説明

基材の欠陥検査装置及び基材の欠陥検査方法

【課題】基材からの反射光を検出してその結果に基づいて基材の欠陥検査をおこなうにあたり、構成が簡易であると共にコスト的に有利でありながら、欠陥検査の精度を著しく向上することができる基材の欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】欠陥検査装置は、基材1へ向けて光を照射する光源2、基材1からの反射光を検出する検出手段3、並びに前記検出手段3の視野内で非測定領域5を遮蔽すると共に光源2から照射された光を検出手段3へ向けて反射する反射手段6を備える。非測定領域5について検出手段3で検出される光の輝度が反射手段6による反射光によって大きくなって、欠陥の誤検出が抑制される。非測定領域5以外については反射手段6からの反射光の影響を受けず、正確な欠陥検出をおこなうことができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種基材の欠陥検査をおこなうために使用される基材の欠陥検査装置、及びこの欠陥検査装置を使用した基材の欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種基材1の欠陥検査方法の一つとして、基材1に対して光を照射すると共に基材1からの反射光や透過光を検出し、この検出結果に基づいて欠陥の有無を判定することが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、内部に中空部9を有する窯業系の基材1を押出成形により形成し、この基材1の欠陥検査をおこなう場合には、成形不良により基材1の中空部9付近が破損して基材1の外面から中空部9までに亘る欠陥が生じることがある。このような欠陥は基材1の外観の悪化を招くだけでなく、基材1の強度を著しく低下させると共に基材1の機能も損なうため、欠陥検査は非常に重要になる。
【0004】
このような窯業系の基材1の欠陥検査は、その表面側については、押出成形後に搬送されてくる基材1を目視で観察することによりおこなうことができるが、裏面側の欠陥検査は目視では困難であり、また基材1の裏面を確認するために基材1をひっくり返すと煩雑な手間もかかる。そこで、基材1の裏面側については、基材1からの反射光をCCDラインカメラ14等の適宜の検出器で検出し、その結果に基づいて欠陥の有無を確認することが考えられる。この場合、基材1の欠陥検査を容易におこなうことができる。
【0005】
図8,9は、窯業系の基材1の欠陥検査をおこなうための欠陥検査装置の一例を示す。この欠陥検査装置には、押出成形により形成された基材1を連続的に順次搬送するローラコンベア13が設けられている。また、ローラコンベア13上の基材1の裏面側には、蛍光管や発光ダイオードランプ等の光源2が配置され、この光源2から基材1の裏面に向けて光が照射される。また、ローラコンベア13上の基材1の裏面側には、基材1からの反射光を検出するCCDラインカメラ14が配置されている。
【0006】
このような欠陥検査装置では、ローラコンベア13により基材1が搬送されると共に、この基材1の裏面に光源2から光が照射され、反射光がCCDラインカメラ14で検出される。この反射光の検出結果が適宜の画像処理技術で処理されることで、基材1の裏面上における反射光の輝度の位置分布が導出されると共に、基材1の裏面上における、前記輝度が所定の閾値を下回る位置で、欠陥が生じているものと判定される。
【0007】
このような欠陥検査装置を用いて基材1の欠陥検査をおこなう場合、確実な検査のためには、CCDラインカメラ14の視野は基材1の幅よりも広く設定される。これにより、基材1の一端から他端に亘る領域がCCDラインカメラ14の視野内に確実に入るようになる。
【0008】
しかし、このようにCCDラインカメラ14の視野を広くすると、視野内には基材1の外側方にある基材1が存在しない領域(背景領域26)も収まってしまう。この場合、背景領域26からは反射光が返ってこないため、CCDラインカメラ14で検出される輝度が閾値を下回り、背景領域26が欠陥と誤認されてしまうおそれがある。
【0009】
また、基材1の外面では光の正反射だけでなく拡散反射も生じ、CCDラインカメラ14では正反射光と共に拡散反射光が検出される。しかし、背景領域26では光の反射が生じないため、基材1の両側の端縁部分について検出される反射光中には拡散反射光の成分が少なくなる。この結果、基材1の両側の端縁部分について検出される反射光の輝度は低くなり、この部分に欠陥が存在すると誤認されてしまうおそれがある。
【0010】
