると、RA要求生成部601における処理量が増大する。したがって、RA要求生成部601は、非競合ランダムアクセスに係る処理量を処理量判定部602へ報告しているに他ならない。
【0147】
処理量判定部602は、同期外れ判定部402によって上り回線の同期外れが発生していると判定されると、RA要求生成部601から報告される処理量を所定の閾値と比較し、処理量が所定の閾値以上であるか否かを判定する。そして、処理量判定部602は、処理量が所定の閾値未満である場合には、下りデータを下りデータ送出部409へ出力するとともに、下りデータの送信先である端末装置200にプリアンブルを割り当てるようRA要求生成部601に対して指示する。すなわち、処理量判定部602は、処理量が所定の閾値未満である場合には、無条件で端末装置200にプリアンブルを割り当てさせる。
【0148】
また、処理量判定部602は、処理量が所定の閾値以上である場合には、下りデータを下りデータ送出部409へ出力するとともに、下りデータの伝送に用いられるコネクションの優先順位を取得するよう優先順位取得部404に対して指示する。すなわち、処理量判定部602は、処理量が所定の閾値以上である場合には、端末装置200の優先度に応じてプリアンブルの割り当ての有無を決定させる。
【0149】
次いで、上記のように構成された基地局装置100の動作について、図18に示すフロー図を参照しながら説明する。図18において、図14と同じ部分には同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
【0150】
端末装置200に対する下りデータの送信が要求されると(ステップS501)、同期外れ判定部402によって、端末装置200から基地局装置100へ向かう上り回線の同期が確立中であるか否かが判定される(ステップS502)。この判定の結果、上り回線の同期が確立中であれば(ステップS502Yes)、下りデータは、即座に下りデータ送出部409から無線通信部410を経て端末装置200へ送信される(ステップS510)。
【0151】
一方、上り回線の同期外れが発生している場合には(ステップS502No)、下りデータ送出部409からの下りデータの送出が停止され、上り回線の同期の再確立が待機される。処理量判定部602によって、非競合ランダムアクセス処理に係る処理量が所定の閾値以上であるか否かが判定される(ステップS701)。すなわち、処理量判定部602によって、RA要求生成部601から報告される処理量が所定の閾値と比較される。
【0152】
この判定の結果、非競合ランダムアクセス処理に係る処理量が所定の閾値未満である場合には(ステップS701No)、無条件で端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定される(ステップS505)。すなわち、本実施の形態においては、非競合ランダムアクセスに係る処理量が小さい間は、すべての端末装置に対してプリアンブルが割り当てられる。以下、実施の形態5と同様に、RA要求生成部601によって端末装置200にプリアンブルが割り当てられ、タイマが開始されるとともに、RA要求が生成されて無線通信部410から送信される(ステップS506、S508)。そして、割り当てられたプリアンブルを用いて端末装置200が非競合ランダムアクセスを実行することにより、上り回線の同期が再確立され、下りデータが端末装置200へ送信される(ステップS509、S510)。
【0153】
これに対して、非競合ランダムアクセス処理に係る処理量が所定の閾値以上である場合には(ステップS701Yes)、優先順位取得部404によって、下りデータの伝送に用いられるコネクションの優先順位が取得される(ステップS503)。以下、実施の形態5と同様に、閾値比較部405によって、端末装置200の優先順位が所定の順位と比較され、プリアンブルの割り当ての有無が決定される(ステップS504〜S507)。すなわち、本実施の形態においては、非競合ランダムアクセスに係る処理量が大きくなると、端末装置200の優先度によるプリアンブルの割り当ての有無が決定される。そして、決定されたプリアンブルの割り当ての有無に従って、RA要求生成部601によってRA要求が生成され、無線通信部410から送信される(ステップS508)。その後、端末装置200が非競合ランダムアクセス又は競合ランダムアクセスを実行することにより、上り回線の同期が再確立され、下りデータが端末装置200へ送信される(ステップS509、S510)。
【0154】
以上のように、本実施の形態によれば、非競合ランダムアクセスに係る処理量が小さければ、無条件で端末装置にプリアンブルを割り当て、処理量が大きければ、端末装置の優先度に応じてプリアンブルの割り当ての有無を決定する。このため、例えば基地局装置と無線通信する端末装置の数が少ない場合などは、すべての端末装置にプリアンブルを割り当て、通信の遅延が発生しない非競合ランダムアクセスを実行させることができる。そして、例えば基地局装置と無線通信する端末装置の数が多くなった場合などは、端末装置の優先度に応じた制御により、優先度が高い端末装置に要求されるQoSを確実に達成することができる。
【0155】
(実施の形態8)
実施の形態8では、割り当て済みのプリアンブルの割合を示すプリアンブル利用率に基づいて、プリアンブルを割り当てる優先度に関する条件が変更される。
【0156】
