基地局装置
【課題】 スループットの低下を抑えつつ、基地局間の同期ずれを抑制することができる基地局装置を提供する。
【解決手段】 本発明の第二基地局装置2は、通信モードと銅モードとを切り替え制御する同期制御部26と、前記同期モードにおいて受信した他の基地局装置の通信信号に基づいて、当該他の基地局装置の通信信号と、自己の通信信号との間における、前記単位フレーム当たりの同期ずれの推定値を求める推定部23と、推定部23が求めた同期ずれの推定値に基づいて、自己が送信する通信信号を前記他の基地局装置の通信信号に対して同期させる同期補正を行うフレームタイミング制御部30と、を有している。フレームタイミング制御部30は、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で、同期補正を複数回に分けて行う。
【解決手段】 本発明の第二基地局装置2は、通信モードと銅モードとを切り替え制御する同期制御部26と、前記同期モードにおいて受信した他の基地局装置の通信信号に基づいて、当該他の基地局装置の通信信号と、自己の通信信号との間における、前記単位フレーム当たりの同期ずれの推定値を求める推定部23と、推定部23が求めた同期ずれの推定値に基づいて、自己が送信する通信信号を前記他の基地局装置の通信信号に対して同期させる同期補正を行うフレームタイミング制御部30と、を有している。フレームタイミング制御部30は、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で、同期補正を複数回に分けて行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の基地局装置との間で基地局間同期を行う基地局装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)のように移動端末が通信可能な無線通信システムにおいては、基地局が各地に多数設置される。各基地局がカバーするエリア(セル)内にある移動端末は、当該エリアをカバーする基地局との間で通信を行うことができる。
【0003】
移動端末が移動することにより、移動端末の通信相手となる基地局は変更されるが、基地局が変更される際、移動端末は、同時に二つの基地局(サービング基地局とターゲット基地局)からの信号を受信することになる。
このため、移動端末の基地局間移動をスムーズに行うには、隣接する基地局間で、送信タイミング及び搬送波周波数が揃っている基地局間同期が確保されている必要がある。
【0004】
基地局間同期がとれていると、移動端末の基地局間移動の際、移動端末が同時に二つの基地局からの信号を受信でき、基地局間移動をスムーズに行える。
ここで、基地局間同期のための技術としては、例えば、下記特許文献1記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−6642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基地局間同期をとるには、上記特許文献1のように、各基地局装置が、GPS衛星からGPS信号を受信し、各基地局が共通の同期信号によって動作することが考えられる。
しかし、GPS信号を利用して同期をとる場合、各基地局装置が、GPS受信機を備える必要があり、大型化・コストアップを招く。また、室内等のGPS信号を受信できない環境に設置される基地局装置の場合、基地局間同期をとることが不可能になる。
【0007】
そこで、隣接する他の基地局が送信した信号の受信波に含まれるプリアンブル等の既知信号波を用いて、隣接する当該他の基地局の送信タイミングを検出し、当該送信タイミングで基地局間同期をとることが考えられる。
この場合、移動端末との通信を行う周波数と同じ周波数を用いた無線通信で同期をとれるので、GPS信号を受信する場合のGPS受信機のように同期用の特別な受信系が必要ない。このため、基地局の小型化・コストダウンを図ることができ、室内等に設置される小型の基地局として適したものとなる。
【0008】
ここで、前述のWiMAXは、移動端末との間の無線通信に、送信と受信とを高速に切り替えるTDD(時分割複信)によってデュプレックス通信を実現する通信方式を採用する。
具体的には、図9に示すように、WiMAXでは、一つの基本フレームが、時間方向に並べて配置されて下りサブフレームDL(基地局の信号送信時間)と上りサブフレームUL(基地局の信号受信時間)とを含んで構成されている。なお、下りサブフレームは、先頭にプリアンブル(Preamble)を備えている。
【0009】
図9は、複数の基地局間で、送信タイミング及び受信タイミングが一致し、同期がとれている様子を示している。
このような基地局間同期をとる同期処理は、基地局の起動時に行われ、基地局間同期がとれてから、移動端末との間での通常の通信が行われる。
【0010】
ところが、両基地局が有しているクロック発生装置それぞれの精度誤差の違いによっては、時間の経過に伴って、同期にずれが生じる。
図10は、一の基地局装置のクロック周波数に対する、他の基地局装置のクロック周波数のオフセットの経時変化の一例を示すグラフである。図のように、一の基地局装置のクロック周波数と他の基地局装置のクロック周波数との間には、時間の経過によってなだらかに変化するオフセット値が定常的に存在している。このオフセット値は、周囲の温度変化等の外的要因によっても変化するが、外的要因が無ければ、互いのクロック発生装置の精度誤差の違いによって線形的に序々に増加する傾向を有している。
【0011】
基地局装置は、自己のクロック発生装置の発振に基づいて、上記の送信タイミングや、搬送波周波数を取得するので、図10に示すように互いのクロック周波数にオフセット値が存在すると、他の基地局装置との間で、送信タイミングや搬送波周波数において同期ずれが発生する。
【0012】
このため、例えば、端末装置との通信を一時的に中止し、他の基地局との同期処理を行うことで、上記のような同期ずれを解消することが考えられる。この場合、当該基地局装置は、端末装置との通信を停止している間に、改めて他の基地局装置との同期ずれがどの程度であるかを、他の基地局装置の受信波に含まれるプリアンブル波等の既知信号波から検出し、同期をとることができる。
【0013】
しかし、上記基地局装置間のクロック周波数のオフセット値は、上述のように線形的に序々に増加する傾向を有している。このため、基地局装置において、端末装置との通信を中止して他の基地局装置との間の同期をとったとしても、その後に端末装置との通信を開始すると、上述の傾向を有するクロック周波数のオフセット値は序々に増加し、両基地局装置間に同期ずれが生じてしまう。
すなわち、同期処理によって一時的には基地局装置間の同期がとれた状態とすることができるが、その後、端末装置との通信を行っている間に再度同期ずれが生じる。そして、その同期ずれは時間の経過に伴って徐々に増加するので、端末装置との通信を行っている間の通信時間が長ければ、この通信時間の間における同期ずれが増大することとなり、基地局装置における経過時間全体として見ると、周期的に同期処理を行ったとしても、依然として同期ずれが存在することとなる。
【0014】
これに対して、同期処理を行う周期を短くし、同期ずれが大きくなる前に同期をとれば、同期ずれが大きくなるのを抑制することができる。しかし、同期処理を行うためには、端末装置との間の通信を停止しなければならいので、同期処理の周期を短くすると、端末装置との間のスループットを低下させてしまう。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、スループット低下を抑えつつ、基地局間の同期ずれを抑制することができる基地局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明は、通信信号を送信して端末装置との間で通信を行う通信モードと、前記端末装置との間の通信を停止し他の基地局装置からの通信信号を受信して前記他の基地局装置との間で基地局間同期を行う同期モードと、を切り替えて実行する制御部と、
前記同期モードにおいて受信した前記他の基地局装置の通信信号に基づいて、当該他の基地局装置の通信信号と、自己の通信信号との間における同期ずれの推定値を求める推定部と、
前記推定部が求めた同期ずれの推定値に基づいて、自己が送信する通信信号を前記他の基地局装置の通信信号に対して同期させる同期補正を行う補正部と、を有し、
前記補正部は、次に同期モードに切り替わるまでの前記通信モードの間で、前記同期補正を複数回に分けて行うことを特徴としている。
【0016】
上記のように構成された基地局装置によれば、通信モードにおいて自己が送信する通信信号の同期補正を、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で複数回に分けて行うので、同期ずれが大きく生じるのを、通信モード全域に亘って抑制することができる。従って、同期モードにおいて行われる基地局間同期によって同期ずれを抑制するのみならず、通信モード時においても同期ずれが抑制されるので、同期ずれを効果的に抑制することができる。
【0017】
また、本発明によれば、端末装置との間の通信を行うための通信モードにおいても同期ずれが抑制されるので、同期ずれを抑制するために、端末装置との間の通信を停止する必要のある同期モードの周期を短くする必要がない。このため、端末装置との間のスループットの低下を抑えつつ、基地局間の同期ずれを抑制することができる。
【0018】
前記補正部は、前記単位時間ごとに同期補正を行うものであることが好ましい。
この場合、通信モード全域に亘って単位時間ごとに均等に同期補正が行われるので、経時的に増加する同期ずれを効果的に抑制することができる。
【0019】
また、前記推定部は、前記他の基地局装置の通信信号より当該他の基地局装置の通信タイミングを取得し、この通信タイミングと自己の通信タイミングとの間の通信タイミングオフセットに基づいて、前記同期ずれの推定値を求めるものであってもよい。
【0020】
より具体的には、前記推定部は、前記通信タイミングオフセットを前記同期ずれの推定値とし、前記補正部は、前記通信信号を構成する通信フレームの時間長さを調整することで通信タイミングの同期補正を行う通信タイミング補正部を有していることが好ましく、この場合、通信タイミングに関する同期ずれを抑制することができる。
【0021】
また、前記推定部は、前記通信タイミングオフセットに基づいて、前記通信信号の搬送波周波数オフセットを前記同期ずれの推定値として求め、前記補正部は、前記搬送波周波数の同期補正を行う周波数補正部を有しているものであってもよい。この場合、搬送波の周波数に関する同期ずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の基地局装置によれば、スループットの低下をおさえつつ、基地局間の同期ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る無線通信システムの全体図である。
【図2】第二及び第三基地局装置の構成を示したブロック図である。
【図3】通信フレームタイミングオフセットが生じたフレームを示す図である。
【図4】プリアンブルのタイミングを検出する方法の一例を示す図である。
【図5】前回と今回の同期モードにおけるタイミングオフセット量を示す説明図である。
【図6】第二及び第三基地局装置が、通信モードから、同期モードに切り替わる際のフローチャートを示す図である。
【図7】スレーブ基地局装置が、通信モードと同期モードとを繰り返し行ったときのマスタ基地局装置に対する通信タイミングオフセットの経時変化の態様を示す図である。
【図8】図7中の同期モードの部分の拡大図である。
【図9】基地局間同期がとれているときのフレームの状態を示す図である。
【図10】一の基地局装置のクロック周波数に対する、他の基地局装置のクロック周波数のオフセットの経時変化の一例を示すグラフである。
【図11】本発明の第二の実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す図である。
【図12】LTEのフレーム構成図である。
【図13】LTEのDLフレーム構成図である。
【図14】基地局装置(子BS)の構成図である。
【図15】同期処理部の構成図である。
【図16】本実施形態における子BSの他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
〔第一の実施形態〕
図1は、本発明の第一の実施形態に係る複数の基地局装置(BS:Base Station)1,2,3,・・・を有する無線通信システムを示している。この無線通信システムでは、例えば、広帯域無線通信を実現するために直交周波数分割多元接続(OFDMA)方式をサポートするIEEE802.16に規定される「WiMAX」に準拠した方式が採用されている。
【0025】
各基地局装置1,2,3は、それぞれの基地局装置1,2,3がカバーするエリア(セル)内にある端末装置(移動端末MS;Mobile Station)との間で通信が可能である。
図9に示したように、WiMAXでは、一つの基本フレームが、時間方向に並べて配置された下りサブフレームDL(基地局装置の信号送信時間)と上りサブフレームUL(基地局装置の信号受信時間)とを含んで構成されており、TDD(時分割複信)によって送信と受信の複信を行う通信システムとされている。
【0026】
一つの基本フレームの長さは、5msecである。下りサブフレームDLは、基地局装置1,2,3が、自エリア内の端末装置へ信号を送信する時間帯であり、上りサブフレームULは、基地局装置1,2,3が、自エリア内の端末装置からの信号を受信する時間帯である。
なお、下りサブフレームDLは、先頭に、既知信号であるプリアンブル(Preamble)を備えている。
また、一つの基本フレームは、下りサブフレームDLと上りサブフレームULとの間、及び上りサブフレームULと下りサブフレームDLとの間それぞれに、基地局装置及び端末装置双方共に送信を行わない切り替えギャップTTG(Transmit/Receive Transition Gap)、及び切り替えギャップRTG(Receive /Transmit Transition Gap)を含んでいる。
【0027】
複数の基地局装置1,2,3には、少なくとも一つのマスタ基地局装置と、スレーブ基地局装置とが含まれている。
本無線通信システムでは、各基地局装置1,2,3間で、フレームタイミング同期及びキャリア周波数同期を取る処理がなされる。マスタ基地局装置は、フレームタイミング及びキャリア周波数の基準局である。一方、スレーブ基地局装置は、他の基地局装置としてのマスタ基地局装置に対して直接的に、又は、他の基地局装置としての他のスレーブ基地局装置を介して間接的に、フレームタイミング同期及びキャリア周波数同期を取る。
なお、以下では、図1に示す第一基地局装置1を、マスタ基地局装置とし、第二基地局装置2及び第三基地局装置3をスレーブ基地局装置として説明する。
【0028】
前記フレームタイミング同期は、各基地局装置1,2,3の通信フレームが同じタイミングで送信されるように同期をとるものである。つまり、フレームタイミング同期によって、図9に示すように、ある基地局装置(第1基地局)が端末装置へ送信を行っている時間帯(下りサブフレームの時間帯)では、他の基地局装置(第2基地局)も端末装置へ送信を行い、ある基地局装置(第1基地局)が端末装置から受信を行っている時間帯(上りサブフレームの時間帯)では、他の基地局装置(第2基地局)も端末装置から受信を行うように、各基地局装置1,2,3の通信タイミングを合わせることができる。
【0029】
基地局装置間でフレームタイミング同期がとれていることで、端末装置がハンドオーバ時などで、複数の基地局装置に対して通信を行う状態となっても、端末装置は円滑に各基地局装置と通信を行うことができる。
【0030】
また、前記キャリア周波数同期は、各基地局装置1,2,3が端末装置へ対して送信する信号(OFDM(A)信号)のキャリア周波数(搬送波周波数)を、各基地局装置間で合わせるものである。
基地局装置間で、キャリア周波数同期がとれていることで、端末装置がハンドオーバ時などで、複数の基地局装置に対して通信を行う状態となっても、端末装置は円滑に各基地局装置と通信を行うことができる。
【0031】
ここで、各端末装置は、基地局装置から受信したOFDM信号のキャリア周波数の誤差を検出し、受信OFDM信号におけるキャリア周波数誤差(送信側と受信側の間のキャリア周波数の差)を補正するAFC(自動周波数制御)機能を有している。
したがって、各端末装置は、基地局装置から受信したOFDM信号のキャリア周波数に、誤差があっても、その誤差を補正した上で、OFDM復調を行うことができる。
【0032】
しかし、端末装置がハンドオーバ時などで、複数の基地局装置に対して通信を行う状態になると、基地局間でキャリア周波数同期がとれておらず同期ずれが生じている場合には、端末装置はAFC機能を用いてもキャリア周波数誤差を補正するのが非常に困難である。
