説明

基材上の改良されたPVOHバリヤー性能

塗工基材及び塗工基材を製造する方法を開示する。基材の少なくとも1つの表面をポリビニルアルコールポリマーで塗工して、それら基材を耐油脂性にする。ポリビニルアルコールポリマーは、基材の塗工表面の面積に基づいて少なくとも7g/mのレベルで塗工する。別法として、塗工濃度は、基材重量の少なくとも5重量%である。コーティングは、カーテンコーティング法又は同手段により施用することができ、そしてポリビニルアルコール溶液の少なくとも1つの層を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
耐油脂性紙(Oil and Grease Resistance Paper:OGR紙)は「包装紙」の包括的カテゴリーに入る。包装材料(packaging)は、本質的には、紙、板紙、プラスチック、繊維ガラス、帆布又は布地/織物の各基材等のような広範囲に及ぶ一連の基材を包含する。ポリビニルアルコールは本質的に疎水性であり、従って油、グリース及び殆どの有機溶媒に対して高度に耐性があるという事実にもかかわらず、ポリビニルアルコール(PVOH)のOGR紙における使用は、歴史的には、市場の大きさに比較して極く少なかった。これは、ポリビニルアルコールは主としてサイズプレスによって施用され、このサイズプレスにより、基材に加えられるPVOHの量が制限され、それ故PVOHが不連続フィルムに限定されるからである。PVOHは、それがフリーであろうと、基材上にキャストされようと、連続フィルムとして油、グリース及び殆どの有機溶媒に対してバリアであることは、一定の場合には完全バリアであることは証明されている。
【0002】
PVOHは、一般的には、単純な耐脂性必要条件について澱粉の性能を改良するために使用される。しかし、より高い最終必要条件のためには、より積極的な目標規格値に関してフルオロケミカル(FC)が一般に使用される。PVOHは過去においてキャリアーとしてFC類と共に使用されたが、キャリアーとしては澱粉がはるかに多く一般に使用される。
【0003】
この発明の目的のためには、低い最終必要条件に対して高い最終必要条件とは、紙の必要条件が、低い最終必要条件よりも大きい、厳しい、又は高いということを意味する。
OGR紙は、ペットフードライナーバッグ、ポップコーンバッグライナー、電子レンジで調理できる食品用のライナー、ピザボックス、ポップコーンボックス/バッグ、バター用包装材料、パン菓子商品、ファーストフード用包装材料(例えば、ハンバーガー、ホットドッグ、フレンチフライ用容器等)のような食品包装商品で使用されるべきライナーなどの用途に主に使用される。用途としては、また、ファイアプレーススターターロッグ包装材料(fireplace starter log wraps)、シリコーン離型ライナー等も挙げることができる。
【0004】
本発明は、上記の全ての在来用途であるが、主として食品用途における使用目的に向けられ、また油(モーター油におけるような)容器及び化粧品の包装も包含することができる。バリアタイプの性質を必要としている包装材料;耐油脂性であるバリア又は(軽質流体を有する)木炭包装材料におけるような有機溶媒のバリアも本発明の着想を利用することができる。典型的な木炭包装材料は前もって流動化される(prefluidized)が、ここでその包装は流体の漏れを避ける特別のバリアを必要とする。
【0005】
他のOGRバリアは牛乳カートン素材に使用されるようなポリエチレン(PE)フィルムである。今日のPEバリアが持つ現在の問題は、それらに再パルプ化又は生物分解できる能力がないことである。従って、PVOHフィルムにはPEフィルムを超える長所がある。
【0006】
現在、装置上の制限のために、OGRマーケットにおける使用のための基材上へのPVOHの含浸量レベルは低い。一般的には、PVOH溶液は抄紙機でサイズプレスの所で施用される。サイズプレスは、紙にどのくらい多く載せることができるかに関しては、粘度によって制限される。そのため、例えば、紙に対するPVOHの典型的な含浸量レベルは、一般に、約6〜40ポンド(2.7〜18kg)/トンの含浸量に換算されるおよそ0.3〜2.0%PVOH(乾燥繊維基準の乾燥PVOH)であるだろう。サイズプレスの性状によって、溶液は浸透して紙の表面には留まらない傾向がある。このため、紙に対するPVOHの施用は、従来法では不連続フィルムの形で用いられる。言い換えると、PVOHは基材の表面に不連続領域、即ちパッチとして施用される。今日の抄紙機で多重適用できる可能性は希少かつ高価である。これは不完全なバリア性を有する基材をもたらす。これが、本発明が取り組むこの技術分野の問題の1つである。PVOHはこれらOGRグレードの紙に大きくは係わらない。この技術分野の当業者は、これらタイプのOGRベースの紙には他の多くのタイプの紙とは異なる加工処理がなされることは認めるだろう。
