場所打ちコンクリート杭におけるグラウト注入機構およびグラウト工法
【課題】簡易な操作によってグラウト噴出口を拡幅部内に位置させることができて作業に要する手間を大幅に低減することが可能になるグラウト注入機構を提供する。
【解決手段】拡幅部14bが形成された掘削孔14内に場所打ちコンクリート杭を構築する際に、拡幅部の側壁にグラウトを注入するためのグラウト注入機構であって、杭鉄筋13内に上下方向に移動自在または軸線廻りに回転自在に垂設された操作軸10と、基端部が操作軸または杭主筋に揺動自在に連結され、先端部11aが杭鉄筋を建て込む際に掘削孔内に位置するとともに、杭鉄筋の配筋後に操作軸を操作することにより外周方向に延出して拡幅部の側壁と対向する複数本のスポーク材11と、掘削孔内に垂下された可撓性を有するグラウト管12と、グラウト管の拡幅部に臨む位置に設けられたグラウト噴出口17の保護材18と備え、保護材にスポーク材の先端部が連結されている。
【解決手段】拡幅部14bが形成された掘削孔14内に場所打ちコンクリート杭を構築する際に、拡幅部の側壁にグラウトを注入するためのグラウト注入機構であって、杭鉄筋13内に上下方向に移動自在または軸線廻りに回転自在に垂設された操作軸10と、基端部が操作軸または杭主筋に揺動自在に連結され、先端部11aが杭鉄筋を建て込む際に掘削孔内に位置するとともに、杭鉄筋の配筋後に操作軸を操作することにより外周方向に延出して拡幅部の側壁と対向する複数本のスポーク材11と、掘削孔内に垂下された可撓性を有するグラウト管12と、グラウト管の拡幅部に臨む位置に設けられたグラウト噴出口17の保護材18と備え、保護材にスポーク材の先端部が連結されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡幅部を有する掘削孔に場所打ちコンクリート杭を構築する際に、その支持力等を増大させるために用いられるグラウト注入機構およびこれを用いたグラウト工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
場所打ちコンクリート杭の施工方法として、図16に示すように、掘削孔1の底部1aの近傍部分に拡幅部2を形成することにより、コンクリート杭3の下端部分3aにおける地盤との接触面積を増大させてコンクリート杭3から地盤へ伝える力を大きくして、一層支持力や沈下剛性を増加させるものがある。
【0003】
一方、下記特許文献1に見られるように、場所打ちコンクリート杭を施工する際に、予めコンクリート杭に埋設しておいたグラウト管から底部にグラウト材を噴出させ、杭底部の地盤および残存スライムを硬化させることにより、当該コンクリート杭の支持力と沈下剛性を増加させるグラウト工法が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に見られるグラウト工法を、上記拡幅部2を形成する場所打ちコンクリート杭の施工方法に対して用いようとすると、図16に示すように、底部1aに拡幅部2を有する掘削孔1を掘削し、次いで2本の平行な注入管部4とこれらの下端連結部に設けられた噴出管部5とからなるグラウト管を杭鉄筋6に組み付けて掘削孔1内に建て込んだ後に、掘削孔1内にコンクリートを打設して、このコンクリートが硬化する直前にグラウト管から水圧をかけてコンクリート中に流路を形成し、上記コンクリートが硬化した後に、注入管部4からグラウト材を加圧注入して噴出管部5の噴出口からコンクリート杭3の先端部に噴出させることになる。
【0005】
この結果、噴出管部5の直下に位置するコンクリート杭3の底部の地盤7aおよび残存スライムを硬化させることはできるものの、図中点線で示す拡幅部2の外周を覆う地盤7bに上記グラウト材を充填することが難しく、よって所望の上記効果を得ることができないという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明者等は、先に下記特許文献2において、図14および図15に示すように、深さ方向の一部分に内径が他の部分より大きい拡幅部2が形成された掘削孔1内に、コンクリートを打設して場所打ちコンクリート杭3を構築する際に用いられるグラウト管8であって、少なくとも拡幅部2まで到達する長さ寸法を有し、かつ拡幅部2に臨む位置に、その軸心から離間する方向に屈曲されてなる偏心管部8aを有するとともに、偏心管部8aにグラウト材の噴出口を有する拡幅部用グラウト噴出管部9を設けた場所打ちコンクリート杭におけるグラウト管を提案した。
【0007】
上記グラウト管を用いたグラウト工法によれば、図14に示すように、上記偏心管部8aを杭鉄筋6側に位置させてグラウト噴出管部9を杭鉄筋6内に位置させた状態で建て込むことにより、偏心管部8aが掘削孔1と干渉することがなく、しかも掘削孔1内にコンクリートを打設する前に、図15に示すように、グラウト管8をその軸心周りに回動させて偏心位置にある拡幅部2用のグラウト噴出管部9を拡幅部2内に位置させ、掘削孔1内に打設したコンクリートが硬化した後にグラウト管8にグラウト材を加圧注入することにより、拡幅部2の周辺地盤についてもグラウト材を充填することができ、よって容易かつ確実に当該コンクリート杭の支持力や沈下剛性を大幅に増加させることができるという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平8−33007号公報
【特許文献2】特開2006−307593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記グラウト工法にあっては、複数本のグラウト管8を、各々その軸心周りに回動させて、偏心位置にある拡幅部2用のグラウト噴出管部9を拡幅部2内に位置させているために、全てのグラウト管8のグラウト噴出管部9を配置するために、多くの手間と時間を要するという欠点があった。
【0010】
また、グラウト管8自体を回動させている結果、操作に耐え得る所望の強度を得るために当該グラウト管8を金属製にする必要があり、特に掘削孔の深度が大きくなると、その重量が嵩んで操作が難しくなる等の問題点もあり、その改善が望まれていた。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、グラウト噴出口が掘削孔と干渉することなく杭鉄筋と一体に建て込むことができ、しかも建て込み後に簡易な操作によって当該グラウト噴出口を拡幅部内に位置させることができて作業に要する手間を大幅に低減することが可能になる場所打ちコンクリート杭におけるグラウト注入機構およびグラウト工法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、深さ方向の少なくとも一部分に内径が他の部分より大きい拡幅部が形成された掘削孔内に、当該掘削孔の側壁に沿って鉛直方向に配置される複数本の杭主筋と、これら杭主筋の鉛直方向に間隔をおいて水平に配置されるとともに上記杭主筋の外周同士を連結する杭せん断補強筋とからなる筒籠状の杭鉄筋を配筋した後に、コンクリートを打設して場所打ちコンクリート杭を構築する際に、上記拡幅部の側壁にグラウトを注入するためのグラウト注入機構であって、上記杭鉄筋の中心部に上下方向に移動自在または軸線廻りに回転自在に垂設されて当該掘削孔の上方から上下移動または回転操作可能な操作軸と、上記杭鉄筋の周方向に間隔をおいて配置され、基端部が上記操作軸または上記杭主筋に揺動自在に連結され、先端部が上記杭鉄筋を上記掘削孔に挿入する際に上記掘削孔内に位置するとともに、上記杭鉄筋の配筋後に上記操作軸を上下移動または回転させることにより上記杭主筋よりも外周方向に延出して拡幅部の側壁と対向する複数本のスポーク材と、上記掘削孔内に垂下されて上端部からグラウトが供給される可撓性を有するグラウト管と、このグラウト管の上記拡幅部に臨む位置に設けられたグラウト噴出口の保護材とを備えてなり、上記保護材に上記スポーク材の上記先端部が連結されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記スポーク材が、平面視において上記先端部が上記杭鉄筋側から上記掘削孔の側壁側に向けて直線的に延出するように設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、請求項3に記載の本発明