基本セルのスタックを含む高温型電解セルまたは高温型燃料電池を製作するための方法
高温型電解セル「HTE」または高温型燃料電池「SOFC」を製作するための方法であって、n+1個のインターコネクションプレートと交互になっているn個の板状の基本セルの垂直スタックを含み、それらの基本セルのそれぞれが、板状の高密度の電解質のそれぞれの面の上にそれぞれ位置するオープンワークの板状の多孔質アノードおよびオープンワークの板状の多孔質カソードからなっており、蝋付けジョイントが、基本セルとインターコネクションプレートとの接触点のところで、電極の中に、定められた量の蝋付け材料を浸透させることによって、作成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本セルのスタックを含む高温型電解セル(high temperature electrolyzer)(HTE)または高温型燃料電池(high temperature fuel cell)(固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell))(SOFC)を製造するための方法に関する。
本発明の技術分野は、一般的には、高温型電解セルの技術分野および高温型燃料電池の技術分野と定義され、さらに詳しくは、基本セルのスタックを含む高温型電解セルおよび高温型燃料電池の技術分野と定義される。
【背景技術】
【0002】
高温型電解セルにおいては、高温における水の電解は、蒸発させた水からなされる。高温型電解セルが果たす機能は、そのスチームを次式に従って水素と酸素とに変換させることである。
2H2O(g)−>2H2+O2
【0003】
この反応は、電解セルにおける電気化学的経路で実施される。
【0004】
図1に示すように、それぞれの基本セルは、一般的には膜(3)の形態にある固体電解質を挟み込んだ二つの電極すなわちアノード(1)およびカソード(2)で構成されている。
【0005】
それら二つの電極(1、2)は、電子導体であり、そして電解質(3)はイオン導体である。
それぞれの電子導体とイオン導体との間の界面で電気化学的反応が起きる。
【0006】
カソード(2)における半反応は次式の通りである。
2H2O+4e− → 2H2+2O2−
そしてアノード(1)における半反応は次式の通りである。
2O2− → O2+4e−
【0007】
それら二つの電極の間に位置する電解質(3)は、アノード(1)とカソード(2)との間に加えられた電位差によって発生する電場の影響下にある、O2−イオン(4)の移行サイトである。
【0008】
図2に示した基本反応器(elementary reactor)は、アノード(1)、電解質(3)、およびカソード(2)を有する上述のような基本セル(5)、ならびに、電気的、液圧的、および熱的機能を確保している二つの単極のコネクタ、より正確には二つのハーフインターコネクタ(6、7)から構成される。この基本反応器は、モジュールと呼ばれる。
【0009】
図3に見られるように、発生した水素および酸素の流速を高める目的でいくつかの基本モジュールは重ね合わされ(8)、セル(5)はインターコネクタや二極性インターコネクションプレート(9)によって分離される。
【0010】
モジュール(8)を組み合わせたものが上側(10)および下側(11)の二枚のインターコネクションプレートの間に位置される。これら上側及び下側のインターコネクションプレート(10,11)電力とガス(12)を供給する。これをスタックと呼ぶ(図3)。
【0011】
スタックに関しては、次のような二つのコンセプト(配置あるいは構成)が存在している。
− 筒状のスタック。この場合、それらのセルは筒状である。
− 板状のスタック。この場合、それらのセルは、図3のようなプレートである。
【0012】
板状の構成において、セルとインターコネクタは複数点で接触している。接触圧力が高くなりすぎたり応力の分布が不均一になるとセルが破損する虞があるので、これを避けるように、スタックの製作に際しては、セルの平坦性に関して微細な公差しか許されていない。
【0013】
スタックにおけるシーリングジョイント(ガスケット)は、カソードから隣接するアノードへの水素リークを防止し、アノードから隣接するカソードへの酸素リークを防止し、スタックの外部への水素リークを防止し、更にカソードからアノードへのスチームのリークを抑制するという目的を有している。
【0014】
高温型電解(HTE)のためのスタックの開発において、図4に示すように、それぞれアノード/電解質/カソードのセラミックの3層からなる板状の電解セル(5)と、インターコネクタまたは金属インターコネクションプレート(9)との間に、気密性(gas−tight)ジョイント(ガスケット)(13)が設けられている。
【0015】
図4の中の寸法(単位:μm)は、例として挙げたに過ぎないということを理解されたい。
【0016】
より詳しくは、一方ではそれぞれのセル(5)の下側表面とそのセルの下に位置するインターコネクションプレートのインターコネクタ(14)上側半分との間にジョイント(ガスケット)が設けられる。また、他方ではそれぞれのセルの上側表面とそのセル(5)の上側に位置するインターコネクションプレートのインターコネクタ(15)の下側半分との間にジョイント(ガスケット)が設けられる。
【0017】
これらのジョイント(ガスケット)(13)は一般的には、空気中のリーク流速が、700℃〜900℃で、20〜500mbarの圧力差があるときに、10−3NmL/分/mm未満となるようにされる。
【0018】
そのジョイント(ガスケット)はこのシーリング機能に加えて、二次的なアセンブリ機能および導電機能を有してもよい。ある種のスタック構成においては、セラミック部品(セル支持体(cell support)とも呼ばれる)を、セルとインターコネクタとの間に設けてもよく、その場合には、このセル支持部分にも気密性ジョイント(ガスケット)が必要となる。
【0019】
現在のところ、以下のようないくつかのシーリング解決法が検討されている。セメントもしくはセラミック粘着剤、ガラスジョイント(ガスケット)もしくはガラスセラミックジョイント(ガスケット)、圧縮金属ジョイント(ガスケット)、圧縮マイカジョイント(ガスケット)、蝋付けジョイント(ガスケット)、およびこれらの技術を複数必要とする混合解決法。
【0020】
これらのジョイント(ガスケット)によって、カソードチャンバーと外部との間、アノードチャンバーと外部との間、そして両方のチャンバーの間で確実にシールされ、それによって両方のチャンバーの間および外部に対してガスがリークすることを防止する。
【0021】
蝋付けによるシールは一般的には、一方ではたとえばイットリア化ジルコニアにおける電解質(3)である高密度材料と、他方ではインターコネクタ(9、14、15)またはセル支持体との間で達成される。
【0022】
支持体が電解質で形成され「電解質支持セル(electrolyte supported cell)」(ESC)と呼ばれている、高温型燃料電池(SOFC)の場合においては、それらの電極が電解質よりも寸法が小さい。このために、縁部に形成された蝋付けガスケットが電極と接触状態にない。
【0023】
さらに、工業的には、アノード支持型セル(Anode−Supported Cell)(ASC)の場合には、電解質の上にインターコネクタを蝋付けすることを可能とするために、カソードの寸法自体が小さくなっている。その理由は、インターコネクタと電解質のいずれもが、高密度材料で形成されているからである。したがって、ここに電極の表面積のロスに関する欠陥が存在している。
【0024】
実際のところ、電極であるアノードおよびカソードは、一般的には30〜50体積%のオーダーの多孔度を有する多孔質材料であって、そのような多孔質材料を蝋付けすることには、多くの困難と多くの欠点がある。
【0025】
いくつかの特許出願、たとえば特許文献1、特許文献2、特許文献3には、多孔質電極を蝋付けすることの可能性が記載されているが、電極を劣化させることなくそのような方法を実施できる可能性については、結晶粒のスケールでは、まったく示されていない。
【0026】
より詳しくは、電極の厚みの方向に気密性を確保するために多孔質電極とインターコネクタとの間で蝋付けガスケットを作成しようとすると、毛細管効果のためにその蝋付け合金が気孔の中に極めて長い距離(たとえば側方に数mmにまで達する可能性がある)にまで浸透する。そのことにより、電気化学的に活性な表面積が低下し、その結果、効率(yield)が低下する。
【0027】
蝋付け温度を下げてその合金の粘度を上げることによって、この電極の中への浸透を制御することは可能である。
【0028】
スタックの場合、上記方法はスタック全体にわたって温度を完全に均一にすることを必要とする。しかしながら、工業的にはそれを制御するのが極めて困難である。
【0029】
今日のところ、多孔質電極の厚みは、供給メーカーによって±10μm以内に規定されているが、その定格呼称寸法は、時間が経てば、変化したり、修正されたりする可能性がある。
【0030】
これらのリスクが存在し上述のような問題点があるものの、そのために多孔質電極の上にインターコネクタ/セルのシールを形成するという選択がなされてきた。この方向付けにより、セルの形状的な規格(geometrical specification)を特に単純化させることができる。
【0031】
しかしながら、電解スタックの寸法の連続性(chain of dimensions)を適切に制御し、それによってインターコネクタと電極との間の電気的な接触をすべて維持しようとすると、インターコネクタ/セル界面に蝋付けガスケットによって生成する過剰厚み(overthickness)が、限定されるか、さらには全く存在しないようにする必要がある。
【0032】
過剰厚みが避けられないのであれば、それぞれのセルのための蝋付けジョイントを完全に一定の厚みに制御するか、厚み用シム(スペーサーと呼ばれることもある)を追加するか、あるいは、インターコネクタを機械加工もしくはスタンプ加工してそれらの形状的な公差について極端な精度を与えるかのいずれかを実施する必要がある。
【0033】
第一の解決法は、制御がまったく不能であり、それに対して第二および第三の解決法は、製作方法が複雑となるので、避けるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】国際特許出願公開第A1−2006/086037号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開第A2−2006/127045号パンフレット
【特許文献3】国際特許出願公開第A2−2007/062117号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
そこで上述の事柄を考え合わせて、インターコネクションプレートによって分離された板状の基本セルの垂直スタック、それらのセルとインターコネクションプレートとの組合せを達成するための気密性蝋付けガスケットを含む高温型電解セルまたは高温型燃料電池を製作するための方法が必要とされるようになった。ここで前記ガスケットは、インターコネクタと多孔質電極との間に形成し、このガスケットによりその多孔質電極の中への蝋付け組成物のすべての方向、特に側面方向への浸透を完全に制御する。これにより、スタック全体を機械的に堅固な組立物とし、電極の電気化学的に活性な表面積が低下しないようにできる。
【0036】
さらに、単純かつ信頼のおける方法で、スタックの寸法の連続性(公差スタックアップ(tolerance stack−up))、たとえばその全厚みを完全に制御することが可能となり、これによって、インターコネクションプレートと電極との間の電気的な接触がすべて維持されるようにする方法も依然として必要である。
【0037】
特に、その蝋付けガスケットが過剰厚みを有さない、別の言い方をすれば、それらのガスケットの上側もしくは下側部分が、組み立てるべきインターコネクションプレート(またはセラミック支持体)の一つでもある電極の面に留まるように、スタックを形成させる方法が必要とされる。
【0038】
さらに、単純かつ信頼性があり、工程数が少なく、複雑な工程を使用したり、制御することが困難であったり、コストが高くなったりしない方法も必要である。
【0039】
本発明の目的は、n個の板状の基本セルと、n+1個のインターコネクションプレートとを交互に組み合わせた垂直スタックを含む高温型電解セルを製作するための方法を提供することである。それらの基本セルはそれぞれ、板状の高密度の電解質の面のそれぞれの上にそれぞれ位置する板状の多孔質アノードおよび板状の多孔質カソードを含み(または、それらからなり)、それらの基本セルとインターコネクションプレートとの間の接触点にガスケットが備えられていて、先に列記した必要性を満たすものである。
【0040】
本発明の目的はさらに、従来技術の組成物の欠点、限界、欠陥および不都合を有さず、そして従来技術の方法の諸問題点を解決するような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0041】
上記目的およびさらなるその他の目的を達成するために本発明によれば、
高温型電解セル「HTE」または高温型燃料電池「SOFC」を製作するための方法であって、n+1個のインターコネクションプレートと交互になっているn個の板状の基本セルの垂直スタックを含み、前記基本セルのそれぞれが、板状の高密度の電解質のそれぞれの面の上にそれぞれ位置する板状の多孔質アノードおよび板状の多孔質カソードからなっており、蝋付けジョイントが、前記基本セルと前記インターコネクションプレートとの接触点のところに備わっており、
a)前記アノードまたは前記カソードによって被覆されていない孔に相当する前記電解質のそれぞれの面の第一の表面領域を残し、前記蝋付けジョイントのために設けられた位置で前記アノードまたは前記カソードによって被覆された前記電解質の面のそれぞれの第二の表面領域を、前記被覆されていない第一の領域により区切るように、オープンワークの前記アノードおよびオープンワークの前記カソードを前記電解質の両面上にそれぞれ作成し、これによりそれぞれ厚みを有するオープンワークのアノードおよびオープンワークのカソードを含む基本セルを得る工程と、
b)融解状態において蝋付け組成物の量を、記アノードの厚みまたは前記カソードの厚みの20%を超える厚みで前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出することなく、第二の領域にある電解質の表面において前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚み中の前記多孔質部分全体を充填する程度として、蝋付け組成物層を前記第二の領域に相当する前記アノードの表面および前記カソードの表面の上に載積させ、これにより、前記蝋付け組成物を備えた基本セルを得る工程と、
c)工程a)およびb)をn回繰り返す工程と、
d)インターコネクションプレートとセルとをこの順に連続的に垂直にスタックさせる工程と、
e)工程d)をn回繰り返してから、最後のn+1番目のインターコネクションプレートをスタックさせる工程と、
f)前記蝋付け組成物を備えた基本セルおよび前記インターコネクションプレートによって形成された前記スタックを前記蝋付け組成物を融解させるのに十分な蝋付け温度に加熱し、それによって、前記蝋付け組成物が、前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚みの20%を超える厚みで前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出することなく、それらの表面から、前記第二の領域にある前記電解質の表面において前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚み中の前記多孔質部分全体を充填する工程と、
g)前記スタックを前記蝋付け温度から室温にまで冷却し、それによって、前記電解質と前記インターコネクタが前記蝋付けジョイントによって一体化される工程と、
が連続的に実施される方法が提供される。
【0042】
好ましくは、工程b)において、前記蝋付け組成物の量を、融解状態において、前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出しないようにし、
