説明

基板洗浄装置

【課題】ディスプレイに用いられる基板の側縁部の洗浄を高速で実現しうる基板洗浄装置の提供。
【解決手段】基板1に対し洗浄布12の一部を押し付ける押圧子11と、押圧子11と基板1とを相対的に移動させる移動手段3とを有し、押圧子11は、基板1と平行に配置され、押圧子11と基板1との相対移動方向における幅が5mm以上である押付面15と、押付面15の両端縁にそれぞれ接続される傾斜面16であって、傾斜面16の押付面15に対する角度が15度以上、25度以下の範囲から選定される角度であり、傾斜面16の端縁と接続され、押付面15を越えない程度に基板1に向かって突出する規制突起22を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機EL(light-emitting)ディスプレイなどに用いられるガラス基板などの各種基板の被洗浄表面を洗浄する基板洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上述したディスプレイの製造工程においては、ガラス基板の側縁部に形成された電極にドライバICなどの各種部品を電気的に接続すると共に物理的に固着する工程がある。具体的には、電極が配置されているガラス基板の側縁部にテープ状の異方性導電膜(ACF:Anisotoropic Conductive Film)を貼り付け、当該異方性導電膜を介して各種部品を取り付ける工程が行われる。
【0003】
ここで、ガラス基板の側縁部に各種部品を取り付ける工程は、ディスプレイの製造工程全体においては後半の工程であり、前半の工程等によってガラス基板の側縁部には汚れが付着している場合がある。従って、異方性導電膜をガラス基板の側縁部に取り付ける前に、ガラス基板の側縁部を洗浄する必要がある。
【0004】
上記ガラス基板の側縁部の表面に付着した汚れを工業的に洗浄するには、ガラス基板の側縁部の両面に洗浄布を配置し、二つの押圧子によって洗浄布を所定の力で挟み込み、押圧子を洗浄布と共に側縁部に沿って相対的に移動させて拭き取るように洗浄する方法が採用されている。
【0005】
ところで、ディスプレイの生産性を向上させるためには、洗浄作業の短時間化を図る必要がある。そしてこれを実現させるためには、ガラス基板と押圧子との相対移動速度を速くすることが考えられるが、速度を速くすると押圧子に対して洗浄布が滑って横ずれし、その後の洗浄を適正に行うことができなくなるという問題が発生していた。
【0006】
そこで、本願出願人は先に、押圧子の移動速度を速め洗浄速度を上げても安定して洗浄することができる押圧子の形状に関する発明を出願している(特許文献1参照)。
【0007】
具体的には、押圧子の洗浄布と接触する面に、押圧子の移動方向と直交する方向に延びる突部を形成することにより、洗浄速度を上げても洗浄布がずれを抑制できる押圧子を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−43859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、ディスプレイが大型化する、あるいは、ディスプレイの生産性の更なる向上が求められる傾向にあるため、ディスプレイの生産性を維持するためにはガラス基板などを含む基板の側縁部を洗浄する速度をさらに向上させる必要が生じる。さらに、ディスプレイが大型化するに伴い、洗浄が必要な側縁部の面積も大きくなる。従って、側縁部全体の汚れを一度の移動で拭き取るには洗浄布をできる限り広い面積で側縁部の表面に接触させる必要がある。しかし、洗浄布と側縁部との接触面積が大きいと、洗浄布が押圧子からずれる可能性が高まる。
【0010】