に係る場所打ちコンクリート杭におけるグラウト工法は、深さ方向の少なくとも一部分に内径が他の部分より大きい拡幅部が形成された掘削孔を掘削し、当該掘削孔内に、上記杭鉄筋および請求項1または2に記載のグラウト注入機構を、上記スポーク材の先端部を上記杭鉄筋側に位置させた状態で建て込み、次いで上記操作軸を、上下移動または回転させて上記スポーク材の先端部を上記拡幅部の側壁に臨む位置に延出させた後に、上記掘削孔内にコンクリートを打設し、当該コンクリートが硬化した後に上記グラウト管にグラウト材を加圧注入することにより、上記グラウト噴出口から上記グラウト材を地盤中に噴出させることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、上記拡幅部が、上記掘削孔の底部に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1または2に記載の発明およびこれを用いた請求項3または4に記載の発明においては、杭鉄筋を掘削孔に挿入する際に先端部が掘削孔内に位置するとともに、上記杭鉄筋の配筋後に操作軸を上下移動または回転させることにより上記先端部が杭主筋よりも外周方向に延出して拡幅部の側壁と対向する複数本のスポーク材を、上記杭鉄筋の周方向に間隔をおいて配置し、上記掘削孔内に垂下した可撓性を有するグラウト管のグラウト噴出口の保護材に、上記スポーク材の上記先端部を連結したグラウト注入機構を用いている。
【0017】
このため、掘削孔に杭鉄筋および上記グラウト注入機構を建て込む際に、先ずグラウト管の保護材と連結されたスポーク材の先端部を、杭鉄筋側に位置させておくことにより、上記保護材やスポーク材の先端部が掘削孔の側壁と干渉することを防止することができる。
【0018】
そして、上記掘削孔内にコンクリートを打設する前に、上記操作軸を上下移動またはその軸心周りに回転させることにより、杭鉄筋側にあるスポーク材の先端部を拡幅部側に延出させて、上記グラウト噴出口を上記拡幅部の側壁に臨む位置に配置させることができる。この結果、上記掘削孔内に打設したコンクリートが硬化した後に上記グラウト管にグラウト材を加圧注入すると、グラウト噴出口から噴出したグラウト材が、コンクリートに亀裂を生じさせながら拡幅部周囲の地盤中に噴出し、時間の経過に伴って上記地盤とスライムを硬化させて行く。
【0019】
したがって、上記グラウト注入機構およびこれを用いたグラウト工法によれば、拡幅部が形成された掘削孔に場所打ちコンクリート杭を構築する際に、上記拡幅部の周辺地盤についてもグラウト材を充填することができ、よって容易かつ確実に当該コンクリート杭の支持力や沈下剛性を大幅に増加させることができる。
【0020】
しかも、杭鉄筋およびグラウト注入機構を建て込んだ後に、操作軸を上下動または回転させるといった簡易な操作によって、同時に複数のスポーク材の先端部を拡幅部側に延出させて、当該先端部に連結されているグラウト噴出口を拡幅部内の所定位置に配置させることができる。また、従来のように、掘削孔の上方からグラウト管自体を回転操作することがないために、上記グラウト管として、グラウト材の加圧注入に耐えうる限りにおいて、極力軽量なものを用いることも可能になる。このため、当該作業に要する手間や時間も大幅に減じることができる。
【0021】
この際に、請求項2に記載の発明のように、スポーク材を、その先端部が杭鉄筋側から掘削孔の側壁側に向けて、平面視において直線的に延出するように設ければ、予めスポーク材の先端部に、グラウト管の保護材をグラウト噴出口が掘削孔の側壁に向くようにして接続することにより、グラウト材の注入時に、確実にグラウト噴出口を掘削孔の側壁に対向させて配置することが可能になる。
【0022】
なお、請求項1〜3のいずれかに記載の発明は、掘削孔の深さ方向の如何なる位置に拡幅部が形成されていても適用することができるが、特に請求項4に記載の発明のように、上記拡幅部が掘削孔の底部に形成されている、いわゆる拡底部を有するコンクリート杭におけるグラウト工法に適用した場合には、上記掘削孔の深度が大きい場合においても、掘削孔の上方からグラウト注入機構を操作して、容易かつ確実にコンクリート杭の拡径された底部から上記グラウト材を噴出させて周囲の地盤を硬化させることが可能になるために、顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態において掘削孔内にグラウト注入機構を挿入した状態を示す縦断面図である。
【図2】(a)は、図1の要部の拡大図、(b)は(a)のA部の拡大図である。
【図3】図1のグラウト注入機構の操作軸を操作する際の状態を示す平面図である。
【図4】図1のグラウト注入機構の操作軸を操作した後のグラウト注入時の状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態において掘削孔内にグラウト注入機構を挿入した状態を示す縦断面図である。
【図6】図5の要部の拡大図である。
【図7】図5のグラウト注入機構の操作軸を操作する際の状態を示す平面図である。
【図8】図5のグラウト注入機構の操作軸を操作した後のグラウト注入時の状態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態において掘削孔内にグラウト注入機構を挿入した状態を示す縦断面図である。
【図10】図9の要部の拡大図である。
【図11】本発明の第4の実施形態を示す縦断面図である。
【図12】図11のグラウト注入機構の操作軸を操作する際の状態を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB部拡大図である。
【図13】(a)は、図12(a)の正面図であり、(b)は(a)のC部拡大図である。
【図14】従来のグラウト注入管を示す縦断面図である。
【図15】(a)は、図14のグラウト管を回動させた状態を示す平面図、(b)は縦断面図である。
【図16】拡幅部を有する掘削孔に場所打ちコンクリート杭を構築する際に、従来のグラウト工法を適用した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
図1〜図4は、本発明に係わるグラウト注入機構の第1実施形態を示すものであり、このグラウト注入機構は、操作軸10と、スポーク材11と、グラウト管12とから概略構成されたもので、杭主筋13aと帯筋(杭せん断補強筋)13bとからなる筒籠状の杭鉄筋13に組み付けられて、コンクリート杭を構築すべく掘削された掘削孔14内に一体的に建て込まれるものである。ここで、上記グラウト注入機構が用いられる掘削孔14は、その下端部に、底部14aに向けて漸次内径が大径となる拡底部(拡幅部)14bが形成されている。
【0025】
グラウト注入機構の操作軸10は、掘削孔14の拡底部14bまで到達する長さ寸法に形成された鋼棒で、杭鉄筋13における帯筋13bの中心部に配置されるとともに、掘削孔14の上方からその軸線廻りに回転自在に設けられている。そして、この操作軸10の下部外周であって、拡底部14bに臨む位置に、複数本の操作杆15が一体的に接合されている。
【0026】
これら操作杆15は、図1に示すように、操作軸10の高さ方向の複数箇所(図では3箇所)に、当該操作軸10から放射状に突出するように、その基端部が剛接合されている。また、操作杆15は、操作軸10の各々の高さ位置において、周方向に等間隔をおいて複数本(図では、各8本)設けられている。そして、各々の操作杆15の先端部に、上記スポーク材11が揺動自在に連結されている。
【0027】
これらスポーク材11は、基端部が操作杆15の先端部にピン16によって揺動自在に連結されるとともに、先端部11aが杭鉄筋13の帯筋13b上に載置されている。
また、この杭鉄筋13には、杭主筋13aに沿ってスポーク材11の本数に対応した複数本(図では8本)のグラウト管12が添設されている。このグラウト管12は、可撓性を有する樹脂素材からなるもので、各々スポーク材11の先端位置に配置されている。
【0028】
さらに、各グラウト管12の上記スポーク材11の先端位置には、図2に示すように、グラウト材の噴出口17が穿設されるとともに、この噴出口17を覆うように保護材18が設けられている。なお、この保護材18としては、噴出口17から高圧のグラウト材が噴出する際に、その圧力により開口して当該グラウト材を周囲のコンクリートに噴出させるように、複数の切り込みが形成された不連続な円筒材等が用いられている。
