説明

基板洗浄装置、および、基板洗浄方法

【課題】大型の基板であっても、洗浄品質を維持しつつ短いタクトタイムで洗浄を行う。
【解決手段】第一洗浄布12を基板に押し付ける第一押圧子11と、第一洗浄布12の新しい部分を第一押圧子11に供給する第一供給手段13と、第一押圧子11を基板1に対して相対的に移動させることにより第一洗浄布12を基板に対して相対的に移動させて洗浄工程を実施する移動手段3とを備える基板洗浄装置30であって、第一押圧子11は、第一洗浄布12を基板1に押し付ける第一押付部25と、第一押付部25の前方に液体を吐出する第一吐出口18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機EL(light-emitting)ディスプレイなどに用いられるガラス基板などの各種基板の被洗浄面を洗浄する基板洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上述したディスプレイの製造工程においては、ガラス基板の側縁部に形成された電極にドライバICなどの各種部品を電気的に接続すると共に物理的に固着する工程がある。具体的には、電極が配置されているガラス基板の側縁部にテープ状の異方性導電膜(ACF:Anisotoropic Conductive Film)を貼り付け、当該異方性導電膜を介して各種部品を取り付ける工程が行われる。
【0003】
ここで、ガラス基板の側縁部に各種部品を取り付ける工程は、ディスプレイの製造工程全体においては後半の工程であり、前半の工程等によってガラス基板の側縁部には汚れが付着している場合がある。従って、異方性導電膜をガラス基板の側縁部に取り付ける前に、ガラス基板の側縁部を洗浄する必要がある。
【0004】
上記ガラス基板の側縁部の表面に付着した汚れを工業的に洗浄するには、ガラス基板の側縁部の両面に洗浄布を配置し、二つの押圧子によって洗浄布を所定の力で挟み込み、押圧子を洗浄布と共に側縁部に沿って相対的に移動させて拭き取るように洗浄する方法が採用されている。
【0005】
ところで、特許文献1に示されるような前記洗浄布を使った洗浄工程においては、二つの押圧子で基板を挟み込む前の洗浄布にアルコール等の液体をしみ込ませ、液体で濡れた洗浄布を基板に押し付けて洗浄を行う湿式洗浄が採用されている。このような湿式洗浄を採用することにより、基板の表面に傷がつきにくくなり、また、基板表面の配線を剥がす事無く洗浄することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−237699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、昨今のテレビやコンピュータ用のモニタなどにおいては、ディスプレイが大型化する傾向にある。このような製品に用いられる大型のガラス基板の側縁を前記湿式洗浄で洗浄する場合、洗浄工程の途中で洗浄布にしみ込ませた液体が蒸発し洗浄布が乾燥してしまう事がある。
【0008】
このような場合、事前にしみ込ませる液体の量を増加させることが考えられるが、押圧子により洗浄布を基板に押し付ける際に、液体が溢れ出して基板の表面に残るため、これらの液体が乾くまで次工程に移ることができず、また、液体が乾く際に残渣が基板表面に付着して再汚染が発生することもある。これらを避けるためには、事前に適量の液体を洗浄布にしみ込ませ、洗浄布が乾いてきた時点で洗浄工程を中断し、押圧子により基板に押し付けられた状態の洗浄布を開放して再び洗浄布に液体をしみ込ませることが考えられる。
【0009】
しかしこの方法では、洗浄工程を一時中断しなければならないため、洗浄タクトが長くなるという課題が生じる。また、基板の側縁の中間部分で洗浄工程が中断するため、洗浄工程を再開する際は、確実に洗浄することを考慮し、洗浄が中断した部分から少し戻した場所から洗浄を再開することになる。このことが更に洗浄タクトの増加につながってしまうという課題となる。
【0010】