本実施の形態に係るネットワーク構成は、図2に示した実施の形態2のネットワーク構成と同様であるが、本実施の形態においては、実施の形態5と同様に、基地局装置100と端末装置200の間におけるランダムアクセスについて説明する。具体的には、基地局装置100から下り回線によって端末装置200へ送信すべきデータがある場合に、再送要求などに用いられる上り回線の同期外れが発生している際のランダムアクセスについて説明する。
【0157】
図19は、実施の形態8に係る基地局装置100の構成を示すブロック図である。図19において、図12と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図19に示す基地局装置100は、図12に示す閾値比較部405を閾値比較部701に代えた構成を有している。
【0158】
閾値比較部701は、優先順位取得部404によって取得された優先順位と所定の閾値とを比較する。ここで、閾値比較部701は、プリアンブル管理部406によって管理されているプリアンブルの利用率に基づいて、優先順位と比較する閾値を調整する。具体的には、閾値比較部701は、プリアンブルの利用率が所定の下限閾値未満である場合には、プリアンブルの割り当て条件を緩くする。すなわち、閾値比較部701は、プリアンブルが割り当てられるために必要な優先順位を低くするよう、優先順位の値と比較される所定の閾値を大きくする。
【0159】
一方、閾値比較部701は、プリアンブルの利用率が所定の上限閾値以上である場合には、プリアンブルの割り当て条件を厳しくする。すなわち、閾値比較部701は、プリアンブルが割り当てられるために必要な優先順位を高くするよう、優先順位の値と比較される所定の閾値を小さくする。
【0160】
そして、閾値比較部701は、優先順位が所定の順位より高く、優先順位の値が所定の閾値未満の場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てると決定する。一方、閾値比較部701は、優先順位が所定の順位より低く、優先順位の値が所定の閾値以上の場合には、端末装置200にプリアンブルを割り当てないと決定する。
【0161】
このように構成された基地局装置100の動作は、図14に示した実施の形態5の動作と同様であるため、その説明を省略する。ただし、本実施の形態においては、端末装置200の優先度を判定するための優先順位と比較される閾値が閾値比較部701によって調整されている。そこで、本実施の形態に係る閾値変更処理について、図20に示すフロー図を参照しながら説明する。以下の閾値変更処理は、閾値比較部701によって、優先順位と閾値との比較と並行して実行される。
【0162】
閾値比較部701によって閾値の変更が実行されると、実行後、所定時間の間は再度の閾値の変更が実行されることなく待機される(ステップS801)。これは、前回の閾値の変更の影響によりプリアンブルの利用率が変動し得る間はさらなる閾値の変更をしないようにするためである。これにより、閾値の変更直後のプリアンブルの利用率に応じて次の閾値変更を実行するのではなく、プリアンブルの利用率が定常状態となってから次の閾値変更を実行することができる。
【0163】
前回の閾値変更処理から所定時間が経過すると、閾値比較部701によってプリアンブル管理部406におけるプリアンブルの割り当て状況が参照され、プリアンブル利用率が算出される(ステップS802)。具体的には、基地局装置100に対する非競合ランダムアクセスに利用可能な全プリアンブル数に対する端末装置に割り当て済みのプリアンブル数の割合が算出される。すなわち、プリアンブル管理部406によって管理される非競合プリアンブル数に対する割り当て済みであることが記憶されているプリアンブル数の割合がプリアンブル利用率として算出される。
【0164】
そして、閾値比較部701によって、プリアンブル利用率が所定の下限閾値未満であるか否かが判定される(ステップS803)。この下限閾値は、プリアンブル利用率の適正な範囲の下限を示す値であり、プリアンブル利用率が下限閾値未満である場合は、必要以上に厳しくプリアンブルの割り当てが制限されているということになる。そこで、プリアンブル利用率が所定の下限閾値未満である場合には(ステップS803Yes)、プリアンブルが割り当てられるために必要とされる割当条件が緩められる(ステップS804)。具体的には、閾値比較部701によって優先順位と比較される閾値が変更され、現在よりも低い優先順位の端末装置にもプリアンブルが割り当てられるようになる。すなわち、優先順位の値と比較される閾値が現在よりも大きくなり、例えば優先順位の値が「1」又は「2」の端末装置にのみプリアンブルが割り当てられていた場合に、優先順位の値が「3」の端末装置にもプリアンブルが割り当てられるようになる。
【0165】
一方、プリアンブル利用率が所定の下限閾値以上である場合には(ステップS803No)、引き続きプリアンブル利用率が所定の上限閾値以上であるか否かが判定される(ステップS805)。この上限閾値は、プリアンブル利用率の適正な範囲の上限を示す値であり、プリアンブル利用率が上限閾値以上である場合は、プリアンブルの割り当ての制限が緩すぎるということになる。そこで、プリアンブル利用率が所定の上限閾値以上である場合には(ステップS805Yes)、プリアンブルが割り当てられるために必要とされる割当条件が厳しくされる(ステップS806)。具体的には、閾値比較部701によって優先順位と比較される閾値が変更され、現在よりも高い優先順位の端末装置にのみプリアンブルが割り当てられるようになる。すなわち、優先順位の値と比較される閾値が現在よりも小さくなり、例えば優先順位の値が「1」又は「2」の端末装置にのみプリアンブルが割り当てられていた場合に、優先順位の値が「1」の端末装置にのみプリアンブルが割り当てられるようになる。
