説明

基材の熱的保護での熱可塑性組成物の使用

【課題】150℃以上の温度での基材の熱保護での熱可塑性組成物の使用。この熱可塑性組成物はエチレン/無水マレイン酸およびエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマーの中から選択されるポリオレフィン幹ポリマーと少なくとも一種のポリアミドグラフト鎖とから成るポリアミドブロックを有するグラフトコポリマーを主成分とするナノ構造型である。
【解決手段】上記組成物の少なくとも一層が基材上に形成されることを特徴とする。ガソリン輸送ライン用パイプまたはチューブの製造で好ましく使用される。被覆層は共押出しで基材上に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の基材の熱的保護または高温での熱的安定性を有する製品または部品の製造での、ポリアミドブロックがグラフトされた官能性エチレンコポリマーを主成分とするナノ構造の熱可塑性組成物の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記文献に記載のポリオレフィン幹ポリマーにポリアミドブロックがグラフトされたコポリマーは共連続ナノ構造を有するアロイ(alliage co-continu nanostructure)を形成している。
【特許文献1】国際特許第WO 02/28959号公報
【0003】
上記のポリオレフィンはエチレン/無水マレイン酸およびエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマーの中から選択され、このコポリマーは優れた熱機械特性を有している。この性質はこのグラフトコポリマーを可撓性エチレンポリマー等の可撓性ポリオレフィン中に再分散した場合でも保持される。このアロイは接着剤、フィルム、防水布、カレンダー製品、電気ケーブル、成形粉末(例えばスラッシュ成形用)等の用途がある。
【0004】
現在、熱的安定性および耐熱挙動を向上させるのに用いられている熱可塑性材料はポリプロピレン(PP)マトリクス中にエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)コポリマーを分散させたポリマーである熱可塑性エラストマー(例えばエクソン社のサントプレン、SANTOPRENE、登録商標)、塩素化ポリマー(アルケマ社のサンプレン、SUNPRENE、登録商標)、加硫されたスーパー熱可塑性(Super-TPV)、例えばデュポン社のETPV型およびダウ(Dow Corning Mulibase)社のTPSiV型等である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、150℃以上、さらには200℃以上でも優れた熱的安定性および耐熱挙動を示す製品が得られる、ポリオレフィンの可撓性とポリアミドの熱的挙動とを合わせ持ち、安定剤のタイプおよびレベルを有する組成物(ポリオレフィン/ポリアミド)の領域を定義することに成功した。機械特性は上記温度以下ではエージング後でもほとんど変らない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の対象は、エチレン/無水マレイン酸およびエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマーの中から選択されるポリオレフィン幹ポリマーと、少なくとも一種のポリアミドグラフト鎖とから成る、ポリアミドブロックを有するグラフトコポリマーを主成分とするナノ構造型の熱可塑性組成物の、150℃以上の温度での基材の熱保護での使用において、上記組成物の少なくとも一つの層が基材上に形成(depose)されていることを特徴とする使用にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のポリオレフィン幹ポリマーはエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸ターポリマーである。
本発明のグラフト鎖はカプロラクタム、11−アミノウンデカン酸またはドデカラクタムの残基から形成されるホモポリマーか、これら3種のモノマーの少なくとも2種の中から選択される残基から成るコポリアミドである。
ポリアミドグラフト鎖はモノ−NH2−末端を有するPA−6ポリアミドまたはモノ−NH2−末端を有するPA−6/11コポリアミドで、分子量は1000〜5000g/molであるのが好ましい。
本発明の熱可塑性組成物を形成して得られる被覆層は剛体の支持体または支持体または軟質または可撓性の基材の両方を熱的に保護する層に適している。
【0008】
「支持体または基材」という用語は任意タイプの合成ポリマー材料(熱可塑性または熱硬化性)、鉱物または植物由来の天然材料および金属材料で作られたものを意味する。
本発明は特に、ポリアミド、特にPA−11またはPA−12タイプの可撓性ポリアミドで作られた基材の被覆での本発明の熱可塑性組成物の使用に関するものである。
【0009】
本発明では被覆層を共押出で基材層上に形成する(特にパイプまたはチューブを製造する場合)。特に、このチューブまたはパイプは、PA−11および/またはPA−12タイプのポリアミドの内層と本発明の熱可塑性組成物から成る外層とを含む流体の輸送ライン、特にガソリン輸送用の2層チューブに好ましく適用される。
しかし、本発明は単層の被覆の製造に限定されるものではなく、多層の被覆、特に複合構造物の製造も含むものである。
【0010】
本発明の別の対象は、200℃以上の温度で熱的安定性を有する製品または部品の製造での、エチレン/無水マレイン酸およびエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマーの中から選択されるポリオレフィン幹ポリマーと少なくとも一種のポリアミドグラフト鎖とから成るポリアミドブロックを有するグラフトコポリマーを主成分とするナノ構造タイプの熱可塑性組成物の使用にある。
この利用分野としては特に、自動車製造時にエンジンフード下で使用される固定ジョンイトおよび部品が挙げられる。
【0011】
従来技術に対する本発明の特性および利点は下記の通り:
(1)本発明のアロイ構造は独特である(ナノ構造による安定化した共連続構造がポリオレフィンの可撓性とポリアミドの耐熱挙動とを組合せたものに与えられる)。
(2)熱的安定性、耐加水分解安定性、熱可塑性成形加工性が同時に得られる。
(3)層間の結合層無しに、二層構造を共押出で一段階で作ることができる。
【0012】
従って、利点をまとめると以下のようになる:
(1) 熱可塑性エラストマー(TPE)および塩素化ポリマー(PVC)に対する利点:
【表1】

