説明

基板処理装置

【課題】 基板の主面に密着強化剤を被着させた後に塗布膜を形成する基板処理において、基板の主面全体にわたって均一に密着強化剤を被着させることができる装置を提供する。
【解決手段】 スリット状の吐出口を有しHMDSの蒸気を含む密着強化用ガスを吐出口から基板Wの主面に向けて吐出するノズル18と、基板Wを搬送してノズル18の直下を通過させる複数の搬送ローラ16とを有する密着強化処理部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、プリント基板等の基板の主面にHMDS(ヘキサメチルジシラザン)等の密着強化剤を被着させた後にレジスト膜等の塗布膜を形成する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板の表面に塗布液、例えばレジスト液を塗布してレジスト膜を形成する場合には、基板の表面とレジスト膜との密着性を強化するために、レジスト塗布工程前に基板表面に密着強化剤、例えばHMDSを被着させる処理(アドヒージョン処理)が行われる。このような処理を行う従来の基板処理装置は、例えば、図5に示すように、基板を収容する処理チャンバ100、処理チャンバ100内へHMDSの蒸気を気体、例えば窒素ガスと共に供給する処理ガス供給手段102、処理チャンバ100内から処理ガスを排出させる排気手段104などを備えて構成されている。
【0003】
処理チャンバ100は、基板搬出入口を有し密閉可能であり、基板搬出入口がシャッタ106によって開閉される。処理チャンバ100の内部には、図示していないが、ヒータを内蔵した載置台が設けられており、その載置台上に基板が支持されて加熱され処理される。処理ガス供給手段102は、内部にHMDS溶液が貯留され密閉された貯留容器108を有しており、その貯留容器108内に、窒素ガス供給源に流路接続された窒素ガス供給管110が挿入され、窒素ガス供給管110の先端部が貯留容器108内のHMDS溶液中に深く差し入れられている。また、貯留容器108には、処理ガス供給管112の一端部が連通接続され、処理ガス供給管112の他端部が処理チャンバ100に連通接続されている。処理ガス供給管112の途中には、処理チャンバ100内へパージ用の窒素ガスを供給するための窒素ガス供給管114が連通接続されている。排気手段104は、処理チャンバ100の排気口に連通接続された排気管116に排気ポンプ(図示せず)を介設して構成されている。窒素ガス供給管110、処理ガス供給管112、窒素ガス供給管114および排気管116には、それぞれ開閉弁118、120、122、124が介挿されている。そして、窒素ガス供給管110を通して貯留容器108内へ窒素ガスを供給し、貯留容器108内のHMDS溶液を窒素ガスでバブリングすることによりHMDSの蒸気が発生し、発生したHMDS蒸気は、窒素ガスと共に処理ガス供給管112を通って処理チャンバ100へ供給される。窒素ガスと共に処理チャンバ100へ供給されたHMDS蒸気は、処理チャンバ100の天井部中央に設けられた吐出口(図示せず)から基板の表面に向かって吐出され、処理チャンバ100の内部に収容された基板の表面にHMDSを被着させる処理が行われる。また、処理チャンバ100の天井面の中央部に、中空の扁平状容器からなり処理ガス供給管112に連通接続された給気口を有し底面に複数個のガス孔が形成された拡散板を配設し、その拡散板の複数個のガス孔を通ってHMDS蒸気を含む窒素ガスを吐出し基板の表面へ供給する、といったことも行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−150368号公報(第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように従来の基板処理装置では、HMDS蒸気を含む窒素ガスは、処理ガス供給管112を通して処理チャンバ100へ供給され、処理チャンバ100の天井部中央に設けられた吐出口あるいは拡散板の複数個のガス孔から基板の表面に向けて吐出される。そして、基板の表面へ供給されたHMDS蒸気は、基板表面に沿って周辺へ拡散するように流動し、この間に、加熱された基板の表面にHMDSが被着する。しかしながら、このような装置構成では、基板の表面内において、吐出口あるいは拡散板のガス孔に近い部分ほどHMDSの被着反応が進行することとなり、基板の表面内における処理が不均一になる、といった問題点がある。