【0033】
つまり、基地局間でキャリア周波数同期がとれていない場合には、ある端末装置からみて、一の基地局装置についてのキャリア周波数の誤差と、他の基地局装置についてのキャリア周波数に誤差とが異なるため、これらの複数の基地局装置と同時に通信を行う状態になると、キャリア周波数の誤差を補正できなくなる。
【0034】
さて、前記第一基地局装置1は、フレームタイミングとキャリア周波数の基準局であるため、基地局間でのフレームタイミング同期ないしキャリア周波数同期をとるための信号を、他の基地局装置から取得する必要がない。
例えば、第一基地局装置1は、自装置の内蔵クロック発生器(水晶振動子)が発生するクロックに基づいて自ら信号の送信タイミングを決定する自走マスタ基地局装置として構成することができる。なお、第一基地局装置1は、GPS受信機を備え、GPS信号を用いて信号の送信タイミングを決定するものであってもよい。
【0035】
これに対し、スレーブ基地局装置である両基地局装置2,3は、基地局間でのフレームタイミング同期ないしキャリア周波数同期をとるための信号を、他の基地局装置(マスタ基地局装置又は他のスレーブ基地局装置)から取得する。
【0036】
図2は、両基地局装置2,3の構成を示したブロック図である。
両基地局装置2,3は、信号の受信のために、受信信号を増幅するアンプ11、アンプ11から出力された受信信号に対する直交復調(直交検波)処理を行う直交復調器12、及び、直交復調器12から出力された受信信号に対するA/D変換を行うA/D変換部13を有している。デジタル信号に変換された受信信号は、DSP(デジタル信号処理プロセッサ)20に与えられる。
【0037】
また、基地局装置2,3は、信号の送信のために、デジタル送信信号をD/A変換するD/A変換部15、D/A変換部15から出力された送信信号に対する直交変調処理を行う直交変調器16、及び、直交変調器16から出力された送信信号を増幅するアンプ17を有している。
【0038】
なお、前記直交復調部12、前記A/D変換部13、前記D/A変換部15、及び前記直交変調部16の動作クロックは、内蔵のクロック発生器(基準信号発生器)18から与えられる。内蔵クロック発生器18は、水晶振動子などを含み、所定周波数の動作クロックを発生する。なお、クロック発生器18のクロックは、定倍部19a,19bを介して、前記A/D変換部13等へ与えられる。
また、内蔵クロック発生器18の動作クロックは、DSP20にも与えられ、DSP20における動作クロックにもなる。
【0039】
ここで、D/A変換部15に与えられる動作クロックの精度は、送信フレーム(下りサブフレーム)の時間長さの精度に影響する。したがって、基地局装置ごとにクロック発生器18の精度が異なると、生成される送信フレームの時間長さが、基地局装置ごとに僅かに異なることになる。そして、フレームの送信が繰り返されると、フレームの時間長さの相違が蓄積され、基地局装置間でのフレームタイミングにずれ(通信フレームのタイミングオフセット)が生じる(図3参照)。
【0040】
DSP(信号処理部)20は、受信信号及び/又は送信信号に対する信号処理を行う。
DSP20の主な機能は、受信信号に対するOFDM復調器としての機能、送信信号に対するOFDM変調器としての機能、送信と受信(送信フレームと受信フレーム)の切り替え機能、基地局間のフレームタイミング同期機能、及び基地局装置間のキャリア周波数同期機能である。図2において、DSP20内に示すブロックは、これらの機能を示すものである。
【0041】
図2におけるキャリア周波数補正部21は、受信信号のキャリア周波数を補正するものである。また、送信信号のキャリア周波数を補正するキャリア周波数補正部22も設けられている。
キャリア周波数補正部21,22は、推定部23で推定されたキャリア周波数オフセットに基づいて、受信信号及び/又は送信信号のキャリア周波数を補正する。
【0042】
受信信号のキャリア周波数補正部21の出力は、切り替えスイッチ24を介して、復調部(DEM)25に与えられる。復調部25では、キャリア周波数補正のなされた受信信号に対して復調(OFDM復調)処理がなされる。
前記切り替えスイッチ24は、端末装置からの信号を受信可能な通信モードの間は、受信信号を復調部25側へ与え、通信モードが停止(休止)された同期モードでは、受信信号を推定部23へ与えるためのものである。スイッチ24の切り替えは、同期制御部26によって行われる。
なお、通信モードとは、端末装置に対して通信信号を送信することで端末装置との間で通信を行うモードであり、同期モードとは、端末装置との間の通信を停止し他の基地局装置が送信している通信信号を受信して当該他の基地局装置との間で基地局間同期の処理(同期処理)を行うためのモードである。これら通信モード及び同期モードについては後述する。
【0043】
また、DSP20は、送信信号に対する変調(OFDM変調)処理を行う変調部(MOD)27を備えている。変調部27では、クロック発生器18のクロック周波数に基づいてキャリア周波数が決定されるため、クロック周波数の誤差は、送信信号のキャリア周波数に影響を与える。なお、送信信号のキャリア周波数にずれが生じると、各サブキャリアの周波数間隔は変わらないものの、各サブキャリアの中心周波数が一様にずれる。
【0044】
この変調部27から出力された送信信号は、切り替えスイッチ28を介して、キャリア周波数補正部22に与えられる。
前記切り替えスイッチ28は、端末装置へ信号を送信可能な通信モードの間は、送信信号をD/A変換部15へ与え、通信モードが休止された同期モードでは、送信信号をD/A変換部15へ与えないようにするものである。
この、スイッチ28の切り替えも、同期制御部26によって行われる。すなわち、この同期制御部26は、通信モードと、同期モードとを切り替えて実行する制御部を構成している。
【0045】
前記推定部23では、受信信号(通信信号)から同期信号であるプリアンブルを検出して、他の基地局装置との間での通信フレームのタイミングオフセットと、他の基地局装置との間でのキャリア周波数オフセット(搬送波周波数オフセット)と、を推定する。
このため、推定部23は、受信信号に含まれるプリアンブルを検出するプリアンブル検出部23aと、他の基地局装置と自装置との間のクロック誤差を推定するクロック誤差推定部23bと、他の基地局装置と自装置との間の単位時間当たりのタイミングオフセットを演算する演算部23cとを有している。
【0046】
本実施形態では、他の基地局装置が送信した下りサブフレームDLの先頭にあるプリアンブルを基地局間同期のための同期信号として用いる。このため、前記検出部23aは、他の基地局装置が送信した下りサブフレームDLの先頭にあるプリアンブルのタイミングを検出する。
なお、同期信号としては、ミッドアンブル、パイロット信号などであってもよい。
【0047】
基地局装置2,3は、他の基地局装置1,2が使用する可能性のあるプリアンブルパターンを既知パターンとしてメモリに有している。基地局装置2,3の検出部23aは、これらの既知のプリアンブルパターンを用いて、プリアンブルのタイミング等を検出する。
【0048】
ここで、プリアンブルは既知信号であるから、プリアンブルの信号波形も既知である。サンプリング後の受信信号をX(t)、プリアンブルの離散時間領域での信号をP(n)(n=0,・・・,N−1)とすると、図4(a)に示す受信波X(t)に対して、下記式に基づいて、時間方向にP(n)のスライディング相関をとる。
【0049】
【数1】
【0050】
そして、図4(b)に示すように、受信波X(t)と既知プリアンブルパターンP(n)の相関値がピークをとった位置を、プリアンブルのタイミングtとして検出することができる。
【0051】
検出部23aでは、自装置2,3の送信タイミングと、検出されたプリアンブルタイミングtとの差を、通信タイミングオフセット(同期ずれ)として検出する。この通信タイミングオフセット(通信フレームのタイミングオフセット)は、検出される度に、記憶部29に与えられ、記憶部29にて蓄積される。
【0052】
検出部23aにて検出された通信タイミングオフセットは、クロック誤差推定部23b及び演算部23cに与えられる。
演算部23cは、プリアンブル検出部23aによって検出された通信タイミングオフセットに基づいて、単位時間当たりでタイミングオフセットがどの程度増加しているかを求めることで、単位時間当たりのタイミングオフセットを求める。
なお、本実施形態では、前記単位時間を1基本フレームに係る時間幅である5msに設定される。
【0053】
また、クロック誤差推定部23bは、プリアンブル検出部23aによって検出された通信タイミングオフセットに基づいて、受信側である自装置の内蔵クロック発生器18のクロック周波数と、送信側である他の基地局装置の内蔵クロック発生器18のクロック周波数との差(クロック周波数誤差)を推定する。そして、このクロック周波数誤差の推定値から、同期ずれの推定値としてのキャリア周波数オフセットを求める。
【0054】
前記クロック誤差推定部23bは、同期モードが周期的に実行される状況下において、前回の同期モードにおいて検出された通信タイミングオフセットと、今回の同期モードにおいて検出された通信タイミングオフセットとに基づいて、クロック誤差を推定する。なお、前回のタイミングオフセットは、記憶部29から取得することができる。
【0055】
例えば、キャリア周波数が2.6[GHz]である場合に、図5に示すように、前回の同期モード(同期タイミング=t1)において、タイミングオフセットとしてT1が検出され、T1分のタイミングの修正がなされたものとする。そして、10秒後の今回の同期モード(同期タイミング=t2)においても、再びタイミングオフセットが検出され、そのタイミングオフセットはT2であったとする。
そして、今回のタイミングオフセットT2と前回のタイミングオフセットT1の差(T2−T1)が、0.1[msec]であったとする。
【0056】
ここで、1つの基本フレームの時間長さが5[msec]であるから、5[msec]=2πであり、前回の同期モードから今回の同期モードの間(Δt=t2−t1=10[sec]の間)において、位相が、π/25[rad]ずれたことになる。つまり、位相回転量Δφ=π/25である。
【0057】
そして、Δφ=2πfΔtの関係が成り立つため、π/25=2πf×10となる。
したがって、周波数誤差f=1/500=0.002[Hz]となる。
ここで、1基本フレームのフレーム長が5[msec]であるため、このフレーム長を周波数に換算すると、1/0.005=200[Hz]である。
つまり、200[Hz]の周波数に対して(1基本フレーム当たり)、0.002[Hz]の周波数誤差が生じていることになる。
【0058】
したがって、この場合、送信側である他の基地局装置のクロック周波数と、受信側である基地局装置のクロック周波数に、1×10-5=10[ppm]の誤差があることになる。クロック誤差推定部23bでは、上記のようにしてクロック周波数誤差を推定する。
【0059】
そして、キャリア周波数とタイミングオフセットは同じようにずれるため、キャリア周波数にも、10[ppm]分のずれ、すなわち、2.6[GHz]×1×10-5=26[kHz]のずれが生じる。
このように、クロック誤差推定部23bでは、プリアンブル検出部23aによって検出された通信フレームタイミングオフセットに基づいて、クロック周波数誤差を求め、前回の同期モードとの間において生じた、同期ずれの推定値としてのキャリア周波数オフセット、及び、1基本フレーム当たり(単位時間当たり)のキャリア周波数オフセットを求めることができる。
【0060】
上記のようにクロック誤差推定部23bにて求められた、タイミングオフセット、及び、キャリア周波数オフセットの内、キャリア周波数オフセット(前回の同期モードとの間において生じたキャリア周波数オフセット、及び、1基本フレーム当たりのキャリア周波数オフセット)は、キャリア周波数補正部21,22に与えられる。
【0061】
本実施形態では、通常のAFC(自動周波数制御)機能のように、受信信号のキャリア周波数を補正するだけでなく、送信信号のキャリア周波数も補正することができる。
つまり、他の基地局装置との間のキャリア周波数オフセットが、送信側のキャリア周波数補正部22にも与えられ、このキャリア周波数補正部22において、端末装置への送信信号のキャリア周波数が補正される。
キャリア周波数補正部22は、同期モードにおいては、現状生じているキャリア周波数オフセットを解消するためにキャリア周波数を調整する処理(同期処理)を行う。
さらに、キャリア周波数補正部22は、通信モードにおいては、自己が端末装置へ送信する通信信号を他の基地局装置の通信信号に対して同期させるために、上記の1基本フレーム当たりのキャリア周波数オフセットに基づいて、基本フレームごとのキャリア周波数を調整する処理(同期補正処理)を行う。
具体的には、各基本フレームごとに生じると推定される同期ずれ量である1基本フレーム当たりのキャリア周波数オフセットが、基本フレームごとに解消されるように、各基本フレームそれぞれのキャリア周波数を調整する。
つまり、キャリア周波数補正部22は、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で、同期補正処理を1基本フレームごと(単位時間ごと)に複数回に分けて行い、前回の同期モードとの間において生じた、同期ずれの推定値としてのキャリア周波数オフセットを解消するようにキャリア周波数を調整する。
【0062】
このように、本実施形態では、キャリア周波数同期として、上記の処理を行うことで、自己と他の基地局装置との間にクロック周波数誤差が存在しているとしても、キャリア周波数オフセットが生じるのを抑制することができ、自己と他の基地局装置との間における通信信号のキャリア周波数に関する同期ずれを抑制することができる。
【0063】
検出部23aにて検出された通信タイミングオフセットは、同期ずれの推定値として、フレームタイミング制御部30に与えられる。また、演算部23cにて求められた1基本フレーム当たり(単位時間当たり)のタイミングオフセットについても、フレームタイミング制御部30に与えられる。フレームタイミング制御部(TDD制御部)30は、これらに基づいて、送信と受信とを切り替える制御を行うとともに、通信フレーム(送信フレーム、受信フレーム)の時間長さを調整する処理を行う。
【0064】
通信タイミングオフセットを受け取ったフレームタイミング制御部30は、同期モードにおいては、自己の送信タイミング(送信サブフレームタイミング)を検出部23aにて検出された通信タイミングオフセットの分ほど、正しい方向にずらすといった処理(同期処理)を行う。これにより、自装置の送信タイミングを、他の基地局装置の送信タイミングと一致させて、基地局装置間でのフレームタイミングの同期をとることができる。
【0065】
また、フレームタイミング制御部30は、通信モードにおいては、自己が端末装置へ送信する通信信号を他の基地局装置の通信信号に対して同期させるための同期補正を、演算部23cにて求められた1基本フレーム当たりのタイミングオフセットに基づいて、基本フレームごとの時間長さを調整することで行う(同期補正処理)。
具体的には、各基本フレームごとに生じると推定される同期ずれ量である1基本フレーム当たりのタイミングオフセットが、基本フレームごとに解消されるように、各基本フレームそれぞれの時間長さを調整する。
つまり、フレームタイミング制御部30は、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で、同期補正処理を1基本フレームごと(単位時間ごと)に複数回に分けて行い、前回の同期モードとの間において生じた、同期ずれの推定値としての通信タイミングオフセットを解消するように各基本フレームそれぞれの時間長さを調整する。
なお、送信タイミングを他の基地局装置の送信タイミングと一致させれば、自然に、受信タイミングも一致する。すなわち、他の基地局装置との間でフレームタイミング同期がとれた状態となる。
【0066】
このように、本実施形態では、フレームタイミング同期として、上記の処理を行うことで、自己と他の基地局装置との間にクロック周波数誤差が存在しているとしても、通信フレームタイミングオフセットが生じるのを抑制することができ、自己と他の基地局装置との間における通信タイミングに関する同期ずれを抑制することができる。
【0067】
以上のように、本実施形態の推定部23は、他の基地局装置の通信信号より当該他の基地局装置のプリアンブルのタイミングt(通信タイミング)を取得し、このタイミングtと、自装置2,3の送信タイミングとの差を、通信タイミングオフセット(同期タイミング誤差)として検出し、この通信タイミングオフセットに基づいて、他の基地局装置の通信信号と、自己の通信信号との間における同期ずれの推定値(通信タイミングオフセット、キャリア周波数オフセット)を求める。
