説明

場所打ち杭先端の支持層到達検知装置および検知方法

【課題】非接触で地盤の硬さを測定できるPS検層と称せられる地盤弾性波速度測定方法を、特に振動エネルギーを大きくすることなく、大口径の場所打ち杭造成のために削孔した孔が、杭を支持する支持地盤にまで到達したかの検出に適用でき、しかも簡単な装置を設置するだけで容易、確実に検出できる場所打ち杭先端の支持層到達検知装置および検知方法を得る。
【解決手段】大口径の場所打ち杭の孔の測定孔壁地盤2にそってこの測定孔壁地盤2の近傍に擬似地盤面5としての反射板を設置して擬似測定領域を形成し、この擬似測定領域の中心位置近傍に振源4を設置するとともに、測定位置に受振器6a,6bを設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ち杭造成のために削孔した孔が杭を支持する支持地盤に到達しているかを検出する場所打ち杭先端の支持層到達検知装置および検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートの場所打ち杭造成のために削孔した孔は、杭を支持する支持地盤に到達していなければならないが、支持地盤に到達しているか否かの判定方法として、従来、例えば施工機械の削孔時抵抗、採取した削孔土砂の観察、地盤調査に基づく設計杭長さなどがある。
【0003】
しかし、前記方法は地盤の強さで支持層を設定している設計技術には十分対応できない。
【0004】
場所打ち杭の杭壁地盤の強さを測定して、支持地盤に杭先端が貫入したかを簡便に検査する方法として確立されたものは従来なく、必要に応じて孔壁安定液の中の孔壁に対して載荷試験を行い、これにより強さを確認する方法が検討されるが、安定液の作用で保有している孔壁の安定性が低下し、測定中に地盤の崩壊が発生し、杭が造成されない事態になることも想定され、現実には実施が困難である。
【0005】
測定中も孔壁を安定状態に保持するには、孔壁地盤に非接触で、従来の工事工程の流れの中で測定することが求められる。
【0006】
非接触で地盤の強さを測定する方法としては、強さの代替特性値として硬さを選び、硬さを評価できる弾性波速度を利用するPS検層と呼ばれる地盤弾性波速度測定方法がある。この方法は、直径10〜15cm程度のボーリング穴を利用してP波やS波の伝播速度を計測するダウンホール方式と、孔内起振受振方式が実用されている。ダウンホール方式では、地表を水平、鉛直方向に振動させ、その振動をボーリング孔内の受振器で計測するもので、受振器の位置を地中で移動することで測定深度毎の波動の伝達時間の差から波動の速度を求める方法である。孔内起振受振方式では、同一のボーリング孔内で孔内水を介して弾性波振動を起振し、受振する方法である。孔内起振受振方式は起振と受振装置が常に一定距離となっているため、小さな起振エネルギーで大深度での調査が可能となる方法である。
【0007】
前記従来技術は、当業者間で一般的に行われているものであり、文献公知発明にかかるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
孔内起振受振方式のPS検層測定は、前記のように直径10〜15cm程度の小さなボーリング穴を利用して、大深度まで小さな振動エネルギーで調査できるが、大深度に設置されることが多く、限られた現場敷地内での工事となることから起振エネルギーが小さい孔内起振受振方式の採用メリットが大きい。しかしながら、この方式では場所打ち杭のように直径が数mにもなる大口径の孔では、孔壁地盤に振動エネルギーが届かないため、測定ができない。
【0009】
前記不都合は振動エネルギーを大きくすれば、解決できるが、振動エネルギーを大きくすることは、装置の大規模化にもつながり現実的ではないことから、現状のPS検層技術を場所打ち杭造成のために削孔した大口径の孔が、杭を支持する支持地盤に到達したかを検出する方法にそのまま利用することは困難である。
【0010】
本発明は前記従来例の不都合を解消するものとして、非接触で地盤の硬さを測定できる孔内起振受振方式のPS検層と称せられる地盤弾性波速度測定方法を、特に振動エネルギーを大きくすることなく、大口径の場所打ち杭造成のために削孔した孔が、杭を支持する支持地盤にまで到達したかの検出に適用でき、しかも簡単な装置を設置するだけで容易、確実に検出できる場所打ち杭先端の支持層到達検知装置および検知方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の本発明は、装置として、大口径の場所打ち杭の孔の測定孔壁地盤にそってこの測定孔壁地盤の近傍に擬似地盤面としての反射板を設置して擬似測定領域を形成し、この擬似測定領域の中心位置近傍に振源を設置するとともに、測定位置に受振器を設置したことを要旨とするものである。
