説明

基板搬送用部材

【課題】粘着層の粘着力を調整し易い基板搬送用部材を提供すること。
【解決手段】搬送する基板16と接触(密着)する粘着層12と、粘着層12を固定する基材層14(以下、ベース14と称する)と、を備え、粘着層12を、粘着材と充填材とを含んで構成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置および小型部品が実装されるプリント配線基板等の基板に対して、電子部品の実装、薬品洗浄、プラズマ処理、リフロー処理等の処理を行うために、基板搬送用部材(基板搬送用キャリア)という治具が用いられている。特に、フレキシブルプリント配線基板は、フィルム状の配線基板であるため、単体では、ねじれや反りが生じ易いことから、基板搬送用部材(基板搬送用キャリア)という治具を用いることが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、「基板の搬送に用いられ、該基板の下面と密着する樹脂層と該樹脂層を固定したベースとを備えた基板の搬送用キャリアであって、前記樹脂層は、シリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンとを有する混合物を、加水分解反応および縮合反応することによって得られた組成物を主成分とする材料を乾燥焼成処理してシート状に成形した基板の搬送用キャリア」について開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、「シリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンとを有する混合物を、加水分解反応および縮合反応することによって得られた組成物を主成分とする材料を加熱してシートを成形した後、該シートを260℃以上300℃以下の温度で、2時間以上8時間以下の時間、加熱し、ベースに固定する搬送キャリアの製造方法」について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4438891号公報
【特許文献2】特許第4438896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、粘着層に充填材を含まない場合に比べ、粘着層の粘着力を調整し易い基板搬送用部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。
即ち、請求項1に係る発明は、
基板に接触する粘着層と、
前記粘着層を固定する基材層と、を備え、
前記粘着層は、
シリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンと、を有する混合物を、加水分解反応および縮合反応することによって得られた組成物と、
シリケート化合物と、
充填材と、
からなる混合物を乾燥焼成処理してシート状に成形した基板搬送用部材である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記充填材は、シリカと、窒化ホウ素およびマイカの少なくとも1種と、を含む請求項1に記載の基板搬送用部材である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、粘着層に充填材を含まない場合に比べ、粘着層の粘着力を調整し易い基板搬送用部材が提供できる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、充填材がシリカと窒化ホウ素およびマイカの少なくとも1種とを含まない場合に比べ、粘着層の粘着力を調整し易い基板搬送用部材が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る基板搬送用部材を示す概略斜視図である。
【図2】本実施形態に係る基板搬送用部材を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係る基板搬送用部材を示す概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る基板搬送用部材を示す概略断面図である。
【0013】
本実施形態に係る基板搬送用部材10(以下、「基板搬送用キャリア10」と称する)は、図1及び図2に示すように、例えば、搬送する基板16(例えば、フレキシブルプリント配線基板等)と接触(密着)する粘着層12と、粘着層12を固定する基材層14(以下、「ベース14」と称する)と、を備える。そして、粘着層12は、粘着材と充填材とを含んで構成されている。
