塔モジュール及びこれを用いて形成する塔
【課題】 塔構成部材の輸送及び塔建設時の問題点を解決するとともに、曲げ剛性が高く軽量な塔モジュール及びこれを用いて組み立てた塔を提供する。
【解決手段】 本発明に係る塔の構成要素は、連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上に120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる塔モジュールを、複数個積み上げ連結してなる。この塔において、塔の最下段の塔モジュールは最上段の塔モジュールよりも大きい曲げ剛性を有するのがよい。
【解決手段】 本発明に係る塔の構成要素は、連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上に120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる塔モジュールを、複数個積み上げ連結してなる。この塔において、塔の最下段の塔モジュールは最上段の塔モジュールよりも大きい曲げ剛性を有するのがよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塔モジュール及びこれを用いて形成する塔に係り、特にプロペラ型風車発電機を支持する塔に対して好適な塔モジュール及びこれを用いて形成する塔に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電はクリーンエネルギーとして注目され、風力発電による発電量の増大を図るために発電コスト低減の種々の試みがなされている。発電コスト低減の一の方向として、発電効率の高いプロペラ型風車を用いた一層効率の高い風力発電装置の開発が進められ、プロペラ型風車発電機の大型化及びそれを支持する塔の高さの高度化が進んでいる。
【0003】
例えば、プロペラの長さ及び塔の高さが50mを超える風力発電装置が製作されており、その塔には通常は直立した円筒状のモノポール型のものが用いられている。このような風力発電装置においては、プロペラ型風車発電機の重量が50トン前後にもなるから塔の強度を確保することが重要になる。塔の強度確保において、曲げモーメントは塔の下方ほど大きくなるために、塔の下方部分ほど大きい曲げ剛性を確保することが必要になる。このため上記のような例では、塔の下端部の直径は3m前後になり、塔の重量は100トンを超えるようなものになっている。
【0004】
このような大型の風力発電装置においては、風力発電装置の設置現場へのその構成部材の輸送や塔の基礎を含めた風力発電装置の組立て上の困難さ、建設コストの上昇等が問題になっている。また、塔の強度に与える風圧の影響が大きいことが問題になっている。このような問題に対し、例えば特許文献1に脚構造体の塔が提案されている。すなわち、風車を旋回可能に支持する風車支持部を備える塔であって、岩盤基礎に各脚の下端部が固定され、各脚の上端部が上方に集束して、全体として上向きに先細形状をなす複数の三角脚鉄塔構造又は四角脚鉄塔構造からなる塔が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002-61564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の提案に係る塔は、3又は4本の立設する主柱が上方で集束した脚構造体であるから、上記のような大型のプロペラ型風車発電機を支持するには強度上の問題がある。また、このような脚構造体は、一般に負荷の方向によって曲げ剛性が異なる。このため、プロペラ型風車発電機がどの方向を向いても塔の強度が確保できるように、低い曲げ剛性の方向の強度を基準に設計されるので、塔のサイズ、重量が大きくなりやすいという問題がある。さらに、風力発電装置を設置する際の塔構成品の輸送及び建設上の問題も十分には解決されていない。
【0007】
このような脚構造体は従来より高圧電線用鉄塔や通信塔にも採用されているが、いずれもその基本構造は、3又は4本の立設する主柱と、これらを連結する補助部材、すなわちそれらの主柱の適当な高さ位置に間隔を置いて配設した連結部材からなる構造となっており、主柱の強度が重要な要素になっている。このため、塔は主柱の最大負荷を受ける部分を基準に設計されるから主柱のサイズが大きくなりひいては塔の重量が大きくなりやすいという問題もある。
【0008】
本発明はこのような従来の問題点に鑑み、塔構成部材の輸送及び塔建設時の問題点を解決するとともに、曲げ剛性が高く軽量な塔モジュール及びこれを用いて形成する塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる柱状体の中心軸回りの曲げ剛性は、どの方向についても等しく、このような柱状体を塔モジュールとして塔を形成すれば軽量でプロペラ型風車発電装置に好適な塔を形成することができるという知見に基づき本発明を完成した。
