説明

基板の洗浄装置

【課題】発塵防止性に優れた基板の洗浄装置の提供を目的とする。
【手段】本発明はドーナツ円盤状の基板を洗浄する装置であり、噴出装置とチャック装置を具備し、チャック装置が基板孔部の内側に挿通される支持ロッドを複数本備えたスピンドルチャックと、該スピンドルチャックを回転駆動する水力回転機構とを具備してなり、前記スピンドルチャックが、支持ロッドを移動自在に支持する駆動機構を複数備えた支持ベースと、回転軸とを具備し、前記水力回転機構が、回転軸を取り囲むととともに駆動流体の流通路を内部に備えたシャーシ部材と、該シャーシ部材内の流通路に望んで設けられた水車部材と、駆動流体の供給路および排出路を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心に孔部が形成されたドーナツ円盤状の磁気記録媒体用などの基板を湿式洗浄する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブに用いられる磁気記録媒体用基板として、円盤状のアルミニウム合金基板やガラス基板あるいはセラミック基板が広く用いられている。近年では、磁気記録媒体の記録密度はますます高まり、磁気記録媒体用基板においては、磁気記録面上の磁気ヘッドの低浮上化に対応できるように、高い平坦度が求められるとともに、磁気記録媒体用基板の表面に付着した塵埃等を除去するための高度な洗浄技術が求められている。
例えば、磁気ディスク基板などをワークとし、この表面に研磨加工などの表面処理を行った後、該ワークの表面に付着している異物などを除去するために、複数の洗浄槽を用いてワークをコンベアにより順次複数の洗浄槽に搬送しながら、各洗浄槽にて液体を用いて洗浄する装置が知られている。(特許文献1参照)この特許文献1に記載された装置では、洗浄槽に回転ブラシ、シャワーなどを複数設け、基板の1枚1枚に洗浄液を供給しながら回転ブラシを用いてスクラブ洗浄することができるように構成されている。
【0003】
また、フィルタやタンクあるいは水槽内に液体を循環させるためのポンプ装置として、電気モータにより駆動する形式のプロペラを用いて液体を流動させる形式の装置が知られている。
【特許文献1】特開2001−96245号公報
【特許文献2】特表2002−514391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハードディスクドライブ装置の記憶容量の大容量化への要求はますます高まり、これに応じて、磁気記録媒体には、今まで以上の高い性能の磁性膜や下地膜、保護膜などが成膜されるので、磁気記録媒体用基板においてもより一層高レベルの平坦度が求められる結果、基板上において塵埃除去率のより高精度化が望まれている。これには、基板上に塵埃が付着していないことは勿論、従来においては無視できる程度の微細な塵埃であっても、より完全に除去できる高性能の洗浄装置が望まれてきている。
例えば、従来のこの種の洗浄装置では、回転機構に電動式のモータを用いることが一般的であるため、電動式のモータに洗浄液がかかることを嫌い、また、電動式のモータに液体が付着すると、その液体を通じて漏電の虞を生じ、電動式モータの金属部分が腐食する虞があった。このため、電動式のモータを用いた洗浄装置では、従来からオイル等を用いたシールを施し、その漏電事故を防止するなどの対策が講じられてきている。
【0005】
しかしながら、より高度な洗浄技術が求められてきている磁気記録媒体用基板の洗浄技術では、このシール部分でのオイルの存在や、シール部分での発塵さえも問題視されるようになってきており、シール部分やオイル部分からの発塵が洗浄時に磁気記録媒体用基板に再付着し、場合によってはこの再付着したオイルや発塵物を再度洗浄しなくてはならない状況になってきている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、回転機構に電力を用いない、水力回転機構を利用することで電気モータに付属していた漏電防止構造を略することができ、オイルを用いたシールを不要にできるようになり、発塵防止性に優れると共に、モータの摺動部分にこれまでより大きなクリアランスを設けることができるので発塵が少なく、装置構成も簡略な構成で実現できる基板の洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)中心に孔部が形成されたドーナツ円盤状の基板を洗浄する装置であり、前記基板に洗浄液を吹き付けるための噴出装置と、該噴出装置に隣接配置されて前記基板を支持するためのチャック装置と、このチャック装置を回転駆動する水力回転機構とを具備してなり、前記水力回転機構が、前記回転軸を取り囲むととともに前記水力回転機構を駆動する流体の流通路を内部に備えたシャーシ部材と、該シャーシ部材内の流通路に望んで前記シャーシ部材内部に回転自在に設けられ前記スピンドルチャックの回転軸に接続された水車部材と、前記流通路に駆動流体を供給して前記水車部材を回転駆動するために前記シャーシ部材に設けられた駆動流体の供給路および排出路を備えてなることを特徴とする。
(2)本発明に係る基板の洗浄装置は、前記チャック装置が前記基板の孔部の内側に挿通される支持ロッドを複数本備えたスピンドルチャックと、該スピンドルチャックを回転駆動する水力回転機構とを具備してなり、前記スピンドルチャックが、前記支持ロッドを前記基板の直径方向に移動させて前記各支持ロッドを前記基板の直径方向に移動自在に支持する駆動機構を複数備えた支持ベースと、該支持ベースから前記支持ロッドと平行な方向に延出された回転軸とを具備してなることを特徴とする。
【0008】