【0005】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、基板の主面に密着強化剤を被着させた後に塗布膜を形成する基板処理において、基板の主面全体にわたって均一に密着強化剤を被着させることができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、基板の主面に密着強化剤を被着させた後に基板の主面に塗布膜を形成する基板処理装置において、スリット状孔もしくは直線上に並列された複数の孔からなる吐出口を有し、密着強化剤の蒸気を含む密着強化用ガスを前記吐出口から基板の主面に向けて吐出する吐出手段と、この吐出手段に対し基板を相対的に移動させる移動手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記移動手段は、前記吐出手段に対しその吐出口の長手方向と交差する方向へ基板を相対的に移動させるものであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の基板処理装置において、前記吐出手段が固定され、前記移動手段が、基板を支持して水平方向へ搬送するローラコンベアであることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、前記吐出手段の吐出口付近を加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板処理装置において、前記吐出手段による密着強化用ガスの吐出方向が、基板の主面と垂直な方向から吐出手段に対する基板の相対的移動方向の側へ傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の基板処理装置においては、密着強化剤の蒸気を含む密着強化用ガスが、吐出手段の、スリット状孔もしくは直線上に並列された複数の孔からなる吐出口から基板の主面に向けて吐出され、また、密着強化用ガスが吹き付けられる基板が、移動手段によって吐出手段に対し相対的に移動するので、基板の主面全体にわたって均等に密着強化剤の蒸気が供給されることとなる。
したがって、請求項1に係る発明の基板処理装置を使用すると、基板の主面に密着強化剤を被着させた後に塗布膜を形成する基板処理において、基板の主面全体にわたって均一に密着強化剤を被着させることができる。
また、吐出手段から基板の主面に向けて密着強化用ガスを吐出するので、密着強化剤が高濃度に含まれた雰囲気で密着強化剤と基板の主面とが反応することとなり、このため、密着強化剤と基板の主面との反応性が高くなるので、密着強化材の使用量を低減させ、また、処理時間を短くすることができる。
【0012】
請求項2に係る発明の基板処理装置では、密着強化剤の蒸気を含む密着強化用ガスが吹き付けられる基板が、吐出手段に対しその吐出口の長手方向と交差する方向へ相対的に移動することにより、基板の主面全体に密着強化剤の蒸気が供給される。
【0013】
請求項3に係る発明の基板処理装置では、ローラコンベアにより基板を支持して水平方向へ搬送しながら、基板の主面に密着強化剤を被着させる処理を行うことができるので、多数の基板を連続的に処理することができる。
【0014】
請求項4に係る発明の基板処理装置では、加熱手段によって吐出手段の吐出口付近が加熱されることにより、吐出手段を通過する密着強化剤の蒸気を含む密着強化用ガスが加熱されるので、密着強化用ガスがスリット状の隙間を通過する際に圧力変動によって密着強化剤の蒸気が結露することを防止することができる。
【0015】
請求項5に係る発明の基板処理装置では、密着強化用ガスの吐出方向が基板の主面と垂直な方向ではなく、その垂直方向から基板の相対的移動方向の側へ傾斜しているので、吐出手段の吐出口から基板の主面へ吐出された密着強化用ガスが、基板の相対的移動方向とその反対方向との両側に分かれて流動する、といったことがなく、ほとんど基板の相対的移動方向(基板が移動する場合には基板の進行方向)へ流動し密着強化剤の蒸気が拡散することとなる。このため、基板の主面に対し密着強化剤の蒸気が効率良く供給されて、基板の主面への密着強化剤の被着がより効果的に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明を実施するための最良の形態について、図1ないし図4を参照しながら説明する。
図1は、この発明の実施形態の1例を示し、基板の主面に密着強化剤を被着させた後に塗布膜を形成する基板処理装置の一部をなす密着強化処理部を模式的に示す概略構成図である。
