説明

基板露光装置

【課題】被露光基板に対してフォトマスクを介した露光を行った後、フォトマスクを例えば光軸を回転中心として所定角度に亘り回転させて再度露光を行う装置を提供する。
【解決手段】
感光性樹脂を塗布した被露光基板を保持する基板保持部11と、パターン露光を行うためのフォトマスク18を被露光基板2に対向させつつその上面側に微小間隔をあけて保持する平板状マスクホルダ16と、平板状マスクホルダ16の周縁が載置されるホルダ載置台13とを備え、平板状マスクホルダ16は、中央に形成された貫通孔33にフォトマスク18を嵌め込むことによりこれを周囲から保持可能とされ、ホルダ載置台13上において光軸方向を回転中心として回転させることにより、その嵌め込まれたフォトマスクを被露光基板2に対して回転自在に構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク上方から光を照射し、フォトマスクを通過した光にてフォトマスクと対向する被露光基板にパターン露光を行う基板露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板露光装置は、感光性樹脂等で構成される感光膜を表面に形成した被露光基板を保持する露光ステージと、被露光基板の上方からパターン露光を行うために所定のパターンを有するフォトマスクを被露光基板と対向させて被露光基板の上面に保持するマスクホルダとを備える。従来においてはパターン露光時にフォトマスクと被露光基板とを密着させて露光を行う露光装置も提案されている。しかし、密着露光の場合、フォトマスクと被露光基板との間に入り込んだ異物などによりフォトマスクや被露光基板に傷が発生しやすい。このため、パターン露光時に、フォトマスクとガラス基板との間に所定の微小間隔(プロキシミティギャップ)をあけて、フォトマスク上方から光を照射して被露光基板にパターン露光を行う近接露光式の基板露光装置が使用されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−109160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の基板露光装置は、被露光基板に対してフォトマスクを、光軸方向を回転中心として自由に回転させることを前提としていない装置構成である。
【0005】
そこで、本発明は、被露光基板に対してフォトマスクを介した露光を行った後、フォトマスクを例えば光軸を回転中心として所定角度に亘り回転させ、再度露光を行う、複数段露光を行うことが可能な基板露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る基板露光装置は、上述した課題を解決するために、感光性樹脂を塗布した被露光基板を保持する基板保持手段と、パターン露光を行うためのフォトマスクを上記被露光基板に対向させつつその上面側に微小間隔をあけて保持する平板状マスクホルダと、上記平板状マスクホルダの周縁が載置されるホルダ載置台とを備え、上記平板状マスクホルダは、中央に形成された貫通孔に上記フォトマスクを嵌め込むことによりこれを周囲から保持可能とされ、上記ホルダ載置台上において光軸方向を回転中心として回転させることにより、その嵌め込まれたフォトマスクを上記被露光基板に対して回転自在に構成していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る基板露光装置は、請求項1記載の発明において、上記保持された上記被露光基板の表面の高さと略同一となるように、上記基板保持手段の周囲に形成された載置棚と、上記中央に開口が形成されてなるとともに上記載置棚上に端縁が載置され、上記嵌め込まれたフォトマスクが上面に載置され、上記微小間隔を保持するためのスペーサーとを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る基板露光装置は、請求項1又は2記載の発明において、装置内の圧力を減圧する圧力調整手段を更に備え、上記圧力調整手段による減圧に基づいて、上記フォトマスクを上記スペーサーの開口を介して上記被露光基板側へ曲げ変形させてこれを当該被露光基板表面上に近接又は接触させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る基板露光方法は、請求項3記載の基板露光装置を用いて被露光基板を露光する基板露光方法において、上記圧力調整手段により減圧させることにより、上記フォトマスクを上記スペーサーの開口を介して上記被露光基板側へ曲げ変形させてこれを当該被露光基板表面上に接触させて露光する露光工程と、上記圧力調整手段により上記装置内を加圧することにより、上記被露光基板側へ曲げ変形された上記フォトマスクを元の形状に復元させ、更に上記平板状マスクホルダを上記ホルダ載置台上において光軸方向を回転中心として回転させることにより、その嵌め込まれたフォトマスクを上記被露光基板に対して回転させるマスク回転工程とを有し、上記露光工程と、上記マスク回転工程とを交互に実行していくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述した構成からなる本発明によれば、被露光基板に対してフォトマスクを介した露光を行った後、フォトマスクを例えば光軸を回転中心として所定角度に亘り回転させ、再度露光を行う、複数段露光を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した基板露光装置の断面構成例を示す図である。
