説明

基板の接着方法及び基板積層体の製造方法

【課題】複数の基板を接着する際のそりを抑制できる基板の接着方法を提供する。
【解決手段】第1の基板の表面に第1の単量体を蒸着させる第1の単量体蒸着工程と、第2の基板の表面に前記第1の単量体と反応して重合体を形成する第2の単量体を蒸着させる第2の単量体蒸着工程と、前記第1の基板と前記第2の基板とを前記単量体を蒸着させた側の面が対向するように載置し、前記第1の単量体を蒸着させた面と前記第2の単量体を蒸着させた面とを接触させると共に、前記第1の単量体と前記第2の単量体とを反応させて重合体を形成することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを接着する重合体形成工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の接着方法及び基板積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の分野ではSiウエハー上に、絶縁膜等の無機物膜や有機物膜、配線等の膜を設けたデバイス又は半導体デバイスを作成した後デバイスとデバイスを電気的に接続する為には、ワイヤーボンディングの技術を用いてきた。しかしデバイスが微細化するに連れて接続するワイヤーのピッチが狭くなることや、ワイヤーによる信号遅延が深刻な問題になってきた。同時に微細化も限界に近付いてきて、大容量、高速動作の限界に達してきた。この解決の一つとして、デバイスを重ねて接着し、上下に孔を掘ってCuやAlで接続する技術が開発されつつある。例えば、フラッシュメモリーを多数枚重ねた大容量フラッシュメモリーは一部製品化されている。これらの技術は総称して、TSVや3次元実装と呼ばれている。前述のようにメモリー系では同じデバイスを多数枚重ねて容量を稼ぐものや、メモリーとロジックのように異なる種類のデバイスを重ねて配線を短くして高速動作を目的にするもの等、その組み合わせは目的に応じて自由に選択されている。
【0003】
このようなデバイスを重ねた積層体を製造する際の接着工程は、ウエハーからデバイスを切りだしてチップの状態にしてチップ同士を接着するもの、切断する前のウエハー上に切ったチップを接着するもの、及び、切断する前のウエハー同士を接着するものの3通りがある。接着対象が大きくなるに連れて当然接着技術も難しくなり、接着剤の開発が活発に行われており、多くの接着剤が提案されている。そして、現在提案されている接着剤は、ウエハー等に塗布し加熱等して硬化させるタイプである(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、塗布し加熱等して硬化させるため、硬化による体積変化で応力が発生し、ウエハー等がそってしまうという問題がある。特に面積が大きいウエハー等において、そる量が大きくなる。なお、このような接着剤で接着した際にそってしまうという問題は、種々の基板においても同様に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−49051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、複数の基板を接着する際のそりを抑制できる基板の接着方法及び基板積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の基板の接着方法は、第1の基板の表面に第1の単量体を蒸着させる第1の単量体蒸着工程と、第2の基板の表面に前記第1の単量体と反応して重合体を形成する第2の単量体を蒸着させる第2の単量体蒸着工程と、前記第1の基板と前記第2の基板とを前記単量体を蒸着させた側の面が対向するように載置し、前記第1の単量体を蒸着させた面と前記第2の単量体を蒸着させた面とを接触させると共に、前記第1の単量体と前記第2の単量体とを反応させて重合体を形成することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを接着する重合体形成工程とを有することを特徴とする。
【0008】
前記重合体形成工程では、前記第1の基板及び前記第2の基板を加熱することが好ましい。
【0009】
前記重合体が、ポリ尿素、ポリアミド及びポリイミドから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0010】
また、前記第1の単量体は複数種の単量体からなり、前記第2の単量体は前記複数種の第1の単量体のそれぞれと反応する複数種の単量体からなっていてもよい。
【0011】
また、前記第1の単量体及び前記第2の単量体の少なくとも一方を蒸着する際に、脱水剤及びシランカップリング剤の少なくとも一方を蒸着させてもよい。
【0012】