【0010】
本発明に係る塔は、連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上に120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる塔モジュールを、複数個積み上げ連結してなる。
【0011】
上記発明において、塔は、その最下段の塔モジュールが最上段の塔モジュールよりも大きい曲げ剛性を有するように連結してなるのがよい。
【0012】
本発明に係る塔を構成する塔モジュールは、連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上に120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる。上記塔モジュールにおいて下及び上連結部材は環状体であるのが好ましい。
【0013】
本発明に係る塔は、上記の塔モジュールを複数個積み重ね連結してなるものであるが、
塔を設置する現場で、塔モジュールを構成する部材を個々に組み付けて塔を形成することができる。すなわち、(1)基礎上に、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有する3本の棒をセットとする1以上の棒群を、同一の棒群に属する3本の棒が円周上に120°の角度を離間するように配置して立設固定し、さらに、該棒群上に連結部材を固定して第一の塔モジュールを構築する段階、(2)前記第一の塔モジュールの上に、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有する3本の棒をセットとする1以上の棒群を、同一の棒群に属する3本の棒が円周上に120°の角度を離間するように配置して立設固定し、さらに、該棒群上に連結部材を固定して第二の塔モジュールを構築する段階、からなる塔の形成方法により、または、さらに前記(2)の段階を1以上繰り返す段階を含んでなる塔の形成方法により、塔を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る塔モジュールは軽量で曲げ剛性が大きく、かつその中心軸回りのどの方向の曲げ剛性も等しい。係る塔モジュールを用いて形成された塔は、軽量で塔の中心軸回りに関してどの方向の曲げ剛性も等しく、プロペラ型や多翼型の水平軸型風車、ダリウス型やサボニウス型の垂直軸型風車等の風車発電装置用の塔や通信塔等の鉄塔、特に塔頂部で重量物を支持しかつ塔の中心軸回りのどの方向にも高い曲げ剛性が要求されるプロペラ型風車発電装置用の塔に好適に用いることができる。また、塔構成部材をプロペラ型風車発電装置等の設置現場まで輸送するのに適宜で経済的な手段を選択することができ、輸送された塔構成部材を用いて現場で容易に塔を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る塔の実施の形態について図を基に説明する。本発明に係る塔は、例えば図1,2に示すように図3及び4に示す塔モジュールが連結されて形成される。すなわち、図1に示す塔は、図3に示す塔モジュール10が2個ねじ結合20により連結されて形成される場合の例である。図2に示す塔は、図4に示す塔モジュール11の上に図3に示す塔モジュール10が積み重ねられねじ結合20により連結されて形成される場合の例である。このように本発明に係る塔は、塔の性能仕様(所要の高さ、強度)を満たすように所要の塔モジュールを組み合わせ連結して形成されるものである。
【0016】
本発明に係る塔モジュールは、連結部材と、該連結部材に対し3本の棒ごとにセットになって一体に連結された1以上の棒群とから構成される基本構造をなしている。例えば、図3に示す塔モジュール10は、3本の棒101からなる棒群100と、棒群100の下端を連結する下連結部材150と、棒群100の上端を連結する上連結部材160とから構成される。図4に示す塔モジュール11は、3本の棒101からなる棒群100及び3本の棒111からなる棒群110と、棒群100及び110の下端を連結する下連結部材151と、棒群100及び110の上端を連結する上連結部材161とから構成される。塔モジュールの曲げ剛性は、多数の棒群を有するものほど大きい。このため、一般には塔の下部を構成する塔モジュールほど、多くの棒群を有するものが用いられる。
【0017】
一の塔モジュールを構成する棒群において、すべての棒の長さは同一である。また、同じ棒群に属する3本の棒の曲げ剛性(棒の横断面の断面二次極モーメントIz、ヤング率Eとすると、E×Iz)も同一である。
【0018】