具体的には、粘着層12は、シリケート化合物、及び末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンを有する混合物を加水分解反応および縮合反応することによって得られた組成物と、シリケート化合物と、充填材と、からなる混合物を乾燥焼成処理してシート状に成形したものである。
【0014】
基板搬送用キャリア10は、粘着層12に充填材を含ませることで、粘着層12の粘着力を調整し易くすることができる。
これは、以下に示す理由によるものと考えられる。
まず、粘着層12に充填材を含ませると、粘着層12の表面に充填材の一部が存在することとなる。充填材が粘着層12の表面に存在すると、充填材により粘着層12の表面に多数の孔(言い換えれば凹凸)が形成されるものと考えられる。この多数の孔が吸盤の働きをして、粘着層12の粘着力、つまり剥離強度が上昇するものと考えられる。この粘着層12の粘着力(剥離強度)は、粘着層12の表面に存在する孔の数が増加するのに応じて上昇し、孔の数の減少するのに応じて低下するものと考えられる。そして、粘着層12の表面に存在する孔の数は、充填材の含有量が増加するのに応じて多くなり、充填材の含有量が減少するのに応じて少なくなるものと考えられる。
【0015】
このため、基板搬送用キャリア10は、粘着層12に含ませる充填材量に応じて、粘着層12の粘着力(剥離強度)が増減することから、粘着層12の粘着力を調整し易くなると考えられる。
【0016】
また、基板搬送用キャリア10は、粘着層12に充填材を含ませることで、粘着層12の膜強度(引張り耐性)が向上するものと考えられる。これは、粘着層12中で充填材同士が層状に積層し互いに保持力を持つと考えられるためである。
【0017】
なお、基板搬送用キャリア10は、弱粘着性を有する粘着層12の表面に、搬送対象となる基板16を密着して位置を保持し、基板16の反りやねじれを抑制しつつ、基板16を搬送し、基板16に対して各種処理が施される。そして、搬送終了後(各種処理終了後)に、粘着層12から基板16が剥がされる。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0018】
〔粘着層〕
まず、粘着層12について説明する。
粘着層12は、粘着材と充填材とを含んで構成される。
また、粘着層12には、必要に応じて、粘着材及び充填材以外にその他の添加剤を含んで構成させてもよい。
【0019】
(充填剤)
まず、充填材について説明する。
充填材としては、例えば、窒化ホウ素、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、ガラスフレーク、カーボン等のフィラーが挙げられる。
これらの中でも、充填材としては、シリカと、窒化ホウ素及びマイカの少なくとも1種と、からなることが望ましく、特に、シリカ、窒化ホウ素、及びマイカを使用することが望ましい。窒化ホウ素及びマイカは、その量に応じた粘着層12の粘着力の上昇度合いが大きいことから、特に、粘着層12の粘着力を調整し易くすることができる。
【0020】
また、マイカは、窒化ホウ素に比べ、その量に応じた粘着層12の粘着力の上昇度合いが大きいが、粘着層12が黄土色に呈色し易くなる。一方、窒化ホウ素は、マイカに比べ、その量に応じた粘着層12の粘着力の上昇度合いが小さいものの、粘着層を白色に呈色し易くなる。このため、粘着層12の粘着力を調整すると共に、粘着層12が呈する色を白色系とするには、窒化ホウ素、及びマイカの双方を併用することが望ましい。これにより、粘着層12に付着した異物を視認し易くなる。
なお、充填材は、粘着層12の膜強度(引張り耐性)の観点から、膜強度が高くなり易い燐片状の形状をしているマイカを使用することが望ましい。
【0021】
充填材の大きさは、例えば、平均一次粒径で0.001μm以上100μm以下がよく、望ましくは0.01μm以上50μm以下である。なお、平均一次粒径は、BET法比表面積から算出された値である。
充填材の含有量は、目的とする粘着力(剥離強度)に応じて選択されるが、例えば、粘着層固形分に対して、0.1質量%以上50質量%の範囲がよく、望ましくは1.0質量%以上20質量%の範囲である。
充填材の含有量は、少なすぎれば粘着層12の上昇が実現され難く、多すぎれば粘着層12の膜強度が低減し易くなることから、上記範囲が望ましい。
【0022】
(粘着材)
次に、粘着材について説明する。
粘着材としては、例えば、シリコーンゴム等のシリコーン系樹脂、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