【0013】
(2) 「超」熱可塑性加硫物に対する利点:
【表2】

【0014】
二層チューブにおける本発明被覆の利点としては、(本発明被覆層を用いることで)被覆チューブの伸びと衝撃特性がチューブ単独の場合より良くなることが挙げられる、すなわち:
(1)PAチューブがガソリンと接触しなかったので伸びは300%を超える。
(2)衝撃強度:本発明の熱可塑性組成物は延性−脆性遷移が極めて低く(シャルピーノッチ付き衝撃で<−50℃)、衝撃強度が優れている。
【0015】
以下、本発明の対象である使用で使用される熱可塑性組成物の主成分について詳細に説明する。
ポリアミドブロックを有するグラフトコポリマーはアミン末端を有するポリアミドをポリオレフィン幹ポリマーにグラフトまたは共重合によって固定された不飽和モノマー(X)の残基と反応させて得られる。
【0016】
上記不飽和モノマー(X)は例えば不飽和エポキシドまたは不飽和カルボン酸無水物にすることができ、この不飽和カルボン酸無水物の例としては無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、1,2−シクロヘキシ−4−エンジカルボン酸無水物、4-メチレン−1,2−シクロヘキシ−4−エンジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物およびX-メチルビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,2−ジカルボン酸無水物が挙げられる。無水マレイン酸を用いるのが好ましい。無水物の全部または一部を不飽和カルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸に代えても本発明の範囲を逸脱するものではない。不飽和エポキシドの例は既に述べた通りのものである。
【0017】
ポリオレフィン幹ポリマーのポリオレフィンはα−オレフィンまたはジオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテンまたはブタジエンのホモポリマーまたはコポリマーである。例としては下記を挙げることができる:
(1)ポリエチレンのホモポリマーおよびコポリマー、特にLDPE、HDPE、LLDPE(直鎖低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)およびメタロセンポリエチレン、
(2)プロピレンのホモポリマーまたはコポリマー、
(3)エチレン/αオレフィンコポリマー、例えばエチレン/プロピレンコポリマー、EPR(エチレン/プロピレンゴム)およびエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)コポリマー、
【0018】
(4)スチレン/エチレン−ブテン/スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマー(SIS)またはスチレン/エチレン−プロピレン/スチレン(SEPS)ブロックコポリマー。
(5)エチレンと、アルキル(メタ)アクリレート(例えばメチルアクリレート)等の不飽和カルボン酸の塩またはエステルまたは酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステルの中から選択される少なくとも1種の化合物とのコポリマー。コモノマーの比率は40重量%以下にすることができる。
【0019】
不飽和モノマー(X)の残基が結合しているポリオレフィン幹ポリマーは不飽和モノマー(X)がグラフトしたポリエチレンまたは例えばラジカル重合で得られるエチレンとXのコポリマーにするのが好ましい。
不飽和モノマー(X)がグラフトするポリエチレンはエチレンのホモポリマーでもコポリマーでもよい。
【0020】
コモノマーとしては以下が挙げられる:
1) α-オレフィン、好ましくは炭素数が3〜30のもの。例としては上記に挙げたものがある。このα-オレフィンを単独または2種以上の混合物の形で用いることができる。
2) 不飽和カルボン酸のエステル、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキルは炭素数が24以下)、アルキルアクリレートまたはメタクリレートの例としては特にメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルが挙げられる、
3) 不飽和カルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニル、