工程f)において、前記蝋付け組成物が前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出しないようにする。
【0043】
好ましくは、工程d)に先行して前記スタックの下側末端板を支持体の上にセットし、
工程e)の後に、前記スタックの上側末端板をセットする。
【0044】
オープンワークの電極を作成する第一の実施形態においては、たとえばマスク手段を用いたスクリーン印刷法によって、電解質の面のそれぞれの前記第二の領域の上にのみ、それぞれアノード材料、およびカソード材料の懸濁液(スラリー)の層を選択的に載積させ、次いで前記層を焼結させることによって、オープンワークのアノードおよびオープンワークのカソードを作成してもよい。
【0045】
好ましくは、カソード材料の懸濁液(スラリー)の層を、電解質の一方の面、好ましくは上側面の上に載積させて、前記層を焼結させ、次いで、アノード材料の懸濁液(スラリー)の層を、電解質の他方の面、好ましくは下側面の上に載積させて、前記層を焼結させるのがよい。
【0046】
オープンワークの電極の第二の実施形態においては、たとえばスクリーン印刷によって、非オープンワークの完全なアノードおよびカソードを作成し、焼結させ、たとえばレーザーアブレーション法または機械加工法によって材料を除去することによって孔を形成することにより、前記オープンワークのアノードおよびカソードを作成してもよい。
【0047】
好ましくは、電解質、アノード、およびカソードが、好ましくは共通の中心軸を有し、好ましくは同一の直径の、円板状であるのがよく、そして二つの同心リングが、第一の領域を形成する第三のリングの両側の上に、第一の領域を形成しているのがよい。
【0048】
好ましくは、マスク手段によるスクリーン印刷法によるか、手作業によるか、または注射器と空気式ディスペンサーの手段によるロボットを用いて、蝋付け組成物を、第二の領域の上に載積させるのがよい。
【0049】
その電解質は、好ましくは5〜200μm、好ましくは50〜150μm、さらに好ましくは90μmの厚みを有している。
【0050】
その電解質は、およそ10体積%未満の多孔度を有する高密度の材料から作成されていてもよい。
【0051】
好ましくは、その電解質は、ドープした酸化物セラミックス、たとえばセリウムがドープされた、イットリア化ジルコニア、スカンジア化ジルコニア、およびストロンチア化ランタンマンガナイトから選択される材料であってもよい。
【0052】
好ましくは、そのアノードおよびカソードは、10〜70μm、好ましくは40μmの厚みを有していてもよい。
【0053】
好ましくは、そのアノードおよびカソードは、たとえば30〜50体積%の多孔度を有する多孔質材料から作られてもよい。
【0054】
好ましくは、そのアノードとカソードは相互に独立して、以下のものから選択される材料から作られていてもよい:ガドリニア化セリウムニッケル酸化物サーメット(NiO−CGO)、ストロンチア化ランタンマンガナイト(La1−XSrXMnYO3−δ、すなわちLSM)、サーメット:NiO−イットリア化ジルコニア YSZ、ニッケレート(La4Ni3O10、La/Nd2NiO4)、クロモマンガナイト(LaCeSrCrMnO)、フェライト(La1−XSrXFeYO3−δ)、コバルタイト(La1−XSrXCoYO3−δ)、およびチタネート(La4Srn−4TinO3n+2−δ)。
【0055】
好ましくは、工程f)すなわち蝋付け工程は、空気中で実施してもよい。
【0056】
好ましくは、活性表面領域を失わないように、アノードとカソードと電解質とは、同一の板状表面を有していて、その表面が一致していることが好ましい。
【0057】
すでに先に挙げたような特許文献1〜3には、多孔質電極を蝋付けすることの可能性が記載されているが、電極を劣化させることなくそのような方法を実施できる可能性については、結晶粒のスケールでは、まったく示されていない。
【0058】
本発明による方法には、従来技術においてはこれまで記載されたことも示唆されたこともない特定の並びの連続工程が含まれている。
【0059】
上記した文献においては、特定の性能、特に電気的、機械的、熱的特性または重量などに関連する性能を有する金属/金属または金属/セラミック複合材料を形成するために、金属、金属合金、または液状蝋付け組成物を多孔質材料に浸透させるために使用することが一般的に記述されている。この方法においては、場合によっては蝋付け作業が必要となり、第2の材料を備えた材料が形成されることとなる。これは、二つの工程を有するという欠点を有する方法である。
【0060】
多孔質材料または発泡物の中に金属または液状金属合金を浸透させることは、その多孔質材料の多孔質部分を閉塞させて、その密度を上昇させたり、および/または緻密にしたりするという目的を有していてもよい。これについては、米国特許第B1−6,355,356号明細書にも記載されているが、この特許においては、第三の成分を蝋付けするための液状合金は使用されていない。
【0061】
浸透操作は、多孔質材料、または金属発泡物もしくはセラミックの多孔質部分を充填することと、単一の操作でそれを第三の材料と機械的に一体化させることの、二つの目的を有していてもよい。これについては、特許出願の国際公開第A2−91/13462号パンフレットおよび米国特許第B2−6,490,146号明細書に開示されている。これらの文献においては、シーリング機能、緻密化機能についての言及も検討もなく、そして液状金属の浸透を制御したり、浸透をある領域に留めたりすることを目的とした方法も示唆されていない。
【0062】
本発明による方法は、なかんずく、先に列記した必要性をすべて満たし、従来技術の方法の欠点を有さず、そして、従来技術の方法の問題点に対する解決法を提供する。
【0063】
本発明においては、その上に蝋付け組成物が塗布され溶融される電極領域を区切る、孔、オープンワーク、カットアウトを備えたオープンワークの電極を適用する。また、融解状態において、蝋付け組成物が、第二の領域におけるアノードもしくはカソードの自由表面より上に、アノードの厚みもしくはカソードの厚みの20%以上の高さで突出することなく、そして好ましくは、そのアノードもしくはカソード自由表面を超えてまったく突出することなく、前記第二の領域中の電解質の表面に至るまで、アノードの厚みもしくはカソードの厚みの中の多孔質部分全体を充填するように決められた、特定の量の蝋付け組成物が使用される。これにより、すべての方向に対して蝋付け材料の浸透が完全に制御される。
【0064】
本発明においては、孔、オープンワーク、カットアウト、開口を有するオープンワークの電極を使用することによって、蝋付け組成物、蝋付け合金の側面方向への浸透が制御される。その理由は、これらの孔が液状の蝋付け組成物の側面方向への浸透を停止させるからである。
【0065】
本発明においては、蝋付け合金が、電極の多孔質部分に、厚み方向におよそ10〜70μmで充填される。また、蝋付け合金は、電極中で側面方向には、一般的には1,000μmを超えた距離にまで浸透することなく電解質に到達する。そしてさらに、そのガスケットの上側もしくは下側部分が、電極の面に残存して、それもまたインターコネクションプレートの一部となっている。本発明においては、このことは、所定量の蝋付け組成物を使用することによって可能となっている。その量は、一般的には、電解質の前記第二の領域の表面、対応する電極の表面、および電極の厚みによって決定される容積の中に充填されるべき気孔の容積以下である。
【0066】
したがって本発明においては、蝋付け組成物の量は、アノードまたはカソードの多孔度を考慮することによって、その液状の蝋付け組成物がアノードまたはカソードと電解質との間の界面に到達するように、そしてさらに、表面に、電極(アノードまたはカソード)の厚みの20%以下の厚みに相当するだけの蝋付け材料が残るように、計算される。好ましくは、カソードの表面またはアノードの表面に蝋付け組成物が存在しない、すなわち、その蝋付け組成物が、カソードの表面またはアノードの表面を超えて突出していないのが望ましい。
【0067】
加えるべき蝋付け組成物の量は、蝋付け材料の比重から、ならびに、その第二の領域の最小の幅と厚みおよび電極の最小の多孔度で規定される浸透させるべき容積から計算される。
【0068】
したがって、本発明においては、ガスケットは、限定された過剰厚みしか有さないか、さらには過剰厚みをまったく有さず、この過剰厚みを補償するための、長時間かかる複雑な操作を実行する必要もなく、そして、寸法の連続性(公差スタックアップ)が明確に観察されるスタックが、限られた数の工程で容易に得られる。
【0069】
本発明による方法によって、リーク流速の基準に適合し、機械的に堅固な気密性スタックが得られる。
【0070】
特に、本発明による方法によって、一定の厚みを有するセルを、平坦度の欠陥の範囲内で、インターコネクタと組み合わせて、たとえば20℃〜900℃で差圧が200mbarで気密性のあるセル/インターコネクタガスケットが得られる。測定されるリーク流速は、たとえば空気中で、900℃のときに10−3NmL/分/mm未満である。
【0071】
まとめれば、以下の通りである。
− 本発明による方法によって、セルの電極の内部に浸透させた蝋付け組成物手段によって得られる気密性ガスケットを介して、高温型水電解スタックまたは高温型燃料電池の寸法の連続性(公差スタックアップ)を確実に制御する。
− その組合せ方法は、単一の工程で、そして好ましくは空気中で達成される。
− その組合せおよび気密性は、スタックされる部分に、いかなる過剰厚みを加えることもなく、単一の操作で達成され、それによって、スタックの全厚みを制御することが可能となる。
− 電極の設計によって、蝋付け組成物または蝋付け合金の浸透距離が制御できる。
− 本発明による方法は簡単であり、信頼性があり、そして低コストである。特に、電極およびスクリーン印刷法による蝋付け組成物の載積は、低コストの方法であって、産業界でも現在使用されている。
【0072】
本発明のその他の効果および利点は、添付された図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読めば、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】高温型電解セル(HTE)の基本セルの模式的垂直断面図である。
【図2】高温型電解セルHTEの基本反応器または基本モジュールの模式的垂直断面図である。
【図3】基本モジュールのスタックを含む従来からの高温型電解セルの模式的垂直断面図である。
【図4】セルと、下側インターコネクタおよび上側インターコネクタとの間のシールガスケットを示す、従来からの高温型電解セルの基本モジュールの模式的垂直断面図である。
【図5】非連続的ストリップキャスティング装置の模式的垂直断面図である。
【図6】スクリーン印刷法による載積の原理を示す模式的垂直断面図である。
【図7】円板の形状で、電解質の上に載積させたオープンワークの電極を含む、高温型電解セルの平面図である。
【図8A】本発明にしたがって、HTEスタックの基本モジュールを蝋付けする前の模式的垂直断面図であって、電極の上に載積させた蝋付け材料のビーズを示している図である。
【図8B】本発明にしたがって蝋付けした後の、図8Aのモジュールの模式的垂直断面図であって、蝋付け材料が電極の多孔質部分に浸透していることを示している図である。
【図9】本発明による方法によって作成された、高温型電解セルまたはSOFCのスタックの基本モジュールの模式的垂直断面図である。
【図10】本発明による方法によって作成された、高温型電解セルまたはSOFCのスタックの模式的垂直断面図である。
【図11】実施例2を説明する写真であって、厚みが50μm、長さが5mm、幅が各種(1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、および2.9mm)の黒色のLSMパターンの上に重ね合わせた、幅が1mmで長さが5mmの灰色のAg−Cu蝋付けストリップを示している。
【図12】図11に示した、Ag−Cuによって浸透させた、幅1mmのLSMパターンの断面を撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図12に示しているスケールは20μmを表している。
【図13】図11に示した、Ag−Cuによって浸透させた、幅1.5mmのLSMパターンの断面を撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図13に示しているスケールは20μmを表している。
【図14】実施例3において作成した、二つの環状の孔、オープンワーク、カットアウトを備えたLSM電極を示す写真である。
【図15】実施例3において作成し、図14に示したLSM電極の二つの環状の孔、オープンワーク、カットアウトの間に位置する領域の中央に載積させた、Ag−3Cu蝋付けペーストのビーズを示す写真である。
【図16】その一部が、図15(実施例3)に示されたセルを蝋付けすることによって作成され、クローファー(Crofer)22APU製の型押し加工部分、およびクローファー(Crofer)22APU製の厚み2.5mmを有する部分を有するモデルの写真である。
【図17】図16に示したモデル、部分の断面CAD図である。
【図18】図16および17に示した部分を切り出すことによって得られた部分の、光学顕微鏡を用いて撮影した写真である。図18に示しているスケールは100μmを表している。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明による方法の第一の工程においては、アノード/電解質/カソードの板状の電解セルを作成する。電解セルには、二つの電極、すなわちアノードおよびカソードが含まれており、その間に、二つの表面すなわち、上側表面と下側表面とを含む板状の固体電解質が位置している。
【0075】
別の言い方をすれば、一方ではアノードが、そして他方ではカソードが、固体電解質を挟み込んでいて、それぞれが、電解質の面の一つと直接的に接触されている。
【0076】
アノード/電解質/カソードの板状のセルの製作は、当業者に公知の方法で実施する。
【0077】
まず電解質を製作する。この電解質は一般的にはプレートであり、厚みが一般的には50μm〜200μm、好ましくは80〜90μmの厚みを有する薄い板状の層の形状をしている。
【0078】
電解質は、一般的にはセラミックス、好ましくはドープした酸化物セラミックス、たとえばセリウムがドープされた、イットリア化ジルコニア(たとえば3モル%のYを有する、3YSZと呼ばれるもの)、スカンジア化ジルコニア(ScSZとも呼ばれる)、およびストロンチア化ランタンマンガナイトから選択される材料から作られる。
【0079】
その電解質は、たとえば、図5に示されているような、キャスティングベンチ(casting bench)による非連続ストリップキャスティング法によって作成されてもよい。
【0080】
ストリップキャスティング法は、特にセラミック(1種または複数)の粉体の懸濁液(スラリー)から薄層を載積させる当業者にとって周知の方法である。より詳しくは、適切な溶媒たとえばエタノールの中のセラミック粉体の懸濁液(51)を、移動型のシュー(52)の槽の中に入れ、それを板状の固定された支持体(54)の上で一方向に移動させ(53)、これによりキャストストリップ(55)を形成し、溶媒(56)を蒸発させて乾燥し、50μm〜200μm、好ましくは80〜90μmの所定厚みを有するグリーンストリップを得る。
【0081】
ストリップキャスティングをすることにより得られるそのグリーンストリップ部分を、次いで、たとえばポンチまたは二酸化炭素レーザーの手段によって所望の形状と寸法に切り出す。
【0082】
そのグリーンストリップ部分は、多角形、たとえば長方形または正方形の形状、あるいは円板の形状であってもよい。また、ガスを循環させるための開口が含まれていてもよい。
【0083】
電解質を構成する部分の表面積、または後者の主面の表面積は、一般的には100cm2〜500cm2、好ましくは225〜400cm2である。
【0084】
次いでその電解質を焼結させる。この焼結は、オーブン中、たとえば空気中で実施してもよい。焼結温度は、一般的には1,400℃〜1,600℃としてよく、たとえば3YSZの場合にはたとえば約1,500℃である。
