説明

堰止板および分包装置

【課題】 分包動作を円滑に行い得る堰止板および該堰止板を有する分包装置の提供。
【解決手段】 回転板上の環状凹溝に供給された粉粒体を所定領域分ずつ切出す切出板に対して粉粒体の搬送方向下流側に並設されて、粉粒体を堰止める堰止板であって、円板状に形成されてその外周部に合成樹脂によって形成された環状の堰止部を有し、堰止部において環状凹溝の溝底面に接触する部分が所定の表面粗さとなるシボ加工が施されている堰止板、およびこれを用いた分包装置の構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転板に供給された粉粒体(散薬等)を所定量ずつ切出す際に回転板の回転方向下流側で粉粒体を堰止めるための堰止板、および該堰止板を有する分包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤等の粉粒体を分包するための分包装置として、下記特許文献1に示すものが提案されている。
この分包装置は、回転板の環状凹溝に沿って供給された粉粒体を所定量ずつ環状凹溝から切出すための切出部を有する。切出部は環状凹溝の溝底面の上方の横軸回りに回転して環状凹溝の溝底面にある粉粒体を切出すよう構成されており、粉粒体を掬うように切出す切出板と、この切出板の下流側で粉粒体を堰止める堰止板とを有する。
この分包装置では、回転板を間欠的に縦軸回りに回転させつつ切出部を横軸回りに回転させることで、堰止板で粉粒体を堰止めつつ切出板で粉粒体を回転板の径方向に切出すようにした後、分包するものである。
【特許文献1】特公昭52−22598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の分包装置において堰止板は溝底面に接触して粉粒体を堰止めるものであり、回転板を間欠的に回転させる際にも外周部が溝底面に接触しているから、堰止板と環状凹溝の溝底面との間で摩擦や引っ掛かりが発生して堰止板が細かく振動してしまうことがあり、そうすると、分包装置による円滑な分包動作を行えないことがあった。
【0004】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、分包動作を円滑に行い得る堰止板および該堰止板を有する分包装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、回転板上の環状凹溝に供給された粉粒体を所定領域分ずつ切出す切出板に対して粉粒体の搬送方向下流側に並設されて、粉粒体を堰止める堰止板であって、円板状に形成されてその外周部に合成樹脂によって形成された環状の堰止部を有し、該堰止部において環状凹溝の溝底面に接触する部分に所定の表面粗さとなるシボ加工が施されていることを特徴としている。
【0006】
上記構成において、堰止部の外周面にシボ加工を施し、堰止部の外周面と回転板上の環状凹溝の溝底面との滑り易さを向上させて堰止部の変形・撓みを抑制することで、堰止板と環状凹溝の溝底面との間での摩擦や引っ掛かりが発生するのを効果的に抑制する。
【0007】
本発明の堰止板では、堰止部はシリコンゴムから形成され、堰止部における溝底面に接触する部分の表面粗さが、Rmax5s〜30s、好ましくはRmax10s〜25sに設定されていることを特徴としている。
【0008】
一般に回転板はステンレスによって形成(例えばプレス加工により製造)されて環状凹溝の溝底面の表面は所定の表面粗さ(例えばRmax1.2s)となっている。この範囲に対応する表面粗さとして、シリコン製の堰止部の外周面をRmax5s〜30s、好ましくはRmax10s〜25sに設定することで、従来に比べて堰止部と環状凹溝の溝底面とが滑り易くなり、しかも溝底面と堰止板の外周面との間への粉粒体の噛込みも最小限にとどめられる。
【0009】
本発明は、回転板上の環状凹溝に供給された粉粒体を所定領域分ずつ回転板の径方向に向けて切出す切出部を備え、該切出部は、環状凹溝の曲率中心である横軸回りに回転可能な切出板と、切出板の下流側に切出板と同心となるよう並設された堰止板とを有して、堰止板を環状凹溝の溝底面に接触させて粉粒体を堰止め、回転テーブルを縦軸回りに間欠的に回転させつつ切出板を横軸回りに回転させて粉粒体を切出し、切出した粉粒体を順次分包するようにした分包装置であって、前記堰止板は、上記何れかの堰止板であることを特徴としている。
【0010】