また、前記第1の単量体は互いに反応して重合体を形成しないものであり、前記第2の単量体は互いに反応して重合体を形成しないものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の基板積層体の製造方法は、第1の基板と第2の基板とが積層された基板積層体の製造方法であって、前記第1の基板の表面に第1の単量体を蒸着させる第1の単量体蒸着工程と、前記第2の基板の表面に前記第1の単量体と反応して重合体を形成する第2の単量体を蒸着させる第2の単量体蒸着工程と、前記第1の基板と前記第2の基板とを前記単量体を蒸着させた側の面が対向するように載置し、前記第1の単量体を蒸着させた面と前記第2の単量体を蒸着させた面とを接触させると共に、前記第1の単量体と前記第2の単量体とを反応させて重合体を形成することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを接着する重合体形成工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1の単量体を第1の基板の表面に蒸着し、第1の単量体と反応する第2の単量体を第2の基板の表面に蒸着した後、この第1の単量体と第2の単量体を反応させて複数の基板(第1の基板及び第2の基板)を接着することにより、接着時の硬化による基板のそりを抑制することができるという効果を奏する。したがって、基板のそり量が少ない基板の積層体、例えば、複数のウエハーやデバイスの積層体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基板に単量体を蒸着する真空蒸着装置を模式的に示す図。
【図2】単量体を蒸着した基板を接着する真空張り合わせ装置を模式的に示す図。
【図3】試験例1の測定結果を示す図。
【図4】試験例3の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の基板の接着方法は、第1の基板の表面に第1の単量体を蒸着させる第1の単量体蒸着工程と、第2の基板の表面に第1の単量体と反応して重合体を形成する第2の単量体を蒸着させる第2の単量体蒸着工程と、第1の基板と第2の基板とを単量体を蒸着させた側の面が対向するように載置し、第1の単量体を蒸着させた面と第2の単量体を蒸着させた面とを接触させると共に、第1の単量体と第2の単量体とを反応させて重合体を形成することにより、第1の基板と第2の基板とを接着する重合体形成工程とを有するものである。
【0017】
具体的には、まず、第1の基板の表面に第1の単量体を蒸着させる第1の単量体蒸着工程と、第2の基板の表面に第1の単量体と反応して重合体を形成する第2の単量体を蒸着させる第2の単量体蒸着工程を行う。
【0018】
第1の基板と第2の基板は、それぞれ第1の単量体や第2の単量体を表面に蒸着させることができる基板であれば制限されないが、例えば、Siウエハー、SiCウエハー、サファイア基板、GaN基板、Ge基板、SOI基板、GOI基板、ガラス基板や、これらをチップ状に切断したもの、さらに、これらの上に絶縁膜等の無機物膜や有機物膜、配線等の膜を設けたデバイス等が挙げられる。従来技術のように、積層したい基板、すなわち、第1の基板及び第2の基板の一方に、接着剤をスピンコート法等で塗布し加熱等して硬化させる方法では、面積の大きい基板(例えば直径200mm以上のウエハー)を第1の基板や第2の基板とすると硬化時のそりが例えば数mm程度と大きくなってしまう。しかし、本発明の基板の接着方法においては、後述する試験例等に示すように、そりを抑制することができるため、大面積の基板を用いても、そり量の少ない基板積層体を製造することができる。勿論、チップなど面積の小さいものを第1の基板や第2の基板としても、接着する際のそり量を小さくすることができる。また、第1の基板と第2の基板は、同一のもの(例えば材質、厚さ、形状が同一のもの)でも、異なるものであっていてもよい。
【0019】
第1の基板に蒸着させる第1の単量体及び第2の基板に蒸着させる第2の単量体は、それぞれ第1の基板や第2の基板に蒸着できるものである必要がある。このような蒸着できる第1の単量体や第2の単量体としては、例えば室温(25℃)で液体の単量体や、室温では固体だが第1の基板や第2の基板、及び、第1の基板や第2の基板上に絶縁膜等の無機物膜や有機物膜、配線等の膜が設けられている場合はこれら第1の基板や第2の基板上に設けられた膜の耐熱温度未満に加熱されることにより融解又は昇華する単量体が挙げられる。
【0020】
また、第1の単量体と第2の単量体とが反応して重合体を形成するものである必要がある。この重合体により、第1の基板と第2の基板とが接着される。なお、第1の単量体や第2の単量体は、第1の基板及び第2の基板表面に蒸着しているため、第1の基板表面に第1の単量体を蒸着して形成した蒸着膜(以下「第1の単量体蒸着膜」ともいう)と第1の基板との密着性や、第2の基板表面に第2の単量体を蒸着して形成した蒸着膜(以下「第2の単量体蒸着膜」ともいう)と第2の基板との密着性は、良好である。
【0021】
第1の単量体と第2の単量体とが反応して形成される重合体としては、例えば、ポリ尿素、ポリアミドや、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドを形成する場合は、第1の単量体及び第2の単量体のいずれか一方を芳香族ジアミンとし、もう一方をテトラカルボン酸二無水物とすればよい。芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とは反応性が高く、各蒸着膜を接触させただけで反応が開始するため、好ましい。例えば芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物は接触しただけで70%程度反応してポリイミドの前駆体であるポリアミド酸になり、このポリアミド酸を加熱することでポリイミドを容易に形成することができる。なお、ポリアミド酸の状態で第1の基板と第2の基板を接着することができれば、イミド化させなくてもよい。
【0022】
