説明

基地局

【課題】複数のアンテナでの送信指向性を制御して通信端末と通信する基地局の送信性能を向上することが可能な技術を提供する。
【解決手段】スケジューリング実行部122は、SRS用上り無線リソースで受信するSRSの送信周波数帯域に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソースを、当該SRS用上り無線リソースに対応する下り無線リソースから割り当てる際には、通信部13が当該SRS用上り無線リソースにおいて当該使用下り無線リソースの周波数帯域で受信するSRSに基づいて複数のアンテナ110aでの送信指向性を制御して通信端末と下り通信を行う際の送信利得の予測値を算出する。そして、スケジューリング実行部122は、当該予測値に基づいて当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを用いて通信端末と通信する基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信に関して様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、LTE(Long Term Evolution)に関する技術が開示されている。LTEは、「E−UTRA」とも呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−099079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LTE等の通信システムの基地局においては、複数のアンテナでの指向性を適応的に制御するアダプティブアレイアンテナ方式が採用されることがある。
【0005】
一方で、基地局においては送信性能の向上が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、複数のアンテナでの送信指向性を制御して通信端末と通信する基地局の送信性能を向上することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る基地局は、通信端末と通信する基地局であって、複数のアンテナを用いて通信端末と通信を行い、通信端末と下り通信を行う際には当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、下り通信を行う通信端末を決定するとともに、当該通信端末に対して、前記通信部が当該通信端末との下り通信で使用する使用下り無線リソースを割り当てるスケジューリング実行部とを備え、通信端末が既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと、当該既知信号用上り無線リソースと対応付けられた、前記通信部が通信端末と下り通信を行う際に使用することが可能な下り無線リソースとが定められており、前記スケジューリング実行部は、既知信号用上り無線リソースの少なくとも一部で受信される既知信号の送信周波数帯域に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソースを通信端末に割り当てる際には、当該使用下り無線リソースを、当該既知信号用上り無線リソースに対応付けられた下り無線リソースから通信端末に割り当てる割り当て処理を行い、前記通信部は、前記スケジューリング実行部が前記割り当て処理を行って通信端末に割り当てる使用下り無線リソースを用いて当該通信端末と下り通信を行う際には、既知信号用上り無線リソースにおいて当該使用下り無線リソースの周波数帯域で受信される既知信号に基づいて前記複数のアンテナでの送信指向性を制御し、前記スケジューリング実行部は、前記割り当て処理において使用下り無線リソースを通信端末に割り当てる際には、前記通信部が既知信号用上り無線リソースにおいて当該使用下り無線リソースの周波数帯域で受信する既知信号に基づいて前記複数のアンテナでの送信指向性を制御して通信端末と下り通信を行う際の送信利得の予測値を算出し、当該予測値に基づいて当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末を決定する。
【0008】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記スケジューリング実行部は、前記割り当て処理において使用下り無線リソースを通信端末に割り当てる際には、前記通信部が当該使用下り無線リソースを用いて通信端末と通信する際の送信スループットの予測値を算出し、当該送信スループットの予測値と、前記送信利得の予測値とに基づいて、当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末を決定する。
【0009】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記スケジューリング実行部は、前記割り当て処理において使用下り無線リソースを通信端末に割り当てる際には、プロポーショナルフェアネスに基づいて当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末を決定するための評価値を前記送信利得の予測値を使用して算出し、当該評価値に基づいて当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末を決定する。
【0010】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記スケジューリング実行部は、前記割り当て処理において、下り無線リソースの割り当て単位ごとに、使用下り無線リソースを割り当てる通信端末を決定する。
【0011】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記通信部が通信端末に送信する送信信号に適用されるMCS(Modulation and Coding Scheme)を決定するMCS決定部がさらに設けられ、前記MCS決定部は、前記スケジューリング実行部が前記割り当て処理において通信端末に対して割り当てる、複数の割り当て単位を含む使用下り無線リソースで送信される送信信号に適用される1つのMCSを、当該使用下り無線リソースの周波数帯域全体での当該通信端末と前記通信部との間の下り方向の伝送路特性に基づいて決定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基地局の送信性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る基地局の構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係るTDDフレームの構成を示す図である。
【図4】実施の形態に係るTDDフレームの構成の種類を示す図である。
【図5】実施の形態に係るTDDフレームの構成の詳細を示す図である。
【図6】SRS送信帯域が周波数ホッピングされる様子の一例を示す図である。
【図7】SRS0とSRS1を示す図である。
【図8】複数のSRS用上り無線リソースを示す図である。
【図9】実施の形態に係る通信システムの動作を示す図である。
【図10】実施の形態に係る対応付け単位期間を示す図である。
【図11】SRS用上り無線リソースと下り無線リソースとの対応付けを示す図である。
【図12】下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【図13】基地局とその周辺に位置する基地局での下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【図14】基地局とその周辺に位置する基地局での送信指向性の一例を示す図である。
【図15】基地局と通信端末との間の下り方向の伝送路特性を示す図である。
【図16】基地局とその周辺に位置する基地局での下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【図17】基地局とその周辺に位置する基地局での下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【図18】実施の形態に係る基地局での単位リソース割り当て処理を示すフローチャートである。
【図19】割り当て単位リソースを説明するための図である。
【図20】割り当て単位リソースと使用SRSとの関係を示す図である。
【図21】基地局とその周辺に位置する基地局での送信指向性の一例を示す図である。
【図22】実施の形態に係る基地局での単位リソース割り当て処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本実施の形態に係る通信システム100の構成を示す図である。通信システム100は、例えば、複信方式としてTDD(Time Division Duplexing)方式が採用されたLTEであって、複数の基地局1を備えている。各基地局1は、複数の通信端末2と通信を行う。LTEでは、下り通信ではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が使用され、上り通信ではSC−FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)方式が使用される。したがって、基地局1から通信端末2への送信にはOFDMA方式が使用され、通信端末2から基地局1への送信にはSC−FDMA方式が使用される。OFDMA方式では、互いに直交する複数のサブキャリアが合成されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号が使用される。
【0015】
図1に示されるように、各基地局1のサービスエリア10は、周辺基地局1のサービスエリア10と部分的に重なっている。図1では、4つの基地局1だけしか示されていないため、1つの基地局1に対して周辺基地局1が2つあるいは3つだけしか存在していないが、実際には、1つの基地局1に対して例えば6つの周辺基地局1が存在することがある。
【0016】
複数の基地局1は、図示しないネットワークに接続されており、当該ネットワークを通じて互いに通信可能となっている。また、ネットワークには図示しないサーバ装置が接続されており、各基地局1は、ネットワークを通じてサーバ装置と通信可能となっている。
【0017】
図2は各基地局1の構成を示す図である。基地局1は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される無線リソースを複数の通信端末2のそれぞれに個別に割り当てることによって、当該複数の通信端末2と同時に通信することが可能となっている。基地局1は、送受信アンテナとしてアレイアンテナを有し、アダプティブアレイアンテナ方式を用いてアレイアンテナの指向性を制御することが可能である。
【0018】
図2に示されるように、基地局1は、無線処理部11と、当該無線処理部11を制御する制御部12とを備えている。無線処理部11は、複数のアンテナ110aから成るアレイアンテナ110を有している。無線処理部11は、アレイアンテナ110で受信される複数の受信信号のそれぞれに対して増幅処理、ダウンコンバート及びA/D変換処理等を行って、ベースバンドの複数の受信信号を生成して出力する。
【0019】
また、無線処理部11は、制御部12で生成されるベースバンドの複数の送信信号のそれぞれに対して、D/A変換処理、アップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域の複数の送信信号を生成する。そして、無線処理部11は、生成した搬送帯域の複数の送信信号を、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aにそれぞれ入力する。これにより、各アンテナ110aから送信信号が無線送信される。
【0020】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)及びメモリなどで構成されている。制御部12は、機能ブロックとして、送信信号生成部120、受信データ取得部121、スケジューリング実行部122、送信ウェイト処理部123、受信ウェイト処理部124、送信態様決定部125及びMCS決定部126を備えている。
【0021】
MCS決定部126は、基地局1が通信端末2に送信する送信信号に適用するMCS(Modulation and Coding Scheme)を決定する。MCSは、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの変調方式と誤り訂正符号の符号化率との組み合わせを示している。MCS決定部126は、通信端末2に送信される送信信号に適用されるMCSを、当該送信信号の周波数帯域での基地局1と当該通信端末2との間の下り方向の伝送路特性(無線特性)に基づいて決定する。
【0022】
送信信号生成部120は、通信対象の通信端末2に送信する送信データを生成する。送信データには制御データ及びユーザデータが含まれる。そして、送信信号生成部120は、生成した送信データを含むベースバンドの送信信号を、MCS決定部126で決定されたMCSに基づいて生成する。この送信信号は、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aの数だけ生成される。
【0023】
送信ウェイト処理部123は、送信信号生成部120で生成された複数の送信信号に対して、アレイアンテナ110での送信指向性を制御するための複数の送信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、送信ウェイト処理部123は、複数の送信ウェイトがそれぞれ設定された複数の送信信号に対して逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)等を行った後に、当該複数の送信信号を無線処理部11に出力する。
【0024】
受信ウェイト処理部124は、無線処理部11から入力される複数の受信信号に対して、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を行った後に、アレイアンテナ110での受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、受信ウェイト処理部124は、複数の受信ウェイトがそれぞれ設定された複数の受信信号を合成して新たな受信信号(以後、「合成受信信号」と呼ぶ)を生成する。
【0025】
受信データ取得部121は、受信ウェイト処理部124で生成された合成受信信号に対して、逆離散フーリエ変換や復調処理等を行って、当該合成受信信号に含まれる制御データ及びユーザデータを取得する。
【0026】
本実施の形態に係る基地局1では、無線処理部11、送信ウェイト処理部123及び受信ウェイト処理部124によって、アレイアンテナ110の指向性を適応的に制御しながら複数の通信端末2と通信を行う通信部13が構成されている。通信部13は、通信端末2と通信する際に、アレイアンテナ110の受信指向性及び送信指向性のそれぞれを制御する。具体的には、通信部13は、受信ウェイト処理部124において、受信信号に乗算する受信ウェイトを調整することより、アレイアンテナ110での受信指向性のビーム及びヌルを様々な方向に設定することができる。また、通信部13は、送信ウェイト処理部123において、送信信号に乗算する送信ウェイトを調整することより、アレイアンテナ110での送信指向性のビーム及びヌルを様々な方向に設定することができる。送信ウェイトは受信ウェイトから求めることができ、受信ウェイトは通信端末2からの既知信号に基づいて求めることができる。
【0027】