4) ジエン、例えば、1,4−ヘキサジエン、
5) 上記コモノマーを複数有するポリエチレン。
【0021】
複数のポリマーの混合物として混合されるポリエチレンは少なくとも50%(モル)、好ましくは75%のエチレンを含むのが好ましく、その密度は0.86〜0.98g/cm3にすることができる。MFI(190℃、2.16kgでのメルトフローインデックス)は20〜1000g/10分であるのが有利である。
【0022】
ポリエチレンの例としては下記が挙げられる:
低密度ポリエチレン(LDPE)
高密度ポリエチレン(HDPE)
直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)
超低密度ポリエチレン(VLDPE)
メタロセン触媒で得られたポリエチレン、
EPRエラストマー(エチレン−プロピレンゴム)、
EPDMエラストマー(エチレン−プロピレン−ジエンモノマー)、
ポリエチレンとEPRまたはEPDMとの混合物、
エチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマー((メタ)アクリレートの比率は60重量%以下、好ましくは2〜40重量%)
【0023】
グラフト化方法自体は当業者に公知である。
エチレン/不飽和モノマー(X)コポリマーの場合、すなわち、不飽和モノマー(X)がグラフトでない場合の不飽和モノマー(X)および必要に応じて用いられるその他のモノマーは、グラフトされるエチレンのコポリマーに関して説明した上記の中から選択することができる。
【0024】
エチレン/無水マレイン酸コポリマーおよびエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマーを用いるのが有利である。このコポリマーは無水マレイン酸を0.2〜10重量%含み、アルキル(メタ)アクリレートを0〜40重量%、好ましくは5〜40重量%含むのが好ましい。このコポリマーのMFI(190℃、2.16kg)は5〜100である。アルキル(メタ)アクリレートは上記のものにすることができる。その融点は60〜120℃である。
不飽和モノマーXは、ポリオレフィン幹ポリマーに結合した鎖の1モル当たり平均して少なくとも2モル、好ましくは2〜5モルで存在するのが有利である。この不飽和モノマーXのモル数はFTIR分光分析法で簡単に求めることができる。
【0025】
例えば、Xが無水マレイン酸で、ポリオレフィン幹ポリマーが重量平均分子量Mw=95,000g/molを有する場合は、無水物の量がXを含むポリオレフィン幹ポリマー全体の少なくとも1.5重量%、好ましくは2.5〜4重量%に相当することがわかっている。アミン末端を有するポリアミドの重量に関係があるこれらの値によって、ポリアミドブロックを有するグラフトコポリマー中のポリアミドおよび幹ポリマーの量が決まる。
【0026】
アミン末端を有するポリアミドにおける「ポリアミド」という用語は下記の縮合生成物を意味する:
(a) アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸のような1種または複数のアミノ酸またはカプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリラクタム等の1種または複数のラクタム;
(b) ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等のジアミンと、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボキシル酸等のジアシッドとの1種または複数の塩または混合物;または
(c) コポリアミドを生成する複数のモノマーの混合物。
ポリアミドの混合物を用いることもできる。
【0027】
コポリアミドはPA−6、PA−11、PA−12、6単位と11単位とのコポリアミド(PA−6/11)、6単位と12単位とのコポリアミド(PA−6/12)およびカプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸をベースとするコポリアミド(PA−6/6,6)を用いるのが有利である。これらのコポリアミドの利点はグラフト基の融点を選択できる点にある。
【0028】
重合度は広範囲に変えることができ、重合度に応じてポリアミドまたはポリアミドオリゴマになる。本明細書では両者を区別しないで用いる。
モノアミン末端を有するポリアミドの場合、下記式の連鎖停止剤を使用すれば十分である:
【0029】
【化1】