また、補正部としてのキャリア周波数補正部21,22、及びフレームタイミング制御部30は、通信モードにおいて自己が送信する通信信号を他の基地局装置に対して同期させるための(タイミングオフセット及びキャリア周波数オフセットに関する)同期補正処理を、前記同期ずれの推定値に基づいて行う。
また、キャリア周波数補正部21,22、及びフレームタイミング制御部30は、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で、(タイミングオフセット及びキャリア周波数オフセットに関する)同期補正処理を、複数回に分けて行う。
【0068】
なお、上記推定部23及びフレームタイミング制御部30により行われる、基地局装置間でのフレームタイミングに関する同期処理、及び、同期補正処理については、後に詳述する。
【0069】
図2に戻り、前記同期制御部26は、前述のように、通信モードを休止するタイミング(同期タイミング)を制御し、同期モードを実行させる。
同期モードは、次のようにして実行される。
【0070】
まず、スレーブ基地局装置2,3は、起動時において、他の基地局装置(マスタ基地局装置又は他のスレーブ基地局装置)のうち、一の基地局装置をソース基地局装置として選択し、当該ソース基地局装置が送信した信号(プリアンブル;既知信号;同期信号)の受信波(ソース受信波)を検出して、基地局装置間のフレームタイミング同期とキャリア周波数同期をとる。
【0071】
なお、基地局装置が起動したとき行われる基地局間同期のための処理を初期同期モードという。初期同期モードは、前述のように起動時に実行され、より具体的には、基地局装置が起動してから、端末装置との通信が開始されるまでの間に行われる。
【0072】
初期同期モードの実行後、基地局装置は、自エリア内の端末装置との通信が可能になる。
しかし、基地局装置間では、クロック精度のばらつきによるクロック周波数オフセットが存在しているため、時間の経過によって、基地局装置間においてフレームタイミングやキャリア周波数にずれを生じる。
【0073】
そこで、スレーブ基地局装置2,3は、所定のタイミングで、端末装置との通信(送信信号;下りサブフレーム)を休止(停止)し、同期ずれを解消するための同期モード(通信を休止した同期モード)になる。
図6は、基地局装置2,3が、端末装置との通信を行う(通常)通信モードから、他の基地局装置(マスタ基地局装置又はスレーブ基地局装置)からの信号を受信する同期モードに切り替わるためのフローチャートを示している。
【0074】
図6に示すように、基地局装置2,3は、同期モードになるべき同期タイミングであるか否かの判定を行う(ステップS1)。同期タイミングは、例えば、同期モードになる周期(所定時間毎又は所定フレーム数毎)として設定されている。周期を時間で設定する場合、例えば、5分程度とすることができる。
端末装置との間で通信を行う通常通信モードであるときに、同期モードへ移行すべきタイミングになったと判定された場合(ステップS2)、基地局装置2,3は、同期モード(ステップS3)に移行する。同期モードが終了すると、再び通常通信モードに戻る(ステップS4)。
基地局装置2,3は、端末装置との間で通信を行いつつも、定期的又は必要に応じて随時、同期モードを実行することで、同期ずれが生じても、それを解消することができる。
【0075】
基地局装置2,3が、同期モードになると、端末装置との間の通信(下りサブフレームの送信)は停止(休止)され、本来、下りサブフレームとなる時間においても、信号を受信する状態となる。
【0076】
同期モードでは、他の基地局装置2が端末装置へ送信した信号(OFDM信号)を受信する。本実施形態では、他の基地局装置2が送信した下りサブフレームDLの先頭にあるプリアンブルを基地局間同期のための同期信号とし、フレームタイミング同期及びキャリア周波数同期をとる。
【0077】
以上の同期モードが終了すると、基地局装置2,3は、同期モードから通常通信モードに戻り、端末装置との間の通信が可能な状態となる。
【0078】
次に、上記同期モード、及び通常通信モードにおいて、基地局装置2,3が行う同期処理、及び同期補正処理について詳述する。
図7は、スレーブ基地局装置が、通信モードと同期モードとを繰り返し行ったときのマスタ基地局装置に対する通信タイミングオフセットの経時変化の態様を示す図である。なお、図7においては、第一基地局装置1と、第二基地局装置2との間の通信タイミングオフセットとして説明する。
【0079】
図7において、第二基地局装置2が、所定時間幅の通信モードの実行後に同期モードを周期的に繰り返している態様を示している。また、図7において、通信タイミングオフセットが「0」のときに、第一基地局装置1と、第二基地局装置2との間のフレームタイミングが一致しフレームタイミングの同期がとれている状態を示している。
また、図7中、破線は、同期モードにおける同期処理のみでフレームタイミング同期をとった場合の通信タイミングオフセットの経時変化を示した線図であり、実線は、同期モードにおける同期処理と、通信モードにおける同期補正処理とによって、フレームタイミング同期をとった本実施形態による通信タイミングオフセットの経時変化を示した線図である。
【0080】
通信モードにおいて、第二基地局装置2は、端末装置との間で通信を行うので、第一基地局装置1との関係では、別個独立して動作しており、フリーランの状態である。従って、図7中の破線で示すように、通信モードにおいて同期補正処理を行わない場合、通信タイミングオフセットは、同期モードにて同期処理を行うことで同期がとれた状態から、通信モードにおいては、両基地局装置1,2同士のクロック周波数誤差によって、経時的に増加し、同期ずれが生じる。このとき、通信モードから同期モードに切り替える際(通信モードの終了時)に同期ずれとして生じる通信タイミングオフセット値ΔTn´は、両者間のクロック周波数誤差が経時的に累積することによって、概ね同程度の値として、各通信モードに対応して周期的に現れる。
これに対して、本実施形態では、通信モードにおいて同期補正処理を行うことで、図7中の実線で示すように、通信モードに対応して周期的に現れる通信タイミングオフセットが大きく生じるのが抑制されている。
【0081】
図8は、図7中の同期モードの部分の拡大図である。
本実施形態に係る第二基地局装置2は、推定部23b及びフレームタイミング制御部30によって、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtnを求め、このタイミングオフセットtnが解消されるように、通信モードにて送信される信号を構成する各基本フレームごとに同期補正を行う。
【0082】
具体的には、フレームタイミング制御部30は、各基本フレームにおける下りサブフレームDLの送信開始タイミングをタイミングオフセットtnが解消される方向にずらすことで同期補正を行う。すなわち、フレームタイミング制御部30は、基本フレームにおいて、次の基本フレームに隣接する切り替えギャップRTGの時間幅を調整することで前記の同期補正を行うことができる。
フレームタイミング制御部30は、各基本フレームごとに同期補正を行うので、通信モードにおける通信タイミングオフセットの値は、図8に示すように、各基本フレームの時間幅ごとで増加し、各基本フレーム同士の間のタイミングで、タイミングオフセットtn分だけ減少するのを繰り返す。
【0083】
このように、フレームタイミング制御部30は、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で、同期補正を1基本フレームごとに複数回に分けて行い、前回の同期モードとの間において生じた、同期ずれの推定値としての通信タイミングオフセットを解消するように各基本フレームそれぞれの時間長さを調整する。
このように同期補正を行うと、通信モード全域に亘って均等に同期補正が行われるので、経時的に増加する同期ずれを効果的に抑制することができる。
なお、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtnの求め方については、後に説明する。
【0084】
通信モードから同期モードへと切り替わると、推定部23のプリアンブル検出部23a(図2)は、通信タイミングオフセット値ΔTnを現状の同期ずれとして検出する。
ついで、演算部23c(図2)は、上記通信タイミングオフセット値ΔTnを、次の通信モードにおける同期ずれの推定値としてプリアンブル検出部23aから受け取り、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1を演算し、フレームタイミング制御部30に出力する。
【0085】
ここで、演算部23cは、以下のようにして次の通信モードにおける1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1を演算する。すなわち、現状の通信タイミングオフセット値ΔTnは、基本フレームごとにタイミングオフセットtnによって逐次同期補正された結果、生じた同期ずれである。仮に、現状の通信タイミングオフセット値ΔTnがタイミングオフセットtnと同じ値であれば、タイミングオフセットtnとした同期補正によって、同期モードの時点においては、正確に同期ずれが解消されていることとなる。
しかし、現状の通信タイミングオフセット値ΔTnには、両基地局装置のクロック発生器の状態や、通信環境の変化によって、通常、下記式(2)で示すようなずれ値δTnが生じる。
ΔTn = tn + δTn ・・・ (2)
【0086】
なお、直前の通信モード全体において、同期補正を行わなかった場合に生じる通信タイミングオフセット値ΔTn´は、基本フレームごとに同期補正により解消されるタイミングオフセットtnに一の通信モードに含まれる基本フレーム数を乗じたものに上記ずれ値δTnを加えた値として表される。
【0087】
上記ずれ値δTnは、直前の通信モード全体において、同期補正しつつ生じた同期ずれである。従って、演算部23cは、下記式(3)に示すように、ずれ値δTnを通信モードの時間幅に含まれる基本フレーム数で除することで、ずれ値δTnの基本フレーム当たりの値を求め、これに先の1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtnを加えることで、次の通信モードにおける1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1を求める。
tn+1 = tn + δTn/(通信モードに含まれる基本フレーム数)
・・・(3)
【0088】
演算部23cは、上記式(2)、及び(3)示すように、プリアンブル検出部23aが次の通信モードにおける同期ずれの推定値として検出した通信タイミングオフセット値ΔTnをに基づいて、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1を求める。
なお、一の通信モードに含まれる基本フレーム数については、通信モードの時間幅は予め同期制御部26により定められ、また、基本フレームの時間幅は上述のように5msと定められているので、演算部23cは、これらの値から、一の通信モードに含まれる基本フレーム数を求めることができる。
【0089】
なお、上記ずれ値δTnが、予め定めた値よりも小さい場合には、当該ずれ値δTnを考慮することなく、そのまま現状のタイミングオフセットtnを次の通信モードにおけるタイミングオフセットtn+1とすることもできる。この場合、補正する必要のない微細なずれ値δTnに基づいて同期補正が行われるのを防止できる。
また、ずれ値δTnが、極端に大きい値として現れた場合においても、当該ずれ値δTnを考慮することなく、そのまま現状のタイミングオフセットtnを次の通信モードにおけるタイミングオフセットtn+1とすることもできる。この場合、ずれ値δTnが、例えばマルチパス等に起因して突発的な異常値として現れたとしても、それに基づいた同期補正が行われるのを回避できる。
【0090】
上記のように求められる1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1を演算部23cから受け取るとともに、プリアンブル検出部23aから通信タイミングオフセット値ΔTnを受け取ると、フレームタイミング制御部30は、現状の通信タイミングオフセット値ΔTnを解消する方向に通信モードを開始する際の自己の送信タイミングをずらす処理を行うことで、同期処理を行う。
また、フレームタイミング制御部30は、上記同期処理の後、通信モードに切り替わると、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1に基づいて、当該通信モードにおける各基本フレームごとに上述の同期補正を行う。
【0091】
上記のように構成された第二及び第三基地局装置2,3によれば、通信モードにおいて自己が送信する通信信号の同期補正を、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で複数回に分けて行うので、同期ずれが大きく生じるのを、通信モード全域に亘って抑制することができる。従って、同期モードにおいて行われる基地局間同期によって同期ずれを抑制するのみならず、通信モード時においても同期ずれが抑制されるので、同期ずれを効果的に抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態の基地局装置2,3によれば、端末装置との間の通信を行うための通信モードにおいても同期ずれが抑制されるので、同期ずれを抑制するために、端末装置との間の通信を停止する必要のある同期モードの周期を短くする必要がない。このため、端末装置との間のスループットの低下を抑えつつ、基地局間の同期ずれを抑制することができる。
【0093】
〔第二の実施形態〕
図11は、本発明の第三の実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す図である。図11において、基地局装置101a,101bとユーザ端末(移動端末;MS;Mobile Station)102a,102bとの間で無線通信を行う通信システムを示している。この通信システムにおいては、基地局装置(BS;Base Station)101a,101bは、複数設置されており、セル内のユーザ端末102a,102bとの間で通信を行うことができる。
【0094】
この通信システムは、例えば、LTE(Long Term Evolution)が適用されるシステムである。LTEでは、周波数分割複信(FDD)を採用することができ、以下では、本通信システムは、周波数分割複信方式を採用しているものとして説明する。また、通信システムは、LTE以外に、WCDMA,CDMA2000を採用するものであってもよい。
【0095】
本実施形態の通信システムでは、複数の基地局装置101a,101b間で同期をとる基地局間同期が行われる。本実施形態において、基地局間同期は、親となる他の基地局装置としての基地局装置(以下、「親BS」という)101aが、当該親BS101aのセル内の端末装置102aへ向けて送信した信号を、別の基地局装置(以下、「子BS」という)101bが受信することで同期をとる「エア同期」によって実行される。
なお、親BSは、さらに他の基地局装置との間でエア同期をとるものであってもよいし、GPS信号によって同期をとるなど、エア同期以外の方法によって、フレームタイミングを決定するものであってもよい。
【0096】
〔LTEのフレーム構造〕
周波数分割複信においては、上り信号(端末装置から基地局装置への送信信号)の周波数fuと下り信号(基地局装置から端末装置への送信信号)の周波数fdとを異ならせることで、上り通信と下り通信とを同時に行う。
図12に示すように、LTEにおける下りフレーム(DLフレーム)及び上りフレーム(ULフレーム)は、それぞれ時間長さが、10m秒であり、#1〜#19までの20個のスロットによって構成されている。また、LTEでは、2つのスロットの組み合わせをサブフレームという。なお、これらの下りフレームと上りフレームのタイミングは揃えられている。
【0097】
図13に示すように、下りフレーム(DLフレーム)を構成するスロットそれぞれは、7個(I=0〜6)のOFDMシンボルによって構成されている(Normal Cyclic Prefixの場合)。
そして、下りフレームを構成する#0〜#19の20個のスロットのうち、0番目(#0)及び10番目(#10)のスロットには、基地局装置としての識別符号として、Primary Synchronizaiton Signal及びSecondary Synchronization Signalが設けられている。
【0098】
Primary Synchronizaiton Signalは、スロットを構成する7個のOFDMシンボルのうち、最後シンボル(I=6)に配置されている。このSignalは、基地局装置の通信エリア(セル)を分割した複数(3個)のセクタそれぞれを識別するための情報であり、3種類ある。