【0007】
市場は、現在、OGR用途におけるFC類の使用に関してはそれらの性能に満足している。FC類は露出繊維の表面エネルギーを低下させる傾向がある故に、それらFC類はフラット、クリーズ及びエッジの各試験について優れている。しかし、FC類は基材を塗工するときに使用するのには非常に高価な材料である。
【0008】
製紙工業では、とりわけ、FC類による環境及び人間に対する研究からの幾つかの負の結果のために、FC類は全て結局は市場を出るという認識がある。かくして、耐油脂性又はバリアに関して同様の又はそれより優れた性質を有する、紙又は織物工業における使用のためのFC類に代わるものの必要が存在する。
【0009】
米国特許出願第2003/0194501号明細書は、ポリビニルアルコールを含むコーティング組成物がカーテンコーターで適用される、基材を塗工する方法を開示する。この出願は、ポリビニルアルコールはコーティングゲルの形成を容易にするためにコーティング内の他の化合物と反応することができる化合物として含められることを開示する。ポリビニルアルコールを含むコーティングで基材をカーテンコーティングすることの開示については、米国特許出願第2003/0188839号及び同第2003/0194501号明細書も参照されたい。
【0010】
発明の要旨
本明細書には、塗工基材(coated substrates)及びその塗工基材を製造する方法が開示される。基材の少なくとも1つの表面がポリビニルアルコールポリマーコーティングの少なくとも1つの層で塗工される。これら基材は耐油脂性、即ち油脂バリア性を有する。ポリビニルアルコールコーティングは、基材の表面にカーテンコーター又は他の手段で施用することができる。コーティングは、基材(紙、板紙、プラスチック、繊維ガラス、帆布又は布地/織物の各基材等)の上にPVOH(どんなグレードのPVOHも許容できる)の溶液を単一パス、同時パス又は多重パスで塗工することによって形成される少なくとも1層を含む。コーティングは次に乾燥される。
【0011】
本発明で用いられる「近連続(near continuous)」とは、連続に近いこと、即ち「連続」は本質的にピンホールがないと考えられるのに対して、多少のピンホールがあるフィルムを意味し、実際の連続フィルムを意味しない。不連続又は非連続フィルムはピンホールを含んでいるフィルムを意味することが意図される。この塗工基材は、従来通りの方法(単一パス)で形成されたPVOH系OGRコーティングより大きい耐油脂性を持つ。本発明で用いられるPVOH溶液は、随意に、他のポリマーのような他の成分を含んでいることができ、かくして基材上へと塗工する溶液としてPVOHのコポリマーが利用される。PVOHは可塑剤、澱粉、ラテックス、充填材等のような添加剤を含んでいることができる。
【0012】
コーティングは2又は3以上の数の多層を含むことができる。可能な層の数は、ダイ、又はカーテンコーターと共に用いられる装置によって制限されるだけである。大体約7〜約20層であって、それら層の少なくとも1層がPVOH溶液又はPVOHコポリマー溶液であるそれら層がカーテンコーターにより単一パスで可能であると考えられる。PVOH溶液は少なくとも約1%のPVOH固形分を含んでいるが、但しそれより高いレベルを用いることもできる。
【0013】
発明の詳細