本願発明者らは上記課題に鑑み、鋭意実験と研究の結果、二律背反の関係にある洗浄速度と接触面積とを同時に満足しうる条件を見出すに至った。本願発明は、上記知見に基づきなされたものであり、大型ディスプレイに用いられる基板の側縁部の洗浄を高速で実現しうる基板洗浄装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる基板洗浄装置は、基板の被洗浄表面に配置される長尺帯状の洗浄布の一部を基板に対して押し付ける押圧子と、前記押圧子を基板に対して相対的に移動させることにより洗浄布を基板に対して相対的に移動させる移動手段と、新しい洗浄布の部分を前記押圧子に供給する洗浄布供給手段とを備える基板洗浄装置であって、前記押圧子は、洗浄布を基板に押し付ける面であって、被洗浄表面と平行に配置される平面であり、前記押圧子と基板との相対移動方向における幅が5mm以上である押付面を表面に有する押付部と、相対移動方向における前記押付面の両端縁にそれぞれ接続され、相対移動方向に沿って前記端縁から外側に向かって遠ざかるに従い徐々に基板と遠ざかるように配置される傾斜面を表面に有する傾斜部であって、前記傾斜面の相対移動方向における一端部から他端部を結んだ線の前記押付面に対する角度が15度以上、25度以下の範囲から選定される角度の傾斜面を有する二つの傾斜部と、前記傾斜部の前記押付部と反対側の端縁と接続され、前記押付面を越えない長さで基板に向かって突出し、洗浄布の前記押圧子に対する相対移動方向のずれを規制する二つの規制突部とを有し、前記洗浄布供給手段は、洗浄布の幅により前記押付面の相対移動方向全体を跨ぐように洗浄布を配置し、洗浄布の長さ方向に所定の張力を与えて前記押付部と傾斜部とで形成される形状に洗浄布を沿わせる洗浄布供給手段であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、押付部と傾斜部とによって形成される突部に沿って洗浄布が配置されるため、洗浄布と基板との接触面積が比較的大きく、押圧子の基板に対する相対移動速度が比較的速い場合でも、洗浄布が突部に対し所定の張力で係止され、洗浄布が相対移動方向にずれするのを抑止することができる。また、洗浄布がある程度ずれたとしても洗浄布が規制突部に規制されるため、洗浄布が押付面に対し大きくずれることを抑止することができる。また、洗浄布が基板に接触する相対移動方向の幅が長いため、洗浄部分が長い場合でも一度に汚れを拭き取ることが可能となる。従って、基板が大型で洗浄の必要な部分が長い場合でも、一度の洗浄で充分に汚れを除去することが可能となる。
【0013】
また、押付面に対し洗浄布がある程度ずれた場合でも、洗浄終了後に、基板に対する押圧を解除し、洗浄布の新しい部分を押圧子に供給することで、洗浄布のずれを元に戻すことが可能となる。
【0014】
従って、複数の基板に対し洗浄を繰り返す場合でも、効率よく基板を洗浄することができ、基板の洗浄効率を向上させることが可能となる。
【0015】
また、前記傾斜部が有する傾斜面は、前記押付部から外側に膨出する曲面であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、押付面から滑らかに傾斜面を接続することができ、押付面と傾斜面との接続部分によって基板に損傷を与える可能性を低下させることが可能となる。また、押圧子に対し洗浄布がずれた場合でも、基板に対する押圧子による洗浄布の押し付けを解除することにより、容易に洗浄布を元の位置に戻すことが可能となる(洗浄布の押付面へのセンタリング機能)。
【0017】
また、前記押圧子が洗浄布を基板に押し付ける方向である押圧方向における前記傾斜面の高さは、0.5mm以上、1mm以下の範囲から選定される高さであることが好ましい。
【0018】
これによれば、洗浄布がずれた場合でも、基板と傾斜部と規制突部で囲まれる部分に洗浄布の一部が充填され、それ以上洗浄布がずれることを抑止できる。
【0019】
また、当該基板洗浄装置は、基板を挟むように配設される二つの前記押圧子を備え、前記移動手段は、二つの前記押圧子を一体に基板に沿って相対的に移動させるものでもかまわない。
【0020】
この構成によれば、基板の表裏両面の被洗浄表面を同時に洗浄できるとともに、押圧子からの押圧力に抗するために基板の一面を支持する必要がないので、基板の支持構成を簡単にできて装置構成をコンパクトにできる。
【発明の効果】
【0021】
本願発明にかかる基板洗浄装置によれば、洗浄布が基板に押し付けられる相対移動方向の幅を長く確保するとともに、洗浄布の押圧子に対するずれを抑止することができるため、洗浄布の張力及び押圧子の押し付け力を増大させることなく洗浄速度を上げても一度の洗浄で大型の被洗浄表面に付着した汚れを除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】基板洗浄装置の全体概略構成を示す側面図である。