Secondary Synchronization Signalは、スロットを構成する7個のOFDMシンボルのうち、最後から2番目(I=5)のシンボルに配置されている。このSignalは、複数の基地局装置の通信エリア(セル)それぞれを識別するための情報であり、168種類ある。
【0099】
Primary Synchronizaiton Signal及びSecondary Synchronization Signalの2つによって、504種類(168×3)の識別符号を構成する。ユーザ端末は、基地局装置から送信されたこれらのSignalを取得することで、自端末が、どの基地局装置のどのセクタに存在するかを認識することができる。
また、これらの信号は、ユーザ端末が、基地局装置と同期をとるための信号であり、ユーザ端末は、これらの信号を取得することで、通信相手である基地局装置との間で、同期をとることができる。
【0100】
〔基地局装置の構成〕
図14は、基地局装置(子BS)101bの構成を示している。子BS101bは、アンテナ141、第1受信部110、第2受信部120、及び送信部130を備えている。第1受信部110は、ユーザ端末102bからの上り信号を受信するためのものであり、第2受信部120は、他の基地局装置である親BS101aからの信号を受信するためのものである。送信部130は、ユーザ端末102bへ下り信号を送信するためのものである。
【0101】
また、子BS101bは、サーキュレータ140を備えている。このサーキュレータ140は、アンテナ141からの受信信号を、第1受信部110及び第2受信部120側へ与え、送信部130から出力された送信信号を、アンテナ141側へ与えるためのものである。このサーキュレータ140と送信部130の第4フィルタ135によって、アンテナ141からの受信信号が送信部130側へ伝わることが防止されている。
また、サーキュレータ140と第1受信部の第1フィルタ111によって、送信部130から出力された送信信号が第1受信部110へ伝わることが防止されている。さらに、サーキュレータ140と第5フィルタ121によって、送信部130から出力された送信信号が第2受信部120へ伝わることが防止されている。
【0102】
この第1受信部110は、スーパーヘテロダイン受信機として構成されており、IF(中間周波数)サンプリングを行うよう構成されている。より具体的には、第1受信部110は、第1フィルタ111、第1増幅器112、第1周波数変換部113、第2フィルタ114、第2増幅器115、第2周波数変換部116、及びA/D変換部117を備えている。
【0103】
第1フィルタ111は、ユーザ端末2bからの上り信号だけを通過させるためのものであり、上り信号の周波数fuだけを通過させる帯域通過フィルタによって構成されている。第1フィルタ111を通過した受信信号は、第1増幅器(高周波増幅器)112によって増幅され、第1周波数変換部113によって周波数fuから第1中間周波数への変換がなされる。なお、第1周波数変換部113は、発振器113a及びミキサ113bによって構成されている。
【0104】
第1周波数変換部113の出力は、第1中間周波数だけを通過させる第2フィルタ114を経て、第2増幅器(中間周波増幅器)115によって再び増幅される。第2増幅器115の出力は、第2周波数変換部116によって、第1中間周波数から第2中間周波数に変換され、さらにA/D変換部117によってデジタル信号に変換される。なお、第2周波数変換部116も発振器116a及びミキサ116bによって構成されている。
【0105】
A/D変換部117の出力(第1受信部110の出力)は、復調回路150(デジタル信号処理装置)に与えられ、ユーザ端末102bからの受信信号の復調処理が行われる。
このように、第1受信部110は、アンテナ141にて受信したアナログの上り信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理装置として構成された復調回路150に対し、デジタルの上り信号を与えるものである。
【0106】
また、前記送信部130は、変調回路160(デジタル信号処理装置)から出力された変調信号I,Qを受け取り、アンテナ141から信号を送信させるものであり、ダイレクトコンバージョン送信機として構成されている。この送信部130は、D/A変換器131a,131bと、直交変調器132と、第3フィルタ133、第3増幅器(高出力増幅器;HPA)134、及び第4フィルタ135を備えている。
【0107】
前記D/A変換器131a,131bは、変調信号I,QそれぞれについてD/A変換を行う。D/A変換器131a,131bの出力は、直交変調器132に与えられ、この直交変調器132によって、搬送波周波数がfd(下り信号周波数)である送信信号が生成される。
直交変調器132の出力は、周波数fdだけを通過させる第3フィルタ133を経て、第3増幅器134によって増幅され、さらに周波数fdだけを通過させる第4フィルタ135を得て、アンテナ141から送信され、ユーザ端末102bへの下り信号となる。
【0108】
以上の第1受信部110、送信部130は、ユーザ端末との間の本来的な通信を行うために必要な機能であるが、本実施形態の子BS101bは、更に第2受信部120を備えている。この第2受信部120は、エア同期をとるため、親BS101aが送信した下り信号を受信する。
【0109】
ここで、子BS101bが、エア同期によって親BS101aとの同期をとるには、子BS101bは、親BS101aが送信した下り信号を受信する必要がある。しかし、下り信号の周波数はfdであり、上り信号の周波数fuとは異なるため、第1受信部110では受信できない。
【0110】
つまり、第1受信部110には、周波数fuの信号だけを通過させる第1フィルタ111や、周波数fuから変換された第1中間周波数だけを通過させる第2フィルタ114が備わっているため、周波数fu以外の周波数(下り信号の周波数fd)の信号が第1受信部110に与えられても、第1受信部110を通過することはできない。
すなわち、第1受信部110は、第1受信部110内に備わったフィルタ111,114によって、上り信号周波数fuの信号の受信に適合したものとなっており、他の周波数の信号の受信はできない。
【0111】
そこで、本実施形態の子BS101bには、第1受信部110とは別に、親BS101aが送信した周波数fdの下り信号の受信を行うための第2受信部120が備わっている。
この第2受信部120は、第5フィルタ121、第4増幅器(高周波増幅器)122、第3周波数変換部123、第6フィルタ124、第5増幅器(中間周波増幅器)125、第4周波数変換部126、及びA/D変換部127を備えている。
【0112】
第5フィルタ121は、親BS101aからの下り信号だけを通過させるためのものであり、下り信号の周波数fdだけを通過させる帯域通過フィルタによって構成されている。第5フィルタ121を通過した受信信号は、第4増幅器(高周波増幅器)122によって増幅され、第4増幅器122の出力は、第3周波数変換部123によって下り信号周波数fdから第1中間周波数への変換がなされる。なお、第3周波数変換部123は、発振器123a及びミキサ123bによって構成されている。
【0113】
第3周波数変換部123の出力は、第3周波数変換部123から出力された第1中間周波数だけを通過させる第6フィルタ124を経て、第5増幅器(中間周波増幅器)125によって再び増幅される。第5増幅器125の出力は、第4周波数変換部126によって、第1中間周波数から第2中間周波数に変換され、さらにA/D変換部127によってデジタル信号に変換される。なお、第4周波数変換部126も発振器126a及びミキサ126bによって構成されている。
【0114】
A/D変換部127から出力された信号は、同期処理部170に与えられる。これにより、同期処理部170は、親BS101aからの下り信号を取得することができる。
【0115】
同期処理部170は、親BS101aから取得した下り信号のフレームに含まれるPrimary Synchronizaiton Signal及びSecondary Synchronization Signalに基づいて、自装置101bの通信タイミング及び通信周波数の同期をとるための処理を行う。
【0116】
同期処理部170は、エア同期制御部180によって制御される。エア同期制御部180は、上記第一の実施形態における同期制御部26と同様の機能を有している。
すなわち、エア同期制御部180は、一定の周期によって定期的に又は必要に応じて、エア同期のために、ユーザ端末102bへの下り信号の送信を行う通信モードを休止して、親BS101aが送信した下り信号を受信するエア同期状態(同期モード)とする。エア同期制御部180は、このエア同期状態となっている時間帯を示す情報であるエア同期区間情報を、変調回路160及び同期処理部170に出力することで当該変調回路160及び同期処理部170の制御を行う。
【0117】
図15は、同期処理部の構成図である。図15に示すように、同期処理部170は、推定部171、フレームタイミング制御部172、キャリア周波数補正部173、及び記憶部174を備えている。
同期処理部170は、エア同期制御部180から与えられるエア同期区間情報に基づいて、自装置101bが通信モードであるか同期モードであるかを認識し、エア同期するか否かを決定する。
推定部171は、エア同期することが決定されると、親BS101aからの下り信号を取得し、下り信号に含まれるPrimary Synchronizaiton Signal及びSecondary Synchronization Signal(以下、両Signalを総称して「同期信号」という)を利用して、親BS101aのフレーム送信タイミングを検出し、親BS101aと自装置101bとの間での通信フレームのタイミングオフセットと、キャリア周波数オフセットとを推定する。
【0118】
推定部171は、上記第一の実施形態における推定部23と同様の機能を有しており、下り信号に含まれる同期信号を検出する検出部171aと、親BS101aと自装置101bとの間のクロック誤差を推定するクロック誤差推定部171bと、親BS101aと自装置101bとの間の単位時間当たりのタイミングオフセットを演算する演算部171cと、を備えている。これら機能部についても、上記第一の実施形態と同様の機能を有している。
検出部171aは、受信した下りフレーム中の所定位置にある前記同期信号のタイミングを検出して、親BS101aのフレーム送信タイミングを検出する。そして、検出した親BS101aのフレーム送信タイミングと自装置101bのフレーム送信タイミングとを比較し、その差を通信タイミングオフセット(同期ずれ)として検出する。この通信タイミングオフセットは、検出される度に、記憶部174に与えられ、記憶部174にて蓄積される。
【0119】
また、本実施形態におけるフレームタイミング制御部172、及びキャリア周波数補正部173も、それぞれ、上記第一の実施形態におけるフレームタイミング制御部30、及びキャリア周波数補正部21,22と対応しており、同様の機能を有している。
つまり、フレームタイミング制御部172、及びキャリア周波数補正部173は、それぞれ、同期モードにおいては、現状検出されるタイミングオフセット、及びキャリア周波数オフセットを解消するための同期処理を行い、通信モードにおいては、基本フレーム当たりのタイミングオフセット、及びキャリア周波数オフセットに基づいて、基本フレームごとの時間長さ及びキャリア周波数の調整を行う同期補正処理を行う。なお、これら同期処理及び同期補正処理は、上記第一の実施形態と同様に行われる。
【0120】
この結果、本実施形態によれば、親BS101aと子BS101bとの間で同期をとることができるとともに、自己が送信する下り信号の同期補正を、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で行うので、同期ずれが大きく生じるのを通信モード全域に亘って抑制することができる。
なお、同期誤差(同期ずれ)の検出・補正対象は、フレームタイミングに限定されるものではなく、シンボルタイミングやスロットタイミングであってもよい。
【0121】
上記のようにして、親BS101aと子BS101bとの間で同期がとれると、両基地局装置101a,101bから、同一内容の情報を、同時に多数の端末装置へ送信するブロードキャスト送信を行っても、両基地局装置101a,101bからの信号が干渉することが防止できる。
また、両基地局装置101a,101bの同期がとれているため、両基地局装置101a,1bから同じ内容の信号を送信すれば、端末装置101a,101b側でマクロダイバーシティあるいは空間多重伝送を行うことができる。なお、受信ダイバーシティの実現方式として、選択性ダイバーシティ、最大比合成を採用することができる。
【0122】
また、本実施形態において、子BS101bは、以下に示す構成を採用することもできる。
図16は、本実施形態における子BS101bの他の構成の例を示している。この子BS101bでは、図14に示す子BS101bと同様に、第1受信部110と第2受信部120とを独立して設け、第1受信部110及び第2受信部120とをダイレクトコンバージョン受信機として構成したものである。つまり、第1受信部110及び第2受信部120は、アンテナ141によって受信した上り信号又は下り信号だけを通過させる帯域通過フィルタ111,121と、フィルタ111,121を通過した信号を増幅する増幅器112,122とを備えている。更に、増幅器112,122の出力を復調信号I,Qに復調する直交復調器118,128、及び復調信号I,Qをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換部117a,117b,127a,127bを備えており、これらの変調信号I,Qが、復調回路150又は同期処理部170に与えられる。
なお、図16中、送信部13は、図14に示す送信部13における増幅器134及びフィルタ135の間に、周波数変換部136及び増幅器137を追加して構成されている。
このように、第1受信部110及び第2受信部120の種類は特に限定されるものではない。
【0123】
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、通信モードにおける同期補正を一の通信タイミングオフセット値ΔTnに基づいて行ったが、例えば、過去の同期モードにおいて検出された通信タイミングオフセット値ΔTを複数記憶しておき、これら複数の通信タイミングオフセット値ΔTについての平均値を求め、この平均値に基づいて、同期補正を行うこともできる。
また上記実施形態では、1基本フレームの時間幅を単位時間として、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1に基づいて、通信モードにおける各基本フレームごとに複数回に分けて同期補正を行ったが、例えば、基本フレーム複数個の時間幅を単位時間として同期補正を行ってもよく、この場合、同期補正処理を分けて行う回数を減らすことができ、当該処理の自由度が高まる。
【0124】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0125】
1 第一基地局装置
2 第二基地局装置
3 第三基地局装置
22 キャリア周波数補正部(周波数補正部、補正部)
23 推定部
26 同期制御部(制御部)
30 フレームタイミング制御部(通信タイミング補正部、補正部)
101a,101b 基地局装置
171 推定部
172 フレームタイミング制御部(通信タイミング補正部、補正部)
173 キャリア周波数補正部(周波数補正部、補正部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の基地局装置との間で基地局間同期を行う基地局装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)のように移動端末が通信可能な無線通信システムにおいては、基地局が各地に多数設置される。各基地局がカバーするエリア(セル)内にある移動端末は、当該エリアをカバーする基地局との間で通信を行うことができる。
【0003】
移動端末が移動することにより、移動端末の通信相手となる基地局は変更されるが、基地局が変更される際、移動端末は、同時に二つの基地局(サービング基地局とターゲット基地局)からの信号を受信することになる。
このため、移動端末の基地局間移動をスムーズに行うには、隣接する基地局間で、送信タイミング及び搬送波周波数が揃っている基地局間同期が確保されている必要がある。
【0004】
基地局間同期がとれていると、移動端末の基地局間移動の際、移動端末が同時に二つの基地局からの信号を受信でき、基地局間移動をスムーズに行える。
ここで、基地局間同期のための技術としては、例えば、下記特許文献1記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−6642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基地局間同期をとるには、上記特許文献1のように、各基地局装置が、GPS衛星からGPS信号を受信し、各基地局が共通の同期信号によって動作することが考えられる。