スケジューリング実行部122は、データの下り通信を行う通信端末2を決定するとともに、当該通信端末2に対して、当該通信端末2とのデータの下り通信で使用する下り無線リソース(以後、「使用下り無線リソース」と呼ぶ)を割り当てる。以後、スケジューリング実行部122で行われる、通信端末2に対する使用下り無線リソースの割り当てのスケジューリングを単に「下りスケジューリング」と呼ぶ。送信信号生成部120は、スケジューリング実行部122が通信端末2に割り当てた使用下り無線リソースに基づいて、当該通信端末2に送信すべきデータを含む送信信号を生成するとともに、当該使用下り無線リソースに基づいたタイミングで当該送信信号を送信ウェイト処理部123に入力する。これにより、通信端末2に送信すべきデータを含む送信信号が、当該通信端末2に割り当てられた使用下り無線リソースを用いて通信部13から送信される。送信信号生成部120は、スケジューリング実行部122が通信端末2に割り当てた使用下り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データを含む送信信号を生成して出力する。これにより、通信端末2は、自装置宛てのデータの送信で使用される使用下り無線リソースを知ることができ、基地局1からの自装置宛てのデータを適切に受信することができる。
【0028】
またスケジューリング実行部122は、データの上り通信を行う通信端末2を決定するとともに、当該通信端末2に対して、当該通信端末2とのデータの上り通信で使用する上り無線リソース(以後、「使用上り無線リソース」と呼ぶ)を割り当てる。送信信号生成部120は、スケジューリング実行部122が通信端末2に割り当てた使用上り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データを含む送信信号を生成して出力する。これにより、通信端末2は、基地局1へのデータの送信に使用する使用上り無線リソースを知ることができ、当該使用上り無線リソースを用いて基地局1にデータを無線送信する。
【0029】
送信態様決定部125は、通信端末2が送信する既知信号である後述のサウンディング基準信号(SRS)の送信態様(送信周波数帯域及び送信周期など)を決定する。送信信号生成部120は、送信態様決定部125で決定された、通信端末2が送信するSRSの送信態様を当該通信端末2に通知するための制御データを含む送信信号を生成して出力する。これにより、当該通信端末2は、自身が送信するSRSについての送信態様(送信周波数帯域及び送信周期等)を知ることができ、当該送信態様に基づいてSRSを基地局1に送信する。
【0030】
<TDDフレームの構成>
次に基地局1と通信端末2との間で使用されるTDDフレーム300について説明する。TDDフレーム300は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される。TDDフレーム300の周波数帯域幅(システム帯域幅)は例えば10MHzであって、TDDフレーム300の時間長は10msである。基地局1は、TDDフレーム300から、各通信端末2に対して割り当てる使用上り無線リソース及び使用下り無線リソースを決定する。
【0031】
図3はTDDフレーム300の構成を示す図である。図3に示されるように、TDDフレーム300は、2つのハーフフレーム301で構成されている。各ハーフフレーム301は、5個のサブフレーム302で構成されている。つまり、TDDフレーム300は10個のサブフレーム302で構成されている。サブフレーム302の時間長は1msである。以後、TDDフレーム300を構成する10個のサブフレーム302を、先頭から順に第0〜第9サブフレーム302とそれぞれ呼ぶことがある。
【0032】
各サブフレーム302は、時間方向に2つのスロット303を含んで構成されている。各スロット303は、7個のシンボル期間304で構成されている。したがって、各サブフレーム302は、時間方向に14個のシンボル期間304を含んでいる。このシンボル期間304は、OFDMA方式の下り通信では、OFDMシンボルの1シンボル期間となり、SC−FDMA方式の上り通信では、DFTS(Discrete Fourier Transform Spread)−OFDMシンボルの1シンボル期間となる。
【0033】
以上のように構成されるTDDフレーム300には、上り通信専用のサブフレーム302と下り通信専用のサブフレーム302とが含められる。以後、上り通信専用のサブフレーム302を「上りサブフレーム302」と呼び、下り通信専用のサブフレーム302を「下りサブフレーム302」と呼ぶ。通信端末2は、上りサブフレーム302で基地局1にデータを送信し、基地局1は、下りサブフレーム302で通信端末2にデータを送信する。
【0034】
LTEでは、TDDフレーム300において、周波数方向に180kHzの周波数帯域幅を含み、時間方向に7シンボル期間304(1スロット303)を含む領域(無線リソース)が「リソースブロック(RB)」と呼ばれている。リソースブロックには、12個のサブキャリアが含まれる。スケジューリング実行部122は、通信端末2に対して使用上り無線リソースを割り当てる場合、あるいは通信端末2に対して使用下り無線リソースを割り当てる場合には、時間方向においては連続する2つのリソースブロック単位、つまり1つのサブフレーム302単位で、周波数方向においては1つのリソースブロック単位で、当該通信端末2に対して使用上り無線リソースあるいは使用下り無線リソースを割り当てる。なお、上り通信ではSC−FDMA方式が使用されていることから、上りサブフレーム302において、ある通信端末2に対して周波数方向において複数のリソースブロックが割り当てられる際には、周波数方向に連続した複数のリソースブロックが当該通信端末2に割り当てられる。
【0035】
また、LTEでは、TDDフレーム300の構成については、上りサブフレーム302と下りサブフレーム302の組み合わせが異なる7種類の構成が規定されている。図4は当該7種類の構成を示す図である。
【0036】
図4に示されるように、LTEでは、0番〜6番までのTDDフレーム300の構成が規定されている。本通信システム100では、この7種類の構成のうちの1つの構成が使用される。図4では、「D」で示されるサブフレーム302は、下りサブフレーム302を意味し、「U」で示されるサブフレーム302は、上りサブフレーム302を意味している。また、「S」で示されるサブフレーム302は、通信システム100において、下り通信から上り通信への切り替えが行われるサブフレーム302を意味している。このサブフレーム302を「スペシャルサブフレーム302」と呼ぶ。
【0037】
例えば、0番の構成を有するTDDフレーム300では、第0及び第5サブフレーム302が下りサブフレーム302となっており、第2〜第4サブフレーム302及び第7〜第9サブフレーム302が上りサブフレーム302となっており、第1及び第6サブフレーム302がスペシャルサブフレーム302となっている。また、4番の構成を有するTDDフレーム300では、第0サブフレーム302及び第4〜第9サブフレーム302が下りサブフレーム302となっており、第2及び第3サブフレーム302が上りサブフレーム302となっており、第1サブフレーム302がスペシャルサブフレーム302となっている。
【0038】
図5は、1番の構成を有するTDDフレーム300の構成を詳細に示す図である。図5に示されるように、スペシャルサブフレーム302は、時間方向に、下りパイロットタイムスロット(DwPTS)351と、ガードタイム(GP)350と、上りパイロットタイムスロット(UpPTS)352とを含んでいる。ガードタイム350は、下り通信から上り通信に切り替えるために必要な無信号期間であって、通信には使用されない。以下の説明では、通信システム100では、1番の構成を有するTDDフレーム300が使用されるものとする。
【0039】
LTEでは、下りパイロットタイムスロット351、ガードタイム350及び上りパイロットタイムスロット352の時間長の組み合わせについて、複数種類の組み合わせが規定されている。図5の例では、下りパイロットタイムスロット351の時間長は11シンボル期間304に設定されており、上りパイロットタイムスロット352の時間長は2シンボル期間304に設定されている。
【0040】
本実施の形態に係る通信システム100では、下りサブフレーム302だけではなく、スペシャルサブフレーム302の下りパイロットタイムスロット351においても下り通信を行うことが可能である。また、本通信システム100では、上りサブフレーム302だけではなく、スペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352においても上り通信を行うことが可能である。
【0041】
本実施の形態では、基地局1は、下りパイロットタイムスロット351の各シンボル期間304においてデータを通信端末2に送信する。また、各通信端末2は、上りパイロットタイムスロット352の2つのシンボル期間304のうちのどちらか一方においてSRSと呼ばれる既知信号を送信する。SRSは、複数のサブキャリアを変調する複数の複素シンボルで構成されている。以後、SRSに含まれる複素シンボルを「SRSシンボル」と呼ぶ。本実施の形態では、上りパイロットタイムスロット352において送信されるSRSを、送信ウェイトを算出するために使用する。つまり、基地局1の通信部13は、通信端末2が上りパイロットタイムスロット352で送信するSRSに基づいてアレイアンテナ110の送信指向性の制御を行うことが可能となっている。以後、アレイアンテナ110の送信指向性の制御を「アレイ送信制御」と呼ぶ。
【0042】
なお、SRSは、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304においても送信可能である。つまり、通信端末2は、上りサブフレーム302において、最後のシンボル期間304を除く各シンボル期間304ではデータを送信可能であり、最後のシンボル期間304ではSRSを送信可能である。アレイ送信制御には、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304で送信されるSRSを使用することも可能であるが、本実施の形態では、上りパイロットタイムスロット352で送信されるSRSを使用するものとする。以後、特に断らない限り、SRSと言えば、上りパイロットタイムスロット352を使用して送信されるSRSを意味するものとする。また、通信端末2がSRSを送信することが可能な上りパイロットタイムスロット352に含まれる前方のシンボル期間304及び後方のシンボル期間304を「第1SRS用上り通信期間370a」及び「第2SRS用上り通信期間370b」とそれぞれ呼ぶ。また、第1SRS用上り通信期間370aと第2SRS用上り通信期間370bを特に区別する必要が無い場合には、それぞれを「SRS用上り通信期間」と呼ぶ。
【0043】
各通信端末2はSRSを周期的に送信する。SRSの送信周期の長さ(送信間隔)は変更することが可能である。以後、SRSの送信周期を「SRS送信周期360」と呼ぶ。図5の例では、各通信端末2についてのSRS送信周期360の長さ(送信間隔)が5msに設定されている。したがって、図5の例では、各通信端末2は、上りスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352ごとにSRSを送信する。
【0044】
<SRSの送信周波数帯域>
本通信システム100では、各通信端末2に関して、当該通信端末2がSRSの送信に使用可能な周波数帯域400(以後、「SRS送信可能帯域400」と呼ぶ)が、当該通信端末2についてのSRS送信周期360ごとに、システム帯域の高周波側及び低周波側に交互に配置されているようになっている。図5では、SRS送信周期360の長さが5msで、第1SRS用上り通信期間370aでSRSを送信する通信端末2についてのSRS送信可能帯域400が右上がりの斜線で示されており、SRS送信周期360の長さが5msで、第2SRS用上り通信期間370bでSRSを送信する通信端末2についてのSRS送信可能帯域400が右下がりの斜線で示されている。システム帯域幅が10MHzの場合には、SRS送信可能帯域400は、40個のリソースブロック分の周波数帯域(180kHz×40)となる。本実施の形態では、例えば、1つのスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352でSRSを送信する複数の通信端末2の間では、システム帯域においてSRS送信可能帯域400が配置される場所は同じとなっている。つまり、1つのスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352でSRSを送信する複数の通信端末2に対しては同じ帯域のSRS送信可能帯域400が設定される。
【0045】
また、本実施の形態に係る通信システム100では、1つの通信端末2がSRSの1回の送信に使用する周波数帯域(以後、「SRS送信帯域」と呼ぶ)を、SRS送信可能帯域400の全範囲内あるいは一部の範囲内において、SRS送信周期360ごとに変化させることが可能である。この制御は「周波数ホッピング」と呼ばれている。また、本通信システム100では、SRS送信帯域450の帯域幅(以後、「SRS送信帯域幅」と呼ぶ)は変更可能となっている。
【0046】
図6は、ある通信端末2が使用するSRS送信帯域450がSRS送信可能帯域400の全範囲内で周波数ホッピングする様子の一例を示す図である。以後、説明対象の通信端末2を「対象通信端末2」と呼ぶ。図6の例では、対象通信端末2についてのSRS送信周期360の長さが5msに設定されており、SRS送信可能帯域400が第1及び第2周波数帯域に分割されている。そして、SRS送信可能帯域400の帯域幅の2分の1の帯域幅を有するSRS送信帯域450が、SRS送信周期360ごとに、第1及び第2周波数帯域の間で交互に変化している。
【0047】
なお、SRS送信帯域450については、周波数ホッピングせずに一定の周波数帯域に固定することも可能である。つまり、通信端末2は、送信周波数帯域が一定のSRSを周期的に送信することも可能である。
【0048】
<SRSの構成>
本実施の形態に係る通信システム100では、“transmissionComb”と呼ばれるパラメータkTCで識別される2種類のSRSが規定されている。各通信端末2は、この2種類のSRSのうちのどちらか一方のSRSを、第1SRS用上り通信期間370a及び第2SRS用上り通信期間370bのどちらか一方で送信する。
【0049】
パラメータkTCは“0”あるいは“1”の値をとることが可能である。パラメータkTC=0で特定されるSRS(以後、「SRS0」と呼ぶ)の送信に使用される複数のサブキャリアSC0は、周波数方向において、連続的に配置されているのではなく、櫛歯状に配置されている。言い換えれば、SRS0のキャリア周波数は周波数方向において櫛歯状に配置されている。同様にして、パラメータkTC=1で特定されるSRS(以後、「SRS1」と呼ぶ)の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において櫛歯状に配置されている。そして、SRS0とSRS1とが同じ周波数帯域で送信される場合には、当該SRS0の送信に使用される複数のサブキャリアSC0と、当該SRS1の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において交互に配置される。したがって、SRS0のキャリア周波数とSRS1のキャリア周波数とは周波数方向において互いに重なることはない。
【0050】
図7は、ある周波数帯域470において、SRS0とSRS1との両方が送信される様子を示している。図7に示されるように、SRS0の送信に使用される複数のサブキャリアSC0は、周波数方向において、1サブキャリア置きに配置されている。同様に、SRS1の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において、1サブキャリア置きに配置されている。そして、同じ周波数帯域470に含まれる、複数のサブキャリアSC0と複数のサブキャリアSC1とは、周波数方向において交互に配置されている。
【0051】