【図2】基板洗浄装置の押圧子近傍の構成を示す斜視図である。
【図3】押圧子を示す斜視図であり、(a)は、上方から望む図、(b)は下方から望む図である。
【図4】押圧子を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】押圧子の他の態様を示す正面図である。
【図6】押圧子に洗浄布を取り付けた状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は切り欠いて示す側面図である。
【図7】洗浄状態にある基板洗浄装置の押圧子近傍を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願発明にかかる基板洗浄装置の実施の形態を、図面に基づき説明する。基板洗浄装置の洗浄対象である基板は、本実施の形態の場合、液晶表示パネルを構成する基板であって、基板の表面に配線や駆動回路が形成され、カラーフィルタ等が積層された後の基板である。基板の被洗浄部分は、基板の側縁部であって、被洗浄表面に配線のみが設けられ、洗浄後に異方性導電膜が貼り付けられる部分である。側縁部は、側縁部に対し垂直方向に延びる配線が複数本縞状に配置されており、配線の厚みは0.7mm〜1mm程度と非常に薄いものの、配線によって僅かに凹凸が形成されている。また、洗浄によって配線に損傷を与えることは回避すべき事項である。
【0024】
図1は、基板洗浄装置を示す側面図である。
図2は、基板を洗浄中の押圧子近傍を示す斜視図である。
【0025】
同図に示すように、基板洗浄装置30は、基板1の被洗浄表面に配置される長尺帯状の洗浄布12の一部を基板1に対して押し付ける押圧子11と、押圧子11を基板1に対して相対的に移動させることにより洗浄布12を基板1に対して相対的に移動させる移動手段3とを有する装置である。また、基板洗浄装置30は、基板保持部8と、洗浄布供給手段13とを備えている。
【0026】
移動手段3は、押圧子11を基板1とを相対的に移動させる装置である。本実施の形態の場合、移動手段3は、固定される押圧子11に対し、基板1をx軸方向に直線的に移動させることができる装置である。移動手段3は、基板保持部8を介して基板1を高速に移動させることができるものであり、その相対移動速度は、40mm/s以上、250mm/s以下の範囲から設定することができるものとなっている。また、基板保持部8を移動させることができる距離は、32インチの液晶ディスプレイの一辺を全て洗浄できる距離であり、具体的には600mm以上の距離を設定された相対移動速度で移動させることが可能となっている。また、距離の上限は、57インチの液晶ディスプレイの長辺を全て洗浄できる距離であり、具体的には、1300mm以下の距離を設定された相対移動速度で移動させることが可能となっている。
【0027】
なお、本願発明において移動手段3は、「相対的に移動」の語からも明らかなように、押圧子11を固定して基板1を移動させるものばかりでなく、基板1を固定して押圧子11を移動させるものでも、基板1を移動させると共に押圧子11を移動させるものでもかまわない。
【0028】
さらに本実施の形態の場合、移動手段3は、移動テーブル9に組み込まれている。
移動テーブル9は、押圧子11に対する基板1の位置を決定するための装置であり、基板保持部8と、移動手段3と、第二移動手段7とを備えている。
【0029】
基板保持部8は、基板1を載置状態で保持すると共に、載置した基板1をZ軸回り(θ方向)に回転させることのできる装置である。
【0030】
第二移動手段7は、基板保持部8と移動手段3とをY方向に移動させることのできる装置であり、基板保持部8と移動手段3とを介して押圧子11に対する基板1のy軸方向の位置決めを行うことができる装置である。
【0031】
図3は、押圧子を示す斜視図であり、(a)は押圧子を上方から望む図、(b)は押圧子を下方から望む図である。
【0032】
図4は、押圧子を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
これらの図に示すように、押圧子11は、洗浄布12を基板1の表面に押し付けながら基板1と相対移動することにより、洗浄作業を行う部材であって、押付面15を表面に備える押付部25と、傾斜面16を表面に備える傾斜部26と、規制突起22とを備えている。