【0085】
この焼結操作により、蒸発によって有機成分の除去が可能となる。また、結晶粒を互いにアグロメレート化させることによって、およそ10%未満の多孔度を有する高密度の材料が得られる。
【0086】
次いで、その電解質のそれぞれの面の上での電極の製作に進む。
【0087】
電解質の一つの面の上で、第一の電極の製作を開始する。
【0088】
たとえば、電解質の上側表面の上にカソードを製作することによって、開始することができる。
【0089】
次いで、電解質の他の面の上に第二の電極を製作する。たとえば、電解質の下側表面の上にアノードを製作することが可能である。
【0090】
本発明による電極を製作するためには、まず始めに、電解質の一つの面の上に電極を構成する材料の懸濁液(スラリー)を多層化載積させることが可能であり、次いでその載積物の焼結を、一般的には空気中で実施する。
【0091】
「多層(multilayer)」という用語は、場合によっては組成および/または多孔性の面で勾配を有する同一または異なった材料の連続を意味している。当業者には、そのような多層の作成方法は公知である。
【0092】
HTEカソード(SOFCモードではアノード)とHTEアノード(SOFCモードではカソード)として好ましい材料は、それぞれ、サーメット酸化ニッケル−ガドリニア化酸化セリウム(NiO−CGO)と、ストロンチア化ランタンマンガナイト(La1−XSrXMnYO3−δ、すなわちLSM)とである。
【0093】
これらは、SOFCモードにおいては、現在最も使用されている工業材料ではあるが、その他多くの材料および組合せを考えることも可能であって、そのようなものとしては、たとえば以下のものが挙げられる:サーメットNiO−YSZ、ニッケレート(La4Ni3O10、La/Nd2NiO4)、クロモマンガナイト(LaCeSrCrMnO)、フェライト(La1−XSrXFeYO3−δ);コバルタイト(La1−XSrXCoYO3−δ)またはチタネート(La4Srn−4TinO3n+2−δ)。
【0094】
適切な技術を用いてこれらの懸濁液の載積を実施すればよい。載積物の厚みは、得られる電極が、10〜70μm、たとえば40μmの厚みを得られるようにする。
【0095】
しかしながら、本発明においては、電極層の載積は、一般的には、スクリーン印刷機またはスクリーン印刷装置の手段によってスクリーン印刷することによって実施される。
【0096】
スクリーン印刷の原理を図6に示す。これは、たとえば約40μmのサイズを有する網の目(64)を備えた金属マスク(63)および速度Vで移動するドクターブレード(65)の手段によって、電解質(62)の面(61)の上に懸濁液(スラリー)またはインキを載積させることからなる。このスラリーには、一般的に、1種または複数の無機粉(その1種または複数の粉体は、電極を構成する材料からなっている)および1種または複数の有機化合物たとえばバインダー、分散剤、および可塑剤からなる有機部分が含まれている。
【0097】
マスクはたとえば幅dの開口部(66)を備えており、電解質上の所定の領域(第二領域)の上に被覆されていない領域を残して、選択的な載積を実施することを可能とするのが好ましい。それによって、厚みのある好適に選択されたスクリーン印刷による載積物(67)が、電解質の一つの面上に得られる。
【0098】
したがって、カソードの場合においては、NiOをベースとし、CGOをベースとするインキを合成して載積させ、アノードの場合においては、LSMをベースとするインキを合成し、載積させることができる。
【0099】
焼結は、当業者が容易に決定することが可能な温度で実施する。
【0100】
一例として、電解質の一つの面の上に第一の電極材料、たとえばカソード材料の懸濁液を載積させ、次いで、その第一の材料の懸濁液を載積させたものを、たとえば空気オーブン中1200℃の温度で焼結させることを実施し、電解質−カソードのハーフセルを得るようにしてもよい。
【0101】
次いで、第二の電極材料、たとえばアノード材料の懸濁液を、その電解質の他方の面の上に載積させ、次いで、その第二の材料懸濁液を載積させた物を、たとえば空気オーブン中1050℃の温度で焼結させて、完成されたセルを得るようにしてもよい。
【0102】
加熱焼結処理をすることによって、有機部分を除去し、電解質と電極とを結合させることが可能となる。
【0103】
本発明においては、その製作された電極は、厚み方向にその電極を貫通しているカットアウト孔、オープンワークまたは開口を有するオープンワークの電極でなければならない。これらの孔、オープンワークが、電解質の面のそれぞれの上に、アノードまたはカソードによって被覆されていない表面領域を区切っている。これらの第一の被覆されていない領域は、作成された蝋付けガスケットの位置で、アノードまたはカソードによって被覆されている(一つまたは複数の)第二の被覆された表面領域、いわゆる完全(full)領域を区切っている。
【0104】
これらの孔、オープンワークは、いかなる形状を有していてもよい。ただし、それらが前記第二の領域を正確に区切り、液状の蝋付け組成物が第二の領域の中に閉じ込められて、側面方向すなわち電極の面に逃げ出すことができないようにすることが重要である。
【0105】
これらの孔、オープンワークを作成するための第一の実施形態においては、上述の懸濁液(スラリー)またはインキを選択的に載積し、その載積が、電解質のこれら第一の領域の上に及ばないようにするのがよい。
【0106】
たとえば、特殊なスクリーン印刷マスクを使用して、蝋付け合金と接触することになる第二の領域のいずれかの側の上に、第一の領域中のスクリーン印刷インキが載積できなくなるようにしてもよい。
【0107】
たとえば120mmの直径を有する円板形状の支持電解質セルの場合においては、その電極は典型的には、従来技術においては、たとえば直径110mm、厚み40μmの円板である。それらのセルはさらに、正方形であっても、あるいは長方形であってもよい。
【0108】
適切なスクリーン印刷マスクを使用することによって、図7に見られるように、電解質の直径と同じ直径、たとえば120mmを有する電極を載積させ、たとえば50μm〜1mmの幅Bの電極リング(72)の両側のたとえば10〜500μmの幅Aの二つのリング(71)の上に、いかなる材料も載積させないということも可能である。
【0109】
選択的な載積を行った後で、先に説明したような条件下で焼結を実施することは言うまでもない。
【0110】
孔、オープンワーク、カットアウトを作成するための第二の実施形態においては、完全に非オープンワークの電極を電解質の上に作成してもよい。すなわち、それらの電極が、下にある電解質の表面をすべて被覆していてもよく、その電極の表面領域は、一般的には電解質の表面領域と同じであり、後者に一致する。それらの完全な電極は、たとえば、懸濁液またはインキを、たとえばスクリーン印刷法によって載積させ、次いで焼結させることによって作成してもよい。
【0111】
次いで、その完全電極の中に孔、オープンワーク、第一の領域を生成させるために、材料を除去する。材料の除去は、たとえばレーザーアブレーション法または機械加工法によって実施してもよい。
【0112】
レーザーアブレーション法の場合においては、二酸化炭素レーザーをプログラミングして、除去することが望ましい表面(電極の孔に相当する)を走査する。レーザーによって与えられる熱出力の手段によるフォトアブレーションによって、選択された領域で材料が蒸発されることにより除去される。
【0113】
本発明に従って適用されるオープンワークの電極セルにおいては、それらの主面における電極の表面領域は、一般的には、電解質の表面領域と同じであって、一般的には後者と一致しているのが好ましい。別の言い方をすれば、電極と電解質とが一致していて、好ましくは完全に重なり合っていて、ガスケットを除いて全体として同じ表面領域を有している。このことは、電解質の上にインターコネクタを蝋付けすることを可能とするために電極特にカソードの寸法が減らされ、それによって活性な表面が少なくなる従来技術に比較して、有利である。
【0114】
本発明においては、上述のようにして作成されたオープンワークの電極を有するセル、次いで、蝋付け組成物層が、アノードおよびカソードの表面上に載積され、それが、第一の被覆されていない領域によって区切られた電解質のそれぞれの面の第二の領域を被覆している。また、蝋付け組成物の量は、それが融解状態において、アノードの厚みもしくはカソードの厚みの20%を超える厚みでアノードの表面もしくはカソードの表面を超えて突出することなく、アノードの厚みもしくはカソードの厚みで多孔質部分全体を第二の(一つまたは複数の)表面領域における電解質の表面に至るまで充填するような量である。これにより、電極およびインターコネクションプレートおよびシールの間を確実に組み合わせることができる蝋付けガスケットの位置に対応する、電極の表面の第二の定められた領域の上に、蝋付け組成物を備えた基本セルが得られる。
【0115】
蝋付け組成物の量は、それが、アノードの表面もしくはカソードの表面を超えて突出することはないものの、可能な限りこの表面にまで到達するように、別の言い方をすれば、このアノードの表面またはカソードの表面と同一表面になるようにするのが好ましい。
【0116】
蝋付け組成物の載積は、各種適切な方法で実施すればよいが、スクリーン印刷法が好ましい方法である。
【0117】
したがって、図7を参照すれば、たとえばスクリーン印刷させることによって、幅Bの電極リング(72)の上に、幅Cたとえば50μm〜1mmの蝋付け材料ビーズを載積させることが可能となる。
【0118】
このためには、あらかじめ作成しておいたセルの上に配置しておいて、幅Bの電極リング(72)の上に幅Cの蝋付け材料層を載積できるようにする、スクリーン印刷マスクを使用する。
【0119】
スクリーン印刷法によって載積させる蝋付け材料の単位長さ当たりの量(linear amount)は、0.05mg/mmのオーダーである。
【0120】
蝋付け組成物には、一般的には、蝋付けされるガスケットの表面上に均一に塗布できるようなペースト、懸濁液(スラリー)またはインキを得るための好ましくは高粘度でかつ粘着性のある液状の有機セメント、バインダーの中に従来法で懸濁させた、蝋付け材料を形成させるための構成要素の粉体を含んでいる。したがって、バインダーを選択して、蝋付け組成物が(ブルックフィールド(Brookfield)RVT/ABZ、「スピンドル(Spindle)」粘度計で測定して)、25℃、1rpmの回転速度で約500Pa・sの粘度を有するようにするのがよい。
【0121】
バインダー、セメントは、一般的にはたとえば100〜300℃の間で分解して、何も残らない。このことは、たとえばポリビニルブチラールベースおよびアセテートベースのバインダーで起こりうる。
【0122】
好ましい蝋付け組成物としては、有機バインダーとたとえば約20質量%で混合した銀および銅の粉体(たとえば質量比97/3)が挙げられる。
【0123】
載積させた蝋付け材料の厚みは、典型的な幅0.5mmの場合で、たとえば約50μmである(図8A参照)。
【0124】
この蝋付け(材料、組成物)は、電極への良好な濡れ性を有していて、空気中1050℃で、LSMおよびNiO−CGOの上でそれぞれ15度および33度の接触角を有している。空気中で蝋付けするために採用されるその他の蝋付け組成物としては、Ag−Cu、Ag−CuO、Ag−Cu−Ti、Ag−CuO−TiO2、Ag−Cu−Al、またはAg−CuO−Al2O3などの系が考えられるが、ここに列記した合金ですべてが網羅されている訳ではない。それらはすべて、YSZも含めて多くの酸化物セラミックスの上、そしてインターコネクタに使用されるものも含めて多くの金属の酸化された表面の上に粘着するという利点を有している。
【0125】
蝋付け材料は、他の方法、たとえば注射器を用いたロボット法や手作業の載積法などで載積させてもよい。
【0126】
使用するロボットは、たとえば、載積させるための蝋付けペーストを収めた注射器を備えた空気式ディスペンサーのEFD・ウルトラ(EFD Ultra)(登録商標)2400と組み合せた、スカラ(SCARA)(登録商標)JSR4400N型の3軸ロボットであってよい。吐出圧力、温度および注射器−電極の距離のパラメーターを調節して、載積量を変化させる。
【0127】
載積量を均等とするために、ロボットによって載積させる蝋付け材料の単位長さ当たりの最小量は、少なくとも0.2mg/mmである。
【0128】
注射器および空気式ディスペンサーの手段による手作業方式の載積では、ロボットを用いた載積よりも均質性がはるかに劣る。
【0129】
したがって、好ましい載積方法は、スクリーン印刷法であって、それによって蝋付け材料を最小量で載積させることが可能となる。
【0130】
n個のセルのスタックを作成したいのなら、上述と同じ方法で、蝋付け組成物を備えたn個のセルを作成する(nは、100〜1,000の整数、たとえば500である)。
【0131】
一連の方法、特に蝋付け操作は、一般的には、以下の方法で実施される。
− 高温型電解セルのスタックの下側末端板を、たとえば空気オーブン中で、支持体の上にセットする;
− インターコネクションプレートと、その載積させた蝋付け層(1層または複数)を備えたセルとを、交互に、垂直方向にスタックさせる;
− そのスタックがn個のセルからなるのなら、上述の操作をn回繰り返し、n番目のセルの上に最後のインターコネクションプレート(n+1)を置く;
− その「スタック」の上にスタックの上側末端板をセットする;
− スタックの外側に設けた工具を用いて、スタックのそれぞれの層が適切に配列できるようにする。蝋付け操作の間に部品の接触を容易とするために、スタックの上に置く重しを加えてもよい;
− 次いで、実際の蝋付け操作を実施する。
【0132】
このためには、たとえば、オーブンの温度を、室温たとえば20℃から、たとえば950℃〜1,050℃の間に含まれる蝋付け温度にまで上昇させることができる。
【0133】
この昇温は、たとえば0.5℃/分の速度で実施してよい。この温度上昇の勾配には、場合によっては、たとえば300〜500℃の温度で1時間の、(有機バインダーを除去するための)蝋付け材料のバインダー除去プラトー、および/またはたとえば800〜900℃の温度でたとえば10分間〜2時間の、スタックを加熱均質化するためのまた別のプラトーがさらに含まれていてもよい。スタックには数本の熱電対を設けておき各所の温度をモニターする。
【0134】
次いで、たとえば940〜1,100℃で、1分〜2時間、たとえば1時間の蝋付け温度でのプラトーが観察される。
【0135】
スタックは、蝋付け温度から室温たとえば20℃にまで、たとえば0.5℃/分の速度で冷却する。
【0136】
末端板およびインターコネクタに好適な材料は、クローファー(Crofer)22APU(登録商標)(チッセンクルップ(ThyssenKrupp)(登録商標)製)であるが、その他各種のフェライト鋼、たとえばF18TNb(アルセロールミッタル(ArcerolMittal)(登録商標)製)などを使用してもよい。
【0137】
たとえばヘイネス(Haynes)230(登録商標)のようなニッケルベースの超合金を使用してもよい。
【0138】
それらの末端板およびインターコネクタは、場合によっては、たとえば化学もしくは物理蒸着法、スクリーン印刷法またはプラズマ投射法によって得られる保護用の酸化物載積物を用いて被覆されていてもよい。
【0139】
プレートと電極との間の接続を確実なものとするために、スタックを軽く加圧してもよい。
【0140】
図8Aおよび8Bに見られるように、カソード(82)、電解質(83)およびアノード(84)によって形成されているセル(81)と、インターコネクタ(85、86)との間の蝋付けサイクルの際に、その蝋付け組成物(87)または蝋付け合金を、最初にその電解質の第二の表面領域(89)に相当する電極の上側表面または下側表面(88)の上に載積させる。これらの第二の領域は、電極中の第一の被覆されていない表面領域(810)によって区切られ、孔(811)に相当する。
【0141】
次いで、その蝋付け組成物は、加熱の影響の下で液状の状態に変化して(図8B)、たとえば図7、8Aおよび8Bに図示したような電極リング(72)中の(一つまたは複数の)第二の領域(89)の中に、毛管現象によって浸透し、寸法の連続性(公差スタックアップ)の制御に見合うその最初の厚みを低下させながら、その多孔性の部分に入り込み、そして同一の工程で、電解質とインターコネクタとの一体化を可能とする。