芳香族ジアミンとしては、例えば、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェン、3,3’−ジアミノベンゾフェン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−3,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジカルボシキ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、3,3’−ヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0023】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、二無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、m(p)−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物等が挙げられる。
【0024】
また、重合体としてポリアミドを形成する場合は、例えば第1の単量体及び第2の単量体のいずれか一方をジアミンとし、もう一方をジカルボン酸とすればよい。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。ジカルボン酸としては、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、無水トリメリット酸クロリド、テレフタロイルブロマイド、イソフタロイルブロマイド、無水トリメリット酸ブロマイド、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。蒸気圧と反応性を考慮すると、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、無水トリメリット酸クロリド、テレフタロイルブロマイド、イソフタロイルブロマイドや、無水トリメリット酸ブロマイドが好ましい。
【0025】
重合体としてポリ尿素を形成する場合は、例えば第1の単量体及び第2の単量体のいずれか一方をジアミンとし、もう一方をジイソシアネートとすればよい。ジアミンとしては、耐熱性を考慮すると芳香族ジアミンが好ましく、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。ジイソシアネートとしては、トリレン2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−又はp−フェニレンジイソシアネート等の芳香族系有機ジイソシアネート化合物や、m−又はp−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ビス(イソシアナトメチル)ジフェニルメタン等の芳香脂肪族系有機ジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0026】
そして、第1の単量体が互いに反応して重合体を形成しないものであり、第2の単量体が互いに反応して重合体を形成しないものであることが好ましい。すなわち、第1の単量体や第2の単量体がそれぞれ1種類の単量体で構成されている場合は、各単量体がホモポリマーを形成しないものであることが好ましく、第1の単量体や第2の単量体がそれぞれ複数種の単量体で構成されている場合は、第1の単量体や第2の単量体を構成する複数種の単量体が互いに反応してホモポリマーやコポリマーを形成しないことが好ましい。本発明は、第1の単量体と第2の単量体が反応して重合体を形成することにより、第1の基板と第2の基板とを接着するものであるが、第1の単量体が互いに反応したり第2の単量体が互いに反応してしまうと第1の単量体と第2の単量体の反応が生じ難くなってしまうためである。また、第1の単量体が互いに反応して重合体を形成しないものであり、第2の単量体が互いに反応して重合体を形成しないものであると、第1の単量体や第2の単量体を蒸着させた後すぐに次の重合体形成工程を行う必要が無いため、好ましい。
【0027】
また、第1の単量体及び第2の単量体は、第1の基板及び第2の基板や、この第1の基板や第2の基板上に絶縁膜等の無機物膜や有機物膜、配線等の膜が設けられている場合はこれら第1の基板や第2の基板上に設けられた膜の、耐熱温度以下(例えば250℃以下)の温度で反応して重合体を形成するものであることが好ましい。また、第1の単量体及び第2の単量体は、この第1の基板及び第2の基板や、第1の基板や第2の基板上に設けられた膜の耐熱温度まで接着力を維持できることが好ましい。
【0028】
このような第1の単量体や第2の単量体は、1種ずつ用いてもよく、また、複数種用いてもよい。例えば、重合体としてポリイミドを形成する場合、第1の単量体として複数種の芳香族ジアミンを用い、第2の単量体として複数種の芳香族ジアミンのそれぞれと反応する複数種のテトラカルボン酸二無水物を用いてもよい。また、形成する重合体が異なる種類のものとなるようにしてもよい。
【0029】
第1の単量体や第2の単量体を、それぞれ第1の基板や第2の基板に蒸着する方法は特に限定されず、原料(本発明においては第1の単量体や第2の単量体)を加熱し気化して基板に蒸着させる通常の蒸着法を用いればよい。なお、加熱温度はそれぞれ第1の単量体や第2の単量体の分解温度未満の温度とする。
【0030】