【0033】
押付部25は、洗浄布12を基板1に押し付ける部分である。押付部25の表面に備えられる押付面15は、基板1に押し付ける洗浄布12の部分と当接する面であって、基板1の表面と平行に配置される平面である。また、押付面15の押圧子11と基板1との相対移動方向(x軸方向)における幅W(図4(a)参照)は、5mm以上であることが好ましい。押付面15の幅Wが5mm未満であると、洗浄布12が基板1と接触する幅が5mm未満となり、基板1が大型、例えば基板1の洗浄が必要な部分の長さが650mm以上の場合、往動(片道)だけでは汚れを除去しきれずに、未だ洗浄に供されていない新しい洗浄布12の部分を押付面15と基板との間に供給して例えば復動(片道)で再度洗浄するという往復動の洗浄により汚れを除去する必要が生じるためである。
【0034】
傾斜部26は、押圧子11に対する洗浄布の相対移動方向のずれを抑止するための部分である。傾斜部26の表面に備えられる傾斜面16は、相対移動方向における押付面15の両端縁にそれぞれ接続され、相対移動方向に沿って前記端縁から外側に向かって遠ざかるに従い徐々に基板1と遠ざかるように配置されている。傾斜面16の相対移動方向における一端部から他端部を結んだ線の押付面15に対する角度である傾斜角度α(図4(a)参照)は、15度以上、25度以下の範囲から選定されることが好ましい。傾斜角度αが15度未満であると、傾斜部26による洗浄布12のずれ抑止効果が乏しくなる。また、傾斜角度αが25度よりも大きい場合は、押付面15と傾斜面16との境界から洗浄布12が離間してしまい、ずれ抑止効果が乏しくなる。
【0035】
規制突起22は、洗浄布12の幅方向の端部と接触して、洗浄布12が押圧子11から逸脱することを規制する部材であり、傾斜部26の押付部25と反対側の端縁と接続され、押付面15を越えない程度に基板1に向かって突出し、洗浄布12の押圧子11に対する相対移動方向のずれを規制する。また、規制突起22の内法は、使用される洗浄布12の幅と同程度の長さであればよい。
【0036】
また、押圧子11が洗浄布12を基板1に押し付ける方向である押圧方向における傾斜部26の高さH(図4(a)参照)は、0.5mm以上、1mm以下の範囲から選定されることが好ましい。高さHは、洗浄布12の厚さの3倍以上、5倍以下の範囲から選定されてもよい。例えば、洗浄布12の厚さが0.2〜0.3mmであった場合、高さHは、0.6mm以上、1.5mm以下の範囲から選定するものでよい。また、押付面15のy軸方向の長さは、基板1の側縁部の長手方向に直交する方向(y軸方向)の被洗浄表面の幅寸法より大きく設定されている。
【0037】
以上の様に、傾斜面16の押圧方向における高さを設定することにより、洗浄布12が若干ずれた場合において、洗浄布12の幅方向の一端部が、基板1と傾斜部26と規制突起22とで囲われる空間を満たし、それ以上のずれを抑止することが可能であると考えられる。これにより、洗浄布12の相対移動方向のずれを押付面15からの緩やかな傾斜角度αに沿わしながら洗浄布12の幅方向のずれを洗浄布12の厚み方向に直交する方向(洗浄布12の幅方向)の圧縮力で保持することが可能である。
【0038】
なお、押圧子11が備える傾斜部26の傾斜面16は、平面に限定されるわけではなく、図5に示すように、押付部25から外側に膨出する曲面であってもかまわない。傾斜面16が曲面である場合でも、傾斜角度αは、傾斜面16の一端部から他端部を結んだ線の押付面15に対する角度である。
【0039】
このように傾斜面16が曲面の場合、押付面15と傾斜面16とを滑らかに接続することができ、押圧子11を基板1に対して相対的に移動させて洗浄する際に、押付面15と傾斜面16とで形成される角部で基板1の表面を損傷させる可能性を低減することが可能となる。また、押圧子11に対して洗浄布12がずれた場合でも、押圧子11の基板1への押し付けを解除した時点で、洗浄布12に付与される張力により容易に洗浄布12を元の位置に戻すことが可能となる。
【0040】
また、押圧子11としては、耐薬品性に優れるとともに摺動性に優れたポリアセタール(POM)などの材料で構成するのが好適である。
【0041】