そして、本実施形態では、粘着材として、例えば、シリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンと、を有する混合物を、加水分解反応および縮合反応することによって得られる組成物としてのシリコーン系樹脂(以下、「特定のシリコーン系樹脂」と称する)が適用される。
但し、粘着層12を形成する際、上記組成物(特定のシリコーン系樹脂)に、充填材と共に、さらにシリケート化合物(望ましくは上記組成物で用いた同種のシリケート化合物がよい)を混合し、この混合物を乾燥焼成処理してシート状に成形し、これを粘着層12とする。
【0023】
特定のシリコーン系樹脂は、低分子のシロキサンが含まれていない又はシロキサン単体として存在する量が少ない(例えばシロキサンの価数が15まで)ことから、柔軟性および粘着性が損なわれず、柔軟性および粘着性が経年劣化し難い。このため、例えば、リフロー炉への搬入前後を通して、つまり、加熱冷却という急激な温度変化があっても、粘着層12の粘着性が損なわれ難くなる。
また、特定のシリコーン系樹脂は、無色透明であるので、粘着層12に付着した異物を視認し易くなる。
【0024】
ここで、ポリジメチルシロキサンを「PDMS」と略し、末端をシリケート変性されたポリジメチルシロキサンを「変性PDMS」と略して、特定のシリコーン系樹脂を説明する。
【0025】
シリケート化合物とは、シリコン(Si)でできた金属アルコキシドのオリゴマーであり、主鎖にシロキサン(−Si−O−Si−)骨格を持ち、外鎖にアルコキシ基(RO)を導入した化合物のことである。ここで、アルコキシ基(RO)のアルキル部分である(R)は、メチル基、エチル基、プロピル基等が例示される。このシリケート化合物は、水と容易に反応する特性を持っている。
【0026】
シリケート化合物は、金属アルコキシドのオリゴマーであるので、金属アルコキシドよりも分子量が大きいので、揮発しにくい。このため、シリケート化合物が加水分解した時に、変性PDMSに含まれる揮発性の高い低分子のシロキサンの揮発を、より一層、抑制することができる。また、シリケート化合物は、高い化学反応性を有しており、縮合反応を円滑に進めることができる。
【0027】
シリケート化合物の種類として、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート等が挙げられる。品質の安定性および安全性の点からエチルシリケートが好ましい。反応性を上げることを目的にメチルシリケートの使用の場合、揮発されるメタノールの処理を確実に実施する必要がある。
【0028】
一方、変性PDMSとは、シリケート化合物にてPDMSの末端を変性処理したものであり、両末端にシラノール基を有するPDMSと、主鎖の片側または両側に加水分解可能な官能基であるアルコキシ基を有するアルコキシシラン部分縮合物とを反応させて得られるものをいう。
【0029】
変性PDMSは、通常のPDMSと比べると、格段に高い官能基濃度を有している。また、変性PDMSは、シリケート化合物との縮合反応性が高いため、変性PDMSに含まれるアルコキシシラン部分縮合物は、円滑に縮合反応が行われ、硬化してポリマー化することができる。
【0030】
変性PDMSは、質量平均分子量が5000以上で100000以下の範囲にあるものが使用される。
【0031】
ここで、特定のシリコーン系樹脂において、シリケート化合物は、〔化学式1〕Si(n−1)(RO)2(n+1) (R=アルキル基、n=4以上16以下)で表されるものであり、また、変性PDMSは、〔化学式2〕Si(n−1)(RO)2(n+1)(OSi(CH(RO)2(n+1)Si(n−1)(R=アルキル基、n=4以上16以下、m>50)で表されるものであってもよい。
【0032】
また、シリケート化合物(A)と、前記変性PDMS(B)の配合の割合が、A/Bのモル比にて、0.1以上10以下の範囲であることが望ましい。最適な配合の割合は、A/Bのモル比にて1前後である。
特定のシリコーン系樹脂は、この最適な配合の割合を基準にし、柔軟性を要求する場合は変性PDMS(B)を増加し、反対に高硬度を要求する場合はシリケート化合物(A)を増加させるのがよい。
【0033】
ただし、特定のシリコーン系樹脂は、シリケート化合物(A)を増加させる場合、モル比10を越えると、低分子のシロキサンの揮発成分が増加する。つまり、低分子のシロキサンが単体として存在する量が増加するため、硬化時の収縮や薄膜化、場合によってはクラックの発生などの問題が生じ易くなる。
また、モル比0.1より小さい場合は、シリケート化合物(A)と変性PDMS(B)との加水分解反応および縮合反応が円滑に行われず、結果として未硬化の状態となり、低分子のシロキサンが残留し易くなる。
