説明

基板処理装置

【課題】基板処理装置の製造コストを軽減するとともに、装置の設置面積を縮小化する技術を提供する。
【解決手段】Y方向に沿って配置される洗浄部3と乾燥部41との間に、搬送ユニット21を配置するとともに、洗浄部3および乾燥部41に対して(−X)側に、中庭空間101を設けた状態で現像部6を配置する。そして、搬送ユニット21に対して(−X)側に隣接する位置に、塗布ユニット10を設置する。また、塗布ユニット10周囲の中庭空間101に露出する側面をカバー部材1aで覆うとともに、カバー部材1aの乾燥部43側に開口部1bを設ける。また、カバー部材1aと現像部6との間に通路102を設け、中庭空間101のうちの塗布ユニット10を挟んで開口部1bと反対側の空間(設置空間103)に、各処理ユニットの付帯設備103aを設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布ユニットを備えた基板処理装置の技術に関し、特に塗布ユニットの配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置のガラス基板などの製造工程では、洗浄後の基板にノズルから処理液(例えば、レジスト液)を吐出して、基板に処理液の薄膜を形成した後、基板を露光装置にて所定パターン状に露光し、現像することで、基板に所定パターンが形成される(いわゆる、フォトリソグラフィー技術)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の基板処理装置(基板処理システム)では、基板を処理する複数の処理ユニットが処理工程の順に配置されており、基板を各処理ユニット間で移動させる搬送ユニット(搬送ロボット、搬送コンベア)が備えられている。
【0004】
特許文献1に記載の基板処理装置によれば、各処理ユニットを1方向に沿って2列に分けて配列し、基板をUターン方式で搬送しつつ処理するため、基板処理装置の尺度を長くすることなく、連続的な基板製造を実現できる。
【0005】
【特許文献1】特開2007−287914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の基板処理装置では、1台の塗布ユニットを挟んで2台搬送ユニットが配置され、処理の上流側の搬送ユニットで基板を塗布ユニットに搬入し、塗布処理後の基板を処理の下流側の搬送ユニットで搬出する。
【0007】
したがって、特許文献1に記載の基板処理装置では、1台の塗布ユニットに対して2台の搬送ユニットを必要とするため、2台分の搬送ユニットの製造コストがかかり、また、2台分の搬送ユニットの設置面積も確保する必要があった。
【0008】
特に近年では、処理する基板のサイズが大型化しており、これに伴って、個々の処理ユニットのサイズも拡大しているため、基板処理装置全体の設置面積が大きくなる傾向にある。したがって、装置サイズの縮小化は、基板製造の分野において至上命題となっている。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板処理装置の製造コストを軽減するとともに、装置の設置面積を縮小化する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、基板を処理する基板処理装置であって、第1方向に沿って延びるとともに、前記第1方向の一方側へ基板を移動させつつ基板を処理する第1処理系統と、前記第1方向に沿って延びるとともに、前記第1処理系統に対して前記第1方向と直交する方向に所定空間を設けた状態で配置され、前記第1方向の他方側へ基板を移動させつつ前記第1処理系統にて処理された基板を順次に処理する第2処理系統と、前記所定空間に配置され、水平支持される基板に向けて処理液を供給する塗布ユニットと、前記第1処理系統の前記他方側の上流側処理ユニットと前記一方側の下流側処理ユニットとの間に配置され、前記上流側処理ユニットから前記塗布ユニットへ、および、前記塗布ユニットから前記下流側処理ユニットへ基板を搬送する搬送ユニットとを備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置であって、前記塗布ユニットの周囲のうち少なくとも前記所定空間に露出する側を覆うカバー部材をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る基板処理装置であって、前記塗布ユニットと前記所定空間側の前記カバー部材との間に、前記塗布ユニットに向けて供給されたエアが通過可能な所定の間隙が設けられることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項2または3の発明に係る基板処理装置であって、前記塗布ユニットと前記所定空間側の前記カバー部材との