カーテンコーターは、PVOH溶液の多層を施用して、おそらくは、基材、特に紙又は板紙の基材上に、その紙に転写したり接着したりする必要なしに、単一パスでPVOHの連続乾燥フィルムを達成することができる。これは、サイズプレス、カレンダースタックボックス及びコーター(ブレード、エアナイフ、ロール、ロッド等)を利用する通常の製紙とは異なる。カーテンコーターは紙用途に関して少なくとも30年間は存在してきたが、それらは、歴史的には、写真フィルム工業又は他の高度に特化された用途にのみ使用されてきた。カーテンコーターが、PVOHを含有するOGRバリヤー紙製品を製造する際に一般に有用であることはこの工業界によっては知られていない。カーテンコーターは、この開示に従って1つ又は2つ以上のPVOHコーティング層を基材の少なくとも1つの表面上に適用するために、PVOH溶液を単一パス、同時パス又は多重パスで塗工するのに使用することができる。本明細書で説明される塗工法は、連続又は近連続であるコーティングを生成させるために用いることができる。熟語「連続」及び「近連続」は、基材上のコーティングの物理的適用範囲を説明するために用いられる。勿論、基材上のコーティングのバリア有効性は、これ以降に説明されるバリア試験法によってさらに正確に決められる。
【0014】
市場がPVOH−OGRバリアフィルムを製造する目的にカーテンコーターを使用することを考えてこなかったことは明らかである。これがそのとおりであることは、カーテンコーターが、歴史的には、写真工業における使用に、又は感熱紙を塗工することに絶たれていたのであり得ることである。
【0015】
また、PVOH溶液はカーテンコーターによる適用のための「カーテン」を形成しないだろうことがこの工業の当業者によって考えられたので、カーテンコーターは従来PVOH層を基材上に塗工するのに用いられなかったと考えられる。本明細書で説明されるように、驚くべきことに、PVOH溶液が基材を塗工するのに「カーテン」で適用することができることが確認された。
【0016】
カーテンコーターは、単一又は多数の液体層を単一パスで適用するために使用される専門の機械である;約7〜20層の範囲内、又はそれ以上の層のような多層も可能である。層の数は一般に使用される装置によって制限される。流体は層スライドダイを通過し、そのダイリップから離れ、これにより移動しているウェブ上に重力で落ちる独立液体シートが形成される。層の数は随意に拡大することができる。本出願においては、層の数は、連続又は近連続のPVOH乾燥フィルムを形成するのに必要な数によって定義することができる。
【0017】
単一パスで置かれるべき(初めのPVOH溶液層以外の)追加の層に、例えば可塑剤、透湿性改善用のPVDC、顔料、澱粉、ラテックス等がある。単一パス、同時パス又は1つのパスが重要である;製紙業者は紙を2回抄紙機に通して置くことを躊躇するからである。PVOHはOGRバリアを与える故に、PVOHが重要である。油及びグリースを遮ることができる故に連続が重要である。非連続PVOHフィルムでは、油及びグリースがそのフィルム中のピンホールから漏れ出ることがあり得る。
【0018】
カーテンコーターを使用することによって、より多くのPVOHを単一パスで適用して、他の適用技術と比較して同一の所望最終結果を達成することが可能である。カーテンコーターは、紙と接触する点の所に圧力がないから、表面を塗工する傾向がある。
【0019】
カーテンコーターは、特に商業運転において、PVOH溶液コーティングを基材の上に、有効な油脂バリア性を達成するのに十分なPVOH濃度及び含浸量レベルで適用するのに有効であることが発見された。しかし、満足すべき油脂バリア性は、PVOHの濃度及び含浸量が本明細書で説明されるレベルにある限りは、PVOH溶液を基材上にカーテンコーティング以外の技術で塗工することによっても達成できることに留意することが重要である。これらのPVOH塗工レベルは基材上で従来は実行されなかったと考えられる;これらの高いPVOH濃度又は含浸量はこれらコーティングの効果的な使用を許す様式では乾かないと考えられたからである。本明細書で説明される塗工基材及び方法の側面の1つは、驚くべきことに、そのような高いPVOH濃度又は含浸量も商業的な運転において乾かされて有効な油脂バリヤーコーティングを形成することができるということが確認されたことである。
【0020】
実験室的研究は、紙上のPVOHフィルムは油脂及び有機溶媒に対して完全なバリアであることを示した。可塑剤に関し、それらはヒートシール処理を、また困難なクリーズ試験に合格することを可能にする。
【0021】
本明細書で説明される塗工基材は、OGRフィルムの工業規格試験の多くに合格する。例えば、3Mキット試験では、12等級が達成可能な最高等級と考えられる。紙基材に積層されたPVOHのコーティングは、そのフィルムと関連したいかなる問題もなしに12等級を獲得することが見いだされた。
【0022】