本願発明は、これらの課題に鑑みてなされたものであり、湿式洗浄による洗浄効果を維持しつつ、基板側縁の一端から他端に至るまで、中断することなく洗浄工程を実施することができる基板洗浄装置、基板洗浄方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる基板洗浄装置は、基板の被洗浄面に配置される長尺帯状の第一洗浄布の一部を基板の一面に対して押し付ける第一押圧子と、前記第一洗浄布の新しい部分を前記第一押圧子に供給する第一供給手段と、前記第一洗浄布の供給方向と交差する方向に前記第一押圧子を基板に対して相対的に移動させることにより前記第一洗浄布を基板に対して相対的に移動させて洗浄工程を実施する移動手段とを備える基板洗浄装置であって、前記第一押圧子は、前記第一洗浄布を基板に押し付ける面である押付面を表面に有する第一押付部と、前記第一押圧子の基板に対する相対移動方向において前記第一押付部の前方に液体を吐出する第一吐出口とを備え、当該基板洗浄装置はさらに、前記洗浄工程の際に前記第一吐出口から液体を吐出させる吐出手段を備えることを特徴としている。
【0012】
これにより、洗浄工程の途中において洗浄工程を中断させることなく洗浄布を液体で濡らすことができ、大型の基板であっても側縁部の端から端まで連続して洗浄を行うことが可能となる。なお、押圧子により基板に押し付けられた状態の洗浄布であっても、押付部の進行方向の前方に液体を吐出するため、液体が巻き込まれるようにして押し付けられた洗浄布の部分にしみ込むため、大型の基板を洗浄する場合でも、洗浄布の濡れ状態が均一で高い洗浄品質を基板の端から端まで維持することが可能となる。
【0013】
前記第一押圧子は、前記押付部の相対移動方向の側部に基板から遠ざかる方向に窪む凹部を備え、前記吐出口は、前記凹部に配置されることが好ましい。
【0014】
これにより、押付部の近傍に液体を吐出させることができるため、押付部により基板に押し付けられた洗浄布の部分に効果的に液体をしみ込ませることが可能となる。また、凹部に吐出口が備えられているため、吐出口によって洗浄工程に悪影響が生じることを回避することが可能となる。
【0015】
前記吐出口は、前記洗浄布の基板と接触しない面である裏面と接触する位置に配置されることが好ましい。
【0016】
これによれば、基板に押し付けられていない洗浄布の部分に液体を直接しみ込ませることができ、毛細管現象により液体が広がって押付部により押し付けられている洗浄布の部分に容易にしみ込ませることが可能となる。
【0017】
上記目的を達成するために、本願発明に係る基板洗浄方法は、基板の被洗浄面に配置される長尺帯状の第一洗浄布の一部を基板の一面に対して押し付ける第一押圧子と、前記第一洗浄布の新しい部分を前記第一押圧子に供給する第一供給手段と、前記第一洗浄布の供給方向と交差する方向に前記第一押圧子を基板に対して相対的に移動させることにより前記第一洗浄布を基板に対して相対的に移動させる洗浄工程を実施する基板洗浄方法であって、前記洗浄工程において、前記第一洗浄布を基板に押し付ける面である押付面を表面に有する第一押付部の前方に設けられる第一吐出口から、吐出手段により液体を吐出する吐出工程を含むことを特徴とする。
【0018】
これにより、洗浄工程の途中において洗浄工程を中断させることなく洗浄布を液体で濡らすことができ、大型の基板であっても側縁部の端から端まで連続して洗浄を行うことが可能となる。なお、押圧子により基板に押し付けられた状態の洗浄布であっても、押付部の進行方向の前方に液体を吐出するため、液体が巻き込まれるようにして押し付けられた洗浄布の部分にしみ込むため、大型の基板を洗浄する場合でも、洗浄布の濡れ状態が均一で高い洗浄品質を基板の端から端まで維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によれば、大型の基板の側縁など長い距離を洗浄する場合でも、洗浄布の濡れ状態が均一で高い洗浄品質を維持したまま洗浄工程を中断することなく完遂することが可能となる。従って、洗浄工程に必要な時間の短縮化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】基板洗浄装置を一部を省略して模式的に側面から示す平面図である。
【図2】基板洗浄装置を模式的に上面から示す平面図である。
【図3】基板を洗浄中の押圧子近傍を示す斜視図である。
