説明

基板用シールドコネクタ

【課題】ハウジングにシールド構造を有するコネクタ端子を装着した状態でプリント基板に取り付けられる基板用シールドコネクタのハウジング内でのコネクタ端子のガタがなく、アライメント狂いのない基板用シールドコネクタを提供すること。
【解決手段】ハウジング30にシールド構造を有するコネクタ端子10,20を装着した状態でプリント基板40に取り付けられる基板用シールドコネクタ1において、ハウジング30の後方からのコネクタ端子10,20の装着を可能とする後方開口部31の内壁には、アライメント溝33を形成し、コネクタ端子10,20の筒状接続部13b,23bの基板側接続部13g,23g近傍の外壁には、側方に突出したアライメント規制片13h,23hを形成して、このアライメント規制片13h,23hをアライメント溝33に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の電気装置等へのワイヤーハーネス等のケーブルの接続に関し、特にその電気装置におけるプリント基板へシールドケーブルを接続する基板用シールドコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カーナビゲーションシステム等の自動車の電気装置に内蔵される電子部品やIC(集積回路)等が実装された制御用のプリント基板へ伝送される電気信号は高速化(高周波化)され、また、そのプリント基板の基板パターンも密集し高密度化されてきている。一般的に、このような高周波の電気信号を伝送するために高周波対応のシールドケーブルが用いられるが、このシールドケーブルとプリント基板を中継接続する基板用シールドコネクタにも高周波化対応,小型化の要求が高まっている。
【0003】
図4は、このような高周波化、小型化に適応するために用いられている下記特許文献1に記載の基板用シールドコネクタを示したものである。図示されるように、導電性部材よりなる内導体端子51を絶縁性部材よりなる誘電体52に嵌めこみ、これを略箱状の導電性部材よりなる外導体端子53内に収納して一体化した略直角型のコネクタ端子50とし、このコネクタ端子50を、ハウジング60の収納部に嵌めこむことで基板用シールドコネクタ2は構成される。
【0004】
内導体端子51の下方に突出した基板側接続部51aは、プリント基板40のスルーホール41aに嵌め込まれて基板面上の信号パターン42とはんだ接続され、外導体端子53の下方に突出した基板側接続部53a,53aは、プリント基板40のスルーホール41b,41bに嵌め込まれて基板面上のグランドパターン43とはんだ接続されるようになっている。また、内導体端子51の前方に突出したケーブルコネクタ側接続部51bは図示しないケーブルコネクタのメス型の内導体端子と嵌合接続され、外導体端子53の嵌合部53bも同じく図示しないケーブルコネクタの外導体端子と嵌合接続されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−224715号公報
【特許文献2】特開2004−172005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この基板用シールドコネクタ2のプリント基板40への取り付けは、コネクタ端子50をハウジング60に装着した状態で行われるのであるが、製造交差の関係上、ハウジング60内でのコネクタ端子50の固定にガタが生じている場合がある。このようなガタが生じていると、内導体端子51や外導体端子53の基板側接続部51a,53aのアライメントが狂って、プリント基板40のスルーホール41a,41bへの挿入に支障を来たす不具合が発生したり、ケーブルコネクタとの接続において嵌合不具合が発生する原因になっていた。
【0007】
このようなガタを無くすには、基板用シールドコネクタの製造交差を厳しくすれば良いのであるが、コスト増加になるため実施が難しい。また、このようなアライメント狂いを防ぐために、上記特許文献2に記載のようなアライメントプレートを追加することが考えられるが、これも別部材追加によるコスト増加という問題があった。
【0008】
