説明

場所打ちコンクリート杭およびその施工方法

【課題】 杭頭部から杭底部まで必要充分な強度を有ししかもコストダウンを図ることができる場所打ちコンクリートおよびその施工方法を提供すること。
【解決手段】 場所打ちコンクリート杭20の施工に際し、掘削孔12へトレミー管16を挿入し、トレミー管16から掘削孔12へコンクリートを打設し、その際、トレミー管16の先端を既打設コンクリート中に埋没させつつ、かつ、段階的にトレミー管16を引き上げつつ行なう。そして、杭体底部20A、杭体中間部20B、杭体頭部20Cへといくにつれ打設するコンクリート中のセメント量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は場所打ちコンクリート杭およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ちコンクリート杭には、掘削方式により(1)回転バケット安定液正循環方式[アースドリル工法]、(2)回転ビット掘削泥水逆循環方式[リバース工法]、(3)ハンマーグラブ掴み出し方式[オールケーシング工法]、(4)人力もしくは専用クラムシェルなどの機械掘削方式[深礎]の4種が代表的工法として挙げられる。
これらの場所打ちコンクリート杭は、所定の断面を所定の精度で掘削した後、スライム処理を実施して鉄筋かごを建て込み、トレミー工法により掘削孔底部よりコンクリートを順次上方に打ち上げてその杭躯体が構築されている。
【0003】
場所打ちコンクリート杭は、建造物の大型化、高層化に伴い、大口径(直径が2〜4m)、大深度(深さが50〜70m)のものも地盤条件より計画され、杭体頭部(通常、杭径の3〜5倍の深度範囲)に作用する曲げ、せん断応力により杭径を以深の杭軸部より大きくする拡頭杭、この拡頭杭に厚肉鋼管を鉄筋かご外部に設置する鋼管巻き場所打ち杭、さらに杭先端部を拡幅し杭耐力を増大させる拡底杭など負担する荷重度に応じて杭方式、形状が合理的に選定されている。
上述の場所打ちコンクリート杭は、従来、杭頭部で最大となる曲げ、せん断応力によりコンクリート強度が定められ、軸圧縮力のみ作用する杭底部まで同一のコンクリート調合(配合)、強度のものが打設されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−124368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、従来の場所打ちコンクリート杭では、最も大きな値の曲げ、せん断応力が作用する杭頭部を基準としてコンクリート強度を定めており、そのため、杭頭部よりも下方の杭軸部や杭底部では必要充分な強度をはるかに上回る不必要な強度を持つことになり、その分コスト高となる不具合を有していた。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、杭頭部から杭底部までその深さ方向の全長にわたって必要充分な強度を有ししかもコストダウンを図ることができる場所打ちコンクリートおよびその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明は、掘削孔へコンクリートが打設されることで形成される場所打ちコンクリート杭であって、杭体底部、杭体中間部、杭体頭部へといくにしたがいコンクリート中のセメント量が増加していることを特徴とする。
また、本発明は、掘削孔へトレミー管を挿入し、トレミー管から掘削孔へコンクリートを打設するに際して、トレミー管の先端を既打設コンクリート中に埋没させつつトレミー管を引き上げて行なう場所打ちコンクリート杭の施工方法において、杭体底部、杭体中間部、杭体頭部へといくにつれ打設するコンクリート中のセメント量を増加させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、場所打ちコンクリート杭の各部位に応じて必要強度が発揮されるように、コンクリートの調合を変化させるので、必要な強度を確保しつつ材料費の点で合理的な杭体構築が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、杭体底部、杭体中間部、杭体頭部へといくにしたがいコンクリート中のセメント量を増加させることで上記の目的を達成した。
以下、本発明の場所打ちコンクリート杭の施工方法を場所打ちコンクリート杭と共に図面にしたがって説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は、実施例1の場所打ちコンクリート杭の施工方法の説明図で、トレミー工法によるコンクリート打設時の流動状況を示している。
図1において符号10は地盤、符号12は地盤に掘削された掘削孔12、符号14は地表面、符号16はトレミー管を示す。
場所打ちコンクリート杭20は、掘削孔12にコンクリートが打設されることで形成されている。
本実施例の場所打ちコンクリート杭20は、杭体底部20A、杭体中間部20B、杭体頭部20Cへといくにしたがいコンクリート中のセメント量が増加している。
場所打ちコンクリート杭20の施工に際しては、掘削孔12へトレミー管16を挿入し、トレミー管16から掘削孔12へコンクリートを打設し、その際、トレミー管16の先端を既打設コンクリート中に埋没させつつ、かつ、段階的にトレミー管16を引き上げつつ行なう。
そして、杭体底部20A、杭体中間部20B、杭体頭部20Cへといくにつれ打設するコンクリート中のセメント量を増加させる。
コンクリート打設に用いるトレミー管16の内径、長さは次の通りである。すなわち、トレミー管16の内径は、杭径に応じて通常、8吋(203mm)、10吋(254mm)、12吋(305mm)のものが用いられる。トレミー管16の長さは、単体1m、2m、3m、5mものなどがあり、杭底部、中間部、杭頭部にわたり杭底より20cm程上げたところから施工地盤高さまで、それら単体1m、2m、3m、5mなどのものが適宜組み合わせて用いられる。
【0009】
上述のトレミー管16を用いた場所打ちコンクリート杭20の施工に際して、まず、トレミー管16に充填されたコンクリートは、安定液もしくは泥水を押し上げて掘削孔12の底部に打設される。
次に、打設するコンクリートは、トレミー管16の先部の周部より既打設コンクリートを水平に押しやり、被さるように打設され、そのコンクリート打設面は、トレミー管16の先部の周部がやや低く掘削孔12の内壁に至るにつれてなだらかに上昇する形状となる。より詳細には、掘削孔12内においてその中央部から外周部に至るにつれてなだらかに上昇する形状で、コンクリートのワーカビリティにより中央部と外周部との高さの差は20〜50cm程度となる。
コンクリートの打設は、トレミー管16の先端を既打設コンクリート中に常に2〜5m程度埋没させながら順次設計杭天まで連続的に打設される。
打設コンクリートは、それより上に打設されたコンクリートの自重(杭径吋法の5倍程度の高さ)を受けながら順次硬化が始まり、2〜5時間経過後に自立する程度まで硬化が進行する。
【0010】
トレミー工法によるコンクリート打設では、このようにコンクリート打設高さに応じてトレミー管16の既打設コンクリート中への埋没深さを管理しつつトレミー管16を引き上げる(トレミー管16の先端を抜き去る)ことから層状に打設がなされている。
このようなコンクリート打設状況から、杭体コンクリートの調合(配合)は必要強度に応じたものにすることで、より合理的な杭体構築が可能となる。
杭体打設コンクリートの調合(配合)を、杭体底部20A、杭体中間部20B、杭体頭部20Cへといくにつれ、セメント量を増加させ、連続的に打ち分けて必要な強度を有する杭躯体を構築する。そのためには、下記の3項が重要となる。
(1)コンクリート打ち上がり面をレベル(高低差30cm内外)に近づけるように打設する。
そのためには、トレミー管16の径を杭径に応じて適正に定める。例えば、杭径が2000mm未満の場合には管径が10吋のトレミー管16を用い、杭径が2000mm以上の場合には管径が12吋のトレミー管16を用い、打設コンクリートの流動圧を確保する。
また、打設コンクリートのワーカビリティを適正に管理する。例えば、杭体底部20Aではスランプ値を17〜18cmとし、杭体中間部20Bではスランプ値を18〜19cmとし、杭体頭部20Cではスランプ値を19〜20cmとし、上部ほど流動性を高める。
(2)打設コンクリートの調合(配合)変化計画部位の2mほど下部より、調合(配合)を変化させる。すなわち、杭体底部20Aと杭体中間部20Bとの境の部分、および杭体中間部20Bと杭体頭部20Cとの境の部分のそれぞれ2mほど下部より、コンクリートの調合を変化させる。
これは、打設コンクリートの調合(配合)変化計画部位で確実に計画通りの調合(配合)とするためであり、トレミー管16の既打設コンクリート中への管入長さも2m内外となるように、トレミー管16の構成を事前に計画しておく。
(3)杭体頭部20Cのコンクリート打設では、バイブレータを用いる。
これは杭体頭部20Cでは、打設コンクリートの自重圧密作用、コンクリートの流動性が減少することなどから、コンクリート強度が低下傾向となるためであり、そのため、この部位の打設コンクリートを締め固め、密実性を高めるため、コンクリート打設完了後に、事前に設置した高周波バイブレータを稼動させる。
【0011】
上記の(1)乃至(3)を実施しつつトレミー工法により杭径が2m、長さが17.5mの場所打ちコンクリート杭20を表1に示す条件のもとで施工した。
また、使用した高性能AE減水剤、AE減水剤、使用可能なAE減水剤を表2に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
得られたコンクリート杭の強度を表3に示す。
【0015】
【表3】