また、本実施の形態の場合、基板洗浄装置30は、押圧子11を有する洗浄機構部4を備えている。洗浄機構部4は、基板1の被洗浄表面に配置される長尺帯状の洗浄布12の一部を基板1に対し押圧子11によって押し付ける機能を有する機構部であって、洗浄布12と、洗浄布供給手段13と、押圧手段(図示せず)と、洗浄剤供給手段(図示せず)とを備えている。
【0042】
洗浄布12は、基板1の表面に付着した汚れを拭い取るための布帛である。本実施の形態の場合、洗浄布12は、長尺帯形状となっており、若干の伸縮性を備えている。具体的には例えば幅が約10mm、厚みが約0.2mm〜0.3mmであり、リールに巻き付けられた状態で供給されている。
【0043】
洗浄布供給手段13は、未だ洗浄に供されていない新しい洗浄布12の部分を押圧子11の押付面15に供給する装置であって、図6(a)に示すように、洗浄布12の幅(x方向)により押圧子11の押付面15の相対移動方向全体を跨ぐように洗浄布12を配置し、洗浄布12の長さ方向に所定の張力を与えて押圧子11の押付部25と傾斜部26とで形成される形状に洗浄布12を沿わせる装置である。
【0044】
本実施の形態の場合、洗浄布供給手段13は、供給リール27と、ガイドローラ14と、回収リール17とを備えている。
【0045】
供給リール27は、長尺帯状の洗浄布12が巻き付けられる円盤状の部材を備え、必要に応じて新しい洗浄布12の部分を所定の長さ分供給すると共に、洗浄布12を所定長さ供給した後は、それ以上洗浄布12を供給しないように、固定状態となる機能を備えている。
【0046】
回収リール17は、長尺帯状の洗浄布12が巻き付けられる円盤状の部材を備え、必要に応じて洗浄後の洗浄布12の部分を所定の長さ分回収すると共に、洗浄布12を所定長さ回収した後は、それ以上洗浄布12を回収しないように、固定状態となる機能を備えている。
【0047】
上記供給リール27と回収リール17とにより、洗浄布12は、洗浄動作毎にピッチ送りされるものとなっており、洗浄布12の新しい部分を断続的に供給されるものとなっている。
【0048】
ガイドローラ14は、洗浄布12が所定の経路を通過するようにガイドする部材であり、また、ガイドローラ14の回転軸に対して直交する方向に移動(例えばz軸方向)することで、洗浄布12に所定の張力を付与する機能を備えている。洗浄布12に作用させる張力は、0.5〜1.8N程度である。
【0049】
洗浄布供給手段13は、押圧子11に対して次の様な経路で洗浄布12を配置することで押付部25と傾斜部26とで形成される形状に洗浄布12を沿わせている。すなわち、図6(b)に示すように、洗浄布12は、押付面15と接触状態で平行に配置されており、押付面15の一端から当該平行を維持した状態(または若干上方(z方向)に向かた状態)で、y方向に延びるように配置されている。一方、押付面15の他端からは、垂直上方(z方向)に立ち上がり、さらに、z方向に向かいかつy方向に向かう斜め方向に上昇するように配置されている。
【0050】
以上の様に洗浄布供給手段13により洗浄布12が押圧子11に対して配置され、かつ、洗浄布12の長さ方向に所定の張力を発生させることで、柔軟性と伸縮性を併せ持つ洗浄布12であれば、押付部25及び傾斜部26の形状に洗浄布12を沿わせることが可能となる。
【0051】
押圧手段(図示せず)は、基板1の被洗浄表面に配置される洗浄布12の一部を押圧子11を介して基板1に押し付ける装置である。本実施の形態の場合、基板洗浄装置30は、一対の押圧子11を備え、これら押圧子11で基板1を挟むようにして相互に押し付け力を発生させている。そして、この押し付け力を発生させる装置として、チャック機構(図示せず)が採用されている。チャック機構(図示せず)は、押付面15が対向するように配置された両押圧子11を開閉駆動し、これら押圧子11にて基板1の側縁部の上下両面の被洗浄表面に洗浄布12を押し付けるように構成されている。両押圧子11のチャック力は、4〜9N程度が好適である。なお、押圧子11及びチャック機構(図示せず)は、基板1の高さ位置との位置ずれを吸収できるように上下方向に弾性的に支持されている。
【0052】
なお、本願発明にかかる押圧手段は、チャック機構ばかりでなく、押圧子11を一つ備えると共に、押圧子11を介して基板1に付与する押し付け力に抗するように基板1を支持する支持部材を備えるものでもかまわない。