そこで、本発明が解決する課題は、ハウジングにシールド構造を有するコネクタ端子を装着した状態でプリント基板に取り付けられる基板用シールドコネクタにおいて、ハウジング内でのコネクタ端子のガタがなく、アライメント狂いのない基板用シールドコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る基板用シールドコネクタは、ハウジングにシールド構造を有するコネクタ端子を装着した状態でプリント基板に取り付けられる基板用シールドコネクタであって、前記ハウジングには、後方からの前記コネクタ端子の装着を可能とする後方開口部が設けられ、前記コネクタ端子には、この後方開口部の内壁に沿って挿入されるとともに下端に基板側接続部を有した筒状接続部が設けられ、この筒状接続部の前記基板側接続部近傍の外壁には側方に突出したアライメント規制片が形成され、更に前記ハウジングの後方開口部の内壁には、このアライメント規制片が挿入されるアライメント溝が形成されていることを要旨とするものである。
【0010】
この場合、前記ハウジングの後方開口部内壁のアライメント溝への前記コネクタ端子のアライメント規制片の挿入が圧入であると良い。また、前記ハウジングの後方開口部内壁のアライメント溝には、前記コネクタ端子のアライメント規制片の挿入方向への移動を規制するストッパ部が形成されていると良い。更に、前記ハウジングの後方開口部は、前記アライメント規制片を備えたコネクタ端子を上下に複数段装着可能に形成されるともに、この後方開口部の内壁に形成された前記アライメント溝は、これらアライメント規制片が順次共用して挿入される溝として形成されていると良い。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を有する基板用シールドコネクタによれば、ハウジングの後方開口部に挿入されるコネクタ端子の筒状接続部の基板接側続部近傍の外壁には、側方に突出したアライメント規制片を形成し、これをハウジングの後方開口部の内壁に形成されたアライメント溝に挿入するという構成なので、ハウジング内でのコネクタ端子のガタが、アライメント溝に挿入されたアライメント規制片によって無くなり、アライメント狂いが抑制される。これによりプリント基板のスルーホールへの挿入不具合や、ケーブルコネクタとの嵌合不具合が発生しなくなる。また、プリント基板のスルーホールに挿入される基板側接続部近傍にアライメント規制片を形成したことにより、特にプリント基板のスルーホールに対するアライメントが安定する。
【0012】
この場合、前記ハウジングの後方開口部内壁のアライメント溝への前記コネクタ端子のアライメント規制片の挿入が圧入である構成にすれば、ハウジング内でのコネクタ端子の規制が強固になる。また、前記ハウジングの後方開口部内壁のアライメント溝には、前記コネクタ端子のアライメント規制片の挿入方向への移動を規制するストッパ部が形成されている構成にすれば、ハウジング内でのコネクタ端子の位置決め固定が容易になる。更に、前記ハウジングの後方開口部は、前記アライメント規制片を備えたコネクタ端子を上下に複数段装着可能に形成されるともに、この後方開口部の内壁に形成された前記アライメント溝は、これらアライメント規制片が順次共用して挿入される溝として形成されている構成にすれば、上下に複数極備えた基板用シールドコネクタとして構成した場合でも、それぞれのコネクタ端子が備えるアライメント規制片に対応して複数のアライメント溝を設ける必要がなく、ハウジングの後方開口部の内壁の形状の簡素化や小型化に貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態に係る基板用シールドコネクタについて、図1〜図3を用いて詳細に説明する。本発明の一実施形態に係る基板用シールドコネクタを、図1に組み立て前の外観斜視図、図2に組み立て後の断面図として示し、図3に本発明の特徴部分であるアライメント規制片のアライメント溝への挿入前と挿入後を断面図として示す。以下、本実施の形態の説明においては、基板用シールドコネクタの図示しないケーブルコネクタとの嵌合接続側を「前側」とする。
【0014】
図示される基板用シールドコネクタ1は、それぞれ大きさの異なる略直角型のシールド構造を有するコネクタ端子10,20をハウジング30内に上下に配設させてなるものである。各コネクタ端子10,20の一端側が図示しないケーブルに接続されたケーブルコネクタに接続され、他端側がプリント基板40に接続される。
【0015】
コネクタ端子10,20は、電気信号の受け渡しに直接的な役割を担う内導体端子11,21と、この内導体端子11,21を電磁的に遮蔽する外導体端子13,23と、これら内導体端子11,21と外導体端子13,23との間を絶縁状態で保持する誘電体12,22とから構成される。図中のコネクタ端子10,20はこれらの部材がアッセンブリされてそれぞれ一体化した状態を示している。
【0016】