【0017】
この基板処理装置は、図示していないが、例えばスピンコータにより基板の主面へ塗布液、例えばレジスト液を塗布して基板の主面にレジスト膜を形成する塗布処理部を有し、その塗布処理部の前段側に、図1に示した密着強化処理部を併設して構成されている。密着強化処理部のさらに前段側には、図示していないが、基板の主面に対し紫外線を照射して、基板の主面に付着している有機物汚染を酸化分解して除去するUV処理部、純水を使用して、ロールブラシによるスクラブ洗浄、超音波スプレイ洗浄、高圧ジェット式スプレイ洗浄などの方法により基板の主面を洗浄する水洗処理部、および、基板の主面に残留している液滴をエアーナイフにより吹き飛ばして除去した後、加熱気体、ヒータなどで基板を加熱して基板の主面から水分を除去する乾燥処理部が順に設置されている。また、密着強化処理部と塗布処理部との間には、密着強化処理部から搬出されてくる基板を受け取って塗布処理部のスピンコータへ基板を搬入する搬送機構が設けられている。さらに、塗布処理部の後段側には、基板の主面に形成されたレジスト膜を減圧乾燥する減圧乾燥処理部が設けられている。
【0018】
密着強化処理部は、図1に示すように、基板搬入口12および基板搬出口14を有する密閉型の処理チャンバ10を備えている。処理チャンバ10の内部には、基板Wを支持して水平方向へ連続的に搬送する複数の搬送ローラ16からなるローラコンベアが配設されている。この処理チャンバ10の内部は、常温・常圧に保たれている。
【0019】
処理チャンバ10内には、密着強化剤、例えばHMDSの蒸気を含む気体、例えば窒素ガスを吐出するノズル18が配設されている。ノズル18は、ローラコンベアにより支持されて搬送される基板Wの主面(上面)と対向し近接するように下端にスリット状孔からなる吐出口を有している。ノズル18は、基板搬送方向と交差、この例では直交するように配置されている。また、ノズル18は、その吐出口からのガス吐出方向が、基板Wの主面と垂直な方向から基板搬送方向(基板の進行方向)の側へ傾斜した姿勢で支持されている。ノズル18の吐出口は、その長手方向の寸法が基板Wの幅寸法とほぼ同等にされている。ノズル18には、HMDS供給管20が連通して接続されており、HMDS供給管20は、HMDSの蒸気を含む窒素ガス(以下、「密着強化用ガス」という)の供給源に流路接続されている。密着強化用ガスは、例えば、図5に示した処理ガス供給手段102と同様に、HMDS溶液が貯留された密閉容器内へ窒素ガスを供給し、密閉容器内のHMDS溶液を窒素ガスでバブリングしてHMDSの蒸気を発生させ、発生したHMDS蒸気を窒素ガスと共に密閉容器内から排出することにより生成される。この密着強化用ガスが、HMDS供給管20を通してノズル18へ供給される。ノズル18には、その内部を通過して吐出口から吐出されるHMDSの蒸気が狭い隙間を通過するために起こる圧力変動による結露を防止するために、加熱手段、例えば図2に示すようにラインヒータ22をノズル18に付設するようにするとよい。
【0020】
なお、ノズル18の吐出口をスリット状孔で形成するのに代えて、直線上に並列された複数の孔で吐出口を形成するようにしてもよい。また、ノズル18の吐出口は、基板Wの主面に必ずしも近接させる必要は無い。さらに、ノズル18は、実施形態のように傾斜姿勢で支持することが望ましいが、基板Wの主面に対して垂直に支持しても差し支えない。
【0021】
また、ノズル18が内方に配置されるように、ローラコンベアによって搬送される基板Wの主面に近接してHMDS拡散室24が配設されている。HMDS拡散室24は、基板Wの主面と対向する下面が開口し、基板搬送方向と直交する幅方向における寸法が基板Wの幅寸法と同等もしくはそれ以上とされている。そして、密着強化用ガスの供給源からHMDS供給管20を通ってノズル18へ密着強化用ガスが供給されノズル18の吐出口から基板Wの主面に向けて密着強化用ガスが吐出されることにより、HMDS拡散室24の内部全体にHMDS蒸気が拡散して、HMDS拡散室24内がHMDS蒸気で満たされた雰囲気に保たれるように構成されている。この結果、処理チャンバ10よりも少ない容積である拡散室24内のHMDS濃度は高くなる。
【0022】