1つの態様において、本明細書で説明される塗工基材は少なくとも4の3Mキット試験値を示す。第二の態様では、本明細書で説明される塗工基材は少なくとも8の3Mキット試験値を有する。更に別の態様では、塗工基材は少なくとも10の3Mキット値を示す。
【0023】
この試験は簡単であり、しかも時間がかからないように設計されている。1滴の溶媒、例えばヘプタン−トルエンブレンドの1滴が板紙の表面上に置かれ、そして約15秒で拭き取られる。溶媒がこの時間枠内に板紙に浸透しないならば、そのフィルムはこの試験に合格である。1滴のヘプタン−トルエンブレンド溶媒、及び従来のキャスティング法によって造られたPVOHフィルムを用いる実験室的研究の結果は、Oil Holdout Testの合格というものであった。この液滴は、フィルムの寿命の間にそのフィルムに浸透しないだろう。
【0024】
もう1つの重要な工業試験はクリーズ試験である。クリーズ試験は、自らの上に折り畳まれ、その折り目に沿って繊維を露出させるために、秤量されたローラーでプレスされるバリア紙を含む。FC類は、典型的には、クリーズ試験に合格し、またはそれに勝る。しかし、PVOH、澱粉等々のようなバリア材料がサイズプレスから施用される、従来通りの方法で形成されるフィルムは、一般的には、クリーズ試験に合格しなかった。典型的なOGRベース紙を用いる実験室条件下では、PVOH含浸量レベルが乾燥繊維上でおよそ5%乾量であるならば、PVOH処理は50%相対湿度のTAPPI条件下で試験されるクリーズ試験に合格することが証明された。一般に、低相対湿度条件では(屈曲性に備えるために)可塑剤がPVOHと共に必要とされることが見いだされた。
【0025】
しかし、必要な含浸量レベルは、塗工に選ばれる基材の性状に依存していることが理解される。例えば、比較的厚い基材の必要含浸量レベルは、より薄い、又は密度がより小さい基材に必要な含浸量レベルよりかなり低い可能性がある。しかし、この開示によれば、一般に、少なくとも5%のPVOH含浸量レベルが、あらゆるタイプの基材に、後で与えられる実験の評価結果によって証明される高いレベルの耐油脂性を与えることが見いだされる。もう1つの態様では、PVOHの含浸量レベルは約7〜約10%である。更に別の態様では、PVOHの含浸量レベルは約10〜約15%である。
【0026】
或いはまた、1つの態様において、満足すべき耐油脂性は少なくとも7g/mのPVOHを含んでいる基材表面コーティングにより得ることができることが確認された。第二の態様において、基材表面コーティングは約10〜約20g/mのPVOHを有する。更に別の態様では、基材は少なくとも1つの表面上に約10〜約15g/mで塗工される。
【0027】
色々なグレードのPVOHが本発明の方法により溶液として使用することができる。一般に、本明細書で説明されるPVOH溶液中には、特に低相対湿度条件では可塑剤を含めることが望ましいことが確認された。しかし、可塑剤を含まないPVOH溶液を用いて調製されたコーティングが、この開示の意図内であることが理解される。1つの態様において、本明細書で説明される製品及び方法で使用されるPVOHは、約10,000〜約200,000の範囲の重量平均分子量(M)を有する。別の態様では、PVOHは20,000〜130,000の重量平均分子量(M)を有する。1つの態様において、PVOHは約100〜約3,000の重合度(D)を有する。別の態様においては、重合度は約200〜約1,600である。
【0028】
ポリビニルアルコールはポリ(酢酸ビニル)の加水分解によって商業生産され、そして典型的には約85〜99%超の範囲の加水分解レベルを有する。本明細書で説明される製品及び方法の1つの態様では、加水分解のレベルは50〜100%の範囲である。別の態様では、加水分解度は75〜98%である。分子量及びポリマーの加水分解レベルが異なるポリビニルアルコールポリマーの組み合わせを用いている混合ポリビニルアルコールグレード品も、本明細書で説明される方法及び製品の色々な態様で用いることができる。
【0029】
この技術分野の当業者は、典型的にはPVOH溶液は蒸解サイクルを受けることを認めるだろう。また、カーテンコーティング技術のための溶液としてPVOHのコポリマーも有用である。これらに、(メタ)アクリレートと酢酸ビニルと後鹸化を許すコモノマーとの反応生成物があるだろう。本発明で使用される用語「PVOH」、「ポリビニルアルコールポリマー」及び「PVOHポリマー」は、特に記載がなければ、ポリビニルアルコールのホモポリマー、少なくとも1種のコモノマーを含むコポリマー、及びそれらのブレンドを包含する。