内導体端子11,21は、導電性材料により形成されており、略直角の関係にあるオスタブ形状のケーブルコネクタ側接続部11a,21aと同じくオスタブ形状の基板側接続部11b,21bとからなる。ケーブルコネクタ側接続部11a,21aは図示しないケーブルコネクタを構成するメス型の内導体端子と嵌合接続され、基板側接続部11b,21bはプリント基板40のスルーホール41aに嵌め込まれて基板面上の信号パターン42とハンダ接続される。
【0017】
誘電体12,22は、絶縁性の樹脂材料等により形成されており、内導体端子11,21と後述する外導体端子13,23とを絶縁状態に保持する役割を担う。
【0018】
外導体端子13,23は、導電性材料からなる板材を折り曲げ加工して形成されており、誘電体12,22の周囲を覆うと共に内導体端子11,21を電磁的に遮蔽する役割を担う。この外導体端子13,23は、前後方向に延設される円筒状の嵌合部13a,23aと、この嵌合部13a,23aの後部から下方に延設される箱状の筒状接続部13b,23bとを備えたものである。
【0019】
外導体端子13,23の嵌合部13a,23aの先端の開口部には、図示しないケーブルコネクタの外導体体端子が嵌め込まれる。また、嵌合部13a,23aの後部上面中央には、ランス13c,23cが上方に向かって突設されている。このランス13c,23cは、ハウジング30のランス係合部34a,34bに係合される。
【0020】
外導体端子13,23の筒状接続部13b,23bには、この筒状接続部13b,23b及び嵌合部13a,23aの後端開放部を閉塞する折曲げ蓋13d,23dが設けられており、端部に突設された係合片13e,23eが、筒状接続部13b,23bの右面に形成された係合切欠13f,23fに折り曲げ時に係合して容易に外れないようになっている。
【0021】
また、外導体端子13,23の筒状接続部13b,23bの下端には、左右一対からなる基板側接続部13g,13g,23g,23gが、前後に位置をずらして下方に突出して設けられており、プリント基板40のスルーホール41b,41bに嵌め込まれてプリント基板40のグランドパターン43に接続される。
【0022】
そして、この基板側接続部13g,23g近傍の筒状接続部13b,23bの下端には、左右一対からなるアライメント規制片13h,13h,23h,23hが、前後に位置をずらして側方に突出して設けられており(図1では片側のみ図示、図3参照)、ハウジング30のアライメント溝33,33に順次挿入されるようになっている。
【0023】
ハウジング30は、絶縁性の樹脂材料等から形成されており、上述の内導体端子11,21、誘電体12,22、及び外導体端子13,23とを組み付けてなるコネクタ端子10,20を互いに絶縁保持する役割を担う。
【0024】
このハウジング30は、後方開口部31とフード部32とで構成される。後方開口部31には、コネクタ端子10が下段に、コネクタ端子20が上段にそれぞれ後方から挿入されて収容される(図2参照)。また、後方開口部31の左右内壁の下方位置には、前述したコネクタ端子10,20のアライメント規制片13h,23hが順次共用して挿入されるアライメント溝33が形成されている。フード部32は図示しないケーブルコネクタが嵌合されるようになっている。
【0025】
図3はコネクタ端子10,20及びハウジング30のアライメント規制片13h,23h及びアライメント溝33位置での横断面を上方から見た図を示している。この場合、図3(a)はアライメント溝33へのアライメント規制片13h,23hの挿入前の状態を示しており、図3(b)はアライメント溝33へのアライメント規制片13h,23hの挿入後の状態を示している。
【0026】
図示されるように、アライメント溝33,33の途中より奥側部分は、コネクタ端子10のアライメント規制片13h,13hの幅に合わせて小さく形成され、コネクタ端子10の挿入方向への移動を規制して位置決めするストッパ部33a,33aが前後にずれた位置に形成されている。これに対しアライメント溝33,33の手前側部分は、コネクタ端子20のアライメント規制片23h,23hの幅に合わせて大きく形成され、コネクタ端子10の挿入方向への移動を規制して位置決めするストッパ部33b,33bが前後にずれた位置に形成されている。
【0027】
このようにコネクタ端子10,20の筒状接続部13b,23bの基板側接続部13g,23g近傍の外壁に、側方に突出したアライメント規制片13h,23hを形成し、これをハウジング30の後方開口部31の内壁に形成されたアライメント溝33に挿入することにより、ハウジング30内でのコネクタ端子10,20のガタがアライメント溝33に挿入されたアライメント規制片13h,23hに規制されて無くなり、アライメント狂いが抑制される。