(3)本発明に係る基板の洗浄装置は、(2)に記載の基板の洗浄装置において、前記支持ベースと前記回転軸が中空構造とされ、前記支持ベースの前面側に、前記支持ロッドを前記基板と直角方向に向けたまま前記基板の径方向に旋回自在に支持するアーム部材が設けられ、前記支持ベースの内部側に該アーム部材を旋回自在に支持する旋回軸と該旋回軸と直角方向に延出形成されたベースアームが設けられ、前記支持ベースと前記回転軸の内部側と前記シャーシ部材を貫通して設けられたスライド軸と、該スライド軸の先端部側に設けられて前記支持ベースの内部側に配置され、前記スライド軸の移動に応じて前記複数のベースアームを押圧移動させ、前記旋回アームを介して前記複数の支持ロッドを相互に接近するか離間する方向に移動させて前記複数の支持ロッドを前記基板の孔部に挿通するか、前記支持ロッドを前記孔部の内側に押し付けて前記基板を孔部の内側から把持する機能を具備したことを特徴とする。
【0009】
(4)本発明に係る基板の洗浄装置は、前記スライド軸の先端部に亀頭型の押圧駒が取り付けられ、該押圧駒の先頭部の外周面に形成された斜面部が、前記複数のベースアームを押圧移動させて前記複数の支持ロッドの相互間隔を拡開して前記基板を孔部の内側から把持する機能を具備したことを特徴とする。
(5)本発明に係る基板の洗浄装置は、前記押圧駒の先端部外周面に前記斜面部が形成され、前記押圧駒の後部側に円筒部が形成され、前記押圧駒の円筒部による前記支持ロッドの拡開状態において前記基板が把持ロック状態とされることを特徴とする。
(6)本発明に係る基板の洗浄装置は、前記シャーシ部材が複数枚のフランジ円盤の重ね合わせにより構成され、前記複数枚のフランジ円盤の間に駆動流体の流通路が液密状態で構成され、前記流通路の一端側に前記駆動流体の供給路が接続され、前記流通路の他端側に前駆駆動流体の排出路が接続されてなることを特徴とする。
(7)本発明に係る基板の洗浄装置は、前記支持ベースの前面側に、該支持ベースの中心部を囲むように3つの駆動機構が配置され、各駆動機構に3本の支持ロッドが設けられ、各支持ロッドに対応するように旋回アームと旋回軸とベースアームとが前記支持ベースに設けられ、前記3本の支持ロッドが前記支持ベースの前面側において3本揃って相互に接近自在または離間自在に設けられてなることを特徴とする。
【0010】
(8)本発明に係る基板の洗浄装置は、前記シャーシ部材が仕切壁を貫通して設けられ、該仕切壁の内部空間側に前記基板側への洗浄液の噴出装置が設けられ、前記仕切壁の外部空間側に前記シャーシ部材の流通路が設けられ、前記洗浄液の噴出装置と前記シャーシ部材の流通路が仕切壁により分離されてなることを特徴とする。
(9)本発明は、請求項1に記載の基板の洗浄装置が、反転自在に設けられたテーブルの前面側に前記支持ベースと前記支持ロッド側を突出させて複数個取り付けられ、該テーブルの裏面側に前記複数の洗浄装置の洗浄液供給路あるいは洗浄液排出路に連通する配管が設けられ、これらの配管が前記テーブルを支持する支持軸に内蔵された流通路に接続されてなることを特徴とする。
(10)本発明に係る基板の洗浄装置は、前記テーブルを支持する支持軸が支持壁に取り付けられ、この支持壁を貫通して設けられたスライドロッドが支持壁の外部側に設けられたシリンダ装置によりスライド移動自在に設けられ、前記テーブルの反転により該スライドロッドの先端位置に移動した前記支持ベースのスライド軸の外部突出端を前記スライドロッドにより押圧して前記スピンドルチャックにより前記基板を支持可能としてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板を把持するためのチャック装置を水車部材に接続し、チャック装置から離れた位置にある水車部材を水力回転駆動するので、チャック装置に近い位置に電導モータのシール部材やオイル部分が存在しないように構成できるので、洗浄するべき基板に対して塵埃等の付着を無くするとともに、電導モータとその周囲のオイルシール部分等に洗浄液が経時的に付着するという現象自体を無くし、洗浄作業を繰り返すうちに経時的にオイルミストや発塵物を基板に付着させてしまうことを防止できる洗浄装置を提供できる。
また、水車部材を駆動流体で回転駆動することにより、チャック装置で支持した基板を回転駆動することができ、その状態で噴出装置から洗浄液を基板に噴出させることにより、基板を洗浄することができる。基板洗浄時において基板をチャック装置により確実に保持できるので、基板洗浄時に基板が外れて落下する虞はない。
本発明によれば、基板を把持するための支持ロッドを備えたスピンドルチャックを回転軸を介して水車部材に接続し、スピンドルチャックから離れた位置にある水車部材を水力回転駆動するので、スピンドルチャックに近い位置に電導モータのシール部材やオイル部分が存在しないように構成できるので、洗浄するべき基板に対して塵埃等の付着を無くするとともに、電導モータとその周囲のオイルシール部分等に洗浄液が経時的に付着するという現象自体を無くし、洗浄作業を繰り返すうちに経時的にオイルミストや発塵物を基板に付着させてしまうことを防止できる洗浄装置を提供できる。
また、水車部材を駆動流体で回転駆動することにより、スピンドルチャックの支持ロッドで支持した基板を回転駆動することができ、その状態で噴出装置から洗浄液を基板に噴出させることにより、基板を洗浄することができる。基板洗浄時において基板を複数の支持ロッドにより確実に保持できるので、基板洗浄時に基板が外れて落下する虞はない。
【0012】
本発明によれば、スピンドルチャックは複数の支持ロッドを備え、間隔を狭めた複数の支持ロッドを基板の孔部に挿通することができ、複数の支持ロッドの間隔を拡張することで孔部の内部側から基板を安定支持することができるので、洗浄液を基板に噴出させて基板を洗浄している最中においても基板を安定支持することができる。
本発明によれば、スライド軸の先端部に設けた押圧駒により複数のベースアームを移動させ、それらに連動させて複数の支持ロッドの相互間隔を調整するので、複数の支持ロッドの相互間隔を確実に調整することができる。また、押圧駒の斜面部によりベースアームを移動させるので、ベースアームを斜面部に沿って徐々に移動させて複数の支持ロッドを円滑に移動させ、基板を把持することができる。