しかし、GPS信号を利用して同期をとる場合、各基地局装置が、GPS受信機を備える必要があり、大型化・コストアップを招く。また、室内等のGPS信号を受信できない環境に設置される基地局装置の場合、基地局間同期をとることが不可能になる。
【0007】
そこで、隣接する他の基地局が送信した信号の受信波に含まれるプリアンブル等の既知信号波を用いて、隣接する当該他の基地局の送信タイミングを検出し、当該送信タイミングで基地局間同期をとることが考えられる。
この場合、移動端末との通信を行う周波数と同じ周波数を用いた無線通信で同期をとれるので、GPS信号を受信する場合のGPS受信機のように同期用の特別な受信系が必要ない。このため、基地局の小型化・コストダウンを図ることができ、室内等に設置される小型の基地局として適したものとなる。
【0008】
ここで、前述のWiMAXは、移動端末との間の無線通信に、送信と受信とを高速に切り替えるTDD(時分割複信)によってデュプレックス通信を実現する通信方式を採用する。
具体的には、図9に示すように、WiMAXでは、一つの基本フレームが、時間方向に並べて配置されて下りサブフレームDL(基地局の信号送信時間)と上りサブフレームUL(基地局の信号受信時間)とを含んで構成されている。なお、下りサブフレームは、先頭にプリアンブル(Preamble)を備えている。
【0009】
図9は、複数の基地局間で、送信タイミング及び受信タイミングが一致し、同期がとれている様子を示している。
このような基地局間同期をとる同期処理は、基地局の起動時に行われ、基地局間同期がとれてから、移動端末との間での通常の通信が行われる。
【0010】
ところが、両基地局が有しているクロック発生装置それぞれの精度誤差の違いによっては、時間の経過に伴って、同期にずれが生じる。
図10は、一の基地局装置のクロック周波数に対する、他の基地局装置のクロック周波数のオフセットの経時変化の一例を示すグラフである。図のように、一の基地局装置のクロック周波数と他の基地局装置のクロック周波数との間には、時間の経過によってなだらかに変化するオフセット値が定常的に存在している。このオフセット値は、周囲の温度変化等の外的要因によっても変化するが、外的要因が無ければ、互いのクロック発生装置の精度誤差の違いによって線形的に序々に増加する傾向を有している。
【0011】
基地局装置は、自己のクロック発生装置の発振に基づいて、上記の送信タイミングや、搬送波周波数を取得するので、図10に示すように互いのクロック周波数にオフセット値が存在すると、他の基地局装置との間で、送信タイミングや搬送波周波数において同期ずれが発生する。
【0012】
このため、例えば、端末装置との通信を一時的に中止し、他の基地局との同期処理を行うことで、上記のような同期ずれを解消することが考えられる。この場合、当該基地局装置は、端末装置との通信を停止している間に、改めて他の基地局装置との同期ずれがどの程度であるかを、他の基地局装置の受信波に含まれるプリアンブル波等の既知信号波から検出し、同期をとることができる。
【0013】
しかし、上記基地局装置間のクロック周波数のオフセット値は、上述のように線形的に序々に増加する傾向を有している。このため、基地局装置において、端末装置との通信を中止して他の基地局装置との間の同期をとったとしても、その後に端末装置との通信を開始すると、上述の傾向を有するクロック周波数のオフセット値は序々に増加し、両基地局装置間に同期ずれが生じてしまう。
すなわち、同期処理によって一時的には基地局装置間の同期がとれた状態とすることができるが、その後、端末装置との通信を行っている間に再度同期ずれが生じる。そして、その同期ずれは時間の経過に伴って徐々に増加するので、端末装置との通信を行っている間の通信時間が長ければ、この通信時間の間における同期ずれが増大することとなり、基地局装置における経過時間全体として見ると、周期的に同期処理を行ったとしても、依然として同期ずれが存在することとなる。
【0014】
これに対して、同期処理を行う周期を短くし、同期ずれが大きくなる前に同期をとれば、同期ずれが大きくなるのを抑制することができる。しかし、同期処理を行うためには、端末装置との間の通信を停止しなければならいので、同期処理の周期を短くすると、端末装置との間のスループットを低下させてしまう。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、スループット低下を抑えつつ、基地局間の同期ずれを抑制することができる基地局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明は、通信信号を送信して端末装置との間で通信を行う通信モードと、前記端末装置との間の通信を停止し他の基地局装置からの通信信号を受信して前記他の基地局装置との間で基地局間同期を行う同期モードと、を切り替えて実行する制御部と、
前記同期モードにおいて受信した前記他の基地局装置の通信信号に基づいて、当該他の基地局装置の通信信号と、自己の通信信号との間における同期ずれの推定値を求める推定部と、
前記推定部が求めた同期ずれの推定値に基づいて、自己が送信する通信信号を前記他の基地局装置の通信信号に対して同期させる同期補正を行う補正部と、を有し、
前記補正部は、次に同期モードに切り替わるまでの前記通信モードの間で、前記同期補正を複数回に分けて行うことを特徴としている。
【0016】
上記のように構成された基地局装置によれば、通信モードにおいて自己が送信する通信信号の同期補正を、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で複数回に分けて行うので、同期ずれが大きく生じるのを、通信モード全域に亘って抑制することができる。従って、同期モードにおいて行われる基地局間同期によって同期ずれを抑制するのみならず、通信モード時においても同期ずれが抑制されるので、同期ずれを効果的に抑制することができる。
【0017】
また、本発明によれば、端末装置との間の通信を行うための通信モードにおいても同期ずれが抑制されるので、同期ずれを抑制するために、端末装置との間の通信を停止する必要のある同期モードの周期を短くする必要がない。このため、端末装置との間のスループットの低下を抑えつつ、基地局間の同期ずれを抑制することができる。
【0018】
前記補正部は、前記単位時間ごとに同期補正を行うものであることが好ましい。
この場合、通信モード全域に亘って単位時間ごとに均等に同期補正が行われるので、経時的に増加する同期ずれを効果的に抑制することができる。
【0019】
また、前記推定部は、前記他の基地局装置の通信信号より当該他の基地局装置の通信タイミングを取得し、この通信タイミングと自己の通信タイミングとの間の通信タイミングオフセットに基づいて、前記同期ずれの推定値を求めるものであってもよい。
【0020】
より具体的には、前記推定部は、前記通信タイミングオフセットを前記同期ずれの推定値とし、前記補正部は、前記通信信号を構成する通信フレームの時間長さを調整することで通信タイミングの同期補正を行う通信タイミング補正部を有していることが好ましく、この場合、通信タイミングに関する同期ずれを抑制することができる。
【0021】
また、前記推定部は、前記通信タイミングオフセットに基づいて、前記通信信号の搬送波周波数オフセットを前記同期ずれの推定値として求め、前記補正部は、前記搬送波周波数の同期補正を行う周波数補正部を有しているものであってもよい。この場合、搬送波の周波数に関する同期ずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の基地局装置によれば、スループットの低下をおさえつつ、基地局間の同期ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る無線通信システムの全体図である。
【図2】第二及び第三基地局装置の構成を示したブロック図である。
【図3】通信フレームタイミングオフセットが生じたフレームを示す図である。
【図4】プリアンブルのタイミングを検出する方法の一例を示す図である。
【図5】前回と今回の同期モードにおけるタイミングオフセット量を示す説明図である。
【図6】第二及び第三基地局装置が、通信モードから、同期モードに切り替わる際のフローチャートを示す図である。
【図7】スレーブ基地局装置が、通信モードと同期モードとを繰り返し行ったときのマスタ基地局装置に対する通信タイミングオフセットの経時変化の態様を示す図である。
【図8】図7中の同期モードの部分の拡大図である。
【図9】基地局間同期がとれているときのフレームの状態を示す図である。
【図10】一の基地局装置のクロック周波数に対する、他の基地局装置のクロック周波数のオフセットの経時変化の一例を示すグラフである。
【図11】本発明の第二の実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す図である。
【図12】LTEのフレーム構成図である。
【図13】LTEのDLフレーム構成図である。
【図14】基地局装置(子BS)の構成図である。
【図15】同期処理部の構成図である。
【図16】本実施形態における子BSの他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
〔第一の実施形態〕
図1は、本発明の第一の実施形態に係る複数の基地局装置(BS:Base Station)1,2,3,・・・を有する無線通信システムを示している。この無線通信システムでは、例えば、広帯域無線通信を実現するために直交周波数分割多元接続(OFDMA)方式をサポートするIEEE802.16に規定される「WiMAX」に準拠した方式が採用されている。
【0025】
各基地局装置1,2,3は、それぞれの基地局装置1,2,3がカバーするエリア(セル)内にある端末装置(移動端末MS;Mobile Station)との間で通信が可能である。
図9に示したように、WiMAXでは、一つの基本フレームが、時間方向に並べて配置された下りサブフレームDL(基地局装置の信号送信時間)と上りサブフレームUL(基地局装置の信号受信時間)とを含んで構成されており、TDD(時分割複信)によって送信と受信の複信を行う通信システムとされている。
【0026】
一つの基本フレームの長さは、5msecである。下りサブフレームDLは、基地局装置1,2,3が、自エリア内の端末装置へ信号を送信する時間帯であり、上りサブフレームULは、基地局装置1,2,3が、自エリア内の端末装置からの信号を受信する時間帯である。
なお、下りサブフレームDLは、先頭に、既知信号であるプリアンブル(Preamble)を備えている。
また、一つの基本フレームは、下りサブフレームDLと上りサブフレームULとの間、及び上りサブフレームULと下りサブフレームDLとの間それぞれに、基地局装置及び端末装置双方共に送信を行わない切り替えギャップTTG(Transmit/Receive Transition Gap)、及び切り替えギャップRTG(Receive /Transmit Transition Gap)を含んでいる。
【0027】
複数の基地局装置1,2,3には、少なくとも一つのマスタ基地局装置と、スレーブ基地局装置とが含まれている。
本無線通信システムでは、各基地局装置1,2,3間で、フレームタイミング同期及びキャリア周波数同期を取る処理がなされる。マスタ基地局装置は、フレームタイミング及びキャリア周波数の基準局である。一方、スレーブ基地局装置は、他の基地局装置としてのマスタ基地局装置に対して直接的に、又は、他の基地局装置としての他のスレーブ基地局装置を介して間接的に、フレームタイミング同期及びキャリア周波数同期を取る。
なお、以下では、図1に示す第一基地局装置1を、マスタ基地局装置とし、第二基地局装置2及び第三基地局装置3をスレーブ基地局装置として説明する。
【0028】
前記フレームタイミング同期は、各基地局装置1,2,3の通信フレームが同じタイミングで送信されるように同期をとるものである。つまり、フレームタイミング同期によって、図9に示すように、ある基地局装置(第1基地局)が端末装置へ送信を行っている時間帯(下りサブフレームの時間帯)では、他の基地局装置(第2基地局)も端末装置へ送信を行い、ある基地局装置(第1基地局)が端末装置から受信を行っている時間帯(上りサブフレームの時間帯)では、他の基地局装置(第2基地局)も端末装置から受信を行うように、各基地局装置1,2,3の通信タイミングを合わせることができる。
【0029】
基地局装置間でフレームタイミング同期がとれていることで、端末装置がハンドオーバ時などで、複数の基地局装置に対して通信を行う状態となっても、端末装置は円滑に各基地局装置と通信を行うことができる。
【0030】
また、前記キャリア周波数同期は、各基地局装置1,2,3が端末装置へ対して送信する信号(OFDM(A)信号)のキャリア周波数(搬送波周波数)を、各基地局装置間で合わせるものである。
基地局装置間で、キャリア周波数同期がとれていることで、端末装置がハンドオーバ時などで、複数の基地局装置に対して通信を行う状態となっても、端末装置は円滑に各基地局装置と通信を行うことができる。
【0031】
ここで、各端末装置は、基地局装置から受信したOFDM信号のキャリア周波数の誤差を検出し、受信OFDM信号におけるキャリア周波数誤差(送信側と受信側の間のキャリア周波数の差)を補正するAFC(自動周波数制御)機能を有している。
したがって、各端末装置は、基地局装置から受信したOFDM信号のキャリア周波数に、誤差があっても、その誤差を補正した上で、OFDM復調を行うことができる。
【0032】
しかし、端末装置がハンドオーバ時などで、複数の基地局装置に対して通信を行う状態になると、基地局間でキャリア周波数同期がとれておらず同期ずれが生じている場合には、端末装置はAFC機能を用いてもキャリア周波数誤差を補正するのが非常に困難である。
【0033】
つまり、基地局間でキャリア周波数同期がとれていない場合には、ある端末装置からみて、一の基地局装置についてのキャリア周波数の誤差と、他の基地局装置についてのキャリア周波数に誤差とが異なるため、これらの複数の基地局装置と同時に通信を行う状態になると、キャリア周波数の誤差を補正できなくなる。
【0034】
さて、前記第一基地局装置1は、フレームタイミングとキャリア周波数の基準局であるため、基地局間でのフレームタイミング同期ないしキャリア周波数同期をとるための信号を、他の基地局装置から取得する必要がない。
例えば、第一基地局装置1は、自装置の内蔵クロック発生器(水晶振動子)が発生するクロックに基づいて自ら信号の送信タイミングを決定する自走マスタ基地局装置として構成することができる。なお、第一基地局装置1は、GPS受信機を備え、GPS信号を用いて信号の送信タイミングを決定するものであってもよい。
【0035】
これに対し、スレーブ基地局装置である両基地局装置2,3は、基地局間でのフレームタイミング同期ないしキャリア周波数同期をとるための信号を、他の基地局装置(マスタ基地局装置又は他のスレーブ基地局装置)から取得する。
【0036】
図2は、両基地局装置2,3の構成を示したブロック図である。
両基地局装置2,3は、信号の受信のために、受信信号を増幅するアンプ11、アンプ11から出力された受信信号に対する直交復調(直交検波)処理を行う直交復調器12、及び、直交復調器12から出力された受信信号に対するA/D変換を行うA/D変換部13を有している。デジタル信号に変換された受信信号は、DSP(デジタル信号処理プロセッサ)20に与えられる。
【0037】
また、基地局装置2,3は、信号の送信のために、デジタル送信信号をD/A変換するD/A変換部15、D/A変換部15から出力された送信信号に対する直交変調処理を行う直交変調器16、及び、直交変調器16から出力された送信信号を増幅するアンプ17を有している。
【0038】
なお、前記直交復調部12、前記A/D変換部13、前記D/A変換部15、及び前記直交変調部16の動作クロックは、内蔵のクロック発生器(基準信号発生器)18から与えられる。内蔵クロック発生器18は、水晶振動子などを含み、所定周波数の動作クロックを発生する。なお、クロック発生器18のクロックは、定倍部19a,19bを介して、前記A/D変換部13等へ与えられる。
また、内蔵クロック発生器18の動作クロックは、DSP20にも与えられ、DSP20における動作クロックにもなる。
【0039】
ここで、D/A変換部15に与えられる動作クロックの精度は、送信フレーム(下りサブフレーム)の時間長さの精度に影響する。したがって、基地局装置ごとにクロック発生器18の精度が異なると、生成される送信フレームの時間長さが、基地局装置ごとに僅かに異なることになる。そして、フレームの送信が繰り返されると、フレームの時間長さの相違が蓄積され、基地局装置間でのフレームタイミングにずれ(通信フレームのタイミングオフセット)が生じる(図3参照)。