また、同じ棒群に属する3本の棒は、円周上に120°の角度を離間して配置される。例えば、図3の例では、棒群100を構成する3本の棒101は、下連結部材150の円周C1上及び上連結部材160の円周D1上120°の角度を離間し、すなわちθ=120°の中心角をなし円周上等間隔に配置されている。図4の例では、棒群100を構成する1の組の3本の棒101は、図3に示すものと同様に下連結部材151の円周C1上及び上連結部材161の円周D1上に120°の角度を離間して配置され、棒群110を構成する2の組の3本の棒111は、棒101の配置位置から角度αずれた下連結部材151の円周C1上及び上連結部材161の円周D1上に互いに120°離間して配置されている。
【0019】
このように構成された塔モジュールの曲げ剛性は、上又は下連結部材面に対して直角方向、すなわち塔モジュールの中心軸回りにどの方向についても等しい。なお、図4の例で、2の組の3本の棒111が下連結部材15の円周C2上に120°の角度を離間して配置されていてもよい。この場合も、同じ組に属する3本の棒が円周上に120°の角度を離間して配置されているので、塔モジュールの曲げ剛性はどの方向についても等しい。
【0020】
棒群100、110が配置される上記円周C1とD1に関し相互の径の大小は問わない。しかしながら、塔の上部ほど塔に負荷される曲げモーメントは小さく、上部の塔モジュールの曲げ剛性は下部のものより小さくすることができるので、円周D1を円周C1より小さくするのがよい。これにより、上連結部材161を外径の小さいものにすることができ塔全体の重量軽減を図ることができる。
【0021】
なお、棒群を構成する棒は、中実又は中空のいずれのものも使用することができ、断面形状は円形又は角形のいずれのものをも使用することができる。また、棒の上部ほど断面積が小さくなるような、例えば、円錐柱形状の棒も使用することができる。しかしながら、経済性を考慮すると、広く市販されている、丸棒、丸又は角パイプ、H形鋼、L形鋼を使用するのがよい。
【0022】
棒群を連結する下連結部材及び上連結部材は、棒群と一体に結合されて塔モジュールを構成するものであるが、塔モジュールの全体重量やねじり強度に与える影響が大きい。このためねじり強度が高くしかも重量が軽いものが求められる。例えば、図5に示すような環状体の下連結部材又は上連結部材が好ましい。図5の(a)は丸パイプを円環状に曲げ加工した構造のもの、(b)は中心部をくりぬいた六角形状の板からなる構造のもの、(c)はL形鋼を六角形状に連結した構造のものを示す。なお、棒群と上又は下連結部材との結合方法は、溶接、ねじ等の結合方法を使用することができ、適当な結合強度を有するいずれの方法も使用することができる。
【0023】
このような塔モジュールを連結して形成した塔は、塔のどの方向の曲げ剛性も等しくなる。従って、プロペラ型風車発電装置において、プロペラ型風車がどの方向を向いていても塔は一定の曲げ強度を有し、塔の軽量化を図ることができる。また、塔の受ける風圧を小さくすることができる。このような塔を構成する塔モジュールは、上記に示す実施例に限らない。例えば、図6に示す構成の塔モジュールでもよい。図6(a)に示す塔モジュール12は、図1の塔モジュールにおいて下連結部材を欠く構造をしており、3本の棒101からなる棒群100とその上端を連結する上連結部材160により構成されている。図6(b)に示す塔モジュール13は、図1の塔モジュールにおいて上連結部材を欠く構造をしており、3本の棒101からなる棒群100とその下端を連結する下連結部材150により構成されている。
【0024】
図6(a)に示す塔モジュール12を3段に積み重ね連結して形成した塔の実施例を図7に示す。さらに、図7に示す塔にベース部材170を追加した構造の塔の実施例を図8に示す。このようなベース部材170は、塔を設置する基礎の構造によって必要になる場合がある。なお、塔モジュールの曲げ剛性はその軸の周りのいずれの方向にも等しいから、図7に示すように連結される塔モジュールのそれぞれの棒の配置に関係なく、塔モジュールを連結することができる。すなわち、塔を形成する3つの塔モジュール12の棒群100を構成する棒が、塔の上下方向一直線上にあるように塔モジュール12を連結しなくてもよい。棒群を構成する棒は、塔モジュールの一部分であって、塔を構成する主柱としての機能を有してはいない。
【0025】
図9に、図6(b)に示す塔モジュール13を3段に連結し、さらに、塔の頂部にヘッド部材175を追加してプロペラ型風車発電機の設置部を設けた塔の例を示す。このように塔の頂部あるいは塔の下端部は、プロペラ型風車発電機の設置部分となりあるいは塔の基礎と連結される部分となり、特異な部位であるから適宜所要の部材が追加され、また、追加工がされる場合が少なくない。
【0026】