【0013】
本発明によれば、押圧駒の斜面部でベースアームを可動させて支持ロッドを移動させることに続いて円筒部を設けたことにより、斜面部によって徐々に拡げた複数の支持ロッドの間隔を円筒部によるベースアームの押圧により固定して支持ロッドによる基板の支持状態をロックすることができる。これにより支持ロッドによる基板安定支持状態を確実に維持することができる。
本発明によれば、シャーシ部材をフランジ円盤の重ね合わせにより構成し、駆動流体の液密性を確保するので、駆動流体が外部に漏れる虞を無くすることができるとともに、供給路から排出路側に駆動流体を流動させる間に水車部材を回転駆動することで支持ロッドにより把持した基板を回転駆動しながら洗浄することができる。
本発明において、支持ベースの前面側に3つの駆動機構を備え、各駆動機構に支持ロッドを設けた構成を採用するならば、基板をそれらの孔部の内側から3本の支持ロッドにより3点支持して安定支持しながら回転させて洗浄することができる。
本発明において、仕切壁を貫通する形でシャーシ部材を設け、仕切壁の内部側に洗浄液の噴出装置を配置しておくならば、洗浄液の噴出装置を設ける部位と回転駆動用の駆動流体の流通路を設ける部位とを仕切壁で区分することができ、洗浄液の噴出装置側と基板の回転駆動力側とを確実に区分できるので、洗浄液が基板回転駆動側に影響を与えることがない。
【0014】
本発明によれば、前記構造の洗浄装置を反転自在のテーブルの前面側に複数設け、これら洗浄装置の支持ロッドにより同時に複数の基板を支持し、テーブルの反転に応じて支持した基板を順次噴出装置側に差し向け、複数の基板を順次洗浄することができる。
本発明によれば、シリンダ装置によりスライドロッドを移動させてスピンドルチャックを動作させるので、シリンダ装置の動作によりスピンドルチャックの支持ロッドを移動させて基板を支持することができる。また、支持ロッドを可動させるシリンダ装置を支持壁を介して基板を配置した側と仕切状態で配置できるので、基板を洗浄して洗浄液が飛散する環境となる領域からシリンダ装置を隔離することができ、シリンダ装置側から発生するおそれのある塵埃等が基板洗浄処理側へ移動することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を、図を用いて以下に詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施の形態に制限されるものではない。
図1〜図9は、本発明の第1の実施形態の洗浄装置を示すもので、この形態の洗浄装置は、被洗浄物としての代表例であるドーナツ円盤状の磁気記録媒体用基板1を洗浄するための洗浄液の噴出装置2と、先の基板1を保持し、回転させるためのチャック装置3を主体として構成されている。図1は全体構成の断面を示し、図2は回転駆動部の部分構成図、図3〜図5は回転駆動部のユニット構成図、図6〜図9はチャック装置の内部構造図を示す図である。
前記噴出装置2は傾斜対向配置されている噴出ノズル5、6を備え、図1に示す如くほぼ鉛直にチャック装置3が支持した基板1の両面側に、基板1の斜め上方から下向きに基板1を挟み込むように洗浄液を噴射できるように構成されている。この形態の噴出装置2において噴出ノズル5、6を備えた本体部7、8の間には逆U字型の凹部9が形成され、チャック装置3が回転支持した基板1の上部側を図1に示す如く凹部9の内側に位置させた状態において噴出ノズル5、6から洗浄液を基板1の両面全域に噴出して基板1を洗浄できるように構成されている。
【0016】
前記チャック装置3は、基板1の中心に形成されている孔部1aに挿通自在な支持ロッド10を備えたスピンドルチャック11と、このスピンドルチャック11を回転駆動するための水力回転機構12を備えて構成されている。
前記スピンドルチャック11は、前記支持ロッド10を前記基板1の直径方向に(図1では上下方向、換言すると鉛直上下方向に)移動させて前記支持ロッド10を前記基板1の直径方向に移動自在に支持する駆動機構13を複数内蔵した中空構造の支持ベース15と、該支持ベース15から前記支持ロッド10と平行な方向(水平方向)に延出された中空構造の回転軸16とを具備して構成されている。
【0017】
前記水力回転機構12は、前記スピンドルチャック11の回転軸16を取り囲んでこれを軸支するシャーシ部材18を有し、このシャーシ部材18の内部に図2に示す如く逆U字型の駆動流体の流通路20が形成され、この流通路20の一端側(図2の左側)に駆動流体の供給路21が形成され、流通路20の他端側(図2の右側)に駆動流体の排出路22が形成されている。また、逆U字型の駆動流体の流通路20の中央部分は円形状の空間部とされていて、この空間部に円板状の水車部材23がその羽根部材24を流通路20の中央側に位置させた状態で前記回転軸16に回転自在に軸支されている。
前記シャーシ部材18は、図3のユニット構成図に詳細に示す如く径の異なる皿型のフランジ部材25、26、27、28を組み合わせ、フランジ部材26、27の間に形成される円形状の空間部を駆動流体の流通路20の一部とするとともに、この流通路20に設けられている水車部材23をシャーシ部材18の内部に軸支した回転軸16の外周部に取り付けることにより、水車部材23の回転に伴って回転軸16も同時回転駆動できるように構成されている。
【0018】
なお、前記フランジ部材26はその外周側の段部26aにより支持壁30を貫通させて設けられ、ほぼ鉛直に立設されている仕切壁30に対してシャーシ部材18が固定されている。この仕切壁30は洗浄装置において基板1を洗浄する領域の全体を覆う箱形の外殻壁の一部とされている。