【0030】
1つのそのような有用なコモノマーに、ビニルアルコールと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はそのような酸の塩とのコポリマーがある。ビニルアルコール(VOH)と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はそのような酸の塩(AMPS)とのコポリマーは、酢酸ビニル(VAM)とコモノマーとしてのAMPS、遊離ラジカル生成性重合開始剤、並びにそれらコモノマー、開始剤及びそのコモノマーの共重合の結果もたらされるコポリマーの溶媒をかき混ぜながら連続供給し、得られた反応物を、該第一反応ゾーン中に、重合条件下で、その第一反応ゾーンに供給されたAMPSの主要割合が重合するのに十分な滞留時間保持し、追加のAMPS供給物を有する該第一反応ゾーンからの反応物を第二反応ゾーンに連続供給し、その反応物を第二反応ゾーン中にその第二反応ゾーンに加えられたAMPSの主要割合を重合させるのに十分な滞留時間保持し、反応物を第二反応ゾーンから連続的に取りだし、後者の反応物からVAMとAMPSとのコポリマーを分離し、そして該コポリマー中のアセテート基の主要割合を加水分解及び/又はアルコーリシスすることによって鹸化してVOHとAMPSとのコポリマーを形成することを含む工程によって製造することができる。
【0031】
他の有用なポリビニルアルコールポリマーに、エチレン、カルボン酸、Resolution Performance Products社から名称・Veo Va(登録商標)で入手できる、5個及び9〜11個の炭素原子を有するアルファ−分枝カルボン酸のビニルエステルのような分枝アルキル酸ビニルエステル、アクリルアミド類及び他のコモノマーのような少なくとも1種のコモノマーを含むコポリマーがある。本発明で使用される用語「コポリマー」は少なくとも2種のモノマー単位を含むポリマーであり、従って三元コポリマー等を包含する。
【0032】
1つの態様において、約1%から約30%までのPVOH固形分含有量を持つPVOH溶液が調製することができる。第二の態様において、PVOH溶液は約5〜約25%のPVOH固形分含有量を有する。更に別の態様では、PVOH溶液は約7〜15%のPVOH固形分含有量を有することができる。
【0033】
PVOHの外に、その溶液は添加剤に由来する含有固形分をそれら溶液中に有することができる。例えば、それら溶液は界面活性剤、可塑剤及び顔料のような添加剤を含んでいることができる。1つの態様において、これら添加剤は、溶液中において、PVOHによって与えられる含有固形分に加えて30%固形分まで寄与することができる。
【0034】
AMPS変性コポリマーを用いる実験室的研究は、真に乾燥したフィルムは標準グレードのPVOHよりも相当著しく軟らかくかつ柔軟であることを示している。このフィルムの試料が紙の表面に接着され、そしてTAPPI条件により50%相対湿度で試験される標準クリーズ試験について試験がなされた。30分の耐テレペンチン性を要求するTAPPIテレペンチンクリーズ試験で、紙上のPVOH AMPSフィルムは合格した。それはまた3Mキットフラット試験(3M Kit Flat Test)にも合格した。
【0035】
また、標準グレードのPVOHを用いるキット及びクリーズ試験(Kit and Crease tests)も行った。グレードCelvol(登録商標)325のPVOH溶液を用いて、それをガラス板上にキャスティングすることによって厚さ約1ミル(2.5×10−3cm)のフィルムを製造し、そして周囲温度において約24時間乾燥した。このフィルムはフラット試験及びクリーズ試験の両者に合格することが観察された。観察は、標準グレードのPVOHはコポリマー/coamps PVOHほど柔軟ではないことを示した。しかし、50%相対湿度で観察したフィルムにはなおも若干の屈曲性がある。
【0036】
基材コーティングの耐油脂性を測定するために頻繁に使用される次の試験法が、本明細書で説明される製品及び方法を評価するのに有用である:
TAPPI T−508 cm−99 軟質包装材料の耐クリーズ性
TAPPI T−559 pm−96 紙及び板紙の耐クリーズ性試験
油浸透時間
3Mキットフラット試験
TAPPI法 T−454 フラット試験(テレペンチンの1800秒ホールドアウトに基づく)