第1の単量体蒸着膜や第2の単量体蒸着膜の膜厚は特に限定されないが、例えば500nm以下とすることが好ましい。蒸着膜が厚すぎると、重合体形成工程において、基板に近い領域の第1の単量体や第2の単量体が反応できず接着力が弱くなり、また、膜厚が薄いほうが第1の単量体と第2の単量体を反応させた時に生じる応力による基板のそりがより低減されるためである。ただし、各蒸着膜が薄すぎると接着力が弱くなるためある程度の厚さ、例えば200nm以上とすることが好ましい。なお、このような蒸着膜の好適な膜厚は、用いる単量体の性質や求められる接着力等に依存するものであるため、用いる単量体の性質や求められる接着力等に応じて蒸着膜の膜厚を適宜調製すればよい。
【0031】
そして、第1の単量体蒸着膜や第2の単量体蒸着膜に、添加剤を混入させてもよい。添加剤としては、カルボン酸無水物等の脱水剤や、密着性向上のためのシランカップリング剤等が挙げられる。例えば脱水剤を添加することにより、第1の単量体と第2の単量体との反応により生成するHOを脱水剤で吸水することができる。添加剤を混入させる方法に特に制限はなく、例えば、添加剤を第1の基板や第2の基板の単量体が蒸着される側の面に蒸着させてもよい。具体例としては、第1の単量体や第2の単量体を第1の基板や第2の基板表面に蒸着する前、後または蒸着と同時に、添加剤を蒸着する方法が挙げられる。
【0032】
次に、重合体形成工程を行う。重合体形成工程においては、第1の基板と第2の基板とを単量体を蒸着させた側の面が対向するように載置し第1の単量体を蒸着させた面と第2の単量体を蒸着させた面とを接触させる、すなわち、第1の基板に形成された第1の単量体蒸着膜と、第2の基板に形成された第2の単量体蒸着膜とを接触させる。
【0033】
これにより、第1の単量体と第2の単量体とを反応させて重合体を形成する。例えば、第1の基板や第2の基板を加熱することにより、第1の単量体蒸着膜や第2の単量体蒸着膜を、第1の単量体と第2の単量体とが反応して重合体を形成する温度に加熱する。この加熱の温度は、第1の単量体や第2の単量体の分解温度未満であることが好ましい。勿論、第1の単量体蒸着膜と第2の単量体蒸着膜とが接触することのみで反応して重合する場合は、加熱しなくてもよい。また、第1の単量体と第2の単量体とを反応させる際に、触媒を用いてもよい。
【0034】
このように、第1の単量体蒸着工程と、第2の単量体蒸着工程と、重合体形成工程とを行うことにより、複数の基板、すなわち第1の基板及び第2の基板を接着する際のそりを抑制することができる。したがって、そり量が小さい基板積層体を製造することができる。よって、微細なデバイスを積層した基板積層体を製造することができ、本発明は、TSV技術に適している。
【0035】
ここで、従来技術のように、第1の基板及び第2の基板の一方に接着剤をスピンコート法等で塗布する方法では、形成される接着剤膜の膜厚は、蒸着膜と比べて厚い膜(例えば10〜20μm程度)となる。したがって、接着剤が加熱等されて硬化する時に発生する応力の絶対値が大きくなるため、基板のそりが大きくなってしまう。また、スピンコート法等の塗布法では、膜厚の制御性が蒸着膜と比べて悪く、膜厚がばらついて不均一になる。そして、硬化時に発生する応力の大きさは膜厚に依存するため、硬化時に発生する応力が不均一になって、基板にそりが発生しやすくなる。
【0036】
本発明においては、蒸着法で単量体を成膜しているため、薄膜(例えば1000nm以下。好ましくは500nm以下。)とすることができる。したがって、第1の単量体及び第2の単量体が反応する時、すなわち、硬化時に発生する応力を小さくすることができるため、基板のそりを小さくすることができる。また、蒸着法なので膜厚の制御性が良好であり、スピンコート法等の塗布法と比較して均一な膜厚にすることができ、単量体の反応時に発生する応力を均一にできるため、基板のそりを発生し難くすることができる。
【0037】
なお、一方の基板に第1の単量体及び第2の単量体を用いて蒸着重合して重合体を形成し、その後もう一方の基板を密着させた場合は、基板を密着させる段階ではすでに重合体が形成され硬化しているため、第1の基板を第2の基板とを接着することはできない。
【0038】
このような基板の接着を行う方法について、図1及び図2を用いて、さらに具体的に例示する。図1は、基板に単量体を蒸着する真空蒸着装置を模式的に示す図であり、図2は、単量体を蒸着した基板同士を接着する真空張り合わせ装置を模式的に示す図である。
【0039】
図1に示すように、真空蒸着装置10は、真空槽11の内部天井側には、蒸着膜を形成する基板Sを保持する基板保持部材12が設けられている。この基板保持部材12は、蒸着膜を形成する面が鉛直方向下側を向く状態で基板Sを保持するように構成されている。そして、真空槽11内の底面側には、第1の単量体13aが収容されるタングステンボート14aが配置されており、タングステンボート14aの上には、水平方向に開閉可能なシャッター15aが設けられており、このシャッター15aの開閉により、第1の単量体13aの基板Sへの蒸着が制御される。また、真空槽11内の底面側のタングステンボート14aとは離れた領域には、第2の単量体13bが収容されるタングステンボート14bが配置されており、タングステンボート14bの上には、水平方向に開閉可能なシャッター15bが設けられており、このシャッター15bの開閉により、第2の単量体13bの基板Sへの蒸着が制御される。
【0040】