【0029】
そして、この保護材18の外周であって、噴射口17の穿孔位置の反対側に、スポーク材11の先端11aが連結されている。ここで、スポーク材11は、杭鉄筋13を掘削孔14内に挿入する際の図3に示す収納位置において、先端11aが帯筋13b上に位置して、グラウト管12および保護材18が上記掘削孔14内に位置するとともに、図3および図4に示すように、操作軸10を反時計回り方向に回転させた際に、上記先端11aが拡底部14bの側壁側に延出して、グラウト管12および保護材18が当該側壁に臨む位置に配置されるような長さ寸法に設定されている。また、グラウト管12は、スポーク材11の上記収納位置において、上下間に所定の余剰長さとなる撓みが形成されるように、保護材18がスポーク材11の先端11aに連結されている。
【0030】
次に、上記構成からなるグラウト注入機構を用いた本発明に係るグラウト工法の実施形態について説明する。
先ず、上記掘削孔14を掘削し、この掘削孔14内に、杭鉄筋13およびこの杭鉄筋13に組み付けた上記グラウト注入機構を建て込む。この際に、操作軸10を、図3中最も時計回り方向に回転させた収納位置に保持することにより、スポーク材11の先端11aおよびグラウト管12等を、掘削孔13の側壁と干渉しない杭鉄筋13側に位置させた状態で建て込む。
【0031】
次いで、杭鉄筋13およびグラウト注入機構の建て込みが完了した後に、操作軸10を、図3中反時計回り方向に回転させる。すると、スポーク材11は、操作軸10と一体に回転する操作杆15に押し出されるとともに、帯筋13bと操作軸10の回転方向に隣接する杭主筋13aとの交差部において、それ以上の回転が阻止されて案内されつつ、その先端11aおよびグラウト管12が拡底部14bの側壁に向けて延出する。そして、グラウト管12に穿設した噴出口17が、拡底部14bの側壁と対向する位置に配置される。
【0032】
次に、掘削孔14内にコンクリートを打設して、このコンクリートが硬化する直前に、グラウト管12から水圧をかけてコンクリート中に流路を形成する。そして、上記コンクリートが硬化した後に、グラウト管12にグラウト材を加圧注入する。すると、各々のグラウト管12の噴出口17から噴出したグラウト材は、上記流路に流入するとともにコンクリートに亀裂を生じさせながら掘削孔14の底部14aおよび拡底部14bの周囲の地盤中に噴出し、時間の経過に伴って当該地盤とスライムを硬化させて行く。
【0033】
(第2の実施形態)
図5〜図8は、本発明に係るグラウト注入機構の第2の実施形態を示すもので、図1〜図4に示したものと同一構成部分および対応する構成部分については、同一符号を付してある。
このグラウト注入機構においては、操作軸10が杭鉄筋13の中心部において上下方向に移動自在に設けられている。そして、この操作軸10の下部外周であって、拡底部14bに臨む位置に、複数本のスポーク材11が揺動自在に連結されている。
【0034】
これらスポーク材11は、図5に示すように、操作軸10の高さ方向の複数箇所(図では3箇所)において、当該操作軸10から放射状に突出するように、その基端部がピン16を介して揺動自在に連結されている。また、スポーク材11は、操作軸10の各々の高さ位置において、周方向に等間隔をおいて複数本(図では、各8本)設けられている。そして、各々のスポーク材11は、先端部11aが杭鉄筋13の帯筋13b上に載置されている。
【0035】
そして、杭鉄筋13には、同様に杭主筋13aに沿ってスポーク材11の本数に対応した複数本(図では8本)のグラウト管12が添設されるとともに、当該グラウト管12の噴射口17を覆う保護材18の外周であって、噴射口17の穿孔位置の反対側に、スポーク材11の先端11aが連結されている。
【0036】
上記構成からなるグラウト注入機構を用いた本発明に係るグラウト工法の実施形態について説明すると、同様に掘削孔14を掘削した後に、この掘削孔14内に、杭鉄筋13およびこの杭鉄筋13に組み付けた上記グラウト注入機構を建て込む。この際に、操作軸10を、図5および図7に示す最も上方の収納位置に保持することにより、スポーク材11の先端11aおよびグラウト管12等を、掘削孔13の側壁と干渉しない杭鉄筋13側に位置させた状態で建て込む。
【0037】
次いで、杭鉄筋13およびグラウト注入機構の建て込みが完了した後に、図7および図9に示すように、掘削孔14の上方から掘削孔14内に押し込むようにして、操作軸10を下方に移動させる。すると、スポーク材11は、先端11aが帯筋13b上にあって、下方への移動が阻止されているために、当該帯筋13b上を滑りつつ、その先端11aおよびグラウト管12が拡底部14bの側壁に向けて延出する。そして、グラウト管12に穿設した噴出口17が、拡底部14bの側壁と対向する位置に配置される。
【0038】
そして、第1の実施形態と同様にして、掘削孔14内にコンクリートを打設し、硬化前に水圧をかけて流路を形成し、次いで上記コンクリートが硬化した後に、グラウト管12にグラウト材を加圧注入することにより、各々のグラウト管12の噴出口17から噴出したグラウト材を掘削孔14の底部14aおよび拡底部14bの周囲の地盤中に噴出させることができる。
【0039】
(第3の実施形態)
図9および図10は、上記第2の実施形態の変形例である本発明に係るグラウト注入機構の第3の実施形態を示すものである。
このグラウト注入機構においては、図9に示すスポーク材11の収納位置において、上下方向に移動自在に設けられた操作軸10が最も下方位置となっている。そして、スポーク材11の先端11aが、帯筋13bの下側に位置するように配置されている。
【0040】
上記構成からなるグラウト注入機構を用いたグラウト工法においては、スポーク材11等を、図9に示す収納位置に保持しつつ杭鉄筋13およびグラウト注入機構の建て込みを行った後に、同図および図10に矢印で示すように、掘削孔14の上方から操作軸10を吊り上げるようにして上方に移動させる。すると、スポーク材11は、先端11aが帯筋13bの下側にあって、上方への移動が阻止されているために、当該帯筋13bの下面を滑りつつ、その先端11aおよびグラウト管12が拡底部14bの側壁に向けて延出する。この結果、第2の実施形態と同様に、図8に示すように、グラウト管12に穿設した噴出口17が、拡底部14bの側壁と対向する位置に配置される。
【0041】
(第4の実施形態)
図11〜図13は、本発明に係るグラウト注入機構の第4の実施形態を示すものである。
このグラウト注入機構においては、掘削孔14の拡底部14b内に位置する複数本(図ではその内の1本のみを示す)の帯筋13bに、スポーク材11の基端部が回動自在に連結されている。ここで、スポーク材11は、先端11aが基端部の上方位置から、掘削孔14の径方向外方に向けて拡底部14bの側壁に臨む位置まで揺動するように連結されている。
【0042】
また、スポーク材11と、当該スポーク材11の上部と対向する杭主筋13aとが、揺動制御リンク20によって連結されている。この揺動制御リンク20は、ピン21によって先端部同士が開閉自在に設けられた一対のリンク杆22a、22bからなるもので、一方のリンク杆22aの先端部がピン23aを介してスポーク材11に摺動自在に設けられたスリーブ29aに連結されるとともに、他方のリンク杆22bの先端部がピン23bを介して杭主筋13aに固定されたスリーブ29bに連結されている。
【0043】
ここで、リンク杆22a、22bは、スポーク材11が揺動して水平になった際に、直線状となって当該スポーク材11を上記水平位置に保持する長さ寸法に形成されている。さらに、これらリンク杆22a、22bの連結部には、両者を開方向に弾性力を付与するスプリング24が介装されている。
【0044】
そして、上記実施形態と同様に、スポーク材11の先端11aに、グラウト管12の噴出口17を覆う保護材18が連結されている。ここで、本実施形態においても、スポーク材11の先端11aは、保護材18の外周であって、噴射口17の穿孔位置の反対側に連結されている。
【0045】