【0053】
洗浄剤供給手段(図示せず)は、洗浄布12に対して液体の洗浄剤を供給する装置である。本実施の形態の場合、洗浄剤供給手段は、押圧子11に設けられている吐出口18からエタノールやイソプロピルアルコールなどの揮発性の洗浄剤を洗浄布12に向けて吐出するように、洗浄剤を供給する装置である。洗浄剤供給手段は、洗浄布供給手段13により洗浄布12がピッチ送りされる前に、押圧子11に接続される配管及び押圧子11に設けられた流路を介して吐出口18に所定量づつ洗浄剤を圧送する機能を備えている。
【0054】
さらに、洗浄剤供給手段は、検出センサ19(図1参照)を備えている。検出センサ19は、洗浄布12に洗浄剤が含まれると変化する洗浄布12の色調変化を検出するセンサであり、洗浄布12に所要量の洗浄剤が適正に吐出されたことを確認できるように構成されている。
【0055】
なお、洗浄剤供給手段は、本願発明に必須の発明特定事項ではなく、基板洗浄装置30が乾式の洗浄方法を採用する場合、基板洗浄装置30は、洗浄剤供給手段を備える必要は無い。
【0056】
次に、以上の構成を備えた基板洗浄装置30の洗浄工程を説明する。被洗浄表面は、基板1の側縁部の表裏両面に存在している。
【0057】
まず、基板1を基板搬送手段にて基板洗浄装置30に搬入され、搬入された基板1は、移動テーブル9の基板保持部8に載置される(搬入工程)。
【0058】
そして、第二移動手段7にてy軸方向の位置が決定され、基板保持部8によってz軸方向の位置と、θ方向の角度が決定される。また、移動手段3により、基板1の側縁部であって被洗浄面の一端が、押圧子11の間に位置するように位置決めされる(位置決め工程)。
【0059】
前記搬入工程や位置決め工程と並行して、洗浄剤供給手段により、洗浄布12に対して吐出口18から洗浄剤を吐出し、新しい洗浄布12の部分に所要量の洗浄剤を含ませる。なお、洗浄布12に含んだ洗浄剤の滲み(色の変化)を検出センサ19にて検出することで、洗浄布12に洗浄剤を十分に含んでいることが確認される。
【0060】
次に、洗浄布供給手段13により洗浄布12を所定量送給し、押圧子11の押付面15と基板1の被洗浄表面との間に洗浄剤を含んだ部分を送給する。
【0061】
次に、押圧手段(図示せず)にて一対の押圧子11を基板1の方向にそれぞれ押し付ける。この状態において、図7に示すように、洗浄布12は幅方向(x軸方向)で押付部25を跨いだ状態となっている。また、洗浄布12を介して押圧子11が基板1の側縁部を挟持した状態となり、押圧子11の押付部25にて洗浄布12が基板1の被洗浄表面に押し付けられた状態となる(押付工程)。
【0062】
次に、押圧子11により洗浄布12が基板1の被洗浄表面に押し付けられている状態で、移動手段3を作動させ押圧子11と基板1とを相対的に移動させる。本実施の形態の場合移動手段3は、固定状態の押圧子11に対し基板1を移動させる。移動は、位置決め工程で位置決めされた一端部から押圧子11が他端部に到達するまで行われる。これにより、基板1の被洗浄表面を洗浄する(洗浄工程)。
【0063】
その後、押圧手段は、押圧子11による押圧を解除し、移動テーブル9にて基板1を押圧子11から離間させる(離間工程)。
【0064】
次に、後続工程であるACF貼付装置に向けて基板1を搬出する(搬出工程)。
一方、搬出工程と共に、前記搬入工程が実施され、以降の工程が繰り返される。
【0065】
以上の実施形態によれば、押付面15の相対移動方向の幅Wが5mm以上であるため、押付面15に押し付けられる洗浄布12の幅も5mm以上となる。この場合、基板1の被洗浄表面の相対移動方向の長さが650mm以上であっても、1度の相対移動(すなわち往動)により被洗浄表面の汚れを除去することが可能となる。なお、被洗浄表面の長さが1300mmまで、1度の相対移動で汚れを除去することができることを確認している。
【0066】
また、押付部25と傾斜部26とにより相対移動方向と直交する方向に延びた突部が形成されており、洗浄布12は当該突部を跨ぐように配置されているため、押圧子11の基板1に対する相対移動時において、洗浄布12が突部にて係止された状態となっている。従って、洗浄布12に1.8Nを超えるような大きな張力を作用させて洗浄布12の押圧子11に対するずれを抑止する必要が無い。これにより、洗浄布12に対し充分に洗浄液を含ませることができる。また、押圧子11と基板1の相対移動速度を、200mm/s以上の速度に上げても押圧子11に対し洗浄布12がずれにくく、基板1の被洗浄表面を安定して洗浄することができる。