テレペンチンクリーズ試験(1800秒に基づく)
TAPPI T−462 cm−93 紙のひまし油浸透試験
植物油T−507試験@60℃
実験評価
表1は、カーテンコーター法で製造された37個のポリビニルアルコール塗工基材構造物の組成及び性能特性を列挙するものである。製造された塗工基材構造物の各々において、基材は1平方メートル当たり55グラムの重さを3の3Mキットフラット試験値と共に有する圧縮紙基材(densified paper substrate)であった。コーティングは、後に記載されるように、カーテンコーターで7.4〜15.1%の範囲の固形分含有量を有する水系溶液として適用された。ポリビニルアルコールポリマーは、安定なカーテンを維持するのを助けるために含められた界面活性剤と、PVOHフィルムの改良された柔軟性のためにCelvol(登録商標)107調合物中の幾らかの可塑剤とを除いて、唯一の溶解固形分であった。使用された界面活性剤はAir Products & Chemicals社から名称Surfynol SE-Fで商業的に入手できる液体であった。界面活性剤は湿量/湿量基準で0.075〜0.15%の濃度で含められた。可塑剤は、All Chem Industries社から商業的に入手できるグリセリンであって、PVOH溶液に対してCelvol(登録商標)107の乾量部数に基づいて10%湿量部数で加えられた。
【0037】
各溶液は、Celanese Chemicals社から名称・Celvol(登録商標)107、Celvol(登録商標)125及びCelvol(登録商標)205で入手できるポリビニルアルコールポリマー製品の1種又は2種以上を用いて調製された。これらのポリビニルアルコールポリマーはホモポリマーのグレードである。Celvol(登録商標)107は98.0〜98.8%の加水分解度、固形分4.0%及び20℃にて5.5〜6.6cpの粘度、並びに5.0〜7.0のpHを有し;Celvol(登録商標)125は99.3%の加水分解度、固形分4.0%及び20℃にて28.0〜32.0cpの粘度、並びに5.5〜7.5のpHを有し;そしてCelvol(登録商標)205は87.0〜89.0%の加水分解度、固形分4.0%及び20℃にて5.2〜6.2cpの粘度、並びに4.5〜6.5のpHを有する。
【0038】
Celvol(登録商標)125を含む調製された溶液は7%のPVOH固形分含有量を有し、Celvol(登録商標)107を用いて調製された溶液は15%の固形分含有量を有し、そしてCelvol(登録商標)205を含む溶液は13%の固形分含有量を有していた。
【0039】
表1に示されるように、塗工基材のあるものは、認定PVOH溶液を単一層で基材の第一表面上にカーテンコーティングすることによって製造された。或いはまた、表1に示されるように、基材構造物のあるものは、基材の第一表面上に多層をカーテンコーティングすることによって製造された。カーテンコーターは、PVOH溶液の必要量を送出して、表1に示される、基材の表面上におけるPVOHのコーティング濃度又は含浸量レベルを達成するように調整された。PVOH溶液の施用に続いて、基材は複数のステーションにおいて、表1に示される温度で乾燥された。
【0040】
表1に示されるように、TAPPI植物油試験の結果はある特定の典型的な塗工基材について採集された。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表1に報告されているデータを吟味することによって、満足すべき耐油脂性能を達成するには、高レベルのポリビニルアルコールポリマーを含んでいるコーティングが必要であることが分かる。例えば、3Mキット試験データによって示される、満足すべき耐油脂性を達成するには、少なくとも約7%の範囲のPVOH含浸量百分率レベルが必要であったことが分かる。この含浸量百分率は満足すべきバリアについて最低で少なくとも5%含浸量であることを明らかにした上記参照の実験結果よりも高いが、このバリア性能の相違は塗工された基材、及びPVOHの多層が塗工された方法の違いから来ていると考えられる。前に参照した実験データにおいては、基材は55g/mの重さを有する紙であった。前に参照した実験研究における塗工方法に関して、適用されたPVOH溶液の各湿潤多層は次の層が適用される前にオーブン乾燥された。ところが、表1に報告された塗工基材を製造するために用いられたカーテンコーター法では、適用できる場合は、湿潤多層が層間で乾燥することなく単一パスで施用されたのである。これは表1のデータについて最も有望な理由であると考えられる。
