説明

【課題】土の地面のような不陸の状況が不規則な地面に塀を設置する場合であっても、塀パネルと地面との間に隙間が生じにくい塀を提供する。
【解決手段】地表に間隔をおいて立設された支柱1の間に塀パネル2が架設され、前記塀パネル2の下端部と地表との間に、弾性を有するスペーサー3が設けられているので、コンクリート基礎面のような凹凸が不規則な地面に対してもその不陸による凹凸に沿ってスペーサーが弾性的に変形して、塀パネル2の下端部と地表との間を塞ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、工場、公園等の敷地境界部や隣地境界部に沿って取付けられる塀に関し、特に塀パネルと地表との間に下部材が取付けられた塀に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅、工場、公園等の敷地境界部や隣地境界部に沿って取付けられる塀は、一般に、設置される境界部に沿って立設させた複数本の支柱の間に塀パネルが架設されている。そして、塀の遮音性を重視する場合は、塀パネルとして、金属板、樹脂板、グラスウール等或いはこれらを組み合わせたものが用いられている。これらの塀パネルは正面視矩形状であるため、設置場所の地面の接地面に不陸が生じていると、塀パネルと地面との間に隙間が生じ、この隙間から騒音が伝わって遮音性能が十分に発現されない場合がある。
【0003】
フェンス配置面の不陸に対応した形態として、特許文献1には、下縁部にステーが枢軸の周りに回動自在に枢着された複数の枠体の側辺部同士をヒンジ機構による折畳式移動フェンスであって、各枠体が隣りの枠体に対し上下移動してフェンス配置面の不陸に追従して安定配置可能にした不陸対応型移動フェンスが提案されている。
【0004】
又、本出願人においても、特許文献3に示すように、目隠し材の上下端部に枠材を取付け、更に最下部の枠材の下部に枠材を取付けた緑化目隠し塀を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−164799号公報
【特許文献2】特開2007−113263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記の不陸対応型移動フェンスは、フェンス接地面の不陸に合わせてフェンス本体を上下に配置可能とされたものであり、フェンスと地面との隙間を塞ぐものではなかった。
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、コンクリート基礎面等のような表面の不陸が不規則に生じている地面に塀を設置する場合であっても、塀パネルと地面との間に隙間が生じにくい塀を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
【0009】
すなわちこの発明に係る塀は、地表に間隔をおいて立設された支柱の間に塀パネルが架設され、前記塀パネルの下端部と地表との間に、弾性を有するスペーサーが設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
又、本発明に係る塀において、前記塀パネルの下端部に脚パネルを該塀パネルの長手方向に沿って取付け、該脚パネルと地表との間にスペーサーを設けた構成としてもよい。
【0011】
更に、本発明に係る塀において、前記スペーサーの前後面のうちの少なくとも一方の面側に相対向して、前記脚パネルの長手方向に沿ってカバー部を垂下させた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地表に間隔をおいて立設された支柱の間に塀パネルが架設され、前記塀パネルの下端部と地表との間に、弾性を有するスペーサーが設けられているので、コンクリート基礎面のような表面の不陸が不規則に生じている地面に対してもその不陸による凹凸に沿ってスペーサーが弾性的に変形して、塀パネルの下端部と地表との間を塞ぎ、めかくし機能を高めることができる。
【0013】
又、本発明に係る塀において、前記塀パネルの下端部に脚パネルを該塀パネルの長手方向に沿って取付け、該脚パネルと地表との間にスペーサーを設けた構成としていもよい。
【0014】
