説明

塗工装置

【課題】塗工装置を固定する場合に、位置決めの精度を確実にすることができる塗工装置を提供する。
【解決手段】塗工装置本体12の上部から突出した左右一対の第1突部26,26を固定枠14にある左右一対のアーム46,46によって持ち上げ、塗工装置本体12の下部から突出した左右一対の第2突部28,28を固定枠14の左右一対の支持壁34,34に当接して、位置決めして固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブに塗工液を塗工する塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
布帛、紙、フィルム、金属箔などのウエブに塗工液を塗工する塗工装置としては、次のような種類がある。
【0003】
第1の種類は、特許文献1に示すようなリップコータ型塗工装置である。
【0004】
第2の種類は、特許文献2に示すようなグラビア型塗工装置である。
【0005】
第3の種類は、特許文献3に示すようなダイ型塗工装置である。
【0006】
第4の種類は、特許文献4に示すようなロールコータ型塗工装置である、
第5の種類は、特許文献5に示すような毛細管現象を利用してノズルのスリットから塗工液を吐出させてウエブに塗工する毛細管型塗工装置である。
【0007】
このような塗工装置は、それぞれ塗工するウエブの種類、用途などが異なっているため、試験研究などの際にはこれら各塗工装置を取り替えて試験研究を行う必要がある。
【0008】
そのため、従来はウエブを案内するガイドロールの近傍に、各装置をピンやボルトなどで床に固定して試験研究を行い、その試験研究が終わると他の塗工装置に取り替えていた。
【特許文献1】特開平2−172555号公報
【特許文献2】特開2004−313955公報
【特許文献3】特開2006−346625公報
【特許文献4】特開平10−216590号公報
【特許文献5】特開2006−122891公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように塗工装置を床に固定する場合に、その位置決めや精度が重要である。しかしながら、床がゴミや汚れなどが付着している場合には、その精度維持を維持するのが困難であった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、塗工装置を固定する場合に、位置決めの精度を確実にすることができる塗工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ウエブに塗工液を塗工する塗工装置本体と、前記塗工装置本体を固定する固定枠とを有し、前記塗工装置本体は、前記塗工装置本体の前上部の両側からそれぞれ突出した左右一対の第1突部と、前記塗工装置本体の前面の両側下部から突出した一対の第2突部と、を有し、前記固定枠は、前記塗工装置本体を載置する基台と、前記基台から立設された左右一対の支持壁と、前記左右一対の支持壁の後面下部に設けられ、前記基台に載置された前記塗工装置本体の前記左右一対の第2突部がそれぞれ当接される当接部と、前記左右一対の支持壁の両側にそれぞれ設けられ、前記左右一対の第1突部を下方から持ち上げて固定する左右一対のアームと、前記左右一対のアームを回転させるアーム駆動部と、を有する塗工装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗工装置を固定枠に対し正確に位置決めして固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態の塗工装置10について図1〜図6に基づいて説明する。
【0014】
本実施形態の塗工装置10は、特許文献1に示すようなリップ型塗工装置であり、布帛、フィルム、金属箔、紙などのウエブWに塗工液を塗工する。この塗工装置10は、塗工装置本体12と、この塗工装置本体12を固定する固定枠14とから構成されている。以下、順番に説明していく。
【0015】
(1)塗工装置本体12の構成
塗工装置本体12の構成について、図3及び図4に基づいて説明する。
【0016】
図3は、塗工装置本体12の縦断面図であり、図4は正面図である。
【0017】
塗工装置本体12は、本体支持台16の左右両側から左右一対の本体支持壁18,18が立設されている。
【0018】
この左右一対の本体支持壁18,18の間には、上部からバックアップロール20、ドクターエッジを有するノズルヘッド22、ノズルヘッド22支持するためのヘッド支持部24が配され、バックアップロール20は、左右一対の本体支持壁18に対し回転自在に架設され、ヘッド支持部24は、左右一対の本体支持壁18,18に固定されている。
【0019】
左右一対の本体支持壁18,18の外側であって、その前上部には、円柱型の第1突部26,26が突出している。
【0020】
左右一対の本体支持壁18,18の前面下部には、左右一対の第2突部28が突出している。この第2突部28は、本体支持壁18に回転自在に埋め込まれたコロの一部が突出したものである。
【0021】
本体支持台16の底面の各角部にエアクッショントランスポートシステム30がそれぞれ設けられている。これらエアクッショントランスポートシステム30は、エアクッションに対し空気を吹き付け、塗工装置本体12を浮き上がらせて移動可能にする。なお、これらエアクッショントランスポートシステム30に代えて、キャスターを使用してもよい。
【0022】
(2)固定枠14の構成
次に、固定枠14の構成について、図5及び図6に基づいて説明する。
【0023】
固定枠14は、床に固定された基台32を有し、この基台32から左右一対の支持壁34,34が立設されている。この左右一対の支持壁34,34の間には、例えば5本のガイドロール36,38,40,42,44が水平に回転自在に架設されている。
【0024】