そして、図2に示すように、真空張り合わせ装置20は、真空槽21の内部天井側には、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面が鉛直方向下側を向く状態で第1の基板Saを保持する上部基板保持機構23が設けられている。この上部基板保持機構23は、上部基板保持板24と、上部基板保持板24に接続された上部基板保持ピック25を有し、上部基板保持ピック25で第1の基板Saを引っ掛けることにより、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面が鉛直方向下側を向く状態で第1の基板Saを保持するように構成されている。そして、真空槽21内の底面側の上部基板保持機構23に対向する領域には、第2の単量体蒸着膜22bが形成された面が鉛直方向上側を向く状態で第2の基板Sbを保持する石英等からなる下部基板支持台26が設けられている。下部基板支持台26の下方には、加熱手段として複数のランプヒーター27が設けられている。また、真空槽21内には、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面とは反対側から第1の基板Saを押圧して第1の単量体蒸着膜22aと第2の単量体蒸着膜22bとを密着させる押圧機構30が設けられている。この押圧機構30は、荷重を伝達する荷重伝達棒31と、荷重伝達棒31にかけられた荷重を第1の基板Sa全体にかける押し付け板32と、押し付け板32の第1の基板Sa側の面に設けられたポリイミドフィルム等の緩衝材33とを有し、この緩衝材33が、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面とは反対側の第1の基板Sa表面に接触して第1の基板Saを押圧できるように構成されている。
【0041】
そして、真空蒸着装置10と真空張り合わせ装置20とは、図示しない真空搬送室を介して真空の状態で基板Sが搬送できるように連結されている。なお、一度大気中に出して搬送することも可能である。
【0042】
このような真空蒸着装置10及び真空張り合わせ装置20を用いて、基板の接着を行うには、まず、真空蒸着装置10で、第1の基板Saの表面に第1の単量体13aを蒸着し、第2の基板Sbの表面に第2の単量体13bを蒸着する。具体的には、タングステンボート14aに第1の単量体13aを充填し、タングステンボート14bに第2の単量体13bを充填する。次いで、基板Sとして第1の基板Saを真空槽11内に搬送し、蒸着膜を形成する面が鉛直方向下側を向くように基板保持部材12で保持する。そして、真空槽11に接続された真空ポンプ等により真空槽11内を排気して所定の真空状態とした後、タングステンボート14aに電流を流してタングステンボート14a内の第1の単量体13aを加熱して気化させて、第1の単量体13aを第1の基板Sa表面に蒸着し、第1の単量体蒸着膜22aを形成する。この時、シャッター15aは開けられシャッター15bは閉じられており、第2の単量体13bは第1の基板Saには蒸着されず、第1の単量体13aのみが第1の基板Saに蒸着されるようにしている。その後、タングステンボート14aへの電流の供給を停止して第1の単量体13aの第1の基板Saへの蒸着を停止した後、真空槽11内は上記真空状態を維持したまま、第1の単量体蒸着膜22aが形成された第1の基板Saを真空槽11内から搬出する。次に、基板Sとして第2の基板Sbを真空槽11内に搬送し、蒸着膜を形成する面が鉛直方向下側を向くように基板保持部材12に保持する。また、シャッター15aを閉じシャッター15bを開ける。そして、タングステンボート14bに電流を流してタングステンボート14b内の第2の単量体13bを加熱して気化させて、第2の単量体13bを第2の基板Sb表面に蒸着し、第2の単量体蒸着膜22bを形成する。この時、シャッター15aは閉じられシャッター15bは開けられているため、第1の単量体13aは第2の基板Sbには蒸着されず、第2の単量体13bのみが第2の基板Sbに蒸着される。その後、タングステンボート14bへの電流の供給を停止して第2の単量体13bの第2の基板Sbへの蒸着を停止した後、真空槽11内は上記真空状態を維持したまま、第2の単量体蒸着膜22bが形成された第2の基板Sbを真空槽11内から搬出する。
【0043】
次に、真空蒸着装置10の真空槽11から搬出された第1の単量体蒸着膜22aが形成された第1の基板Saと第2の単量体蒸着膜22bが形成された第2の基板Sbとを、真空張り合わせ装置20で接着する。具体的には、まず、真空張り合わせ装置20の真空槽21内に第1の基板Sa及び第2の基板Sbを搬送し、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面が鉛直方向下側を向く状態で第1の基板Saを上部基板保持機構23で保持すると共に、第2の単量体蒸着膜22bが形成された面が鉛直方向上側を向く状態で第2の基板Sbを下部基板支持台26に載置する。次いで、真空ポンプ等により排気して所定の真空状態とし、ランプヒーター27で第1の基板Sa及び第2の基板Sbを加熱することにより第1の単量体蒸着膜22aと第2の単量体蒸着膜22bを加熱すると共に、荷重伝達棒31に荷重をかけて第1の基板Saに形成された第1の単量体蒸着膜22aと第2の基板Sbに形成された第2の単量体蒸着膜22bとを密着させることにより、第1の単量体と第2の単量体とを反応させて重合体を形成する。これにより、形成された重合体を介して第1の基板Saと第2の基板Sbとが接着される。
【0044】
なお、上述した例では、真空蒸着装置10と真空張り合わせ装置20を用い、真空蒸着装置10と真空張り合わせ装置20とは真空搬送室を介して真空の状態で基板Sが搬送できるように連結するものを例示したが、場合によっては、大気中で行うようにしてもよい。
【0045】