更に、本発明に係る塀において、前記スペーサーの前後面のうちの少なくとも一方の面側に相対向して、前記脚パネルの長手方向に沿ってカバー部を垂下させた構成とすれば、スペーサーの上下方向の寸法を長くしても、カバー部側からは見えにくくなるので、スペーサーの上下方向の変形しろをより確保できると共に、外観上スペーサーは目立ちにくくなり好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る塀の実施の一形態を示す説明図である。
【図2】図1のA−A断面における拡大断面図である。
【図3】図2のB−B断面における拡大断面図である。
【図4】図1の塀Pの地表部付近の拡大正面図である。
【図5】図2のC−C断面における拡大分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0017】
図面において、1は地表に間隔をおいて立設された支柱、2は支柱1の間に架設された塀パネル、3は塀パネル2の下端部と地表との間に設けられたスペーサーであり、本発明に係る塀は、支柱1、塀パネル2、及びスペーサー3とか主に構成されると共に、スペーサー3により塀パネル2の下端面と地表との隙間が塞がれるものである。
【0018】
図1は、本発明に係る塀において実施の一形態を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。支柱1は、下部が地中に埋設されて地表に適宜間隔をおいて立設されている。支柱1の上端面にはキャップ11が取付けられ、見栄えをよくすると共に、雨水等が支柱1の内部に浸入することを防止している。支柱1の材質は、強度的に安定しておりコストの安い鋼管が好適に用いられるが、鋼管に限定されるものではなく、アルミニウム合金やステンレス鋼等の他の金属を用いたものでもよい。又、支柱1の断面形状は、図2に示すように断面矩形状となされているが、塀パネル2が支柱1に架設されるものであれば、断面円形でもよく、多角形状となされたものでもよい。
【0019】
図2は、図1のA−A断面における横断面図である。かかる支柱1の側端部には、塀パネル2を取付けるための取付部材4が取付けられている。取付部材4は、本実施形態では、支柱1の側端部に固着される固定部41と、固定部41から前後に間隔をおいて突設される2個の取付部42とを備えた横断面略コ字状になされている。取付部材4は、塀パネル2を支持できるものであれば、支柱1の側面部に上下に間隔をあけて複数個以上取付けられたものでもよく、支柱1の側面部の上部から下部に亘って連続的に形成された長尺体を用いてもよい。
【0020】
次に、塀パネル2は、支柱1の間に架設されるものであり、矩形状に形成されたパネル本体21と、該パネル本体21の上下端部に配置される横枠材22と、該左右端部に配置される縦枠材23とを備え、上下の横枠材22と縦枠材23とによって矩形状の枠体24が形成され、この枠体24の内側にパネル本体21が固定されたものである。
【0021】
図3は図2のB−B断面における断面図である。図2,3に示すように、塀パネル2は、パネル本体21が前後に間隔をおいて配置され、パネル本体2の端部が横枠材22及び縦枠材23からなる枠体24に固定されている。そして、2個のパネル本体の間には吸音材25が挿入されている。更に、本実施形態では、図1の前側パネル本体21の一部及びその拡大図のみに図示しているが、該パネル本体21には、前後の貫通する透孔21aが多数設けられている。又、吸音材25の後ろ面側には鋼板26を配置している。これにより、塀の前方で発生した騒音等を効果的に遮音・吸収できる。
【0022】
横枠材22は、本実施形態では、内部に中空部22aが設けられた長尺体であり、パネル本体21の上下端部が圧入される溝部22bが長手方向に沿って設けられている。一方、縦枠材23は、平板状の基部23aにおける一方の面にパネル本体21の側端部が圧入される溝部23bが長手方向に沿って設けられ、基部23aの他方の面には、支柱1の取付部材4と接合するための接合片23cが長手方向に沿って設けられている。そして、縦枠材23の基部23aに設けられたビス孔から固定ねじB1を挿入し、横枠材22の中空部22a内に設けられたビスホール22cに螺入されることによって、横枠材22と縦枠材23とが接合され、枠体24が形成されている。
【0023】
塀パネル2は、本実施形態のように、騒音を遮音或いは吸収できるものを好適に用いることができ、パネル本体21としては、金属板や樹脂板に金属板を貼着した複合板等を用いることができる。塀パネル2の構成としては、吸音材25や鋼板26を用いずパネル本体21の2重壁の構成でもよく、パネル本体21の1重壁でもよい。枠体24は、一般には、アルミニウム合金や合成樹脂の押出成型からなる長尺体を適宜長さに切断して用いられるものであるが、ステンレス鋼板や鋼板のプレス加工等により形成したものでもよい。又、横枠材22或いは縦枠材23のいずれか一方のみから構成されるものでもよい。