間の位置に設けられ、前記塗布ユニットに向けて供給されたエアを排気する第1排気手段をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明に係る基板処理装置であって、前記所定空間に設けられ、前記塗布ユニットに向けて供給されたエアを排気する第2排気手段をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明に係る基板処理装置であって、前記カバー部材と前記第2処理系統との間に所定幅の通路が設けられることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明に係る基板処理装置であって、前記カバー部材に、前記塗布ユニットに対してアクセス可能とする開閉式の開口部が設けられることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8の発明は、請求項7の発明に係る基板処理装置であって、前記開口部は、前記塗布ユニットの前記一方側に配置されるカバー部材に設けられ、前記下流側処理ユニットは、基板に供給された処理液を乾燥させる乾燥ユニットであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項9の発明は、請求項7または8の発明に係る基板処理装置であって、前記所定空間のうち、前記塗布ユニットを挟んで前記開口部とは反対側の空間には、各処理ユニットの付帯設備が設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1ないし9に記載の発明によれば、塗布ユニットを第1処理系統と第2処理系統との間の所定空間に配置するとともに、塗布ユニットと上流側処理ユニットおよび下流側処理ユニットとの間で基板を搬送する搬送ユニットを、上流側処理ユニットと下流側処理ユニットとの間に配置することで、搬送ユニットの数を削減できる。したがって、基板処理装置の製造コストを軽減できるとともに、設置面積を小さくできる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明によれば、カバー部材により塗布ユニットが所定空間に露出する部分が仕切られるため、塗布ユニットで使用する処理液から発生する雰囲気が所定空間側に拡散することを抑制できる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明によれば、塗布ユニットに向けて供給されるエアが塗布ユニットの側方を通過できるように、塗布ユニットとカバー部材との間に所定の間隙を設けることで、エアの流れを適切に形成できる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明によれば、第1排気手段を設けることにより、塗布ユニットに向けて供給されたエアを効果的に排気できる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明によれば、第2排気手段を設けることにより、塗布ユニットに向けて供給されたエアを効果的に排気できる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明によれば、塗布ユニット周辺へのアクセスが容易となるため、塗布ユニットやその周辺の各処理ユニットの整備を容易に行うことが可能となる。
【0025】
また、請求項7に記載の発明によれば、カバー部材に開口部を設けることで、カバー部材の内側に設置された塗布ユニットの整備を容易に行うことができる。
【0026】
また、請求項8に記載の発明によれば、塗布ユニットの周囲を移動することなく、乾燥ユニットおよび塗布ユニットを整備できる。
【0027】
また、請求項9に記載の発明によれば、所定空間内部に各処理ユニットの付帯設備を設置することで、作業者の開口部へのアクセスを妨げることなく、所定空間を有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0029】
<1. 第1の実施の形態>
<1.1. 基板処理装置の構成および機能>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗布部1を備える基板処理装置100を示す平面図である。本実施形態における基板処理装置100は、液晶表示装置用の画面パネルを形成するための装置である。したがって、基板処理装置100は、液晶表示装置の画面パネルを製造するための角形ガラス基板(以下、単に「基板」と称する。)90を処理対象とする。なお、基板処理装置100は、フラットパネルディスプレイ用の種々の基板や半導体基板を製造する装置として変形利用できる。
【0030】