塔モジュールの連結方法は、塔の性能仕様、経済性等を考慮してねじ結合、溶接等適切な方法が選択される。塔モジュールをネジ結合により連結する場合は、塔モジュールの上連結部材とその上に積み重ねられる塔モジュールの下連結部材とをねじ及びナットにより直接結合して塔モジュールを連結する方法の他、例えば図10に示すように上連結部材と下連結部材の間にスペーサーを介して塔モジュールを連結する方法も用いられる。図10(a)は、2つの塔モジュール10を、上連結部材160と下連結部材150の間に円板状のスペーサー21を介してボルト25及びナット26で連結する例を示す。図10(b)は、2つの塔モジュール10を、上連結部材160と下連結部材150の間に円筒状のスペーサー23を介してボルト25及びナット26で連結する例を示す。
【0027】
以上、塔モジュールを連結して塔を形成する例について説明した。これらの塔は、工場で製造された塔モジュールを塔の設置現場に輸送し、現場で塔モジュールを積み重ね連結して形成されるのが一般的である。しかしながら、塔の設置現場が交通不便な所であるような場合等には、塔モジュールを構成する部材を分解した状態で塔設置現場まで輸送し、一つ一つ現場で組み付けて塔を形成するのが好ましい場合がある。そのような場合は、例えば、塔の設置現場に輸送された棒、連結部材を用いて図11に示す方法により容易に塔を形成することができる。
【0028】
図11に示す方法は、先ず、3本の棒115からなる棒群120を基礎50に固定し、その上端に連結部材165を組み付けることから行う。次に、その連結部材165の上に3本の棒116からなる棒群130を組み付け、その上端に連結部材166を取り付ける。さらに、連結部材166の上に3本の棒117からなる棒群140を組み付け、その上端に連結部材167を取り付けて塔を形成する。なお、上記の各段階を繰り返すことによってさらに高い塔を形成することができる。また、棒群と連結部材の結合は、溶接あるいはねじ結合等所要の結合方法を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】塔の一実施例の斜視図である。
【図2】塔の他の実施例の斜視図である。
【図3】図1の塔を構成する塔モジュールの構成を示す斜視図である。
【図4】図2の塔の下段を構成する塔モジュールの構成を示す斜視図である。
【図5】塔モジュールを構成する連結部材の実施例の斜視図である。
【図6】塔モジュールの他の実施例の斜視図である。
【図7】図6(a)に示す塔モジュールを連結して形成された塔の実施例の斜視図である。
【図8】図7の変形例の実施例の斜視図である。
【図9】図6(b)に示す塔モジュールを連結し、さらにヘッド部材を追加して構成された塔の実施例の斜視図である。
【図10】塔モジュールをスペーサーを介してねじ結合する場合の実施例の斜視図である。
【図11】塔を設置現場で形成する場合の塔の形成方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
10、11、12、13 塔モジュール
100、110、120、130、140 棒群
101、111、115、116、117 棒
150、151 下連結部材
160、161 上連結部材
165、166、167 連結部材
170 ベース部材
175 ヘッド部材
20 ねじ結合
21 スペーサー
23 スペーサー
25 ボルト
26 ナット
50 基礎
【技術分野】
【0001】
本発明は、塔モジュール及びこれを用いて形成する塔に係り、特にプロペラ型風車発電機を支持する塔に対して好適な塔モジュール及びこれを用いて形成する塔に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電はクリーンエネルギーとして注目され、風力発電による発電量の増大を図るために発電コスト低減の種々の試みがなされている。発電コスト低減の一の方向として、発電効率の高いプロペラ型風車を用いた一層効率の高い風力発電装置の開発が進められ、プロペラ型風車発電機の大型化及びそれを支持する塔の高さの高度化が進んでいる。
【0003】
例えば、プロペラの長さ及び塔の高さが50mを超える風力発電装置が製作されており、その塔には通常は直立した円筒状のモノポール型のものが用いられている。このような風力発電装置においては、プロペラ型風車発電機の重量が50トン前後にもなるから塔の強度を確保することが重要になる。塔の強度確保において、曲げモーメントは塔の下方ほど大きくなるために、塔の下方部分ほど大きい曲げ剛性を確保することが必要になる。このため上記のような例では、塔の下端部の直径は3m前後になり、塔の重量は100トンを超えるようなものになっている。
【0004】