なお、フランジ部材25とフランジ部材26との嵌め込み内部側の境界部分にベアリング部31が設けられ、フランジ部材27とフランジ部材28との嵌め込み内部側の境界部分にベアリング部32が設けられ、これらのベアリング部31、32は、その外面側をフランジ部材25、26、27、28により完全に囲まれていて、ベアリング部31、32に必然的に含まれるオイル分などがシャーシ部材18の外部側に漏れないように密閉構造とされている。
【0019】
次に、前記シャーシ部材18の流通路20においてその供給路21側には継手部材35が接続され、その排出路22側には継手部材36が接続されていて、これらの継手部材35、36に図示略のポンプ装置の給液用の配管35Aと戻液用の配管36Aが接続されていて、図示略のポンプ装置から供給路21を介して流通路20に水などの駆動流体を高速で供給した後、排出路22から排出することにより、水車部材23を目的の回転数で回転駆動できるように構成されている。なお、ここで用いるポンプ装置は、噴出装置2の噴出ノズル5、6に洗浄液を供給するためのポンプ装置の配管系から分岐して水を供給しても良いし、独自に別途ポンプ装置を設けても良い。ただし、元々噴出ノズル5,6に接続されている洗浄液用のポンプを用いることで、装置の共用化を図ることができ、別途ポンプを設ける必要が無くなるので洗浄装置全体の構成上、コスト面では有利となる。なお、図4、図5は水車部材23を内蔵したシャーシ部材18とその周囲のユニット構造を部分的に示している。
【0020】
次に、前記駆動機構13は、図6、図7の正面図に示す如く正面円形状の支持ベース15の正面側に120゜間隔で3基設けられている。支持ベース15は図1に示す如く円盤状の取付基盤40とこの取付基盤40の背面側に固定された扁平カップ型のバックプレート41とこのバックプレート41の背面側に取り付けられた中空構造の回転軸16とを具備してなり、この形態では取付基盤40を貫通する形で駆動機構13が3基備えられている。これらの駆動機構13は、取付基盤40をベアリング部材45を介して貫通する旋回軸46が設けられ、取付基盤40の前面側に突出する旋回軸46の先端部にアーム部材47が接続され、このアーム部材47の先端部に支持ロッド10が水平向きに接続されている。
【0021】
前記アーム部材47は、旋回軸46の先端部側に旋回軸46とほぼ直角に接続され、取付基盤40の前面に沿って旋回自在とされ、アーム部材47の先端部側にアーム部材47とほぼ直角に支持ロッド10が接続されているので、旋回軸46の回動に応じて旋回するアーム部材47を介して支持ロッド10が旋回軸46と平行な向きを保ったまま移動するように構成されている。また、取付基板40の前面側において旋回軸46が貫通した部分を覆うように丸形のシールプレート44が固定され、旋回軸46を覆うベアリング部材45をシールプレート44が目隠しした構造とされていて、中空構造の支持ベース15の内部に洗浄液が浸入しないように、ベアリング部材45に洗浄液が到達しないように液密構造とされている。
以上構成の駆動機構13が支持ベース15に120゜間隔で3基設けられ、各駆動機構13がそれらの支持ロッド10を取付基盤40の中心から若干離れた位置に隣接配置して位置決めされているので、3基の駆動機構13の旋回軸46の回動に応じて3本の支持ロッド10が取付基盤40の中心側において互いに接近する方向か離間する方向に移動してそれらの相互間隔を拡張したり狭めたりできるように構成されている。
【0022】
前記支持ベース15の内部側に位置する各旋回軸46の基端側には、旋回軸46と直角向きに支持ベース15の裏面中央側に先端部を向けて接合されたベースアーム48が設けられ、これらのベースアーム48の先端側には図8、図9に示す如くローラー型の摺動駒50が装着されている。従って3基の駆動機構13の摺動駒50が支持ベース15の内部中央側(取付基盤40の裏面中央側)において相互に所定の間隔をあけて120゜間隔で隣接配置されている。そして、これら3つの摺動駒50の間に亀頭型の押圧駒51が挿入配置され、この押圧駒51には先の中空構造の回転軸16の内部にスライド自在に挿入されたスライド軸52が接続されている。
前記押圧駒51は、取付基盤40に接近するにつれて先窄まり形状となる斜面部51cを有する先頭部51aと、円筒状周面を有する胴部51bとからなり、3つのローラ駒50の間に先頭部51aを押し込んでゆくことにより3つのローラ駒50の相互間隔を拡張することができるように構成され、押圧駒51の胴部51bを3つのローラ駒50の間に位置させた状態において3つのローラ駒50の相互間隔を最大にした状態で維持できるように構成されている。
【0023】
更に前記支持ベース15の内部には、押圧ロッド55を筒形のブロック部材56に出入自在に備えたピストン機構を有してなり、ブロック部材56の内部に設けられている押出用のバネ部材57が設けられ、押圧ロッド55をブロック部材56から所定長さ突出できるように構成したスプリングコイル等の付勢部材58が、各ベースアーム48に付属するように設けられ、各付勢部材58によって各ベースアーム48を支持ベースの中心側に付勢して各押圧駒51を支持ベース15の中心側に近づく方向に移動できるように構成されている。
以上の構成により、スライド軸52を前進方向(図1の左方向)にスライド移動させてその周囲側に設けられている3つの摺動駒50を押圧駒51の先頭部51aの斜面により互いに離間する方向に押し広げることができ、押圧駒51の胴部51bにより3つの摺動駒51を離間した状態に維持できると共に、スライド軸52を後退方向(図1の右方向)にスライド移動させることにより、3つの摺動駒50の内側から押圧駒51を退避させることができ、その状態では自動的に付勢部材58の押圧ロッド55がベースアーム48を付勢して3つの摺動駒50の間隔を拡張するように構成されている。