このような欠陥の誤認を、画像処理の結果から欠陥を判定する際のプログラミング処理により防ぐことも考えられる。しかし、その場合は基材1の種類を変更するごとにプログラムの変更を要し、また現在の高速度高解像度処理の主流であるFPGA(Field Programmable Gate Array)を備える画像処理装置では、プログラムの変更のために高度な専門知識が必要とされるため、プログラミング処理による欠陥の誤認防止は容易なものではない。
【0011】
そこで、上記問題を解決するための簡易な手法として、図8,9に示すように欠陥検査装置に補助光源27を設けることが考えられる。補助光源27は、基材1の裏面側における、CCDラインカメラ14の視野内の両端部に配置され、CCDラインカメラ14に向けて光を照射する。
【0012】
この場合、CCDラインカメラ14の視野内では基材1の両側の背景領域26と重なるように補助光源27が配置され、背景領域26について検出される光の輝度が高くなって、背景領域26が欠陥と誤認されることがなくなる。また、CCDラインカメラ14の視野内において、基材1の両側の端縁部分にも重なるように補助光源27が配置されていれば、基材1の両側の端縁部分について検出される光の輝度も高くなり、この部分に欠陥が存在すると誤認されることがなくなる。
【0013】
尚、補助光源27を基材1の両側の端縁部分と重ねる場合には、この部分の欠陥検査をおこなうことができないが、この部分の欠陥検査をする必要がなければ特に問題はない。例えば、図3に示されるような中空部9を有する基材1の裏面の欠陥検査をおこなう場合には、基材1における中空部9が形成されている領域(測定領域4)の欠陥検査をおこなう必要があるが、基材1の両端部の中空部9が形成されていない領域(端部領域10)については欠陥検査をおこなう必要はなく、この端部領域10と補助光源27とを重ねるようにすればよい。
【0014】
図7(b)は、上記のような補助光源27を使用して欠陥検査をおこなう場合に得られる、基材1上の輝度の分布の一例を示す。図7(b)における縦軸は輝度を、横軸はCCDラインカメラ14の視野内における幅方向位置をそれぞれ示す。この図7(b)に示すように、視野内の幅方向位置の両側では補助光源27によって輝度が高くなっており、この部分で輝度が低くなって欠陥が存在すると誤認されることがなくなる。また、欠陥が存在する位置では図7(b)中の符号Aに示すように輝度が低くなって閾値を下回り、これにより欠陥が検出される。
【0015】
しかしながら、このように欠陥の誤認防止のためだけに蛍光管や発光ダイオードランプ等からなる補助光源27を設けることは、設備投資やメンテナンスコストの過剰な増大を招いてしまい、またこの補助光源27を点灯させるための電力が必要となってランニングコストの過剰な増大を招いてしまう。
【0016】
また、補助光源27から照射される光の一部は基材1へ向かってしまい、この光が基材1の外面で反射してCCDラインカメラ14で検出されてしまうという問題もある。この場合、図7(b)に示すように、背景領域26と端部領域10とを併せた非測定領域5の内側で、輝度がなだらかに変化しながら低くなるような輝度の分布が生じてしまう。このように輝度がなだらかに変化する領域では、検出される輝度は本来の基材1からの反射光よりも高くなってしまい、この領域で欠陥が生じていても検出することができなくなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−61955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基材からの反射光を検出してその結果に基づいて基材の欠陥検査をおこなうにあたり、構成が簡易であると共にコスト的に有利でありながら、欠陥検査の精度を著しく向上することができる基材の欠陥検査装置及び基材の欠陥検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る基材1の欠陥検査装置は、基材1へ向けて光を照射する光源2、基材1からの反射光を検出する検出手段3、並びに前記検出手段3の視野内で非測定領域5を遮蔽すると共に光源2から照射された光を検出手段3へ向けて反射する反射手段6を備えることを特徴とする。
【0020】
非測定領域5とは、基材1における欠陥の検査対象となる領域以外の領域をいう。基材1が存在しない領域は非測定領域5に含まれる。また基材1の外面における一部の領域が欠陥検査の対象とならない場合は、前記一部の領域も非測定領域5に含まれてよい。
【0021】
このため、非測定領域5について検出手段3で検出される光の輝度が反射手段6による反射光によって大きくなって、非測定領域5について欠陥が誤検出されることがなくなり、また非測定領域5以外については反射手段6からの反射光の影響を受けず、正確な欠陥検出をおこなうことができるようになる。また、基材1の種類を変更する場合には、その基材1に応じて反射手段6を取り替えるなどすれば正確な欠陥検査をおこなうことが可能となり、基材1の変更に対する対処が容易なものとなる。