【0030】
(ここで、R1は水素または20以下の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキル基、R2は20以下の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルまたはアルケニル基、飽和または不飽和の脂環式基、芳香族基または上記の組み合わせを表す)
この連鎖停止剤は、例えばラウリルアミンまたはオレイルアミンにすることができる。
アミン末端を有するポリアミドの分子量は1000〜5000g/mol、好ましくは2000〜4000g/molにするのが好ましい。
【0031】
本発明のモノアミンオリゴマーを合成するのに好ましいアミノ酸またはラクタムモノマーはカプロラクタム、11−アミノ-ウンデカン酸またはドデカラクタムから選択される。好ましい一官能性連鎖停止剤はラウリルアミンとオレイルアミンである。
重縮合は一般に公知の通常の方法、例えば200〜300℃の温度で、真空下または不活性雰囲気下で、反応混合物を攪拌しながら行うことができる。オリゴマーの平均鎖長は重縮合するモノマーまたはラクタムと一官能性連鎖停止剤との初期モル比で決まる。平均鎖長の計算では一般に一つのオリゴマー鎖に対して一つの連鎖停止剤分子を計算する。
【0032】
不飽和モノマー(X)を含むポリオレフィン幹ポリマーへのモノアミン基を有するポリアミドオリゴマーの付加は、オリゴマーのアミン官能基と不飽和モノマー(X)との反応で行うことができる。不飽和モノマー(X)は酸基または無水基を有するのが好ましく、従って、アミドまたはイミド結合を作る。
不飽和モノマー(X)を含むポリオレフィン幹ポリマーへのアミン末端を有するオリゴマーの付加は溶融状態で実行するのが好ましい。従って、オリゴマーと幹ポリマーとを一般に押出機で230〜280℃の温度で混合することができる。押出機中での溶融物の平均滞留時間は15秒〜5分の間、好ましくは1〜3分の間にする。この付加効率を上げるためには、遊離したポリアミドオリゴマー、すなわち最終ポリアミドブロックグラフトコポリマーを作るために未反応のものを選択的に抽出するのが好ましい。
【0033】
不飽和モノマー(X)を含むポリオレフィン幹ポリマーの製造方法およびそのアミン末端を有するポリアミドへの付加は下記文献に記載されている。
【特許文献2】米国特許第3,976,720号明細書
【特許文献3】米国特許第3,963,799号明細書
【特許文献4】米国特許第5,342,886号明細書
【特許文献5】フランス特許第2,291,225号公報
【0034】
本発明の熱可塑性組成物で用いるポリアミドブロックを有するグラフトコポリマーは厚さが10〜50ナノメーターのポリアミドの薄片(lamelles)を有するナノ構造組織で特徴付けられる。
【0035】
このコポリマーは、少なくとも80℃、最高130℃で、極めて良好な耐クリープ性を有する。すなわち25kPa下では破断しない。
本発明で用いるコポリマーは押出機(単軸または二軸スクリュー押出機)、BUSSニーダー、ブラベンダーミキサー、一般には熱可塑性樹脂の混練で用いる通常の装置、好ましくは二軸スクリュー押出機を用いて溶融混合して製造できる。
【0036】
本発明で用いる熱可塑性組成物は加工助剤、例えばシリカ、エチレンビスアミド、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウムを含むこともできる。上記組成物はさらに熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、無機充填剤および着色顔料を含むこともできる。
本発明組成物は押出機中で一段階で調製できる。第1帯域にXを含む幹ポリマー(例えばエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマー)およびアミン末端を有するポリアミドを導入し、その後の複数の帯域で添加剤を導入する。全ての成分を押出機の第1帯域で導入することも可能である。
【実施例】
【0037】
本発明の実施例
下記の成分(重量部)から共連続ナノ構造アロイの形の3つの熱可塑性組成物A、B、Cを製造した。成分の含有率は[表3]に示してある。
【表3】

【0038】
LOTADER4700(登録商標)はアルケマ社から入手できるエチレン/エチルアクリレート(29wt%)/無水マレイン酸(1.5wt%)ターポリマーで、MFIは7(ASTM D 1238規格に従って2.16kgの荷重下で190℃で測定、g/10分)。
LOTADER7500(登録商標)はアルケマ社から入手できるエチレン/エチルアクリレート(17.5wt%)/無水マレイン酸(2.9wt%)ターポリマーで、MFIは70。
LOTADER3210(登録商標)はアルケマ社から入手できるエチレン/ブチルアクリレート(6wt%)/無水マレイン酸(3wt%)ターポリマーで、MFIは5。
【0039】
モノ−NH2−末端を有するPA−6の分子量は2500g/molである。
IRGANOX 1098はCIBA社から入手可能な酸化防止剤である。
IRGAFOS 168はCIBA社から入手可能な安定剤である。
これらの成分を共回転二軸スクリュー押出機LEISTRITZ(登録商標)LSM 306−34に導入した(温度範囲=240〜280℃)。得られた生成物をペレット化後、袋詰めにした。
【0040】
チューブ押出
組成物AおよびBを用いて種々の単層および二層チューブを押出し成形した。単層チューブの内径は6mm、外径は8mmである。二層チューブはアルケマ社から入手したリルサン(RILSAN、登録商標)(BESN BLACK P20 TL型)から成る内層と、上記組成物A、Bの外層(各層の厚さは1mmである)を共押出した(内径6mm、全外径10mm)。
【0041】
耐加水分解性
単層チューブ(組成物A)をテキサコ(Texaco)社から入手した水/HAVOLINE XLC混合物(エチレングリコール+添加剤)(重量で50/50)中でエージングした。この水/HAVOLINE混合物中で130℃で1000時間エージングした後の機械的特性の変化を23℃で測定した。比較試験はポリプロピレン(PP)およびエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)コポリマーをベースにしたSANTOPRENE 8000 RUBBER 8201-90型の組成物(Advanced Elastomer Systems社から市販)を用いて行った。得られた結果は[表4]に示してある。
【0042】
【表4】