【0044】
或いはまた、ポリビニルアルコールポリマーコーティングの濃度を塗工基材表面の表面積の関数として精査すると、優れた耐油脂性能を達成するには少なくとも7g/mの濃度のポリビニルアルコールポリマーが必要であることを明らかにしている。さらに、表1のデータは、また、優れたバリア性能は約10〜約20g/mのPVOHコーティングにより得られることを確認している。
【0045】
耐油脂性の決定要因は、基材表面上におけるポリビニルアルコールポリマーの総濃度である。言い換えると、基材の表面上にポリビニルアルコールポリマーの多層を与えても向上した耐油脂性は観察されない。例えば、ポリビニルアルコールポリマーの基材表面上への10g/mの濃度での単一コーティングは各々5g/mの濃度でのポリビニルアルコールポリマーの2つのコーティングと同じ耐油脂性を与える。しかし、ポリビニルアルコールコーティングは塗工基材の一つの表面又は両表面に多層で施用されることもこの開示の意図内である。
【0046】
表1のデータは、また、Celvol(登録商標)205PVOHの特性を有するポリビニルアルコールポリマーに基づくコーティングより、Celvol(登録商標)107PVOHの特性を有するポリビニルアルコールポリマーに比較して、より一貫性のあるバリア性能が達成されたことを明らかにしている。例えば、10個の最高性能コーティングの内9個がCelvol(登録商標)205に由来するものであった。
【0047】
また、異なるPVOH溶液の2つの層が基材表面に施用され、そしてそれら層の1つがCelvol(登録商標)205に基づく場合に、Celvol(登録商標)205が下層として使用されたときにより良好な性能が達成されたことが観察される。これはCelvol(登録商標)205が相対的に柔軟なコーティングを形成する結果であると考えられる;何故ならCelvol(登録商標)205コーティングは幾らか感水性であるからである。それ故、Celvol(登録商標)205コーティングの相対的柔軟性を、感水性の影響を最小限に抑えながら利用するために、Celvol(登録商標)205コーティングをもう1つのPVOHコーティングの保護コーティングの下に配置することによってより良好な性能が達成された。しかし、勿論、Celvol(登録商標)205系コーティングは表面コーティングであってもよいことや、或いは単一基材上に多層で施用できることもこの開示の意図内である。
【0048】
本明細書で参照される全ての特許及び刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に含められるものである。
本発明及びその利点を詳細に説明してきたが、次の特許請求の範囲によって定義される発明の精神と範囲から逸脱することなく色々な変更、置換及び改変がなされ得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)第一及び第二の表面を有する基材;
(ii)該基材の第一表面の表面積に基づいて少なくとも7g/mのポリビニルアルコールポリマーを含む、該基材の第一表面上にあるコーティング
を含む塗工基材。
【請求項2】
コーティングが、カーテン塗工されたコーティングである、請求項1記載の塗工基材。
【請求項3】
基材が、紙材料、板紙材料、プラスチック材料、繊維ガラス材料、帆布材料及び織物材料からなる群から選ばれる材料の少なくとも1つの層からなる、請求項1又は2に記載の塗工基材。
【請求項4】
基材の第一表面が、植物油に対して少なくとも240分の耐性を示す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗工基材。
【請求項5】
基材の第一表面上のコーティングが、該基材の第一表面の表面積に基づいて10g/m〜15g/mのポリビニルアルコールポリマーを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗工基材。
【請求項6】
基材が、紙及び板紙から選ばれる材料よりなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗工基材。
【請求項7】