【0034】
特定のシリコーン系樹脂において、シリケート化合物は、3量体以上12量体以下であることが望ましい。これは、3量体未満ではシリケートが持つ特性の効果が少なく、また12量体より上のものシリケート化合物の粘度が高くなることから合成時に扱いにくいからである。
【0035】
特定のシリコーン系樹脂は、上記シリケート化合物と、上記変性PDMSとを有する混合物を加水分解および縮合反応させることで得られる。
シリケート化合物は、水の存在下にて容易に加水分解するため、シリケート化合物の分子内のアルコキシ基が、反応性の高いシラノール基(−OH基)となる。
一方、前記変性PDMSも同様に、加水分解をすることにより、水の存在によってシラノール基(「シラノール変性」とも呼ぶ。)となる。
【0036】
これら双方のシラノール基は、高い反応性を有していると同時に、似通った反応性を有しているため、シリケート化合物と変性PDMSとを有する混成物を加水分解することによって、シラノールの凝集が加速されることなく、変性PDMSとの縮合反応が順調に進行する。これにより、変性PDMSに含まれる低分子のシロキサンも、反応生成物(組成物)中に取り込まれる。
【0037】
つまり、加水分解反応および縮合反応により、低分子のシロキサンは、組成物を構成する物質の一部となり、単体として存在しなくなる、または単体として存在する量が極めて微量(シロキサンの価数が15まで)となる。このため、低分子のシロキサンが揮発することがないか、揮発量が極めて微量となる。
【0038】
〔ベース〕
次に、ベース14について説明する。
ベース14は、例えば、シート状若しくは板状のアルミニウム、SUS等の金属、ポリイミド等のエンプラフィルム、ガラス板、ガラスエポキシ板、またはシリコーン基板等により構成される。
【0039】
〔基板搬送キャリアの製造方法〕
次に、基板搬送キャリア10の製造方法の一例について説明する。
まず、粘着層形成用塗料として、粘着材(その原料の単量体やオリゴマー、コポリマー等)と、充填材と、必要に応じてその他の添加剤との混合溶液を準備する。
次に、この粘着層形成用塗料を金型に塗布し、粘着材種に応じて加熱処理、紫外線照射等によって、硬化(固体または半固体「ゲル」とも呼ぶ。)させて粘着層12となる成形体を形成する。成形体の形状は、搬送する基板16を表面に置いて搬送できるものであれば任意でよいが、一般的にはシート状、板状に成形する。
そして、シート状等に成形した成形体を粘着層12とし、これをシート状等のベース14の表面に、密着または接着させて固定(保持)する。
以上により、基板搬送キャリア10が得られる。
【0040】
なお、本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【実施例】
【0041】
[比較例1、実施例1−1〜1−4、実施例2−1〜2−3]
(組成物の製造)
まず、組成物の製造について説明する。
攪拌装置、温度計、滴下ライン、加熱装置を取り付けた反応容器に、エチルシリケート(エチルシリケートの約32量体のオリゴマー、多摩化学工業株式会社製、シリケート45 n=6〜8)2.6質量%と、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(質量平均分子量;38,000相当)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製YF3057)97.3質量%と、水0.1質量%を入れ、約30分間、加熱攪拌混合した。その後、攪拌しながら約30分かけて室温まで自然冷却し、組成物であるゾルIを得た。
【0042】
また、前記したゾルIの製造で用いたものと同じ攪拌装置、温度計、滴下ライン、加熱装置を取り付けた反応容器に、エチルシリケート(エチルシリケートの約32量体のオリゴマー、多摩化学工業株式会社製、シリケート45 n=6〜8)6.2質量%と、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(質量平均分子量;38,000相当)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製YF3057)93.6質量%と、水0.2質量%を入れ、約30分間、加熱攪拌混合した。その後、攪拌しながら約30分かけて室温まで自然冷却し、組成物であるゾルIIを得た。
【0043】
(粘着層形成用塗料を調製)
次に、表1、表2に従った組成を混合した混合物を用いて、粘着層形成用塗料を調製した。尚、用いた充填剤は、窒化ホウ素(電気化学工業(株)製「SP−2」平均一次粒径4μm)、マイカ(山口雲母工業(株)製「A21−S」平均一次粒径22μm)、シリカ(日本アエロジル(株)製「R972」平均一次粒径0.016μm)である。