【0012】
請求項2記載の本発明は、前記反射板は、測定孔壁地盤の物性値と類似する素材で構成することを要旨とするものである。
【0013】
請求項3記載の本発明は、方法として、大口径の場所打ち杭の孔の測定孔壁地盤にそってこの測定孔壁地盤の近傍に擬似地盤面としての反射板を設置して擬似測定領域を形成し、この擬似測定領域の中心位置近傍に振源を設置するとともに、測定位置に受振器を設置し、振源からの弾性波の伝播速度を計測することで場所打ち杭先端が支持層に到達したかを検知することを要旨とするものである。
【0014】
請求項1、請求項3記載の本発明によれば、場所打ち杭の削孔の中に振源をはさんで測定孔壁地盤と同様の位置に擬似地盤面を設置して擬似測定領域を形成したから、従来の小口径のボーリング穴と同様の測定領域を場所打ち杭の削孔の中に得ることができる。よって、大口径の場所打ち杭の削孔であっても、PS検層と呼ばれる地盤弾性波速度測定法の実施が可能となる。
【0015】
擬似地盤面を形成するための反射板は、測定孔壁地盤の物性値と類似する素材で構成したから、例えば市販の塩化ビニル板を使用できる。よって、容易に入手でき、しかも簡単な構造で測定装置が得られる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように本発明の場所打ち杭先端の支持層到達検知装置および検知方法は、非接触で地盤の硬さを測定できるPS検層と称せられる地盤弾性波速度測定方法が実施可能なよう、大口径の場所打ち杭造成のために削孔した孔の中に、小口径の孔と変わらない擬似測定領域を形成したから、特に振動エネルギーを大きくすることなく、大口径の場所打ち杭造成のために削孔した孔が、杭を支持する支持地盤にまで到達したかの検出ができ、しかも装置は簡単で、容易、確実に検出できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の場所打ち杭先端の支持層到達検知装置の実施形態を示す説明図で、図中1は場所打ち杭造成のために削孔した大口径の杭孔、2は杭1の測定孔壁地盤、3は杭孔1内に充填された孔壁安定液を示す。
【0018】
本発明はかかる杭孔1の中に、PS検層と称せられる地盤弾性波速度測定方法が実施可能なよう、小口径のボーリング孔と同規模の擬似測定領域を形成した。
【0019】
PS検層測定には、振源自体が測定用の孔の中心位置付近に配置され、地盤と振源との間に位置する孔壁安定液3がほぼ同じ厚さであることが一般的に要求される。
【0020】
本発明における擬似測定領域は、前記要求を満たすものとして、例えば、大口径の杭孔1の中に、測定孔壁地盤2に近づけて振源4を配設し、この振源4を挟んで測定孔壁地盤2の反対側に擬似地盤面5としての反射板を配設した。
【0021】
この場合、図2にも示すように擬似地盤面5の設置位置は、振源4との距離が、振源4と測定孔壁地盤2との間の距離とほぼ等しくなるように設定する。
【0022】
これにより測定孔壁地盤2と擬似地盤面5との間の中心位置付近に振源4が配設されて、測定孔壁地盤2と擬似地盤面5とで囲まれた小さな領域が、従来の小さなボーリング孔を利用するPS検層と同規模の擬似測定領域となる。
【0023】
前記擬似地盤面5は、反射板(反力板)として作用するものであり、測定する地盤の剛性と大きく変わらない材質のものが望ましく、例えば、測定する地盤の弾性波速度値に近いものとして市販の塩化ビニル管を使用した。塩化ビニル管内の測定では、塩化ビニル管のS波伝播速度は約350m/secが経験的に得られており、反対側の測定孔壁地盤2の物性値と最も類似した素材であることが判明している。
【0024】
したがって、塩化ビニル管では、周波数が約1.0KHzと高いこと、また振動変位量が小さいこと、発生する振動が瞬時であることから、反射板全体を揺れ動かしたり大きな変形を伴う力は加わらないと考えられ、塩化ビニル管は好適な材料である。
【0025】