【0022】
本発明に係る基材1の欠陥検査装置は、基材1を搬送する搬送手段7を具備し、上記反射手段6として、前記搬送手段7により搬送される基材1の幅方向の端縁位置の変化に追随して基材1の搬送方向と交差する方向へ移動する反射板8が設けられていることが好ましい。
【0023】
この場合、基材1を搬送しながらこの基材1の欠陥検査をおこなうことができると共に、搬送中の基材1の幅方向の位置変動に応じて反射板8の位置を調整することができるようになる。
【0024】
本発明に係る基材1の欠陥検査方法は、上記欠陥検査装置を用い、内部に中空部9を有する基材1の裏面の欠陥検出をおこなうことを特徴とする。
【0025】
このため、目視では難しい基材1の裏面の欠陥検査を容易におこなうことができると共に、基材1の強度や機能の著しい低下を招く中空部9付近の欠陥の検査をおこなうことができるようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、基材からの反射光を検出してその結果に基づいて基材の欠陥検査をおこなうにあたり、簡易な装置構成とすると共に設備投資やメンテナンスコストを抑制しながら、欠陥の誤検出や欠陥の検出漏れを抑制し、欠陥検査の精度を著しく向上することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】同上の実施の形態の一例を示す概略の断面図である。
【図3】同上の実施の形態の一例において欠陥検査に供される基材の一例を示す正面図である。
【図4】同上の実施の形態の一例を示す、一部の斜視図である。
【図5】同上の実施の形態の一例における反射板の構造を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
【図6】(a)乃至(c)は同上の実施の形態の一例の動作を示す平面図である。
【図7】(a)は同上の実施の形態の一例における基材の輝度分布の測定結果を示すグラフ、(b)は従来技術の一例における基材の輝度分布の測定結果を示すグラフである。
【図8】従来技術の一例を示す概略図である。
【図9】同上の従来技術の一例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について説明する。
【0029】
検査対象である基材1としては、種々のものが挙げられるが、本実施形態では特に図3に示されるような中空部9を有する窯業系の基材1が挙げられる。
【0030】
このような窯業系の基材1としては、例えばセメント系成形材料を押出成形し、或いは更にプレス成形を施すことで得られる生板や、この生板を養生硬化することにより得られる硬化板が挙げられる。
【0031】
上記セメント系成形材料は、例えばセメントにシリカ、補強繊維、その他の混入物をブレンドし、これに水を混合することで調製される。
【0032】
セメントとしては、ポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメントなど公知のセメントが使用される。
【0033】
シリカ成分としては、比表面積の大きい粉末シリカが、基材1の靱性向上の面で好ましく、例えば比表面積4000cm2/gの粉末シリカが好ましい。シリカ成分の含有量はセメント100質量部に対して20〜120質量部の範囲が好ましい。この含有量が20質量部未満では基材1に充分な強度が付与されなくなるおそれがあり、またこの含有量が120質量部を超えるとセメント系成形材料の押出成形性が悪くなるおそれがある。
【0034】
補強繊維としてはL材、N材、ラミー、リンターなどのパルプ繊維や、ビニロン、ポリプロピレン等から選ばれる一種又は二種以上の繊維が用いられる。この補強繊維の含有量はセメント100質量部に対して5〜25質量部の範囲であることが好ましい。この含有量が5質量部未満では基材1の強度が充分に得られないおそれがあり、またこの含有量が25質量部を超えるとセメント系成形材料の成形性が悪くなるおそれがある。
【0035】
その他の混合物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤、樹脂系の中空体、シラスバルーン、パーライト等の軽量化材、フライアッシュ等の粉体などが挙げられる。これらの混合物は、必要に応じてセメント系成形材料中に配合される。
【0036】
また、水の含有量はセメント100質量部に対して100〜150質量部の範囲であることが好ましい。
【0037】
このような中空部9を有する基材1は、成形不良により基材1の中空部9付近が破損して基材1の外面から中空部9までに亘る欠陥が生じることがある。このような中空部9付近の破損を特に欠陥として検出する場合には、基材1における欠陥検査の対象となる領域(測定領域4)は、中空部9が形成されている領域であり、基材1の両端部の中空部9が形成されていない領域(端部領域10)は、欠陥検査の対象としなくてもよい。