【0044】
(シートの作製)
調製した粘着層形成用塗料をシャーレ(縦50mm×横50mm)に仕上がりで1mmの厚みになるように注入し、高温炉(アドバンテック東洋株式会社製のDRC433FA)を用いて、270℃で1時間、加熱焼成処理を行ない、その後、シャーレから脱型して、粘着層12となる引張り強度測定試験片シート(厚さ1mm)を得た。
【0045】
(基板搬送用キャリアの製造)
そして、基板搬送用キャリア10のベース14となる縦75mm、横75mm、1.5mmのアルミニウムの表面に粘着層12(引張り強度測定試験片シート)を設けた試験用の基板搬送用キャリア10を作製した。
そして、基板搬送用キャリア10の粘着層12について、剥離強度、引張り強度および呈する色について調べた。
【0046】
(剥離強度の測定方法)
剥離強度の測定は、粘着層12に貼り付けたフレキシブル基板(材質:ポリイミド、大きさ:縦50mm、横50mm、厚さ75μm)の中央部を、剥離試験機のピックによってつまみ上げ、フレキシブル基板が完全に剥離した時の強度(最大値:Peak Hold)を測定した。剥離試験機は、島津製作所社製 小型卓上型材料強度試験機 EZTest(型式 EZ−S)を用いた。
なお、剥離強度の単位は、「mN/50mm」とした。かかる単位を用いた理由は、剥離強度を測定するフレキシブル基板の大きさが50mmであるからであり、50mm当たりに加わる力(mN)を表現したものである。
【0047】
(引張り応力の測定方法)
引張り応力は、次のようにして調べた。
すなわち、引張り強度測定試験片シートを、JIS K6251 ダンベル状7号型にて打ち抜き、厚み1mmの試験片を得た。これを島津製作所社製 小型卓上型材料強度試験機 EZTest(型式 EZ−S)を用いて所定の速度で引張り試験を行い、その最大点応力を引張り応力とした。
【0048】
(呈する色の観察方法)
試験片の呈する色を目視にて観察した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、剥離強度が上昇しており、粘着層12の粘着力の調整が容易にできることがわかる。
窒化ホウ素粉、マイカ粉を用いた実施例1−2〜1−4および2−1〜2−3は、窒化ホウ素粉、マイカ粉の充填量に応じて(比例して)粘着層12の粘着力(剥離強度)が上昇し、調整が容易にできることがわかる。つまり、顧客が要求する粘着力(剥離強度)を備えた基板搬送用部材は、充填材の量を調整すれば、容易に製造することができる。
窒化ホウ素粉とマイカ粉とを併用した実施例2−2は、窒化ホウ素粉を用いていない実施例2−3に比べ、呈する色が白色に近いので、粘着層に付着した埃等が発見し易くなる。
【0052】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び図面の記載から当事者が認識する事ができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更および付加が可能である。
【0053】
例えば、前記した実施例においては、シリケート化合物として、ES45(エチルシリケートの約32量体のオリゴマー 多摩化学工業(株)製シリケート45)を用いたものを示したが、多摩化学工業(株)製シリケート40 n=4〜6を用いても良い。
【符号の説明】
【0054】
10 基板搬送用キャリア(基板搬送用部材)
12 粘着層
14 ベース(基材層)
16 搬送する基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に接触する粘着層と、
前記粘着層を固定する基材層と、を備え、
前記粘着層は、
シリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンと、を有する混合物を、加水分解反応および縮合反応することによって得られた組成物と、
シリケート化合物と、
充填材と、
からなる混合物を乾燥焼成処理してシート状に成形した基板搬送用部材。
【請求項2】
前記充填材は、シリカと、窒化ホウ素及びマイカの少なくとも1種と、を含む請求項1に記載の基板搬送用部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−49322(P2012−49322A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189792(P2010−189792)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】