上記構成の分包装置では、堰止部の外周面にシボ加工(梨地面)を施しているから、堰止部の外周面と回転板上の環状凹溝の溝底面との滑り易さを向上させて堰止部の変形・撓みが抑制され、したがって、堰止板と環状凹溝の溝底面との間での摩擦や引っ掛かりの発生が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の堰止板によれば、堰止部の外周面にシボ加工を施すことで、堰止部の外周面と回転板上の環状凹溝の溝底面との滑り易さを向上させるように構成することが可能となり、堰止部の外周面が環状凹溝の溝底面と摺動するとき、堰止部の変形・撓みを抑制することが可能になり、したがって、堰止板と環状凹溝の溝底面との間での摩擦や引っ掛かりが発生するのを効果的に抑制することができ、分包動作を円滑に行い得る堰止板となる。
【0012】
また、本発明の分包装置では、上記堰止板を用いることにより、堰止板と環状凹溝の溝底面との間での摩擦や引っ掛かりが発生するのを効果的に抑制することができ、分包動作を円滑に行い得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る分包装置を、薬剤(散薬)を分包するための分包装置を例に説明する。図1は分包装置の要部の概略構成を示す斜視図、図2は堰止板の単体斜視図、図3は堰止板の正面図、図4は背面図、図5は平面図、図6は平面断面図である。
【0014】
図1に示すように、分包装置1は、縦軸回りに所定角度分だけ間欠的に回転可能な中抜き円板状の回転板2と、回転板2の環状凹溝3に散薬4を供給するための供給部としてのフィーダ5と、このフィーダ5に対して回転板2の回転方向下流側に配置された散薬4の切出部6と、切出部6に対して回転板2の径方向外側下方に配置され切出された散薬4を受容れるためのホッパー7とを有する。
【0015】
切出部6は環状凹溝3の溝底面8の上方に配置した横軸10回りに回転自在に設けられており、横軸10回りに回転する取付回転体11と、取付回転体11に着脱自在に取付けられて散薬4をホッパー7に向けて切出す切出板12と、取付回転体11に着脱自在に設けられるとともに切出板12の下流側に隣接するよう並設された円板状の堰止板14と、切出板12の上流側に切出板12に隣接するよう並設された不図示のカバー体とを有する。
【0016】
上記構成において、回転板2を縦軸13回りに回転させつつフィーダ5から散薬4を環状凹溝3の溝底面8全周に亘って振撒き、回転板2の回転を停止し、切出部6の堰止板14の外周部を溝底面8に接触させた状態で切出部6を横軸10回りに回転させ、堰止板14とカバー体とで散薬4を所定の周方向領域で仕切りつつ切出板12の回転によってその領域にある散薬4をホッパー7に向けて切出し、ホッパー7の下方に設けた不図示の分包装置で分包紙に分包し、再び回転板2を縦軸13回りに角度だけ回転させて停止し、切出部6を横軸10回りに回転させて次の領域の散薬4をホッパー7に向けて切出し、分包装置で分包紙に分包する。
上記動作を繰返すことで、散薬4を溝底面8全周に亘って切出す。
【0017】
切出部6、特に堰止板14以外の構成は、一般的なこの種の分包装置1と同様であるので、その詳細な説明は省略し、堰止板14の構成について詳述する。
堰止板14は、中抜きの円板状に形成された堰止板本体20と、堰止板本体20の外周辺部に径方向外方に突出するよう一体的に設けられた環状の堰止体21(堰止部に相当する)とを有する。堰止体21はシリコンゴムから形成されており、その径方向外方端部22である環状面が、溝底面8に接触可能とされている。なお、堰止板本体20の中心穴20aが取付回転体11に嵌合することで、堰止板14が取付回転体11と一体に回転するようになっている。
【0018】
堰止体21は、堰止板本体20に固着するために堰止板本体20の外周部に環状の肉盛部23を有し、しかも肉盛部23の径方向外方には、堰止板本体20の径方向外方端面を堰止板本体20の片側面から巻込むようにして包んで堰止板本体20の径方向外方端面からさらに径方向外方に突出する環状の巻込部24が一体的に形成されている。
【0019】
このような巻込部24の径方向外方端部22が、堰止板本体20の径方向外方端面からさらに径方向外方に突出した前記環状面とされている。
肉盛部23の径方向内方には、堰止板本体20に向けて傾斜する内方側傾斜面が形成されている。巻込部24の片側の側面には、隅切面としての環状の外方側傾斜面25が形成されている。
【0020】
径方向外方端部22の表面は、シボ加工として梨地面に形成されている。径方向外方端部22の表面はその表面粗さが、Rmax5s〜30s、好ましくはRmax10s〜25sに設定されている。ここでRmaxとは、材料の表面粗さを表す種類のうち「最大高さ」である。
【0021】
この径方向外方端部22の表面の表面粗さは、一般的な溝底面8の表面粗さに対応して設定している。径方向外方端部22の表面粗さを上記のように設定することにより、径方向外方端部22が溝底面8に接触した状態で溝底面8が移動(平面内で回動)した際に、堰止板21と環状凹溝3の溝底面8との間で大きな摩擦や引っ掛かりが発生して堰止板21が細かく振動するという現象(いわゆる「ビビリ現象」)を極めて効果的に抑制でき、且つ径方向外方端部22と溝底面8との間に散薬4の噛込みをも効果的に抑制することができること、換言すれば散薬4の堰止め状態が良好になることがわかった。