【0166】
このように閾値比較部701において優先順位と比較される閾値が調整されることにより、プリアンブルの割り当てに必要な割当条件が変化し、プリアンブルの利用率が変動する。結果として、プリアンブルの利用率が適正な範囲に収まるようになり、プリアンブルが不足したり無駄が生じたりすることがなくなる。
【0167】
以上のように、本実施の形態によれば、プリアンブルの利用率に応じてプリアンブルが割り当てられるために必要な条件を調整しながら、端末装置の優先度に応じてプリアンブルの割り当てを実行する。このため、プリアンブルの利用率が常に適正な範囲に保たれ、プリアンブルの不足や無駄の発生を防止することができる。
【0168】
なお、上記各実施の形態においては、QCIに対応する優先順位、許容遅延、許容損失率及びリソースタイプによって端末装置の優先度を判定するものとした。しかし、端末装置の優先度は、他の端末情報によって判定されるようにしても良い。すなわち、例えば端末装置それぞれに通信状態や通信されるデータとは無関係の絶対的な優先度が設定されている場合には、この優先度によってプリアンブルの割り当ての有無が判定されるようにしても良い。この場合には、端末装置ごとの絶対的な優先度が端末情報として用いられることになる。さらに、端末装置の優先度については、QCIに対応する優先順位などを含む様々な情報を加味して、端末装置の優先度を複合的に算出することなども可能である。
【0169】
また、上記実施の形態6〜8は、上記実施の形態2〜4と適宜組み合わせて実施することも可能である。すなわち、ハンドオーバの際に発生するランダムアクセスにおいて、タイマの満了時間を適応的に設定したり、非競合ランダムアクセスに係る処理の処理量によってプリアンブルの割り当てに制限を課するか否かを決定したりしても良い。同様に、端末情報としてQCIに対応する許容遅延などを用いる場合に、タイマの満了時間を適応的に設定したり、非競合ランダムアクセスに係る処理の処理量によってプリアンブルの割り当てに制限を課するか否かを決定したりしても良い。
【0170】
また、上記各実施の形態で説明したプリアンブル割り当て処理をコンピュータが実行可能な言語で記述したプログラムを作成することもできる。この場合、基地局装置が備えるコンピュータがプログラムを実行することにより、上記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、上記のプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することにより上記各実施の形態と同様のプリアンブル割り当て処理を実現しても良い。
【0171】
図21は、プリアンブル割り当て処理を実現するコンピュータ800のハードウェア構成を示すブロック図である。図21に示すように、このコンピュータ800は、上記プログラムを実行するCPU810と、データを入力する入力装置820と、各種データを記憶するROM830と、演算パラメータ等を記憶するRAM840と、プリアンブル割り当て処理を実現するためのプログラムを記録した記録媒体Mからプログラムを読み取る読取装置850と、ディスプレイ等の出力装置860と、ネットワークNを介して他のコンピュータとの間でデータの授受をおこなうネットワークインターフェース870とが、バス880で接続された構成となっている。
【0172】
CPU810は、読取装置850を経由して記録媒体Mに記録されているプログラムを読み込んだ後、プログラムを実行することにより、プリアンブル割り当て処理を実現する。なお、記録媒体Mとしては、光ディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、ハードディスク等が挙げられる。また、このプログラムは、ネットワークNを介してコンピュータ800に導入することとしても良い。このとき、ネットワークNは、無線ネットワークであっても有線ネットワークであっても良い。
【0173】
以上の各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0174】
(付記1)自装置との間で同期未確立の端末装置の優先度を示す端末情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された端末情報に基づいて前記端末装置の優先度が所定の基準以上であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果、前記端末装置の優先度が所定の基準以上である場合に、ランダムアクセスによる同期確立の際に用いられる識別子を前記端末装置に割り当てる割当部と、
前記割当部によって割り当てられた識別子の情報を含む割当情報を送信する送信部と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【0175】
(付記2)前記判定部は、
前記取得部によって取得された端末情報に含まれる前記端末装置が確立するコネクションの優先度のうち最も高い優先度が所定の基準以上であるか否かを判定することを特徴とする付記1記載の基地局装置。