他方、杭鉄筋13の中心部には、第1の実施形態と同様に、操作軸10がその軸線周りに回転自在に設けられている。そして、この操作軸10の外周には、複数本(図では6本)の操作杆25が円周方向に等間隔をおいて、操作軸10の径方向に向けて放射状に延出するように固定されている。これら操作杆25は、スポーク材11の上部と同じ高さ位置に水平に設けられており、各々の先端部には、係合片26の基端部がピン27を介して回転自在に設けられている。
【0046】
各係合片26は、先端部にU字状の溝部26aが形成された板状部材で、当該溝部26a内にスポーク材11の上部が挿入されている。また、各係合片26と操作杆25との間には、操作杆25に対して、係合片26を、その溝部26a内に挿入されたスポーク材11を保持する方向(図12(b)において、ピン27を中心に反時計回り方向)に弾性力を付与するスプリング28が介装されている。なお、図中符号30は、スポーク材11の水平方向に移動を阻止するストッパである。
【0047】
次に、上記構成からなる第4の実施形態のグラウト注入機構を用いた本発明に係るグラウト工法の実施形態について説明する。
このグラウト工法においては、掘削孔14を掘削した後に、この掘削孔14内に、杭鉄筋13およびこの杭鉄筋13に組み付けた上記グラウト注入機構を建て込む。この際に、操作軸10を、スポーク材11を立ててその先端11aを杭主筋13a側に位置させるとともに、係合片26の溝部26a内に挿入した収納位置に保持した状態にすることにより、スポーク材11の先端11aおよびグラウト管12等を、掘削孔13の側壁と干渉しない状態で建て込む。
【0048】
次いで、上記杭鉄筋13およびグラウト注入機構の建て込みが完了した後に、掘削孔14の上方から操作軸10を操作して、当該操作軸10および操作杆25を図12(a)に矢印で示す時計回り方向に回転させる。すると、操作杆25の回転に伴って係合片26も回転するが、当該係合片26の溝部26a内に挿入されているスポーク材11は、ストッパ30によって水平方向の移動が阻止されているために、係合片26がスプリング28の弾性力に抗して回転することにより、その溝部26a内からスポーク材11が離脱する。
【0049】
これにより、スポーク材11に対する係合が解けるために、揺動制御リンク20におけるスプリング24の弾性力によって、リンク杆22a、22bが開き、スポーク材11が水平まで揺動してその先端11aが拡底部14b側に延出する。そして、グラウト管12に穿設した噴出口17が、拡底部14bの側壁と対向する位置に配置される。
【0050】
そして、第1〜第3の実施形態と同様にして、掘削孔14内にコンクリートを打設し、このコンクリートが硬化した後に、グラウト管12にグラウト材を加圧注入することにより、各々のグラウト管12の噴出口17から噴出したグラウト材を掘削孔14の底部14aおよび拡底部14bの周囲の地盤中に噴出させることができる。
【0051】
以上のように、上記第1〜第4の実施形態に示したグラウト注入機構およびこれらを用いたグラウト工法によれば、杭鉄筋13を掘削孔14に挿入する際に先端11aおよびこれに連結されたグラウト管12が掘削孔14内に位置するとともに、杭鉄筋13の配筋後に操作軸10を上下移動または回転させることにより先端11aが外周方向に延出して拡幅部14bの側壁と対向する複数本のスポーク材11を、杭鉄筋13の周方向に間隔をおいて配置し、掘削孔14内に垂下した可撓性を有するグラウト管12のグラウト噴出口17の保護材18に、スポーク材11の先端11aを連結している。
【0052】
このため、掘削孔14に杭鉄筋13および上記グラウト注入機構を建て込む際に、先ずグラウト管12の保護材18と連結されたスポーク材11の先端11aを杭鉄筋13側に位置させておくことにより、これら保護材18やスポーク材11の先端11aが掘削孔14の側壁と干渉することを防止することができる。
【0053】
そして、掘削孔14内にコンクリートを打設する前に、操作軸10を上下移動またはその軸心周りに回転させることにより、スポーク材11の先端11aを拡幅部14b側に延出させて、グラウト噴出口17を拡幅部14bの側壁に臨む位置に配置させることができる。この結果、掘削孔14内に打設したコンクリートが硬化した後にグラウト管12にグラウト材を加圧注入すると、グラウト噴出口17から噴出したグラウト材が、コンクリートに亀裂を生じさせながら拡幅部14b周囲の地盤中に噴出し、時間の経過に伴って上記地盤とスライムを硬化させて行く。
【0054】
したがって、上記グラウト注入機構およびこれを用いたグラウト工法によれば、拡幅部14bが形成された掘削孔14に場所打ちコンクリート杭を構築する際に、拡幅部14の周辺地盤についてもグラウト材を充填することができ、よって容易かつ確実に当該コンクリート杭の支持力や沈下剛性を大幅に増加させることができる。
【0055】
しかも、杭鉄筋13およびグラウト注入機構を建て込んだ後に、操作軸10を上下動または回転させるといった簡易な操作によって、同時に複数のスポーク材11の先端11aを拡幅部14b側に延出させて、グラウト噴出口17を拡幅部14b内の所定位置に配置させることができる。また、グラウト管12として、グラウト材の加圧注入に耐えうる限りにおいて、極力軽量なものを用いることも可能になる。このため、当該作業に要する手間や時間も大幅に低減させることができる。
【0056】
加えて、スポーク材11を、掘削孔14の上方から見た平面視において、その先端11aが杭鉄筋13側から拡底部14bの側壁側に向けて直線的に延出するように、揺動自在に設けているために、予めスポーク材11の先端11aに、グラウト管12の保護材18を噴出口17が掘削孔14の側壁に向くようにして接続することにより、グラウト材の注入時に、確実にグラウト噴出口17を拡底部14bの側壁に対向させて配置することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 操作軸
11 スポーク材
11a 先端
12 グラウト管
13 杭鉄筋
13a 杭主筋
13b 帯筋(杭せん断補強筋)
14 掘削孔
14a 底部
14b 拡底部(拡幅部)
17 グラウト材の噴出口
18 保護材
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡幅部を有する掘削孔に場所打ちコンクリート杭を構築する際に、その支持力等を増大させるために用いられるグラウト注入機構およびこれを用いたグラウト工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
場所打ちコンクリート杭の施工方法として、図16に示すように、掘削孔1の底部1aの近傍部分に拡幅部2を形成することにより、コンクリート杭3の下端部分3aにおける地盤との接触面積を増大させてコンクリート杭3から地盤へ伝える力を大きくして、一層支持力や沈下剛性を増加させるものがある。
【0003】
一方、下記特許文献1に見られるように、場所打ちコンクリート杭を施工する際に、予めコンクリート杭に埋設しておいたグラウト管から底部にグラウト材を噴出させ、杭底部の地盤および残存スライムを硬化させることにより、当該コンクリート杭の支持力と沈下剛性を増加させるグラウト工法が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に見られるグラウト工法を、上記拡幅部2を形成する場所打ちコンクリート杭の施工方法に対して用いようとすると、図16に示すように、底部1aに拡幅部2を有する掘削孔1を掘削し、次いで2本の平行な注入管部4とこれらの下端連結部に設けられた噴出管部5とからなるグラウト管を杭鉄筋6に組み付けて掘削孔1内に建て込んだ後に、掘削孔1内にコンクリートを打設して、このコンクリートが硬化する直前にグラウト管から水圧をかけてコンクリート中に流路を形成し、上記コンクリートが硬化した後に、注入管部4からグラウト材を加圧注入して噴出管部5の噴出口からコンクリート杭3の先端部に噴出させることになる。
【0005】