【図4】第一押圧子を示す斜視図であり、(a)は押圧子を上方から望む図、(b)は押圧子を下方から望む図である。
【図5】第一押圧子を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図6】押圧子と供給管との取り付け部分を断面で模式的に示す平面図である。
【図7】第二押圧子を示す斜視図であり、(a)は押圧子を上方から望む図、(b)は押圧子を下方から望む図である。
【図8】洗浄状態にある基板洗浄装置の押圧子近傍を示す正面図である。
【図9】吐出口の配置のバリエーションを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明にかかる基板洗浄装置30の実施の形態を、図面に基づき説明する。
基板洗浄装置の洗浄対象である基板1は、本実施の形態の場合、液晶表示パネルを構成するガラス製の基板であって、基板の表面に配線や駆動回路が形成され、カラーフィルタ等が積層された後の基板である。基板1の被洗浄部分は、側縁部であって、被洗浄面に配線のみが設けられ、洗浄後に異方性導電膜が貼り付けられる部分である。側縁部は、側縁部に対し垂直方向に延びる配線が複数本縞状に配置されており、配線の厚みは0.7mm〜1mm程度と非常に薄いものの、配線によって僅かに凹凸(例えば、数μm程度)が形成されている。また、洗浄によって配線に損傷を与えることは回避すべき事項である。
【0022】
図1は、基板洗浄装置を一部を省略して模式的に側面から示す平面図である。
図2は、基板洗浄装置を模式的に上面から示す平面図である。
【0023】
図3は、基板を洗浄中の押圧子近傍を示す斜視図である。
これらの図に示すように、基板洗浄装置30は、基板1の側縁の表裏両面に存在する被洗浄面を濡れた状態の第一洗浄布12や第二洗浄布32(後述)を押付ながら基板1に沿って移動させることによって拭くようにして被洗浄面を洗浄する装置であって、第一押圧子11と、第一供給手段13と、移動手段3と、吐出手段40とを備える装置である。本実施の形態の場合、基板洗浄装置30はさらに、第二押圧子31と、第二供給手段33とを備えている。
【0024】
本実施の形態の場合、第一押圧子11と、第一供給手段13と、第二押圧子31と、第二供給手段33とは、保持手段41に取り付けられている。この保持手段41は、第一押圧子11と、第一供給手段13と、第二押圧子31と、第二供給手段33とをユニット化するものであり、当該ユニットを基板洗浄装置30に対して着脱可能とするものである。
【0025】
第一供給手段13は、未だ洗浄に供されていない新しい第一洗浄布12の部分を第一押圧子11の押付面15(後述)に供給する装置である。本実施の形態の場合、第一供給手段13は、第一供給リール27と、第一ガイドローラ14と、第一回収リール17とを備えている。
【0026】
第一供給リール27は、長尺帯状の第一洗浄布12が巻き付けられる円形状の部材を備え、必要に応じて新しい第一洗浄布12の部分を所定の長さ分供給すると共に、第一洗浄布12を所定長さ供給した後は、それ以上第一洗浄布12を供給しないように、固定状態となる機能を備えている。
【0027】
第一回収リール17は、長尺帯状の第一洗浄布12が巻き付けられる円盤状の部材を備え、必要に応じて洗浄後の第一洗浄布12の部分を所定の長さ分回収すると共に、第一洗浄布12を所定長さ回収した後は、それ以上第一洗浄布12を回収しないように、固定状態となる機能を備えている。
【0028】
上記第一供給リール27と第一回収リール17とにより、第一洗浄布12は、洗浄動作毎にピッチ送りされるものとなっており、第一洗浄布12の新しい部分を断続的に供給するものとなっている。
【0029】
第一ガイドローラ14は、第一洗浄布12が所定の経路を通過するようにガイドする部材であり、また、第一ガイドローラ14の回転軸に対して直交する方向に移動(例えばz軸方向)することで、第一洗浄布12に所定の張力を付与する機能を備えている。第一洗浄布12に作用させる張力は、0.5〜1.8N程度である。
【0030】
