説明

基板反転装置

【課題】基板を搬送する途中で、新たな駆動力源を必要とすることなく、基板を反転させる。
【解決手段】基板反転装置は、互いに向き合うように配置された第1および第2のユニットを含む。それぞれのユニットは、台車1,1’と、台車に取り付けられた基板支持部材2,2’と、基板支持部材に設けられたローラ10,10’と、ローラとの間でカム作用を行うようになされている固定カム板11,11’とを備えている。台車1,1’が移動して、ローラ10,10’とカム板11,11’とがカム作用を行うと、基板支持部材2,2’は、水平位置と垂直位置との間を枢動する。第1および第2のユニットのそれぞれにおける基板支持部材2,2’が双方とも垂直位置をとって向き合ったときに、一方の基板支持部材2に支持された基板6が他方の基板支持部材2’と接触し、双方の基板支持部材2,2’間で基板6の受け渡しが行われるようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表裏を反転させる装置に関する。本発明は特に、基板の両面を露光すべく露光工程中に基板を反転させるために用いるのに適している。
【背景技術】
【0002】
基板の両面を露光処理するため、第1の露光ステーションで基板の一方の面を露光した後、基板の他方の面を露光するための第2の露光ステーションへと基板を搬送する途中で、基板を反転させる必要がある。
【0003】
このような目的のための基板反転装置として、従来いくつかのものが提案されたが、いずれも複雑な機構や複雑な基板反転工程を必要としたものであった。
【特許文献1】特開2002−323777号公報特開平11−286325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明が解決しようとする課題は、基板を反転させるための新たな駆動力源を必要とすることなく、基板を搬送する途中でスムーズに反転させることができる、簡素な構成の基板反転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明によれば、
軌道上を走行可能な台車と、
該台車に取り付けられた基板支持部材にして、基板を水平状態に支持可能な水平位置と基板を垂直状態に支持可能な垂直位置との間を枢動可能な基板支持部材と、
前記基板支持部材に設けられたローラと、
前記軌道に隣接して設けられ、前記ローラとの間でカム作用を行うようになされているカム板と、を有し、
前記台車が前記カム板に近づく方向に前記軌道上を走行し、前記ローラが前記カム板のカム曲線に沿って第1の方向に移動する間、前記基板支持部材が前記水平位置から前記垂直位置へと枢動し、前記台車が前記カム板から離れる方向に前記軌道上を走行し、前記ローラが前記カム曲線に沿った前記第1の方向とは逆の第2の方向に移動する間、前記基板支持部材が前記垂直位置から前記水平位置へと枢動するようになされている、
第1のユニットと、
該第1のユニットと同じ構成を有する第2のユニットにして、前記軌道に沿って前記第1のユニットと向き合うように配置された第2のユニットと、
を備えており、
前記第1および第2のユニットのそれぞれにおける前記基板支持部材が双方とも前記垂直位置をとって向き合ったときに、一方の基板支持部材に支持された基板が他方の基板支持部材と接触し、双方の基板支持部材間で基板の受け渡しが行われるようになされている、
基板反転装置が提供される。
【0006】
前記基板支持部材は、基板を着脱自在に保持するための真空吸引装置に接続された複数の孔を備えるものとし、基板の前記受け渡しが、前記真空吸引装置の制御により行われるようにすることができる。
【0007】
前記第1のユニットにおける前記カム板と前記第2のユニットにおける前記カム板とは一体の部材として構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の基板反転装置によれば、軌道上を走行する基板搬送用の台車のための駆動力を利用してカム作用を行わせることにより、新たな駆動力源なしに、搬送途中の基板をスムーズに反転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明による基板反転装置の一実施態様を示す概略側面図、図2は、図1における矢印Aから見た図である。基板反転装置は、第1のユニットおよび第2のユニットを備えて構成される。第1のユニットは、軌道の上を走行可能な台車1と、台車1に取り付けられた基板支持部材2とを有する。軌道は、ベース3上に設けられたリニアモータ4およびガイド5により構成される。あるいはまた、台車1に設けた車輪を乗せるレールなどの公知手段によって軌道を構成し、台車1の駆動力源として、車輪を回転させる電動モータを利用してもよい。
【0010】
基板支持部材2は、上に基板6を置くことができる基板受け部7と、基板支持部材2を台車1に枢動可能に取り付けている枢軸部材8と、基板受け部7の一側から下方に延びるアーム9とを有する。基板支持部材2は、枢軸部材8を中心として、基板6を水平状態に支持可能な水平位置2aと基板6を垂直状態に支持可能な垂直位置2bとの間を枢動可能とされている。
【0011】
基板支持部材2のアーム9の下端には、カム機構の構成要素となる回転可能なローラ10が取り付けられている。
一方、ローラ10との間でカム作用を行うためのカム板11が、軌道に隣接して設けられている。カム板11には、カム曲線を画成するカム溝12が形成されている。ローラ10は、カム溝12と係合しながらカム曲線に沿って移動することができる。カム板11にカム溝12を形成する代わりに、カム板11の外形輪郭がカム曲線を画成するようにしてもよい。カム板11は、ローラ10とともに、第1のユニットの構成要素となる。
【0012】
基板支持部材2の基板受け部7には、基板6を着脱自在に保持するための真空吸引装置(図示せず)に接続された複数の孔(図示せず)が設けられている。真空吸引装置を作動させることにより基板6は基板受け部7上に吸着保持され、真空吸引装置の作動を停止することにより基板6は基板受け部7の吸着保持力から解放される。
【0013】