【0142】
蝋付けは、毛細管効果によって、たとえばリング(72、89)の第二の領域の端部で、X軸およびY軸方向で停止する。毛細管的浸透は、気孔の半径で制御され、この半径が無限になると、浸透長さはゼロとなる。Z軸方向においては、蝋付け量は、蝋付け組成物が、電解質たとえばジルコニア/電極界面(表面89)に(後者の多孔度も考慮にいれて)到達するように(図8B)、さらには電極の表面における蝋付けが、その電極の厚みの20%以下の厚みとなるように、好ましくは電極の表面(88)には蝋付け材料がまったく残らないように計算する。その結果、スタックの寸法の連続性(公差スタックアップ)が観察される。
【0143】
本発明による方法によって製作した高温型電解セル(またはSOFC)の基本モジュールを図9に示す。この基本モジュールには、たとえば30μmの厚みを有するカソード(92)、たとえば80〜200μmの厚みを有する電解質(93)、およびたとえば30μmの厚みを有するアノード(94)を有するセル(91)が含まれている。このモジュールにはさらに、スタックのそれぞれ上側および下側のインターコネクションプレートに属する、下側(95)および上側(96)の(ハーフ)インターコネクタも含まれている。
【0144】
これらインターコネクタ(95、96)は、本発明による方法の手段によって、これらの電極の多孔性部分に作成され、目立つような過剰厚みもなく、蝋付け材料の電極の中への側面方向の浸透も観察されない。また、堅固な蝋付けジョイント(97)によって、アノード(94)およびカソード(92)の上に直接的に組み込まれている。本発明に係る方法によって、電極の厚み方向における多孔性部分の充填と共に、蝋付け材料の側面方向への浸透も完全に制御された。
【0145】
図9に記載された厚みおよび寸法は、一例として挙げただけのものであって、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0146】
本発明に係る方法により製作された高温型電解セル(またはSOFC)のスタックを図10に示す。上側末端板(98)と下側末端板(99)との間の、図9に示したようなモジュールのスタックからなっている。
【0147】
本発明に係る方法により、高温型電解セルは単一の蝋付け工程でしっかりと組み立てることが可能である。そしてそれは、電極中への蝋付け材料の浸透が制御され、それによって完全に寸法が合わせられ、区切られたガスケットが画定されるために、正確に制御された寸法を有している。
【0148】
このスタックにはさらに、ガスの供給および排出をするための通路(910)も設けられている。
【0149】
本発明による方法は、高温型電解セル(HTE)および固体酸化物型燃料電池(SOFC)に適用できるだけではなく、高温で操作され、たとえば酸素発生器またはガス分離膜のような単位、基本セルのスタックを含む、その他各種の電気化学系にも適用できる。
【0150】
ここで、以下の実施例を参照しながら本発明を説明するが、これらは、説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【0151】
実施例:
実施例1:
56mmの直径を有するセルと、クローファー(Crofer)22APUのインターコネクタとからなる、気密性サンプルを、そのLSM電極を通して蝋付けした。
【0152】
800℃、200mbarの差圧で測定したリーク流速は、5.6×10−4NmL/分/mm未満であった。
【0153】
比較として、電解質とインターコネクタとの間に蝋付けガスケットを取り付けた同一のサンプルで測定されたリーク流速は、2×10−4NmL/分/mm未満である。
【0154】
実施例2:
厚みが50μm、長さが5mm、そして各種の幅(1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、および2.9mm)を有するLSMパターンを、イットリア化ジルコニア支持体の上にスクリーン印刷することによって作成した。
【0155】
そのLSMパターンを焼結させてから、それらのパターンの上に、幅が1mmで長さが5mmの銀−銅蝋付けストリップを、スクリーン印刷法によって重ね合わせた。
【0156】
図11の写真においては、黒色のLSMパターンの上に灰色のAg−Cu蝋付けストリップが観察できる。
【0157】
それぞれのストリップは、0.79mgの質量を有しており、このことは、蝋付け材料の単位長さ当たりの量が0.16mg/mmであることを表している。
【0158】
LSMパターンの多孔性部分の中へAg−Cu蝋付け材料を浸透させることは、空気中970℃で2分間の加熱処理によって実施した。次いで、そのジルコニアのサンプルを、パターンの半分の長さに切断し、樹脂中で被覆し、そして1μmの結晶粒になるまで研磨し、それによって、LSM中での蝋付け材料の分布を観察し、浸透を受けた多孔性のパーセントを定量した。Ag−Cuを用いて浸透させた5種のLSMパターンを、光学顕微鏡下で観察した。それらのいずれにおいても、3〜4μmの厚みを有するCuOのいくつかの島模様以外には、その表面には、金属残留物はなにも存在しなかった。それらの多孔性部分の充填レベルを、画像解析によっておおまかに評価し、次の表1に示した。
【0159】
【表1】
【0160】
これらのパターンのすべてにおいて、蝋付け材料が、毛細管浸透によって、多孔質なLSM/高密度のYSZの界面に到達し、パターンの端部で実際に停止していることが確認された。
【0161】
さらに、幅が1mmおよび1.5mmのLSMパターンについては、断面を走査型電子顕微鏡法によって観察した。
【0162】
幅1mmのLSMパターン断面を図12に示し、幅1.5mmのLSMパターン断面を図13に示す。
【0163】
実施例3:
50μmの厚みを有するLSM電極を、56mmの直径を有するイットリア化ジルコニア(YSZ)円板の上にスクリーン印刷法によって載積させ、次いで焼結させた。
【0164】
その電解質の反対側の面の上に対称的に、NiO−CGO電極をスクリーン印刷した。そのLSM電極には、二つのギャップ、環状の孔、オープンワーク、カットアウトが設けられており、電極の活性領域を後に蝋付けガスケットを作成する領域から分離することが可能とされていた(図14)。ガスケットの領域は、1.45mmの幅を有しており、その孔は、0.5mmの孔であった。
【0165】
次いで、Ag−3Cu蝋付けペーストビーズ(151)を、二つの孔(153、154)の間に位置する領域(152)の中央に、ロボット手段によって載積させた(図15)。蝋付け材料の単位長さ当たりの量は、0.22mg/mmであった。
【0166】
型押し加工部分がクローファー(Crofer)22APUで作られており、一部が2.5mmの厚みのクローファー(Crofer)22APUで作られている、このセルからなるモデルを、次いで、空気中970℃で蝋付けした。
【0167】
図16に、蝋付けした後のこのモデルを示す。
【0168】
図17は、この部分のCAD断面図であり、クローファー(Crofer)22APU製の型押し加工された部分と、オープンワークのLSM電極との間の蝋付け領域を見ることができる。
【0169】
より詳しくは、図17に示されているのは、クローファー(Crofer)22APU(171)で作られている厚い部分、クローファー(Crofer)22APU(172)で作られている型押し加工された部分、蝋付けガスケット(173)、およびオープンワークのLSM電極(174)である。
【0170】
蝋付けをした後で、その部品を、円グラフ分割(pie chart portions)の形状で6個のサンプルに切り分け、それらの断片の内の二つを、コーティングおよび研磨して、蝋付けされた界面の品質と、蝋付け材料を用いてLSMが充填されているレベルを評価した。
【0171】
切り出しの際に、それらの部分が、クローファー(Crofer)22APUの表面に位置するスピネル(Cr,Mn)3O4のところで剥離している(185)。
【0172】
光学顕微鏡下でそれらの部分の観察を行った(図18)。
【0173】
図18においては、クローファー(Crofer)22APUから作成された型押し加工部分(181)、Ag−3Cuを浸透させたLSM(182)、YSZ(183)、およびNiO−CGO(184)、さらには層剥離現象(185)も識別される。
【0174】
これらの光学顕微鏡法による観察から、以下のことがわかる:
1)LSMの表面には、蝋付け材料は残存していない;
2)蝋付け材料は、YSZにまで浸透している;
3)蝋付け材料は事実上、孔、オープンワークによって浸透が停止している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本セルのスタックを含む高温型電解セル(high temperature electrolyzer)(HTE)または高温型燃料電池(high temperature fuel cell)(固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell))(SOFC)を製造するための方法に関する。
本発明の技術分野は、一般的には、高温型電解セルの技術分野および高温型燃料電池の技術分野と定義され、さらに詳しくは、基本セルのスタックを含む高温型電解セルおよび高温型燃料電池の技術分野と定義される。
【背景技術】
【0002】
高温型電解セルにおいては、高温における水の電解は、蒸発させた水からなされる。高温型電解セルが果たす機能は、そのスチームを次式に従って水素と酸素とに変換させることである。
2H2O(g)−>2H2+O2
【0003】
この反応は、電解セルにおける電気化学的経路で実施される。
【0004】
図1に示すように、それぞれの基本セルは、一般的には膜(3)の形態にある固体電解質を挟み込んだ二つの電極すなわちアノード(1)およびカソード(2)で構成されている。
【0005】
それら二つの電極(1、2)は、電子導体であり、そして電解質(3)はイオン導体である。
それぞれの電子導体とイオン導体との間の界面で電気化学的反応が起きる。
【0006】
カソード(2)における半反応は次式の通りである。
2H2O+4e− → 2H2+2O2−
そしてアノード(1)における半反応は次式の通りである。
2O2− → O2+4e−
【0007】
それら二つの電極の間に位置する電解質(3)は、アノード(1)とカソード(2)との間に加えられた電位差によって発生する電場の影響下にある、O2−イオン(4)の移行サイトである。
【0008】
図2に示した基本反応器(elementary reactor)は、アノード(1)、電解質(3)、およびカソード(2)を有する上述のような基本セル(5)、ならびに、電気的、液圧的、および熱的機能を確保している二つの単極のコネクタ、より正確には二つのハーフインターコネクタ(6、7)から構成される。この基本反応器は、モジュールと呼ばれる。
【0009】
図3に見られるように、発生した水素および酸素の流速を高める目的でいくつかの基本モジュールは重ね合わされ(8)、セル(5)はインターコネクタや二極性インターコネクションプレート(9)によって分離される。
【0010】
モジュール(8)を組み合わせたものが上側(10)および下側(11)の二枚のインターコネクションプレートの間に位置される。これら上側及び下側のインターコネクションプレート(10,11)電力とガス(12)を供給する。これをスタックと呼ぶ(図3)。
【0011】
スタックに関しては、次のような二つのコンセプト(配置あるいは構成)が存在している。
− 筒状のスタック。この場合、それらのセルは筒状である。
− 板状のスタック。この場合、それらのセルは、図3のようなプレートである。
【0012】
板状の構成において、セルとインターコネクタは複数点で接触している。接触圧力が高くなりすぎたり応力の分布が不均一になるとセルが破損する虞があるので、これを避けるように、スタックの製作に際しては、セルの平坦性に関して微細な公差しか許されていない。
【0013】
スタックにおけるシーリングジョイント(ガスケット)は、カソードから隣接するアノードへの水素リークを防止し、アノードから隣接するカソードへの酸素リークを防止し、スタックの外部への水素リークを防止し、更にカソードからアノードへのスチームのリークを抑制するという目的を有している。
【0014】
高温型電解(HTE)のためのスタックの開発において、図4に示すように、それぞれアノード/電解質/カソードのセラミックの3層からなる板状の電解セル(5)と、インターコネクタまたは金属インターコネクションプレート(9)との間に、気密性(gas−tight)ジョイント(ガスケット)(13)が設けられている。
【0015】
図4の中の寸法(単位:μm)は、例として挙げたに過ぎないということを理解されたい。
【0016】
より詳しくは、一方ではそれぞれのセル(5)の下側表面とそのセルの下に位置するインターコネクションプレートのインターコネクタ(14)上側半分との間にジョイント(ガスケット)が設けられる。また、他方ではそれぞれのセルの上側表面とそのセル(5)の上側に位置するインターコネクションプレートのインターコネクタ(15)の下側半分との間にジョイント(ガスケット)が設けられる。
【0017】
これらのジョイント(ガスケット)(13)は一般的には、空気中のリーク流速が、700℃〜900℃で、20〜500mbarの圧力差があるときに、10−3NmL/分/mm未満となるようにされる。
【0018】
そのジョイント(ガスケット)はこのシーリング機能に加えて、二次的なアセンブリ機能および導電機能を有してもよい。ある種のスタック構成においては、セラミック部品(セル支持体(cell support)とも呼ばれる)を、セルとインターコネクタとの間に設けてもよく、その場合には、このセル支持部分にも気密性ジョイント(ガスケット)が必要となる。
【0019】
現在のところ、以下のようないくつかのシーリング解決法が検討されている。セメントもしくはセラミック粘着剤、ガラスジョイント(ガスケット)もしくはガラスセラミックジョイント(ガスケット)、圧縮金属ジョイント(ガスケット)、圧縮マイカジョイント(ガスケット)、蝋付けジョイント(ガスケット)、およびこれらの技術を複数必要とする混合解決法。
【0020】
これらのジョイント(ガスケット)によって、カソードチャンバーと外部との間、アノードチャンバーと外部との間、そして両方のチャンバーの間で確実にシールされ、それによって両方のチャンバーの間および外部に対してガスがリークすることを防止する。
【0021】
蝋付けによるシールは一般的には、一方ではたとえばイットリア化ジルコニアにおける電解質(3)である高密度材料と、他方ではインターコネクタ(9、14、15)またはセル支持体との間で達成される。
【0022】
支持体が電解質で形成され「電解質支持セル(electrolyte supported cell)」(ESC)と呼ばれている、高温型燃料電池(SOFC)の場合においては、それらの電極が電解質よりも寸法が小さい。このために、縁部に形成された蝋付けガスケットが電極と接触状態にない。
【0023】
さらに、工業的には、アノード支持型セル(Anode−Supported Cell)(ASC)の場合には、電解質の上にインターコネクタを蝋付けすることを可能とするために、カソードの寸法自体が小さくなっている。その理由は、インターコネクタと電解質のいずれもが、高密度材料で形成されているからである。したがって、ここに電極の表面積のロスに関する欠陥が存在している。
【0024】
実際のところ、電極であるアノードおよびカソードは、一般的には30〜50体積%のオーダーの多孔度を有する多孔質材料であって、そのような多孔質材料を蝋付けすることには、多くの困難と多くの欠点がある。
【0025】
いくつかの特許出願、たとえば特許文献1、特許文献2、特許文献3には、多孔質電極を蝋付けすることの可能性が記載されているが、電極を劣化させることなくそのような方法を実施できる可能性については、結晶粒のスケールでは、まったく示されていない。
【0026】