なお、図1において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の各図についても同様である。
【0031】
基板処理装置100は、塗布部1、基板処理装置100に対する基板90の搬入および搬出を行うインデクサ部2、洗浄部3、および基板90について熱的処理を行う乾燥部41並びに熱的処理部42,43を備える。また、基板処理装置100は、露光部5、現像部6および検査部7をさらに備える。
【0032】
塗布部1は、基板90の表面に処理液(ここでは、レジスト液)を塗布する塗布ユニット10を備える。塗布ユニット10は基板90に処理液を塗布することにより、基板90に処理液の薄膜を形成する。塗布ユニット10の構成については後述する。
【0033】
搬送ユニット21は、洗浄部3と塗布ユニット10と乾燥部41との間で、基板90を搬送する。搬送ユニット21の構成については後述する。
【0034】
洗浄部3は、図示を省略する搬送コンベアにより、基板90を(+Y)側へ搬送しつつ基板90の洗浄を行う。具体的には、洗浄部3では、UV照射処理や洗浄液での洗浄処理、エアナイフによる液切り処理(乾燥処理)などが行われる。
【0035】
乾燥部41は、塗布ユニット10にて基板90に塗布された処理液を乾燥することによって、処理液の膜と基板90との密着性を高める。乾燥部41の詳細については後述する。
【0036】
洗浄部3および乾燥部41は、Y方向に沿って配置されており、搬送ユニット21により(+Y)側に向かって移動する基板90を処理する。したがって、本実施形態では、洗浄部3および乾燥部41は、本発明の第1処理系統を構成する。
【0037】
また、詳細は図示しないが、熱的処理部42,43は、基板90を加熱する加熱ユニット(ホットプレート)、基板90を冷却する冷却ユニット(クールプレート)を含むユニット群と、これらのユニット間で基板90を搬送する搬送ユニットとを備える。なお、熱的処理部43は、現像部6にて現像処理が完了した基板90を熱処理(ポストベーク処理)する。
【0038】
露光部5は、塗布部1での塗布処理、および、乾燥部41での乾燥処理が完了した基板90をパターン状に露光することによって、基板90に形成された処理液の層に、所定パターン(配線パターンやカラーフィルターのパターンなど)を描画する。
【0039】
現像部6は、Y方向に沿って延びており、図示を省略する搬送コンベアを備える。現像部6は、第1処理系統での処理、および、露光部5での露光処理を終えた基板90を(−Y)方向へ搬送しつつ、現像液などを基板90の表面に供給することで、基板90を現像処理する。この現像処理により、基板90の表面に所定パターンが形成される。
【0040】
また、図1に示すように、現像部6は、上述の第1処理系統(洗浄部3および乾燥部41)に対してX方向に中庭空間101を設けた状態で(第1処理系統と離間するように)配置される。
【0041】
すなわち、本実施形態における現像部6は、本発明の第2処理系統を構成する。なお、現像処理が完了した基板90は、現像部6が備える搬送コンベアにより、熱的処理部43へ搬送される。
【0042】
検査部7は、熱的処理部43にて熱的処理が完了した基板90を検査する。具体的には、検査部7は、予め登録されたマスタパターン(理想状態のパターン)と検査対象の基板90上に形成されたパターンとの比較に基づいて、パターンの形成不良の有無を検出する。検査部7での検査が完了した基板90は、検査部7からインデクサ部2へ搬出される。
【0043】
[塗布ユニット10]
次に、塗布部1が備える塗布ユニット10の構成について、図2を参照しつつ説明する。
【0044】
図2は、塗布ユニット10を示す斜視図である。塗布ユニット10は、基板90を載置して水平に保持するための保持台として機能するとともに、付属する各機構の基台として機能するステージ11を備える。ステージ11は、直方体形状の一体の石製であり、その上面(保持面110)および側面は、平坦面に加工されている。
【0045】
また、ステージ11は、複数のリフトピンLPを備えており、これらのリフトピンLPがZ方向に沿って進退する(すなわち、保持面110から突出したり、保持面に埋没したりする)ことにより、基板90を保持面110に載置したり、所定の高さ位置まで上昇させたりする。
【0046】
また、ステージ11の上面の(+X)側には、走行レール111aが設置され、(−X)側には、走行レール111bが設置される。走行レール111a,111bはいずれもその長手方向が、Y方向に沿うように配置される。走行レール111aは、後述の移動子123aの移動方向を規定する。また、走行レール111bは、後述の移動子123bの移動方向を規定する。すなわち、走行レール111a,111bは、リニアガイドとして機能する。
【0047】
ステージ11の(+X)側の側面上部には、固定子112aが設置され、(−X)側の側面上部には、固定子112bが設置される。