【0040】
DSP(信号処理部)20は、受信信号及び/又は送信信号に対する信号処理を行う。
DSP20の主な機能は、受信信号に対するOFDM復調器としての機能、送信信号に対するOFDM変調器としての機能、送信と受信(送信フレームと受信フレーム)の切り替え機能、基地局間のフレームタイミング同期機能、及び基地局装置間のキャリア周波数同期機能である。図2において、DSP20内に示すブロックは、これらの機能を示すものである。
【0041】
図2におけるキャリア周波数補正部21は、受信信号のキャリア周波数を補正するものである。また、送信信号のキャリア周波数を補正するキャリア周波数補正部22も設けられている。
キャリア周波数補正部21,22は、推定部23で推定されたキャリア周波数オフセットに基づいて、受信信号及び/又は送信信号のキャリア周波数を補正する。
【0042】
受信信号のキャリア周波数補正部21の出力は、切り替えスイッチ24を介して、復調部(DEM)25に与えられる。復調部25では、キャリア周波数補正のなされた受信信号に対して復調(OFDM復調)処理がなされる。
前記切り替えスイッチ24は、端末装置からの信号を受信可能な通信モードの間は、受信信号を復調部25側へ与え、通信モードが停止(休止)された同期モードでは、受信信号を推定部23へ与えるためのものである。スイッチ24の切り替えは、同期制御部26によって行われる。
なお、通信モードとは、端末装置に対して通信信号を送信することで端末装置との間で通信を行うモードであり、同期モードとは、端末装置との間の通信を停止し他の基地局装置が送信している通信信号を受信して当該他の基地局装置との間で基地局間同期の処理(同期処理)を行うためのモードである。これら通信モード及び同期モードについては後述する。
【0043】
また、DSP20は、送信信号に対する変調(OFDM変調)処理を行う変調部(MOD)27を備えている。変調部27では、クロック発生器18のクロック周波数に基づいてキャリア周波数が決定されるため、クロック周波数の誤差は、送信信号のキャリア周波数に影響を与える。なお、送信信号のキャリア周波数にずれが生じると、各サブキャリアの周波数間隔は変わらないものの、各サブキャリアの中心周波数が一様にずれる。
【0044】
この変調部27から出力された送信信号は、切り替えスイッチ28を介して、キャリア周波数補正部22に与えられる。
前記切り替えスイッチ28は、端末装置へ信号を送信可能な通信モードの間は、送信信号をD/A変換部15へ与え、通信モードが休止された同期モードでは、送信信号をD/A変換部15へ与えないようにするものである。
この、スイッチ28の切り替えも、同期制御部26によって行われる。すなわち、この同期制御部26は、通信モードと、同期モードとを切り替えて実行する制御部を構成している。
【0045】
前記推定部23では、受信信号(通信信号)から同期信号であるプリアンブルを検出して、他の基地局装置との間での通信フレームのタイミングオフセットと、他の基地局装置との間でのキャリア周波数オフセット(搬送波周波数オフセット)と、を推定する。
このため、推定部23は、受信信号に含まれるプリアンブルを検出するプリアンブル検出部23aと、他の基地局装置と自装置との間のクロック誤差を推定するクロック誤差推定部23bと、他の基地局装置と自装置との間の単位時間当たりのタイミングオフセットを演算する演算部23cとを有している。
【0046】
本実施形態では、他の基地局装置が送信した下りサブフレームDLの先頭にあるプリアンブルを基地局間同期のための同期信号として用いる。このため、前記検出部23aは、他の基地局装置が送信した下りサブフレームDLの先頭にあるプリアンブルのタイミングを検出する。
なお、同期信号としては、ミッドアンブル、パイロット信号などであってもよい。
【0047】
基地局装置2,3は、他の基地局装置1,2が使用する可能性のあるプリアンブルパターンを既知パターンとしてメモリに有している。基地局装置2,3の検出部23aは、これらの既知のプリアンブルパターンを用いて、プリアンブルのタイミング等を検出する。
【0048】
ここで、プリアンブルは既知信号であるから、プリアンブルの信号波形も既知である。サンプリング後の受信信号をX(t)、プリアンブルの離散時間領域での信号をP(n)(n=0,・・・,N−1)とすると、図4(a)に示す受信波X(t)に対して、下記式に基づいて、時間方向にP(n)のスライディング相関をとる。
【0049】
【数1】
【0050】
そして、図4(b)に示すように、受信波X(t)と既知プリアンブルパターンP(n)の相関値がピークをとった位置を、プリアンブルのタイミングtとして検出することができる。
【0051】
検出部23aでは、自装置2,3の送信タイミングと、検出されたプリアンブルタイミングtとの差を、通信タイミングオフセット(同期ずれ)として検出する。この通信タイミングオフセット(通信フレームのタイミングオフセット)は、検出される度に、記憶部29に与えられ、記憶部29にて蓄積される。
【0052】
検出部23aにて検出された通信タイミングオフセットは、クロック誤差推定部23b及び演算部23cに与えられる。
演算部23cは、プリアンブル検出部23aによって検出された通信タイミングオフセットに基づいて、単位時間当たりでタイミングオフセットがどの程度増加しているかを求めることで、単位時間当たりのタイミングオフセットを求める。
なお、本実施形態では、前記単位時間を1基本フレームに係る時間幅である5msに設定される。
【0053】
また、クロック誤差推定部23bは、プリアンブル検出部23aによって検出された通信タイミングオフセットに基づいて、受信側である自装置の内蔵クロック発生器18のクロック周波数と、送信側である他の基地局装置の内蔵クロック発生器18のクロック周波数との差(クロック周波数誤差)を推定する。そして、このクロック周波数誤差の推定値から、同期ずれの推定値としてのキャリア周波数オフセットを求める。
【0054】
前記クロック誤差推定部23bは、同期モードが周期的に実行される状況下において、前回の同期モードにおいて検出された通信タイミングオフセットと、今回の同期モードにおいて検出された通信タイミングオフセットとに基づいて、クロック誤差を推定する。なお、前回のタイミングオフセットは、記憶部29から取得することができる。
【0055】
例えば、キャリア周波数が2.6[GHz]である場合に、図5に示すように、前回の同期モード(同期タイミング=t1)において、タイミングオフセットとしてT1が検出され、T1分のタイミングの修正がなされたものとする。そして、10秒後の今回の同期モード(同期タイミング=t2)においても、再びタイミングオフセットが検出され、そのタイミングオフセットはT2であったとする。
そして、今回のタイミングオフセットT2と前回のタイミングオフセットT1の差(T2−T1)が、0.1[msec]であったとする。
【0056】
ここで、1つの基本フレームの時間長さが5[msec]であるから、5[msec]=2πであり、前回の同期モードから今回の同期モードの間(Δt=t2−t1=10[sec]の間)において、位相が、π/25[rad]ずれたことになる。つまり、位相回転量Δφ=π/25である。
【0057】
そして、Δφ=2πfΔtの関係が成り立つため、π/25=2πf×10となる。
したがって、周波数誤差f=1/500=0.002[Hz]となる。
ここで、1基本フレームのフレーム長が5[msec]であるため、このフレーム長を周波数に換算すると、1/0.005=200[Hz]である。
つまり、200[Hz]の周波数に対して(1基本フレーム当たり)、0.002[Hz]の周波数誤差が生じていることになる。
【0058】
したがって、この場合、送信側である他の基地局装置のクロック周波数と、受信側である基地局装置のクロック周波数に、1×10-5=10[ppm]の誤差があることになる。クロック誤差推定部23bでは、上記のようにしてクロック周波数誤差を推定する。
【0059】
そして、キャリア周波数とタイミングオフセットは同じようにずれるため、キャリア周波数にも、10[ppm]分のずれ、すなわち、2.6[GHz]×1×10-5=26[kHz]のずれが生じる。
このように、クロック誤差推定部23bでは、プリアンブル検出部23aによって検出された通信フレームタイミングオフセットに基づいて、クロック周波数誤差を求め、前回の同期モードとの間において生じた、同期ずれの推定値としてのキャリア周波数オフセット、及び、1基本フレーム当たり(単位時間当たり)のキャリア周波数オフセットを求めることができる。
【0060】
上記のようにクロック誤差推定部23bにて求められた、タイミングオフセット、及び、キャリア周波数オフセットの内、キャリア周波数オフセット(前回の同期モードとの間において生じたキャリア周波数オフセット、及び、1基本フレーム当たりのキャリア周波数オフセット)は、キャリア周波数補正部21,22に与えられる。
【0061】
本実施形態では、通常のAFC(自動周波数制御)機能のように、受信信号のキャリア周波数を補正するだけでなく、送信信号のキャリア周波数も補正することができる。
つまり、他の基地局装置との間のキャリア周波数オフセットが、送信側のキャリア周波数補正部22にも与えられ、このキャリア周波数補正部22において、端末装置への送信信号のキャリア周波数が補正される。
キャリア周波数補正部22は、同期モードにおいては、現状生じているキャリア周波数オフセットを解消するためにキャリア周波数を調整する処理(同期処理)を行う。
さらに、キャリア周波数補正部22は、通信モードにおいては、自己が端末装置へ送信する通信信号を他の基地局装置の通信信号に対して同期させるために、上記の1基本フレーム当たりのキャリア周波数オフセットに基づいて、基本フレームごとのキャリア周波数を調整する処理(同期補正処理)を行う。
具体的には、各基本フレームごとに生じると推定される同期ずれ量である1基本フレーム当たりのキャリア周波数オフセットが、基本フレームごとに解消されるように、各基本フレームそれぞれのキャリア周波数を調整する。
つまり、キャリア周波数補正部22は、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で、同期補正処理を1基本フレームごと(単位時間ごと)に複数回に分けて行い、前回の同期モードとの間において生じた、同期ずれの推定値としてのキャリア周波数オフセットを解消するようにキャリア周波数を調整する。
【0062】
このように、本実施形態では、キャリア周波数同期として、上記の処理を行うことで、自己と他の基地局装置との間にクロック周波数誤差が存在しているとしても、キャリア周波数オフセットが生じるのを抑制することができ、自己と他の基地局装置との間における通信信号のキャリア周波数に関する同期ずれを抑制することができる。
【0063】
検出部23aにて検出された通信タイミングオフセットは、同期ずれの推定値として、フレームタイミング制御部30に与えられる。また、演算部23cにて求められた1基本フレーム当たり(単位時間当たり)のタイミングオフセットについても、フレームタイミング制御部30に与えられる。フレームタイミング制御部(TDD制御部)30は、これらに基づいて、送信と受信とを切り替える制御を行うとともに、通信フレーム(送信フレーム、受信フレーム)の時間長さを調整する処理を行う。
【0064】
通信タイミングオフセットを受け取ったフレームタイミング制御部30は、同期モードにおいては、自己の送信タイミング(送信サブフレームタイミング)を検出部23aにて検出された通信タイミングオフセットの分ほど、正しい方向にずらすといった処理(同期処理)を行う。これにより、自装置の送信タイミングを、他の基地局装置の送信タイミングと一致させて、基地局装置間でのフレームタイミングの同期をとることができる。
【0065】
また、フレームタイミング制御部30は、通信モードにおいては、自己が端末装置へ送信する通信信号を他の基地局装置の通信信号に対して同期させるための同期補正を、演算部23cにて求められた1基本フレーム当たりのタイミングオフセットに基づいて、基本フレームごとの時間長さを調整することで行う(同期補正処理)。
具体的には、各基本フレームごとに生じると推定される同期ずれ量である1基本フレーム当たりのタイミングオフセットが、基本フレームごとに解消されるように、各基本フレームそれぞれの時間長さを調整する。
つまり、フレームタイミング制御部30は、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で、同期補正処理を1基本フレームごと(単位時間ごと)に複数回に分けて行い、前回の同期モードとの間において生じた、同期ずれの推定値としての通信タイミングオフセットを解消するように各基本フレームそれぞれの時間長さを調整する。
なお、送信タイミングを他の基地局装置の送信タイミングと一致させれば、自然に、受信タイミングも一致する。すなわち、他の基地局装置との間でフレームタイミング同期がとれた状態となる。
【0066】
このように、本実施形態では、フレームタイミング同期として、上記の処理を行うことで、自己と他の基地局装置との間にクロック周波数誤差が存在しているとしても、通信フレームタイミングオフセットが生じるのを抑制することができ、自己と他の基地局装置との間における通信タイミングに関する同期ずれを抑制することができる。
【0067】
以上のように、本実施形態の推定部23は、他の基地局装置の通信信号より当該他の基地局装置のプリアンブルのタイミングt(通信タイミング)を取得し、このタイミングtと、自装置2,3の送信タイミングとの差を、通信タイミングオフセット(同期タイミング誤差)として検出し、この通信タイミングオフセットに基づいて、他の基地局装置の通信信号と、自己の通信信号との間における同期ずれの推定値(通信タイミングオフセット、キャリア周波数オフセット)を求める。
また、補正部としてのキャリア周波数補正部21,22、及びフレームタイミング制御部30は、通信モードにおいて自己が送信する通信信号を他の基地局装置に対して同期させるための(タイミングオフセット及びキャリア周波数オフセットに関する)同期補正処理を、前記同期ずれの推定値に基づいて行う。
また、キャリア周波数補正部21,22、及びフレームタイミング制御部30は、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で、(タイミングオフセット及びキャリア周波数オフセットに関する)同期補正処理を、複数回に分けて行う。
【0068】
なお、上記推定部23及びフレームタイミング制御部30により行われる、基地局装置間でのフレームタイミングに関する同期処理、及び、同期補正処理については、後に詳述する。
【0069】
図2に戻り、前記同期制御部26は、前述のように、通信モードを休止するタイミング(同期タイミング)を制御し、同期モードを実行させる。
同期モードは、次のようにして実行される。
【0070】
まず、スレーブ基地局装置2,3は、起動時において、他の基地局装置(マスタ基地局装置又は他のスレーブ基地局装置)のうち、一の基地局装置をソース基地局装置として選択し、当該ソース基地局装置が送信した信号(プリアンブル;既知信号;同期信号)の受信波(ソース受信波)を検出して、基地局装置間のフレームタイミング同期とキャリア周波数同期をとる。
【0071】
なお、基地局装置が起動したとき行われる基地局間同期のための処理を初期同期モードという。初期同期モードは、前述のように起動時に実行され、より具体的には、基地局装置が起動してから、端末装置との通信が開始されるまでの間に行われる。
【0072】
初期同期モードの実行後、基地局装置は、自エリア内の端末装置との通信が可能になる。
しかし、基地局装置間では、クロック精度のばらつきによるクロック周波数オフセットが存在しているため、時間の経過によって、基地局装置間においてフレームタイミングやキャリア周波数にずれを生じる。
【0073】
そこで、スレーブ基地局装置2,3は、所定のタイミングで、端末装置との通信(送信信号;下りサブフレーム)を休止(停止)し、同期ずれを解消するための同期モード(通信を休止した同期モード)になる。
図6は、基地局装置2,3が、端末装置との通信を行う(通常)通信モードから、他の基地局装置(マスタ基地局装置又はスレーブ基地局装置)からの信号を受信する同期モードに切り替わるためのフローチャートを示している。
【0074】
図6に示すように、基地局装置2,3は、同期モードになるべき同期タイミングであるか否かの判定を行う(ステップS1)。同期タイミングは、例えば、同期モードになる周期(所定時間毎又は所定フレーム数毎)として設定されている。周期を時間で設定する場合、例えば、5分程度とすることができる。
端末装置との間で通信を行う通常通信モードであるときに、同期モードへ移行すべきタイミングになったと判定された場合(ステップS2)、基地局装置2,3は、同期モード(ステップS3)に移行する。同期モードが終了すると、再び通常通信モードに戻る(ステップS4)。