擬似地盤面5の形状は、地盤を模擬した形状として、板状から測定孔壁面形状と同程度の曲率を持たせた反力板状のものとし、例えば、直径1.7mの場所打ち杭の孔に対して、ボーリング孔径に近い曲率半径5cmの塩化ビニル管を半割りにした反射板とする。なお、形状は前記の円弧状板に限定されるものではなく、縁付き板、パラボラ形状などが考えられる。
【0026】
擬似地盤面5および振源4の下方に複数の受振器6a、6bを配設する。図中7はフィルターチューブ、8はウエイト、9はドライバー、10はドライバー9の上に接続されたヘッドレジューサー、11はサスペンションゾンデ、12は滑車、13はウインチ、14は計測器を示す。
【0027】
図3は計測器の表示器15を示し、受振器6a,6bで受振された波形の表示部15a、P波速度とS波速度の表示部15bとを備える。
【0028】
杭孔1の先端が支持地盤に達したかを検知するには、振源4から発振すれば、弾性波が測定孔壁地盤2を伝播し、下方の2つの受振器6a,6bで受振される。この2つの受振器6a,6bで計測される伝播時間をもとにして測定孔壁地盤2の硬さを判定し、杭孔1の先端が支持地盤に到達しているかを判断する。
【0029】
測定に際し、振源4は擬似測定領域の中央位置付近に配置したから、大口径の場所打ち杭の杭孔1の孔壁安定液3の中で測定地盤面に非接触状態で測定できるから、測定中も孔壁の安定性を維持でき、杭孔1の中に形成する擬似地盤面5は反射板背面の孔壁安定液3の存在を無視できるようにする作用をなす。
【0030】
また、振源4から発振される弾性波は方向性を有し、測定孔壁地盤2と振源4とを結ぶ軸線方向に発振されることから、軸線に直交する方向の影響は少なく、測定孔壁地盤2と擬似地盤面5との連続性は無視できる。この場合、非常に弱いエネルギーで発振された弾性波で測定孔壁地盤2の弾性波速度を確実に測定できる。
【0031】
そして、振源4から発振する弾性波は、前記のように杭孔1の中に形成した、小さなボーリング孔と同程度の擬似測定領域の中で測定されるから、発振エネルギーロスを少なくでき、振源エネルギーが小さくても従来と同様の測定が行える。杭孔1の先端深さより1m上の位置以浅での地盤弾性波速度を測定できる。
【0032】
さらに、測定した弾性波波形は、表示器15に表示されるから、一目で容易に判定できる。従来の杭工事工程を変更することなく、短時間で測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の場所打ち杭先端の支持層到達検知装置および検知方法の実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の場所打ち杭先端の支持層到達検知装置および検知方法の実施形態を示す要部の横断平面図である。
【図3】本発明の場所打ち杭先端の支持層到達検知装置および検知方法の実施形態を示す表示装置の正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 杭孔 2 測定孔壁地盤
3 孔壁安定液 4 振源
5 擬似地盤面 6a,6b 受振器
7 フィルターチューブ 8 ウエイト
9 ドライバー 10 ヘッドレジューサー
11 サスペンションゾンデ 12 滑車
13 ウインチ 14 計測器
15 表示器 15a,15b 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大口径の場所打ち杭の孔の測定孔壁地盤にそってこの測定孔壁地盤の近傍に擬似地盤面としての反射板を設置して擬似測定領域を形成し、この擬似測定領域の中心位置近傍に振源を設置するとともに、測定位置に受振器を設置したことを特徴とする場所打ち杭先端の支持層到達検知装置。
【請求項2】
前記反射板は、測定孔壁地盤の物性値と類似する素材で構成する請求項1記載の場所打ち杭先端の支持層到達検知装置。
【請求項3】
大口径の場所打ち杭の孔の測定孔壁地盤にそってこの測定孔壁地盤の近傍に擬似地盤面としての反射板を設置して擬似測定領域を形成し、この擬似測定領域の中心位置近傍に振源を設置するとともに、測定位置に受振器を設置し、振源からの弾性波の伝播速度を計測することで場所打ち杭先端が支持層に到達したかを検知することを特徴とする場所打ち杭先端の支持層到達検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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