この結果、噴出管部5の直下に位置するコンクリート杭3の底部の地盤7aおよび残存スライムを硬化させることはできるものの、図中点線で示す拡幅部2の外周を覆う地盤7bに上記グラウト材を充填することが難しく、よって所望の上記効果を得ることができないという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明者等は、先に下記特許文献2において、図14および図15に示すように、深さ方向の一部分に内径が他の部分より大きい拡幅部2が形成された掘削孔1内に、コンクリートを打設して場所打ちコンクリート杭3を構築する際に用いられるグラウト管8であって、少なくとも拡幅部2まで到達する長さ寸法を有し、かつ拡幅部2に臨む位置に、その軸心から離間する方向に屈曲されてなる偏心管部8aを有するとともに、偏心管部8aにグラウト材の噴出口を有する拡幅部用グラウト噴出管部9を設けた場所打ちコンクリート杭におけるグラウト管を提案した。
【0007】
上記グラウト管を用いたグラウト工法によれば、図14に示すように、上記偏心管部8aを杭鉄筋6側に位置させてグラウト噴出管部9を杭鉄筋6内に位置させた状態で建て込むことにより、偏心管部8aが掘削孔1と干渉することがなく、しかも掘削孔1内にコンクリートを打設する前に、図15に示すように、グラウト管8をその軸心周りに回動させて偏心位置にある拡幅部2用のグラウト噴出管部9を拡幅部2内に位置させ、掘削孔1内に打設したコンクリートが硬化した後にグラウト管8にグラウト材を加圧注入することにより、拡幅部2の周辺地盤についてもグラウト材を充填することができ、よって容易かつ確実に当該コンクリート杭の支持力や沈下剛性を大幅に増加させることができるという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平8−33007号公報
【特許文献2】特開2006−307593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記グラウト工法にあっては、複数本のグラウト管8を、各々その軸心周りに回動させて、偏心位置にある拡幅部2用のグラウト噴出管部9を拡幅部2内に位置させているために、全てのグラウト管8のグラウト噴出管部9を配置するために、多くの手間と時間を要するという欠点があった。
【0010】
また、グラウト管8自体を回動させている結果、操作に耐え得る所望の強度を得るために当該グラウト管8を金属製にする必要があり、特に掘削孔の深度が大きくなると、その重量が嵩んで操作が難しくなる等の問題点もあり、その改善が望まれていた。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、グラウト噴出口が掘削孔と干渉することなく杭鉄筋と一体に建て込むことができ、しかも建て込み後に簡易な操作によって当該グラウト噴出口を拡幅部内に位置させることができて作業に要する手間を大幅に低減することが可能になる場所打ちコンクリート杭におけるグラウト注入機構およびグラウト工法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、深さ方向の少なくとも一部分に内径が他の部分より大きい拡幅部が形成された掘削孔内に、当該掘削孔の側壁に沿って鉛直方向に配置される複数本の杭主筋と、これら杭主筋の鉛直方向に間隔をおいて水平に配置されるとともに上記杭主筋の外周同士を連結する杭せん断補強筋とからなる筒籠状の杭鉄筋を配筋した後に、コンクリートを打設して場所打ちコンクリート杭を構築する際に、上記拡幅部の側壁にグラウトを注入するためのグラウト注入機構であって、上記杭鉄筋の中心部に上下方向に移動自在または軸線廻りに回転自在に垂設されて当該掘削孔の上方から上下移動または回転操作可能な操作軸と、上記杭鉄筋の周方向に間隔をおいて配置され、基端部が上記操作軸または上記杭主筋に揺動自在に連結され、先端部が上記杭鉄筋を上記掘削孔に挿入する際に上記掘削孔内に位置するとともに、上記杭鉄筋の配筋後に上記操作軸を上下移動または回転させることにより上記杭主筋よりも外周方向に延出して拡幅部の側壁と対向する複数本のスポーク材と、上記掘削孔内に垂下されて上端部からグラウトが供給される可撓性を有するグラウト管と、このグラウト管の上記拡幅部に臨む位置に設けられたグラウト噴出口の保護材とを備えてなり、上記保護材に上記スポーク材の上記先端部が連結されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記スポーク材が、平面視において上記先端部が上記杭鉄筋側から上記掘削孔の側壁側に向けて直線的に延出するように設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、請求項3に記載の本発明に係る場所打ちコンクリート杭におけるグラウト工法は、深さ方向の少なくとも一部分に内径が他の部分より大きい拡幅部が形成された掘削孔を掘削し、当該掘削孔内に、上記杭鉄筋および請求項1または2に記載のグラウト注入機構を、上記スポーク材の先端部を上記杭鉄筋側に位置させた状態で建て込み、次いで上記操作軸を、上下移動または回転させて上記スポーク材の先端部を上記拡幅部の側壁に臨む位置に延出させた後に、上記掘削孔内にコンクリートを打設し、当該コンクリートが硬化した後に上記グラウト管にグラウト材を加圧注入することにより、上記グラウト噴出口から上記グラウト材を地盤中に噴出させることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、上記拡幅部が、上記掘削孔の底部に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1または2に記載の発明およびこれを用いた請求項3または4に記載の発明においては、杭鉄筋を掘削孔に挿入する際に先端部が掘削孔内に位置するとともに、上記杭鉄筋の配筋後に操作軸を上下移動または回転させることにより上記先端部が杭主筋よりも外周方向に延出して拡幅部の側壁と対向する複数本のスポーク材を、上記杭鉄筋の周方向に間隔をおいて配置し、上記掘削孔内に垂下した可撓性を有するグラウト管のグラウト噴出口の保護材に、上記スポーク材の上記先端部を連結したグラウト注入機構を用いている。
【0017】
このため、掘削孔に杭鉄筋および上記グラウト注入機構を建て込む際に、先ずグラウト管の保護材と連結されたスポーク材の先端部を、杭鉄筋側に位置させておくことにより、上記保護材やスポーク材の先端部が掘削孔の側壁と干渉することを防止することができる。
【0018】
そして、上記掘削孔内にコンクリートを打設する前に、上記操作軸を上下移動またはその軸心周りに回転させることにより、杭鉄筋側にあるスポーク材の先端部を拡幅部側に延出させて、上記グラウト噴出口を上記拡幅部の側壁に臨む位置に配置させることができる。この結果、上記掘削孔内に打設したコンクリートが硬化した後に上記グラウト管にグラウト材を加圧注入すると、グラウト噴出口から噴出したグラウト材が、コンクリートに亀裂を生じさせながら拡幅部周囲の地盤中に噴出し、時間の経過に伴って上記地盤とスライムを硬化させて行く。
【0019】
したがって、上記グラウト注入機構およびこれを用いたグラウト工法によれば、拡幅部が形成された掘削孔に場所打ちコンクリート杭を構築する際に、上記拡幅部の周辺地盤についてもグラウト材を充填することができ、よって容易かつ確実に当該コンクリート杭の支持力や沈下剛性を大幅に増加させることができる。
【0020】
しかも、杭鉄筋およびグラウト注入機構を建て込んだ後に、操作軸を上下動または回転させるといった簡易な操作によって、同時に複数のスポーク材の先端部を拡幅部側に延出させて、当該先端部に連結されているグラウト噴出口を拡幅部内の所定位置に配置させることができる。また、従来のように、掘削孔の上方からグラウト管自体を回転操作することがないために、上記グラウト管として、グラウト材の加圧注入に耐えうる限りにおいて、極力軽量なものを用いることも可能になる。このため、当該作業に要する手間や時間も大幅に減じることができる。
【0021】
この際に、請求項2に記載の発明のように、スポーク材を、その先端部が杭鉄筋側から掘削孔の側壁側に向けて、平面視において直線的に延出するように設ければ、予めスポーク材の先端部に、グラウト管の保護材をグラウト噴出口が掘削孔の側壁に向くようにして接続することにより、グラウト材の注入時に、確実にグラウト噴出口を掘削孔の側壁に対向させて配置することが可能になる。
【0022】