このような大型の風力発電装置においては、風力発電装置の設置現場へのその構成部材の輸送や塔の基礎を含めた風力発電装置の組立て上の困難さ、建設コストの上昇等が問題になっている。また、塔の強度に与える風圧の影響が大きいことが問題になっている。このような問題に対し、例えば特許文献1に脚構造体の塔が提案されている。すなわち、風車を旋回可能に支持する風車支持部を備える塔であって、岩盤基礎に各脚の下端部が固定され、各脚の上端部が上方に集束して、全体として上向きに先細形状をなす複数の三角脚鉄塔構造又は四角脚鉄塔構造からなる塔が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002-61564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の提案に係る塔は、3又は4本の立設する主柱が上方で集束した脚構造体であるから、上記のような大型のプロペラ型風車発電機を支持するには強度上の問題がある。また、このような脚構造体は、一般に負荷の方向によって曲げ剛性が異なる。このため、プロペラ型風車発電機がどの方向を向いても塔の強度が確保できるように、低い曲げ剛性の方向の強度を基準に設計されるので、塔のサイズ、重量が大きくなりやすいという問題がある。さらに、風力発電装置を設置する際の塔構成品の輸送及び建設上の問題も十分には解決されていない。
【0007】
このような脚構造体は従来より高圧電線用鉄塔や通信塔にも採用されているが、いずれもその基本構造は、3又は4本の立設する主柱と、これらを連結する補助部材、すなわちそれらの主柱の適当な高さ位置に間隔を置いて配設した連結部材からなる構造となっており、主柱の強度が重要な要素になっている。このため、塔は主柱の最大負荷を受ける部分を基準に設計されるから主柱のサイズが大きくなりひいては塔の重量が大きくなりやすいという問題もある。
【0008】
本発明はこのような従来の問題点に鑑み、塔構成部材の輸送及び塔建設時の問題点を解決するとともに、曲げ剛性が高く軽量な塔モジュール及びこれを用いて形成する塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる柱状体の中心軸回りの曲げ剛性は、どの方向についても等しく、このような柱状体を塔モジュールとして塔を形成すれば軽量でプロペラ型風車発電装置に好適な塔を形成することができるという知見に基づき本発明を完成した。
【0010】
本発明に係る塔は、連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上に120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる塔モジュールを、複数個積み上げ連結してなる。
【0011】
上記発明において、塔は、その最下段の塔モジュールが最上段の塔モジュールよりも大きい曲げ剛性を有するように連結してなるのがよい。
【0012】
本発明に係る塔を構成する塔モジュールは、連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上に120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる。上記塔モジュールにおいて下及び上連結部材は環状体であるのが好ましい。
【0013】
本発明に係る塔は、上記の塔モジュールを複数個積み重ね連結してなるものであるが、
塔を設置する現場で、塔モジュールを構成する部材を個々に組み付けて塔を形成することができる。すなわち、(1)基礎上に、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有する3本の棒をセットとする1以上の棒群を、同一の棒群に属する3本の棒が円周上に120°の角度を離間するように配置して立設固定し、さらに、該棒群上に連結部材を固定して第一の塔モジュールを構築する段階、(2)前記第一の塔モジュールの上に、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有する3本の棒をセットとする1以上の棒群を、同一の棒群に属する3本の棒が円周上に120°の角度を離間するように配置して立設固定し、さらに、該棒群上に連結部材を固定して第二の塔モジュールを構築する段階、からなる塔の形成方法により、または、さらに前記(2)の段階を1以上繰り返す段階を含んでなる塔の形成方法により、塔を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る塔モジュールは軽量で曲げ剛性が大きく、かつその中心軸回りのどの方向の曲げ剛性も等しい。係る塔モジュールを用いて形成された塔は、軽量で塔の中心軸回りに関してどの方向の曲げ剛性も等しく、プロペラ型や多翼型の水平軸型風車、ダリウス型やサボニウス型の垂直軸型風車等の風車発電装置用の塔や通信塔等の鉄塔、特に塔頂部で重量物を支持しかつ塔の中心軸回りのどの方向にも高い曲げ剛性が要求されるプロペラ型風車発電装置用の塔に好適に用いることができる。