【図2】(a)は、各構成要素を装着する前の基板露光装置の平面図であり、また(b)は、基板保持部に被露光基板を保持させた状態における平面図である。
【図3】本発明を適用した基板露光装置に使用されるスペーサーの平面図である。
【図4】フォトマスクを貫通孔に嵌め込んだ状態で光軸方向に回転させる例を示す図である。
【図5】フォトマスクをスペーサーの開口を介して被露光基板側へ曲げ変形させた例を示す図である。
【図6】二段階の露光を行った結果について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明を適用した基板露光装置1の断面構成例を示している。
【0013】
基板露光装置1は、感光性樹脂3を塗布した被露光基板2を保持する溝状の基板保持部11と、その基板保持部11の上段に形成された載置棚12と、その載置棚12上段に形成されたホルダ載置台13とを有し、更に、載置棚12上に載置されるスペーサー15と、ホルダ載置台13上に載置される平板状マスクホルダ16と、この平板状マスクホルダ16により保持されるフォトマスク18とを備えている。
【0014】
図2(a)は、被露光基板2、スペーサー15、フォトマスク18、平板状マスクホルダ16を装着する前の基板露光装置1の平面図を、また図2(b)は、基板保持部11に被露光基板2を保持させた状態における基板露光装置1の平面図である。
【0015】
基板保持部11は、平面視において、被露光基板2の形状に応じた溝で構成されている。この被露光基板2は一般的に矩形状で構成されていることから、この基板保持部11の形状もこの被露光基板2の形状に応じた矩形で構成されるのが通常である。この基板保持部11のサイズは、被露光基板2を嵌め込むことができるように、その周辺のサイズよりも若干広めにされていることは勿論である。
【0016】
載置棚12は、平面視において基板保持部11の周囲に設けられてなる。この載置棚12の高さは、基板保持部11により保持された被露光基板2の表面の高さと略同一となるように調整されている。但し、この載置棚12の高さは、感光性樹脂3を塗布した状態の被露光基板2の高さよりも上とされていることが望ましい。
【0017】
ホルダ載置台13は、平面視において載置棚12の周囲に設けられてなる。このホルダ載置台13の高さは、少なくとも載置棚12に載置したスペーサー15の上面の高さよりも上とされていることが必須となる。
【0018】
スペーサー15は、例えば金属製、樹脂製、無機材料製の材料からなり、載置棚12上に載置される。図3は、このスペーサー15の平面図を示している。スペーサー15は、中央に開口31が形成されてなる。この開口31は、上面から下面へかけて貫通するものである。フォトマスク18に描かれているマスクパターンが全て被露光基板2へ投影できるように開口31のサイズが調整されている。このような開口31が設けられたスペーサー15の端縁を載置棚12上に載置させることにより、これを取り付ける。このスペーサー15の上面にはフォトマスク18が載置される。このスペーサー15により、フォトマスク18を被露光基板2に対向させつつその上面側に微小間隔をあけて保持することが可能となる。
【0019】
フォトマスク18は、スペーサー15上に載置されてなるとともに、その周囲が平板状マスクホルダ16により保持される。フォトマスク18の中央には、マスクパターンが描かれている。このフォトマスク18は、ガラス、樹脂等、いかなる材料で構成されていてもよいが、少なくとも透光性の材料で構成されていることが必要となる。このフォトマスク18の例としては、Siを窒化したSiNと呼ばれる窒化シリコン等を使用してもよく、また変形容易性を確保するためにその厚さは500nm程度としてもよい。
【0020】
平板状マスクホルダ16は、ホルダ載置台13上において載置されてなり、図4(a)に示す平面図に示すように中央に貫通孔33が形成された平板で構成されている。そして、この貫通孔33の形状は、フォトマスク18の形状に応じた溝で構成されている。このフォトマスク18は、一般的に矩形状で構成されていることから、この貫通孔33の形状もこのフォトマスク18の形状に応じた矩形で構成されるのが通常である。貫通孔33のサイズは、フォトマスク18を嵌め込むことができるように、その周辺のサイズよりも若干広めにされていることは勿論である。
【0021】
このようにしてフォトマスク18を貫通孔33に嵌め込んだ状態で光軸方向(図4(a)中紙面奥行き方向)を回転中心として、平板状マスクホルダ16を回転させることにより、図4(b)に示すように、その嵌め込まれたフォトマスク18を被露光基板2に対して自在に回転させることが可能となる。
【0022】
また上述した構成に加えて、本発明を適用した基板露光装置1は、装置内の圧力を減圧、加圧する圧力調整部5を更に備えている。この圧力調整部5は、例えば吸引ポンプ等で構成されている。
【0023】
次に、上述した構成からなる基板露光装置1を使用して行う基板露光方法について説明をする。この基板露光方法は、露光工程と、マスク回転工程とに大別される。