基地局装置2,3は、端末装置との間で通信を行いつつも、定期的又は必要に応じて随時、同期モードを実行することで、同期ずれが生じても、それを解消することができる。
【0075】
基地局装置2,3が、同期モードになると、端末装置との間の通信(下りサブフレームの送信)は停止(休止)され、本来、下りサブフレームとなる時間においても、信号を受信する状態となる。
【0076】
同期モードでは、他の基地局装置2が端末装置へ送信した信号(OFDM信号)を受信する。本実施形態では、他の基地局装置2が送信した下りサブフレームDLの先頭にあるプリアンブルを基地局間同期のための同期信号とし、フレームタイミング同期及びキャリア周波数同期をとる。
【0077】
以上の同期モードが終了すると、基地局装置2,3は、同期モードから通常通信モードに戻り、端末装置との間の通信が可能な状態となる。
【0078】
次に、上記同期モード、及び通常通信モードにおいて、基地局装置2,3が行う同期処理、及び同期補正処理について詳述する。
図7は、スレーブ基地局装置が、通信モードと同期モードとを繰り返し行ったときのマスタ基地局装置に対する通信タイミングオフセットの経時変化の態様を示す図である。なお、図7においては、第一基地局装置1と、第二基地局装置2との間の通信タイミングオフセットとして説明する。
【0079】
図7において、第二基地局装置2が、所定時間幅の通信モードの実行後に同期モードを周期的に繰り返している態様を示している。また、図7において、通信タイミングオフセットが「0」のときに、第一基地局装置1と、第二基地局装置2との間のフレームタイミングが一致しフレームタイミングの同期がとれている状態を示している。
また、図7中、破線は、同期モードにおける同期処理のみでフレームタイミング同期をとった場合の通信タイミングオフセットの経時変化を示した線図であり、実線は、同期モードにおける同期処理と、通信モードにおける同期補正処理とによって、フレームタイミング同期をとった本実施形態による通信タイミングオフセットの経時変化を示した線図である。
【0080】
通信モードにおいて、第二基地局装置2は、端末装置との間で通信を行うので、第一基地局装置1との関係では、別個独立して動作しており、フリーランの状態である。従って、図7中の破線で示すように、通信モードにおいて同期補正処理を行わない場合、通信タイミングオフセットは、同期モードにて同期処理を行うことで同期がとれた状態から、通信モードにおいては、両基地局装置1,2同士のクロック周波数誤差によって、経時的に増加し、同期ずれが生じる。このとき、通信モードから同期モードに切り替える際(通信モードの終了時)に同期ずれとして生じる通信タイミングオフセット値ΔTn´は、両者間のクロック周波数誤差が経時的に累積することによって、概ね同程度の値として、各通信モードに対応して周期的に現れる。
これに対して、本実施形態では、通信モードにおいて同期補正処理を行うことで、図7中の実線で示すように、通信モードに対応して周期的に現れる通信タイミングオフセットが大きく生じるのが抑制されている。
【0081】
図8は、図7中の同期モードの部分の拡大図である。
本実施形態に係る第二基地局装置2は、推定部23b及びフレームタイミング制御部30によって、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtnを求め、このタイミングオフセットtnが解消されるように、通信モードにて送信される信号を構成する各基本フレームごとに同期補正を行う。
【0082】
具体的には、フレームタイミング制御部30は、各基本フレームにおける下りサブフレームDLの送信開始タイミングをタイミングオフセットtnが解消される方向にずらすことで同期補正を行う。すなわち、フレームタイミング制御部30は、基本フレームにおいて、次の基本フレームに隣接する切り替えギャップRTGの時間幅を調整することで前記の同期補正を行うことができる。
フレームタイミング制御部30は、各基本フレームごとに同期補正を行うので、通信モードにおける通信タイミングオフセットの値は、図8に示すように、各基本フレームの時間幅ごとで増加し、各基本フレーム同士の間のタイミングで、タイミングオフセットtn分だけ減少するのを繰り返す。
【0083】
このように、フレームタイミング制御部30は、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で、同期補正を1基本フレームごとに複数回に分けて行い、前回の同期モードとの間において生じた、同期ずれの推定値としての通信タイミングオフセットを解消するように各基本フレームそれぞれの時間長さを調整する。
このように同期補正を行うと、通信モード全域に亘って均等に同期補正が行われるので、経時的に増加する同期ずれを効果的に抑制することができる。
なお、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtnの求め方については、後に説明する。
【0084】
通信モードから同期モードへと切り替わると、推定部23のプリアンブル検出部23a(図2)は、通信タイミングオフセット値ΔTnを現状の同期ずれとして検出する。
ついで、演算部23c(図2)は、上記通信タイミングオフセット値ΔTnを、次の通信モードにおける同期ずれの推定値としてプリアンブル検出部23aから受け取り、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1を演算し、フレームタイミング制御部30に出力する。
【0085】
ここで、演算部23cは、以下のようにして次の通信モードにおける1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1を演算する。すなわち、現状の通信タイミングオフセット値ΔTnは、基本フレームごとにタイミングオフセットtnによって逐次同期補正された結果、生じた同期ずれである。仮に、現状の通信タイミングオフセット値ΔTnがタイミングオフセットtnと同じ値であれば、タイミングオフセットtnとした同期補正によって、同期モードの時点においては、正確に同期ずれが解消されていることとなる。
しかし、現状の通信タイミングオフセット値ΔTnには、両基地局装置のクロック発生器の状態や、通信環境の変化によって、通常、下記式(2)で示すようなずれ値δTnが生じる。
ΔTn = tn + δTn ・・・ (2)
【0086】
なお、直前の通信モード全体において、同期補正を行わなかった場合に生じる通信タイミングオフセット値ΔTn´は、基本フレームごとに同期補正により解消されるタイミングオフセットtnに一の通信モードに含まれる基本フレーム数を乗じたものに上記ずれ値δTnを加えた値として表される。
【0087】
上記ずれ値δTnは、直前の通信モード全体において、同期補正しつつ生じた同期ずれである。従って、演算部23cは、下記式(3)に示すように、ずれ値δTnを通信モードの時間幅に含まれる基本フレーム数で除することで、ずれ値δTnの基本フレーム当たりの値を求め、これに先の1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtnを加えることで、次の通信モードにおける1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1を求める。
tn+1 = tn + δTn/(通信モードに含まれる基本フレーム数)
・・・(3)
【0088】
演算部23cは、上記式(2)、及び(3)示すように、プリアンブル検出部23aが次の通信モードにおける同期ずれの推定値として検出した通信タイミングオフセット値ΔTnをに基づいて、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1を求める。
なお、一の通信モードに含まれる基本フレーム数については、通信モードの時間幅は予め同期制御部26により定められ、また、基本フレームの時間幅は上述のように5msと定められているので、演算部23cは、これらの値から、一の通信モードに含まれる基本フレーム数を求めることができる。
【0089】
なお、上記ずれ値δTnが、予め定めた値よりも小さい場合には、当該ずれ値δTnを考慮することなく、そのまま現状のタイミングオフセットtnを次の通信モードにおけるタイミングオフセットtn+1とすることもできる。この場合、補正する必要のない微細なずれ値δTnに基づいて同期補正が行われるのを防止できる。
また、ずれ値δTnが、極端に大きい値として現れた場合においても、当該ずれ値δTnを考慮することなく、そのまま現状のタイミングオフセットtnを次の通信モードにおけるタイミングオフセットtn+1とすることもできる。この場合、ずれ値δTnが、例えばマルチパス等に起因して突発的な異常値として現れたとしても、それに基づいた同期補正が行われるのを回避できる。
【0090】
上記のように求められる1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1を演算部23cから受け取るとともに、プリアンブル検出部23aから通信タイミングオフセット値ΔTnを受け取ると、フレームタイミング制御部30は、現状の通信タイミングオフセット値ΔTnを解消する方向に通信モードを開始する際の自己の送信タイミングをずらす処理を行うことで、同期処理を行う。
また、フレームタイミング制御部30は、上記同期処理の後、通信モードに切り替わると、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1に基づいて、当該通信モードにおける各基本フレームごとに上述の同期補正を行う。
【0091】
上記のように構成された第二及び第三基地局装置2,3によれば、通信モードにおいて自己が送信する通信信号の同期補正を、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で複数回に分けて行うので、同期ずれが大きく生じるのを、通信モード全域に亘って抑制することができる。従って、同期モードにおいて行われる基地局間同期によって同期ずれを抑制するのみならず、通信モード時においても同期ずれが抑制されるので、同期ずれを効果的に抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態の基地局装置2,3によれば、端末装置との間の通信を行うための通信モードにおいても同期ずれが抑制されるので、同期ずれを抑制するために、端末装置との間の通信を停止する必要のある同期モードの周期を短くする必要がない。このため、端末装置との間のスループットの低下を抑えつつ、基地局間の同期ずれを抑制することができる。
【0093】
〔第二の実施形態〕
図11は、本発明の第三の実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す図である。図11において、基地局装置101a,101bとユーザ端末(移動端末;MS;Mobile Station)102a,102bとの間で無線通信を行う通信システムを示している。この通信システムにおいては、基地局装置(BS;Base Station)101a,101bは、複数設置されており、セル内のユーザ端末102a,102bとの間で通信を行うことができる。
【0094】
この通信システムは、例えば、LTE(Long Term Evolution)が適用されるシステムである。LTEでは、周波数分割複信(FDD)を採用することができ、以下では、本通信システムは、周波数分割複信方式を採用しているものとして説明する。また、通信システムは、LTE以外に、WCDMA,CDMA2000を採用するものであってもよい。
【0095】
本実施形態の通信システムでは、複数の基地局装置101a,101b間で同期をとる基地局間同期が行われる。本実施形態において、基地局間同期は、親となる他の基地局装置としての基地局装置(以下、「親BS」という)101aが、当該親BS101aのセル内の端末装置102aへ向けて送信した信号を、別の基地局装置(以下、「子BS」という)101bが受信することで同期をとる「エア同期」によって実行される。
なお、親BSは、さらに他の基地局装置との間でエア同期をとるものであってもよいし、GPS信号によって同期をとるなど、エア同期以外の方法によって、フレームタイミングを決定するものであってもよい。
【0096】
〔LTEのフレーム構造〕
周波数分割複信においては、上り信号(端末装置から基地局装置への送信信号)の周波数fuと下り信号(基地局装置から端末装置への送信信号)の周波数fdとを異ならせることで、上り通信と下り通信とを同時に行う。
図12に示すように、LTEにおける下りフレーム(DLフレーム)及び上りフレーム(ULフレーム)は、それぞれ時間長さが、10m秒であり、#1〜#19までの20個のスロットによって構成されている。また、LTEでは、2つのスロットの組み合わせをサブフレームという。なお、これらの下りフレームと上りフレームのタイミングは揃えられている。
【0097】
図13に示すように、下りフレーム(DLフレーム)を構成するスロットそれぞれは、7個(I=0〜6)のOFDMシンボルによって構成されている(Normal Cyclic Prefixの場合)。
そして、下りフレームを構成する#0〜#19の20個のスロットのうち、0番目(#0)及び10番目(#10)のスロットには、基地局装置としての識別符号として、Primary Synchronizaiton Signal及びSecondary Synchronization Signalが設けられている。
【0098】
Primary Synchronizaiton Signalは、スロットを構成する7個のOFDMシンボルのうち、最後シンボル(I=6)に配置されている。このSignalは、基地局装置の通信エリア(セル)を分割した複数(3個)のセクタそれぞれを識別するための情報であり、3種類ある。
Secondary Synchronization Signalは、スロットを構成する7個のOFDMシンボルのうち、最後から2番目(I=5)のシンボルに配置されている。このSignalは、複数の基地局装置の通信エリア(セル)それぞれを識別するための情報であり、168種類ある。
【0099】
Primary Synchronizaiton Signal及びSecondary Synchronization Signalの2つによって、504種類(168×3)の識別符号を構成する。ユーザ端末は、基地局装置から送信されたこれらのSignalを取得することで、自端末が、どの基地局装置のどのセクタに存在するかを認識することができる。
また、これらの信号は、ユーザ端末が、基地局装置と同期をとるための信号であり、ユーザ端末は、これらの信号を取得することで、通信相手である基地局装置との間で、同期をとることができる。
【0100】
〔基地局装置の構成〕
図14は、基地局装置(子BS)101bの構成を示している。子BS101bは、アンテナ141、第1受信部110、第2受信部120、及び送信部130を備えている。第1受信部110は、ユーザ端末102bからの上り信号を受信するためのものであり、第2受信部120は、他の基地局装置である親BS101aからの信号を受信するためのものである。送信部130は、ユーザ端末102bへ下り信号を送信するためのものである。
【0101】
また、子BS101bは、サーキュレータ140を備えている。このサーキュレータ140は、アンテナ141からの受信信号を、第1受信部110及び第2受信部120側へ与え、送信部130から出力された送信信号を、アンテナ141側へ与えるためのものである。このサーキュレータ140と送信部130の第4フィルタ135によって、アンテナ141からの受信信号が送信部130側へ伝わることが防止されている。
また、サーキュレータ140と第1受信部の第1フィルタ111によって、送信部130から出力された送信信号が第1受信部110へ伝わることが防止されている。さらに、サーキュレータ140と第5フィルタ121によって、送信部130から出力された送信信号が第2受信部120へ伝わることが防止されている。
【0102】
この第1受信部110は、スーパーヘテロダイン受信機として構成されており、IF(中間周波数)サンプリングを行うよう構成されている。より具体的には、第1受信部110は、第1フィルタ111、第1増幅器112、第1周波数変換部113、第2フィルタ114、第2増幅器115、第2周波数変換部116、及びA/D変換部117を備えている。
【0103】
第1フィルタ111は、ユーザ端末2bからの上り信号だけを通過させるためのものであり、上り信号の周波数fuだけを通過させる帯域通過フィルタによって構成されている。第1フィルタ111を通過した受信信号は、第1増幅器(高周波増幅器)112によって増幅され、第1周波数変換部113によって周波数fuから第1中間周波数への変換がなされる。なお、第1周波数変換部113は、発振器113a及びミキサ113bによって構成されている。