また、塔構成部材をプロペラ型風車発電装置等の設置現場まで輸送するのに適宜で経済的な手段を選択することができ、輸送された塔構成部材を用いて現場で容易に塔を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る塔の実施の形態について図を基に説明する。本発明に係る塔は、例えば図1,2に示すように図3及び4に示す塔モジュールが連結されて形成される。すなわち、図1に示す塔は、図3に示す塔モジュール10が2個ねじ結合20により連結されて形成される場合の例である。図2に示す塔は、図4に示す塔モジュール11の上に図3に示す塔モジュール10が積み重ねられねじ結合20により連結されて形成される場合の例である。このように本発明に係る塔は、塔の性能仕様(所要の高さ、強度)を満たすように所要の塔モジュールを組み合わせ連結して形成されるものである。
【0016】
本発明に係る塔モジュールは、連結部材と、該連結部材に対し3本の棒ごとにセットになって一体に連結された1以上の棒群とから構成される基本構造をなしている。例えば、図3に示す塔モジュール10は、3本の棒101からなる棒群100と、棒群100の下端を連結する下連結部材150と、棒群100の上端を連結する上連結部材160とから構成される。図4に示す塔モジュール11は、3本の棒101からなる棒群100及び3本の棒111からなる棒群110と、棒群100及び110の下端を連結する下連結部材151と、棒群100及び110の上端を連結する上連結部材161とから構成される。塔モジュールの曲げ剛性は、多数の棒群を有するものほど大きい。このため、一般には塔の下部を構成する塔モジュールほど、多くの棒群を有するものが用いられる。
【0017】
一の塔モジュールを構成する棒群において、すべての棒の長さは同一である。また、同じ棒群に属する3本の棒の曲げ剛性(棒の横断面の断面二次極モーメントIz、ヤング率Eとすると、E×Iz)も同一である。
【0018】
また、同じ棒群に属する3本の棒は、円周上に120°の角度を離間して配置される。例えば、図3の例では、棒群100を構成する3本の棒101は、下連結部材150の円周C1上及び上連結部材160の円周D1上120°の角度を離間し、すなわちθ=120°の中心角をなし円周上等間隔に配置されている。図4の例では、棒群100を構成する1の組の3本の棒101は、図3に示すものと同様に下連結部材151の円周C1上及び上連結部材161の円周D1上に120°の角度を離間して配置され、棒群110を構成する2の組の3本の棒111は、棒101の配置位置から角度αずれた下連結部材151の円周C1上及び上連結部材161の円周D1上に互いに120°離間して配置されている。
【0019】
このように構成された塔モジュールの曲げ剛性は、上又は下連結部材面に対して直角方向、すなわち塔モジュールの中心軸回りにどの方向についても等しい。なお、図4の例で、2の組の3本の棒111が下連結部材15の円周C2上に120°の角度を離間して配置されていてもよい。この場合も、同じ組に属する3本の棒が円周上に120°の角度を離間して配置されているので、塔モジュールの曲げ剛性はどの方向についても等しい。
【0020】
棒群100、110が配置される上記円周C1とD1に関し相互の径の大小は問わない。しかしながら、塔の上部ほど塔に負荷される曲げモーメントは小さく、上部の塔モジュールの曲げ剛性は下部のものより小さくすることができるので、円周D1を円周C1より小さくするのがよい。これにより、上連結部材161を外径の小さいものにすることができ塔全体の重量軽減を図ることができる。
【0021】
なお、棒群を構成する棒は、中実又は中空のいずれのものも使用することができ、断面形状は円形又は角形のいずれのものをも使用することができる。また、棒の上部ほど断面積が小さくなるような、例えば、円錐柱形状の棒も使用することができる。しかしながら、経済性を考慮すると、広く市販されている、丸棒、丸又は角パイプ、H形鋼、L形鋼を使用するのがよい。
【0022】
棒群を連結する下連結部材及び上連結部材は、棒群と一体に結合されて塔モジュールを構成するものであるが、塔モジュールの全体重量やねじり強度に与える影響が大きい。このためねじり強度が高くしかも重量が軽いものが求められる。例えば、図5に示すような環状体の下連結部材又は上連結部材が好ましい。図5の(a)は丸パイプを円環状に曲げ加工した構造のもの、(b)は中心部をくりぬいた六角形状の板からなる構造のもの、(c)はL形鋼を六角形状に連結した構造のものを示す。なお、棒群と上又は下連結部材との結合方法は、溶接、ねじ等の結合方法を使用することができ、適当な結合強度を有するいずれの方法も使用することができる。
【0023】