本発明による基板反転装置は、第1のユニットと同じ構成の第2のユニットをさらに含む。第2のユニットを構成する要素は、第1のユニットの構成要素と実質的に同じなので、同じ参照符号にプライム記号(’)を付して示す。図1から分かるように、第2のユニットの各構成要素は、軌道に沿って第1のユニットの各構成要素と向き合うように配置されている。
【0014】
第1のユニットのカム板11と第2のユニットのカム板11’とは、一体の部材として構成してもよい。
基板6が台車1,1’によって搬送される間に反転される動作は次の通りである。まず、第1の露光ステーション(図示せず)で片面を露光された基板6は、第1のユニットにおける台車1に取り付けられた基板支持部材2の基板受け部7に乗せられ、カム板11に近づく方向に軌道上を走行する。このとき基板支持部材2は水平位置2aの状態である。遅くともローラ10がカム溝12の下端と係合する時点では、基板6は基板受け部7に吸着保持されている。台車1がさらに前進すると、ローラ10はカム溝12のカム曲線に沿って上方(第1の方向)に移動する。ローラ10とカム溝12との間でカム作用が行われている間、基板支持部材2は、基板6を吸着保持したまま、水平位置2aから上方に枢動し、最終的には垂直位置2bへと移行する。
【0015】
一方、第2のユニットにおける台車1’は、基板を乗せない状態で、カム板11’に近づく方向に軌道上を走行し、ローラ10’とカム溝12’との間のカム作用により基板支持部材2が垂直位置2b’をとる位置まで進む。
【0016】
第1のユニットにおける、基板6を吸着保持した基板支持部材2と、第2のユニットにおける基板支持部材2’とが、それぞれ垂直位置2b,2b’をとって向き合ったとき、基板6の両面は基板受け部7,7’のそれぞれと接触した状態となる。このような状態のもとで、基板支持部材2’側の真空吸引装置を作動させ且つ基板支持部材2側の真空吸引装置の作動を停止させるように制御することにより、双方の基板支持部材2,2’間で基板6の受け渡しが行われる。
【0017】
第2のユニットにおける基板支持部材2’の基板受け部7’が基板6を吸着保持したならば、台車1’はカム板11’から離れる方向に軌道上を走行し始める。すると、カム溝12’のカム曲線に沿って、ローラ10’が下方(第2の方向)に移動する。この間のカム作用により、基板支持部材2’は、基板6を吸着保持したまま垂直位置2b’から下方に枢動し、最終的には水平位置2a’へと移行する。第1のユニットにおける台車1上では上方を向いていた基板6の面が、第2のユニットにおける台車1’上では下方を向いていることが容易に理解できよう。このようにして反転された基板6を乗せた台車1’は、基板6の未露光の側の面を露光すべく、第2の露光ステーションへ向かって搬送される。
【0018】
一方、第1のユニットにおける台車1は、基板を乗せない状態でカム板11から離れる方向に軌道上を走行する。ローラ10とカム溝12との間のカム作用により、基板支持部材2は垂直位置2bから水平位置2aへと枢動する。台車1は次の基板を乗せるべく第1の露光ステーションへ向かう。
【0019】
ローラ10とカム板11とから構成されるカム機構は、台車を走行させる駆動力によって機能しており、新たな駆動力源は何も必要とされていない点に注目されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による基板反転装置の一実施態様を示す概略側面図。
【図2】図1における矢印Aの方向から見た図。
【符号の説明】
【0021】
1,1’ 台車、2,2’ 基板支持部材、2a,2a’ 水平位置、2b,2b’ 垂直位置、3 ベース、4 リニアモータ、5 ガイド、6 基板、7,7’ 基板受け部、8,8’ 枢軸部材、9,9’ アーム、10,10’ ローラ、11,11’ カム板、12,12’ カム溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を走行可能な台車と、
該台車に取り付けられた基板支持部材にして、基板を水平状態に支持可能な水平位置と基板を垂直状態に支持可能な垂直位置との間を枢動可能な基板支持部材と、
前記基板支持部材に設けられたローラと、
前記軌道に隣接して設けられ、前記ローラとの間でカム作用を行うようになされているカム板と、を有し、
前記台車が前記カム板に近づく方向に前記軌道上を走行し、前記ローラが前記カム板のカム曲線に沿って第1の方向に移動する間、前記基板支持部材が前記水平位置から前記垂直位置へと枢動し、前記台車が前記カム板から離れる方向に前記軌道上を走行し、前記ローラが前記カム曲線に沿った前記第1の方向とは逆の第2の方向に移動する間、前記基板支持部材が前記垂直位置から前記水平位置へと枢動するようになされている、
第1のユニットと、
該第1のユニットと同じ構成を有する第2のユニットにして、前記軌道に沿って前記第1のユニットと向き合うように配置された第2のユニットと、
を備えており、
前記第1および第2のユニットのそれぞれにおける前記基板支持部材が双方とも前記垂直位置をとって向き合ったときに、一方の基板支持部材に支持された基板が他方の基板支持部材と接触し、双方の基板支持部材間で基板の受け渡しが行われるようになされている、
基板反転装置。
【請求項2】
前記基板支持部材が、基板を着脱自在に保持するための真空吸引装置に接続された複数の孔を備えており、基板の前記受け渡しが、前記真空吸引装置の制御により行われるようになされている、
請求項1に記載の基板反転装置。
【請求項3】
前記第1のユニットにおける前記カム板と前記第2のユニットにおける前記カム板とが一体の部材として構成されている、
請求項1または2に記載の基板反転装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−264837(P2006−264837A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83344(P2005−83344)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000106162)サンエー技研株式会社 (19)
【Fターム(参考)】