なお、請求項1〜3のいずれかに記載の発明は、掘削孔の深さ方向の如何なる位置に拡幅部が形成されていても適用することができるが、特に請求項4に記載の発明のように、上記拡幅部が掘削孔の底部に形成されている、いわゆる拡底部を有するコンクリート杭におけるグラウト工法に適用した場合には、上記掘削孔の深度が大きい場合においても、掘削孔の上方からグラウト注入機構を操作して、容易かつ確実にコンクリート杭の拡径された底部から上記グラウト材を噴出させて周囲の地盤を硬化させることが可能になるために、顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態において掘削孔内にグラウト注入機構を挿入した状態を示す縦断面図である。
【図2】(a)は、図1の要部の拡大図、(b)は(a)のA部の拡大図である。
【図3】図1のグラウト注入機構の操作軸を操作する際の状態を示す平面図である。
【図4】図1のグラウト注入機構の操作軸を操作した後のグラウト注入時の状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態において掘削孔内にグラウト注入機構を挿入した状態を示す縦断面図である。
【図6】図5の要部の拡大図である。
【図7】図5のグラウト注入機構の操作軸を操作する際の状態を示す平面図である。
【図8】図5のグラウト注入機構の操作軸を操作した後のグラウト注入時の状態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態において掘削孔内にグラウト注入機構を挿入した状態を示す縦断面図である。
【図10】図9の要部の拡大図である。
【図11】本発明の第4の実施形態を示す縦断面図である。
【図12】図11のグラウト注入機構の操作軸を操作する際の状態を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB部拡大図である。
【図13】(a)は、図12(a)の正面図であり、(b)は(a)のC部拡大図である。
【図14】従来のグラウト注入管を示す縦断面図である。
【図15】(a)は、図14のグラウト管を回動させた状態を示す平面図、(b)は縦断面図である。
【図16】拡幅部を有する掘削孔に場所打ちコンクリート杭を構築する際に、従来のグラウト工法を適用した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
図1〜図4は、本発明に係わるグラウト注入機構の第1実施形態を示すものであり、このグラウト注入機構は、操作軸10と、スポーク材11と、グラウト管12とから概略構成されたもので、杭主筋13aと帯筋(杭せん断補強筋)13bとからなる筒籠状の杭鉄筋13に組み付けられて、コンクリート杭を構築すべく掘削された掘削孔14内に一体的に建て込まれるものである。ここで、上記グラウト注入機構が用いられる掘削孔14は、その下端部に、底部14aに向けて漸次内径が大径となる拡底部(拡幅部)14bが形成されている。
【0025】
グラウト注入機構の操作軸10は、掘削孔14の拡底部14bまで到達する長さ寸法に形成された鋼棒で、杭鉄筋13における帯筋13bの中心部に配置されるとともに、掘削孔14の上方からその軸線廻りに回転自在に設けられている。そして、この操作軸10の下部外周であって、拡底部14bに臨む位置に、複数本の操作杆15が一体的に接合されている。
【0026】
これら操作杆15は、図1に示すように、操作軸10の高さ方向の複数箇所(図では3箇所)に、当該操作軸10から放射状に突出するように、その基端部が剛接合されている。また、操作杆15は、操作軸10の各々の高さ位置において、周方向に等間隔をおいて複数本(図では、各8本)設けられている。そして、各々の操作杆15の先端部に、上記スポーク材11が揺動自在に連結されている。
【0027】
これらスポーク材11は、基端部が操作杆15の先端部にピン16によって揺動自在に連結されるとともに、先端部11aが杭鉄筋13の帯筋13b上に載置されている。
また、この杭鉄筋13には、杭主筋13aに沿ってスポーク材11の本数に対応した複数本(図では8本)のグラウト管12が添設されている。このグラウト管12は、可撓性を有する樹脂素材からなるもので、各々スポーク材11の先端位置に配置されている。
【0028】
さらに、各グラウト管12の上記スポーク材11の先端位置には、図2に示すように、グラウト材の噴出口17が穿設されるとともに、この噴出口17を覆うように保護材18が設けられている。なお、この保護材18としては、噴出口17から高圧のグラウト材が噴出する際に、その圧力により開口して当該グラウト材を周囲のコンクリートに噴出させるように、複数の切り込みが形成された不連続な円筒材等が用いられている。
【0029】
そして、この保護材18の外周であって、噴射口17の穿孔位置の反対側に、スポーク材11の先端11aが連結されている。ここで、スポーク材11は、杭鉄筋13を掘削孔14内に挿入する際の図3に示す収納位置において、先端11aが帯筋13b上に位置して、グラウト管12および保護材18が上記掘削孔14内に位置するとともに、図3および図4に示すように、操作軸10を反時計回り方向に回転させた際に、上記先端11aが拡底部14bの側壁側に延出して、グラウト管12および保護材18が当該側壁に臨む位置に配置されるような長さ寸法に設定されている。また、グラウト管12は、スポーク材11の上記収納位置において、上下間に所定の余剰長さとなる撓みが形成されるように、保護材18がスポーク材11の先端11aに連結されている。
【0030】
次に、上記構成からなるグラウト注入機構を用いた本発明に係るグラウト工法の実施形態について説明する。
先ず、上記掘削孔14を掘削し、この掘削孔14内に、杭鉄筋13およびこの杭鉄筋13に組み付けた上記グラウト注入機構を建て込む。この際に、操作軸10を、図3中最も時計回り方向に回転させた収納位置に保持することにより、スポーク材11の先端11aおよびグラウト管12等を、掘削孔13の側壁と干渉しない杭鉄筋13側に位置させた状態で建て込む。
【0031】
次いで、杭鉄筋13およびグラウト注入機構の建て込みが完了した後に、操作軸10を、図3中反時計回り方向に回転させる。すると、スポーク材11は、操作軸10と一体に回転する操作杆15に押し出されるとともに、帯筋13bと操作軸10の回転方向に隣接する杭主筋13aとの交差部において、それ以上の回転が阻止されて案内されつつ、その先端11aおよびグラウト管12が拡底部14bの側壁に向けて延出する。そして、グラウト管12に穿設した噴出口17が、拡底部14bの側壁と対向する位置に配置される。
【0032】
次に、掘削孔14内にコンクリートを打設して、このコンクリートが硬化する直前に、グラウト管12から水圧をかけてコンクリート中に流路を形成する。そして、上記コンクリートが硬化した後に、グラウト管12にグラウト材を加圧注入する。すると、各々のグラウト管12の噴出口17から噴出したグラウト材は、上記流路に流入するとともにコンクリートに亀裂を生じさせながら掘削孔14の底部14aおよび拡底部14bの周囲の地盤中に噴出し、時間の経過に伴って当該地盤とスライムを硬化させて行く。
【0033】
(第2の実施形態)
図5〜図8は、本発明に係るグラウト注入機構の第2の実施形態を示すもので、図1〜図4に示したものと同一構成部分および対応する構成部分については、同一符号を付してある。
このグラウト注入機構においては、操作軸10が杭鉄筋13の中心部において上下方向に移動自在に設けられている。そして、この操作軸10の下部外周であって、拡底部14bに臨む位置に、複数本のスポーク材11が揺動自在に連結されている。
【0034】
これらスポーク材11は、図5に示すように、操作軸10の高さ方向の複数箇所(図では3箇所)において、当該操作軸10から放射状に突出するように、その基端部がピン16を介して揺動自在に連結されている。また、スポーク材11は、操作軸10の各々の高さ位置において、周方向に等間隔をおいて複数本(図では、各8本)設けられている。そして、各々のスポーク材11は、先端部11aが杭鉄筋13の帯筋13b上に載置されている。
【0035】
そして、杭鉄筋13には、同様に杭主筋13aに沿ってスポーク材11の本数に対応した複数本(図では8本)のグラウト管12が添設されるとともに、当該グラウト管12の噴射口17を覆う保護材18の外周であって、噴射口17の穿孔位置の反対側に、スポーク材11の先端11aが連結されている。