【0048】
固定子112aは、移動子123aとの電磁的相互作用により、直動駆動力を生成するリニアモータを構成する。また、固定子112bは、移動子123bとの電磁的相互作用により、直動駆動力を生成するリニアモータを構成する。
【0049】
さらに、ステージ11の(+X)側の側面下部には、スケール部113aが設置され、(−X)側の側面下部には、スケール部113bが設置される。
【0050】
スケール部113aと移動子123aに固定されている検出子124aとは、リニアエンコーダを構成する。すなわち、スケール部113aおよび検出子124aで構成されるリニアエンコーダは、スケール部113aと検出子124aとの位置関係に基づいて、移動子123aの位置を検出する。また、スケール部113bおよび検出子124bで構成されるリニアエンコーダは、移動子123bの位置を検出する。
【0051】
ステージ11の(+Y)側には、待機空間114が設けられている。待機空間114には、図示を省略するが、後述のスリットノズル121を洗浄する洗浄機構や待機ポッドなどが設けられる。
【0052】
また、ステージ11の上方には、ステージ11の両側部分から架け渡された架橋構造12が設けられている。
【0053】
架橋構造12は、主に、カーボンファイバー樹脂を骨材とするノズル支持部120と、ノズル支持部120の両端を下方から支持する昇降機構122a,122bとで構成される。
【0054】
ノズル支持部120の下方には、X方向に沿って延びるスリットノズル121が取り付けられる。スリットノズル121には、図示を省略する処理液を供給する配管や、ポンプを含む供給機構が接続されている。
【0055】
また、スリットノズル121は、その下端の吐出部に、X方向に沿って延びるスリット状の開口が設けられている。スリットノズル121は、上述の供給機構から処理液が供給されると、当該スリット状の開口から処理液を吐出する内部構造を有する。
【0056】
昇降機構122a,122bは、架橋構造12の両側に分かれて配置されており、ノズル支持部120によりスリットノズル121と連結されている。昇降機構122a,122bは、スリットノズル121を並進的に昇降させるとともに、スリットノズル121を水平面内での姿勢を調整する。
【0057】
昇降機構122a,122bの下部には、前述の移動子123a,123bがそれぞれ固定されている。昇降機構122aは、移動子123aおよび固定子112aの作用により、また、昇降機構122bは、移動子123bおよび固定子112bの作用により、走行レール111a,111bで規定される移動方向(Y方向)に沿って移動する。
【0058】
また、移動子123aのY方向の位置は、検出子124aにより検出可能であり、移動子123bのY方向の位置は、検出子124bにより検出可能である。
【0059】
すなわち、塗布ユニット10は、架橋構造12のY方向の位置をリニアエンコーダにより検出しつつ、架橋構造12をリニアモータによりY方向へ移動させる。
【0060】
以上の構成に基づいて、塗布ユニット10は、スリットノズル121から処理液を吐出させつつ、水平に支持された基板90の表面に沿ってスリットノズル121を移動させる。基板90の表面をスリットノズル121が走査することにより、基板90の表面の所定領域に処理液が塗布され、処理液の薄膜が形成される。
【0061】
なお、スリットノズル121が処理液を塗布しないときは、図2に示すように、スリットノズル121は、待機空間114の上方の位置(待機位置)に待機する。この待機中に、スリットノズル121のメンテナンス(洗浄処理など)が行われる。
【0062】
[カバー部材1a]
図1に戻って、塗布ユニット10の周囲のうち、少なくとも中庭空間101に露出する側面は、カバー部材1a(図1中、太線で示す)により覆われている。すなわち、本実施形態では、カバー部材1aにより塗布部1の外縁が規定され、カバー部材1aにより規定される空間内に、塗布ユニット10と搬送ユニット21とが配置される。
【0063】
基板処理装置100では、塗布ユニット10の側面をカバー部材1aにより覆うことにより、塗布ユニット10で使用される処理液や洗浄部3で使用される洗浄液などから発生する溶剤を含んだ雰囲気が中庭空間101側周辺に拡散することを抑制できる。
【0064】
[開口部1b]
塗布ユニット10の(+Y)側の側面(すなわち、乾燥部41側の側面)に設けられるカバー部材1aには、開閉式の開口部1bが設けられる。開口部1bは、塗布ユニット10についての整備を行うためにオペレータが塗布部1へ進入する(アクセスする)ときなどに開放される。
【0065】
ここで、塗布ユニット10の整備としては、例えば、塗布ユニット10から破損した基板90を搬出する作業や、スリットノズル121を交換したり、吐出口を洗浄したりする作業などが該当する。