【0067】
以上から、基板洗浄装置30における洗浄タクトの短縮化を図ることができる。
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて実現される別の実施の形態を本願発明としてもよい。また、上記実施の形態に対して本願発明の趣旨、すなわち、特許請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本願発明に含まれる。また、「平行」や「平面」などの文言は本願発明の趣旨を逸脱しない程度の誤差を許容する意味で使用している。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本願発明にかかる基板洗浄装置は、駆動回路などが形成されたディスプレイ用のガラス基板の端縁を洗浄する工程に適用可能であり、特に、32インチ以上の大型のディスプレイ用ガラスの洗浄、あるいは、ディスプレイ用基板を高速洗浄する場合に適している。
【符号の説明】
【0069】
1 基板
3 移動手段
4 洗浄機構部
7 第二移動手段
8 基板保持部
9 移動テーブル
11 押圧子
12 洗浄布
13 洗浄布供給手段
14 ガイドローラ
15 押付面
16 傾斜面
17 回収リール
18 吐出口
19 検出センサ
22 規制突起
25 押付部
26 傾斜部
27 供給リール
30 基板洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の被洗浄表面に配置される長尺帯状の洗浄布の一部を基板に対して押し付ける押圧子と、前記押圧子を基板に対して相対的に移動させることにより洗浄布を基板に対して相対的に移動させる移動手段と、新しい洗浄布の部分を前記押圧子に供給する洗浄布供給手段とを備える基板洗浄装置であって、
前記押圧子は、
洗浄布を基板に押し付ける面であって、被洗浄表面と平行に配置される平面であり、前記押圧子と基板との相対移動方向における幅が5mm以上である押付面を表面に有する押付部と、
相対移動方向における前記押付面の両端縁にそれぞれ接続され、相対移動方向に沿って前記端縁から外側に向かって遠ざかるに従い徐々に基板と遠ざかるように配置される傾斜面を表面に有する傾斜部であって、前記傾斜面の相対移動方向における一端部から他端部を結んだ線の前記押付面に対する角度が15度以上、25度以下の範囲から選定される角度の傾斜面を有する二つの傾斜部と、
前記傾斜部の前記押付部と反対側の端縁と接続され、前記押付面を越えない長さで基板に向かって突出し、洗浄布の前記押圧子に対する相対移動方向のずれを規制する二つの規制突部とを有し、
前記洗浄布供給手段は、
洗浄布の幅により前記押付面の相対移動方向全体を跨ぐように洗浄布を配置し、洗浄布の長さ方向に所定の張力を与えて前記押付部と傾斜部とで形成される形状に洗浄布を沿わせる洗浄布供給手段である
基板洗浄装置。
【請求項2】
前記傾斜部が有する傾斜面は、前記押付部から外側に膨出する曲面である
請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記押圧子が洗浄布を基板に押し付ける方向である押圧方向における前記傾斜面の高さは、0.5mm以上、1mm以下の範囲から選定される長さである
請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
当該基板洗浄装置は、
基板を挟むように配設される二つの前記押圧子を備え、
前記移動手段は、
二つの前記押圧子を一体に基板に沿って相対的に移動させる
請求項1に記載の基板洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−115676(P2011−115676A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272835(P2009−272835)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】