左右一対の支持壁34の外側には、それぞれアーム46が回転軸48を中心に回転自在に設けられている。このアーム46の取り付け位置は、塗工装置本体12の第1突部26に対応する位置である。このアーム46の前部には鍵部が形成され、後端部である基部は、取り付け軸を介してエアシリンダ50のシリンダ部の下端が取り付けられている。このエアシリンダ50のシリンダ部が下方へ延びると、回転軸48を中心に回転してアーム46の鍵部が上がり、エアシリンダ50のシリンダ部が上方へ縮むとアーム46の鍵部が下がる。
【0025】
また、塗工装置本体12の第2突部28に対応する位置には、支持壁34の後面(以下、この部分を「当接部」という)が位置する。
【0026】
(3)塗工装置本体12の固定方法
次に、図1及び図2に基づいて塗工装置本体12の固定枠14に固定する方法について説明する。
【0027】
塗工装置本体12のエアクッショントランスポートシステム30を用いて基台32に載置させ、さらに左右一対の支持壁34に近づける。
【0028】
第1突部26がアーム46の上方にくると、アーム46の鍵部をエアシリンダ50によって持ち上げると、このアーム46の鍵部によって第1突部26を持ち上がる。第1突部26がアーム46によって持ち上げられると、塗工装置本体12全体が、この第1突部26を中心に回転して、第2突部28が支持壁34の当接部に当接し、塗工装置本体12が固定枠14に対し固定される。
【0029】
なお、アーム46によって第1突部26を持ち上げる距離は、5mm程度である。
【0030】
(4)塗工装置本体12の動作
上記のように塗工装置本体12を固定枠14に固定した後、ガイドロール36〜42にウエブWを通し、その後に塗工装置本体12のバックロール20にウエブWを通して再び固定枠14のガイドロール44にウエブWを通す。
【0031】
そして、ウエブWを走行させると、ノズルヘッド22からウエブWの下面に塗工液を塗工することができる。
【0032】
(5)効果
本実施形態によれば、左右一対の第1突部26,26を左右一対のアーム46,46によって持ち上げ、左右一対の第2突部28,28を左右一対の支持壁34,34の当接部に当接することにより確実に位置決めすることができる。
【0033】
また、塗工装置本体12は固定枠14の基台32から数ミリ程度持ち上がった状態で固定されるため、基台32にゴミや汚れなどがあっても、それに影響されることなく位置決めすることができる。
【0034】
また、第1突部26、第2突部28を塗工装置本体12に設け、固定枠14にアーム46を設けるだけの構成であるため、簡単な構成で確実に位置決めすることができる。
【0035】
(6)変更例
本発明は上記各実施形態に限らず、その主旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【0036】
上記実施形態ではリップコータ型の塗工装置本体12を用いたが、試験研究などにおいてこれ以外の、背景技術で示したグラビア型塗工装置、ダイ型塗工装置、ロールコータ型塗工装置、毛細管型塗工装置を固定枠14に固定する場合についても同様である。
【0037】
また、上記実施形態では、アーム46を回転させる手段として、エアシリンダ50を用いたが、これに代えて油圧シリンダ、モータを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態を示す塗工装置の側面図である。
【図2】塗工装置の正面図である。
【図3】塗工装置本体の縦断面図である。
【図4】塗工装置本体の正面図である。
【図5】固定枠の側面図である。
【図6】固定枠の正面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 塗工装置
12 塗工装置本体
14 固定枠
22 ノズルヘッド
26 第1突部
28 第2突部
30 エアクッショントランスポートシステム
32 基台
34 支持壁
36 ガイドロール
46 アーム
48 回転軸
50 エアシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブに塗工液を塗工する塗工装置本体と、前記塗工装置本体を固定する固定枠とを有し、
前記塗工装置本体は、
前記塗工装置本体の前上部の両側からそれぞれ突出した左右一対の第1突部と、
前記塗工装置本体の前面の両側下部から突出した一対の第2突部と、
を有し、
前記固定枠は、
前記塗工装置本体を載置する基台と、
前記基台から立設された左右一対の支持壁と、
前記左右一対の支持壁の後面下部に設けられ、前記基台に載置された前記塗工装置本体の前記左右一対の第2突部がそれぞれ当接される当接部と、
前記左右一対の支持壁の両側にそれぞれ設けられ、前記左右一対の第1突部を下方から持ち上げて固定する左右一対のアームと、
前記左右一対のアームを回転させるアーム駆動部と、
を有する塗工装置。
【請求項2】
前記固定枠の前記左右一対の支持壁の間には、前記塗工装置本体にウエブを案内するガイドロールが回転自在に架設されている、
請求項1記載の塗工装置。
【請求項3】
前記塗工装置本体は、リップコータ型塗工部、グラビア型塗工部、ロールコータ型塗工部、毛細管型塗工部、または、ダイ型塗工部を有する、
請求項1記載の塗工装置。
【請求項4】
前記塗工装置本体の底面には、前記塗工装置本体を移動させるエアークッショントランスポートシステム、または、キャスターが設けられている、
請求項1記載の塗工装置。
【請求項5】
前記アームを駆動部が、エアーシリンダ、油圧シリンダ、または、モータである、
請求項1記載の塗工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−142775(P2009−142775A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324446(P2007−324446)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000240341)株式会社ヒラノテクシード (58)
【Fターム(参考)】