説明

基板処理装置及びその制御方法

【課題】基板処理装置と上位コンピュータとのネットワーク通信性能が低下した際に、該基板処理装置から多量のメッセージを送信して通信制御が異常となり、障害が発生してしまうのを防止する基板処理装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】基板を処理するために必要なデータや装置の稼働状況をモニタリングするためのデータを生成する装置制御部と、前記データを一時的に格納するバッファを有する通信部と、前記装置制御部で生成されたデータを前記通信部を介して前記上位コンピュータに送信する通信制御部とを含む主制御部を具備した基板処理装置であって、前記通信制御部は、通信状態をチェックする工程と優先度をチェックする工程を含む送信フロー制御プログラムを実行し、前記バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックし、OKであれば、一次メッセージを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置を製造する一工程であり、ウェーハ、ガラス基板等の基板に薄膜の生成、不純物の拡散、アニール処理、エッチング等の基板処理、或はLCDの製造を行う基板処理装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板を処理して半導体装置を製造する基板処理システムは、第一の管理装置(HOSTコンピュータ)と該HOSTコンピュータに接続された複数台の基板処理装置とを具備し、該基板処理装置は前記HOSTコンピュータによって統括管理されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、基板処理装置は、モニタリングシステムのサーバ(M/S)とLAN接続され、基板処理システムを構成する場合がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
このとき、サーバは、少なくとも一台の基板処理装置と接続することにより、稼働状況のリアルタイムモニタリング及びデータ収集やデータバックアップなどを行う。そして、所定のクライアント(ユーザ端末)の検索により、所望なデータを提供する。
【0005】
このように、基板処理装置は、HOSTコンピュータやサーバとLAN接続されるため、ネットワークにおける通信トラフィック量が増大したり、ネットワーク機器の性能が一時的に低下したりすると、基板処理装置からの通信も影響を受けて送信可能な通信メッセージが減少してしまう。
【0006】
従来は、ネットワーク通信性能が低下した状態であっても、基板処理装置はモニタリング用のデータメッセージを大量に送信しようとしていたため、送信可能な通信量を超えてしまうと、送信エラーにより通信制御処理が遅延して、モニタリング用のデータだけでなく、基板処理装置をコントロールする重要なメッセージまで欠落してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−053603号公報
【特許文献2】特開2008−283169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、基板処理装置と上位コンピュータとのネットワーク通信性能が低下した際に、該基板処理装置から多量のメッセージを送信して通信制御が異常となり、装置稼動停止や処理中断という障害が発生してしまうのを防止する送信フロー制御機能を有する基板処理装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基板を処理するために必要なデータや装置の稼働状況をモニタリングするためのデータを生成する装置制御部と、前記データを一時的に格納するバッファを有する通信部と、前記装置制御部で生成されたデータを前記通信部を介して前記上位コンピュータに送信する通信制御部とを少なくとも含む主制御部を具備した基板処理装置であって、前記通信制御部は、通信状態をチェックする工程と優先度をチェックする工程を含む送信フロー制御プログラムを実行し、前記バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックし、OKであれば、一次メッセージを送信するものであり、また、バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックした結果、少なくとも一方がNGであれば、優先度をチェックする工程を実施し、更に、優先度をチェックする工程では、前記一次メッセージを送信する送信先の優先度と前記一次メッセージの重要度をチェックし、前記送信先の優先度又は前記一次メッセージの重要度が高ければ、前記一次メッセージを送信し、前記送信先の優先度且つ前記一次メッセージの重要度が低ければ、前記一次メッセージを破棄する基板処理装置に係るものである。
【0010】