【0036】
上記構成からなるグラウト注入機構を用いた本発明に係るグラウト工法の実施形態について説明すると、同様に掘削孔14を掘削した後に、この掘削孔14内に、杭鉄筋13およびこの杭鉄筋13に組み付けた上記グラウト注入機構を建て込む。この際に、操作軸10を、図5および図7に示す最も上方の収納位置に保持することにより、スポーク材11の先端11aおよびグラウト管12等を、掘削孔13の側壁と干渉しない杭鉄筋13側に位置させた状態で建て込む。
【0037】
次いで、杭鉄筋13およびグラウト注入機構の建て込みが完了した後に、図7および図9に示すように、掘削孔14の上方から掘削孔14内に押し込むようにして、操作軸10を下方に移動させる。すると、スポーク材11は、先端11aが帯筋13b上にあって、下方への移動が阻止されているために、当該帯筋13b上を滑りつつ、その先端11aおよびグラウト管12が拡底部14bの側壁に向けて延出する。そして、グラウト管12に穿設した噴出口17が、拡底部14bの側壁と対向する位置に配置される。
【0038】
そして、第1の実施形態と同様にして、掘削孔14内にコンクリートを打設し、硬化前に水圧をかけて流路を形成し、次いで上記コンクリートが硬化した後に、グラウト管12にグラウト材を加圧注入することにより、各々のグラウト管12の噴出口17から噴出したグラウト材を掘削孔14の底部14aおよび拡底部14bの周囲の地盤中に噴出させることができる。
【0039】
(第3の実施形態)
図9および図10は、上記第2の実施形態の変形例である本発明に係るグラウト注入機構の第3の実施形態を示すものである。
このグラウト注入機構においては、図9に示すスポーク材11の収納位置において、上下方向に移動自在に設けられた操作軸10が最も下方位置となっている。そして、スポーク材11の先端11aが、帯筋13bの下側に位置するように配置されている。
【0040】
上記構成からなるグラウト注入機構を用いたグラウト工法においては、スポーク材11等を、図9に示す収納位置に保持しつつ杭鉄筋13およびグラウト注入機構の建て込みを行った後に、同図および図10に矢印で示すように、掘削孔14の上方から操作軸10を吊り上げるようにして上方に移動させる。すると、スポーク材11は、先端11aが帯筋13bの下側にあって、上方への移動が阻止されているために、当該帯筋13bの下面を滑りつつ、その先端11aおよびグラウト管12が拡底部14bの側壁に向けて延出する。この結果、第2の実施形態と同様に、図8に示すように、グラウト管12に穿設した噴出口17が、拡底部14bの側壁と対向する位置に配置される。
【0041】
(第4の実施形態)
図11〜図13は、本発明に係るグラウト注入機構の第4の実施形態を示すものである。
このグラウト注入機構においては、掘削孔14の拡底部14b内に位置する複数本(図ではその内の1本のみを示す)の帯筋13bに、スポーク材11の基端部が回動自在に連結されている。ここで、スポーク材11は、先端11aが基端部の上方位置から、掘削孔14の径方向外方に向けて拡底部14bの側壁に臨む位置まで揺動するように連結されている。
【0042】
また、スポーク材11と、当該スポーク材11の上部と対向する杭主筋13aとが、揺動制御リンク20によって連結されている。この揺動制御リンク20は、ピン21によって先端部同士が開閉自在に設けられた一対のリンク杆22a、22bからなるもので、一方のリンク杆22aの先端部がピン23aを介してスポーク材11に摺動自在に設けられたスリーブ29aに連結されるとともに、他方のリンク杆22bの先端部がピン23bを介して杭主筋13aに固定されたスリーブ29bに連結されている。
【0043】
ここで、リンク杆22a、22bは、スポーク材11が揺動して水平になった際に、直線状となって当該スポーク材11を上記水平位置に保持する長さ寸法に形成されている。さらに、これらリンク杆22a、22bの連結部には、両者を開方向に弾性力を付与するスプリング24が介装されている。
【0044】
そして、上記実施形態と同様に、スポーク材11の先端11aに、グラウト管12の噴出口17を覆う保護材18が連結されている。ここで、本実施形態においても、スポーク材11の先端11aは、保護材18の外周であって、噴射口17の穿孔位置の反対側に連結されている。
【0045】
他方、杭鉄筋13の中心部には、第1の実施形態と同様に、操作軸10がその軸線周りに回転自在に設けられている。そして、この操作軸10の外周には、複数本(図では6本)の操作杆25が円周方向に等間隔をおいて、操作軸10の径方向に向けて放射状に延出するように固定されている。これら操作杆25は、スポーク材11の上部と同じ高さ位置に水平に設けられており、各々の先端部には、係合片26の基端部がピン27を介して回転自在に設けられている。
【0046】
各係合片26は、先端部にU字状の溝部26aが形成された板状部材で、当該溝部26a内にスポーク材11の上部が挿入されている。また、各係合片26と操作杆25との間には、操作杆25に対して、係合片26を、その溝部26a内に挿入されたスポーク材11を保持する方向(図12(b)において、ピン27を中心に反時計回り方向)に弾性力を付与するスプリング28が介装されている。なお、図中符号30は、スポーク材11の水平方向に移動を阻止するストッパである。
【0047】
次に、上記構成からなる第4の実施形態のグラウト注入機構を用いた本発明に係るグラウト工法の実施形態について説明する。
このグラウト工法においては、掘削孔14を掘削した後に、この掘削孔14内に、杭鉄筋13およびこの杭鉄筋13に組み付けた上記グラウト注入機構を建て込む。この際に、操作軸10を、スポーク材11を立ててその先端11aを杭主筋13a側に位置させるとともに、係合片26の溝部26a内に挿入した収納位置に保持した状態にすることにより、スポーク材11の先端11aおよびグラウト管12等を、掘削孔13の側壁と干渉しない状態で建て込む。
【0048】
次いで、上記杭鉄筋13およびグラウト注入機構の建て込みが完了した後に、掘削孔14の上方から操作軸10を操作して、当該操作軸10および操作杆25を図12(a)に矢印で示す時計回り方向に回転させる。すると、操作杆25の回転に伴って係合片26も回転するが、当該係合片26の溝部26a内に挿入されているスポーク材11は、ストッパ30によって水平方向の移動が阻止されているために、係合片26がスプリング28の弾性力に抗して回転することにより、その溝部26a内からスポーク材11が離脱する。
【0049】
これにより、スポーク材11に対する係合が解けるために、揺動制御リンク20におけるスプリング24の弾性力によって、リンク杆22a、22bが開き、スポーク材11が水平まで揺動してその先端11aが拡底部14b側に延出する。そして、グラウト管12に穿設した噴出口17が、拡底部14bの側壁と対向する位置に配置される。
【0050】
そして、第1〜第3の実施形態と同様にして、掘削孔14内にコンクリートを打設し、このコンクリートが硬化した後に、グラウト管12にグラウト材を加圧注入することにより、各々のグラウト管12の噴出口17から噴出したグラウト材を掘削孔14の底部14aおよび拡底部14bの周囲の地盤中に噴出させることができる。
【0051】
以上のように、上記第1〜第4の実施形態に示したグラウト注入機構およびこれらを用いたグラウト工法によれば、杭鉄筋13を掘削孔14に挿入する際に先端11aおよびこれに連結されたグラウト管12が掘削孔14内に位置するとともに、杭鉄筋13の配筋後に操作軸10を上下移動または回転させることにより先端11aが外周方向に延出して拡幅部14bの側壁と対向する複数本のスポーク材11を、杭鉄筋13の周方向に間隔をおいて配置し、掘削孔14内に垂下した可撓性を有するグラウト管12のグラウト噴出口17の保護材18に、スポーク材11の先端11aを連結している。
【0052】
このため、掘削孔14に杭鉄筋13および上記グラウト注入機構を建て込む際に、先ずグラウト管12の保護材18と連結されたスポーク材11の先端11aを杭鉄筋13側に位置させておくことにより、これら保護材18やスポーク材11の先端11aが掘削孔14の側壁と干渉することを防止することができる。
【0053】