より詳しくは、電極の厚みの方向に気密性を確保するために多孔質電極とインターコネクタとの間で蝋付けガスケットを作成しようとすると、毛細管効果のためにその蝋付け合金が気孔の中に極めて長い距離(たとえば側方に数mmにまで達する可能性がある)にまで浸透する。そのことにより、電気化学的に活性な表面積が低下し、その結果、効率(yield)が低下する。
【0027】
蝋付け温度を下げてその合金の粘度を上げることによって、この電極の中への浸透を制御することは可能である。
【0028】
スタックの場合、上記方法はスタック全体にわたって温度を完全に均一にすることを必要とする。しかしながら、工業的にはそれを制御するのが極めて困難である。
【0029】
今日のところ、多孔質電極の厚みは、供給メーカーによって±10μm以内に規定されているが、その定格呼称寸法は、時間が経てば、変化したり、修正されたりする可能性がある。
【0030】
これらのリスクが存在し上述のような問題点があるものの、そのために多孔質電極の上にインターコネクタ/セルのシールを形成するという選択がなされてきた。この方向付けにより、セルの形状的な規格(geometrical specification)を特に単純化させることができる。
【0031】
しかしながら、電解スタックの寸法の連続性(chain of dimensions)を適切に制御し、それによってインターコネクタと電極との間の電気的な接触をすべて維持しようとすると、インターコネクタ/セル界面に蝋付けガスケットによって生成する過剰厚み(overthickness)が、限定されるか、さらには全く存在しないようにする必要がある。
【0032】
過剰厚みが避けられないのであれば、それぞれのセルのための蝋付けジョイントを完全に一定の厚みに制御するか、厚み用シム(スペーサーと呼ばれることもある)を追加するか、あるいは、インターコネクタを機械加工もしくはスタンプ加工してそれらの形状的な公差について極端な精度を与えるかのいずれかを実施する必要がある。
【0033】
第一の解決法は、制御がまったく不能であり、それに対して第二および第三の解決法は、製作方法が複雑となるので、避けるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】国際特許出願公開第A1−2006/086037号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開第A2−2006/127045号パンフレット
【特許文献3】国際特許出願公開第A2−2007/062117号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
そこで上述の事柄を考え合わせて、インターコネクションプレートによって分離された板状の基本セルの垂直スタック、それらのセルとインターコネクションプレートとの組合せを達成するための気密性蝋付けガスケットを含む高温型電解セルまたは高温型燃料電池を製作するための方法が必要とされるようになった。ここで前記ガスケットは、インターコネクタと多孔質電極との間に形成し、このガスケットによりその多孔質電極の中への蝋付け組成物のすべての方向、特に側面方向への浸透を完全に制御する。これにより、スタック全体を機械的に堅固な組立物とし、電極の電気化学的に活性な表面積が低下しないようにできる。
【0036】
さらに、単純かつ信頼のおける方法で、スタックの寸法の連続性(公差スタックアップ(tolerance stack−up))、たとえばその全厚みを完全に制御することが可能となり、これによって、インターコネクションプレートと電極との間の電気的な接触がすべて維持されるようにする方法も依然として必要である。
【0037】
特に、その蝋付けガスケットが過剰厚みを有さない、別の言い方をすれば、それらのガスケットの上側もしくは下側部分が、組み立てるべきインターコネクションプレート(またはセラミック支持体)の一つでもある電極の面に留まるように、スタックを形成させる方法が必要とされる。
【0038】
さらに、単純かつ信頼性があり、工程数が少なく、複雑な工程を使用したり、制御することが困難であったり、コストが高くなったりしない方法も必要である。
【0039】
本発明の目的は、n個の板状の基本セルと、n+1個のインターコネクションプレートとを交互に組み合わせた垂直スタックを含む高温型電解セルを製作するための方法を提供することである。それらの基本セルはそれぞれ、板状の高密度の電解質の面のそれぞれの上にそれぞれ位置する板状の多孔質アノードおよび板状の多孔質カソードを含み(または、それらからなり)、それらの基本セルとインターコネクションプレートとの間の接触点にガスケットが備えられていて、先に列記した必要性を満たすものである。
【0040】
本発明の目的はさらに、従来技術の組成物の欠点、限界、欠陥および不都合を有さず、そして従来技術の方法の諸問題点を解決するような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0041】
上記目的およびさらなるその他の目的を達成するために本発明によれば、
高温型電解セル「HTE」または高温型燃料電池「SOFC」を製作するための方法であって、n+1個のインターコネクションプレートと交互になっているn個の板状の基本セルの垂直スタックを含み、前記基本セルのそれぞれが、板状の高密度の電解質のそれぞれの面の上にそれぞれ位置する板状の多孔質アノードおよび板状の多孔質カソードからなっており、蝋付けジョイントが、前記基本セルと前記インターコネクションプレートとの接触点のところに備わっており、
a)前記アノードまたは前記カソードによって被覆されていない孔に相当する前記電解質のそれぞれの面の第一の表面領域を残し、前記蝋付けジョイントのために設けられた位置で前記アノードまたは前記カソードによって被覆された前記電解質の面のそれぞれの第二の表面領域を、前記被覆されていない第一の領域により区切るように、オープンワークの前記アノードおよびオープンワークの前記カソードを前記電解質の両面上にそれぞれ作成し、これによりそれぞれ厚みを有するオープンワークのアノードおよびオープンワークのカソードを含む基本セルを得る工程と、
b)融解状態において蝋付け組成物の量を、記アノードの厚みまたは前記カソードの厚みの20%を超える厚みで前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出することなく、第二の領域にある電解質の表面において前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚み中の前記多孔質部分全体を充填する程度として、蝋付け組成物層を前記第二の領域に相当する前記アノードの表面および前記カソードの表面の上に載積させ、これにより、前記蝋付け組成物を備えた基本セルを得る工程と、
c)工程a)およびb)をn回繰り返す工程と、
d)インターコネクションプレートとセルとをこの順に連続的に垂直にスタックさせる工程と、
e)工程d)をn回繰り返してから、最後のn+1番目のインターコネクションプレートをスタックさせる工程と、
f)前記蝋付け組成物を備えた基本セルおよび前記インターコネクションプレートによって形成された前記スタックを前記蝋付け組成物を融解させるのに十分な蝋付け温度に加熱し、それによって、前記蝋付け組成物が、前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚みの20%を超える厚みで前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出することなく、それらの表面から、前記第二の領域にある前記電解質の表面において前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚み中の前記多孔質部分全体を充填する工程と、
g)前記スタックを前記蝋付け温度から室温にまで冷却し、それによって、前記電解質と前記インターコネクタが前記蝋付けジョイントによって一体化される工程と、
が連続的に実施される方法が提供される。
【0042】
好ましくは、工程b)において、前記蝋付け組成物の量を、融解状態において、前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出しないようにし、
工程f)において、前記蝋付け組成物が前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出しないようにする。
【0043】
好ましくは、工程d)に先行して前記スタックの下側末端板を支持体の上にセットし、
工程e)の後に、前記スタックの上側末端板をセットする。
【0044】
オープンワークの電極を作成する第一の実施形態においては、たとえばマスク手段を用いたスクリーン印刷法によって、電解質の面のそれぞれの前記第二の領域の上にのみ、それぞれアノード材料、およびカソード材料の懸濁液(スラリー)の層を選択的に載積させ、次いで前記層を焼結させることによって、オープンワークのアノードおよびオープンワークのカソードを作成してもよい。
【0045】
好ましくは、カソード材料の懸濁液(スラリー)の層を、電解質の一方の面、好ましくは上側面の上に載積させて、前記層を焼結させ、次いで、アノード材料の懸濁液(スラリー)の層を、電解質の他方の面、好ましくは下側面の上に載積させて、前記層を焼結させるのがよい。
【0046】
オープンワークの電極の第二の実施形態においては、たとえばスクリーン印刷によって、非オープンワークの完全なアノードおよびカソードを作成し、焼結させ、たとえばレーザーアブレーション法または機械加工法によって材料を除去することによって孔を形成することにより、前記オープンワークのアノードおよびカソードを作成してもよい。
【0047】
好ましくは、電解質、アノード、およびカソードが、好ましくは共通の中心軸を有し、好ましくは同一の直径の、円板状であるのがよく、そして二つの同心リングが、第一の領域を形成する第三のリングの両側の上に、第一の領域を形成しているのがよい。
【0048】
好ましくは、マスク手段によるスクリーン印刷法によるか、手作業によるか、または注射器と空気式ディスペンサーの手段によるロボットを用いて、蝋付け組成物を、第二の領域の上に載積させるのがよい。
【0049】
その電解質は、好ましくは5〜200μm、好ましくは50〜150μm、さらに好ましくは90μmの厚みを有している。
【0050】
その電解質は、およそ10体積%未満の多孔度を有する高密度の材料から作成されていてもよい。
【0051】
好ましくは、その電解質は、ドープした酸化物セラミックス、たとえばセリウムがドープされた、イットリア化ジルコニア、スカンジア化ジルコニア、およびストロンチア化ランタンマンガナイトから選択される材料であってもよい。
【0052】
好ましくは、そのアノードおよびカソードは、10〜70μm、好ましくは40μmの厚みを有していてもよい。
【0053】
好ましくは、そのアノードおよびカソードは、たとえば30〜50体積%の多孔度を有する多孔質材料から作られてもよい。
【0054】
好ましくは、そのアノードとカソードは相互に独立して、以下のものから選択される材料から作られていてもよい:ガドリニア化セリウムニッケル酸化物サーメット(NiO−CGO)、ストロンチア化ランタンマンガナイト(La1−XSrXMnYO3−δ、すなわちLSM)、サーメット:NiO−イットリア化ジルコニア YSZ、ニッケレート(La4Ni3O10、La/Nd2NiO4)、クロモマンガナイト(LaCeSrCrMnO)、フェライト(La1−XSrXFeYO3−δ)、コバルタイト(La1−XSrXCoYO3−δ)、およびチタネート(La4Srn−4TinO3n+2−δ)。
【0055】
好ましくは、工程f)すなわち蝋付け工程は、空気中で実施してもよい。
【0056】
好ましくは、活性表面領域を失わないように、アノードとカソードと電解質とは、同一の板状表面を有していて、その表面が一致していることが好ましい。
【0057】
すでに先に挙げたような特許文献1〜3には、多孔質電極を蝋付けすることの可能性が記載されているが、電極を劣化させることなくそのような方法を実施できる可能性については、結晶粒のスケールでは、まったく示されていない。
【0058】
本発明による方法には、従来技術においてはこれまで記載されたことも示唆されたこともない特定の並びの連続工程が含まれている。
【0059】
上記した文献においては、特定の性能、特に電気的、機械的、熱的特性または重量などに関連する性能を有する金属/金属または金属/セラミック複合材料を形成するために、金属、金属合金、または液状蝋付け組成物を多孔質材料に浸透させるために使用することが一般的に記述されている。この方法においては、場合によっては蝋付け作業が必要となり、第2の材料を備えた材料が形成されることとなる。これは、二つの工程を有するという欠点を有する方法である。
【0060】
多孔質材料または発泡物の中に金属または液状金属合金を浸透させることは、その多孔質材料の多孔質部分を閉塞させて、その密度を上昇させたり、および/または緻密にしたりするという目的を有していてもよい。これについては、米国特許第B1−6,355,356号明細書にも記載されているが、この特許においては、第三の成分を蝋付けするための液状合金は使用されていない。
【0061】
浸透操作は、多孔質材料、または金属発泡物もしくはセラミックの多孔質部分を充填することと、単一の操作でそれを第三の材料と機械的に一体化させることの、二つの目的を有していてもよい。これについては、特許出願の国際公開第A2−91/13462号パンフレットおよび米国特許第B2−6,490,146号明細書に開示されている。これらの文献においては、シーリング機能、緻密化機能についての言及も検討もなく、そして液状金属の浸透を制御したり、浸透をある領域に留めたりすることを目的とした方法も示唆されていない。
【0062】
本発明による方法は、なかんずく、先に列記した必要性をすべて満たし、従来技術の方法の欠点を有さず、そして、従来技術の方法の問題点に対する解決法を提供する。
【0063】
本発明においては、その上に蝋付け組成物が塗布され溶融される電極領域を区切る、孔、オープンワーク、カットアウトを備えたオープンワークの電極を適用する。また、融解状態において、蝋付け組成物が、第二の領域におけるアノードもしくはカソードの自由表面より上に、アノードの厚みもしくはカソードの厚みの20%以上の高さで突出することなく、そして好ましくは、そのアノードもしくはカソード自由表面を超えてまったく突出することなく、前記第二の領域中の電解質の表面に至るまで、アノードの厚みもしくはカソードの厚みの中の多孔質部分全体を充填するように決められた、特定の量の蝋付け組成物が使用される。これにより、すべての方向に対して蝋付け材料の浸透が完全に制御される。
【0064】
本発明においては、孔、オープンワーク、カットアウト、開口を有するオープンワークの電極を使用することによって、蝋付け組成物、蝋付け合金の側面方向への浸透が制御される。その理由は、これらの孔が液状の蝋付け組成物の側面方向への浸透を停止させるからである。
【0065】
本発明においては、蝋付け合金が、電極の多孔質部分に、厚み方向におよそ10〜70μmで充填される。また、蝋付け合金は、電極中で側面方向には、一般的には1,000μmを超えた距離にまで浸透することなく電解質に到達する。そしてさらに、そのガスケットの上側もしくは下側部分が、電極の面に残存して、それもまたインターコネクションプレートの一部となっている。本発明においては、このことは、所定量の蝋付け組成物を使用することによって可能となっている。その量は、一般的には、電解質の前記第二の領域の表面、対応する電極の表面、および電極の厚みによって決定される容積の中に充填されるべき気孔の容積以下である。
【0066】
したがって本発明においては、蝋付け組成物の量は、アノードまたはカソードの多孔度を考慮することによって、その液状の蝋付け組成物がアノードまたはカソードと電解質との間の界面に到達するように、そしてさらに、表面に、電極(アノードまたはカソード)の厚みの20%以下の厚みに相当するだけの蝋付け材料が残るように、計算される。好ましくは、カソードの表面またはアノードの表面に蝋付け組成物が存在しない、すなわち、その蝋付け組成物が、カソードの表面またはアノードの表面を超えて突出していないのが望ましい。
【0067】
加えるべき蝋付け組成物の量は、蝋付け材料の比重から、ならびに、その第二の領域の最小の幅と厚みおよび電極の最小の多孔度で規定される浸透させるべき容積から計算される。