このように、1つの通信端末2がSRSの送信に使用する複数のサブキャリアは周波数方向において櫛歯状に配置されていることから、当該通信端末2が使用するSRS送信帯域450でのすべてのサブキャリアがSRSの送信に使用されるわけではない。そして、同じ周波数帯域に含まれる、複数のサブキャリアSC0と複数のサブキャリアSC1とは交互に配置されることから、SRS0を送信する通信端末2と、SRS1を送信する通信端末2とは、同じSRS用上り通信期間において同じSRS送信帯域450を使用することができる。基地局1側から見れば、基地局1は、同じSRS用上り通信期間において同じSRS送信帯域450で送信されるSRS0及びSRS1を区別することができる。
【0052】
さらに、本通信システム100においては、SRSを構成する複数のSRSシンボルから成る符号パターンが8種類規定されている。この8種類の符号パターンには、互いに直交する8種類の符号系列がそれぞれ採用されている。通信端末2は、8種類の符号パターンのいずれか1つをSRSとして送信する。
【0053】
このように、SRSにおいては、互いに直交する8種類の符号系列が採用された8種類の符号パターンが規定されていることから、最大で8つの通信端末2が、同じSRS用上り通信期間において同じSRS送信帯域450を用いてSRS0を送信することが可能である。さらに、最大で8つの通信端末2が、同じSRS用上り通信期間において同じSRS送信帯域450を用いてSRS1を送信することが可能である。
【0054】
本実施の形態では、各通信端末2は、第1SRS用上り通信期間370aにおいてSRS0を送信するか、第2SRS用上り通信期間370bにおいてSRS0を送信するか、第2SRS用上り通信期間370bにおいてSRS1を送信するかのいずれかとなっている。LTEにおいては、各通信端末2に、第1SRS用上り通信期間370aにおいてSRS1を送信させることは可能であるが、本実施の形態では、各通信端末2は、第1SRS用上り通信期間370aにおいてSRS1を送信しないようになっている。
【0055】
以後、第1SRS用上り通信期間370aと、スペシャルサブフレーム302の周波数帯域に含まれる、SRS0の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC0とで特定される上り無線リソースを「第1SRS用上り無線リソース500a」と呼ぶ。また、第2SRS用上り通信期間370bと、スペシャルサブフレーム302の周波数帯域に含まれる、SRS0の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC0とで特定される上り無線リソースを「第2SRS用上り無線リソース500b」と呼ぶ。そして、第2SRS用上り通信期間370bと、スペシャルサブフレーム302の周波数帯域に含まれる、SRS1の送信にすることが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC1とで特性される上り無線リソースを「第3SRS用上り無線リソース500c」と呼ぶ。
【0056】
図8は、第1SRS用上り無線リソース500a、第2SRS用上り無線リソース500b及び第3SRS用上り無線リソース500cを示す図である。図8に示されるように、第1SRS用上り無線リソース500a、第2SRS用上り無線リソース500b及び第3SRS用上り無線リソース500cは、時間方向及び周波数方向の少なくとも一方で互いに異なっている。以後、これらの上り無線リソースを区別する必要がない場合には、それぞれを「SRS用上り無線リソース」と呼ぶ。
【0057】
本実施の形態では、SRSの送信態様を決定する送信態様決定部125は、基地局1と通信する各通信端末2について、使用するSRS用上り通信期間、SRS送信帯域幅、SRS送信帯域450の先頭位置、SRS送信周期360、パラメータkTCの値及びSRSの符号パターンの種類を決定する。これにより、送信態様決定部125では、基地局1と通信する各通信端末2について、第1SRS用上り無線リソース500aに含まれる上り無線リソース、第2SRS用上り無線リソース500bに含まれる上り無線リソース及び第3SRS用上り無線リソース500cに含まれる上り無線リソースのうちのいずれをSRSの送信用として使用するかが決定される。SRS送信帯域450の先頭位置がSRS送信周期360ごとに変化すると、SRS送信帯域450が周波数ホッピングするようになるため、送信態様決定部125は、通信端末2についてのSRS送信帯域幅とSRS送信帯域450の先頭位置を決定することによって、当該通信端末2についてのSRS送信帯域450を決定することができる。また、LTEにおいては、SRS送信帯域幅として設定することが可能な帯域幅として、互いに大きさが異なる複数の帯域幅が定められている。例えば、システム帯域幅が10MHzの場合には、40個のリソースブロック分の帯域幅(180kHz×40)と、20個のリソースブロック分の帯域幅(180kHz×20)と、4個のリソースブロック分の帯域幅(180kHz×4)の3種類の帯域幅が定められている。送信態様決定部125は、この複数の帯域幅の1つをSRS送信帯域幅として決定する。
【0058】
送信信号生成部120は、送信態様決定部125で決定された、通信端末2が送信するSRSの送信態様を当該通信端末2に通知するための制御データ(以後、「SRS制御データ」と呼ぶ)を含む送信信号を生成する。この送信信号は、下りサブフレーム302が使用されて通信部13から当該通信端末2に送信される。これにより、各通信端末2にはSRS制御データが送信され、各通信端末2は、自身が送信するSRSの送信態様を知ることができる。つまり、各通信端末2は、自身が送信するSRSの符号パターンの種類、SRSの送信に使用する上り無線リソース及びSRS送信周期360を認識することができる。各通信端末2は、基地局1で決定された送信態様に基づいてSRSを周期的に送信する。
【0059】
なお、SRS制御データには、SRSの送信開始を指示するための送信開始データあるいはSRSの送信停止を指示するための送信停止データも含められる。SRSを送信していない通信端末2が、送信開始データを含むSRS制御データを受信すると、当該SRS制御データで指示される送信態様に基づいてSRSの周期的な送信を開始する。また、SRSを周期的に送信する通信端末2が、送信停止データを含むSRS制御データを受信すると、SRSの送信を停止する。通信端末2が送信するSRSの送信態様を変更する場合には、変更後の送信態様を指示するためのSRS制御データが当該通信端末2に通知される。このようなSRS制御データは、LTEでは、“RRCConnectionReconfiguration message”と呼ばれている。
【0060】
<SRSの送信を制御する際の通信システムの基本動作>
次に、対象通信端末2がSRS制御データを受信してから、対象通信端末2が当該SRS制御データによって通知される送信態様に基づいてSRSを送信するまでの通信システム100の動作について説明する。図9は当該動作を示す図である。
【0061】
図9に示されるように、例えば、(N−2)番目のTDDフレーム300の末尾に位置する下りサブフレーム302において、基地局1から対象通信端末2にSRS制御データを含む送信信号が送信されると、その次の(N−1)番目のTDDフレーム300の先頭から8番目の上りサブフレーム302(第7サブフレーム302)において、対象通信端末2は、SRS制御データを正常に受信した旨を通知するための応答データを含む送信信号を基地局1に送信する。この応答データは“RRCConnectionReconfigurationComplete message”と呼ばれている。
【0062】
応答データを送信した対象通信端末2は、次のN番目のTDDフレーム300以降において、受信したSRS制御データで指示される送信態様でSRSを送信する。図9の例では、SRS送信周期360の長さは5msに設定されている。
【0063】
なお、図9の例では、(N−1)番目のTDDフレーム300で対象通信端末2が応答データを送信しているが、それよりも後のTDDフレーム300で対象通信端末2が応答データを送信することもある。
【0064】
また、SRSを送信している通信端末2が、変更後の送信態様を通知するためのSRS制御データを受信した場合には、当該SRS制御データによって通知される変更後の送信態様でSRSを送信するまでは(図9の例では、(N−1)番目のTDDフレーム300の2つ目のスペシャルサブフレーム302まで)、それまでの送信態様でSRSを送信することになる。
【0065】
このように、基地局1が、あるTDDフレーム300において、対象通信端末2に対してSRS制御データを送信すると、そのTDDフレーム300よりも少なくとも2つ後のTDDフレーム300以降において、対象通信端末2は、当該SRS制御データに基づいたSRSの送信を行うようになる。したがって、基地局1が、対象通信端末2にSRSの送信開始を指示する際、あるいは対象通信端末2にSRSの送信態様の変更を指示する際には、対象通信端末2にSRS制御データを送信してから、そのSRS制御データに基づいて対象通信端末2から送信されるSRSを受信するまでに、ある程度の時間がかかることになる。なお、基地局1は、自装置と新たに接続されるようになった通信端末2や、自装置と接続されている通信端末2であって、データ送信を開始することになった通信端末2に対して、SRS制御データを送信してSRSの送信開始を指示する。これにより、基地局1とデータの下り通信を行う各通信端末2は、当該基地局1に対してSRSを送信するようになる。
【0066】
基地局1がSRSを周期的に送信している通信端末2に対してSRSの送信停止を指示する場合についても、通信システム100は同様に動作する。例えば、(N−2)番目のTDDフレーム300の末尾に位置する下りサブフレーム302において、送信停止データを含むSRS制御データが基地局1から対象通信端末2に対して送信されると、その次の(N−1)番目のTDDフレーム300の先頭から8番目の上りサブフレーム302(第7サブフレーム302)において、対象通信端末2は、SRS制御データを正常に受信した旨を通知するための応答データを基地局1に送信する。応答データを送信した対象通信端末2は、次のN番目のTDDフレーム300になるとSRSの送信を停止する。
【0067】
このように、基地局1が、対象通信端末2にSRSの送信停止を指示する際には、対象通信端末2にSRS制御データを送信してから、対象通信端末2でのSRSの送信が停止するまでに、ある程度の時間がかかることになる。なお、基地局1は、ハンドオーバによって周辺基地局1と接続されるようになった通信端末2や、自装置と接続されている通信端末2であって、データ送信が終了した通信端末2に対して、SRS制御データを送信してSRSの送信停止を指示する。これにより、基地局1とデータの下り通信を行う必要が無くなった各通信端末2は当該基地局1に対してSRSを送信しないようになる。
【0068】
<SRS用上り無線リソースと下り無線リソースとの対応付けについて>
本実施の形態では、図10に示される、スペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352の先頭から次のスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352の先頭までの期間550に関して、当該期間550に含まれる、第1SRS用上り無線リソース500a及び前方の下りサブフレーム302が互いに対応付けられている。また、当該期間550に含まれる、第2SRS用上り無線リソース500b及び2つ目の下りサブフレーム302が互いに対応付けられている。そして、当該期間550に含まれる第3SRS用上り無線リソース500cと当該期間550に含まれるスペシャルサブフレーム302における下りパイロットタイムスロット351を含む部分とが互いに対応付けられている。
【0069】
以後、当該期間550を「対応付け単位期間550」と呼ぶ。また、対応付け単位期間550に含まれる2つの下りサブフレーム302について、前方の下りサブフレーム302を「第1下り無線リソース560a」と呼び、後方の下りサブフレーム302を「第2下り無線リソース560b」と呼ぶ。また、対応付け単位期間550に含まれる、スペシャルサブフレーム302における下りパイロットタイムスロット351を含む部分を「第3下り無線リソース560c」と呼ぶ。そして、第1下り無線リソース560a、第2下り無線リソース560b及び第3下り無線リソース560cの間において特に区別する必要が無い場合には、それぞれを「下り無線リソース560」と呼ぶ。
【0070】
図11は、ある対応付け単位期間550でのSRS用上り無線リソースと下り無線リソース560との対応付けの様子を示す図である。図11では、TDDフレーム300の最初のスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352を含む対応付け単位期間550について示されているが、TDDフレーム300の2つ目のスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352を含む対応付け単位期間550についても同様である。
【0071】
スケジューリング実行部122は、各対応付け単位期間550について、SRS用上り無線リソースの少なくとも一部で受信されるSRSの送信周波数帯域(SRS送信帯域450)に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソースを通信端末2に割り当てる際には、当該使用下り無線リソースを、当該SRS用上り無線リソースに対応付けられた下り無線リソース560から通信端末2に割り当てる。例えば、スケジューリング実行部122は、第1SRS用上り無線リソース500aの少なくとも一部で受信されるSRSの送信周波数帯域に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソースを通信端末2に割り当てる際には、当該使用下り無線リソースを、当該第1SRS用上り無線リソース500aに対応付けられた第1下り無線リソース560aから通信端末2に割り当てる。そして、スケジューリング実行部122は、下り無線リソース560から使用下り無線リソースを通信端末に割り当てる際には、当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2を、SRSを送信している通信端末2から決定する。
【0072】
通信部13は、スケジューリング実行部122において下り無線リソース560から通信端末2に割り当てられた使用下り無線リソースを用いて当該通信端末2と下り通信を行う際には、当該下り無線リソース560に対応付けられたSRS用上り無線リソースにおける当該使用下り無線リソースの周波数帯域で受信されるSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0073】
図12は、ある対応付け単位期間550において基地局1が下り通信を行う端末番号1〜4の通信端末2に対する使用下り無線リソースの割り当て例を示す図である。以後、説明の対象となる対応付け単位期間550を「対象対応付け単位期間550」と呼ぶ。
【0074】
図12に示される例では、端末番号1及び2の通信端末2のそれぞれは、第1SRS用上り無線リソース500aの一部を用いてSRSを送信している。また、端末番号3の通信端末2は、第2SRS用上り無線リソース500bの一部を用いてSRSを送信している。そして、端末番号4の通信端末2は、第3SRS用上り無線リソース500cの一部を用いてSRSを送信している。
【0075】
図12に示されるように、端末番号1の通信端末2についてのSRS送信帯域450aについては、それに含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソース600aが第1下り無線リソース560aから端末番号1の通信端末2に割り当てられている。また、SRS送信帯域450aに含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソース600bが第1下り無線リソース560aから端末番号2の通信端末2に割り当てられている。
【0076】