そして、掘削孔14内にコンクリートを打設する前に、操作軸10を上下移動またはその軸心周りに回転させることにより、スポーク材11の先端11aを拡幅部14b側に延出させて、グラウト噴出口17を拡幅部14bの側壁に臨む位置に配置させることができる。この結果、掘削孔14内に打設したコンクリートが硬化した後にグラウト管12にグラウト材を加圧注入すると、グラウト噴出口17から噴出したグラウト材が、コンクリートに亀裂を生じさせながら拡幅部14b周囲の地盤中に噴出し、時間の経過に伴って上記地盤とスライムを硬化させて行く。
【0054】
したがって、上記グラウト注入機構およびこれを用いたグラウト工法によれば、拡幅部14bが形成された掘削孔14に場所打ちコンクリート杭を構築する際に、拡幅部14の周辺地盤についてもグラウト材を充填することができ、よって容易かつ確実に当該コンクリート杭の支持力や沈下剛性を大幅に増加させることができる。
【0055】
しかも、杭鉄筋13およびグラウト注入機構を建て込んだ後に、操作軸10を上下動または回転させるといった簡易な操作によって、同時に複数のスポーク材11の先端11aを拡幅部14b側に延出させて、グラウト噴出口17を拡幅部14b内の所定位置に配置させることができる。また、グラウト管12として、グラウト材の加圧注入に耐えうる限りにおいて、極力軽量なものを用いることも可能になる。このため、当該作業に要する手間や時間も大幅に低減させることができる。
【0056】
加えて、スポーク材11を、掘削孔14の上方から見た平面視において、その先端11aが杭鉄筋13側から拡底部14bの側壁側に向けて直線的に延出するように、揺動自在に設けているために、予めスポーク材11の先端11aに、グラウト管12の保護材18を噴出口17が掘削孔14の側壁に向くようにして接続することにより、グラウト材の注入時に、確実にグラウト噴出口17を拡底部14bの側壁に対向させて配置することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 操作軸
11 スポーク材
11a 先端
12 グラウト管
13 杭鉄筋
13a 杭主筋
13b 帯筋(杭せん断補強筋)
14 掘削孔
14a 底部
14b 拡底部(拡幅部)
17 グラウト材の噴出口
18 保護材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
深さ方向の少なくとも一部分に内径が他の部分より大きい拡幅部が形成された掘削孔内に、当該掘削孔の側壁に沿って鉛直方向に配置される複数本の杭主筋と、これら杭主筋の鉛直方向に間隔をおいて水平に配置されるとともに上記杭主筋の外周同士を連結する杭せん断補強筋とからなる筒籠状の杭鉄筋を配筋した後に、コンクリートを打設して場所打ちコンクリート杭を構築する際に、上記拡幅部の側壁にグラウトを注入するためのグラウト注入機構であって、
上記杭鉄筋の中心部に上下方向に移動自在または軸線廻りに回転自在に垂設されて当該掘削孔の上方から上下移動または回転操作可能な操作軸と、上記杭鉄筋の周方向に間隔をおいて配置され、基端部が上記操作軸または上記杭主筋に揺動自在に連結され、先端部が上記杭鉄筋を上記掘削孔に挿入する際に上記掘削孔内に位置するとともに、上記杭鉄筋の配筋後に上記操作軸を上下移動または回転させることにより上記杭主筋よりも外周方向に延出して拡幅部の側壁と対向する複数本のスポーク材と、上記掘削孔内に垂下されて上端部からグラウトが供給される可撓性を有するグラウト管と、このグラウト管の上記拡幅部に臨む位置に設けられたグラウト噴出口の保護材とを備えてなり、上記保護材に上記スポーク材の上記先端部が連結されていることを特徴とする場所打ちコンクリート杭におけるグラウト注入機構。
【請求項2】
上記スポーク材は、平面視において上記先端部が上記杭鉄筋側から上記掘削孔の側壁側に向けて直線的に延出するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の場所打ちコンクリート杭におけるグラウト注入機構。
【請求項3】
深さ方向の少なくとも一部分に内径が他の部分より大きい拡幅部が形成された掘削孔を掘削し、当該掘削孔内に、上記杭鉄筋および請求項1または2に記載のグラウト注入機構を、上記スポーク材の先端部を上記杭鉄筋側に位置させた状態で建て込み、次いで上記操作軸を、上下移動または回転させて上記スポーク材の先端部を上記拡幅部の側壁に臨む位置に延出させた後に、上記掘削孔内にコンクリートを打設し、当該コンクリートが硬化した後に上記グラウト管にグラウト材を加圧注入することにより、上記グラウト噴出口から上記グラウト材を地盤中に噴出させることを特徴とする場所打ちコンクリート杭におけるグラウト工法。
【請求項4】
上記拡幅部は、上記掘削孔の底部に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の場所打ちコンクリート杭におけるグラウト工法。
【請求項1】
深さ方向の少なくとも一部分に内径が他の部分より大きい拡幅部が形成された掘削孔内に、当該掘削孔の側壁に沿って鉛直方向に配置される複数本の杭主筋と、これら杭主筋の鉛直方向に間隔をおいて水平に配置されるとともに上記杭主筋の外周同士を連結する杭せん断補強筋とからなる筒籠状の杭鉄筋を配筋した後に、コンクリートを打設して場所打ちコンクリート杭を構築する際に、上記拡幅部の側壁にグラウトを注入するためのグラウト注入機構であって、
上記杭鉄筋の中心部に上下方向に移動自在または軸線廻りに回転自在に垂設されて当該掘削孔の上方から上下移動または回転操作可能な操作軸と、上記杭鉄筋の周方向に間隔をおいて配置され、基端部が上記操作軸または上記杭主筋に揺動自在に連結され、先端部が上記杭鉄筋を上記掘削孔に挿入する際に上記掘削孔内に位置するとともに、上記杭鉄筋の配筋後に上記操作軸を上下移動または回転させることにより上記杭主筋よりも外周方向に延出して拡幅部の側壁と対向する複数本のスポーク材と、上記掘削孔内に垂下されて上端部からグラウトが供給される可撓性を有するグラウト管と、このグラウト管の上記拡幅部に臨む位置に設けられたグラウト噴出口の保護材とを備えてなり、上記保護材に上記スポーク材の上記先端部が連結されていることを特徴とする場所打ちコンクリート杭におけるグラウト注入機構。
【請求項2】
上記スポーク材は、平面視において上記先端部が上記杭鉄筋側から上記掘削孔の側壁側に向けて直線的に延出するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の場所打ちコンクリート杭におけるグラウト注入機構。
【請求項3】
深さ方向の少なくとも一部分に内径が他の部分より大きい拡幅部が形成された掘削孔を掘削し、当該掘削孔内に、上記杭鉄筋および請求項1または2に記載のグラウト注入機構を、上記スポーク材の先端部を上記杭鉄筋側に位置させた状態で建て込み、次いで上記操作軸を、上下移動または回転させて上記スポーク材の先端部を上記拡幅部の側壁に臨む位置に延出させた後に、上記掘削孔内にコンクリートを打設し、当該コンクリートが硬化した後に上記グラウト管にグラウト材を加圧注入することにより、上記グラウト噴出口から上記グラウト材を地盤中に噴出させることを特徴とする場所打ちコンクリート杭におけるグラウト工法。
【請求項4】
上記拡幅部は、上記掘削孔の底部に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の場所打ちコンクリート杭におけるグラウト工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−154115(P2012−154115A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15200(P2011−15200)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(505408686)ジャパンパイル株式会社 (67)
【出願人】(000157289)丸五基礎工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(505408686)ジャパンパイル株式会社 (67)
【出願人】(000157289)丸五基礎工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]