また、処理チャンバ10内には、ノズル18の、基板搬送方向における手前側に、ローラコンベアによって搬送される基板Wの主面を活性化させる手段、例えばプラズマ処理部26が設けられている。プラズマ処理部26は、ローラコンベアにより支持されて搬送される基板Wの主面と対向し近接するように下端に吐出口30を有するノズル28を備えている。ノズル28の内部には、気体、例えば窒素ガスをプラズマ化する一対の電極32a、32bが配設されており、図示を省略しているが、一方の電極32aが電源に接続され、他方の電極32bが接地されている。また、ノズル28の内部には、ガス供給管34が挿通されており、ガス供給管34は、窒素ガスの供給源に流路接続されている。そして、窒素ガス供給源からガス供給管34を通ってノズル28へ窒素ガスが供給され、ノズル28内へ供給された窒素ガスが、一対の電極32a、32b間に発生したパルス電界中を通過することにより、窒素ガスがプラズマ化され、プラズマ化した窒素ガスがノズル28の吐出口30から基板Wの主面に向けて吐出されるようになっている。また、ガス供給管34の途中には、ヒータ36が付設されており、ヒータ36によって窒素ガスが加熱され、加熱された窒素ガスが基板Wの主面へ供給されることにより、基板Wの温度が上昇して、HMDS拡散室24内へ基板Wが搬入された際に基板Wの主面とHMDSとの反応性が高められる。
【0023】
HMDS拡散室24とプラズマ処理部26との中間には、ローラコンベアによって搬送される基板Wの主面と対向し近接するように吸い込み口38が配置された排気管40が配設されている。この排気管40を通し、ノズル28の吐出口20から基板Wの主面に向けて吐出された窒素ガスを吸引し排気することにより、窒素ガスがHMDS拡散室24内へ流れ込むのを防止するようにしている。また、処理チャンバ10には排気口42が設けられ、その排気口42に排気管44が連通接続されており、この排気管44を通して処理チャンバ10内の排気が行われる。これにより、処理チャンバ10内から雰囲気ガスが漏れないようにされている。
【0024】
上記した構成を備えた基板処理装置を使用して基板の主面にHMDSを被着させるときは、ローラコンベアによって基板Wを連続的に搬送しながら、ガス供給管34を通して窒素ガスをノズル28内へ送給し、ノズル28の吐出口30からプラズマ化し加熱された窒素ガスを基板Wの主面へ供給する。プラズマ化したガスが基板Wの主面へ供給されることにより、基板Wの主面が活性化される。続いて、基板WがHMDS拡散室24内へ搬入されると、密着強化用ガスの供給源からHMDS供給管20を通してノズル18へ供給された密着強化用ガスが、ノズル18の吐出口から活性化され加熱された基板Wの主面に向けて吐出され、HMDSが基板Wの主面に被着させられる。このとき、密着強化用ガスは、ノズル18のスリット状吐出口から基板Wの主面に向けて吐出されるので、基板Wの主面全体にわたって均等にHMDSの蒸気が供給される。したがって、基板Wの主面全体にわたって均一にHMDSが被着することとなる。また、ノズル18の吐出口からのガス吐出方向が基板Wの主面と垂直な方向から基板搬送方向の側へ傾斜しているので、ノズル18の吐出口から基板Wの主面へ吐出された密着強化用ガスが、ほとんど基板Wの基板搬送方向(基板Wの進行方向)へ流動してHMDSの蒸気が拡散することとなる。このため、基板Wの主面に対しHMDSの蒸気が効率良く供給されて、基板Wの主面へのHMDSの被着がより効果的に行われる。さらに、HMDSの蒸気で満たされた雰囲気中を基板Wが搬送されることにより、HMDSが基板Wの主面全体により強固にかつ均一に被着させられる。HMDS拡散室24内を通過する間に主面にHMDSが被着された基板Wは、処理チャンバ10内から搬出され、搬送機構により塗布処理部へ搬送され、塗布処理部において基板Wの主面にレジスト膜が形成される。
【0025】
なお、プラズマ処理部26の構成において、ガス供給管34を通してノズル28へ窒素ガスを供給する代わりに、HMDSの蒸気を含む窒素ガス等の気体を供給するようにしてもよい。この場合には、基板Wの主面へのHMDSの被着がより高効率で行われる。また、ガス供給管34の途中に付設されたヒータ36は、特に必要が無ければ設けなくてもよい。さらに、基板Wの主面を活性化させる手段として、プラズマ処理部26を設ける代わりに、例えば、ローラコンベアにより支持されて搬送される基板Wの主面に対向するように紫外線ランプを配設し、紫外線ランプから基板Wの主面に対して紫外線を照射することにより、基板Wの主面を活性化させるようにしてもよい。また、プラズマ処理部26などの活性化手段を設けずに、加熱された高温の窒素ガス等を基板の主面に吹き付けることにより基板を、例えば80℃以上の温度に加熱して、その高温の基板の主面へノズル18の吐出口からHMDSを供給するようにしてもよい。