また、本発明は、基板処理装置と上位コンピュータとの通信状態をチェックする工程と一次メッセージに関する優先度をチェックする工程を含む送信フロー制御プログラムを実行し、バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックし、OKであれば、前記一次メッセージを送信し、バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックした結果、少なくとも一方がNGであれば、前記一次メッセージを送信する送信先の優先度と前記一次メッセージの重要度をチェックし、前記送信先の優先度又は前記一次メッセージの重要度が高ければ、前記一次メッセージを送信し、前記送信先の優先度且つ前記一次メッセージの重要度が低ければ、前記一次メッセージを破棄する基板処理装置の制御方法に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ネットワーク通信性能が低下している状態でも、重要なメッセージを優先して送信することが可能となるため、送信メッセージ損失による影響を最小限に抑えることができる。よって、本発明における基板処理装置は、通信コントロール不能に陥ることが無いため、処理中断により基板を損失させる(ロットアウトする)ことがない。更に、通信性能が低下しても基板処理を継続させることができるので、装置稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る基板処理装置を示す概略側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る基板処理システム構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る基板処理装置における通信メッセージを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る基板処理装置における送信フロー制御を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態における基板処理装置は、基板処理装置とホストコンピュータ又サーバ等の上位コンピュータとの通信状態をチェックする工程と該基板処理装置と該上位コンピュータとの通信に使用される一次メッセージに関する優先度をチェックする工程を含む送信フロー制御プログラムを実行し、前記上位コンピュータと通信するための通信ドライバのバッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックし、両方ともOKであれば、前記一次メッセージを送信し、バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックした結果、少なくとも一方がNGであれば、前記一次メッセージを送信する送信先の優先度と前記一次メッセージの重要度をチェックし、前記送信先の優先度又は前記一次メッセージの重要度が高ければ、前記一次メッセージを送信し、前記送信先の優先度且つ前記一次メッセージの重要度が低ければ、前記一次メッセージを破棄するものである。初めに、送信フロー制御プログラムは、送信しようとするメッセージが一次メッセージか二次メッセージか判定を行い、判定した結果、一次メッセージではなく二次メッセージ(一次メッセージ受信に対する応答メッセージ)であれば、制御対象とはせず返信処理を実施する。尚、本願発明で、制御対象としないというのは、前記通信状態チェック工程と前記優先度チェック工程を実施しないということである。
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。先ず本発明が実施される基板処理装置について説明する。
【0015】
尚、基板処理装置は、半導体装置の製造工程の1つである基板処理工程を実施する。
【0016】
図1及び図2に示されている様に、基板処理装置1は筐体2を備えている。該筐体2の正面壁3の正面前方部にはメンテナンス可能な様に設けられた開口部としての正面メンテナンス口4が開設され、該正面メンテナンス口4は正面メンテナンス扉5によって開閉される。
【0017】
前記筐体2の前記正面壁3にはポッド搬入搬出口6が前記筐体2の内外を連通する様に開設されており、前記ポッド搬入搬出口6はフロントシャッタ(搬入搬出口開閉機構)7によって開閉され、前記ポッド搬入搬出口6の正面前方側にはロードポート(基板搬送容器受渡し台)8が設置されており、該ロードポート8は載置されたポッド9を位置合せする様に構成されている。
【0018】
該ポッド9は、密閉式の基板搬送容器であり、図示しない工程内搬送装置によって前記ロードポート8上に搬入され、又、該ロードポート8上から搬出される様になっている。
【0019】
前記筐体2内の前後方向の略中央部に於ける上部には、回転式ポッド棚(基板搬送容器格納棚)11が設置されており、該回転式ポッド棚11は複数個のポッド9を格納する様に構成されている。
【0020】
前記回転式ポッド棚11は垂直に立設されて間欠回転される支柱12と、該支柱12に上中下段の各位置に於いて放射状に支持された複数段の棚板(基板搬送容器載置棚)13とを備えており、該棚板13はポッド9を複数個宛それぞれ載置した状態で格納する様に構成されている。