このような塔モジュールを連結して形成した塔は、塔のどの方向の曲げ剛性も等しくなる。従って、プロペラ型風車発電装置において、プロペラ型風車がどの方向を向いていても塔は一定の曲げ強度を有し、塔の軽量化を図ることができる。また、塔の受ける風圧を小さくすることができる。このような塔を構成する塔モジュールは、上記に示す実施例に限らない。例えば、図6に示す構成の塔モジュールでもよい。図6(a)に示す塔モジュール12は、図1の塔モジュールにおいて下連結部材を欠く構造をしており、3本の棒101からなる棒群100とその上端を連結する上連結部材160により構成されている。図6(b)に示す塔モジュール13は、図1の塔モジュールにおいて上連結部材を欠く構造をしており、3本の棒101からなる棒群100とその下端を連結する下連結部材150により構成されている。
【0024】
図6(a)に示す塔モジュール12を3段に積み重ね連結して形成した塔の実施例を図7に示す。さらに、図7に示す塔にベース部材170を追加した構造の塔の実施例を図8に示す。このようなベース部材170は、塔を設置する基礎の構造によって必要になる場合がある。なお、塔モジュールの曲げ剛性はその軸の周りのいずれの方向にも等しいから、図7に示すように連結される塔モジュールのそれぞれの棒の配置に関係なく、塔モジュールを連結することができる。すなわち、塔を形成する3つの塔モジュール12の棒群100を構成する棒が、塔の上下方向一直線上にあるように塔モジュール12を連結しなくてもよい。棒群を構成する棒は、塔モジュールの一部分であって、塔を構成する主柱としての機能を有してはいない。
【0025】
図9に、図6(b)に示す塔モジュール13を3段に連結し、さらに、塔の頂部にヘッド部材175を追加してプロペラ型風車発電機の設置部を設けた塔の例を示す。このように塔の頂部あるいは塔の下端部は、プロペラ型風車発電機の設置部分となりあるいは塔の基礎と連結される部分となり、特異な部位であるから適宜所要の部材が追加され、また、追加工がされる場合が少なくない。
【0026】
塔モジュールの連結方法は、塔の性能仕様、経済性等を考慮してねじ結合、溶接等適切な方法が選択される。塔モジュールをネジ結合により連結する場合は、塔モジュールの上連結部材とその上に積み重ねられる塔モジュールの下連結部材とをねじ及びナットにより直接結合して塔モジュールを連結する方法の他、例えば図10に示すように上連結部材と下連結部材の間にスペーサーを介して塔モジュールを連結する方法も用いられる。図10(a)は、2つの塔モジュール10を、上連結部材160と下連結部材150の間に円板状のスペーサー21を介してボルト25及びナット26で連結する例を示す。図10(b)は、2つの塔モジュール10を、上連結部材160と下連結部材150の間に円筒状のスペーサー23を介してボルト25及びナット26で連結する例を示す。
【0027】
以上、塔モジュールを連結して塔を形成する例について説明した。これらの塔は、工場で製造された塔モジュールを塔の設置現場に輸送し、現場で塔モジュールを積み重ね連結して形成されるのが一般的である。しかしながら、塔の設置現場が交通不便な所であるような場合等には、塔モジュールを構成する部材を分解した状態で塔設置現場まで輸送し、一つ一つ現場で組み付けて塔を形成するのが好ましい場合がある。そのような場合は、例えば、塔の設置現場に輸送された棒、連結部材を用いて図11に示す方法により容易に塔を形成することができる。
【0028】
図11に示す方法は、先ず、3本の棒115からなる棒群120を基礎50に固定し、その上端に連結部材165を組み付けることから行う。次に、その連結部材165の上に3本の棒116からなる棒群130を組み付け、その上端に連結部材166を取り付ける。さらに、連結部材166の上に3本の棒117からなる棒群140を組み付け、その上端に連結部材167を取り付けて塔を形成する。なお、上記の各段階を繰り返すことによってさらに高い塔を形成することができる。また、棒群と連結部材の結合は、溶接あるいはねじ結合等所要の結合方法を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】塔の一実施例の斜視図である。
【図2】塔の他の実施例の斜視図である。
【図3】図1の塔を構成する塔モジュールの構成を示す斜視図である。
【図4】図2の塔の下段を構成する塔モジュールの構成を示す斜視図である。
【図5】塔モジュールを構成する連結部材の実施例の斜視図である。
【図6】塔モジュールの他の実施例の斜視図である。
【図7】図6(a)に示す塔モジュールを連結して形成された塔の実施例の斜視図である。
【図8】図7の変形例の実施例の斜視図である。
【図9】図6(b)に示す塔モジュールを連結し、さらにヘッド部材を追加して構成された塔の実施例の斜視図である。
【図10】塔モジュールをスペーサーを介してねじ結合する場合の実施例の斜視図である。