【0066】
なお、開口部1bのサイズは、作業者自身が塗布部1に進入できるサイズに限られるものではなく、手など作業者の体の一部や、各種作業用器具などが塗布部1に進入できる程度のサイズであってもよい。
【0067】
また、開口部1bの開閉方式は、一般的な扉のように所定の軸周りに弧を描いて前後に開閉するドア方式に限られるものではなく、例えば、上下または左右に開閉するシャッター方式であってもよい。
【0068】
[中庭空間101]
図1に示す中庭空間101は、Y方向に沿って配置される洗浄部3および乾燥部41と、Y方向に延びる現像部6とが、X方向に所定の間隔をあけた状態で配置されることにより形成される空間である。この中庭空間101には、塗布部1が設けられる。
【0069】
なお、搬送コンベア22は、作業者がその下方を潜れる高さ位置に設けられている。したがって、作業者は、搬送コンベア22の下方を通って中庭空間101へ進入できる。
【0070】
また、図1に示すように、基板処理装置100では、カバー部材1aと現像部6との間に作業者が通行可能な幅の通路102が形成されている。作業者は、通路102を通行することで、塗布部1周囲を移動できるため、塗布部1やその周辺の各処理ユニットの整備を容易に行うことができる。
【0071】
また、中庭空間101のうち、通路102の先(すなわち、塗布ユニット10を挟んで開口部1bとは反対側(−Y側))の空間は、基板処理装置100の備える各処理ユニットの付帯設備103aを設置する設置空間103となっている。付帯設備103aとしては、具体的には、塗布ユニット10に処理液を供給するための供給機構や、洗浄部3に洗浄液を供給するための供給機構などが該当する。
【0072】
このように、本実施形態では、設置空間103に付帯設備103aを設けることにより、中庭空間101の空いている空間を有効利用している。なお、通路102の道幅を十分に確保することにより、作業者は、設置空間103まで処理液や洗浄液のタンクなどを台車で搬送することも可能となる。
【0073】
[搬送ユニット21]
次に、搬送ユニット21の構成について、図3を参照しつつ説明する。
【0074】
図3は、搬送ユニット21を示す側面図である。搬送ユニット21は、基台210、上方アーム部211、下方アーム部212、昇降機構213、および、回転機構214を主に備える。搬送ユニット21は、(−Y)側の洗浄部3と、(+Y)側の乾燥部41との間に配置される。すなわち、洗浄部3、搬送ユニット21および乾燥部41は、この順にY方向に沿って配置される(図1参照)。
【0075】
基台210は、搬送ユニット21の各構成を固定するための台座として機能する。上方アーム部211および下方アーム部212は、それぞれ第1アーム211a,212aと、第1アーム211a,212aに連結される第2アーム211b,212bとを備える。
【0076】
第2アーム211b,212bの先端には、ハンド211c,212cが連結されている。搬送ユニット21は、第1アーム211a,212aおよび第2アーム211b,212bを前後に屈伸することにより、ハンド211c,212cを前後(図3中、Y方向)に進退させることができる。
【0077】
なお、ハンド211c,212cのそれぞれは、所定方向に長手方向を有する複数のチャック211d,212dが図3中、X方向に配列されており、これら複数のチャック211d,212dの上面にて基板90を下方から支持する。
【0078】
昇降機構213は、所定の直動機構(図示せず)により、上方アーム部211および下方アーム部212を一体的に上下(Z方向)に昇降させる。すなわち、昇降機構213は、上方アーム部211および下方アーム部212の高さ位置を調整する。
【0079】
また、回転機構214は、回転モータ(図示せず)を備え、軸Oを中心に、上方アーム部211および下方アーム部212を一体的に回転させる。すなわち、回転機構214は、上方アーム部211および下方アーム部212の進退方向を調整する。
【0080】
なお、上方アーム部211および下方アーム部212のそれぞれを、個別に上下移動させたり回転させたりできるように、昇降機構213および回転機構214を構成してもよい。
【0081】
[乾燥部41、搬送コンベア22]
次に、乾燥部41および搬送コンベア22について、図1を参照しつつ説明する。
【0082】
乾燥部41は、基板90を内部に収納可能なサイズの処理室(図示せず)を備える。乾燥部41は、処理室内部を減圧することにより、塗布部1にて基板90に塗布された処理液を乾燥させる。
【0083】
なお、図示を省略するが、乾燥部41は、複数のリフトピンを備えており、搬送ユニット21により搬送される基板90を当該リフトピンの上端にて受け取る。
【0084】