【0021】
前記回転式ポッド棚11の下方には、ポッドオープナ(基板搬送容器蓋体開閉機構)14が設けられ、該ポッドオープナ14は前記ポッド9を載置し、又該ポッド9の蓋を開閉可能な構成を有している。
【0022】
前記ロードポート8と前記回転式ポッド棚11、前記ポッドオープナ14との間には、ポッド搬送装置(容器搬送装置)15が設置されており、該ポッド搬送装置15は、前記ポッド9を保持して昇降可能、水平方向に進退可能となっており、前記ロードポート8、前記回転式ポッド棚11、前記ポッドオープナ14との間で前記ポッド9を搬送する様に構成されている。
【0023】
前記筐体2内の前後方向の略中央部に於ける下部には、サブ筐体16が後端に亘って設けられている。該サブ筐体16の正面壁17にはウェーハ(基板)18を前記サブ筐体16内に対して搬入搬出する為のウェーハ搬入搬出口(基板搬入搬出口)19が一対、垂直方向に上下二段に並べられて開設されており、上下段のウェーハ搬入搬出口19,19に対して前記ポッドオープナ14がそれぞれ設けられている。
【0024】
該ポッドオープナ14は前記ポッド9を載置する載置台21と、前記ポッド9の蓋を開閉する開閉機構22とを備えている。前記ポッドオープナ14は前記載置台21に載置された前記ポッド9の蓋を前記開閉機構22によって開閉することにより、前記ポッド9のウェーハ出入れ口を開閉する様に構成されている。
【0025】
前記サブ筐体16は前記ポッド搬送装置15や前記回転式ポッド棚11が配設されている空間(ポッド搬送空間)から気密となっている移載室23を構成している。該移載室23の前側領域にはウェーハ移載機構(基板移載機構)24が設置されており、該ウェーハ移載機構24は、ウェーハを載置する所要枚数(図示では5枚)のウェーハ載置プレート25を具備し、該ウェーハ載置プレート25は水平方向に直動可能、水平方向に回転可能、又昇降可能となっている。前記ウェーハ移載機構24はボート(基板保持具)26に対してウェーハ18を装填及び払出しする様に構成されている。
【0026】
前記移載室23の後側領域には、前記ボート26を収容して待機させる待機部27が構成され、該待機部27の上方には縦型の処理炉28が設けられている。
【0027】
該処理炉28は前記ボート26を収納する処理室を有し、該処理室の下端部は、炉口部となっており、該炉口部は炉口シャッタ(炉口開閉機構)29により開閉される様になっている。
【0028】
前記筐体2の右側端部と前記サブ筐体16の前記待機部27の右側端部との間には前記ボート26を昇降させる為のボートエレベータ(基板保持具昇降機構)31が設置されている。該ボートエレベータ31の昇降台に連結されたアーム32には蓋体としてのシールキャップ33が水平に取付けられており、該シールキャップ33は前記ボート26を垂直に支持し、前記処理炉28の炉口部を気密に閉塞可能となっている。
【0029】
前記ボート26は複数本の支柱を備えており、該支柱は複数枚(例えば、50枚〜125枚程度)のウェーハ18を、その中心を揃えて水平姿勢で多段に保持する様に構成されている。
【0030】
尚、前記基板処理装置1内部にはダミーウェーハ(図示しない)が保管されており、必要に応じ、前記ボート26上部、下部には所要枚数のダミーウェーハが装填され、又処理の内容に応じて所要間隔でモニタウェーハが前記ボート26に装填される様になっている。
【0031】
前記ボートエレベータ31側と対向した位置にはクリーンユニット35が配設され、該クリーンユニット35は、清浄化した雰囲気若しくは不活性ガスであるクリーンエア34を供給する様供給ファン及び防塵フィルタで構成されている。前記ウェーハ移載機構24と前記クリーンユニット35との間には、ウェーハの円周方向の位置を整合させる基板整合装置としてのノッチ合せ装置(図示せず)が設置されている。
【0032】
前記クリーンユニット35から吹出されたクリーンエア34は、ノッチ合せ装置(図示せず)及び前記ウェーハ移載機構24、前記ボート26に流通された後に、図示しないダクトにより吸込まれて、前記筐体2の外部に排気がなされるか、若しくは前記クリーンユニット35の吸込み側である一次側(供給側)に迄循環され、再び該クリーンユニット35によって、前記移載室23内に吹出される様に構成されている。
【0033】
次に、本発明の処理装置の作動について説明する。
【0034】
前記ポッド9が前記ロードポート8に供給されると、前記ポッド搬入搬出口6が前記フロントシャッタ7によって開放される。前記ロードポート8の上の前記ポッド9は前記ポッド搬送装置15によって前記筐体2の内部へ前記ポッド搬入搬出口6を通して搬入され、前記回転式ポッド棚11の指定された前記棚板13へ載置される。前記ポッド9は前記回転式ポッド棚11で一時的に保管された後、前記ポッド搬送装置15により前記棚板13からいずれか一方のポッドオープナ14に搬送されて前記載置台21に移載されるか、若しくは前記ロードポート8から直接前記載置台21に移載される。
【0035】