【0024】
又、図2,3に示すように、支柱1の後方側には塀パネル2との間に生じる上下方向の隙間を隠すためのめかくし材5が取付けられている。該めかくし材5は、上下方向に長尺となされた板状であり、一方の側端部が支柱に当接され、もう一方の側端部は固定ねじB2により塀パネル2に固定されている。
【0025】
図5は、図2のC−C断面における拡大分解図である。めかくし材5の側端部には、透孔51が設けられている。この透孔51から固定ねじB2を挿通させ、ワッシャWを介して縦枠材23の接合片23cの横長孔23dを貫通して、支柱1に取付けられた取付部材4の取付部42のねじ孔42aに螺入させることにより、めかくし材5が塀パネル2に固着される。
【0026】
かかるめかくし材5は、本実施形態では、支柱1を挟んで左右一対に設けられているが、左右のめかくし材5の支柱側端部が接続された一体型のものでもよい。又、めかくし材5の取付方法は、支柱1に直接ねじ止めして固着する方法でもよい。
【0027】
スペーサー3は、地表と最下段の塀パネル2との隙間を塞ぐものであり、上下方向に変形可能となされた弾性体である。スペーサー3の設置形態は特に限定されるものではないが、本実施形態では、最下段の塀パネル2の下端部に取付けられた脚パネル6に取付けられている。
【0028】
かかるスペーサー3は、本実施形態ではスペーサー3の内部に空隙が設けられ更に該空隙が前後方向に繋がったスポンジ状となされ、地表面の凹凸が比較的大きい場合でもその凹凸への追従変形可能であり、前後方向への変形が生じにくいスポンジ状のものを好適に用いることができるが、スペーサー3の内部に多数の独立気泡を有する弾性体でもよく、ゴム弾性を有するものを用いてもよく、あるいはこれらを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
図4は、図1の塀Pの地表部付近の拡大正面図である。スペーサー3を塀パネル2と地表との間に設ける際、地表の基準面Kに対して、スペーサー31の収縮しろを残した収縮状態で、塀パネル2と地表との間に設けるようにすれば、地表が基準面Kに対して上昇或いは下降した不陸箇所に対してその凹凸に対応して隙間を埋めることができる。これにより、塀Pのめかくし機能をより高めることができると共に、塀パネルと地面との間からは音が伝わりにくくなるので、本実施形態における塀パネル2と相まって、塀Pの前方で生じた騒音が後方に伝わることを効果的に抑えることができる。
【0030】
脚パネル6は、図3に示すように、最下段の塀パネル2の長手方向に沿って取付けられて、地表の基準面Kより上方に配置されると共に、該脚パネル6の下端部にスペーサー3が取付けられたものである。該脚パネル6の上端部61は、支柱1の取付部材4の下方に配置されると共に、該上端部61の一端から上方に向けて立ち上がる立上片62が立設され、塀パネル2の下方の横枠材22の前方を覆うと共に、固定ねじB3により縦枠材23に固着されている。もう一方の上端部は、塀パネル2の縦枠23と略面一となされている。これにより、めかくし材5を支柱1に取付ける際に、めかくし材5の下端部に特別な加工をせずとも、脚パネル6の前記上端部の外周面に当接させて、めかくし材5による隙間隠しが下端部まで連続的に可能となる。
【0031】
立上片62の側端部には、図5に示すように、透孔62aが設けられている。この透孔62aから固定ねじB3を挿通させ、ワッシャWを介して縦枠材23の接合片23cの横長孔23dを貫通して、支柱1に取付けられた取付部材4の取付部42のねじ孔42aに螺入させることにより、立上片62が取付部42に取付けられ、脚パネル6が塀パネル2の下部において支柱1の間に固定される。本実施形態では、取付部材4は前後対称形となされているので、めかくし材5及び脚パネル6の配置を前後で入れ替えることが可能である。
【0032】
又脚パネル6の下端部63には、スペーサー3の上端部が取付けられている。本実施形態では、該下端部63の前後幅は、スペーサー3の前後幅よりも長くなされると共に、下端部63の前後方向中央部にスペーサー3が取付けられている。これにより、通行人等からは、スペーサー部31が見えにくくなり、地表との隙間を塞ぎながら意匠性の低下を抑えることができる。
【0033】