従って、以上の動作に応じて、3本の支持ロッド10は図6に示す状態では互いに接近した状態となり、図7に示す状態では互いに離間した拡開状態となるので、図6に示す状態では2点鎖線に示す被洗浄物である基板1の中心の孔部1aに3本の支持ロッド10を遊挿することができ、図7に示す状態では2点鎖線に示す基板1の孔部1aの内縁に3本の支持ロッド10を押し付けて孔部1aの内側から基板1を支持できるように構成されている。
【0024】
ところで、前記スライド軸52の後端部側はシャーシ部材18を貫通した状態でシャーシ部材18の外部に突出され、この突出端52aの外方にはピストン装置のピストンロッドなどの押圧部材60が設けられ、この押圧部材60の移動に応じて前記スライド軸52を前進させ、押圧駒51により摺動駒50を介しベースアーム48を回動させることで移動ロッド10を移動できるように構成されている。
【0025】
次に、本実施形態の洗浄装置を用いて基板1を洗浄する場合について説明する。
本実施形態の洗浄装置により洗浄するのは、中央に孔部1aを有するドーナツ盤状の基板1であり、この基板1をロボットハンドなどの把持装置により把持した状態で洗浄装置近傍まで搬送する。あるいは基板カセットなどの収容容器に挿入した状態で洗浄装置近傍まで搬送する。
本実施形態の洗浄装置により基板1を把持する前の状態においては、スライド軸52を後退させて(図1の右側に移動させて)押圧駒51を3個の摺動駒50の間の空間から退避させておく。この状態において洗浄装置の3本の支持ロッド10は図6に示す如く最も接近した状態とされており、基板1の孔部1aに3本の支持ロッド10を挿通することができる。
【0026】
洗浄装置の近くまで搬送してきた基板1をロボットハンド等の搬送装置により垂直に起立させた状態にして、基板1の孔部1aに3本の支持ロッド10を挿通する。この状態からスライド軸52の後端部52aをシリンダ装置のピストン60により押し込んでスライド軸52を前進させ、押圧駒51を3個の摺動駒50の間に押し込むことにより3個の摺動駒50の間隔を拡張し、3本のベースアーム48を介し3本の旋回軸46を所定角度回動させる。この操作により3本の支持ロッド10の間隔を図7に示す如く拡張して孔部1aの内周縁に3本の支持ロッド10を押し付けることができるので、3本の支持ロッド10により孔部1aの内側から基板1を3点安定支持することができる。
この状態において、図示略のポンプなどを用いて水などの駆動液を供給路21から流通路20に送り込み、排出路23から排出することで、水車部材23を回転駆動することができ、これにより回転軸16により支持ベース15を回転駆動できるので、3本の支持ロッド10で支持した基板1を回転させることができる。
この後、噴射ノズル5、6から所望の洗浄液を所定の圧力で噴出し、回転中の基板1の両面に吹きかけることで基板1を洗浄することができる。また、洗浄液の噴射を終了すると、基板1をそのまま回転させることができるので、基板1の表裏面に残留している洗浄液を吹き飛ばして乾燥させることもできる。
【0027】
本実施形態の洗浄装置では、基板1を把持する3本の支持ロッド10を水力回転機構12により回転駆動するので、従来用いていた電力モータは必要無くなる。従って電力モータに必然的に設けられる電気接点、摺動接点、オイル潤滑部、オイル潤滑部を囲うシール部材、漏電防止のためのシール機構などが不要になり、これらの部材に起因する発塵が生じないので、発塵の少ない状態で基板1の洗浄処理ができる。特に、最近の高性能の磁性膜、下地膜、保護膜を有して表面の清浄度レベルとして高度なレベルを要求される磁気記録媒体用の基板1であっても、洗浄中に微細な塵埃を付着させることがない洗浄処理を実現できる。
また、本実施形態の装置では、旋回軸46の周囲のベアリング部材45、押圧駒51が摺動駒50を押圧移動させる部分を中空構造の支持ベース15で覆っているので、これらの部分からの発塵を防止できるとともに、スライド軸52を回転軸16の内部に設けて回転軸16で覆っているので、スライド軸52とその周囲の部分での発塵も防止できる。
更に、回転軸16をシャーシ部材18で覆い、回転軸16の周囲のベアリング部材31、32をシャーシ部材18で覆い、スライド軸52の後端部側のみをシャーシ部材18の外部に突出させているので、回転軸16とその周りの部分における発塵も防止することができる。
【0028】
また、仮に流通路20を構成するフランジ部材26、27の水密シール機構に隙間発生等の不具合があっても、その部分から漏れるのは水であるので、発塵の虞は少ない。更に、電動式モータを用いた洗浄装置に必要であったオイルシールが不要になるので、回転部分のクリアランスも大きくすることができる。具体的には、回転軸16の回転部分周りのクリアランスを大きくすることで発塵の虞を少なくできる。また、電動式モータでは必然的に必要であったコントローラや制御回路が不要となり、これらを略することで装置簡略化に寄与する。
ところで、洗浄装置には噴出ノズル5、6に洗浄圧水を供給するためのポンプ装置を備えることが一般的なので、洗浄圧水供給用のポンプから水力回転機構12のための圧水を容易に供給することができ、その場合に水力回転機構12のためのポンプなどを別途用意する必要がないので装置コストの削減に寄与する。
なお、本実施形態では仕切壁30の内部側に噴出ノズル5、6を設けて基板1を洗浄し、仕切壁30の外側にフランジ部材26、27の接続部と流通路20を設けて水力回転機構12の駆動源としているので、仮に何らかの原因により駆動水が漏れることがあっても、仕切壁30により基板側への悪影響を排除できる。
【0029】
図10〜図13は本発明に係る第2実施形態の洗浄装置を示すもので、この第2実施形態の洗浄装置は、図1〜図9を基に先に説明したスピンドルチャック11、水力回転機構12を円盤状のテーブル70の前面側に4基搭載した構成とされている。
本実施形態の洗浄装置では、テーブル70に装着された、4基のスピンドルチャック11のうち、下の2個のスピンドルチャック11にチェックした基板1の洗浄中に、上の2個のスピンドルチャック11にチェックした基板1の交換を行う、あるいはその逆で使用するなどの使用形態を採用できる構成とされている。