【0026】
上記した実施形態では、HMDSの蒸気を含む密着強化用ガスを基板Wの主面へ供給するノズル18が内方に配置されたHMDS拡散室24とプラズマ処理部26とを1つの処理チャンバ10内に配設するようにしたが、図3に示すように、HMDS被着処理部46とプラズマ処理部48とを併設し、HMDS被着処理部46のチャンバ50内に、密着強化用ガスを基板Wの主面へ供給するノズル54を配設し、プラズマ処理部48のチャンバ52内に、窒素ガス等の気体をプラズマ化して基板Wの主面へ吐出するノズル56を配設するような構成としてもよい。
【0027】
すなわち、HMDS被着処理部46のチャンバ50は、基板搬入口58および基板搬出口60が設けられた密閉構造を有しており、このチャンバ50内に、密着強化用ガスを基板Wの主面へ吐出するノズル54が配設されている。ノズル54には、HMDS供給管62が連通接続されており、このHMDS供給管62を通してHMDSの蒸気を含む密着強化用ガスがノズル54へ供給されるようになっている。チャンバ50には排気口64が設けられ、その排気口64に排気管66が連通接続されており、この排気管66を通してチャンバ50内の排気が行われる。これにより、チャンバ50内からHMDSを含む雰囲気ガスが漏れないようにされている。チャンバ50の内部は常温に保たれ、その内部全体にHMDS蒸気が拡散して、チャンバ50内がHMDS蒸気で満たされた雰囲気に保たれている。また、チャンバ50内には、HMDS蒸気で満たされた雰囲気中を基板Wを搬送する複数の搬送ローラ68からなるローラコンベアが配設されている。
【0028】
プラズマ処理部48には、基板搬入口70および基板搬出口72を有する密閉型のチャンバ52内に、気体をプラズマ化して基板Wの主面へ吐出するノズル56が配設されている。プラズマ処理部48のチャンバ52の基板搬出口72は、HMDS被着処理部46のチャンバ50の基板搬入口58と対向するように設けられている。ノズル56には、ガス供給管74が連通接続されており、このガス供給管74を通して窒素、アルゴン、酸素等の気体がノズル56へ供給されるようになっている。チャンバ52には排気口76が設けられ、その排気口76に排気管78が連通接続されており、この排気管78を通してチャンバ52内の排気が行われる。これにより、チャンバ52内から雰囲気ガスが漏れないようにされている。チャンバ52の内部は、常圧に保たれている。また、チャンバ52内には、基板Wを搬送する複数の搬送ローラ80からなるローラコンベアが配設されている。
【0029】
図3に示した構成を有する基板処理装置においても、図1に示した装置と同様の作用効果が得られる。
【0030】
また、上記実施形態では、ノズル18、54を固定し、そのノズル18、54の直下を通って基板Wをローラコンベアで搬送することにより、ノズル18、54から吐出されたHMDSを含む密着強化用ガスが基板Wの主面全体にわたって供給されるようになっているが、基板を固定し、ノズルを基板の主面に沿って移動させることにより、ノズルから密着強化用ガスを基板の主面全体にわたって供給するようにしてもよい。そのような実施形態の1例を図4に示す。
【0031】
図4に示す基板処理装置の密着強化処理部は、基板搬出入口を有し密閉可能で、基板搬出入口がシャッタ84によって開閉される処理チャンバ82を備えている。処理チャンバ82の内部には、ヒータを内蔵した載置台86が設けられている。そして、基板Wは、載置台86上に支持されて加熱されるようになっている。また、処理チャンバ82内には、HMDSの蒸気を含む密着強化用ガスを吐出するノズル88が配設されている。ノズル88は、載置台86上に保持された基板Wの主面と対向し近接するように下端にスリット状孔からなる吐出口(あるいは直線上に並列された複数の孔からなる吐出口)を有している。このノズル88は、載置台86上の基板Wの主面に沿って水平方向へ移動自在に支持されており、図示しない駆動機構によって移動させられる。また、ノズル88は、その吐出口からのガス吐出方向が、基板Wの主面と垂直な方向からノズル88の移動方向の反対側へ傾斜した姿勢で支持されている。ノズル88の吐出口は、その長手方向の寸法が基板Wの幅寸法とほぼ同等にされている。ノズル88には、HMDS供給管90が連通して接続されており、HMDS供給管90は、HMDSの蒸気を含む密着強化用ガスの供給源に流路接続されている。また、処理チャンバ82の天井面には、ガス供給口92が形設され、そのガス供給口92にガス供給管94が連通接続されている。そして、窒素ガスの供給源からガス供給管94を通して処理チャンバ82へ送給される窒素ガスが、ガス供給口92を通って処理チャンバ82内へ供給される用になっている。また、処理チャンバ82の底部には、排気口96が形設され、その排気口96に排気管98が連通接続されており、この排気管98を通して処理チャンバ82内の排気が行われる。