この際、前記ウェーハ搬入搬出口19は前記開閉機構22によって閉じられており、前記移載室23には前記クリーンエア34が流通され、充満されている。例えば、前記移載室23にはクリーンエア34として窒素ガスが充満することにより、酸素濃度が20ppm以下と、前記筐体2の内部(大気雰囲気)の酸素濃度よりも遥かに低く設定されている。
【0036】
前記載置台21に載置された前記ポッド9はその開口側端面が前記サブ筐体16の前記正面壁17に於ける前記ウェーハ搬入搬出口19の開口縁辺部に押付けられると共に、蓋が前記開閉機構22によって取外され、ウェーハ出入れ口が開放される。
【0037】
前記ポッド9が前記ポッドオープナ14によって開放されると、ウェーハ18は前記ポッド9から前記ウェーハ移載機構24によって取出され、ノッチ合せ装置(図示せず)に移送され、該ノッチ合せ装置にてウェーハ18を整合した後、前記ウェーハ移載機構24はウェーハ18を前記移載室23の後方にある前記待機部27へ搬入し、前記ボート26に装填(チャージング)する。
【0038】
該ボート26にウェーハ18を受渡した前記ウェーハ移載機構24はポッド9に戻り、次のウェーハ18を前記ボート26に装填する。
【0039】
一方(上段又は下段)のポッドオープナ14に於ける前記ウェーハ移載機構24によるウェーハ18の前記ボート26への装填作業中に、他方(下段又は上段)のポッドオープナ14には前記回転式ポッド棚11から別のポッド9が前記ポッド搬送装置15によって搬送されて移載され、前記他方のポッドオープナ14によるポッド9の開放作業が同時進行される。
【0040】
予め指定された枚数のウェーハ18が前記ボート26に装填されると、前記炉口シャッタ29によって閉じられていた前記処理炉28の炉口部が、前記炉口シャッタ29によって開放される。続いて、前記ボート26は前記ボートエレベータ31によって上昇され、前記処理炉28内(処理室)へ装入(ローディング)される。
【0041】
ローディング後は、前記シールキャップ33によって炉口部が気密に閉塞され、前記ボート26はウェーハ18を保持した状態で、処理室に気密に収納される。前記ウェーハ18が加熱され、又処理室に処理ガスが導入されつつ、所定圧力に維持される様に排気され、前記処理炉28にてウェーハ18に所要の処理が実行される。
【0042】
処理後は、ノッチ合せ装置(図示せず)でのウェーハ18の整合工程を除き、上記と逆の手順で、ウェーハ18及びポッド9は前記筐体2の外部へ払出される。
【0043】
図3は、上記基板処理装置を具備する基板処理システムの概略構成を示している。
【0044】
図3中、41は管理装置であるHOSTコンピュータを示し、42は、サーバを示し、該HOSTコンピュータ41及びサーバ42が通信網、例えばLANに接続され、該通信回線には、中継分配器、例えばHUB43を介して複数台の基板処理装置1a,1b,…,1nが接続されている。
【0045】
前記HOSTコンピュータ41は管理プログラムによって、前記基板処理装置1a,1b,…,1nの運用をオンラインで制御する。オンラインの運用では、前記ポッド9の搬入、搬出、バッチ情報指定、プロセス条件指定、プロセス開始指定、プロセスデータ収集等、一連の処理が、前記HOSTコンピュータ41によって実行、管理される。
【0046】
また、サーバ42は、複数の装置について、稼働状況のリアルタイムモニタリング及びデータ収集やデータバックアップを行う。
【0047】
また、基板処理装置1は、HOSTコンピュータ41やサーバ42等の外部の上位コンピュータと通信するための通信部としての通信ドライバ51と、装置運用を制御するためのデータや装置状態をモニタリングするためのデータを生成する装置制御部53と、前記外部の上位コンピュータとの通信制御部52とを少なくとも含む主制御部を有する。そして、HOSTコンピュータ41からプロセス開始指定があると、基板を処理するレシピを装置制御部51が実行し、基板処理が実施される。具体的には、レシピに従い装置制御部53が、基板処理装置1の各構成部品を制御することで実施される。一方、通信制御部52は、前記レシピ実行中に後述する送信フロー制御プログラムを実行することができる。これにより、例えば、レシピ実行中に各構成部品で生成されるデータを装置制御部53から収集し、リアルタイムで外部の上位コンピュータへ送信することができる。
【0048】
通信部51は、通信バッファを備え、この通信バッファに上位コンピュータに送信されるメッセージを一時的に保管することができる。この通信バッファから基板処理装置1で生成される種々のデータがメッセージとして送信される。
【0049】
通信制御部52は、送信スレッド及び受信スレッドを備え、上位コンピュータと通信部51を介して通信する。また、通信制御部52は、基板処理装置1で生成される種々のデータから上位コンピュータへ送信するメッセージが作成され、上位コンピュータから受信したメッセージが解析される。尚、通信制御部52では、後述する送信フロー制御プログラムが実行される。
【0050】