この第2実施例の洗浄装置において、図11に示す如く円盤状のテーブル70に十字型の補強フレーム71が添設され、この補強フレーム71とテーブル70とを貫通する状態であって、テーブル70を正面視した状態においてその周方向に90゜間隔で合計4基のスピンドルチャック11が設けられている。前記補強フレーム71の裏面側には、4基の各スピンドルチャック11に駆動液としての水を供給するための吸水用あるいは排水用の配管72、73、74、75、76、77、78、79が図11に示す如く交互にたすき掛け状に配置されている。
前記テーブル70の中央部には、補強フレーム71の裏面側に位置する状態でドラム状の給排水集中ユニット80が設けられ、この給排水集中ユニット80に前述の配管72〜79が図11に示す如くたすき掛け状に接続されている。
【0030】
前記給排水集中ユニット80の中央部には、中空の支持軸81が接続され、この支持軸81の内部には、支持軸81の軸方向に沿って2本の給水路81aと2本の排水路81bとが形成され、給排水集中ユニット80に接続された配管72〜79のうち、給水用となる4本の配管72、74、76、78が、4基のスピンドルチャック11に設けられている水力回転機構12の供給路21に接続されるように、残り4本の排水用となる配管73、75、77、79が、4基の水力回転機構12の排水路22に接続されるように接続されている。
これらの配管のうち、給水用の配管72、74は支持軸81の一方の給水路81aに接続され、給水用の配管76、78は支持軸81の他方の給水路81aに接続され、排水用の配管73、75は支持軸81の一方の排水路81bに接続され、排水用の配管77、79は支持軸81の他方の排水路81bに接続されている。
【0031】
次に、支持軸81は仕切壁85に取り付けられたブラケット86と支持ユニット87に支持された状態で回転自在に軸支されている。前記支持軸81において給排水ユニット80の接続部分とブラケット86の軸支部分との間の部分には、ドーナツ盤状の仕切部材87a、87b、87cを積層した3層構造の円環状の支持ユニット87が設けられ、この支持ユニット87に支持軸81が支持されている。
本実施形態の構造では、支持軸81の内部に給水路81aと排水路81bが交互に合計4本設けられて各水路が形成され、これら水路のうちの4本が先の8本の配管72〜79のうちの4本に接続されるので、本実施形態では同時に2基のスピンドルチャック11を回転駆動できるように構成されている。
【0032】
以上の接続構造について詳述すると、前記支持軸81は給排水集中ユニット80の円環状の支持部82を挿通する形で支持されるとともに、支持軸81の先端部分が支持部82の内周面を摺動し、支持軸81内の給水路81aまたは排水路81bの先端部の側方に形成されている横穴部81cが先の配管72〜79と位置合わせされた時に、給水路または排水路と配管が接続されるようになっている。なお、図では略されているが、給水路81aまたは排水路81bにおいて後述する図10B−B‘断面位置、図10C−C’断面位置、図10D−D‘断面位置においても先の横穴部81cと同様な横穴部が各々必要な位置に形成され、給水路81a、排水路81bと後述の各配管が接続できるように構成されている。
【0033】

給排水路の接続構造において更に説明すると、図10のA−A‘線に沿う断面が図12(A)で示す配管配置、図10のB−B’線に沿う断面が図12(B)で示す配管配置、図10のC−C‘線に沿う断面が図13(A)で示す配管配置、図10D−D’線に沿う断面が図13(B)で示す配管配置に対応する。
従って、図10のA−A‘線に沿う断面位置においては図12(A)に示す如く8本の配管72〜79(IN(給水路)とOUT(排水路)が1組ずつ配列された状態)が配置され、図10のB−B’線に沿う断面位置においては図12(B)で示す如く4本の配管(OUTが4本)84が配置され、図10のC−C‘線に沿う断面においては図13(A)で示す如く4本の配管(INとOUTが交互に合計4本)88が配置され、図10D−D’線に沿う断面においては図13(B)で示す如く2本の配管(OUTが2本)89が配置されている。
【0034】
以上の構成により、給水管88と支持軸81の給水路81aを介して4基のスピンドルチャック11の各水力回転機構12の供給路21のうち、2基の供給路21にポンプから駆動液としての水などの流体を圧送できるとともに、水力回転機構12の駆動に使用した駆動液としての水を支持軸81の排水路81bと排水管89を介してポンプに戻すことで、2基のスピンドルチャック11を同時回転駆動できるように構成されている。
【0035】
なお、図10に符号90で示すのは、仕切壁85の外部に固定された取付ボックスであり、この取付ボックス90にはターンテーブル駆動用のモータ91が内蔵されている。なお、図10ではモータ91がターンテーブルを駆動する部分に設けられている駆動力伝達機構は略している。
【0036】
また、図10に示す如く取付ボックス90の上方側には、仕切壁85を貫通する状態に設けられた、スライドロッド92がほぼ水平にスライド移動自在にブラケット93により支持され、スライドロッド92の外方端に設けられたシリンダ装置95によって作動ロッド92がスライド移動自在にされている。また、作動ロッド92が仕切壁85を貫通する部分は液密シール構造にされているとともに、作動ロッド92の先端部はテーブル70に装着されている4基のスピンドルチャック11のうち、上方に位置している2基のスピンドルチャック11に対応する位置に設けられ、シリンダ装置95の動作に応じて前進した作動ロッド92の先端がスピンドルチャック11の後部側に突出されているスライド軸52の突出端52aを押圧して各スピンドルチャック11の3本の支持ロッド10の把持動作を開始できるように構成されている。
【0037】