以上の様に第一供給手段13により第一洗浄布12が第一押圧子11に対して配置され、かつ、第一洗浄布12の長さ方向に所定の張力を発生させることで、柔軟性と伸縮性を併せ持つ第一洗浄布12であれば、第一押圧子11の形状に第一洗浄布12を沿わせることが可能となる。
【0031】
なお、第二供給手段33は、第一供給手段13と同じ構成であり、同じ機能を備えるものであり、未だ洗浄に供されていない新しい第二洗浄布32の部分を第二押圧子31に供給する装置である。第二供給手段33は、第二供給リール57と、第二ガイドローラ34と、第二回収リール37とを備えている。
【0032】
第一洗浄布12は、基板1の表面に付着した汚れを拭い取るための布帛である。本実施の形態の場合、第一洗浄布12は、長尺帯形状となっており、若干の伸縮性を備えている。具体的には例えば幅が約10mm、厚みが約0.2mm〜0.3mmであり、リールに巻き付けられた状態で供給されている。第二洗浄布32も第一洗浄布12と同じものである。
【0033】
保持手段41にはまた押圧手段(図示せず)が取り付けられている。押圧手段は、基板1の被洗浄面に配置される第一洗浄布12の一部を第一押圧子11を介して基板1に押し付ける装置である。本実施の形態の場合、押圧手段は、基板1の裏面にあたる被洗浄面に配置される第二洗浄布32の一部を第二押圧子31を介して基板1に押し付ける機能も備えている。すなわち、押圧手段は、第一押圧子11と第二押圧子31とで基板1を挟むようにして相互に押し付け力を発生させている。具体的に押圧手段は、対向するように配置された第一押圧子11と第二押圧子31を開閉駆動し、基板1の側縁部の上下両面の被洗浄面に第一洗浄布12と第二洗浄布32とをそれぞれ押し付け挟持するように構成されている。なお、押圧手段の挟持力は、4〜9N程度が好適である。
【0034】
移動手段3は、前記押圧手段により基板1の側縁を挟持した状態の第一押圧子11と第二押圧子31とを基板1に対し相対的に移動させる装置である。本実施の形態の場合、移動手段3は、固定される第一押圧子11や第二押圧子31に対し、基板1をx軸方向に直線的に移動させることができる装置である。移動手段3は、基板保持部8を介して基板1を高速に移動させることができるものであり、その相対移動速度は、40mm/s以上、250mm/s以下の範囲から設定することができるものとなっている。また、基板保持部8を移動させることができる距離は、32インチの液晶ディスプレイの一辺を全て洗浄できる距離であり、具体的には600mm以上の距離を設定された相対移動速度で移動させることが可能となっている。また、距離の上限は、57インチの液晶ディスプレイの長辺を全て洗浄できる距離であり、具体的には、1300mm以下の距離を設定された相対移動速度で移動させることが可能となっている。
【0035】
なお、本願発明において移動手段3は、「相対的に移動」の語からも明らかなように、第一押圧子11を固定して基板1を移動させるものばかりでなく、基板1を固定して第一押圧子11や第二押圧子31を移動させるものでも、基板1を移動させると共に第一押圧子11や第二押圧子31を移動させるものでもかまわない。
【0036】
さらに本実施の形態の場合、移動手段3は、移動テーブル9に組み込まれている。
移動テーブル9は、第一押圧子11に対する基板1の位置を決定するための装置であり、基板保持部8と、移動手段3と、第二移動手段7とを備えている。
【0037】
基板保持部8は、基板1を載置状態で保持すると共に、載置した基板1をZ軸回り(θ方向)に回転させることのできる装置である。
【0038】
第二移動手段7は、基板保持部8と移動手段3とをY方向に移動させることのできる装置であり、基板保持部8と移動手段3とを介して第一押圧子11に対する基板1のy軸方向の位置決めを行うことができる装置である。
【0039】
次に、第一押圧子11について詳細に説明する。
図4は、第一押圧子を示す斜視図であり、(a)は押圧子を上方から望む図、(b)は押圧子を下方から望む図である。
【0040】
図5は、第一押圧子11を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