【0043】
耐熱エージング性
組成物Aを用いて製造した単層チューブと、PP+EPDM組成物を用いて製造した比較例の単層チューブとを、空気中で各種温度でエージングした。23℃で測定した機械的特性の変化は[表5]および[表6]に示してある。
【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
油中の耐エージング性
単層チューブ(本発明の組成物A、B、Cを用いて製造)をPSA/ルノーD47 1924規格に従ってエージング(時々接触)した。
各チューブおよびPP+EPDM(上記)をベースにした組成物を用いて製造したチューブをエルフトロフィー(Elf Trophy)DX15W40油に23℃で15秒間接触させた後、チューブを155℃の換気オーブン内に16時間入れた。明確な変化は観察できなかった。従って、チューブをVolkswagen TL 524 35規格(横方向引張)に従って評価した。
結果は[表7]に示してある。
【表7】

【0047】
PP+EPDMをベースにした組成物とは違って、組成物A、B、Cの機械特性に対する熱エージングの影響はほとんど(または全く)ない。
【0048】
本発明のナノ構造熱可塑性組成物を熱的保護外層として有する二層構造
リルサン(RILSAN、登録商標)(BESN BLACK P20 TL型)(厚さ:1mm)から成る内層と本発明の組成物AおよびBの外層(厚さ:1mm)とを有する二層チューブを押出し成形した。チューブの内径は6mm、外径は10mmにした。
PSA D44 1959(ゴムおよびプラスチック−耐機械的摩擦性)規格およびSAE J2303(スリーブ絶縁の熱的効果)および規格に対応する特性に従ってチューブを評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン/無水マレイン酸およびエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマーの中から選択されるポリオレフィン幹ポリマーと、少なくとも一種のポリアミドグラフト鎖とから成る、ポリアミドブロックを有するグラフトコポリマーを主成分とするナノ構造型の熱可塑性組成物の、150℃以上の温度での基材の熱保護での使用において、
上記組成物の少なくとも一つの層が基材上に形成(depose)されていることを特徴とする使用。
【請求項2】
上記ポリオレフィン幹ポリマーがエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸ターポリマーである請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記ポリアミドグラフト鎖がカプロラクタム、11−アミノウンデカン酸またはドデカラクタムの残基から成るホモポリマーまたは上記3種のモノマーの少なくとも2種の中から選択される残基から成るコポリアミドである請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
ポリアミドグラフト鎖がモノ−NH2−末端を有するPA−6ポリアミドまたはモノ−NH2−末端を有するPA−6/11コポリアミドである請求項3に記載の使用。
【請求項5】
ポリアミドグラフト鎖の分子量が1000〜5000g/molである請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
基材が可撓性で且つポリアミド、特にPA−11またはPA−12型のポリアミドで作られている請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
基材上に被覆層を共押出しで形成する、特にガソリン輸送用パイプまたはチューブの製造での請求項6に記載の使用。
【請求項8】
基材がリジッド(剛体)である請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
エチレン/無水マレイン酸およびエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマーの中から選択されるポリオレフィン幹ポリマーと、少なくとも一種のポリアミドグラフト鎖とから成る、ポリアミドブロックを有するグラフトコポリマーを主成分とするナノ構造型の熱可塑性組成物の、200℃以上の温度で熱的安定性を有する製品または部品の製造での使用。

【公表番号】特表2008−529843(P2008−529843A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554601(P2007−554601)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000306
【国際公開番号】WO2006/085007
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】