以下に、本発明を試験例に基づいて説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0046】
(試験例1)
第1の基板Sa及び第2の基板Sbをそれぞれφ300mm(直径300mm)のシリコンウエハーとし、図1に示す真空蒸着装置10を用いて、第1の基板Sa上に第1の単量体として二無水ピロメリット酸(pyromellitic dianhydride)を蒸着し、第2の基板Sb上に第2の単量体として4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを蒸着した。具体的には、まず、タングステンボート14aに二無水ピロメリット酸(第1の単量体13a)を充填し、タングステンボート14bに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(第2の単量体13b)を充填した。そして、第1の基板Saを真空槽11内に搬送し、蒸着膜を形成する面が鉛直方向下側を向くように基板保持部材12に保持した。その後、シャッター15aを開けシャッター15bを閉じた状態とし、1×10−4Paまで真空槽11を排気し、タングステンボート14aに電流を流してタングステンボート14a内の二無水ピロメリット酸を50℃に加熱して気化させて、第1の基板Sa表面に二無水ピロメリット酸を蒸着して第1の単量体蒸着膜22aを形成した。その後、タングステンボート14aへの電流の供給を停止して二無水ピロメリット酸の第1の基板Saへの蒸着を停止した後、真空槽11内は1×10−4Paに維持したまま、第1の単量体蒸着膜22aが形成された第1の基板Saを真空槽11内から搬出した。次に、第2の基板Sbを真空槽11内に搬送し、蒸着膜を形成する面が鉛直方向下側を向くように基板保持部材12に保持した。その後、シャッター15aを閉じシャッター15bを開けた状態とし、タングステンボート14bに電流を流してタングステンボート14b内の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを50℃に加熱して気化させて、第2の基板Sb表面に4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを蒸着して第2の単量体蒸着膜22bを形成した。その後、タングステンボート14bへの電流の供給を停止して第2の単量体13bの第2の基板Sbへの蒸着を停止した後、第2の単量体蒸着膜22bが形成された第2の基板Sbを真空槽11内から搬出した。なお、第1の単量体蒸着膜22aの膜厚及び第2の単量体蒸着膜22bの膜厚は、同一になるようにした。
【0047】
次に、真空蒸着装置10の真空槽11から搬出された第1の単量体蒸着膜22aが形成された第1の基板Saと第2の単量体蒸着膜22bが形成された第2の基板Sbとを、真空張り合わせ装置20で接着した。具体的には、まず、真空蒸着装置10の真空槽11から搬出された第1の基板Sa及び第2の基板Sbを、窒素雰囲気中で排気しながら真空張り合わせ装置20の真空槽21内に搬送して、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面が鉛直方向下側を向く状態で第1の基板Saを上部基板保持機構23で保持すると共に、第2の単量体蒸着膜22bが形成された面が鉛直方向上側を向く状態で第2の基板Sbを下部基板支持台26に載置した。次いで、真空槽21を1×10−2Paまで排気し、荷重伝達棒31に3kgの荷重をかけて、第1の基板Saに形成された第1の単量体蒸着膜22aと第2の基板Sbに形成された第2の単量体蒸着膜22bとを密着させ、ランプヒーター27により第1の基板Sa及び第2の基板Sbを250℃で2時間加熱した。これにより、二無水ピロメリット酸と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが反応してポリアミド酸を経てポリイミド膜が形成され、第1の基板Sa及び第2の基板Sbがポリイミド膜を介して接着されたシリコンウエハー積層体が形成された。その後、ランプヒーター27を停止して、第1の基板Sa及び第2の基板Sbを100℃まで冷却し、シリコンウエハー積層体を大気中に取り出した。そして、得られたシリコンウエハー積層体のそり量を測定した。なお、第1の基板Saと第2の基板Sbは積層体の状態で同一の方向にそっている。
【0048】
上記操作を、第1の単量体蒸着膜(二無水ピロメリット酸の蒸着膜)22a及び第2の単量体蒸着膜(4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの蒸着膜)22bの各膜厚(蒸着膜厚)を、表1に示す値に変化させてそれぞれ行った。結果を表1及び図3に示す。
【0049】
表1及び図3に示すように、いずれも0.30mm以下とシリコンウエハー積層体のそり量は小さく、特に蒸着膜の膜厚が100nm以下においては、そり量は0.10mm以下であった。なお、蒸着膜の膜厚が増加するとウエハー積層体のそり量は増加したが、1000nmではそり量が急激に減少している。これは、蒸着させる単量体として二無水ピロメリット酸及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いると、蒸着膜の厚さが1000nm以上では、密着させても二無水ピロメリット酸及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが十分に拡散せず、ウエハーに近い領域では重合できず単量体の状態で残っているためである。したがって、単量体として二無水ピロメリット酸及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いる場合は、単量体の蒸着膜の膜厚は、500nm以下とすることが好ましい。