【0016】
表1および表3から明らかなように、本実施例によれば、杭体底部20Aから杭体頭部20Cまでその深さ方向の全長にわたって必要充分な強度を有しており、したがって、場所打ちコンクリート杭20において所望の強度を確保しつつ使用するセメント量を減少させることが可能となり、材料費を削減することが可能となる。すなわち、場所打ちコンクリート杭20を用いた基礎工事のコストダウンを図ることが可能となり、場所打ちコンクリート杭20を用いた構造物のコストダウンを図る上で極めて有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】場所打ちコンクリート杭の施工方法の説明図である。
【符号の説明】
【0018】
10……地盤、12……掘削孔、14……地表面、16……トレミー管、20……場所打ちコンクリート杭、20A……杭体底部、20B……杭体中間部、20C……杭体頭部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔へコンクリートが打設されることで形成される場所打ちコンクリート杭であって、
杭体底部、杭体中間部、杭体頭部へといくにしたがいコンクリート中のセメント量が増加している、
ことを特徴とする場所打ちコンクリート杭。
【請求項2】
掘削孔へトレミー管を挿入し、トレミー管から掘削孔へコンクリートを打設するに際して、トレミー管の先端を既打設コンクリート中に埋没させつつトレミー管を引き上げて行なう場所打ちコンクリート杭の施工方法において、
杭体底部、杭体中間部、杭体頭部へといくにつれ打設するコンクリート中のセメント量を増加させるようにした、
ことを特徴とする場所打ちコンクリート杭の施工方法。
【請求項3】
コンクリート打設時における打設コンクリートの流動圧を管理し、コンクリート打ち上がり面の高低差を30cm内外に近づけつつコンクリートを打設することを特徴とする請求項2記載の場所打ちコンクリート杭の施工方法。
【請求項4】
コンクリート打設時におけるトレミー管の既打設コンクリート中への管入長さを2m内外に維持し、前記杭体底部と杭体中間部との境の部分、および前記杭体中間部と杭体頭部との境の部分のそれぞれ2mほど下部より、コンクリートの調合を変化させることを特徴とする請求項2記載の場所打ちコンクリート杭の施工方法。
【請求項5】
杭頭部においてコンクリートを打設する際に、バイブレータを稼動させて打設コンクリートを締め固め、密実性を高めるようにしたことを特徴とする請求項2記載の場所打ちコンクリート杭の施工方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−16787(P2006−16787A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193546(P2004−193546)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】