【0104】
第1周波数変換部113の出力は、第1中間周波数だけを通過させる第2フィルタ114を経て、第2増幅器(中間周波増幅器)115によって再び増幅される。第2増幅器115の出力は、第2周波数変換部116によって、第1中間周波数から第2中間周波数に変換され、さらにA/D変換部117によってデジタル信号に変換される。なお、第2周波数変換部116も発振器116a及びミキサ116bによって構成されている。
【0105】
A/D変換部117の出力(第1受信部110の出力)は、復調回路150(デジタル信号処理装置)に与えられ、ユーザ端末102bからの受信信号の復調処理が行われる。
このように、第1受信部110は、アンテナ141にて受信したアナログの上り信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理装置として構成された復調回路150に対し、デジタルの上り信号を与えるものである。
【0106】
また、前記送信部130は、変調回路160(デジタル信号処理装置)から出力された変調信号I,Qを受け取り、アンテナ141から信号を送信させるものであり、ダイレクトコンバージョン送信機として構成されている。この送信部130は、D/A変換器131a,131bと、直交変調器132と、第3フィルタ133、第3増幅器(高出力増幅器;HPA)134、及び第4フィルタ135を備えている。
【0107】
前記D/A変換器131a,131bは、変調信号I,QそれぞれについてD/A変換を行う。D/A変換器131a,131bの出力は、直交変調器132に与えられ、この直交変調器132によって、搬送波周波数がfd(下り信号周波数)である送信信号が生成される。
直交変調器132の出力は、周波数fdだけを通過させる第3フィルタ133を経て、第3増幅器134によって増幅され、さらに周波数fdだけを通過させる第4フィルタ135を得て、アンテナ141から送信され、ユーザ端末102bへの下り信号となる。
【0108】
以上の第1受信部110、送信部130は、ユーザ端末との間の本来的な通信を行うために必要な機能であるが、本実施形態の子BS101bは、更に第2受信部120を備えている。この第2受信部120は、エア同期をとるため、親BS101aが送信した下り信号を受信する。
【0109】
ここで、子BS101bが、エア同期によって親BS101aとの同期をとるには、子BS101bは、親BS101aが送信した下り信号を受信する必要がある。しかし、下り信号の周波数はfdであり、上り信号の周波数fuとは異なるため、第1受信部110では受信できない。
【0110】
つまり、第1受信部110には、周波数fuの信号だけを通過させる第1フィルタ111や、周波数fuから変換された第1中間周波数だけを通過させる第2フィルタ114が備わっているため、周波数fu以外の周波数(下り信号の周波数fd)の信号が第1受信部110に与えられても、第1受信部110を通過することはできない。
すなわち、第1受信部110は、第1受信部110内に備わったフィルタ111,114によって、上り信号周波数fuの信号の受信に適合したものとなっており、他の周波数の信号の受信はできない。
【0111】
そこで、本実施形態の子BS101bには、第1受信部110とは別に、親BS101aが送信した周波数fdの下り信号の受信を行うための第2受信部120が備わっている。
この第2受信部120は、第5フィルタ121、第4増幅器(高周波増幅器)122、第3周波数変換部123、第6フィルタ124、第5増幅器(中間周波増幅器)125、第4周波数変換部126、及びA/D変換部127を備えている。
【0112】
第5フィルタ121は、親BS101aからの下り信号だけを通過させるためのものであり、下り信号の周波数fdだけを通過させる帯域通過フィルタによって構成されている。第5フィルタ121を通過した受信信号は、第4増幅器(高周波増幅器)122によって増幅され、第4増幅器122の出力は、第3周波数変換部123によって下り信号周波数fdから第1中間周波数への変換がなされる。なお、第3周波数変換部123は、発振器123a及びミキサ123bによって構成されている。
【0113】
第3周波数変換部123の出力は、第3周波数変換部123から出力された第1中間周波数だけを通過させる第6フィルタ124を経て、第5増幅器(中間周波増幅器)125によって再び増幅される。第5増幅器125の出力は、第4周波数変換部126によって、第1中間周波数から第2中間周波数に変換され、さらにA/D変換部127によってデジタル信号に変換される。なお、第4周波数変換部126も発振器126a及びミキサ126bによって構成されている。
【0114】
A/D変換部127から出力された信号は、同期処理部170に与えられる。これにより、同期処理部170は、親BS101aからの下り信号を取得することができる。
【0115】
同期処理部170は、親BS101aから取得した下り信号のフレームに含まれるPrimary Synchronizaiton Signal及びSecondary Synchronization Signalに基づいて、自装置101bの通信タイミング及び通信周波数の同期をとるための処理を行う。
【0116】
同期処理部170は、エア同期制御部180によって制御される。エア同期制御部180は、上記第一の実施形態における同期制御部26と同様の機能を有している。
すなわち、エア同期制御部180は、一定の周期によって定期的に又は必要に応じて、エア同期のために、ユーザ端末102bへの下り信号の送信を行う通信モードを休止して、親BS101aが送信した下り信号を受信するエア同期状態(同期モード)とする。エア同期制御部180は、このエア同期状態となっている時間帯を示す情報であるエア同期区間情報を、変調回路160及び同期処理部170に出力することで当該変調回路160及び同期処理部170の制御を行う。
【0117】
図15は、同期処理部の構成図である。図15に示すように、同期処理部170は、推定部171、フレームタイミング制御部172、キャリア周波数補正部173、及び記憶部174を備えている。
同期処理部170は、エア同期制御部180から与えられるエア同期区間情報に基づいて、自装置101bが通信モードであるか同期モードであるかを認識し、エア同期するか否かを決定する。
推定部171は、エア同期することが決定されると、親BS101aからの下り信号を取得し、下り信号に含まれるPrimary Synchronizaiton Signal及びSecondary Synchronization Signal(以下、両Signalを総称して「同期信号」という)を利用して、親BS101aのフレーム送信タイミングを検出し、親BS101aと自装置101bとの間での通信フレームのタイミングオフセットと、キャリア周波数オフセットとを推定する。
【0118】
推定部171は、上記第一の実施形態における推定部23と同様の機能を有しており、下り信号に含まれる同期信号を検出する検出部171aと、親BS101aと自装置101bとの間のクロック誤差を推定するクロック誤差推定部171bと、親BS101aと自装置101bとの間の単位時間当たりのタイミングオフセットを演算する演算部171cと、を備えている。これら機能部についても、上記第一の実施形態と同様の機能を有している。
検出部171aは、受信した下りフレーム中の所定位置にある前記同期信号のタイミングを検出して、親BS101aのフレーム送信タイミングを検出する。そして、検出した親BS101aのフレーム送信タイミングと自装置101bのフレーム送信タイミングとを比較し、その差を通信タイミングオフセット(同期ずれ)として検出する。この通信タイミングオフセットは、検出される度に、記憶部174に与えられ、記憶部174にて蓄積される。
【0119】
また、本実施形態におけるフレームタイミング制御部172、及びキャリア周波数補正部173も、それぞれ、上記第一の実施形態におけるフレームタイミング制御部30、及びキャリア周波数補正部21,22と対応しており、同様の機能を有している。
つまり、フレームタイミング制御部172、及びキャリア周波数補正部173は、それぞれ、同期モードにおいては、現状検出されるタイミングオフセット、及びキャリア周波数オフセットを解消するための同期処理を行い、通信モードにおいては、基本フレーム当たりのタイミングオフセット、及びキャリア周波数オフセットに基づいて、基本フレームごとの時間長さ及びキャリア周波数の調整を行う同期補正処理を行う。なお、これら同期処理及び同期補正処理は、上記第一の実施形態と同様に行われる。
【0120】
この結果、本実施形態によれば、親BS101aと子BS101bとの間で同期をとることができるとともに、自己が送信する下り信号の同期補正を、次に同期モードに切り替わるまでの通信モードの間で行うので、同期ずれが大きく生じるのを通信モード全域に亘って抑制することができる。
なお、同期誤差(同期ずれ)の検出・補正対象は、フレームタイミングに限定されるものではなく、シンボルタイミングやスロットタイミングであってもよい。
【0121】
上記のようにして、親BS101aと子BS101bとの間で同期がとれると、両基地局装置101a,101bから、同一内容の情報を、同時に多数の端末装置へ送信するブロードキャスト送信を行っても、両基地局装置101a,101bからの信号が干渉することが防止できる。
また、両基地局装置101a,101bの同期がとれているため、両基地局装置101a,1bから同じ内容の信号を送信すれば、端末装置101a,101b側でマクロダイバーシティあるいは空間多重伝送を行うことができる。なお、受信ダイバーシティの実現方式として、選択性ダイバーシティ、最大比合成を採用することができる。
【0122】
また、本実施形態において、子BS101bは、以下に示す構成を採用することもできる。
図16は、本実施形態における子BS101bの他の構成の例を示している。この子BS101bでは、図14に示す子BS101bと同様に、第1受信部110と第2受信部120とを独立して設け、第1受信部110及び第2受信部120とをダイレクトコンバージョン受信機として構成したものである。つまり、第1受信部110及び第2受信部120は、アンテナ141によって受信した上り信号又は下り信号だけを通過させる帯域通過フィルタ111,121と、フィルタ111,121を通過した信号を増幅する増幅器112,122とを備えている。更に、増幅器112,122の出力を復調信号I,Qに復調する直交復調器118,128、及び復調信号I,Qをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換部117a,117b,127a,127bを備えており、これらの変調信号I,Qが、復調回路150又は同期処理部170に与えられる。
なお、図16中、送信部13は、図14に示す送信部13における増幅器134及びフィルタ135の間に、周波数変換部136及び増幅器137を追加して構成されている。
このように、第1受信部110及び第2受信部120の種類は特に限定されるものではない。
【0123】
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、通信モードにおける同期補正を一の通信タイミングオフセット値ΔTnに基づいて行ったが、例えば、過去の同期モードにおいて検出された通信タイミングオフセット値ΔTを複数記憶しておき、これら複数の通信タイミングオフセット値ΔTについての平均値を求め、この平均値に基づいて、同期補正を行うこともできる。
また上記実施形態では、1基本フレームの時間幅を単位時間として、1基本フレーム当たりのタイミングオフセットtn+1に基づいて、通信モードにおける各基本フレームごとに複数回に分けて同期補正を行ったが、例えば、基本フレーム複数個の時間幅を単位時間として同期補正を行ってもよく、この場合、同期補正処理を分けて行う回数を減らすことができ、当該処理の自由度が高まる。
【0124】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0125】
1 第一基地局装置
2 第二基地局装置
3 第三基地局装置
22 キャリア周波数補正部(周波数補正部、補正部)
23 推定部
26 同期制御部(制御部)
30 フレームタイミング制御部(通信タイミング補正部、補正部)
101a,101b 基地局装置
171 推定部
172 フレームタイミング制御部(通信タイミング補正部、補正部)
173 キャリア周波数補正部(周波数補正部、補正部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信信号を送信して端末装置との間で通信を行う通信モードと、前記端末装置との間の通信を停止し他の基地局装置からの通信信号を受信して前記他の基地局装置との間で基地局間同期を行う同期モードと、を切り替えて実行する制御部と、
前記同期モードにおいて受信した前記他の基地局装置の通信信号に基づいて、当該他の基地局装置の通信信号と、自己の通信信号との間における同期ずれの推定値を求める推定部と、
前記推定部が求めた同期ずれの推定値に基づいて、自己が送信する通信信号を前記他の基地局装置の通信信号に対して同期させる同期補正を行う補正部と、を有し、
前記補正部は、次に同期モードに切り替わるまでの前記通信モードの間で、前記同期補正を複数回に分けて行うことを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記補正部は、単位時間ごとに複数回に分けて同期補正を行う請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記他の基地局装置の通信信号より当該他の基地局装置の通信タイミングを取得し、この通信タイミングと自己の通信タイミングとの間の通信タイミングオフセットに基づいて、前記同期ずれの推定値を求める請求項1又は2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記通信タイミングオフセットを前記同期ずれの推定値とし、
前記補正部は、前記通信信号を構成する通信フレームの時間長さを調整することで通信タイミングの同期補正を行う通信タイミング補正部を有している請求項3に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記通信タイミングオフセットに基づいて、前記通信信号の搬送波周波数オフセットを前記同期ずれの推定値として求め、
前記補正部は、前記搬送波周波数の同期補正を行う周波数補正部を有している請求項3に記載の基地局装置。
【請求項1】
通信信号を送信して端末装置との間で通信を行う通信モードと、前記端末装置との間の通信を停止し他の基地局装置からの通信信号を受信して前記他の基地局装置との間で基地局間同期を行う同期モードと、を切り替えて実行する制御部と、
前記同期モードにおいて受信した前記他の基地局装置の通信信号に基づいて、当該他の基地局装置の通信信号と、自己の通信信号との間における同期ずれの推定値を求める推定部と、
前記推定部が求めた同期ずれの推定値に基づいて、自己が送信する通信信号を前記他の基地局装置の通信信号に対して同期させる同期補正を行う補正部と、を有し、
前記補正部は、次に同期モードに切り替わるまでの前記通信モードの間で、前記同期補正を複数回に分けて行うことを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記補正部は、単位時間ごとに複数回に分けて同期補正を行う請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記他の基地局装置の通信信号より当該他の基地局装置の通信タイミングを取得し、この通信タイミングと自己の通信タイミングとの間の通信タイミングオフセットに基づいて、前記同期ずれの推定値を求める請求項1又は2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記通信タイミングオフセットを前記同期ずれの推定値とし、
前記補正部は、前記通信信号を構成する通信フレームの時間長さを調整することで通信タイミングの同期補正を行う通信タイミング補正部を有している請求項3に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記通信タイミングオフセットに基づいて、前記通信信号の搬送波周波数オフセットを前記同期ずれの推定値として求め、
前記補正部は、前記搬送波周波数の同期補正を行う周波数補正部を有している請求項3に記載の基地局装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−41713(P2010−41713A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122157(P2009−122157)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]