【0038】
図1,2に、基材1の欠陥検査装置の構成の一例を示す。この欠陥検査装置は、特に基材1の裏面における欠陥検査をおこなうものであり、搬送手段7、光源2、検出手段3、及び反射手段6を備える。
【0039】
搬送手段7は検査対象である基材1を搬送する。本実施形態では搬送手段7は、平行並列な一対の枠体11と、枠体11間に設けられた複数の搬送ローラ12とを備えるローラコンベア13で構成されている。このローラコンベア13上で基材1が水平方向に順次連続的に搬送される。
【0040】
光源2は、搬送手段7で搬送される基材1の外面に向けて光を照射する。光源2は例えば蛍光管や発光ダイオード等で構成される。この光源2はローラコンベア13の下方に配置され、基材1の裏面側へ向けて光を照射可能なものである。
【0041】
また、検出手段3は基材1側からの反射光を検出するものであり、本実施形態ではCCDラインカメラ14が設けられている。このCCDラインカメラ14により基材1側からの反射光が検出される領域(視野)は、基材1の搬送方向に対して交差する方向の一端から他端にまで亘るものであり、基材1の両側の外側方における基材1が存在しない領域(背景領域26)も含まれる。CCDラインカメラ14はローラコンベア13で搬送される基材1の下方に配置され、光源2から基材1の裏面側へ向けて照射された光の、前記基材1の裏面からの反射光を検出するものである。CCDラインカメラ14で検出される反射光の、基材1の裏面からの反射角度は所定の角度、例えば40°に設定される。
【0042】
反射手段6としては、光源2から照射される光を基材1の外面よりも高い反射率で反射する反射板8が好ましい。反射板8は金、銀、銅、アルミニウム等の金属、反射テープ、鏡、曇りガラス等の光の反射率の高い適宜の材質で形成することができるが、特に反射板8を、紫外領域から赤外領域に亘る広い波長域での反射率が高く且つ安価なアルミニウム板で形成することが好ましい。
【0043】
この反射板8は、CCDラインカメラ14の視野内において、非測定領域5を遮蔽するように配置される。非測定領域5とは、検出手段3の視野内における、基材1の欠陥検査となる領域(測定領域4)が配置されない領域であり、上記のような中空部9を有する基材1の検査をおこなう場合には、非測定領域5は背景領域26と端部領域10とを併せた領域となる。
【0044】
また、この反射板8は光源2からの光の照射を受けて、反射光をCCDラインカメラ14へ向けて反射するように形成される。
【0045】
本実施形態では、反射板8はローラコンベア13の各枠体11に取り付けられている。この反射板8は、図4,5に示されるように、可動板15とホルダ16とで構成される。ホルダ16は、ローラコンベア13における隣り合う搬送ローラ12間で、枠体11の内側面から内側方に向けて突出するように設けられている。このホルダ16は内部が中空に形成されると共に、上面に横方向(基材1の搬送方向と直交する水平方向)のスリット17が形成され、且つ内側方の端面に開口18が形成されている。可動板15は、その一端側は前記ホルダ16内に挿着され、他端側はホルダ16の端面の開口18から突出している。この状態で可動板15はホルダ16内を摺動し、横方向に移動可能となっている。ホルダ16内には、可動板15を内側方に向けて付勢する弦巻バネ等の弾性体19が内装されている。
【0046】
また、可動板15にはその上方に倣いローラ20が取り付けられている。倣いローラ20は可動板15の上面から上方に突出する鉛直方向の支軸21に取着され、且つこの支軸21を中心に回転自在に形成されている。また、可動板15の上面と倣いローラ20の下面との間には隙間が形成されており、この隙間において、支軸21がホルダ16のスリット17内に差し入れられている。このため、倣いローラ20はホルダ16の上方に配置される。可動板15及びホルダ16は搬送ローラ12の上端よりも下方に配置され、倣いローラ20は搬送ローラ12の上端よりも上方に突出するように配置される。また、倣いローラ20の内側端から可動板15の内側の端面までの間の横方向寸法は、基材1の端部領域10の幅寸法とほぼ同一となるようにする。
【0047】
また、本実施形態では、搬送手段7上の所定位置に基材1の前端が達したことを検出する位置検出器22が設けられている。前記位置検出器22としては例えば光電センサが挙げられる。また、搬送手段7に沿って、基材1上の欠陥が検出された箇所をマークするマーキング手段23も設けられている。マーキング手段23としては、例えば基材1上の欠陥が検出された箇所に向けて塗料を噴射するスプレーノズルが挙げられる。
【0048】