端末番号2の通信端末2についてのSRS送信帯域450bについては、それに含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソース600cが第1下り無線リソース560aから端末番号2の通信端末2に割り当てられている。使用下り無線リソース600cは、周波数方向で不連続の2つの部分下り無線リソース600ca,600cbから構成されている。また、SRS送信帯域450bに含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソース600dが第1下り無線リソース560aから端末番号1の通信端末2に割り当てられている。
【0077】
端末番号3の通信端末2についてのSRS送信帯域450cについては、それに含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソース600eが第2下り無線リソース560bから端末番号3の通信端末2に割り当てられている。
【0078】
端末番号4の通信端末2についてのSRS送信帯域450dについては、それに含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソース600fが第3下り無線リソース560cから端末番号4の通信端末2に割り当てられている。
【0079】
通信部13は、第1下り無線リソース560aに含まれる使用下り無線リソース600aを用いて端末番号1の通信端末2と下り通信を行う際には、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて当該使用下り無線リソース600aの周波数帯域で受信する、端末番号1の通信端末2からのSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0080】
通信部13は、第1下り無線リソース560aに含まれる使用下り無線リソース600bを用いて端末番号2の通信端末2と下り通信を行う際には、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて当該使用下り無線リソース600bの周波数帯域で受信する、端末番号1の通信端末2からのSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0081】
通信部13は、第1下り無線リソース560aに含まれる使用下り無線リソース600cを用いて端末番号2の通信端末2と下り通信を行う際には、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて当該使用下り無線リソース600cの周波数帯域で受信する、端末番号2の通信端末2からのSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0082】
通信部13は、第1下り無線リソース560aに含まれる使用下り無線リソース600dを用いて端末番号1の通信端末2と下り通信を行う際には、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて当該使用下り無線リソース600dの周波数帯域で受信する、端末番号2の通信端末2からのSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0083】
通信部13は、第2下り無線リソース560bに含まれる使用下り無線リソース600eを用いて端末番号3の通信端末2と下り通信を行う際には、第2SRS用上り無線リソース500bにおいて当該使用下り無線リソース600eの周波数帯域で受信する、端末番号3の通信端末2からのSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0084】
通信部13は、第3下り無線リソース560cに含まれる使用下り無線リソース600fを用いて端末番号4の通信端末2と下り通信を行う際には、第3SRS用上り無線リソース500cにおいて当該使用下り無線リソース600fの周波数帯域で受信する、端末番号4の通信端末2からのSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0085】
以上のように、本実施の形態では、SRS用上り無線リソースで受信する、ある通信端末2からのSRSの送信周波数帯域に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソースは、当該SRS用上り無線リソースに対応する下り無線リソース560から、当該SRSを送信する通信端末2に対して割り当てられたり、当該SRSを送信する通信端末2とは別の通信端末2に対して割り当てられたりする。
【0086】
以後、上述の使用下り無線リソース600a,600c,600e,600fの通信端末2に対する割り当て処理のように、SRS用上り無線リソースで受信する、ある通信端末2からのSRSの送信周波数帯域に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソースを、当該SRS用上り無線リソースに対応する下り無線リソース560から通信端末2に割り当てる場合に、当該使用下り無線リソースを当該SRSを送信する通信端末2に対して割り当てる処理を「SRS対応下り割り当て処理」と呼ぶ。一方で、上述の使用下り無線リソース600b,600dの通信端末2に対する割り当て処理のように、当該使用下り無線リソースを当該SRSを送信する通信端末2以外の通信端末2に対して割り当てる処理を「SRS非対応下り割り当て処理」と呼ぶ。
【0087】
<アレイ送信制御について>
本実施の形態に係るアレイ送信制御では、ヌルステアリング及びビームフォーミングが同時に行われる。通信部13では、例えば、RLS(Recursive Least-Squares)アルゴリズム等の逐次更新アルゴリズムを用いて受信ウェイトを複数回更新し、更新終了後の受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを求めることによって、ヌルステアリングとビームフォーミングの両方を同時に行う。
【0088】
例えば、上述の図12の例において、通信部13が、第1下り無線リソース560aに含まれる使用下り無線リソース600aを用いて端末番号1の通信端末2と下り通信を行う際には、受信ウェイト処理部124が、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて当該使用下り無線リソース600aの周波数帯域で受信する、端末番号1の通信端末2からのSRSを構成する複数の複素シンボルに基づいて受信ウェイトを複数回更新し、送信ウェイト処理部123が更新終了後の受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを求める。そして、送信ウェイト処理部123は、算出した送信ウェイトを、使用下り無線リソース600aを用いて送信する、制御データ及びユーザデータを含む送信信号に設定する。
【0089】
また、上述の図12の例において、通信部13が、第1下り無線リソース560aに含まれる使用下り無線リソース600bを用いて端末番号2の通信端末2と下り通信を行う際には、受信ウェイト処理部124が、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて当該使用下り無線リソース600bの周波数帯域で受信する、端末番号1の通信端末2からのSRSを構成する複数の複素シンボルに基づいて受信ウェイトを複数回更新し、送信ウェイト処理部123が更新終了後の受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを求める。そして、送信ウェイト処理部123は、算出した送信ウェイトを、使用下り無線リソース600bを用いて送信する送信信号に設定する。
【0090】
また、本実施の形態に係るアレイ送信制御では、送信ウェイトが、例えば、1リソースブロックの周波数帯域ごとに求められる。以後、1リソースブロックの周波数帯域を「RB帯域」と呼ぶ。例えば、図12の例において、端末番号1の通信端末2に割り当てられた使用下り無線リソース600aの周波数帯域が4つのRB帯域で構成されているとすると、当該通信端末2についてのアレイ送信制御では、当該4つのRB帯域のそれぞれについて送信ウェイトが求められる。使用下り無線リソース600aに含まれるあるRB帯域を用いて端末番号1の通信端末2に送信される信号に対して適用する送信ウェイトは、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて使用下り無線リソース600aの周波数帯域で受信されるSRSを構成する複数の複素シンボルのうち、当該あるRB帯域で受信される6個の複素シンボルに基づいて受信ウェイトが6回更新されて、更新終了後の受信ウェイトに基づいて送信ウェイトが求められる。ここで、1リソースブロックには12個のサブキャリアが含まれることから、1つのRB帯域を用いて12個の複素シンボルを送信することが可能である。一方で、上述のように、1つの通信端末2がSRSの送信に使用する複数のサブキャリアは周波数方向において櫛歯状に配置されている。受信ウェイト処理部124は、SRS使用上り無線リソース600aにおいて紐付け対応下り無線リソース650aの周波数帯域に含まれる当該あるRB帯域で受信された12個の複素シンボルのうち、端末番号1のSRS直近送信端末2がSRSの送信に使用する6個のサブキャリアにそれぞれ対応する6個の複素シンボルを用いて受信ウェイトを6回更新する。
【0091】
<MCSの決定方法について>
本実施の形態に係る通信システム100では、変調方式及び符号化率の組み合わせが互いに異なるM個(M≧2)のMCSが規定されている。LTEにおいては、29個のMCSが規定されている。そして、M個のMCSに対しては、0段階から(M−1)段階までのランクがそれぞれ付与されている。本実施の形態では、ランクが上がるほど、それに対応するMCSでの変調方式及び符号化率の組み合わせで決定される基地局1の瞬時の送信スループットが大きくなっている。したがって、通信部13がランク(M−1)のMCSを使用して下り通信を行うと、基地局1の瞬時の送信スループットが最大となる。MCS決定部126は、通信部13が通信端末2に送信する送信信号に適用するMCSをM個のMCSから決定する。
【0092】
また、本実施の形態では、第1下り無線リソース560a、第2下り無線リソース560b及び第3下り無線リソース560cのそれぞれについて、当該下り無線リソース560を用いて1つの通信端末2に送信される送信信号については、その送信信号の周波数帯域の大きさにかかわらず、1つのMCSが適用される。つまり、各下り無線リソース560では、1つの通信端末2に対して1つのMCSが決定される。例えば、上述の図12の例において、MCS決定部126は、第1下り無線リソース560aに含まれる使用下り無線リソース600a,600dを用いて端末番号1の通信端末2に送信される送信信号については、それに適用する1つのMCSを決定する。また、MCS決定部126は、第1下り無線リソース560aに含まれる使用下り無線リソース600cを用いて端末番号2の通信端末2に送信される送信信号については、それに適用する1つのMCSを決定する。以後、説明の対象の下り無線リソース560を「対象下り無線リソース560」と呼ぶ。なおLTEでは、基地局1が、各下り無線リソース560において、1つの通信端末2に対して2つ以上のMCSを決定する動作モードも規定されているが、本実施の形態では、上記の通り、各下り無線リソース560において、1つの通信端末2に対して1つのMCSを決定するものとする。
【0093】
MCS決定部126は、対象下り無線リソース560に含まれる使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2に送信される送信信号に適用される1つのMCSを、当該使用下り無線リソースの周波数帯域全体での通信部13と対象通信端末2との間の下り方向の伝送路特性に基づいて決定する。以下にMCSの決定方法について詳細に説明する。
【0094】
本実施の形態では、各通信端末2は、基地局1からの信号を受信すると、その受信信号についてのSINR(信号対干渉雑音電力比:Signal to Interference plus Noise power Ratio)を1つのRB帯域ごとに求める。通信端末2で求められる、1つのRB帯域についてのSINRは、当該1つのRB帯域での当該通信端末2と通信部13との間の下り方向の伝送路特性を示している。各通信端末2は、求めたSINRをCQI(Channel Quality Indicator)情報に変換して基地局1に通知する。基地局1は、通信端末2からのCQI情報に基づいて、当該通信端末2でのSINRを特定することができる。
【0095】
MCS決定部126は、対象下り無線リソース560に含まれる使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2に送信される送信信号に適用される1つのMCSを決定する際には、対象通信端末2における、当該使用下り無線リソースの周波数帯域に含まれる各RB帯域での過去のSINRの平均値を求める。このSINRの平均値は、当該使用下り無線リソースの周波数帯域全体での対象通信端末2と通信部13との間の下り方向の伝送路特性を示している。MCS決定部126は、求めたSINRの平均値に基づいて、当該使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2に送信される送信信号に適用される1つのMCSを決定する。
【0096】
ここで、本実施の形態では、通信端末2における、基地局1からの受信信号についてのSINRがとり得る各値と、当該通信端末2でのSINRが当該値である場合に当該通信端末2への送信信号に適用するMCSとが対応付けられて登録された対応付けテーブルが、MCS決定部126に記憶されている。この対応付けテーブルは通信端末2ごとに準備される。MCS決定部126は、対象通信端末2についての対応付けテーブルを参照して、求めたSINRの平均値に対応するMCSを特定し、当該MCSを対象通信端末2への送信信号に適用するMCSとする。
【0097】
このようにして、使用下り無線リソースの周波数帯域全体での通信部13と対象通信端末2との間の下り方向の伝送路特性に応じたMCSが決定される。
【0098】
なお、対象通信端末2で求められるSINRだけで、基地局1と対象通信端末2との間の下り方向の伝送路特性を正確に表すことは困難であることから、対象通信端末2でのSINRの値に変化が無いとしても、対象通信端末2への送信信号に適用されるMCSの最適なランクが変化することがある。
【0099】
そこで、MCS決定部126は、各通信端末2についての対応付けテーブルを、基地局1と当該通信端末2との間の下り通信の結果に基づいて更新する。以下に、対応付けテーブルの更新方法について説明する。
【0100】
本実施の形態では、各通信端末2は、下り無線リソース560ごとに、当該下り無線リソース560を用いて基地局1が送信する送信信号に含まれるデータを適切に受信したか否かを示すACK/NACK情報を基地局1に通知する。MCS決定部126は、複数のTDDフレーム300の間、対象通信端末2からのACK/NACK情報を観測し、対象通信端末2での受信エラー率を算出する。そして、MCS決定部126は、対象通信端末2についての受信エラー率が大きい場合や小さい場合には、対象通信端末2についての対応付けテーブルを更新する。一方で、MCS決定部126は、対象通信端末2についての受信エラー率が適切である場合には対応付けテーブルを更新せずに維持する。
【0101】
MCS決定部126は、対象通信端末2についての受信エラー率が大きい場合や小さい場合には、対象通信端末2についての対応付けテーブルに関して、SINRの各値を変更するか、あるいはSINRの各値に対応付けられているMCSを変更する。例えば、対象通信端末2についての受信エラー率が大きい場合、つまり受信エラー率が第1のしきい値よりも大きい場合には、MCS決定部126は、対象通信端末2についての対応付けテーブルに登録されているSINRの各値を所定値だけ大きくするか、あるいは、当該各値に対応付けられているMCSのランクを1つ下げる。また、対象通信端末2についての受信エラー率が小さい場合、つまり受信エラー率が第2のしきい値(<第1のしきい値)よりも小さい場合には、MCS決定部126は、対象通信端末2についての対応付けテーブルに登録されているSINRの各値を所定値だけ小さくするか、あるいは、当該各値に対応付けられているMCSのランクを1つ上げる。