【0176】
(付記3)前記判定部は、
前記取得部によって取得された端末情報に含まれる前記端末装置が確立するコネクションの優先度のうちデータ伝送に用いられるコネクションの優先度が所定の基準以上であるか否かを判定することを特徴とする付記1記載の基地局装置。
【0177】
(付記4)前記判定部は、
前記取得部によって取得された端末情報に含まれる優先順位であって、前記端末装置が確立するコネクションに付与された通信品質指標値に対応する優先順位が所定の順位より高いか否かを判定することを特徴とする付記1記載の基地局装置。
【0178】
(付記5)前記判定部は、
前記取得部によって取得された端末情報に含まれる許容遅延であって、前記端末装置が確立するコネクションに付与された通信品質指標値に対応する許容遅延が所定の閾値より小さいか否かを判定することを特徴とする付記1記載の基地局装置。
【0179】
(付記6)前記判定部は、
前記取得部によって取得された端末情報に含まれる許容損失率であって、前記端末装置が確立するコネクションに付与された通信品質指標値に対応する許容損失率が所定の閾値より小さいか否かを判定することを特徴とする付記1記載の基地局装置。
【0180】
(付記7)前記判定部は、
前記取得部によって取得された端末情報に含まれるリソースタイプであって、前記端末装置が確立するコネクションに付与された通信品質指標値に対応するリソースタイプが帯域保証されたリソースタイプであるか否かを判定することを特徴とする付記1記載の基地局装置。
【0181】
(付記8)前記割当部によって前記端末装置に識別子が割り当てられた後の経過時間を計測し、計測された経過時間が設定された満了時間に達すると満了するタイマ部と、
前記タイマ部が満了した場合に、前記割当部によって前記端末装置に割り当てられた識別子を解放して未割り当ての識別子とする管理部と、
をさらに有することを特徴とする付記1記載の基地局装置。
【0182】
(付記9)前記タイマ部は、
前記端末装置の優先度に応じて異なる満了時間を設定することを特徴とする付記8記載の基地局装置。
【0183】
(付記10)前記割当部における識別子の割り当て処理の量が所定量以上であるか否かを判定する処理量判定部をさらに有し、
前記割当部は、
前記処理量判定部における判定の結果、処理量が所定量未満である場合に、前記端末装置の優先度とは無関係に前記端末装置に識別子を割り当てることを特徴とする付記1記載の基地局装置。
【0184】
(付記11)前記判定部は、
非競合ランダムアクセスに利用可能な全プリアンブル数に対する割り当て済みのプリアンブル数の割合を示すプリアンブル利用率を算出し、算出されたプリアンブル利用率に応じて前記端末装置の優先度と比較される基準を変更することを特徴とする付記1記載の基地局装置。
【0185】
(付記12)前記判定部は、
プリアンブル利用率が所定の下限閾値未満である場合に、前記端末装置の優先度と比較される基準を現在の基準よりも緩くすることを特徴とする付記11記載の基地局装置。
【0186】
(付記13)前記判定部は、
プリアンブル利用率が所定の上限閾値以上である場合に、前記端末装置の優先度と比較される基準を現在の基準よりも厳しくすることを特徴とする付記11記載の基地局装置。
【0187】
(付記14)基地局装置との間で同期未確立の端末装置の優先度を示す端末情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得された端末情報に基づいて前記端末装置の優先度が所定の基準以上であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定の結果、前記端末装置の優先度が所定の基準以上である場合に、ランダムアクセスによる同期確立の際に用いられる識別子を前記端末装置に割り当てる割当ステップと、
前記割当ステップにて割り当てられた識別子の情報を含む割当情報を送信する送信ステップと、
を有することを特徴とする識別子割当方法。
【0188】
(付記15)コンピュータによって実行される識別子割当プログラムであって、前記コンピュータに、
基地局装置との間で同期未確立の端末装置の優先度を示す端末情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得された端末情報に基づいて前記端末装置の優先度が所定の基準以上であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定の結果、前記端末装置の優先度が所定の基準以上である場合に、ランダムアクセスによる同期確立の際に用いられる識別子を前記端末装置に割り当てる割当ステップと、
前記割当ステップにて割り当てられた識別子の情報を含む割当情報を送信する送信ステップと、
を実行させることを特徴とする識別子割当プログラム。
【符号の説明】
【0189】
100a 端末情報取得部
100b 優先度判定部
100c プリアンブル割当部
100d 送信部
101、113、410 無線通信部
102 HO判定部
103、403 端末情報記憶部
104、404 端末情報取得部
105、106、401 有線通信部
107 HO処理部
108 優先順位取得部
109、202、405、701 閾値比較部
110、406 プリアンブル管理部
111 HOメッセージ生成部
112、408 タイマ部