搬送コンベア22は、Y方向沿って配列された複数の搬送ローラ220を備える。各搬送ローラ220は、X方向に長手方向を有し、当該長手方向に平行な回転軸を中心に、図示しない駆動機構の動作により回転する。
【0085】
搬送コンベア22に搬送された基板90は、複数の搬送ローラ220の上端により下方から支持され、搬送ローラ220が回転することにより(+Y)方向へ搬送される。なお、各搬送ローラ220の上端の高さ位置は、熱的処理部42が基板90を受け取るときの受け取り高さ位置に統一されている。
【0086】
[搬送ユニット21の搬送動作]
次に、搬送ユニット21の搬送動作について説明する。
【0087】
まず、搬送ユニット21は、洗浄部3にて洗浄処理および乾燥処理が完了し、洗浄部3の下流端(+Y側部分)の基板受渡ポジション3P(図1中、破線で示す位置)まで搬送された基板90を、上方アーム部211あるいは下方アーム部212のうちのいずれか一方のアーム部にて受け取り、洗浄部3から当該基板90を搬出する。
【0088】
そして、搬送ユニット21は、右回りに90度回転して塗布ユニット10へ向きを変え、上方アーム部211および下方アーム部212のうちの他方のアーム部により、塗布ユニット10から塗布処理後の基板90を受け取る。さらに、搬送ユニット21は、一方のアーム部で支持している基板90(塗布処理前の基板90)を塗布ユニット10へ搬入する。
【0089】
なお、本実施形態に係る基板処理装置100では、搬送ユニット21は、塗布ユニット10に対して、Y方向(すなわち、スリットノズル121の移動方向)と水平面内で直交する(+X)側から基板90の搬入および搬出を行う。したがって、スリットノズル121が上述の待機位置(図1および図2に示すスリットノズル121の位置)に待機している際に、搬送ユニット21が基板90の搬入および搬出を行う。これにより、架橋構造12と搬送ユニット21とが互いに干渉することを防止できる。
【0090】
塗布ユニット10に対する基板90の搬入および搬出が完了すると、搬送ユニット21は、右回りに90度回転して乾燥部41へ向きを変える。そして、搬送ユニット21は、すでに乾燥処理が完了した基板90を乾燥部41から受け取って搬送コンベア22に受け渡した後、他方のアーム部で支持している基板90(塗布処理直後の基板90)を乾燥部41へ搬入する。
【0091】
乾燥部41に対する基板90の搬出および搬入が完了すると、搬送ユニット21は、180度回転して洗浄部3へ再び向きを変換し、次の塗布処理対象の基板90を受け取って、洗浄部3から基板90を搬出する。
【0092】
これらの動作を反復して行うことにより、搬送ユニット21は、洗浄部3、塗布ユニット10および乾燥部41の間で基板90の搬送を実行する。以上が、搬送ユニット21の搬送動作についての説明である。
【0093】
次に、塗布部1に形成されるダウンフローDFについて、図4を参照しつつ説明する。
【0094】
図4は、図1に示す塗布部1や現像部6の断面を示す概略図である。図4に示すように、塗布ユニット10と搬送ユニット21が設置される空間の上部には、ファンフィルターユニットFFUが備えられている。ファンフィルターユニットFFUは、上方から下方に向けてエアを送風することにより、ダウンフローDFを形成する。ファンフィルターユニットFFUは、塗布ユニット10などへのパーティクルの進入を防ぐことで基板90へのパーティクル付着を防止する。
【0095】
なお、ファンフィルターユニットFFUのエアの吹き出し口には、HEPAフィルターが備えられている。このHEPAフィルターにより、微細なパーティクルなどが除去された清浄なエアが塗布ユニット10などに対して供給される。
【0096】
また、塗布ユニット10や搬送ユニット21が載置される床面には、グレーチングが設けられており、ダウンフローDFは、床面のグレーチングを通じて階下へ排気される。
【0097】
図4に示すように、本実施形態では、塗布ユニット10に向けて供給されたエアがステージ11の側方を通過して確実に排気されるように、塗布ユニット10は、塗布部1の通路102側(−X側)の外装(カバー部材1a)に対して、所定の間隙Dを設けた状態で配置される。所定の間隙Dを確保することにより、塗布ユニット10へ向けて供給されるエアの流れが局所で滞ることを抑制できるため、塗布ユニット10が配置された空間内で適切なダウンフローDFが形成される。
【0098】
以上が、本実施形態における基板処理装置100についての説明である。
【0099】
<1.2. 本実施形態の効果>
本実施形態の基板処理装置100によれば、塗布ユニット10を中庭空間101に配置することで、塗布ユニット10、洗浄部3および乾燥部41のそれぞれに対向する位置に搬送ユニット21を配置できる。したがって、塗布ユニット10と基板90の受け渡しを行う搬送機構を1台にできるため、基板処理装置100の製造コストを軽減できるとともに、装置の設置面積を縮小できる。