【0032】
図4に示した構成を有する基板処理装置では、ノズル88が載置台86上の基板Wの一端側から他端側へ移動しつつ、ノズル88の吐出口から密着強化用ガスが、加熱された基板Wの主面に向けて吐出される。そして、密着強化用ガスが基板Wの主面全体へ供給されて、HMDSが基板Wの主面に被着させられる。このように、図4に示した構成を有する基板処理装置においても、図1に示した装置と同様の作用効果が得られる。
【0033】
なお、上記した実施形態では、HMDSを含む密着強化用ガスを吐出するノズルと基板とを直線的に相対移動させるようにしているが、例えば、ノズルと基板とを相対的に回動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施形態の1例を示し、基板の主面に密着強化剤を被着させた後に塗布膜を形成する基板処理装置の一部をなす密着強化処理部を模式的に示す概略構成図である。
【図2】図1に示した装置の構成要素であるノズル部分の拡大図である。
【図3】この発明の別の実施形態を示し、基板の主面に密着強化剤を被着させた後に塗布膜を形成する基板処理装置の一部をなすHMDS被着処理部およびプラズマ処理部を模式的に示す概略構成図である。
【図4】この発明の更に別の実施形態を示し、基板の主面に密着強化剤を被着させた後に塗布膜を形成する基板処理装置の一部をなす密着強化処理部を模式的に示す概略構成図である。
【図5】基板の表面に密着強化剤を被着させる処理を行う従来の基板処理装置の1例を模式的に示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0035】
W 基板
10、82 処理チャンバ
16、68、80 ローラコンベアの搬送ローラ
18、54、88 密着強化用ガス吐出用のノズル
20、62、90 HMDS供給管
22 ラインヒータ
24 HMDS拡散室
26、48 プラズマ処理部
28、56 ノズル
30 ノズルの吐出口
34、74、94 ガス供給管
36 ヒータ
44、66、78、98 排気管
46 HMDS被着処理部
50、52 チャンバ
84 シャッタ
86 載置台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面に密着強化剤を被着させた後に基板の主面に塗布膜を形成する基板処理装置において、
スリット状孔もしくは直線上に並列された複数の孔からなる吐出口を有し、密着強化剤の蒸気を含む密着強化用ガスを前記吐出口から基板の主面に向けて吐出する吐出手段と、
この吐出手段に対し基板を相対的に移動させる移動手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記移動手段は、前記吐出手段に対しその吐出口の長手方向と交差する方向へ基板を相対的に移動させるものであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記吐出手段が固定され、前記移動手段が、基板を支持して水平方向へ搬送するローラコンベアであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記吐出手段の吐出口付近を加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記吐出手段による密着強化用ガスの吐出方向が、基板の主面と垂直な方向から吐出手段に対する基板の相対的移動方向の側へ傾斜していることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−310682(P2006−310682A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134000(P2005−134000)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】