【0022】
下記(表1)に、同一の条件下で径方向外方端部22の表面の表面粗さのみ変更してビビリ現象および散薬4の堰止め状態を比較した実験例(性能評価)を示す。
なお、同一の条件として、堰止体21の材料としてシリコンHs30を堰止板本体20に焼付けたもので比較した。
【0023】
(表1)において、
No.1の試験体は、シリコンHs30を堰止板本体20に焼付けし、径方向外方端部22に研磨加工を施していない。Rmax:0.8s程度とした。
No.2の試験体は、シリコンHs30を堰止板本体20に焼付けし、径方向外方端部22に通常仕上げ用砥石で研磨加工を施し、Rmax:5s程度とした。
No.3の試験体は、シリコンHs30を堰止板本体20に焼付けし、径方向外方端部22に通常仕上げ用砥石で研磨加工を施し、Rmax:10s程度とした。
No.4の試験体は、シリコンHs30を堰止板本体20に焼付けし、径方向外方端部22に粗仕上げ用砥石で研磨加工を施し、Rmax:25s程度とした。
No.5の試験体は、シリコンHs30を堰止板本体20に焼付けし、径方向外方端部22に粗仕上げ用砥石で研磨加工を施し、Rmax:30s程度とした。
No.6の試験体は、シリコンHs30を堰止板本体20に焼付けし、径方向外方端部22に粗仕上げ用砥石で研磨加工を施し、Rmax:35s程度とした。
これら試験体No.1〜No.6において、「ビビリ現象」または「散薬の堰止め状態」の少なくとも一方が「×」という結果であった試験体については、これを用いないこととし、したがって径方向外方端部22の表面はその表面粗さが、Rmax5s〜30s、好ましくはRmax10s〜25sとなった試験体を好適として選択することとした。すなわち、(表1)において矢線の範囲で示すNo.2〜No.5の試験体である。
【0024】
(表1)

【0025】
なお、上記構成の堰止体21は、金型へサンドブラスト加工を行い、この金型を用いて外周面に梨地面を転写するようにして製造・加工してもよく、この場合の径方向外方端部22の表面粗さも上記実験例と同様の範囲のものを用いるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態を示す散薬分包機の概略構成を示す平面図
【図2】同じく要部拡大平面図
【図3】同じく要部正面図
【図4】同じく図4(a)は掻取り板の側面図、(b)は正面図、(c)は背面図
【図5】同じく平面図
【図6】同じく平面断面図
【符号の説明】
【0027】
1…分包装置、2…回転板、3…環状凹溝、4…散薬、5…フィーダ、6…切出部、7…ホッパー、8…溝底面、10…横軸、11…取付回転体、12…切出板、13…縦軸、14…堰止板、20…堰止板本体、20a…中心穴、22…径方向外方端部、23…肉盛部、24…巻込部、25…外方側傾斜面、30…シリコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転板上の環状凹溝に供給された粉粒体を所定領域分ずつ切出す切出板に対して粉粒体の搬送方向下流側に並設されて、粉粒体を堰止める堰止板であって、
円板状に形成されてその外周部に合成樹脂によって形成された環状の堰止部を有し、該堰止部において環状凹溝の溝底面に接触する部分に所定の表面粗さとなるシボ加工が施されていることを特徴とする堰止板。
【請求項2】
堰止部はシリコンゴムから形成され、堰止部における溝底面に接触する部分の表面粗さが、Rmax5s〜30s、好ましくはRmax10s〜25sに設定されていることを特徴とする請求項1記載の堰止板。
【請求項3】
回転板上の環状凹溝に供給された粉粒体を所定領域分ずつ回転板の径方向に向けて切出す切出部を備え、該切出部は、環状凹溝の曲率中心である横軸回りに回転可能な切出板と、切出板の下流側に切出板と同心となるよう並設された堰止板とを有して、堰止板を環状凹溝の溝底面に接触させて粉粒体を堰止め、回転テーブルを縦軸回りに間欠的に回転させつつ切出板を横軸回りに回転させて粉粒体を切出し、切出した粉粒体を順次分包するようにした分包装置であって、
前記堰止板は、請求項1または請求項2に記載の堰止板であることを特徴とする分包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−67437(P2009−67437A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236829(P2007−236829)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(593129342)高園産業株式会社 (232)
【Fターム(参考)】