【0024】
露光工程では、圧力調整部5により装置内を減圧させる。この減圧では、フォトマスク18の下面側が、その上面側よりも低圧となるように行う。その結果、図5に示すように、フォトマスク18をスペーサー15の開口を介して被露光基板2側へ曲げ変形させてこれを当該被露光基板2の表面上に接触させることが可能となる。このとき、フォトマスク18を被露光基板2の表面上から完全に接触させることなく僅かに離間させた状態で近接させるようにしてもよい。
【0025】
次に、この露光工程では、フォトマスク18の上から光を照射することにより露光を行う。この照射された光は、フォトマスク18を透過し、スペーサー15の開口31を通過してそのまま被露光基板2へと照射させることになる。この露光終了後、マスク回転工程へと移行する。
【0026】
マスク回転工程では、圧力調整部5により、装置内を加圧することにより、被露光基板2側へ曲げ変形されたフォトマスク18を元の形状に復元させる。そして、平板状マスクホルダ16をホルダ載置台13上において光軸方向を回転中心として回転させることにより、その嵌め込まれたフォトマスク18を被露光基板2に対して回転させる。
【0027】
この露光工程と、マスク回転工程とを交互に実行していく。これにより本発明を適用した基板露光装置1は、被露光基板2に対してフォトマスク18を介した露光を行った後、フォトマスク18を例えば光軸を回転中心として所定角度に亘り回転させ、再度露光を行う、複数段露光を行うことが可能となる。この複数段露光は、例えば図6(a)に示すように、縦線のみのマスクパターンが形成されたフォトマスク18により第1段階目の露光を行い、次に、このフォトマスク18を90°回転させて第2段階目の露光を行うことにより、図6(b)に示すように、被露光基板2上において互いに交差する十字線が形成されたパターニングを行うことが可能となる。
【0028】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、マスク回転工程を省略するものであれば、平板状マスクホルダ16の構成を省略するようにしてもよい。また、スペーサー15の構成も同様に省略するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 基板露光装置
2 被露光基板
3 感光性樹脂
11 基板保持部
12 載置棚
13 ホルダ載置台
15 スペーサー
16 平板状マスクホルダ
18 フォトマスク
33 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂を塗布した被露光基板を保持する基板保持手段と、
パターン露光を行うためのフォトマスクを上記被露光基板に対向させつつその上面側に微小間隔をあけて保持する平板状マスクホルダと、
上記平板状マスクホルダの周縁が載置されるホルダ載置台とを備え、
上記平板状マスクホルダは、中央に形成された貫通孔に上記フォトマスクを嵌め込むことによりこれを周囲から保持可能とされ、上記ホルダ載置台上において光軸方向を回転中心として回転させることにより、その嵌め込まれたフォトマスクを上記被露光基板に対して回転自在に構成していること
を特徴とする基板露光装置。
【請求項2】
上記保持された上記被露光基板の表面の高さと略同一となるように、上記基板保持手段の周囲に形成された載置棚と、
上記中央に開口が形成されてなるとともに上記載置棚上に端縁が載置され、上記嵌め込まれたフォトマスクが上面に載置され、上記微小間隔を保持するためのスペーサーとを備えること
を特徴とする請求項1記載の基板露光装置。
【請求項3】
装置内の圧力を減圧する圧力調整手段を更に備え、
上記圧力調整手段による減圧に基づいて、上記フォトマスクを上記スペーサーの開口を介して上記被露光基板側へ曲げ変形させてこれを当該被露光基板表面上に近接又は接触させること
を特徴とする請求項1又は2記載の基板露光装置。
【請求項4】
請求項3記載の基板露光装置を用いて被露光基板を露光する基板露光方法において、
上記圧力調整手段により減圧させることにより、上記フォトマスクを上記スペーサーの開口を介して上記被露光基板側へ曲げ変形させてこれを当該被露光基板表面上に接触させて露光する露光工程と、
上記圧力調整手段により上記装置内を加圧することにより、上記被露光基板側へ曲げ変形された上記フォトマスクを元の形状に復元させ、更に上記平板状マスクホルダを上記ホルダ載置台上において光軸方向を回転中心として回転させることにより、その嵌め込まれたフォトマスクを上記被露光基板に対して回転させるマスク回転工程とを有し、
上記露光工程と、上記マスク回転工程とを交互に実行していくこと
を特徴とする基板露光方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−119613(P2011−119613A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277880(P2009−277880)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000173636)財団法人光産業技術振興協会 (19)
【Fターム(参考)】