【0100】
また、塗布ユニット10の中庭空間101に露出する側をカバー部材1aで覆うことにより、処理液などから発生する溶剤を含んだ雰囲気が周囲に拡散することを抑制できる。
【0101】
また、塗布ユニット10が設置される空間がカバー部材1aにより規定されるため、当該空間内でダウンフローDFを形成させることが容易となる。また、塗布ユニット10とカバー部材1aとの間に所定の間隙Dを設けることで、塗布ユニット10の側方にダウンフローDFを通過させることができる。
【0102】
<2. 第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、ファンフィルターユニットFFUにより形成されるダウンフローを、床面に形成されたグレーチングから排気すると説明したが、ダウンフローDFの排気機構は、このようなものに限られるものではない。
【0103】
図5は、第2の実施の形態に係る塗布部1の断面を示す概略図である。なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成については、適宜同符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下の実施形態においても同様とする。
【0104】
図5に示すように、本実施形態では、塗布ユニット10とカバー部材1aとの間の床面に、エアを外部へ排気する排気ユニット13が備えられる。なお、排気ユニット13の上面には、Y方向に沿って延びる吸気口が設けられている(図示せず)。
【0105】
排気ユニット13は、吸気口周辺の雰囲気を吸引して排気することにより、ファンフィルターユニットFFUから供給されたエアを、塗布ユニット10の側方を通過するように導く。したがって、塗布ユニット10とカバー部材1aとの間に十分な隙間を設けることができない場合であっても、排気ユニット13を設置することで、適切なダウンフローDFを形成できる。
【0106】
なお、塗布ユニット10とカバー部材1aとの間に所定の間隙Dを設ける場合であっても、排気ユニット13をさらに設けることで、より確実にエアを排出できる。
【0107】
<3. 第3の実施の形態>
第2の実施の形態では、塗布部1の内部に排気ユニット13を設けると説明したが、排気機構を設ける方法は、このようなものに限られるものではない。
【0108】
図6は、第3の実施の形態に係る塗布部1の断面を示す概略図である。
【0109】
図6に示すように、本実施形態では、塗布部1の通路102側外部であって、カバー部材1aの下部に排気ユニット13aが備えられる。排気ユニット13aには、排気ユニット13と同様に、Y方向に沿って延びる吸気口が、カバー部材1aの塗布部1内側の面に設けられている(図示せず)。
【0110】
なお、ポンプ機構などの排気ユニット13aの本体部分は、カバー部材1aとともに塗布部1の外縁を規定するように設けてもよいが(図6参照)、吸気口と本体部分とを所定の配管でつなぐことにより、当該本体部分をカバー部材1aと離間するようにして中庭空間103に設けてもよい。
【0111】
排気ユニット13aは、吸気口周辺の雰囲気を吸引して排気することにより、ファンフィルターユニットFFUから供給されたエアを、塗布ユニット10の側方を通過するように導く。すなわち、塗布ユニット10とカバー部材1aとの間に十分な隙間を設けることができない場合や、図5に示す排気ユニット13を設けることができない場合であっても、排気ユニット13aを所定位置に設けることで、適切なダウンフローDFを形成できる。
【0112】
なお、塗布ユニット10とカバー部材1aとの間に、所定の間隙Dを設ける場合や、排気ユニット13を設ける場合であっても、排気ユニット13aをさらに設けることで、より確実にエアを排出できる。
【0113】
<4. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0114】
例えば、上記実施形態では、搬送ユニット21は、上方アーム部211および下方アーム部212の2つのアーム部を備えているが、片方のアーム部のみを持つ構成でもよい。この場合には、基板90の受け取りと受け渡しを同時に行うことができないなどの制約が生じる点で上記実施形態の方が有利であるものの、搬送ユニット21の構成を単純化できるため、基板処理装置100の製造コストを軽減できる。
【0115】
また、上記実施形態では、設置空間103に各処理ユニットの付帯設備103aを設けるとしているが、付帯設備103aの設置位置はこれに限定されるものではなく、例えば、中庭空間101のうちの、その他の空いている空間に設置されてもよい。もちろん、各処理ユニットの付帯設備103aを中庭空間101以外の空間に設置することも妨げられない。