【0102】
このように、通信端末2でのSINRから当該通信端末2への送信信号に適用するMCSを決定する際に使用する対応付けテーブルを、基地局1と当該通信端末2との間の下り通信の結果に基づいて更新することによって、当該通信端末2への送信信号に対して適切なMCSを適用することができる。
【0103】
<下りスケジューリングの詳細について>
基地局1が、上述のSRS対応下り割り当て処理を行って使用下り無線リソースを割り当てた対象通信端末2と下り通信を行う場合には、通信部13は、アレイアンテナ110の送信指向性に関するビームを対象通信端末2に適切に向けることができる。さらに、基地局1が、SRS対応下り割り当て処理を行って使用下り無線リソースを割り当てた対象通信端末2と下り通信を行う場合には、周辺基地局1が当該使用下り無線リソースと同じ下り無線リソースを使用下り無線リソースとしてSRS対応下り割り当て処理によって割り当てる通信端末2に対して、アレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルを適切に向けることができる。以下にこの点について詳細に説明する。
【0104】
図13,14は、SRS対応下り割り当て処理を行うことによってアレイアンテナ110の送信指向性に関するビーム及びヌルが適切に制御される点を説明するための図である。図13には、対象対応付け単位期間550における、2つの基地局1a,1bでの使用下り無線リソースの割り当て例が示されている。また図14には、対象対応付け単位期間550における、基地局1a,1bでの送信指向性に関するビーム及びヌルが示されている。
【0105】
図13,14の例では、対象対応付け単位期間550において、基地局1aは、SRS対応下り割り当て処理を行って使用下り無線リソース610aを端末番号1の通信端末2に割り当てている。また、基地局1bは、SRS対応下り割り当て処理を行って使用下り無線リソース610bを端末番号5の通信端末2に割り当てている。また、図13,14の例では、端末番号1の通信端末2と端末番号5の通信端末2は、ともに第1SRS用上り無線リソース500aを用いてSRSを送信している。また、図13,14の例では、端末番号1の通信端末2についてのSRS送信帯域450aと、端末番号5の通信端末2についてのSRS送信帯域450eとが一致している。
【0106】
図13,14の例では、端末番号1の通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソースと、端末番号5の通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソースとが一致していることから、基地局1aが、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて端末番号1の通信端末2から受信するSRSには、基地局1aの周辺に位置する基地局1bが通信する端末番号5の通信端末2が送信するSRSが干渉波成分として含まれるようになる。したがって、基地局1aが、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて端末番号1の通信端末2から受信するSRSに基づいて送信ウェイトを算出し、当該送信ウェイトを、使用下り無線リソース610aを用いて端末番号1の通信端末2に送信する送信信号に設定すると、図14に示されるように、基地局1aが使用下り無線リソース610aを用いて送信する際のアレイアンテナ110での送信指向性においては、ビーム700aが端末番号1の通信端末2に向くとともに、ヌル701aが基地局1bと通信する端末番号5の通信端末2に向くようになる。よって、基地局1aは、通信対象の通信端末2に対して送信信号を確実に届けることができるとともに、周辺の基地局1bが通信する通信端末2に対して干渉を与えることを抑制することができる。基地局1b側から見れば、その周辺に位置する基地局1aが通信端末2と通信する際に、基地局1bが通信する通信端末2に対してヌルを向けてくれるようになる。
【0107】
一方で、基地局1bが、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて端末番号5の通信端末2から受信するSRSには、基地局1bの周辺に位置する基地局1aが通信する端末番号1の通信端末2が送信するSRSが干渉波成分として含まれるようになる。したがって、基地局1bが、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて端末番号5の通信端末2から受信するSRSに基づいて送信ウェイトを算出し、当該送信ウェイトを、紐付け対応下り無線リソース610bを用いて端末番号5の通信端末2に送信する送信信号に設定すると、図14に示されるように、基地局1bが使用下り無線リソース610bを用いて送信信号を送信する際のアレイアンテナ110での送信指向性においては、ビーム700bが端末番号5の通信端末2に向くとともに、ヌル701bが基地局1aと通信する端末番号1の通信端末2に向くようになる。よって、基地局1bは、通信対象の通信端末2に対して送信信号を確実に届けることができるとともに、周辺の基地局1aが通信する通信端末2に対して干渉を与えることを抑制することができる。
【0108】
このように、SRS対応下り割り当て処理を行う場合には、通信対象の通信端末2にはビームを向けることができるとともに、通信対象ではない通信端末2にはヌルを向けることができることから、ビーム及びヌルを適切に制御することができる。
【0109】
しかしながら、SRS対応下り割り当て処理を行う場合に、使用下り無線リソースの割り当て先の周波数帯域での対象通信端末2と通信部13との間の下り方向の伝送路特性(無線特性)を考慮せずに対象通信端末2に使用下り無線リソースを割り当てると、当該伝送路特性の悪い周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソースが対象通信端末2に割り当てられる可能性がある。その結果、基地局1からの送信信号が対象通信端末2に適切に届かない可能性が高くなり、基地局1の対象通信端末2に対する送信性能が低下する。さらに、使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2に送信される送信信号に適用されるMCSは、当該使用下り無線リソースの周波数帯域全体での対象通信端末2と通信部13との間の下り方向の伝送路特性に基づいて決定されることから、当該伝送路特性が悪い場合には、当該送信信号に適用されるMCSのランクは低くなる。よって、対象通信端末2と通信部13との間の下り方向の伝送路特性が悪い周波数帯域を含む使用下り無線リソースが対象通信端末2に割り当てられると、通信部13の対象通信端末2に対する送信スループットが低下し、基地局1の対象通信端末2に対する送信性能が低下する。
【0110】
また、対象通信端末2に割り当てられる使用下り無線リソースの周波数帯域が複数のRB帯域で構成されて当該周波数帯域が大きい場合には、周波数選択性フェージングにより、当該周波数帯域において、対象通信端末2と通信部13との間の下り方向の伝送路特性がばらつくことがある。図15はその様子を示す図である。
【0111】
図15には、通信部13が、RB帯域番号が22〜38のRB帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う際の対象通信端末2と通信部13との間の下り方向の伝送路特性の一例が示されている。図15では、横軸にはRB帯域番号が示されており、縦軸にはRB帯域番号で特定されるRB帯域で対象通信端末2が受信する受信信号についてのSINRが示されている。本実施の形態では、システム帯域は例えば50個のRB帯域で構成されており、当該50個のRB帯域に対しては、周波数が低い方から順に1番〜50番までのRB帯域番号が割り当てられている。
【0112】
図15に示されるように、RB帯域番号22〜29までの8個のRB帯域のそれぞれでは、当該RB帯域で対象通信端末2が受信する受信信号のSINRは大きくなっていることから、RB帯域番号22〜29までの8個のRB帯域から成る周波数帯域での伝送路特性は良好となっている。
【0113】
一方で、RB帯域番号30〜36までの7個のRB帯域のそれぞれでは、当該RB帯域で対象通信端末2が受信する受信信号のSINRが小さくなっていることから、RB帯域番号30〜36までの7個のRB帯域から成る周波数帯域での伝送路特性は不良となっている。
【0114】
このように、対象通信端末2に割り当てられた使用下り無線リソースの周波数帯域において、伝送路特性が良好な周波数帯域が含まれている場合であっても、伝送路特性が不良な周波数帯域が含まれている場合には、当該使用下り無線リソースの周波数帯域全体で見れば伝送路特性は悪くなってしまい、当該使用下り無線リソースの周波数帯域に含まれる18個のRB帯域でのSINRの平均値は小さくなる。したがって、当該使用下り無線リソースで送信される送信信号に適用されるMCSとしては、ランクの低いMCSが適用されることになる。その結果、通信部13が対象通信端末2と下り通信を行う際の周波数利用効率が低下して、通信部13の対象通信端末2に対する送信スループットが低下し、基地局1の送信性能が低下する。
【0115】
これに対して、アレイ送信制御を考慮せずに、下り方向の伝送路特性だけを考慮して通信端末2に使用下り無線リソースを割り当てる場合には、上述のSRS非対応下り割り当て処理のように、SRS用上り無線リソース500aにおいて受信されるSRSの送信周波数帯域に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソースを通信端末2に割り当てる際には、当該使用下り無線リソースが、当該SRSを送信する通信端末2以外の通信端末2に割り当てられる可能性がある。この場合には、通信部13は、使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う際に、対象通信端末2からのSRSではなく、対象通信端末2とは別の通信端末2からのSRSに基づいてアレイ送信制御を行うことになり、アレイ送信制御を適切に行えない。図16はその様子を説明するための図である。
【0116】
図16は、対象対応付け単位期間550における、2つの基地局1a,1bでの使用下り無線リソースの割り当て例が示されている。図16の例では、対象対応付け単位期間550において、基地局1aは、SRS非対応下り割り当て処理を行って、端末番号1の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域(SRS送信帯域450a)に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソース620aを端末番号2の通信端末2に割り当てている。また、基地局1bは、SRS非対応下り割り当て処理を行って、端末番号5の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域(SRS送信帯域450e)に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソース620bを端末番号6の通信端末2に割り当てている。また、図16の例では、基地局1aと通信する端末番号1の通信端末2と、周辺基地局1bと通信する端末番号5の通信端末2は、ともに第1SRS用上り無線リソース500aを用いてSRSを送信している。また、図16の例では、端末番号1の通信端末2についてのSRS送信帯域450aと、端末番号5の通信端末2についてのSRS送信帯域450eとが一致している。
【0117】
図16の例では、端末番号1の通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソースと、端末番号5の通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソースとが一致していることから、基地局1aが、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて端末番号1の通信端末2から受信するSRSには、基地局1aの周辺に位置する基地局1bが通信する端末番号5の通信端末2が送信するSRSが干渉波成分として含まれるようになる。このような場合に、基地局1aが、第1SRS用上り無線リソース500aにおいて端末番号1の通信端末2から受信するSRSに基づいて送信ウェイトを算出し、当該送信ウェイトを、使用下り無線リソース620aを用いて端末番号2の通信端末2に送信する送信信号に設定すると、基地局1aが使用下り無線リソース620aを用いて送信する際のアレイアンテナ110での送信指向性に関するビームは、端末番号1の通信端末2に対しては向くものの、通信対象の端末番号2の通信端末2に対しては向くとは限らない。つまり、このような場合には、アレイアンテナ110の送信指向性に関するビームを、意図的に端末番号2の通信端末2に向けることができない。よって、基地局1aは、通信対象の端末番号2の通信端末2に対して送信信号を届けることができない可能性が高くなり、基地局1aの送信性能が低下する。
【0118】
さらに、基地局1aが使用下り無線リソース620aを用いて送信する際のアレイアンテナ110での送信指向性に関するヌルは、基地局1aの周辺に位置する基地局1bと通信する端末番号5の通信端末2に対しては向くものの、端末番号2の通信端末2と同じ使用下り無線リソースが使用される端末番号6の通信端末2に対しては向くとは限らない。つまり、このような場合には、アレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルを、干渉を与えることを抑制したい端末番号6の通信端末2に意図的に向けることができない。よって、基地局1aは端末番号6の通信端末2に干渉を与える可能性が高くなる。つまり、端末番号6の通信端末2は、基地局1bからの信号を受信する際に、基地局1aが端末番号2の通信端末2に送信する信号を干渉波として受信する可能性が高くなる。
【0119】
同様にして、基地局1bでは、通信対象の端末番号6の通信端末2に対してビームが向く可能性が低くなるとともに、干渉を与えることを抑制したい端末番号2の通信端末2に対してヌルが向く可能性が低くなる。よって、基地局1bでは、通信対象の端末番号6の通信端末2に対して送信信号を届けることができない可能性が高くなるとともに、端末番号2の通信端末2に干渉を与える可能性が高くなる。
【0120】
このように、基地局1aとその周辺に位置する基地局1bとが、SRS非対応下り割り当て処理を行って、互いに同じ使用下り無線リソースを通信端末2に割り当てる場合には、基地局1a,1bのそれぞれでは、通信対象の通信端末2にビームが向く可能性が低くなり、通信対象ではない通信端末2にヌルが向く可能性が低くなる。その結果、基地局1a,1bのそれぞれでは、アレイ送信制御を適切に行うことができず、基地局1a,1bの送信性能が低下する。
【0121】
また、図17に示されるように、基地局1aでは、SRS非対応下り割り当て処理が行われて、端末番号2の通信端末2に対して使用下り無線リソース620aが割り当てられ、基地局1bでは、上述の図13の例のように、SRS対応下り割り当て処理が行われて、端末番号5の通信端末2に対して、使用下り無線リソース620aと同じ使用下り無線リソース610bが割り当てられる場合には、基地局1aは、端末番号5の通信端末2に対してヌルを向けることができるが、基地局1bは、端末番号2の通信端末2に対してヌルを向けることができない。
【0122】
以上のように、基地局1が下り方向の伝送路特性だけを考慮して通信端末2に使用下り無線リソースを割り当てる場合には、基地局1からの送信信号が通信端末2に対して届かない可能性があるとともに、基地局1が周辺基地局1と通信する通信端末2に対して干渉を与える可能性がある。よって、基地局1の送信性能が低下する。