114、411 RA処理部
201 許容遅延取得部
301 リソースタイプ取得部
302 リソースタイプ判定部
402 同期外れ判定部
407、601 RA要求生成部
409 下りデータ送出部
501 適応タイマ部
602 処理量判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置との間で同期未確立の端末装置の優先度を示す端末情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された端末情報に基づいて前記端末装置の優先度が所定の基準以上であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果、前記端末装置の優先度が所定の基準以上である場合に、ランダムアクセスによる同期確立の際に用いられる識別子を前記端末装置に割り当てる割当部と、
前記割当部によって割り当てられた識別子の情報を含む割当情報を送信する送信部と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記取得部によって取得された端末情報に含まれる前記端末装置が確立するコネクションの優先度のうち最も高い優先度が所定の基準以上であるか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記取得部によって取得された端末情報に含まれる前記端末装置が確立するコネクションの優先度のうちデータ伝送に用いられるコネクションの優先度が所定の基準以上であるか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記取得部によって取得された端末情報に含まれる優先順位であって、前記端末装置が確立するコネクションに付与された通信品質指標値に対応する優先順位が所定の順位より高いか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
【請求項5】
前記割当部によって前記端末装置に識別子が割り当てられた後の経過時間を計測し、計測された経過時間が設定された満了時間に達すると満了するタイマ部と、
前記タイマ部が満了した場合に、前記割当部によって前記端末装置に割り当てられた識別子を解放して未割り当ての識別子とする管理部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
【請求項6】
前記タイマ部は、
前記端末装置の優先度に応じて異なる満了時間を設定することを特徴とする請求項5記載の基地局装置。
【請求項7】
前記割当部における識別子の割り当て処理の量が所定量以上であるか否かを判定する処理量判定部をさらに有し、
前記割当部は、
前記処理量判定部における判定の結果、処理量が所定量未満である場合に、前記端末装置の優先度とは無関係に前記端末装置に識別子を割り当てることを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
【請求項8】
前記判定部は、
非競合ランダムアクセスに利用可能な全プリアンブル数に対する割り当て済みのプリアンブル数の割合を示すプリアンブル利用率を算出し、算出されたプリアンブル利用率に応じて前記端末装置の優先度と比較される基準を変更することを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
【請求項9】
基地局装置との間で同期未確立の端末装置の優先度を示す端末情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得された端末情報に基づいて前記端末装置の優先度が所定の基準以上であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定の結果、前記端末装置の優先度が所定の基準以上である場合に、ランダムアクセスによる同期確立の際に用いられる識別子を前記端末装置に割り当てる割当ステップと、
前記割当ステップにて割り当てられた識別子の情報を含む割当情報を送信する送信ステップと、
を有することを特徴とする識別子割当方法。
【請求項10】
コンピュータによって実行される識別子割当プログラムであって、前記コンピュータに、
基地局装置との間で同期未確立の端末装置の優先度を示す端末情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得された端末情報に基づいて前記端末装置の優先度が所定の基準以上であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定の結果、前記端末装置の優先度が所定の基準以上である場合に、ランダムアクセスによる同期確立の際に用いられる識別子を前記端末装置に割り当てる割当ステップと、
前記割当ステップにて割り当てられた識別子の情報を含む割当情報を送信する送信ステップと、
を実行させることを特徴とする識別子割当プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−176738(P2011−176738A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40605(P2010−40605)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】