基材の第一表面が、少なくとも4のキット試験値を示す、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗工基材。
【請求項8】
基材が紙である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗工基材。
【請求項9】
ポリビニルアルコールポリマーが、ホモポリマー、エチレン、メチルアクリレート、カルボン酸、アルキル酸ビニルエステル、アクリルアミドから選ばれる少なくとも1種のコモノマーを組み込んだコポリマー、及びそれらのブレンドからなる群から選ばれる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗工基材。
【請求項10】
基材の第一表面が、少なくとも1800のテレペンチンクリーズ試験値を示す、請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗工基材。
【請求項11】
コーティングが、87.0〜89.0%の加水分解度、並びに4.0%固形分及び20℃にて5.2〜6.2の粘度を有するポリビニルアルコールポリマーからなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の塗工基材。
【請求項12】
基材の第一及び第二の表面が、該基材の第一表面及び第二表面の表面積に基づいて10g/m〜15g/mのポリビニルアルコールポリマーを含むコーティングを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の塗工基材。
【請求項13】
(i)第一及び第二の表面を有する基材;
(ii)該基材の重量に対して少なくとも5重量%のポリビニルアルコールポリマーを含む、該基材の第一表面上にあるカーテン塗工コーティング
を含む、塗工基材。
【請求項14】
塗工基材を製造する方法であって、第一及び第二の表面を有する基材を、該基材の第一表面の表面積に基づいて少なくとも7g/mの濃度にて、該基材の第一表面上にポリビニルアルコールポリマーで塗工する工程を含む、前記方法。
【請求項15】
基材の第一表面をポリビニルアルコールポリマーで塗工する工程が、ポリビニルアルコールポリマーを含む水溶液をカーテンコーターにより該基材の第一表面に対して施用することによって行われる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
基材が、紙材料、板紙材料、プラスチック材料、繊維ガラス材料、帆布材料及び織物材料からなる群から選ばれる材料の少なくとも1つの層からなる、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
ポリビニルアルコール水溶液が、該ポリビニルアルコール水溶液の総重量に基づいて7.0重量%〜15.0重量%固形分という固形分含有量を有し、そしてポリビニルアルコールポリマーが、87.0〜89.0%の加水分解度、並びに4.0%固形分及び20℃にて5.2〜6.2の粘度を有する、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ポリビニルアルコールポリマー水溶液が、基材の第一表面に、該基材の第一表面に対して10.0〜15.0g/mの濃度で施用される、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ポリビニルアルコールポリマーのコーティングが、基材の第一及び第二の表面に施用される、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
第一及び第二の表面を有する基材の少なくとも1つの表面を、ポリビニルアルコールポリマーで、該基材の重量に対して少なくとも5重量%の濃度でカーテン塗工することを含む、塗工基材を製造する方法。

【公表番号】特表2007−503306(P2007−503306A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524630(P2006−524630)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/021123
【国際公開番号】WO2005/023945
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】