これらの図に示すように、第一押圧子11は、第一洗浄布12を基板1の表面に押し付けながら基板1と相対移動することにより、洗浄工程を行う部材であって、押付面15を表面に備える第一押付部25と、傾斜部26と、規制突起22と、第一吐出口18とを備えている。また、第一押圧子11は、傾斜部26と規制突起22とに囲まれる部分に基板1から遠ざかる方向に窪む凹部28を備えている。
【0041】
第一押付部25は、第一洗浄布12を基板1に押し付ける部分である。第一押付部25の表面に備えられる押付面15は、基板1に押し付ける第一洗浄布12の部分と当接する面であって、基板1の表面と平行に配置される平面である。本実施の形態の場合、押付面15の幅(x軸方向)は、5mm程度である。これは、第一洗浄布12の幅が10mmであるため、第一洗浄布12の幅に対応したものである。
【0042】
傾斜部26は、第一押圧子11に対する洗浄布の相対移動方向のずれを抑止するための部分である。傾斜部26の表面に備えられる傾斜面16は、相対移動方向における押付面15の両端縁にそれぞれ接続され、相対移動方向に沿って前記端縁から外側に向かって遠ざかるに従い徐々に基板1と遠ざかるように配置されている。第一洗浄布12が第一押付部25を覆い更に傾斜部26に沿った状態で傾斜部26を覆うことで、第一押圧子11と第一洗浄布12との相対移動方向のずれが抑止される。
【0043】
規制突起22は、第一洗浄布12の幅方向の端部と接触して、第一洗浄布12が第一押圧子11から逸脱することを規制する部材であり、傾斜部26の第一押付部25と反対側の端縁と接続され、押付面15を越えない程度に基板1に向かって突出し、第一洗浄布12の第一押圧子11に対する相対移動方向のずれを規制する。
【0044】
第一吐出口18は、第一洗浄布12に浸透して洗浄に供される液体を吐出する開口であり、第一押圧子11の基板1に対する相対移動方向において第一押付部25の前方に配置される開口である。
【0045】
本実施の形態の場合、第一吐出口18は、第一押圧子11の凹部28に配置されている。本実施の形態の場合、第一吐出口18は、傾斜部26に配置されている。傾斜部26は、第一洗浄布12に覆われる部分であり、第一吐出口18は、第一洗浄布12の基板1と接触しない面である裏面と接触する位置に配置されている。さらに、第一押圧子11は、基板1に対し、往動する場合も復動する場合もあるため、第一吐出口18は、第一押付部25の相対移動方向における両側に設けられている。
【0046】
また、第一吐出口18は、第一押圧子11の内部を貫通して液体を挿通させる液路20の端部に該当する部分となっている。なお、液路20の第一吐出口18と反対側の端部は、接続口39となっている。
【0047】
第二押圧子31は、図6、図7に示すように、第一押圧子11と同じ構造となっており、第二吐出口38と、第二押付部55と、傾斜部26と、規制突起22と、接続口39と、凹部28とを備えている。また、第二押圧子31の内部には、第一押圧子11と同様、接続口39と第二吐出口38とを結ぶ液路20が設けられている。なお、各部の作用や機能は第一押圧子11と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
吐出手段40(図2参照)は、第一洗浄布12に対して液体の洗浄剤を供給する装置である。本実施の形態の場合、吐出手段40は、第一押圧子11に設けられている第一吐出口18からエタノールやイソプロピルアルコールなどの揮発性の洗浄剤としての液体を第一洗浄布12に向けて吐出するように、液体を供給する装置である。また、吐出手段40は、第二押圧子31に設けられている第二吐出口38から液体を第二洗浄布に向けて吐出する機能も併せ持っている。
【0049】
図2および図6に示すように吐出手段40は、第一押圧子11や第二押圧子31に液体を供給する供給管42と、供給管42の先端に設けられ、第一押圧子11や第二押圧子31と供給管42とを着脱可能とする着脱部43とを備えている。吐出手段40は、微量の液体を吐出させることのできる一般的な装置であればよく、例えば、液体を貯留するタンクと、前記タンクに貯留されている液体をわずかな量だけ送ることのできる液体ポンプなどを備えた装置である。また、吐出手段40は、受信した信号に基づいて液体を吐出するか否かを制御することができるものである。