図10〜図13に示す第2実施形態の洗浄装置では、スピンドルチャック11を4基設け、2基のスピンドルチャック11側に駆動水を供給できる構成となっているので、2基の基板1を同時チャックして各スピンドルチャック11に対応した噴出ノズルを設けて洗浄液を噴射でき、洗浄中に他の2基のスピンドルチャック11は基板1の交換が可能である。また、テーブル70を反転駆動して2基のスピンドルチャック11が把持した基板1の位置替えを行いながら洗浄作業と交換作業を行うことができる。
【0038】
ところで、これまで説明した実施の形態においては、ドーナツ円盤状の基板1を把持する際、スピンドルチャック11の3本の支持ロッド10を基板1の孔部1aの内側に配置し、3本の支持ロッド10同士の間隔を拡張し、内側から基板1を把持する構成を採用したが、3本あるいは3本以上の複数本の支持ロッド10を基板1の外側に配置し、支持ロッド10どうしの間隔を狭めて外周側から基板1を把持した上で、基板1を回転させる構成を採用しても良い。また、複数枚の基板1を平行に離間した状態で複数枚の単位で把持することができるように、別途外周に溝の付いた回転可能な円盤状の板材をチャック駒として3個以上設け、3個以上のチャック駒にて複数枚単位で平行に把持した基板を纏めて回転させながら洗浄できる構成とすることもできる。即ち本願発明において、基板1をチェックして把持する部分の構造は適宜変更可能であり、基板1をその内周側から、あるいは、外周側から把持する形態は適宜変更可能である。
例えば、図7に示す状態において3本の支持ロッド10がそれらの間隔を拡張した状態においてはそれらの間に基板1を挿入できる大きさの間隔とし、図6に示す状態において3本の支持ロッド10がそれらの間隔を狭めた状態では基板1の外周部を3本の支持ロッド10が挟み混むことができる程度の大きさに設計変更すれば、基板1の外周部を把持して洗浄する装置構成を容易に実現できる。勿論、支持ロッド10に変えて前述のチェック駒を設けるならば、複数枚の基板1を平行に並べた状態で纏めて把持し洗浄することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
直径2.5インチ(48mm)で中央に直径12mmの孔部(丸穴状の開口部)を有する磁気記録媒体用基板を1枚ずつ、図1〜図9を基に先に説明した基板の洗浄装置を用いて湿式洗浄した。
基板の孔部に間隔を狭めた状態の3本の支持ロッドを挿通し、スライド軸の先端の押圧駒を3つの摺動駒の間に押し込み、3本の支持ロッド間の間隔を拡張し、基板を支持ロッドにより把持した状態から、水力回転機構に印加する水力を調整し、回転軸とともに基板を600rpmで回転させた。
基板表面に隣接配置されている噴出ノズルから純水の洗浄液を0.5リットル/分の割合で噴射し、19秒間洗浄する基板両面の洗浄作業を行った。
洗浄後の基板を更に横に設けた同じ構造の他の基板洗浄装置で再度純水により同じ条件で洗浄した。この2回の洗浄処理を25枚の基板について行った。
2回の洗浄処理を経た基板25枚を洗浄装置から取り出し、乾燥し、その表面を100倍の光学顕微鏡で観察したところ、基板表面に異物の付着物を確認できなかった。勿論、液滴の乾燥に伴って発生しやすいシミも観察されなかった。
【0040】
(比較例)
実施例構造の洗浄装置に対してスピンドルチャックの部分を電動式モータで回転駆動する装置を作成し、水力回転機構の部分を電動式モータで置き換えた形態の洗浄装置を製造し、基板の洗浄処理に供した。この電動式モータのシャフトのシール部分はオイルを用いた構造である。
先の実施例1と同様の条件で回転駆動し、洗浄したところ、洗浄後の基板表面顕微鏡観察において全ての基板に乾燥に伴う、シミ状の模様が観察された。このシミは、電動式モータのシャフト部分に用いられているシール用のオイルに起因するものと推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る洗浄装置の第1実施形態を示す断面図。
【図2】同第1実施形態の洗浄装置の水力回転機構部分を示す模式図。
【図3】同第1実施形態の洗浄装置の水力回転機構部分の断面図。
【図4】同第1実施形態の洗浄装置の水力回転機構部分の側面図。
【図5】同第1実施形態の洗浄装置の水力回転機構部分の背面図。
【図6】同第1実施形態のスピンドルチャックにおける支持ロッドの接近状態を示す正面図。
【図7】同第1実施形態のスピンドルチャックにおける支持ロッドの拡開状態を示す正面図。
【図8】同第1実施形態の支持ロッドの接近状態における支持ベースの内部状態を示す背面図。
【図9】同第1実施形態の支持ロッドの拡開状態における支持ベースの内部状態を示す背面図。
【図10】本発明に係る洗浄装置の第2実施形態を示す側面図。
【図11】同第2実施形態の洗浄装置を示す正面図。
【図12】図12(A)は同第2実施形態の洗浄装置に設けられる配管構造の第1の部分を示す正面図、図12(B)は同第2実施例の洗浄装置に設けられる配管構造の第2の部分を示す正面図。
【図13】図13(A)は同第2実施形態の洗浄装置に設けられる配管構造の第3の部分を示す正面図、図13(B)は同第2実施形態の洗浄装置に設けられる第4の部分を示す正面図。
【符号の説明】
【0042】
1…基板、1a…孔部、2…噴出装置、3…チャック装置、5、6…噴出ノズル、10…支持ロッド、11…スピンドルチャック、12…水力回転機構、13…駆動機構、15…支持ベース、16…回転軸、18…シャーシ部材、20…流通路、21…供給路、22…排出路、23…水車部材、30…仕切壁、40…取付基板、46…旋回軸、47…アーム部材、48…ベースアーム、50…摺動駒、51…押圧駒、51a…先頭部、52…スライド軸、70…テーブル、81…支持軸、72〜79…配管、92…スライドロッド、95…シリンダ装置、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に孔部が形成されたドーナツ円盤状の基板を洗浄する装置であり、前記基板に洗浄液を吹き付けるための噴出装置と、該噴出装置に隣接配置されて前記基板を支持するためのチャック装置と、このチャック装置を回転駆動する水力回転機構とを具備してなり、