【0028】
また、プリント基板40のスルーホール41bに挿入される基板側接続部13g,23g近傍にアライメント規制片13h,23hを形成したことから、特にプリント基板40に対するアライメントが安定する。
【0029】
更に、2つのコネクタ端子10,20のアライメント規制片13h,23hの高さを同じ位置にし、対するアライメント溝33は、これらアライメント規制片13h,23hが順次共用して挿入される溝として形成したことで、ハウジング30の後方開口部31の左右内壁の形状の簡素化や小型化が可能になっている。
【0030】
以上、本発明に係る基板用シールドコネクタの実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、アライメント溝へのアライメント規制片の挿入を圧入で行っても良く、コネクタ端子のハウジング内での固定がガタがない上に強固にもなる。また、アライメント規制片やアライメント溝は各種の形状等が適用できるのは勿論であり、上記実施の形態の形状には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板用シールドコネクタの組み立て前を示した外観斜視図である。
【図2】図1の基板用シールドコネクタ1の組み立て後の縦断面を示した図である。
【図3】図1のコネクタ端子10,20とハウジング30のアライメント規制片13h,23h及びアライメント溝33位置での横断面を上方から見た図を示している。図3(a),図3(b)はそれぞれアライメント溝33へのアライメント規制片13h,23hの挿入前と挿入後の状態を表している。
【図4】従来用いられてきた基板用シールドコネクタを示した分解斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 基板用シールドコネクタ
10,20コネクタ端子
11,22 内導体端子
12,22 誘電体
13,23 外導体端子
13b,23b 筒状接続部
13g,23g 基板側接続部
13h,23h アライメント規制片
30 ハウジング
31 後方開口部
33 アライメント溝
33a,33b ストッパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングにシールド構造を有するコネクタ端子を装着した状態でプリント基板に取り付けられる基板用シールドコネクタであって、前記ハウジングには、後方からの前記コネクタ端子の装着を可能とする後方開口部が設けられ、前記コネクタ端子には、この後方開口部の内壁に沿って挿入されるとともに下端に基板側接続部を有した筒状接続部が設けられ、この筒状接続部の前記基板側接続部近傍の外壁には側方に突出したアライメント規制片が形成され、更に前記ハウジングの後方開口部の内壁には、このアライメント規制片が挿入されるアライメント溝が形成されていることを特徴とする基板用シールドコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングの後方開口部内壁のアライメント溝への前記コネクタ端子のアライメント規制片の挿入が圧入であることを特徴とする請求項1に記載の基板用シールドコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングの後方開口部内壁のアライメント溝には、前記コネクタ端子のアライメント規制片の挿入方向への移動を規制するストッパ部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板用シールドコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングの後方開口部は、前記アライメント規制片を備えたコネクタ端子を上下に複数段装着可能に形成されるともに、この後方開口部の内壁に形成された前記アライメント溝は、これらアライメント規制片が順次共用して挿入される溝として形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の基板用シールドコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−107800(P2006−107800A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289690(P2004−289690)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】