【0116】
また、上記実施形態では、洗浄部3でのエアナイフによる液切り処理によって、洗浄後の基板90の乾燥を行うとしているが、当該液切り処理では十分に基板90を乾燥できない場合には、洗浄部3と搬送ユニット21との間の位置に加熱ユニットを設け、洗浄処理後の基板90を加熱処理する工程を追加してもよい。この場合には、搬送ユニット21が当該加熱ユニットと塗布ユニット10と乾燥部41との間で基板90を搬送するように基板処理装置100を構成すればよい。
【0117】
また、上記実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る塗布部を備える基板処理装置を示す平面図である。
【図2】塗布ユニットを示す斜視図である。
【図3】搬送ユニットを示す側面図である。
【図4】図1に示す塗布部や現像部の断面を示す概略図である。
【図5】第2の実施の形態に係る塗布部の断面を示す概略図である。
【図6】第3の実施の形態に係る塗布部の断面を示す概略図である。
【符号の説明】
【0119】
100 基板処理装置
101 中庭空間
102 通路
103 設置空間
103a 付帯設備
1 塗布部
1a カバー部材
1b 開口部
10 塗布ユニット
11 ステージ
121 スリットノズル
13,13a 排気ユニット
21 搬送ユニット
3 洗浄部
3P 基板受渡ポジション
41 乾燥部
42,43 熱的処理部
6 現像部
90 基板
D 所定の間隙
DF ダウンフロー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理装置であって、
第1方向に沿って延びるとともに、前記第1方向の一方側へ基板を移動させつつ基板を処理する第1処理系統と、
前記第1方向に沿って延びるとともに、前記第1処理系統に対して前記第1方向と直交する方向に所定空間を設けた状態で配置され、前記第1方向の他方側へ基板を移動させつつ前記第1処理系統にて処理された基板を順次に処理する第2処理系統と、
前記所定空間に配置され、水平支持される基板に向けて処理液を供給する塗布ユニットと、
前記第1処理系統の前記他方側の上流側処理ユニットと前記一方側の下流側処理ユニットとの間に配置され、前記上流側処理ユニットから前記塗布ユニットへ、および、前記塗布ユニットから前記下流側処理ユニットへ基板を搬送する搬送ユニットと、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記塗布ユニットの周囲のうち少なくとも前記所定空間に露出する側を覆うカバー部材、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記塗布ユニットと前記所定空間側の前記カバー部材との間に、前記塗布ユニットに向けて供給されたエアが通過可能な所定の間隙が設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の基板処理装置であって、
前記塗布ユニットと前記所定空間側の前記カバー部材との間の位置に設けられ、前記塗布ユニットに向けて供給されたエアを排気する第1排気手段、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記所定空間に設けられ、前記塗布ユニットに向けて供給されたエアを排気する第2排気手段、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記カバー部材と前記第2処理系統との間に所定幅の通路が設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記カバー部材には、前記塗布ユニットに対してアクセス可能とする開閉式の開口部が設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の基板処理装置であって、
前記開口部は、前記塗布ユニットの前記一方側に配置されるカバー部材に設けられ、
前記下流側処理ユニットは、基板に供給された処理液を乾燥させる乾燥ユニットであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の基板処理装置であって、
前記所定空間のうち、前記塗布ユニットを挟んで前記開口部とは反対側の空間に、各処理ユニットの付帯設備が設置されることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−80856(P2010−80856A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250319(P2008−250319)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】