装置制御部53は、図示しない記憶部に格納されている様々なファイルを少なくとも一つ実行する。例えば、基板を処理するレシピが実行される。そして、レシピを実行する際に基板処理装置1で基板を処理するのに必要なデータが生成される。更に、装置制御部53は、基板を処理するための設定値等の基板処理に必要なデータを送信し、基板処理装置1を構成する各構成部品を制御する。この際、各構成部品からモニタデータやイベントデータ等種々のデータが収集される。ここで、装置制御部52は、収集されたデータに基づいて上位コンピュータでモニタリングするためのデータを生成する。
【0051】
次に、図4により本実施形態における基板処理システムで送受信される通信メッセージについて説明する。
【0052】
図4に通信メッセージの内容を示す。図4に示す通信メッセージは、基板処理装置の記憶部にテーブルとして保存されている。また、項目として、送信先項目情報、送信先優先度情報、主な役割、メッセージ内容、メッセージの通信量(データ量)情報、メッセージ内容の重要度情報が含まれる。メッセージ内容には、材料搬送指示、処理内容指定、処理開始指示、イベント報告、アラーム報告、実績データ報告、トレースデータ報告、モニタデータ報告、イベントデータ報告、データアップロード指示、データダウンロード指示がある。ここで、実績データは、レシピ処理実行内容および実行結果に関するデータであり、トレースデータは温度やガス流量値などを一定時間間隔で報告するデータである。尚、トレースデータとモニタデータはデータの内容は同じであるが、トレースデータは特定のデータの傾向を見るときなどのデータ分析で使用するデータである。
【0053】
図4によれば、HOSTコンピュータ41に対する送信メッセージが損失した場合、装置の稼動停止や処理中断に直接影響を及ぼしてしまうため、HOSTコンピュータ41との通信が重要であり、優先度「高」となっている。このように、HOSTコンピュータ41に対するメッセージが欠落しないように優先されて送信されることが望ましい。一方、サーバ42に対する送信メッセージの内容は、レシピ実行中でなくても構わない項目であるため、優先度「低」となる。
【0054】
次に、図5により本実施の形態に係る基板処理装置において、通信メッセージを送信する構成について説明する。
【0055】
基板処理装置を制御するために必要なデータや装置状況をモニタリングするためのデータは、装置制御部が生成して、通信制御部の送信スレッドから通信ドライバにより外部の上位コンピュータへ通信メッセージとして送信される。通信メッセージは、送信先(外部の上位コンピュータ)とのトランザクション完了(メッセージ送信から応答メッセージ受信)まで通信バッファに情報が保持される。通信バッファに保持しているメッセージが増え続けて滞留していると、ネットワーク通信遅延や再送処理が発生していると判断される。通信状態が悪化している状況で、更に多くのメッセージを送信しようとすると、通信バッファでオーバフローが発生して通信不能状態に陥る。
【0056】
ここで、本実施の形態によれば、上述したようなネットワークの通信性能の悪化に備え、少なくとも上位コンピュータであるHOSTコンピュータ41との通信を行うことが可能なように通信メッセージの送信フロー制御を改良した。
【0057】
図6により本実施形態における送信フロー制御プログラムについて詳述する。
【0058】
図6の送信フロー制御プログラムは、HOSTコンピュータ41やサーバへ送信するメッセージが発生したタイミングで、メッセージ1つ1つ、送信要求が発生する度に開始される(Step1)。先ず、本実施形態における送信フロー制御プログラムが開始されると、送信する通信メッセージが一次か二次かであるか判定される(Step2)。二次メッセージ(一次メッセージ受信に対する応答メッセージ)と判定されると送信フロー制御の制御対象としないで返信処理を実施する(Step6)。一次メッセージであれば、制御対象として送信処理の前に、通信状態チェック処理が実施される。通信状態チェック処理は、通信バッファの空き容量を確認して下限値以下であれば、通信性能が低下していると判断される(Step3)。尚、通信性能が低下している判断されると、メッセージを送信するか破棄するかの優先度チェック処理が実施される。又、通信中のトランザクション数が上限値を超えている場合、通信負荷が発生していると判断される(Step4)。通信負荷が発生していると判断された場合でも、上述した優先度チェック処理が実施される。尚、通信バッファ量の下限値や通信中のトランザクション数の上限値はパラメータ設定にて任意に指定される。次に、優先度チェック処理は、先ず、送信先優先度を判定する(Step7)。優先度が高いと判定されると送信処理が実施される(Step5)。次に、メッセージの内容の重要度が判定される(Step8)。重要度が高いと判定されると送信処理が実施される(Step5)。重要なメッセージのみ送信するため、メッセージの重要度が中くらいや低いというレベルは破棄される(Step9)。このように、優先度及び/又は重要度が高いメッセージのみ送信することにより、通信バッファに滞留するメッセージが増え続けないように送信フロー制御が実行される。
【0059】