【0050】
供給管42は、吐出手段40と第一押圧子11や第二押圧子の間を結ぶパイプである。本実施の形態の場合、供給管42は、可撓性のある樹脂製の細いパイプである。これにより、第一押圧子11や第二押圧子31への着脱が容易に行うことができるものとなっている。
【0051】
着脱部43は、第一押圧子11や第二押圧子31と供給管42とを着脱可能に接続する部分である。本実施の形態の場合、着脱部43は、第一押圧子11や第二押圧子31に備えられる接続口39に挿入可能な形状となっている。また、着脱部43と接続口39との嵌合部分には、Oリングなどの封止部材(図示せず)が配置されており、着脱部43が接続口39に接続された状態において、供給管42から第一押圧子11や第二押圧子31の液路20に流入する液体が接続部分から漏れ出すことを防止している。
【0052】
また、着脱部43にはセンサ19が取り付けられている。センサ19は、第一洗浄布12や第二洗浄布32に液体が含まれると変化する色調の変化(光の反射状態も含む)を検出するセンサであり、第一洗浄布12や第二洗浄布32が濡れている状態であるか乾いた状態であるかの少なくともいずれか一方を検出し、その旨を示す信号を送信することのできるものである。本実施の形態の場合、センサ19は、第一押圧子11や第二押圧子31の規制突起に設けられた貫通孔23を介して第一吐出口18や第二吐出口38近傍に配置される第一洗浄布12や第二洗浄布32の表面に光を当て、反射する光の強度を検出することにより第一洗浄布12や第二洗浄布32が濡れているか否かを検出するものとなっている。
【0053】
センサ19から送信される信号は、制御手段44(図6参照)により受信される。制御手段44は、センサ19から受信した信号に基づき第一洗浄布12が濡れていないと判断した場合、洗浄工程を中止するように、または、開始しないように基板洗浄装置30を制御する装置である。
【0054】
次に、以上の構成を備えた基板洗浄装置30の洗浄工程を説明する。被洗浄面は、基板1の側縁部の表裏両面に存在している。
【0055】
まず、基板1を基板搬送手段にて基板洗浄装置30に搬入され、搬入された基板1は、移動テーブル9の基板保持部8に載置される(搬入工程)。
【0056】
そして、第二移動手段7にてy軸方向の位置が決定され、基板保持部8によってz軸方向の位置と、θ方向の角度が決定される。また、移動手段3により、基板1の側縁部であって被洗浄面の一端が、第一押圧子11の間に位置するように位置決めされる(位置決め工程)。
【0057】
次に、第一供給手段13により第一洗浄布12を所定量送給し、第一押圧子11の第一押付部25と基板1の被洗浄面との間に洗浄に供されていない新しい部分を送給する。また、第二供給手段33により第二洗浄布32を所定量送給し、第二押圧子31の第二押付部55と基板1の被洗浄面との間に新しい部分を送給する。
【0058】
次に、吐出手段40により、第一洗浄布12に対して第一吐出口18から液体を吐出し、新しい第一洗浄布12の部分に所要量の液体を含ませる。なお、第一洗浄布12に含んだ液体の滲み(色の変化)をセンサ19にて検出することで、第一洗浄布12に洗浄剤を十分に含んでいることが確認される。また、吐出手段40は、第二洗浄布32に対しても同様に液体を吐出する。
【0059】
ここで、制御手段44が第一洗浄布12および第二洗浄布32の少なくともいずれか一方が濡れていないと判断すると、制御手段44は、次行程に移行することを中止するように基板洗浄装置30を制御すると共に警告を発する。
【0060】
次に、押圧手段(図示せず)にて第一押圧子11と第二押圧子31とを基板1の方向にそれぞれ押し付ける。この状態において、図8に示すように、第一洗浄布12は幅方向(x軸方向)で第一押付部25を跨いだ状態となっている。また、第一洗浄布12を介して第一押圧子11が基板1の側縁部を挟持した状態となり、第一押圧子11の第一押付部25にて第一洗浄布12が基板1の被洗浄面に押し付けられた状態となる。第二洗浄布32も同様である(押付工程)。
【0061】