【0068】
したがって、本発明においては、ガスケットは、限定された過剰厚みしか有さないか、さらには過剰厚みをまったく有さず、この過剰厚みを補償するための、長時間かかる複雑な操作を実行する必要もなく、そして、寸法の連続性(公差スタックアップ)が明確に観察されるスタックが、限られた数の工程で容易に得られる。
【0069】
本発明による方法によって、リーク流速の基準に適合し、機械的に堅固な気密性スタックが得られる。
【0070】
特に、本発明による方法によって、一定の厚みを有するセルを、平坦度の欠陥の範囲内で、インターコネクタと組み合わせて、たとえば20℃〜900℃で差圧が200mbarで気密性のあるセル/インターコネクタガスケットが得られる。測定されるリーク流速は、たとえば空気中で、900℃のときに10−3NmL/分/mm未満である。
【0071】
まとめれば、以下の通りである。
− 本発明による方法によって、セルの電極の内部に浸透させた蝋付け組成物手段によって得られる気密性ガスケットを介して、高温型水電解スタックまたは高温型燃料電池の寸法の連続性(公差スタックアップ)を確実に制御する。
− その組合せ方法は、単一の工程で、そして好ましくは空気中で達成される。
− その組合せおよび気密性は、スタックされる部分に、いかなる過剰厚みを加えることもなく、単一の操作で達成され、それによって、スタックの全厚みを制御することが可能となる。
− 電極の設計によって、蝋付け組成物または蝋付け合金の浸透距離が制御できる。
− 本発明による方法は簡単であり、信頼性があり、そして低コストである。特に、電極およびスクリーン印刷法による蝋付け組成物の載積は、低コストの方法であって、産業界でも現在使用されている。
【0072】
本発明のその他の効果および利点は、添付された図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読めば、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】高温型電解セル(HTE)の基本セルの模式的垂直断面図である。
【図2】高温型電解セルHTEの基本反応器または基本モジュールの模式的垂直断面図である。
【図3】基本モジュールのスタックを含む従来からの高温型電解セルの模式的垂直断面図である。
【図4】セルと、下側インターコネクタおよび上側インターコネクタとの間のシールガスケットを示す、従来からの高温型電解セルの基本モジュールの模式的垂直断面図である。
【図5】非連続的ストリップキャスティング装置の模式的垂直断面図である。
【図6】スクリーン印刷法による載積の原理を示す模式的垂直断面図である。
【図7】円板の形状で、電解質の上に載積させたオープンワークの電極を含む、高温型電解セルの平面図である。
【図8A】本発明にしたがって、HTEスタックの基本モジュールを蝋付けする前の模式的垂直断面図であって、電極の上に載積させた蝋付け材料のビーズを示している図である。
【図8B】本発明にしたがって蝋付けした後の、図8Aのモジュールの模式的垂直断面図であって、蝋付け材料が電極の多孔質部分に浸透していることを示している図である。
【図9】本発明による方法によって作成された、高温型電解セルまたはSOFCのスタックの基本モジュールの模式的垂直断面図である。
【図10】本発明による方法によって作成された、高温型電解セルまたはSOFCのスタックの模式的垂直断面図である。
【図11】実施例2を説明する写真であって、厚みが50μm、長さが5mm、幅が各種(1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、および2.9mm)の黒色のLSMパターンの上に重ね合わせた、幅が1mmで長さが5mmの灰色のAg−Cu蝋付けストリップを示している。
【図12】図11に示した、Ag−Cuによって浸透させた、幅1mmのLSMパターンの断面を撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図12に示しているスケールは20μmを表している。
【図13】図11に示した、Ag−Cuによって浸透させた、幅1.5mmのLSMパターンの断面を撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図13に示しているスケールは20μmを表している。
【図14】実施例3において作成した、二つの環状の孔、オープンワーク、カットアウトを備えたLSM電極を示す写真である。
【図15】実施例3において作成し、図14に示したLSM電極の二つの環状の孔、オープンワーク、カットアウトの間に位置する領域の中央に載積させた、Ag−3Cu蝋付けペーストのビーズを示す写真である。
【図16】その一部が、図15(実施例3)に示されたセルを蝋付けすることによって作成され、クローファー(Crofer)22APU製の型押し加工部分、およびクローファー(Crofer)22APU製の厚み2.5mmを有する部分を有するモデルの写真である。
【図17】図16に示したモデル、部分の断面CAD図である。
【図18】図16および17に示した部分を切り出すことによって得られた部分の、光学顕微鏡を用いて撮影した写真である。図18に示しているスケールは100μmを表している。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明による方法の第一の工程においては、アノード/電解質/カソードの板状の電解セルを作成する。電解セルには、二つの電極、すなわちアノードおよびカソードが含まれており、その間に、二つの表面すなわち、上側表面と下側表面とを含む板状の固体電解質が位置している。
【0075】
別の言い方をすれば、一方ではアノードが、そして他方ではカソードが、固体電解質を挟み込んでいて、それぞれが、電解質の面の一つと直接的に接触されている。
【0076】
アノード/電解質/カソードの板状のセルの製作は、当業者に公知の方法で実施する。
【0077】
まず電解質を製作する。この電解質は一般的にはプレートであり、厚みが一般的には50μm〜200μm、好ましくは80〜90μmの厚みを有する薄い板状の層の形状をしている。
【0078】
電解質は、一般的にはセラミックス、好ましくはドープした酸化物セラミックス、たとえばセリウムがドープされた、イットリア化ジルコニア(たとえば3モル%のYを有する、3YSZと呼ばれるもの)、スカンジア化ジルコニア(ScSZとも呼ばれる)、およびストロンチア化ランタンマンガナイトから選択される材料から作られる。
【0079】
その電解質は、たとえば、図5に示されているような、キャスティングベンチ(casting bench)による非連続ストリップキャスティング法によって作成されてもよい。
【0080】
ストリップキャスティング法は、特にセラミック(1種または複数)の粉体の懸濁液(スラリー)から薄層を載積させる当業者にとって周知の方法である。より詳しくは、適切な溶媒たとえばエタノールの中のセラミック粉体の懸濁液(51)を、移動型のシュー(52)の槽の中に入れ、それを板状の固定された支持体(54)の上で一方向に移動させ(53)、これによりキャストストリップ(55)を形成し、溶媒(56)を蒸発させて乾燥し、50μm〜200μm、好ましくは80〜90μmの所定厚みを有するグリーンストリップを得る。
【0081】
ストリップキャスティングをすることにより得られるそのグリーンストリップ部分を、次いで、たとえばポンチまたは二酸化炭素レーザーの手段によって所望の形状と寸法に切り出す。
【0082】
そのグリーンストリップ部分は、多角形、たとえば長方形または正方形の形状、あるいは円板の形状であってもよい。また、ガスを循環させるための開口が含まれていてもよい。
【0083】
電解質を構成する部分の表面積、または後者の主面の表面積は、一般的には100cm2〜500cm2、好ましくは225〜400cm2である。
【0084】
次いでその電解質を焼結させる。この焼結は、オーブン中、たとえば空気中で実施してもよい。焼結温度は、一般的には1,400℃〜1,600℃としてよく、たとえば3YSZの場合にはたとえば約1,500℃である。
【0085】
この焼結操作により、蒸発によって有機成分の除去が可能となる。また、結晶粒を互いにアグロメレート化させることによって、およそ10%未満の多孔度を有する高密度の材料が得られる。
【0086】
次いで、その電解質のそれぞれの面の上での電極の製作に進む。
【0087】
電解質の一つの面の上で、第一の電極の製作を開始する。
【0088】
たとえば、電解質の上側表面の上にカソードを製作することによって、開始することができる。
【0089】
次いで、電解質の他の面の上に第二の電極を製作する。たとえば、電解質の下側表面の上にアノードを製作することが可能である。
【0090】
本発明による電極を製作するためには、まず始めに、電解質の一つの面の上に電極を構成する材料の懸濁液(スラリー)を多層化載積させることが可能であり、次いでその載積物の焼結を、一般的には空気中で実施する。
【0091】
「多層(multilayer)」という用語は、場合によっては組成および/または多孔性の面で勾配を有する同一または異なった材料の連続を意味している。当業者には、そのような多層の作成方法は公知である。
【0092】
HTEカソード(SOFCモードではアノード)とHTEアノード(SOFCモードではカソード)として好ましい材料は、それぞれ、サーメット酸化ニッケル−ガドリニア化酸化セリウム(NiO−CGO)と、ストロンチア化ランタンマンガナイト(La1−XSrXMnYO3−δ、すなわちLSM)とである。
【0093】
これらは、SOFCモードにおいては、現在最も使用されている工業材料ではあるが、その他多くの材料および組合せを考えることも可能であって、そのようなものとしては、たとえば以下のものが挙げられる:サーメットNiO−YSZ、ニッケレート(La4Ni3O10、La/Nd2NiO4)、クロモマンガナイト(LaCeSrCrMnO)、フェライト(La1−XSrXFeYO3−δ);コバルタイト(La1−XSrXCoYO3−δ)またはチタネート(La4Srn−4TinO3n+2−δ)。
【0094】
適切な技術を用いてこれらの懸濁液の載積を実施すればよい。載積物の厚みは、得られる電極が、10〜70μm、たとえば40μmの厚みを得られるようにする。
【0095】
しかしながら、本発明においては、電極層の載積は、一般的には、スクリーン印刷機またはスクリーン印刷装置の手段によってスクリーン印刷することによって実施される。
【0096】
スクリーン印刷の原理を図6に示す。これは、たとえば約40μmのサイズを有する網の目(64)を備えた金属マスク(63)および速度Vで移動するドクターブレード(65)の手段によって、電解質(62)の面(61)の上に懸濁液(スラリー)またはインキを載積させることからなる。このスラリーには、一般的に、1種または複数の無機粉(その1種または複数の粉体は、電極を構成する材料からなっている)および1種または複数の有機化合物たとえばバインダー、分散剤、および可塑剤からなる有機部分が含まれている。
【0097】
マスクはたとえば幅dの開口部(66)を備えており、電解質上の所定の領域(第二領域)の上に被覆されていない領域を残して、選択的な載積を実施することを可能とするのが好ましい。それによって、厚みのある好適に選択されたスクリーン印刷による載積物(67)が、電解質の一つの面上に得られる。
【0098】
したがって、カソードの場合においては、NiOをベースとし、CGOをベースとするインキを合成して載積させ、アノードの場合においては、LSMをベースとするインキを合成し、載積させることができる。
【0099】
焼結は、当業者が容易に決定することが可能な温度で実施する。
【0100】
一例として、電解質の一つの面の上に第一の電極材料、たとえばカソード材料の懸濁液を載積させ、次いで、その第一の材料の懸濁液を載積させたものを、たとえば空気オーブン中1200℃の温度で焼結させることを実施し、電解質−カソードのハーフセルを得るようにしてもよい。
【0101】
次いで、第二の電極材料、たとえばアノード材料の懸濁液を、その電解質の他方の面の上に載積させ、次いで、その第二の材料懸濁液を載積させた物を、たとえば空気オーブン中1050℃の温度で焼結させて、完成されたセルを得るようにしてもよい。
【0102】
加熱焼結処理をすることによって、有機部分を除去し、電解質と電極とを結合させることが可能となる。
【0103】
本発明においては、その製作された電極は、厚み方向にその電極を貫通しているカットアウト孔、オープンワークまたは開口を有するオープンワークの電極でなければならない。これらの孔、オープンワークが、電解質の面のそれぞれの上に、アノードまたはカソードによって被覆されていない表面領域を区切っている。これらの第一の被覆されていない領域は、作成された蝋付けガスケットの位置で、アノードまたはカソードによって被覆されている(一つまたは複数の)第二の被覆された表面領域、いわゆる完全(full)領域を区切っている。
【0104】
これらの孔、オープンワークは、いかなる形状を有していてもよい。ただし、それらが前記第二の領域を正確に区切り、液状の蝋付け組成物が第二の領域の中に閉じ込められて、側面方向すなわち電極の面に逃げ出すことができないようにすることが重要である。
【0105】
これらの孔、オープンワークを作成するための第一の実施形態においては、上述の懸濁液(スラリー)またはインキを選択的に載積し、その載積が、電解質のこれら第一の領域の上に及ばないようにするのがよい。
【0106】
たとえば、特殊なスクリーン印刷マスクを使用して、蝋付け合金と接触することになる第二の領域のいずれかの側の上に、第一の領域中のスクリーン印刷インキが載積できなくなるようにしてもよい。
【0107】
たとえば120mmの直径を有する円板形状の支持電解質セルの場合においては、その電極は典型的には、従来技術においては、たとえば直径110mm、厚み40μmの円板である。それらのセルはさらに、正方形であっても、あるいは長方形であってもよい。
【0108】
適切なスクリーン印刷マスクを使用することによって、図7に見られるように、電解質の直径と同じ直径、たとえば120mmを有する電極を載積させ、たとえば50μm〜1mmの幅Bの電極リング(72)の両側のたとえば10〜500μmの幅Aの二つのリング(71)の上に、いかなる材料も載積させないということも可能である。
【0109】
選択的な載積を行った後で、先に説明したような条件下で焼結を実施することは言うまでもない。
【0110】
孔、オープンワーク、カットアウトを作成するための第二の実施形態においては、完全に非オープンワークの電極を電解質の上に作成してもよい。すなわち、それらの電極が、下にある電解質の表面をすべて被覆していてもよく、その電極の表面領域は、一般的には電解質の表面領域と同じであり、後者に一致する。それらの完全な電極は、たとえば、懸濁液またはインキを、たとえばスクリーン印刷法によって載積させ、次いで焼結させることによって作成してもよい。
【0111】
次いで、その完全電極の中に孔、オープンワーク、第一の領域を生成させるために、材料を除去する。材料の除去は、たとえばレーザーアブレーション法または機械加工法によって実施してもよい。
【0112】
レーザーアブレーション法の場合においては、二酸化炭素レーザーをプログラミングして、除去することが望ましい表面(電極の孔に相当する)を走査する。レーザーによって与えられる熱出力の手段によるフォトアブレーションによって、選択された領域で材料が蒸発されることにより除去される。
【0113】
本発明に従って適用されるオープンワークの電極セルにおいては、それらの主面における電極の表面領域は、一般的には、電解質の表面領域と同じであって、一般的には後者と一致しているのが好ましい。別の言い方をすれば、電極と電解質とが一致していて、好ましくは完全に重なり合っていて、ガスケットを除いて全体として同じ表面領域を有している。このことは、電解質の上にインターコネクタを蝋付けすることを可能とするために電極特にカソードの寸法が減らされ、それによって活性な表面が少なくなる従来技術に比較して、有利である。
【0114】