ここで、通信状態チェック処理は、(Step3)と(Step4)で実施される処理であり、優先度チェック処理は、(Step7)と(Step8)で実施される処理である。尚、メッセージの通信量は、優先度に関係しないため、判定に使用されないが、通信量「大」で重要度「中」又は重要度「小」のメッセージを優先して破棄されるので、送信量を少なく抑えることができる。
【0060】
また、送信フロー制御によりメッセージを破棄した場合は、通信状態が良好でないことを警告するためのアラームを画面表示したり、通信バッファの状況を可視化するため、バッファ空き容量やトランザクション数を画面表示したりする機能を備えることで、作業者にネットワークの通信状態を知らせ、基板処理装置での作業において注意喚起となり、通信異常でロットアウトするという最悪な事態を避けることが少なくとも可能である。
【0061】
このように、本実施の形態によれば、基板処理装置とHOSTコンピュータ41やサーバ42を含む上位コンピュータとの通信状態に関わらず、重要な通信メッセージは確実に通信可能にしたため、少なくとも通信異常に起因する装置の処理中断や停止は抑えることができる。
【0062】
複数のステップから構成されるレシピを実行して基板に所定の処理を施している際、本願発明における送信フロー制御を行うことにより、前記レシピ実行中に生成されるデータを基板処理装置から上位コンピュータに主制御部の通信負荷を考慮して送信させることができる。よって、基板処理装置と上位コンピュータとの通信異常に係る障害が発生することが無いため、通信負荷に起因する前記レシピの中断または停止が抑えられる。
【0063】
尚、本実施の形態における説明では、基板処理装置の一例として縦型炉を具備して基板に酸化処理、CVD成膜処理、拡散処理、アニール処理等を行う縦型の基板処理装置について説明したが、本構成に限らず、種々の基板処理装置についても適用されることはいうまでも無い。
【0064】
(付記)
尚、本発明は以下の実施の態様を含む。
(付記1)基板を処理するために必要なデータや装置の稼働状況をモニタリングするためのデータを生成する装置制御部と、外部の上位コンピュータへ送信されるデータを一時的に格納するバッファを有する通信部と、前記装置制御部で生成されたデータを前記通信部を介して前記上位コンピュータに送信する通信制御部とを含む主制御部(メインコントローラ)を備えた基板処理装置であって、前記通信制御部は、通信状態をチェックする工程と優先度をチェックする工程を含む送信フロー制御プログラム(送信フロー制御機能)を実行し、前記バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックし、両方ともOKであれば、一次メッセージを前記上位コンピュータに送信し、前記バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックした結果、少なくとも一方がNGであれば、前記一次メッセージを送信する送信先の優先度と前記一次メッセージの重要度をチェックし、前記送信先の優先度又は前記一次メッセージの重要度が高ければ、前記一次メッセージを送信し、前記送信先の優先度且つ前記一次メッセージの重要度が低ければ、前記一次メッセージを破棄する基板処理装置。
【0065】
(付記2)基板処理装置と上位コンピュータとの通信状態をチェックする工程と一次メッセージに関する優先度をチェックする工程を含む送信フロー制御プログラム(送信フロー制御機能)を実行し、バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックし、両方ともOKであれば、前記一次メッセージを前記上位コンピュータに送信し、バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックした結果、少なくとも一方がNGであれば、前記一次メッセージを送信する送信先の優先度と前記一次メッセージの重要度をチェックし、前記送信先の優先度又は前記一次メッセージの重要度が高ければ、前記一次メッセージを送信し、前記送信先の優先度且つ前記一次メッセージの重要度が低ければ、前記一次メッセージを破棄する基板処理装置の制御方法。
【0066】
(付記3)基板を処理するために必要なデータや装置の稼働状況をモニタリングするためのデータを生成する装置制御部と、外部の上位コンピュータへ送信されるデータを一時的に格納するバッファを有する通信部と、前記装置制御部で生成されたデータを前記通信部を介して前記上位コンピュータに送信する通信制御部とを含む主制御部(メインコントローラ)を設けた基板処理装置と、前記基板処理装置を制御する上位コンピュータと、を含む基板処理システムであって、
前記通信制御部は、通信状態をチェックする工程と優先度をチェックする工程を含む送信プログラム(送信フロー制御機能)を実行し、
前記バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックし、両方ともOKであれば、一次メッセージを前記上位コンピュータに送信し、