【0123】
そこで、本実施の形態では、基地局1の送信性能を向上することが可能な下りスケジューリングを提案する。以下に基地局1での下りスケジューリングについて詳細に説明する。
【0124】
図18は基地局1での下りスケジューリングを示すフローチャートである。本実施の形態に係る下りスケジューリングは、下り無線リソース560ごとに行われる。また、本実施の形態に係る下りスケジューリングでは、各下り無線リソース560において、当該下り無線リソース560に対応するSRS用上り無線リソースで受信されるSRSの送信周波数帯域に含まれる1つのRB帯域を周波数方向に含む部分を、下り無線リソースの割り当て単位としている。この割り当て単位を「割り当て単位リソース700」と呼ぶ。そして、割り当て単位リソース700ごとに、使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2を決定する。つまり、割り当て単位リソース700ごとに、割り当て単位リソース700を使用下り無線リソースとして割り当てる通信端末2を決定する単位リソース割り当て処理を行う。
【0125】
図19は、上述の図12に示されるようにSRS用上り無線リソースにおいてSRSが送信されている場合での割り当て単位リソース700を示す図である。図19に示されるように、第1下り無線リソース560aには、SRS送信帯域450aに含まれる複数のRB帯域をそれぞれ周波数方向に含む複数の割り当て単位リソース700と、SRS送信帯域450bに含まれる複数のRB帯域をそれぞれ周波数方向に含む複数の割り当て単位リソース700とが含まれている。また、第2下り無線リソース560bには、SRS送信帯域450cに含まれる複数のRB帯域をそれぞれ周波数方向に含む複数の割り当て単位リソース700が含まれている。そして、第3下り無線リソース560cには、SRS送信帯域450dに含まれる複数のRB帯域をそれぞれ周波数方向に含む複数の割り当て単位リソース700が示されている。
【0126】
図18は、ある割り当て単位リソースについての単位リソース割り当て処理を示すフローチャートである。スケジューリング実行部122は、図18に示される一連の処理を、下り無線リソース560ごとに、当該下り無線リソース560に含まれる各割り当て単位リソース700について行う。
【0127】
以後、説明の対象となる割り当て単位リソース700を「対象割り当て単位リソース700」と呼ぶ。また、対象割り当て単位リソース700が属する下り無線リソース560に対応するSRS用上り無線リソースにおいて、対象割り当て単位リソースが含む1つのRB帯域で受信されるSRSを「使用SRS」と呼び、当該SRSを送信する通信端末2を「使用SRS送信端末2」と呼ぶ。したがって、通信部13が対象割り当て単位リソース700を用いて下り通信を行う際のアレイ送信制御で使用されるSRSが使用SRSとなり、当該SRSを送信する通信端末2が使用SRS送信端末2となる。図20は、第1下り無線リソース560aに含まれる対象割り当て単位リソース700と、それに対応する使用SRS750とを示す図である。図20の例では、使用SRS750を送信する使用SRS送信端末2は、端末番号1の通信端末2となっている。
【0128】
本実施の形態では、対象割り当て単位リソース700を使用下り無線リソースとして割り当てる通信端末2を決定する際には、対象割り当て単位リソース700が含まれる下り無線リソース560に対応するSRS用上り無線リソースでSRSを送信する通信端末2を、対象割り当て単位リソース700を割り当てることか可能な通信端末2とする。例えば、図19の例において、第1下り無線リソース560aに含まれる対象割り当て単位リソース700を割り当てることが可能な通信端末2は、第1下り無線リソース560aに対応する第1SRS用上り無線リソース500aでSRSを送信している端末番号1の通信端末2と端末番号2の通信端末2となる。また、第2下り無線リソース560bに含まれる対象割り当て単位リソース700を割り当てることが可能な通信端末2は、第2SRS用上り無線リソース500bでSRSを送信している端末番号3の通信端末2だけとなる。また、第3下り無線リソース560cに含まれる対象割り当て単位リソース700を割り当てることが可能な通信端末2は、第3SRS用上り無線リソース500cでSRSを送信している端末番号4の通信端末2だけとなる。以後、対象割り当て単位リソース700を使用下り無線リソースとして割り当てることが可能な通信端末2を「割り当て可能端末2」と呼ぶ。以下に図18を参照して、対象割り当て単位リソース700についての単位リソース割り当て処理について説明する。
【0129】
図18に示されるように、ステップs1において、スケジューリング実行部122は、割り当て可能端末2の1つを処理対象端末2とする。
【0130】
次に、ステップs2において、スケジューリング実行部122は、通信部13が使用SRSに基づいてアレイ送信制御を行って処理対象端末2と対象割り当て単位リソース700を用いて下り通信を行う際の処理対象端末2に対する送信利得の予測値を示す指標値Z(以後、「送信利得指標値Z」と呼ぶ)を求める。送信利得指標値Zは以下の式(1)で求められる。
【0131】
【数1】

【0132】
ここで、Wは、使用SRSに基づいて通信部13で求められる送信ウェイトベクトルを示している。送信ウェイトベクトルWは、複数のアンテナ110aからそれぞれ送信される複数の送信信号にそれぞれ設定される複数の送信ウェイトで構成されている。またhは、処理対象端末2からの信号(所望波成分)についてのアレイ応答ベクトルを示している。送信利得指標値Zはスカラー値であって、アレイ応答値とも呼ばれる。アレイ応答ベクトルhは通信部13で求められる。以下に、アレイ応答ベクトルhの求め方について説明する。
【0133】
複数のアンテナ110aで受信される、処理対象端末2が送信するSRSを所望波成分として含む1サブキャリアあたりの受信信号から成る受信信号ベクトルXは以下の式(2)で表される。
【0134】
【数2】

【0135】
ここで、Sは、複数のアンテナ110aで受信される、処理対象端末2が送信する1サブキャリアあたりのSRS(SRSシンボル)から成る所望波成分の信号ベクトルであって、Ul(1≦l≦L)は、複数のアンテナ110aで受信される、周辺基地局1が通信する通信端末2が送信する1サブキャリアあたりのSRS(SRSシンボル)から成る干渉波成分の信号ベクトルを示している。また、Nは内部雑音成分の信号ベクトルを示している。また、hlは干渉波成分についてアレイ応答ベクトルを示している。
【0136】
通信部13の受信ウェイト処理部124は、無線処理部11の出力信号から得られる、1サブキャリアあたりの受信信号ベクトルXと、所望波成分の信号ベクトルSとの間の相関値を求める。受信ウェイト処理部124は、この相関値を、例えば1つのRB帯域に含まれる、SRSの送信に使用される6個のサブキャリアのそれぞれについて求める。そして、受信ウェイト処理部124は、得られた6個の相関値の平均値を算出する。この平均値を「相関平均値」と呼ぶ。
【0137】
ここで、1つのRB帯域に含まれる12個のサブキャリアの周波数は互いに隣接していることから、当該12個のサブキャリアのうち、一つの通信端末2がSRSの送信に使用する6個のサブキャリアについての受信信号ベクトルXでの応答ベクトルh,hlは、互いに同じであると考えることができる。また、基地局1と通信する通信端末2が送信するSRSと、その周辺基地局1と通信する通信端末2が送信するSRSとの間の相関値は平均することで小さくなる。また、内部雑音成分の信号ベクトルNと所望波成分の信号ベクトルSとの間の相関も低くなる。そして、所望波成分の信号ベクトルSと所望波成分の信号ベクトルSとの間の相関値ではベクトル要素がすべて“1”となるようになっている。よって、相関平均値はアレイ応答ベクトルhと概ね等しくなる。このようにして、受信ウェイト処理部124では、1つのRB帯域についてのアレイ応答ベクトルhが求められる。
【0138】
なお、上記の例では、1つのRB帯域ごとにアレイ応答ベクトルh(相関平均値)を求めているが、2つ以上のRB帯域ごとにアレイ応答ベクトルh(相関平均値)を求めても良い。
【0139】
受信ウェイト処理部124は、SRSを送信している各通信端末2について、当該通信端末2がSRSを送信している全周波数帯域、つまり、当該通信端末2についてのSRS送信帯域450が一周期、周波数ホッピングする間に占める周波数帯域に含まれるすべてのRB帯域についてのアレイ応答ベクトルhを求める。
【0140】
また、受信ウェイト処理部124は、通信端末2がSRS送信周期360でSRSを送信するたびに、当該通信端末2についてのアレイ応答ベクトルhを求める。受信ウェイト処理部124は、通信端末2がSRSの送信に使用するSRS使用上り無線リソースにおいて通信部13が受信する、当該SRSを所望波成分として含む受信信号に基づいて、当該受信信号の周波数帯域(当該SRSについてのSRS送信帯域450)に含まれる各RB帯域についてアレイ応答ベクトルhを求める。そして、受信ウェイト処理部124は、新たに求めたアレイ応答ベクトルhに関して、同じRB帯域のアレイ応答ベクトルhがすでに存在する場合には、その古いアレイ応答ベクトルhの代わりに新たに求めたアレイ応答ベクトルhを記憶する。このようにして、通信部13には、常に新しいアレイ応答ベクトルhが記憶される。
【0141】
スケジューリング実行部122は、受信ウェイト処理部124から、対象割り当て単位リソース700に含まれるRB帯域での処理対象端末2のアレイ応答ベクトルhを取得し、上述の式(1)を用いて処理対象端末2についての送信利得指標値Zを求める。
【0142】
次にステップs3において、スケジューリング実行部122は、通信部13が対象割り当て単位リソースを用いて処理対象端末2と下り通信する際の通信部13の送信スループットの予測値を示す指標値T(以後、「瞬時送信スループット指標値T」と呼ぶ)を求める。本実施の形態では、処理対象端末2が、対象割り当て単位リソース700を含む下り無線リソース560に対応するSRS用上り無線リソースで送信するSRSの送信周波数帯域(以後、「処理対象端末2についてのSRS送信帯域450」と呼ぶ)に含まれる各RB帯域における、処理対象端末2での過去のSINRの平均値を求める。そして、スケジューリング実行部122は、求めたSINRの平均値を、基地局1と処理対象端末2との間の過去の下り通信の結果(処理対象端末2からのACK/NACK情報)から求められた、処理対象端末2についての受信エラー率に基づいて調整する。具体的には、スケジューリング実行部122は、処理対象端末2についての受信エラー率が大きい場合には、SINRの平均値を所定値だけ小さくし、処理対象端末2についての受信エラー率が小さい場合には、SINRの平均値を所定値だけ大きくする。スケジューリング実行部122は、このようにして調整したSINRの平均値を瞬時送信スループット指標値Tとして採用する。なお、処理対象端末2についての受信エラー率が適切である場合には、SINRの平均値がそのまま瞬時送信スループット指標値Tとなる。
【0143】
ここで、後述の説明から理解できるように、対象割り当て単位リソース700は使用SRS送信端末2に割り当てられる可能性が高い。したがって、下り無線リソース560から、当該下り無線リソース560に対応するSRS用上り無線リソースでSRSを送信する対象通信端末2に対して割り当てられる使用下り無線リソースは、当該下り無線リソース560における、対象通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域を周波数方向に含む部分(以後、「SRS対応部分」と呼ぶ)とほぼ一致する可能性が高くなる。上述の図12に示される例では、第1下り無線リソース560aから端末番号1の通信端末2に対して割り当てられる使用下り無線リソース(600a,600d)は、第1下り無線リソース560aにおけるSRS対応部分とほぼ一致している。
【0144】
上述のように、MCS決定部126は、下り無線リソース560に含まれる使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2に送信される送信信号に適用するMCSを決定する際には、対象通信端末2における、当該使用下り無線リソースの周波数帯域に含まれる各RB帯域での過去のSINRの平均値(以後、「使用下り無線リソースの周波数帯域での平均SINR」と呼ぶ)を求めて、当該平均値に基づいてMCSを決定する。下り無線リソース560から、当該下り無線リソース560に対応するSRS用上り無線リソースでSRSを送信する対象通信端末2に対して割り当てられる使用下り無線リソースは、当該下り無線リソース560におけるSRS対応部分とほぼ一致する可能性が高くなることから、対象通信端末2における、当該SRS対応部分に含まれる各RB帯域(対象通信端末2についてのSRS送信帯域450に含まれる各RB帯域)での過去のSINRの平均値(以後、「SRS送信帯域での平均SINR」と呼ぶ)は、当該使用下り無線リソースの周波数帯域での平均SINRとほぼ一致する可能性が高いと言える。使用下り無線リソースで送信される送信信号に適用されるMCSは、その使用下り無線リソースの周波数帯域での平均SINRに基づいて決定され、当該MCSによって、当該使用下り無線リソースを用いて通信部13が下り通信する際の送信スループットが決定することから、当該使用下り無線リソースの周波数帯域での平均SINRは、当該使用下り無線リソースを用いて通信部13が下り通信する際の送信スループットを示していると言える。よって、使用下り無線リソースの周波数帯域での平均SINRとほぼ一致する可能性が高いSRS送信帯域での平均SINRは、当該使用下り無線リソースを用いて通信部13が下り通信する際の送信スループットの予測値を示していると考えることができる。
【0145】
また、上述のように、通信端末2でのSINRから当該通信端末2への送信信号に適用されるMCSが決定される際に使用される対応付けテーブルは、当該通信端末2についての受信エラー率に基づいて更新される。したがって、複数の通信端末2の間において、使用下り無線リソースの周波数帯域での平均SINRが同じであっても、当該通信端末2への送信信号に適用されるMCSが一致するとは限らない。つまり、複数の通信端末2の間において、使用下り無線リソースの周波数帯域での平均SINRが同じであっても、基地局1が当該通信端末2と使用下り無線リソースを用いて下り通信する際の送信スループットが一致することは限らない。
【0146】
以上より、本実施の形態では、処理対象端末2についてのSRS送信帯域450に含まれる各RB帯域における、処理対象端末2での過去のSINRの平均値(処理対象端末2についてのSRS送信帯域450での平均SINR)を処理対象端末2についての受信エラー率に基づいて調整したものを、通信部13が対象割り当て単位リソースを用いて処理対象端末2と下り通信する際の通信部13の送信スループットの予測値を示す指標値である瞬時送信スループット指標値Tとして採用している。
【0147】
次にステップs4において、スケジューリング実行部122は、処理対象端末2について求めた送信利得指標値Z及び瞬時送信スループット指標値に基づいて、対象割り当て単位リソースを処理対象端末2に対して割り当てる割り当て優先度を示す割り当て評価値Yを求める。本実施の形態では、以下の式(3)を用いて割り当て評価値Yを求める。
【0148】
【数3】

【0149】
ここで、通信部13が使用SRSに基づいてアレイ送信制御を行って処理対象端末2と対象割り当て単位リソースを用いて下り通信を行う際の処理対象端末2に対する送信利得が大きい場合に、そのときの通信部13の送信スループットが小さい場合(MCSのランクが低い場合)には、処理対象端末2において受信エラーが発生する可能性が低くなる。一方で、通信部13が使用SRSに基づいてアレイ送信制御を行って処理対象端末2と対象割り当て単位リソースを用いて下り通信を行う際の処理対象端末2に対する送信利得が大きい場合であっても、そのときの通信部13の送信スループットが大きい場合(MCSのランクが高い場合)には、処理対象端末2では基地局1からの受信信号についての受信エラーが発生する可能性が高くなる。