【0050】
【表1】

【0051】
(試験例2)
試験例1で得られた各シリコンウエハー積層体について、それぞれ10mm角に切断した。任意に抽出した10ピースをそれぞれ取り出し、第1の基板Sa及び第2の基板Sbの両面に5mmφのSUSの棒をエポキシ接着材で接着した。このSUS棒の片方を固定しもう一方のSUS棒に1kgの荷重をかけて、第1の基板Sa及び第2の基板Sbが剥離するかどうかを調べた。10ピースのうち剥離したピースの割合を、剥離確率として表2に記載する。
【0052】
表2に示すように、接着力は蒸着膜の膜厚に依存しており蒸着膜の膜厚が厚いほうが接着力は高くなる傾向があった。なお、試験例2では、蒸着膜の膜厚が1000nm以上では、密着させても重合が厚さ方向全体に均一に行われないため、十分な接着ができなかった。また、蒸着膜の膜厚が10nmでは薄すぎて、接着力は若干弱かった。したがって、単量体として二無水ピロメリット酸及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いる場合は、接着力を考慮すると、単量体の蒸着膜の膜厚は、100nm以上500nm以下とすることが好ましいといえる。
【0053】
【表2】

【0054】
(試験例3)
二無水ピロメリット酸の代わりに4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートを使用し蒸着するときの加熱温度を35℃とし、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの代わりに4,4’−ジアミノジフェニルメタンを使用し蒸着するときの加熱温度を70℃とし、第1の単量体と第2の単量体を反応させる時に第1の基板Sa及び第2の基板Sbを加熱する条件を250℃で2時間とする代わりに180℃で3時間として、ポリイミド膜の代わりに芳香族ポリ尿素膜を形成した以外は、試験例1と同様の操作を行った。結果を表3及び図4に示す。
【0055】
表3及び図4に示すように、いずれもシリコンウエハー積層体のそり量は0.50mm以下と小さく、特に蒸着膜の膜厚が100nm以下においては、そり量が0.10mm以下であった。なお、蒸着膜の膜厚が増加するとウエハー積層体のそり量は増加したが、1000nmではそり量が急激に減少している。これは、単量体として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンを用いると、蒸着膜の厚さが1000nm以上では、密着させても4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンが十分に拡散せず、ウエハーに近い領域では重合できず単量体の状態で残っているためである。したがって、単量体として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンを用いる場合は、単量体の蒸着膜の膜厚は、500nm以下とすることが好ましい。
【0056】
【表3】

【0057】
(試験例4)
試験例1で得られた各シリコンウエハー積層体の代わりに、試験例3で得られた各シリコンウエハー積層体を用いた以外は、試験例2と同様の操作を行った。結果を表4に示す。
【0058】
表4に示すように、接着力は蒸着膜の膜厚に依存しており蒸着膜の膜厚が厚いほうが接着力は高くなる傾向があった。なお、試験例4では、蒸着膜の膜厚が1000nm以上では、密着させても重合が厚さ方向全体に均一に行われないため、十分な接着ができなかった。また、蒸着膜の膜厚が10nmでは薄すぎて、接着力は弱かった。したがって、単量体として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンを用いる場合は、接着力を考慮すると、単量体の蒸着膜の膜厚は、100nm以上500nm以下とすることが好ましいといえる。また、試験例4と試験例2の結果を比較すると、試験例4のほうが接着力は高かった。これは、試験例1では二無水ピロメリット酸と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが反応してポリイミドを形成する際に生成したHOが影響したと考えられる。
【0059】
【表4】

【0060】
(試験例5)
第1の単量体13aとしてテレフタル酸ジクロリドを使用し蒸着するときの加熱温度を90℃とし、第2の単量体13bとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを使用し蒸着するときの加熱温度を50℃とし、第1の単量体と第2の単量体を反応させる時に第1の基板Sa及び第2の基板Sbを加熱する条件を200℃で1時間として、ポリアミド膜を形成した以外は、試験例1と同様の操作を行った。結果を表5に示す。
【0061】