次に、第一押圧子11と第二押圧子31とにより第一洗浄布12と第二洗浄布32とが基板1の被洗浄面の表裏に押し付けられている状態で、移動手段3を作動させ第一押圧子11および第二押圧子31と基板1とを相対的に移動させる。本実施の形態の場合移動手段3は、固定状態の第一押圧子11および第二押圧子31に対し基板1を移動させる。移動は、位置決め工程で位置決めされた一端部からから他端部に向けて開始される。これにより、基板1の被洗浄面を洗浄する(洗浄工程)。
【0062】
次に、前記洗浄工程開始から所定時間、または、基板1と第一押圧子11との相対移動距離が所定距離となった時点で、前記洗浄工程と並行して、吐出手段40により、第一洗浄布12に対して第一吐出口18から液体を吐出する。同様に、吐出手段40により第二洗浄布32に対して第二吐出口38から液体を吐出する(継ぎ足し工程)。なお、所定時間や所定距離は、予め定められている。これらの時間または距離は、洗浄工程において第一洗浄布12や第二洗浄布32が乾いて洗浄品質に影響が出る時間や距離よりも短い時間や距離に設定されている。
【0063】
第一押圧子11と第二押圧子31とが被洗浄面の他端に到達すると、押圧手段は、第一押圧子11による押圧を解除し、移動テーブル9にて基板1を第一押圧子11から離間させる(離間工程)。
【0064】
次に、後続工程であるACF貼付装置に向けて基板1を搬出する(搬出工程)。
一方、搬出工程と共に、前記搬入工程が実施され、以降の工程が繰り返される。
【0065】
以上の実施形態によれば、第一洗浄布12や第二洗浄布32は、洗浄工程の途中で液体が供給されるため、洗浄品質に影響が出るほど乾くことがない。従って、基板1の被洗浄面の相対移動方向の長さが長い場合(例えば650mm以上)でも、第一押圧子11や第二押圧子31の押付状態を解除することなく1度の相対移動(すなわち往動)により被洗浄面の汚れを除去することが可能となる。
【0066】
これは、第一押付部25や第二押付部55の相対移動方向の直前に液体を吐出するため、液体が第一押圧子11や第二押圧子31と基板1との間に巻き込まれ、第一洗浄布12や第二洗浄布32が圧縮された状態でも充分に液体がしみ込むためだと考えられる。さらに、この液体の巻き込み効果は、傾斜部26の存在により増強されると考えられる。
【0067】
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて実現される別の実施の形態を本願発明の一例としてもよい。また、上記実施の形態に対して本願発明の主旨、すなわち、特許請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本願発明に含まれる。例えば図9(a)に示すように、第一洗浄布12とは接触しない位置に第一吐出口18を設けてもかまわない。また、図9(b)に示すように、第一押圧子11の近傍に第一吐出口18を備えたパイプを配置するものでもかまわない。
【0068】
また、「平行」や「平面」などの文言は、本願発明の趣旨を逸脱しない程度の誤差を許容する意味で使用している。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本願発明にかかる基板洗浄装置は、駆動回路などが形成されたディスプレイ用のガラス基板の端縁を洗浄する工程に適用可能であり、特に、32インチ以上の大型のディスプレイ用ガラスの洗浄、あるいは、ディスプレイ用基板を高速洗浄する場合に適している。
【符号の説明】
【0070】
1 基板
3 移動手段
7 第二移動手段
8 基板保持部
9 移動テーブル
11 第一押圧子
12 第一洗浄布
13 第一供給手段
14 第一ガイドローラ
15 押付面
16 傾斜面
17 第一回収リール
18 第一吐出口
19 センサ
20 液路
22 規制突起
23 貫通孔
25 第一押付部
26 傾斜部
27 第一供給リール
28 凹部
30 基板洗浄装置
31 第二押圧子
32 第二洗浄布
33 第二供給手段
34 第二ガイドローラ
37 第二回収リール
38 第二吐出口
39 接続口
40 吐出手段
41 保持手段
42 供給管
43 着脱部
44 制御手段
55 第二押付部