【0150】
上述の式(3)においては、瞬時送信スループット指標値Tから送信利得指標値Zを差し引いて得られる値を割り当て評価値Yとしているため、割り当て評価値Yが小さいほど、処理対象端末2において受信エラーが発生する可能性が低くなり、通信部13が使用SRSに基づいてアレイ送信制御を行って処理対象端末2と対象割り当て単位リソースを用いて下り通信する際の通信部13の下り通信性能が良いと言える。したがって、割り当て評価値Yが小さいほど、対象割り当て単位リソースを処理対象端末2に対して割り当てる割り当て優先度が高くなる。
【0151】
スケジューリング実行部122は、ステップs4において、処理対象端末2についての割り当て評価値Yを求めると、ステップs5において、対象割り当て単位リソースを割り当てることが可能な割り当て可能端末2のすべてを処理対象端末2としたか否かを判断する。ステップs5において、すべての割り当て可能端末2が処理対象端末2とされていないと判断されると、スケジューリング実行部122は、再度ステップs1を実行して、未だ処理対象端末2とされていない割り当て可能端末2の1つを処理対象端末2とする。その後、スケジューリング実行部122は、この新たな処理対象端末2について上述のステップs1〜s4を実行して割り当て評価値Yを求める。
【0152】
一方で、ステップs5において、すべての割り当て可能端末2が処理対象端末2とされたと判断されると、ステップs6において、スケジューリング実行部122は、対象割り当て単位リソースについての割り当て評価値Yが最小の割り当て可能端末2を特定する。つまり、対象割り当て単位リソースについての割り当て優先度が最も高い割り当て可能端末2を特定する。これにより、通信部13が使用SRSに基づいてアレイ送信制御を行って対象割り当て単位リソースを用いて下り通信を行う際に通信部13の下り通信性能が最良となる通信端末2が特定される。その後、ステップs7において、スケジューリング実行部122は、ステップs6で特定した割り当て可能端末2に対して対象割り当て単位リソースを使用下り無線リソースとして割り当てる。
【0153】
スケジューリング実行部122が、以上のような単位リソース割り当て処理を、対象対応付け単位期間550に含まれる第1下り無線リソース560a、第2下り無線リソース560b及び第3下り無線リソース560cのそれぞれについて、当該下り無線リソース560に含まれる各割り当て単位リソース700について行うと、例えば、上述の図12の例のようにして、対象対応付け単位期間550でSRSを送信する各通端末2に対して使用下り無線リソースが割り当てられる。
【0154】
なお、上記の例では、送信利得指標値Zと瞬時送信スループット指標値Tとに基づいて割り当て優先度を示す割り当て評価値Yを求めたが、瞬時送信スループット指標値Tを使用せずに、送信利得指標値Zをそのまま割り当て評価値Yとして採用しても良い。この場合には、割り当て評価値Yの値が大きいほど、割り当て優先度が高くなる。そして、割り当て評価値Yが最大の割り当て可能端末2に対して対象割り当て単位リソースが使用下り無線リソースとして割り当てられる。
【0155】
以上のように、本実施の形態に係る基地局1では、SRS用上り無線リソースで受信されるSRSの送信周波数帯域に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソース(割り当て単位リソース)を、当該SRS用上り無線リソースに対応する下り無線リソース560から通信端末2に割り当てる場合には、当該SRS用上り無線リソースにおいて当該使用下り無線リソースの周波数帯域で受信されるSRS(使用SRS)に基づいてアレイ送信制御を行って通信端末2と当該使用下り無線リソースを用いて下り通信する際の当該通信端末2に対する送信利得の予測値(送信利得指標値Z)に基づいて、当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2を決定している。したがって、当該SRS用上り無線リソースにおいて当該使用下り無線リソースの周波数帯域で受信されるSRSに基づいてアレイ送信制御を行って当該使用下り無線リソースを用いて下り通信する際に送信利得が大きくなるであろう通信端末2に対して、当該使用下り無線リソースを割り当てることができる。よって、基地局1は、当該使用下り無線リソースを使用して通信端末2と下り通信する際に、伝送路利得を得ることができ、送信信号を当該通信端末2に対して確実に届けることができる。その結果、基地局1の送信性能が向上する。
【0156】
また、本実施の形態に係る単位リソース割り当て処理において、処理対象端末2が使用SRS送信端末2である場合を考えると、通信部13が使用SRSに基づいてアレイ送信制御を行って使用SRS送信端末2と対象割り当て単位リソースを用いて下り通信を行う際には、アレイアンテナ110の送信指向性に関するビームは使用SRS送信端末2に向くようになることから、使用SRS送信端末2についての送信利得指標値Zは大きくなる傾向にある。したがって、使用SRS送信端末2についての割り当て評価値Yは小さくなる傾向にあり、使用SRS送信端末2に対して対象割り当て単位リソースが使用下り無線リソースとして割り当てられ易くなる。その結果、上述の図12に示されるように、SRS用上り無線リソースでSRSを送信する対象通信端末2に対して、当該SRS用上り無線リソースに対応する下り無線リソースから割り当てられる使用下り無線リソースは、当該下り無線リソースにおけるSRS対応部分とほぼ一致する可能性が高くなる。よって、基地局1は当該使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信する際には、当該使用下り無線リソースの周波数帯域の大部分において、対象通信端末2対してアレイアンテナ110の送信指向性に関するビームを向けることができるとともに、周辺基地局1がSRS対応下り割り当て処理を行って使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2に対してアレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルを向けることができる。その結果、基地局1の送信性能が向上する。
【0157】
このように、本実施の形態に係る基地局1では、通信端末2と下り通信を行う際には、伝送路利得を得ることができるととともに、周辺基地局1と通信する通信端末2に対してヌルを向けることができる。
【0158】
なお、対象割り当て単位リソースの周波数帯域での使用SRS送信端末2と通信部13との間の下り方向の伝送路特性が悪い場合には、通信部13が使用SRSに基づいてアレイ送信制御を行って使用SRS送信端末2と対象割り当て単位リソースを用いて下り通信を行う際にビームが使用SRS送信端末2に向くものの、使用SRS送信端末2についての送信利得指標値Zは小さくなる。よって、この場合には、対象割り当て単位リソース700は、使用SRS送信端末2以外の通信端末2に対して使用下り無線リソースとして割り当てられる可能性がある。したがって、この場合には、対象割り当て単位リソース700についてはSRS非対応下り割り当て処理が行われることになり、上述の図16を参照して説明したように、通信部13が使用SRSに基づいてアレイ送信制御を行って通信端末2と対象割り当て単位リソースを用いて下り通信を行う際には、アレイアンテナ110の送信指向性に関するビームを当該通信端末2に意図的に向けることはできなくなる。さらには、図17を参照して説明したように、周辺基地局1がSRS対応下り割り当て処理を行って使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2に対しては、アレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルを向けることはできるが、図16を参照して説明したように、周辺基地局1がSRS非対応下り割り当て処理を行って使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2に対してはヌルを意図的に向けることはできない。
【0159】
しかしながら、本実施の形態では、対象割り当て単位リソース700についてSRS非対応下り割り当て処理が行われる場合であっても、送信利得指標値Zが大きい通信端末2に対して対象割り当て単位リソース700が割り当てられるため、通信部13が当該通信端末2と対象割り当て単位リソースを用いて下り通信を行う際に、アレイアンテナ110の送信指向性に関するビームが当該通信端末2に意図的に向かない場合であっても、当該通信端末2に対して基地局1からの送信信号を確実に届けることができる。
【0160】
さらに、通信部13が当該通信端末2と対象割り当て単位リソースを用いて下り通信を行う際に、アレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルが、周辺基地局1がSRS非対応下り割り当て処理を行って使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2に対して意図的に向かないとしても、当該通信端末2に対して干渉を与えることを抑制できる。以下にこの点について図21を参照して説明する。
【0161】
図21には、基地局1aと、その周辺に位置する周辺基地局1bでの送信指向性に関するビームが示されている。図21には、基地局1aが、ある割り当て単位リソースが使用下り無線リソースとしてSRS非対応下り割り当て処理で割り当てられた、当該割り当て単位リソースでの送信利得指標値Zが大きい端末番号1の通信端末2と下り通信を行う際のアレイアンテナ110の送信指向性に関するビーム800aが示されている。また図21には、周辺基地局1bが、上記のある割り当て単位リソースと同じ割り当て単位リソースが使用下り無線リソースとしてSRS非対応下り割り当て処理で割り当てられた端末番号5の通信端末2と当該割り当て単位リソースを用いて下り通信を行う際のアレイアンテナ110の送信指向性に関するビーム800bが示されている。
【0162】
図21の例では、端末番号1の通信端末2についての送信利得指標値Zは大きいことから、使用下り無線リソースの周波数帯域での基地局1aと端末番号1の通信端末2との間の伝送路特性は良好となっている。したがって、端末番号1の通信端末2は、周辺基地局1bと通信する各通信端末2からの干渉を受けにくい位置、つまり、周辺基地局1bと通信する各通信端末2とは離れた位置に存在している可能性が高い。したがって、端末番号1の通信端末2は、周辺基地局1bが下り通信を行う端末番号5の通信端末2と離れた位置に存在する可能性が高い。よって、基地局1aが端末番号1の通信端末2に信号を送信する際に、周辺基地局1bが通信する端末番号5の通信端末2に対して基地局1aの送信指向性に関するヌルが向かないとしても、図21に示されるように、基地局1aの送信指向性に関するビーム800aが端末番号5の通信端末2に届かない可能性が高くなる。よって、基地局1aは、端末番号1の通信端末2との下り通信を行う際に、周辺基地局1bが通信する端末番号5の通信端末2に対してヌルを意図的に向けることができない場合であっても、当該端末番号5の通信端末2に対する干渉の影響が少ないと考えられる。
【0163】
また、本実施の形態では、割り当て単位リソース700ごとに、使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2を決定しているため、つまり、下り無線リソース560に含まれる複数の割り当て単位リソース700のそれぞれについて、当該割り当て単位リソースを割り当てる通信端末2を送信利得指標値Zに基づいて決定しているため、図15の例とは異なり、1つの通信端末2に対して、それぞれにおいて伝送路特性が良好な複数の割り当て単位リソース700を含む使用下り無線リソースを下り無線リソース560から割り当てることが可能となる。よって、通信端末2に割り当てられる使用下り無線リソースの周波数帯域全域において伝送路特性が良好となり、当該使用下り無線リソースを用いて送信される送信信号に適用されるMCSのランクを上げることが可能となる。その結果、基地局1の送信スループットが向上し、基地局1の送信性能が向上する。
【0164】
また、本実施の形態では、使用下り無線リソースを通信端末2に割り当てる際には、送信利得指標値Zだけではなく、瞬時送信スループット指標値Tにも基づいて当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2を決定しているため、基地局1が当該使用下り無線リソースを使用して通信端末2と下り通信する際に、当該通信端末2において受信エラーが発生する可能性を低くすることができる。
【0165】
<各種変形例>
<第1変形例>
上記の例では、対象割り当て単位リソースを処理対象端末2に対して割り当てる割り当て優先度を示す割り当て評価値Yを、送信利得指標値Zと瞬時送信スループット指標値Tとに基づいて決定したが、プロポーショナルフェアネスに基づいて使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2を決定するための評価値DM(以後、「PF値DM」と呼ぶ)にも基づいて決定しても良い。図22は、本変形例に係る単位リソース割り当て処理を示すフローチャートである。
【0166】
図22に示されるように、上述のステップs1〜s3を行って、処理対象端末2についての送信利得指標値Z及び瞬時送信スループット指標値Tを求める。
【0167】
次にステップs11において、スケジューリング実行部122は、対象割り当て単位リソースでの処理対象端末2についてのPF値DMを求める。
【0168】
第n番目の対応付け単位期間550に含まれる対象割り当て単位リソースでの処理対象端末2についてのPF値DM(n)は以下の式(4)で表すことができる。
【0169】
【数4】

【0170】
ここで、Z(n)は、第n番目の対応付け単位期間550に含まれる対象割り当て単位リソースでの処理対象端末2についての送信利得指標値Zである。
【0171】
また、TD(n)は、第n番目の対応付け単位期間550までの対象割り当て単位リソースでの処理対象端末2に対する基地局1の平均的な送信能力を示しており、以下の式(5)で表される。
【0172】
【数5】

【0173】
ここで、Tcは忘却係数と呼ばれる定数である。また、第(n−1)番目の対応付け単位期間550において対象割り当て単位リソースが基地局1と処理対象端末2との間の下り通信で使用されない場合にはZ(n−1)は零となる。
【0174】
式(4),(5)から理解できるように、処理対象端末2についてのPF値DMは、その時点での送信能力が高いほど高くなり、それまでの平均的な送信能力が低いほど、つまりそれまでの下り通信データ量が少ないほど高くなる。このPF値DMを、割り当て評価値Yに組み込むことで、複数の通信端末2の間での下り通信データ量の公平性を維持しつつ、基地局1の送信スループットを向上させることができる。
【0175】
次にステップs12において、スケジューリング実行部122は、処理対象端末2について求めた送信利得指標値Z、瞬時送信スループット指標値T及びPF値DMに基づいて、対象割り当て単位リソースを処理対象端末2に対して割り当てる割り当て優先度を示す割り当て評価値Yを求める。本変形例では、以下の式(6)を用いて割り当て評価値Yを求める。
【0176】
【数6】

【0177】
ここで、βは、PF値DMの単位を、送信利得指標値Z及び瞬時送信スループット指標値Tの単位に一致させるための調整定数である。
【0178】
式(6)に示されるように、本変形例に係る割り当て評価値Yは、PF値DM(正確には調整定数βが掛け合わされたPF値DM)から、上述の式(3)で示される割り当て評価値Yを差し引いたものである。
【0179】
本変形例に係る割り当て評価値Yは、PF値DMが大きいほど大きくなり、瞬時送信スループット指標値Tが小さいほど大きくなり、送信利得指標値Zが大きいほど大きくなる。よって、割り当て評価値Yが大きいほど、対象割り当て単位リソースを処理対象端末2に対して割り当てる割り当て優先度が高くなる。