前記水力回転機構が、前記回転軸を取り囲むととともに前記水力回転機構の駆動流体の流通路を内部に備えたシャーシ部材と、該シャーシ部材内の流通路に望んで前記シャーシ部材内部に回転自在に設けられ前記スピンドルチャックの回転軸に接続された水車部材と、前記流通路に駆動流体を供給して前記水車部材を回転駆動するために前記シャーシ部材に設けられた駆動流体の供給路および排出路を備えてなることを特徴とする基板の洗浄装置。
【請求項2】
前記チャック装置が前記基板の孔部の内側に挿通される支持ロッドを複数本備えたスピンドルチャックと、該スピンドルチャックを回転駆動する水力回転機構とを具備してなり、
前記スピンドルチャックが、前記支持ロッドを前記基板の直径方向に移動させて前記各支持ロッドを前記基板の直径方向に移動自在に支持する駆動機構を複数備えた支持ベースと、該支持ベースから前記支持ロッドと平行な方向に延出された回転軸とを具備してなることを特徴とする請求項1に記載の基板の洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板の洗浄装置において、前記支持ベースと前記回転軸が中空構造とされ、前記支持ベースの前面側に、前記支持ロッドを前記基板と直角方向に向けたまま前記基板の径方向に旋回自在に支持するアーム部材が設けられ、前記支持ベースの内部側に該アーム部材を旋回自在に支持する旋回軸と該旋回軸と直角方向に延出形成されたベースアームが設けられ、前記支持ベースと前記回転軸の内部側と前記シャーシ部材を貫通して設けられたスライド軸と、該スライド軸の先端部側に設けられて前記支持ベースの内部側に配置され、前記スライド軸の移動に応じて前記複数のベースアームを押圧移動させ、前記旋回アームを介して前記複数の支持ロッドを相互に接近するか離間する方向に移動させて前記複数の支持ロッドを前記基板の孔部に挿通するか、前記支持ロッドを前記孔部の内側に押し付けて基板を孔部の内側から把持する機能を具備したことを特徴とする請求項2記載の基板の洗浄装置。
【請求項4】
前記スライド軸の先端部に亀頭型の押圧駒が取り付けられ、該押圧駒の先頭部の外周面に形成された斜面部が、前記複数のベースアームを押圧移動させて前記複数の支持ロッドの相互間隔を拡開して前記基板を孔部の内側から把持する機能を具備したことを特徴とする請求項3に記載の基板の洗浄装置。
【請求項5】
前記押圧駒の先端部外周面に前記斜面部が形成され、前記押圧駒の後部側に円筒部が形成され、前記押圧駒の円筒部による前記支持ロッドの拡開状態において前記基板が把持ロック状態とされることを特徴とする請求項4に記載の基板の洗浄装置。
【請求項6】
前記シャーシ部材が複数枚のフランジ円盤の重ね合わせにより構成され、前記複数枚のフランジ円盤の間に駆動流体の流通路が液密状態で構成され、前記流通路の一端側に前記駆動流体の供給路が接続され、前記流通路の他端側に前駆駆動流体の排出路が接続されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の基板の洗浄装置。
【請求項7】
前記支持ベースの前面側に、該支持ベースの中心部を囲むように3つの駆動機構が配置され、各駆動機構に支持ロッドが設けられ、各支持ロッドに対応するように旋回アームと旋回軸とベースアームとが前記支持ベースに設けられ、前記3本の支持ロッドが前記支持ベースの前面側において3本揃って相互に接近自在または相互に離間自在に設けられてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の基板の洗浄装置。
【請求項8】
前記シャーシ部材が仕切壁を貫通して設けられ、該仕切壁の内部空間側に前記基板側への洗浄液の噴出装置が設けられ、前記仕切壁の外部空間側に前記シャーシ部材の流通路が設けられ、前記洗浄液の噴出装置と前記シャーシ部材の流通路が仕切壁により分離されてなることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の基板の洗浄装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の基板の洗浄装置が、反転自在に設けられたテーブルの前面側に前記支持ベースと前記支持ロッド側を突出させて複数個取り付けられ、該テーブルの裏面側に前記複数の洗浄装置の洗浄液供給路あるいは洗浄液排出路に連通する配管が設けられ、これらの配管が前記テーブルを支持する支持軸に内蔵された流通路に接続されてなることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の基板の洗浄装置。
【請求項10】
前記テーブルを支持する支持軸が支持壁に取り付けられ、この支持壁を貫通して設けられたスライドロッドが支持壁の外部側に設けられたシリンダ装置によりスライド移動自在に設けられ、前記テーブルの反転により該スライドロッドの先端位置に移動した前記支持ベースのスライド軸の外部突出端を前記スライドロッドにより押圧して前記スピンドルチャックにより前記基板を支持可能としてなることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の基板の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−45589(P2009−45589A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216087(P2007−216087)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】