本発明においては、上述のようにして作成されたオープンワークの電極を有するセル、次いで、蝋付け組成物層が、アノードおよびカソードの表面上に載積され、それが、第一の被覆されていない領域によって区切られた電解質のそれぞれの面の第二の領域を被覆している。また、蝋付け組成物の量は、それが融解状態において、アノードの厚みもしくはカソードの厚みの20%を超える厚みでアノードの表面もしくはカソードの表面を超えて突出することなく、アノードの厚みもしくはカソードの厚みで多孔質部分全体を第二の(一つまたは複数の)表面領域における電解質の表面に至るまで充填するような量である。これにより、電極およびインターコネクションプレートおよびシールの間を確実に組み合わせることができる蝋付けガスケットの位置に対応する、電極の表面の第二の定められた領域の上に、蝋付け組成物を備えた基本セルが得られる。
【0115】
蝋付け組成物の量は、それが、アノードの表面もしくはカソードの表面を超えて突出することはないものの、可能な限りこの表面にまで到達するように、別の言い方をすれば、このアノードの表面またはカソードの表面と同一表面になるようにするのが好ましい。
【0116】
蝋付け組成物の載積は、各種適切な方法で実施すればよいが、スクリーン印刷法が好ましい方法である。
【0117】
したがって、図7を参照すれば、たとえばスクリーン印刷させることによって、幅Bの電極リング(72)の上に、幅Cたとえば50μm〜1mmの蝋付け材料ビーズを載積させることが可能となる。
【0118】
このためには、あらかじめ作成しておいたセルの上に配置しておいて、幅Bの電極リング(72)の上に幅Cの蝋付け材料層を載積できるようにする、スクリーン印刷マスクを使用する。
【0119】
スクリーン印刷法によって載積させる蝋付け材料の単位長さ当たりの量(linear amount)は、0.05mg/mmのオーダーである。
【0120】
蝋付け組成物には、一般的には、蝋付けされるガスケットの表面上に均一に塗布できるようなペースト、懸濁液(スラリー)またはインキを得るための好ましくは高粘度でかつ粘着性のある液状の有機セメント、バインダーの中に従来法で懸濁させた、蝋付け材料を形成させるための構成要素の粉体を含んでいる。したがって、バインダーを選択して、蝋付け組成物が(ブルックフィールド(Brookfield)RVT/ABZ、「スピンドル(Spindle)」粘度計で測定して)、25℃、1rpmの回転速度で約500Pa・sの粘度を有するようにするのがよい。
【0121】
バインダー、セメントは、一般的にはたとえば100〜300℃の間で分解して、何も残らない。このことは、たとえばポリビニルブチラールベースおよびアセテートベースのバインダーで起こりうる。
【0122】
好ましい蝋付け組成物としては、有機バインダーとたとえば約20質量%で混合した銀および銅の粉体(たとえば質量比97/3)が挙げられる。
【0123】
載積させた蝋付け材料の厚みは、典型的な幅0.5mmの場合で、たとえば約50μmである(図8A参照)。
【0124】
この蝋付け(材料、組成物)は、電極への良好な濡れ性を有していて、空気中1050℃で、LSMおよびNiO−CGOの上でそれぞれ15度および33度の接触角を有している。空気中で蝋付けするために採用されるその他の蝋付け組成物としては、Ag−Cu、Ag−CuO、Ag−Cu−Ti、Ag−CuO−TiO2、Ag−Cu−Al、またはAg−CuO−Al2O3などの系が考えられるが、ここに列記した合金ですべてが網羅されている訳ではない。それらはすべて、YSZも含めて多くの酸化物セラミックスの上、そしてインターコネクタに使用されるものも含めて多くの金属の酸化された表面の上に粘着するという利点を有している。
【0125】
蝋付け材料は、他の方法、たとえば注射器を用いたロボット法や手作業の載積法などで載積させてもよい。
【0126】
使用するロボットは、たとえば、載積させるための蝋付けペーストを収めた注射器を備えた空気式ディスペンサーのEFD・ウルトラ(EFD Ultra)(登録商標)2400と組み合せた、スカラ(SCARA)(登録商標)JSR4400N型の3軸ロボットであってよい。吐出圧力、温度および注射器−電極の距離のパラメーターを調節して、載積量を変化させる。
【0127】
載積量を均等とするために、ロボットによって載積させる蝋付け材料の単位長さ当たりの最小量は、少なくとも0.2mg/mmである。
【0128】
注射器および空気式ディスペンサーの手段による手作業方式の載積では、ロボットを用いた載積よりも均質性がはるかに劣る。
【0129】
したがって、好ましい載積方法は、スクリーン印刷法であって、それによって蝋付け材料を最小量で載積させることが可能となる。
【0130】
n個のセルのスタックを作成したいのなら、上述と同じ方法で、蝋付け組成物を備えたn個のセルを作成する(nは、100〜1,000の整数、たとえば500である)。
【0131】
一連の方法、特に蝋付け操作は、一般的には、以下の方法で実施される。
− 高温型電解セルのスタックの下側末端板を、たとえば空気オーブン中で、支持体の上にセットする;
− インターコネクションプレートと、その載積させた蝋付け層(1層または複数)を備えたセルとを、交互に、垂直方向にスタックさせる;
− そのスタックがn個のセルからなるのなら、上述の操作をn回繰り返し、n番目のセルの上に最後のインターコネクションプレート(n+1)を置く;
− その「スタック」の上にスタックの上側末端板をセットする;
− スタックの外側に設けた工具を用いて、スタックのそれぞれの層が適切に配列できるようにする。蝋付け操作の間に部品の接触を容易とするために、スタックの上に置く重しを加えてもよい;
− 次いで、実際の蝋付け操作を実施する。
【0132】
このためには、たとえば、オーブンの温度を、室温たとえば20℃から、たとえば950℃〜1,050℃の間に含まれる蝋付け温度にまで上昇させることができる。
【0133】
この昇温は、たとえば0.5℃/分の速度で実施してよい。この温度上昇の勾配には、場合によっては、たとえば300〜500℃の温度で1時間の、(有機バインダーを除去するための)蝋付け材料のバインダー除去プラトー、および/またはたとえば800〜900℃の温度でたとえば10分間〜2時間の、スタックを加熱均質化するためのまた別のプラトーがさらに含まれていてもよい。スタックには数本の熱電対を設けておき各所の温度をモニターする。
【0134】
次いで、たとえば940〜1,100℃で、1分〜2時間、たとえば1時間の蝋付け温度でのプラトーが観察される。
【0135】
スタックは、蝋付け温度から室温たとえば20℃にまで、たとえば0.5℃/分の速度で冷却する。
【0136】
末端板およびインターコネクタに好適な材料は、クローファー(Crofer)22APU(登録商標)(チッセンクルップ(ThyssenKrupp)(登録商標)製)であるが、その他各種のフェライト鋼、たとえばF18TNb(アルセロールミッタル(ArcerolMittal)(登録商標)製)などを使用してもよい。
【0137】
たとえばヘイネス(Haynes)230(登録商標)のようなニッケルベースの超合金を使用してもよい。
【0138】
それらの末端板およびインターコネクタは、場合によっては、たとえば化学もしくは物理蒸着法、スクリーン印刷法またはプラズマ投射法によって得られる保護用の酸化物載積物を用いて被覆されていてもよい。
【0139】
プレートと電極との間の接続を確実なものとするために、スタックを軽く加圧してもよい。
【0140】
図8Aおよび8Bに見られるように、カソード(82)、電解質(83)およびアノード(84)によって形成されているセル(81)と、インターコネクタ(85、86)との間の蝋付けサイクルの際に、その蝋付け組成物(87)または蝋付け合金を、最初にその電解質の第二の表面領域(89)に相当する電極の上側表面または下側表面(88)の上に載積させる。これらの第二の領域は、電極中の第一の被覆されていない表面領域(810)によって区切られ、孔(811)に相当する。
【0141】
次いで、その蝋付け組成物は、加熱の影響の下で液状の状態に変化して(図8B)、たとえば図7、8Aおよび8Bに図示したような電極リング(72)中の(一つまたは複数の)第二の領域(89)の中に、毛管現象によって浸透し、寸法の連続性(公差スタックアップ)の制御に見合うその最初の厚みを低下させながら、その多孔性の部分に入り込み、そして同一の工程で、電解質とインターコネクタとの一体化を可能とする。
【0142】
蝋付けは、毛細管効果によって、たとえばリング(72、89)の第二の領域の端部で、X軸およびY軸方向で停止する。毛細管的浸透は、気孔の半径で制御され、この半径が無限になると、浸透長さはゼロとなる。Z軸方向においては、蝋付け量は、蝋付け組成物が、電解質たとえばジルコニア/電極界面(表面89)に(後者の多孔度も考慮にいれて)到達するように(図8B)、さらには電極の表面における蝋付けが、その電極の厚みの20%以下の厚みとなるように、好ましくは電極の表面(88)には蝋付け材料がまったく残らないように計算する。その結果、スタックの寸法の連続性(公差スタックアップ)が観察される。
【0143】
本発明による方法によって製作した高温型電解セル(またはSOFC)の基本モジュールを図9に示す。この基本モジュールには、たとえば30μmの厚みを有するカソード(92)、たとえば80〜200μmの厚みを有する電解質(93)、およびたとえば30μmの厚みを有するアノード(94)を有するセル(91)が含まれている。このモジュールにはさらに、スタックのそれぞれ上側および下側のインターコネクションプレートに属する、下側(95)および上側(96)の(ハーフ)インターコネクタも含まれている。
【0144】
これらインターコネクタ(95、96)は、本発明による方法の手段によって、これらの電極の多孔性部分に作成され、目立つような過剰厚みもなく、蝋付け材料の電極の中への側面方向の浸透も観察されない。また、堅固な蝋付けジョイント(97)によって、アノード(94)およびカソード(92)の上に直接的に組み込まれている。本発明に係る方法によって、電極の厚み方向における多孔性部分の充填と共に、蝋付け材料の側面方向への浸透も完全に制御された。
【0145】
図9に記載された厚みおよび寸法は、一例として挙げただけのものであって、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0146】
本発明に係る方法により製作された高温型電解セル(またはSOFC)のスタックを図10に示す。上側末端板(98)と下側末端板(99)との間の、図9に示したようなモジュールのスタックからなっている。
【0147】
本発明に係る方法により、高温型電解セルは単一の蝋付け工程でしっかりと組み立てることが可能である。そしてそれは、電極中への蝋付け材料の浸透が制御され、それによって完全に寸法が合わせられ、区切られたガスケットが画定されるために、正確に制御された寸法を有している。
【0148】
このスタックにはさらに、ガスの供給および排出をするための通路(910)も設けられている。
【0149】
本発明による方法は、高温型電解セル(HTE)および固体酸化物型燃料電池(SOFC)に適用できるだけではなく、高温で操作され、たとえば酸素発生器またはガス分離膜のような単位、基本セルのスタックを含む、その他各種の電気化学系にも適用できる。
【0150】
ここで、以下の実施例を参照しながら本発明を説明するが、これらは、説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【0151】
実施例:
実施例1:
56mmの直径を有するセルと、クローファー(Crofer)22APUのインターコネクタとからなる、気密性サンプルを、そのLSM電極を通して蝋付けした。
【0152】
800℃、200mbarの差圧で測定したリーク流速は、5.6×10−4NmL/分/mm未満であった。
【0153】
比較として、電解質とインターコネクタとの間に蝋付けガスケットを取り付けた同一のサンプルで測定されたリーク流速は、2×10−4NmL/分/mm未満である。
【0154】
実施例2:
厚みが50μm、長さが5mm、そして各種の幅(1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、および2.9mm)を有するLSMパターンを、イットリア化ジルコニア支持体の上にスクリーン印刷することによって作成した。
【0155】
そのLSMパターンを焼結させてから、それらのパターンの上に、幅が1mmで長さが5mmの銀−銅蝋付けストリップを、スクリーン印刷法によって重ね合わせた。
【0156】
図11の写真においては、黒色のLSMパターンの上に灰色のAg−Cu蝋付けストリップが観察できる。
【0157】
それぞれのストリップは、0.79mgの質量を有しており、このことは、蝋付け材料の単位長さ当たりの量が0.16mg/mmであることを表している。
【0158】
LSMパターンの多孔性部分の中へAg−Cu蝋付け材料を浸透させることは、空気中970℃で2分間の加熱処理によって実施した。次いで、そのジルコニアのサンプルを、パターンの半分の長さに切断し、樹脂中で被覆し、そして1μmの結晶粒になるまで研磨し、それによって、LSM中での蝋付け材料の分布を観察し、浸透を受けた多孔性のパーセントを定量した。Ag−Cuを用いて浸透させた5種のLSMパターンを、光学顕微鏡下で観察した。それらのいずれにおいても、3〜4μmの厚みを有するCuOのいくつかの島模様以外には、その表面には、金属残留物はなにも存在しなかった。それらの多孔性部分の充填レベルを、画像解析によっておおまかに評価し、次の表1に示した。
【0159】
【表1】
【0160】
これらのパターンのすべてにおいて、蝋付け材料が、毛細管浸透によって、多孔質なLSM/高密度のYSZの界面に到達し、パターンの端部で実際に停止していることが確認された。
【0161】
さらに、幅が1mmおよび1.5mmのLSMパターンについては、断面を走査型電子顕微鏡法によって観察した。
【0162】
幅1mmのLSMパターン断面を図12に示し、幅1.5mmのLSMパターン断面を図13に示す。
【0163】
実施例3:
50μmの厚みを有するLSM電極を、56mmの直径を有するイットリア化ジルコニア(YSZ)円板の上にスクリーン印刷法によって載積させ、次いで焼結させた。
【0164】
その電解質の反対側の面の上に対称的に、NiO−CGO電極をスクリーン印刷した。そのLSM電極には、二つのギャップ、環状の孔、オープンワーク、カットアウトが設けられており、電極の活性領域を後に蝋付けガスケットを作成する領域から分離することが可能とされていた(図14)。ガスケットの領域は、1.45mmの幅を有しており、その孔は、0.5mmの孔であった。
【0165】
次いで、Ag−3Cu蝋付けペーストビーズ(151)を、二つの孔(153、154)の間に位置する領域(152)の中央に、ロボット手段によって載積させた(図15)。蝋付け材料の単位長さ当たりの量は、0.22mg/mmであった。
【0166】
型押し加工部分がクローファー(Crofer)22APUで作られており、一部が2.5mmの厚みのクローファー(Crofer)22APUで作られている、このセルからなるモデルを、次いで、空気中970℃で蝋付けした。
【0167】
図16に、蝋付けした後のこのモデルを示す。
【0168】
図17は、この部分のCAD断面図であり、クローファー(Crofer)22APU製の型押し加工された部分と、オープンワークのLSM電極との間の蝋付け領域を見ることができる。
【0169】
より詳しくは、図17に示されているのは、クローファー(Crofer)22APU(171)で作られている厚い部分、クローファー(Crofer)22APU(172)で作られている型押し加工された部分、蝋付けガスケット(173)、およびオープンワークのLSM電極(174)である。
【0170】
蝋付けをした後で、その部品を、円グラフ分割(pie chart portions)の形状で6個のサンプルに切り分け、それらの断片の内の二つを、コーティングおよび研磨して、蝋付けされた界面の品質と、蝋付け材料を用いてLSMが充填されているレベルを評価した。
【0171】
切り出しの際に、それらの部分が、クローファー(Crofer)22APUの表面に位置するスピネル(Cr,Mn)3O4のところで剥離している(185)。
【0172】
光学顕微鏡下でそれらの部分の観察を行った(図18)。
【0173】