表5に示すように、いずれもシリコンウエハー積層体のそり量は0.30mm以下と小さく、特に蒸着膜の膜厚が100nm以下においては、そり量が0.10mm以下であった。なお、蒸着膜の膜厚が増加するとウエハー積層体のそり量は増加したが、1000nmではそり量が急激に減少している。これは、単量体としてテレフタル酸ジクロリド及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いると、蒸着膜の厚さが1000nm以上では、密着させてもテレフタル酸ジクロリド及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが十分に拡散せず、ウエハーに近い領域では重合できず単量体の状態で残っているためである。したがって、単量体としてテレフタル酸ジクロリド及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いる場合は、単量体の蒸着膜の膜厚は、500nm以下とすることが好ましい。
【0062】
【表5】

【0063】
(試験例6)
試験例1で得られた各シリコンウエハー積層体の代わりに、試験例5で得られた各シリコンウエハー積層体を用いた以外は、試験例2と同様の操作を行った。結果を表6に示す。
【0064】
この結果、表6に示すように、接着力は蒸着膜の膜厚に依存しており蒸着膜の膜厚が厚いほうが接着力は高くなる傾向があった。なお、試験例6では、蒸着膜の膜厚が1000nm以上では、密着させても重合が厚さ方向全体に均一に行われないため、十分な接着ができなかった。また、蒸着膜の膜厚が10nmでは薄すぎて、接着力は弱かった。したがって、単量体としてテレフタル酸ジクロリド及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いる場合も、接着力を考慮すると、単量体の蒸着膜の膜厚は、100nm以上500nm以下とすることが好ましいといえる。
【0065】
【表6】

【符号の説明】
【0066】
S 基板 Sa 第1の基板
Sb 第2の基板 10 真空蒸着装置
11 真空槽 12 基板保持部材
13a 第1の単量体 13b 第2の単量体
14a、14b タングステンボート 15a、15b シャッター
20 真空張り合わせ装置 21 真空槽
22a 第1の単量体蒸着膜 22b 第2の単量体蒸着膜
23 上部基板保持機構 24 上部基板保持板
25 上部基板保持ピック 26 下部基板支持台
27 ランプヒーター 30 押圧機構
31 荷重伝達棒 32 押し付け板
33 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板の表面に第1の単量体を蒸着させる第1の単量体蒸着工程と、
第2の基板の表面に前記第1の単量体と反応して重合体を形成する第2の単量体を蒸着させる第2の単量体蒸着工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを前記単量体を蒸着させた側の面が対向するように載置し、前記第1の単量体を蒸着させた面と前記第2の単量体を蒸着させた面とを接触させると共に、前記第1の単量体と前記第2の単量体とを反応させて重合体を形成することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを接着する重合体形成工程とを有することを特徴とする基板の接着方法。
【請求項2】
前記重合体形成工程では、前記第1の基板及び前記第2の基板を加熱することを特徴とする請求項1に記載する基板の接着方法。
【請求項3】
前記重合体が、ポリ尿素、ポリアミド及びポリイミドから選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載する基板の接着方法。
【請求項4】
前記第1の単量体は複数種の単量体からなり、前記第2の単量体は前記複数種の第1の単量体のそれぞれと反応する複数種の単量体からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載する基板の接着方法。
【請求項5】
前記第1の単量体及び前記第2の単量体の少なくとも一方を蒸着する際に、脱水剤及びシランカップリング剤の少なくとも一方を蒸着させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載する基板の接着方法。
【請求項6】
前記第1の単量体は互いに反応して重合体を形成しないものであり、前記第2の単量体は互いに反応して重合体を形成しないものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載する基板の接着方法。
【請求項7】
第1の基板と第2の基板とが積層された基板積層体の製造方法であって、
前記第1の基板の表面に第1の単量体を蒸着させる第1の単量体蒸着工程と、
前記第2の基板の表面に前記第1の単量体と反応して重合体を形成する第2の単量体を蒸着させる第2の単量体蒸着工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを前記単量体を蒸着させた側の面が対向するように載置し、前記第1の単量体を蒸着させた面と前記第2の単量体を蒸着させた面とを接触させると共に、前記第1の単量体と前記第2の単量体とを反応させて重合体を形成することにより、前記第1の基板と前記第2の基板とを接着する重合体形成工程とを有することを特徴とする基板積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−146708(P2012−146708A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1556(P2011−1556)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】