【0180】
スケジューリング実行部122は、ステップs12において、処理対象端末2についての割り当て評価値Yを求めると、ステップs13において、対象割り当て単位リソースを割り当てることが可能な割り当て可能端末2のすべてを処理対象端末2としたか否かを判断する。ステップs13において、すべての割り当て可能端末2が処理対象端末2とされていないと判断されると、スケジューリング実行部122は、再度ステップs1を実行して、未だ処理対象端末2とされていない割り当て可能端末2の1つを処理対象端末2とする。その後、スケジューリング実行部122は、この新たな処理対象端末2について上述のステップs1〜s3,s11,s12を実行して割り当て評価値Yを求める。
【0181】
一方で、ステップs13において、すべての割り当て可能端末2が処理対象端末2とされたと判断されると、ステップs14において、スケジューリング実行部122は、対象割り当て単位リソースについての割り当て評価値Yが最大の割り当て可能端末2を特定する。つまり、対象割り当て単位リソースについての割り当て優先度が最も高い割り当て可能端末2を特定する。その後、ステップs15において、スケジューリング実行部122は、ステップs14で特定した割り当て可能端末2に対して対象割り当て単位リソースを使用下り無線リソースとして割り当てる。
【0182】
このように、本変形例では、PF値DMにも基づいて使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2を決定するため、基地局1と通信する複数の通信端末2の間での下り無線リソースの割り当ての公平性を維持しつつ、基地局1の送信性能を向上することができる。
【0183】
<第2変形例>
上記の第1変形例とは異なる方法で、PF値DMに基づいて、対象割り当て単位リソースを割り当てる通信端末2を決定しても良い。
【0184】
例えば、上記の図18に示されるフローチャートのステップs6において、式(3)に示される割り当て評価値Yが最小の割り当て可能端末2が特定されると、当該割り当て可能端末2についてのPF値DMを求める。そして、このPF値DMがしきい値よりも大きい場合には、割り当て評価値Yが最小の割り当て可能端末2に対して対象割り当て単位リソースを使用下り無線リソースとして割り当てる。一方で、割り当て評価値Yが最小の割り当て可能端末2についてのPF値DMがしきい値以下の場合には、その次に割り当て評価値Yが小さい割り当て可能端末2についてのPF値DMを求めて、当該PF値DMがしきい値よりも大きい場合には、当該割り当て可能端末2に対して対象割り当て単位リソースを割り当てる。次に割り当て評価値Yが小さい割り当て可能端末2についてのPF値DMがしきい値以下の場合に、その次に割り当て評価値Yが小さい割り当て可能端末2についてのPF値DMを求めて、以下同様の処理を繰り返す。なお、PF値DMがしきい値よりも大きい割り当て可能端末2が存在しない場合には、割り当て評価値Yが最小の割り当て可能端末2に対して対象割り当て単位リソースを割り当てる。
【0185】
このような場合であっても、第1変形例と同様の効果を得ることができる。さらに、第1変形例と比較して、すべての割り当て可能端末2についてのPF値DMを必ず求める必要はないことから、単位リソース割り当て処理が簡素化される。
【0186】
<第3変形例>
上記の第1変形例では、割り当て評価値Yを、送信利得指標値Z、瞬時送信スループット指標値T及びPF値DMを用いて求めていたが、PF値DMをそのまま割り当て評価値Yとしても良い。この場合には、第1変形例と同様に、割り当て評価値Y(PF値DM)が大きいほど、対象割り当て単位リソースを処理対象端末2に対して割り当てる割り当て優先度が高くなる。PF値DMは、送信利得指標値Zに基づいて求められることから、この場合であっても、基地局1と通信する複数の通信端末2の間での下り無線リソースの割り当ての公平性を維持しつつ、基地局1の送信性能を向上することができる。
【0187】
<第4変形例>
上記の例では、瞬時送信スループット指標値Tとして、処理対象端末2についてのSRS送信帯域450に含まれる各RB帯域における、処理対象端末2での過去のSINRの平均値を処理対象端末2の受信エラー率に基づいて調整した値を採用したが、当該値を採用する代わりに、当該SINRの平均値に基づいて当該SRS送信帯域450で送信される送信信号に適用されるMCSのランクを求めて、このMCSのランクを瞬時送信スループット指標値Tとして採用しても良い。この場合には、処理対象端末2についての対応付けテーブルを参照して、当該SINRの平均値に対応するMCSを特定し、特定したMCSのランクを瞬時送信スループット指標値Tとする。また、上述の式(1)を用いて求められた送信利得指標値Zに応じたMCSのランクを特定し、当該MCSのランクを、割り当て評価値Yの算出に使用する送信利得指標値Zとする。
【0188】
<第5変形例>
対象割り当て単位リソースが使用SRS送信端末2に対して使用下り無線リソースとして割り当てられる場合には、通信部13は使用SRSに基づいてアレイ送信制御を行って使用SRS送信端末2と対象割り当て単位リソースを用いて下り通信を行うことになる。この場合には、上述のように、使用SRS送信端末2に対してアレイアンテナ110の送信指向性に関するビームを向けることができるとともに、周辺基地局1がSRS対応下り割り当て処理を行って使用下り無線リソースを割り当てる通信端末2に対してアレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルを向けることができる。よって、アレイ送信制御の観点からすると、対象割り当て単位リソースができるだけ使用SRS送信端末2に対して割り当てられることが望ましい。
【0189】
そこで、処理対象端末2が使用SRS送信端末2である場合には、この処理対象端末2に対象割り当て単位リソースが割り当てられる可能性が高くなるように、当該処理対象端末2についての割り当て評価値Yに対してオフセット値γを加えても良い。
【0190】
例えば、上述の式(3)に示される割り当て評価値Yを使用する場合には、当該割り当て評価値Yに対してマイナスの値のオフセット値γを加える。また、上述の第1〜第3変形例に係る割り当て評価値Yを使用する場合には、当該割り当て評価値Yに対してプラスの値のオフセット値γを加える。これにより、対象割り当て単位リソースが使用SRS送信端末2に対してさらに割り当てられ易くなり、より適切なアレイ送信制御を行うことができる。
【0191】
<第6変形例>
上述の図18に示されるステップs6では、割り当て評価値Yが最小の割り当て可能端末2、つまり受信エラーが発生する可能性が最も小さい割り当て可能端末2を特定していたが、割り当て評価値Yがθより小さい割り当て可能端末2、つまり、受信エラーが発生する可能性がある程度低い割り当て可能端末2を特定しても良い。この場合には、ステップs7において、受信エラーが発生する可能性がある程度低い割り当て可能端末2のうち、対象割り当て単位リソースを含む下り無線リソース560を用いて基地局1が下り通信する際の送信スループットの予測値が最大となる割り当て可能端末2に対して、対象割り当て単位リソースを使用下り無線リソースとして割り当てる。
【0192】
上述のように、下り無線リソース560から、当該下り無線リソース560に対応するSRS用上り無線リソースでSRSを送信する対象通信端末2に対して割り当てられる使用下り無線リソースは、当該下り無線リソース560における、対象通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域を周波数方向に含む部分とほぼ一致する可能性が高い。したがって、基地局1が、ある割り当て可能端末2と、対象割り当て単位リソースを含む下り無線リソース560を用いて下り通信する際の送信スループットの予測値は、当該割り当て可能端末2についての瞬時送信スループット指標値T(実施の形態ではSINRの平均値を受信エラー率で調整した値であって、第4変形例ではMCSのランク)と、当該割り当て可能端末2が当該下り無線リソース560に対応するSRS用上り無線リソースで送信するSRSの送信周波数帯域に含まれるRB帯域の数とに基づいて求めることができる。
【0193】
このように、受信エラーが発生する可能性がある程度低い割り当て可能端末2のうち、対象割り当て単位リソースを含む下り無線リソース560を用いて基地局1が下り通信する際の送信スループットの予測値が最大となる割り当て可能端末2に対して、対象割り当て単位リソースを使用下り無線リソースとして割り当てることによって、通信端末2において受信エラーが発生する可能性を抑えつつ、基地局1の送信スループットを大きくすることが可能となる。
【0194】
<その他の変形例>
上記の例では、第1SRS用上り無線リソース500a、第2SRS用上り無線リソース500b及び第3SRS用上り無線リソース500bの3つのSRS用上り無線リソースをSRSの送信に使用したが、それらのうちの2つのSRS用上り無線リソースだけをSRSの送信に使用しても良い。この場合には、SRSの送信に使用する一方のSRS用上り無線リソースと、第1下り無線リソース560a、第2下り無線リソース560b及び第3下り無線リソース560cのうちの1つの下り無線リソース560とが対応付けられ、SRSの送信に使用する他方のSRS用上り無線リソースと、残りの2つの下り無線リソース560から成る下り無線リソースとが対応付けられる。
【0195】
また、第1SRS用上り無線リソース500a、第2SRS用上り無線リソース500b及び第3SRS用上り無線リソース500bのうちの1つのSRS用上り無線リソースだけをSRSの送信に使用しても良い。この場合には、SRSの送信に使用する1つのSRS用上り無線リソースと、第1下り無線リソース560a、第2下り無線リソース560b及び第3下り無線リソース560cから成る下り無線リソースとが対応付けられることになる。
【0196】
また、上記の例では、アレイ送信制御に、スペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352で送信されるSRSを使用したが、そのSRSに代わりに、あるいはそのSRSと一緒に、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304で送信されるSRSを使用しても良い。この場合には、上りサブフレーム302において、最後のシンボル期間304と、SRS0の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC0とで特定される上り無線リソースをSRS用上り無線リソースとすれば、上記と同様にして、単位リソース割り当て処理を行うことができる。また、上りサブフレーム302において、最後のシンボル期間304と、SRS1の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC0とで特定される上り無線リソースをSRS用上り無線リソースとすれば、上記と同様にして、単位リソース割り当て処理を行うことができる。
【0197】
また、上記の例では、本願発明をLTEに適用する場合について説明したが、本願発明は他の通信システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0198】
1 基地局
2 通信端末
13 通信部
110a アンテナ
122 スケジューリング実行部
126 MCS決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末と通信する基地局であって、
複数のアンテナを用いて通信端末と通信を行い、通信端末と下り通信を行う際には当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、
下り通信を行う通信端末を決定するとともに、当該通信端末に対して、前記通信部が当該通信端末との下り通信で使用する使用下り無線リソースを割り当てるスケジューリング実行部と
を備え、
通信端末が既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと、当該既知信号用上り無線リソースと対応付けられた、前記通信部が通信端末と下り通信を行う際に使用することが可能な下り無線リソースとが定められており、
前記スケジューリング実行部は、既知信号用上り無線リソースの少なくとも一部で受信される既知信号の送信周波数帯域に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む使用下り無線リソースを通信端末に割り当てる際には、当該使用下り無線リソースを、当該既知信号用上り無線リソースに対応付けられた下り無線リソースから通信端末に割り当てる割り当て処理を行い、
前記通信部は、前記スケジューリング実行部が前記割り当て処理を行って通信端末に割り当てる使用下り無線リソースを用いて当該通信端末と下り通信を行う際には、既知信号用上り無線リソースにおいて当該使用下り無線リソースの周波数帯域で受信される既知信号に基づいて前記複数のアンテナでの送信指向性を制御し、
前記スケジューリング実行部は、前記割り当て処理において使用下り無線リソースを通信端末に割り当てる際には、前記通信部が既知信号用上り無線リソースにおいて当該使用下り無線リソースの周波数帯域で受信する既知信号に基づいて前記複数のアンテナでの送信指向性を制御して通信端末と下り通信を行う際の送信利得の予測値を算出し、当該予測値に基づいて当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末を決定する、基地局。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局であって、
前記スケジューリング実行部は、前記割り当て処理において使用下り無線リソースを通信端末に割り当てる際には、前記通信部が当該使用下り無線リソースを用いて通信端末と通信する際の送信スループットの予測値を算出し、当該送信スループットの予測値と、前記送信利得の予測値とに基づいて、当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末を決定する、基地局。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載の基地局であって、
前記スケジューリング実行部は、前記割り当て処理において使用下り無線リソースを通信端末に割り当てる際には、プロポーショナルフェアネスに基づいて当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末を決定するための評価値を前記送信利得の予測値を使用して算出し、当該評価値に基づいて当該使用下り無線リソースを割り当てる通信端末を決定する、基地局。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の基地局であって、
前記スケジューリング実行部は、前記割り当て処理において、下り無線リソースの割り当て単位ごとに、使用下り無線リソースを割り当てる通信端末を決定する、基地局。
【請求項5】
請求項4に記載の基地局であって、
前記通信部が通信端末に送信する送信信号に適用されるMCS(Modulation and Coding Scheme)を決定するMCS決定部をさらに備え、
前記MCS決定部は、前記スケジューリング実行部が前記割り当て処理において通信端末に対して割り当てる、複数の割り当て単位を含む使用下り無線リソースで送信される送信信号に適用される1つのMCSを、当該使用下り無線リソースの周波数帯域全体での当該通信端末と前記通信部との間の下り方向の伝送路特性に基づいて決定する、基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−248978(P2012−248978A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117635(P2011−117635)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】