57 第二供給リール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の被洗浄面に配置される長尺帯状の第一洗浄布の一部を基板の一面に対して押し付ける第一押圧子と、
前記第一洗浄布の新しい部分を前記第一押圧子に供給する第一供給手段と、
前記第一洗浄布の供給方向と交差する方向に前記第一押圧子を基板に対して相対的に移動させることにより前記第一洗浄布を基板に対して相対的に移動させて洗浄工程を実施する移動手段と
を備える基板洗浄装置であって、
前記第一押圧子は、
前記第一洗浄布を基板に押し付ける面である押付面を表面に有する第一押付部と、
前記第一押圧子の基板に対する相対移動方向において前記第一押付部の前方に液体を吐出する第一吐出口とを備え、
当該基板洗浄装置はさらに、
前記洗浄工程の際に前記第一吐出口から液体を吐出させる吐出手段を備える
基板洗浄装置。
【請求項2】
さらに、
長尺帯状の第二洗浄布の一部を基板の他面に対して押し付け、前記第一押圧子とともに基板を挟む第二押圧子と、
前記第二洗浄布の新しい部分を前記第二押圧子に供給する第二供給手段とを備え、
前記移動手段は、前記第一押圧子と前記第二押圧子とにより基板を挟んだ状態で、前記第一押圧子と前記第二押圧子とを基板に対して相対的に移動させるものであり、
前記第二押圧子は、
前記第二洗浄布を基板に押し付ける面である押付面を表面に有する第二押付部と、
前記第二押圧子の基板に対する相対移動方向において前記第二押付部の前方に液体を吐出する第二吐出口とを備え、
前記吐出手段は、
前記洗浄工程の際に前記第二吐出口からも液体を吐出させるものである
請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記第一押圧子は、
前記第一押付部の相対移動方向の側部に基板から遠ざかる方向に窪む凹部を備え、
前記第一吐出口は、前記凹部に配置される
請求項1または請求項2に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記第一吐出口は、前記第一洗浄布の基板と接触しない面である裏面と接触する位置に配置される
請求項3に記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
さらに、
前記第一洗浄布が前記第一吐出口から吐出される液体によって濡れている、または、濡れていない状態を検出するセンサと、
前記センサから受信した信号に基づき第一洗浄布が濡れていないと判断した場合、前記洗浄工程を中止するように、または、開始しないように制御する制御手段と
を備える請求項1または請求項2に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
さらに、
前記第一供給手段と前記第一押圧子とを保持し、当該基板洗浄装置に対して着脱可能な保持手段を備え、
前記吐出手段は、
前記第一押圧子に液体を供給する供給管と、
前記供給管の先端に設けられ、前記第一押圧子と前記供給管とを着脱可能とする着脱部と
を備える
請求項1または請求項2に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
基板の被洗浄面に配置される長尺帯状の第一洗浄布の一部を基板の一面に対して押し付ける第一押圧子と、前記第一洗浄布の新しい部分を前記第一押圧子に供給する第一供給手段と、前記第一洗浄布の供給方向と交差する方向に前記第一押圧子を基板に対して相対的に移動させることにより前記第一洗浄布を基板に対して相対的に移動させる洗浄工程を実施する基板洗浄方法であって、
前記洗浄工程において、
前記第一洗浄布を基板に押し付ける面である押付面を表面に有する第一押付部の前方に設けられる第一吐出口から、吐出手段により液体を吐出する吐出工程を含む
基板洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−167621(P2011−167621A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33003(P2010−33003)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】