図18においては、クローファー(Crofer)22APUから作成された型押し加工部分(181)、Ag−3Cuを浸透させたLSM(182)、YSZ(183)、およびNiO−CGO(184)、さらには層剥離現象(185)も識別される。
【0174】
これらの光学顕微鏡法による観察から、以下のことがわかる:
1)LSMの表面には、蝋付け材料は残存していない;
2)蝋付け材料は、YSZにまで浸透している;
3)蝋付け材料は事実上、孔、オープンワークによって浸透が停止している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温型電解セル(HTE)または高温型燃料電池(SOFC)を製作するための方法であって、n+1個のインターコネクションプレートと交互になっているn個の板状の基本セルの垂直スタックを含み、前記基本セルのそれぞれが、板状の高密度の電解質のそれぞれの面の上にそれぞれ位置する板状の多孔質アノードおよび板状の多孔質カソードからなっており、蝋付けジョイントが、前記基本セルと前記インターコネクションプレートとの接触点のところに備わっており、
a)前記アノードまたは前記カソードによって被覆されていない孔に相当する前記電解質のそれぞれの面の第一の表面領域を残し、前記蝋付けジョイントのために備えられた位置で前記アノードまたは前記カソードによって被覆された前記電解質の面のそれぞれの第二の表面領域を前記被覆されていない第一の領域により区切るように、オープンワークの前記アノードおよびオープンワークの前記カソードを前記電解質の両面上にそれぞれ作成、これによりそれぞれ厚みを有するオープンワークのアノードおよびオープンワークのカソードを含む基本セルを得る工程と、
b)融解状態において蝋付け組成物の量を、記アノードの厚みまたは前記カソードの厚みの20%を超える厚みで前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出することなく、第二の領域にある電解質の表面において前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚み中の前記多孔質部分全体を充填する程度として、蝋付け組成物層を前記第二の領域に相当する前記アノードの表面および前記カソードの表面の上に載積させ、これにより、前記蝋付け組成物を備えた基本セルを得る工程と、
c)工程a)およびb)をn回繰り返す工程と、
d)インターコネクションプレートとセルとをこの順に連続的に垂直にスタックさせる工程と、
e)工程d)をn回繰り返してから、最後のn+1番目のインターコネクションプレートをスタックさせる工程と、
f)前記蝋付け組成物を備えた基本セルおよび前記インターコネクションプレートによって形成された前記スタックを前記蝋付け組成物を融解させるのに十分な蝋付け温度に加熱し、それによって、前記蝋付け組成物が、前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚みの20%を超える厚みで前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出することなく、それらの表面から、前記第二の領域にある前記電解質の表面において前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚み中の前記多孔質部分全体を充填する工程と、
g)前記スタックを前記蝋付け温度から室温にまで冷却し、それによって、前記電解質と前記インターコネクタが前記蝋付けジョイントによって一体化される工程と、
が連続的に実施される方法。
【請求項2】
工程b)において、前記蝋付け組成物の量を、融解状態において、前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出しないようにし、
工程f)において、前記蝋付け組成物が前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出しないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)に先行して、前記スタックの下側末端板を支持体の上にセットし、
工程e)の後に、前記スタックの上側末端板をセットすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アノード材料およびカソード材料の懸濁液の層を、たとえばマスク手段を用いたスクリーン印刷法によって、前記電解質の面のそれぞれの前記第二の領域の上にのみ選択的に載積させ、次いで、前記層を焼結させることによって前記オープンワークのアノードおよびカソードを作成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
カソード材料の懸濁液の層を、一方の面の上、好ましくは前記電解質の上側表面の上に載積させて、前記層を焼結させ、
次いで、アノード材料の懸濁液の層を、他方の面の上、好ましくは前記電解質の下側表面の上に載積させて、前記層を焼結させることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
たとえばスクリーン印刷によって、非オープンワークの完全なアノードおよびカソードを作成し、焼結させ、たとえばレーザーアブレーション法または機械加工法によって材料を除去することによって孔を形成することにより、前記オープンワークのアノードおよびカソードを作成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
マスク手段によるスクリーン印刷法によるか、手作業によるか、または注射器と空気式ディスペンサーの手段によるロボットを用いて、前記蝋付け組成物を前記第二の領域の上に載積することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電解質が、5〜200μm、好ましくは50〜150μm、さらに好ましくは90μmの厚みを有していることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電解質が、10体積%未満の多孔度を有する高密度の材料から作成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電解質が、セリウムがドープされた、イットリア化ジルコニア、スカンジア化ジルコニア、およびストロンチア化ランタンマンガナイトといったドープされた酸化物セラミックスから選択される材料であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アノードおよび前記カソードが、10〜70μm、好ましくは40μmの厚みを有していることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アノードおよび前記カソードが、30%〜50体積%の多孔度を有する多孔質材料の中にあることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アノードと前記カソードとが相互に独立して、サーメット酸化ニッケル−ガドリニア化酸化セリウム(NiO−CGO)、ストロンチア化ランタンマンガナイト(La1−XSrXMnYO3−δ、すなわちLSM)、サーメット:NiO−イットリア化ジルコニア YSZ、ニッケレート(La4Ni3O10、La/Nd2NiO4)、クロモマンガナイト(LaCeSrCrMnO)、フェライト(La1−XSrXFeYO3−δ)、コバルタイト(La1−XSrXCoYO3−δ)、およびチタネート(La4Srn−4TinO3n+2−δ)、から選択される材料中にあることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程f)または蝋付け工程を空気中で実施することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アノード、前記カソード、および前記電解質が、同一の板状の表面を有し、その表面が好ましくは合致していることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
高温型電解セル(HTE)または高温型燃料電池(SOFC)を製作するための方法であって、n+1個のインターコネクションプレートと交互になっているn個の板状の基本セルの垂直スタックを含み、前記基本セルのそれぞれが、板状の高密度の電解質のそれぞれの面の上にそれぞれ位置する板状の多孔質アノードおよび板状の多孔質カソードからなっており、蝋付けジョイントが、前記基本セルと前記インターコネクションプレートとの接触点のところに備わっており、
a)前記アノードまたは前記カソードによって被覆されていない孔に相当する前記電解質のそれぞれの面の第一の表面領域を残し、前記蝋付けジョイントのために備えられた位置で前記アノードまたは前記カソードによって被覆された前記電解質の面のそれぞれの第二の表面領域を前記被覆されていない第一の領域により区切るように、オープンワークの前記アノードおよびオープンワークの前記カソードを前記電解質の両面上にそれぞれ作成、これによりそれぞれ厚みを有するオープンワークのアノードおよびオープンワークのカソードを含む基本セルを得る工程と、
b)融解状態において蝋付け組成物の量を、記アノードの厚みまたは前記カソードの厚みの20%を超える厚みで前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出することなく、第二の領域にある電解質の表面において前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚み中の前記多孔質部分全体を充填する程度として、蝋付け組成物層を前記第二の領域に相当する前記アノードの表面および前記カソードの表面の上に載積させ、これにより、前記蝋付け組成物を備えた基本セルを得る工程と、
c)工程a)およびb)をn回繰り返す工程と、
d)インターコネクションプレートとセルとをこの順に連続的に垂直にスタックさせる工程と、
e)工程d)をn回繰り返してから、最後のn+1番目のインターコネクションプレートをスタックさせる工程と、
f)前記蝋付け組成物を備えた基本セルおよび前記インターコネクションプレートによって形成された前記スタックを前記蝋付け組成物を融解させるのに十分な蝋付け温度に加熱し、それによって、前記蝋付け組成物が、前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚みの20%を超える厚みで前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出することなく、それらの表面から、前記第二の領域にある前記電解質の表面において前記アノードの厚みまたは前記カソードの厚み中の前記多孔質部分全体を充填する工程と、
g)前記スタックを前記蝋付け温度から室温にまで冷却し、それによって、前記電解質と前記インターコネクタが前記蝋付けジョイントによって一体化される工程と、
が連続的に実施される方法。
【請求項2】
工程b)において、前記蝋付け組成物の量を、融解状態において、前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出しないようにし、
工程f)において、前記蝋付け組成物が前記アノードの表面または前記カソードの表面を超えて突出しないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)に先行して、前記スタックの下側末端板を支持体の上にセットし、
工程e)の後に、前記スタックの上側末端板をセットすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アノード材料およびカソード材料の懸濁液の層を、たとえばマスク手段を用いたスクリーン印刷法によって、前記電解質の面のそれぞれの前記第二の領域の上にのみ選択的に載積させ、次いで、前記層を焼結させることによって前記オープンワークのアノードおよびカソードを作成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
カソード材料の懸濁液の層を、一方の面の上、好ましくは前記電解質の上側表面の上に載積させて、前記層を焼結させ、
次いで、アノード材料の懸濁液の層を、他方の面の上、好ましくは前記電解質の下側表面の上に載積させて、前記層を焼結させることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
たとえばスクリーン印刷によって、非オープンワークの完全なアノードおよびカソードを作成し、焼結させ、たとえばレーザーアブレーション法または機械加工法によって材料を除去することによって孔を形成することにより、前記オープンワークのアノードおよびカソードを作成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
マスク手段によるスクリーン印刷法によるか、手作業によるか、または注射器と空気式ディスペンサーの手段によるロボットを用いて、前記蝋付け組成物を前記第二の領域の上に載積することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電解質が、5〜200μm、好ましくは50〜150μm、さらに好ましくは90μmの厚みを有していることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電解質が、10体積%未満の多孔度を有する高密度の材料から作成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電解質が、セリウムがドープされた、イットリア化ジルコニア、スカンジア化ジルコニア、およびストロンチア化ランタンマンガナイトといったドープされた酸化物セラミックスから選択される材料であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アノードおよび前記カソードが、10〜70μm、好ましくは40μmの厚みを有していることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アノードおよび前記カソードが、30%〜50体積%の多孔度を有する多孔質材料の中にあることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アノードと前記カソードとが相互に独立して、サーメット酸化ニッケル−ガドリニア化酸化セリウム(NiO−CGO)、ストロンチア化ランタンマンガナイト(La1−XSrXMnYO3−δ、すなわちLSM)、サーメット:NiO−イットリア化ジルコニア YSZ、ニッケレート(La4Ni3O10、La/Nd2NiO4)、クロモマンガナイト(LaCeSrCrMnO)、フェライト(La1−XSrXFeYO3−δ)、コバルタイト(La1−XSrXCoYO3−δ)、およびチタネート(La4Srn−4TinO3n+2−δ)、から選択される材料中にあることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程f)または蝋付け工程を空気中で実施することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アノード、前記カソード、および前記電解質が、同一の板状の表面を有し、その表面が好ましくは合致していることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−514693(P2012−514693A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544857(P2011−544857)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050082
【国際公開番号】WO2010/079184
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050082
【国際公開番号】WO2010/079184
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】
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