また、この欠陥検査装置には、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備える画像処理部24と、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)等で構成される制御部25とが設けられている。画像処理部24は、CCDラインカメラ14による検出結果を取り込み、この検出結果を適宜の画像処理技術により処理することで欠陥を検出するものである。また、制御部25は画像処理部24による欠陥の検出結果に基づいてマーキング手段23を制御し、基材1上の欠陥に対応する箇所をマーキングするものである。
【0049】
このような欠陥検査装置を用いた基材1の欠陥検査について説明する。
【0050】
まず、押出成形等により形成された中空部9を有する基材1を、ローラコンベア13で搬送する。ローラコンベア13上では、基材1の裏面に光源2から光が照射される。この光は基材1の裏面で反射されて、CCDラインカメラ14で検出される。また、CCDラインカメラ14の視野内における、基材1の両端部周辺では、基材1の裏面側に反射板8が配置され、この反射板8で基材1の端部領域10及び背景領域26が遮蔽されている。この反射板8は光源2から照射される光をCCDラインカメラ14に向けて反射する。
【0051】
CCDラインカメラ14による反射光の検出結果のデータは画像処理部24へ送られ、適宜の画像処理が施されて、欠陥が検出される。
【0052】
画像処理部24では、例えばCCDラインカメラ14による反射光の輝度の検出結果に基づいて、図7(a)に示すような輝度の分布が導出される。図7(a)の縦軸は反射光の輝度を、横軸はCCDラインカメラ14の視野内における幅方向位置をそれぞれ示す。このような輝度の分布は、基材1の搬送に伴って基材1に対してCCDラインカメラ14の視野が相対的に移動し、それに伴って順次導出される。このため基材1の裏面の全体に亘って輝度の分布が導出される。画像処理部24は、このような輝度の測定結果に基づき、輝度の値が、符号Aで示されるように所定の閾値を下回る場合を、欠陥と判定する。
【0053】
この図7(a)に示す輝度の分布では、CCDラインカメラ14の視野内の両側の端部で反射板8からの反射光が検出されることで、端部領域10と背景領域26とを併せた非測定領域5において反射光の輝度が大きくなっている。このため、この非測定領域5についてCCDラインカメラ14で検出される反射光の輝度が低くなることが防止され、欠陥の誤検出が防止される。
【0054】
また非測定領域5よりも内側の測定領域4については、CCDラインカメラ14で基材1からの反射光が検出されるが、非測定領域5と測定領域4との間の輝度の変化は、図7(b)に示す場合とは異なり、不連続となる。これは、反射板8からの反射光がCCDラインカメラ14へ向かう際、補助光源27を用いる場合のように一部の光が基材1へ向かってから基材1の測定領域4で反射してCCDラインカメラ14で検出されるようなことがないためである。このため、非測定領域5における欠陥の誤検出を防止しつつ、測定領域4における輝度が本来の基材1からの反射光よりも高くなってしまうことを防止し、欠陥の検出を更に正確におこなうことができるようになる。また、この反射光の輝度が不連続になる位置を基準にして画像処理をおこなうことにより、基材1上の欠陥の幅方向位置を正確に特定することが可能となり、またこの位置を利用した別の画像処理をおこなうことも可能となる。例えば、輝度の変化が不連続となる位置間の画素数等により製品幅の測定が可能になり、また、幅方向の欠陥位置の正確な測定が画像処理を追加することによって可能となるものである。
【0055】
また、搬送手段7が上記のような位置検出器22を備え、この検出結果が画像処理部24に取り込まれるようにすれば、画像処理部24では、前記位置検出器22による基材1の検出位置、基材1の前端が位置検出器22で検出されたタイミング、基材1の搬送速度等に基づいて、基材1の前端位置に対する欠陥の位置を導出することもできるようになり、基材1上の欠陥の位置を更に正確に特定することが可能となる。
【0056】
このような欠陥の検査結果は、例えばメモリ、ハードディスク、各種メディア等に電子データとして格納され、また必要に応じてディスプレイ等の表示部に表示されて、利用される。
【0057】