【図11】塔を設置現場で形成する場合の塔の形成方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
10、11、12、13 塔モジュール
100、110、120、130、140 棒群
101、111、115、116、117 棒
150、151 下連結部材
160、161 上連結部材
165、166、167 連結部材
170 ベース部材
175 ヘッド部材
20 ねじ結合
21 スペーサー
23 スペーサー
25 ボルト
26 ナット
50 基礎
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上に120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる塔モジュールを、複数個積み上げ連結してなる塔。
【請求項2】
塔の最下段の塔モジュールは最上段の塔モジュールよりも大きい曲げ剛性を有することを特徴とする請求項1に記載の塔。
【請求項3】
連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上に120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる塔モジュール。
【請求項4】
下及び上連結部材は環状体であることを特徴とする請求項3に記載の塔モジュール。
【請求項5】
(1)基礎上に、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有する3本の棒をセットとする1以上の棒群を、同一の棒群に属する3本の棒が円周上に120°の角度を離間するように配置して立設固定し、さらに、該棒群上に連結部材を固定して第一の塔モジュールを構築する段階、
(2)前記第一の塔モジュールの上に、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有する3本の棒をセットとする1以上の棒群を、同一の棒群に属する3本の棒が円周上に120°の角度を離間するように配置して立設固定し、さらに、該棒群上に連結部材を固定して第二の塔モジュールを構築する段階、からなる塔の形成方法、
または、さらに前記(2)の段階を1以上繰り返す段階を含んでなる塔の形成方法。
【請求項6】
第一の塔モジュールが最上段の塔モジュールよりも大きい曲げ剛性を有するように塔を形成することを特徴とする請求項6に記載の塔の形成方法。
【請求項1】
連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上に120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる塔モジュールを、複数個積み上げ連結してなる塔。
【請求項2】
塔の最下段の塔モジュールは最上段の塔モジュールよりも大きい曲げ剛性を有することを特徴とする請求項1に記載の塔。
【請求項3】
連結部材と、該連結部材に対し、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有し、円周上に120°の角度を離間するように配置固定された3本の棒をセットとする1以上の棒群と、からなる塔モジュール。
【請求項4】
下及び上連結部材は環状体であることを特徴とする請求項3に記載の塔モジュール。
【請求項5】
(1)基礎上に、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有する3本の棒をセットとする1以上の棒群を、同一の棒群に属する3本の棒が円周上に120°の角度を離間するように配置して立設固定し、さらに、該棒群上に連結部材を固定して第一の塔モジュールを構築する段階、
(2)前記第一の塔モジュールの上に、同一の長さ及び同一の曲げ剛性を有する3本の棒をセットとする1以上の棒群を、同一の棒群に属する3本の棒が円周上に120°の角度を離間するように配置して立設固定し、さらに、該棒群上に連結部材を固定して第二の塔モジュールを構築する段階、からなる塔の形成方法、
または、さらに前記(2)の段階を1以上繰り返す段階を含んでなる塔の形成方法。
【請求項6】
第一の塔モジュールが最上段の塔モジュールよりも大きい曲げ剛性を有するように塔を形成することを特徴とする請求項6に記載の塔の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−97419(P2006−97419A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287474(P2004−287474)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]