前記バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックした結果、少なくとも一方がNGであれば、前記一次メッセージを送信する送信先の優先度と前記一次メッセージの重要度をチェックし、前記送信先の優先度又は前記一次メッセージの重要度が高ければ、前記一次メッセージを送信し、前記送信先の優先度且つ前記一次メッセージの重要度が低ければ、前記一次メッセージを破棄する基板処理システム。
【0067】
(付記4)レシピを実行して基板を処理するために必要なデータや装置の稼働状況をモニタリングするためのデータを生成する装置制御部と、前記データを一時的に格納するバッファを有する通信部を介して前記データをメッセージとして送信する通信制御部とを少なくとも含む主制御部(メインコントローラ)を具備し、該主制御部は、前記レシピを実行して前記基板に所定の処理を施す基板処理装置における半導体装置の製造方法であって、
前記レシピ実行中に、前記装置制御部は基板処理に関するデータを生成し、
前記通信制御部は、通信状態をチェックする工程と優先度をチェックする工程を含む送信プログラム(送信フロー制御機能)を実行し、
前記バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックし、OKであれば、基板処理に関するデータを一次メッセージとして送信し、
前記バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックした結果、少なくとも一方がNGであれば、前記一次メッセージを送信する送信先の優先度と前記一次メッセージの重要度をチェックし、前記送信先の優先度又は前記一次メッセージの重要度が高ければ、前記一次メッセージを送信し、前記送信先の優先度且つ前記一次メッセージの重要度が低ければ、前記一次メッセージを破棄することにより、前記レシピを継続させる基板処理装置における半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0068】
1 基板処理装置
18 ウェーハ(基板)
41 HOSTコンピュータ
42 サーバ
51
通信部
52 通信制御部
53 装置制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するために必要なデータや装置の稼働状況をモニタリングするためのデータを生成する装置制御部と、外部の上位コンピュータへ送信されるデータを一時的に格納するバッファを有する通信部と、前記装置制御部で生成されたデータを前記通信部を介して前記上位コンピュータに送信する通信制御部とを含む主制御部を具備した基板処理装置であって、
前記通信制御部は、通信状態をチェックする工程と優先度をチェックする工程を含む送信フロー制御プログラムを実行し、
前記通信状態をチェックする工程では、前記バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックし、OKであれば、一次メッセージを前記上位コンピュータに送信する基板処理装置。
【請求項2】
前記バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックした結果、少なくとも一方がNGであれば、前記一次メッセージの優先度をチェックする工程を実行する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記優先度をチェックする工程では、前記一次メッセージを送信する送信先の優先度と前記一次メッセージの重要度をチェックし、前記送信先の優先度又は前記一次メッセージの重要度が高ければ、前記一次メッセージを送信し、前記送信先の優先度且つ前記一次メッセージの重要度が低ければ、前記一次メッセージを破棄する請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板処理装置と上位コンピュータとの通信状態をチェックする工程と一次メッセージに関する優先度をチェックする工程を含む送信フロー制御プログラムを実行し、
バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックし、OKであれば、前記一次メッセージを前記上位コンピュータに送信し、
バッファの空き容量と通信中のトランザクション数をチェックした結果、少なくとも一方がNGであれば、前記一次メッセージを送信する送信先の優先度と前記一次メッセージの重要度をチェックし、前記送信先の優先度又は前記一次メッセージの重要度が高ければ、前記一次メッセージを送信し、前記送信先の優先度且つ前記一次メッセージの重要度が低ければ、前記一次メッセージを破棄する基板処理装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−15356(P2012−15356A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151042(P2010−151042)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】