また、この欠陥検査装置では、基材1がローラコンベア13上で搬送され、その前端が反射板8の配設位置まで達すると、倣いローラ20は可動板15と共に弾性体19によって内側方へ付勢されているため、基材1の両側の端面に各反射板8の倣いローラ20が当接すると共に、この倣いローラ20は基材1が搬送するに従って回転して基材1の搬送をガイドする。この倣いローラ20の動作に伴って、可動板15は基材1の両側の端部領域10に配置されるように、反射板8の配置位置が調整される。このため、基材1の横方向位置がローラコンベア13上で変動しても、可動板15は常に基材1の端部領域10に配置されることになる(図6参照)。その結果、検出手段3による検出結果に基づく輝度の測定結果において、端部領域10と背景領域26とを併せた非測定領域5においては反射板8からの反射光によって常に反射光の輝度が大きくなると共に、測定領域4においては反射板8からの反射光によって輝度が高くなってしまうことがなくなる。これにより、欠陥検出が更に正確におこなえるようになると共に、基材1上の欠陥の位置も更に正確に導出することができるようになる。
【0058】
また、反射板8の表面粗さは、基材1の表面粗さとほぼ同じであることが好ましい。この場合、検出手段3が基材1の外面に対してどの位置にあっても、反射板8からの反射光の方が、より高輝度になる。すなわち、基材1よりも反射板8の方が光の反射率が高い場合には、基材1と反射板8の表面粗さがほぼ同じであれば、基材1及び反射板8での正反射光と拡散反射光の割合がほぼ同じとなる。このため、検出手段3で検出される基材1からの反射光が反射板8からの反射光よりも高輝度になることが確実に防止される。一方、例えば反射板8の表面粗さが基材1よりも粗い場合には、反射板8からの反射光における拡散反射光の割合が高くなり、検出手段3の位置等によっては、検出手段3で検出される基材1からの反射光の輝度が、反射板8からの反射光よりも低くなってしまうおそれがある。
【0059】
また、反射板8の内側方の先端はエッジ状に形成されることが好ましい。本実施形態では、図5に示すように、可動板15の内側方の端部の下面をテーパ状に形成することで、その内側方の先端がエッジ状になっている。この場合、検出手段3の視野内において、反射板8の内側方の先端部分の輝度が低下することを防止し、この部分で欠陥が誤検出されることを防止することができる。すなわち、反射板8の先端がエッジ状でない場合には、反射板8の先端面で光源2からの光が反射した場合、その反射光が検出手段3に向かわなくなって、反射板8の先端について検出手段3で検出される光の輝度が低くなり、欠陥が誤検出されることがあるが、反射板8の先端がエッジ状であればそのような誤検出が抑制されるものである。
【0060】
以上のように、本発明では基材1の欠陥の検出を正確におこなうことができる。本発明は、特に中空部9を有する基材1の欠陥検査に好適なものであり、これにより、基材1の強度や機能の著しい低下を招く中空部9付近の欠陥の検査をおこなうことができる。但し、本発明を中空部9を有さない基材1の欠陥検査に適用してもよい。
【0061】
また、本発明は、上記実施例のように特に基材1の裏面についての欠陥検査に好適なものである。基材1の表面の欠陥検査をおこなう場合には、搬送される基材1の表面を目視で観察してもよいが、裏面の欠陥検査を目視でおこなうには基材1をひっくり返さなければならない。しかし、本発明では目視では難しい基材1の裏面の欠陥検査を容易におこなうことができるようになる。但し、勿論基材1の表面の欠陥検査に対して本発明を適用してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では検出手段3としてCCDラインカメラ14が挙げられているが、検査対象の基材1について、画像処理技術等による欠陥検査が可能なデータを検出可能であれば、検出手段3の種類等は特に制限されない。
【符号の説明】
【0063】
1 基材
2 光源
3 検出手段
5 非測定領域
6 反射手段
7 搬送手段
8 反射板
9 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材へ向けて光を照射する光源、基材からの反射光を検出する検出手段、並びに前記検出手段の視野内で非測定領域を遮蔽すると共に光源から照射された光を検出手段へ向けて反射する反射手段を備えることを特徴とする基材の欠陥検査装置。
【請求項2】
基材を搬送する搬送手段を具備し、上記反射手段として、前記搬送手段により搬送される基材の幅方向の端縁位置の変化に追随して基材の搬送方向と交差する方向へ移動する反射板が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の欠陥検査装置を用い、内部に中空部を有する基材の裏面の欠陥検出をおこなうことを特徴とする基材の欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−175392(P2010−175392A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18398(P2009−18398)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】