更に脚パネル6の下端部63には、スペーサー3の前後面に相対向して脚パネル6の長手方向に沿ってカバー部64が垂下されている。すなわち、脚パネル6の下端縁であるカバー部64の下端縁の位置より、スペーサー3の上端縁の方が上方に位置している。従って、カバー部64の垂下寸法をスペーサー3の収縮限界寸法より大きくしておけば、地表の不陸の凹凸における凸部がカバー部64の下端縁の位置程度まで上昇しても、スペーサー3の収縮限界を超えて、地表と脚パネル6との隙間が狭くなる虞れは少なくなり、前記収縮限界を超えることにより、スペーサー3が前後に飛び出したり、脚パネル6や塀パネルが変形したりするような不具合は生じにくくなる。そして、カバー部64の下端縁を地表の基準面Kより高い位置にすることにより、上記効果をより確実に発現できる。
【0034】
加えて、スペーサー3の上下寸法を長くしても、スペーサー3は外部から見えにくいので、スペーサー3の上下方向の伸縮しろをより大きくするために上下寸法を長くしても、外観上スペーサー3が目立つことがなく、より好ましい。つまり、カバー部64により、スペーサー3の伸縮しろを十分確保しながら、意匠性の低下を抑えることができる。
【0035】
カバー部64の垂下位置は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、下端部63の前後端縁から垂下されたものである。これにより、スペーサー3が地表の凹凸の状況により部分的に前後方向に変形した場合であっても、カバー部64とスペーサー3との間隔を確保することができるので、この間に雨水等が滞留しにくくなりスペーサー3やカバー部64の内側の腐食等が起こりにくくなる。
【0036】
又、カバー部64の先端には、スペーサー3側に向けて内側に折曲された折曲部65が形成されている。これにより、カバー部64の強度が高められると共に、スペーサー3が部分的に前後方向に変形した場合でも、折曲部65に押さえられて、カバー部64の外側面より外側にはみ出しにくくなる。
【0037】
カバー部64は、スペーサー3に対して前後面両側に形成された方がより好ましいが、塀Pの前側のみにカバー部64を設けるような、前後面一方のみにカバー部64を形成してもよい。或いは、スペーサー3を塀パネル2の下端部に直接取付け、スペーサー3の前後面の少なくとも一方に相対して、塀パネル2の下端部からカバー部64が垂下されたものでもよい。
【0038】
脚パネル6は、本実施形態では、アルミニウム合金の押出型材を適宜長さに切断して用いたものであり、立上片62やカバー部64の設計が比較的容易であり、塀パネル2の枠体24と同じ材料で意匠性を損なうことがないので、好適に用いることができるが、ステンレス鋼や鋼板等の他の金属や、合成樹脂等からなる成型品をもちいてもよい。又、脚パネル6は、角柱状で内側に中空部が設けられたものであるが、中空部のない形態でもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 支柱
2 塀パネル
22 横枠材
23 縦枠材
24 枠体
3 スペーサー
4 取付部材
5 めかくし材
6 脚パネル
63 下端部
64 カバー部
65 折曲部
B1,B2,B3 固定ねじ
K 基準面
P 塀

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表に間隔をおいて立設された支柱の間に塀パネルが架設され、前記塀パネルの下端部と地表との間に、弾性を有するスペーサーが設けられていることを特徴とする塀。
【請求項2】
前記塀パネルの下端部に脚パネルが該塀パネルの長手方向に沿って取付けられ、該脚パネルと地表との間にスペーサーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の塀。
【請求項3】
前記スペーサーの前後面のうちの少なくとも一方の面側に相対向して、前記脚パネルの長手方向に沿ってカバー部が垂下されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塀。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−189861(P2010−189861A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32751(P2009−32751)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】