説明

塗布手段及び塗布膜の形成方法

【課題】バーコーティングにおいて、塗布膜の厚みを均一にする。
【解決手段】ウェブ12の搬送路の下側には塗布バー31が配される。塗布ヘッド25には周溝51が対となって形成される。ウェブ中央部12aが塗布エリアとなる。塗布バー31は周溝51とバー中央部54とバー端部55とを有する。バー中央部54は塗布エリアのみを巻きかける。バー端部55は、バー中央部54から離れるようにウェブ12の幅方向に配され、ウェブ端部12bを巻きかける。周溝51はバー中央部54及びバー端部55の間に形成される。スロットはバー中央部54に液を供給する。バー中央部54に供給された液は、バー中央部54及びウェブ中央部12aの隙間に液溜まりをつくる。液溜まりをなす液の一部は、ウェブ12に塗布される。液溜まりをなす液のうち塗布に余剰な液は、周溝51を介してバー中央部54の端から流下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布手段及び塗布膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長手方向へ搬送されるウェブに塗布液を塗布し、ウェブに塗布膜を形成する方法として、ワイヤーが巻きつけられた塗布バーを用いたワイヤーバーコーティングや、塗布ロッドを用いたロッドコーティングが知られている。ワイヤーバーコーティングやロッドコーティングは、ウェブ上に薄い塗布膜を形成することが容易であることから、さまざまな分野で広く用いられている。
【0003】
このワイヤーバーコーティングやロッドコーティングにおいて、塗布膜の厚みが均一となるような工夫がなされている。例えば、特許文献1に記載の発明は、大径バー部と、大径バー部の両端に設けられた小径バー部とからなる段付きバーを、塗布バーとして用いる。このような塗布バーを用いてワイヤーバーコーティングを行うと、大径バー部のみがウェブに接触するため、大径バー部に接触した部分に塗布膜が形成する。そして、塗布膜の形成につき余剰な塗布液は、大径バー部の幅方向両端から流下する結果、幅方向において塗布膜の厚さを均一にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−269715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明を行った場合でも、ウェブの両端部が塗布ロッドに支持されていないことに起因して、幅方向において塗布膜の厚さがばらついてしまう場合があった。特に、ウェブの両端部が幅広となる場合には、このような厚みムラが顕著となってしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、ワイヤーバーコーティングやロッドコーティングを用いた塗布膜の形成方法、及びワイヤーバーコーティングやロッドコーティングに用いられる塗布手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水平に配された棒状の塗布手段に巻き掛けてウェブを長手方向へ搬送し、前記塗布手段を用いて前記塗布手段の周面に供給された液から前記ウェブの幅方向中央部のみに塗布膜を形成する塗布膜の形成方法において、前記ウェブの搬送路の下方に設けられた前記塗布手段を用いて前記幅方向中央部のみを巻き掛けながら、前記ウェブの搬送路の下方にて前記塗布手段から前記ウェブの幅方向へ離隔するように配された支持手段を用いて、前記ウェブが幅方向において水平となるように前記ウェブの幅方向両端部のみを支持し、前記ウェブ及び前記塗布手段によって形成される前記搬送方向上流側の隙間に溜められた前記液を前記幅方向中央部に塗布し、前記幅方向中央部の塗布につき余剰の前記液を前記塗布手段の前記幅方向両端から落とすことを特徴とする。
【0008】
棒状の前記支持手段を用いて、前記ウェブが幅方向において水平となるように前記ウェブの幅方向両端部のみを巻き掛けることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、長手方向に搬送されるウェブの下方に水平に配され、前記ウェブを巻き掛け、前記ウェブの幅方向中央部のみに液を塗布する棒状の塗布手段において、前記幅方向中央部のみを巻き掛け、前記幅方向中央部とによって形成される前記搬送方向上流側の隙間に溜められた前記液を前記幅方向中央部に塗布する中央棒部と、前記ウェブの下方にて前記中央棒部から離隔するように前記ウェブの幅方向両側に配され、前記ウェブが幅方向において水平となるように前記ウェブの幅方向両端部を支持する耳支持手段とを有し、前記ウェブのうち前記中央棒部に巻き掛けられている部分及び前記耳支持手段により支持されている部分の間の下側には、前記塗布につき余剰となった前記液を前記中央棒部の両端から落とすための空間が形成されたことを特徴とする。
【0010】
前記耳支持手段は、前記幅方向両端部を下方から支持する耳支持棒部を有し、この耳支持棒部は前記中央棒部と同一直線上に配されることが好ましい。また、前記中央棒部と前記耳支持棒部との径が略等しいことが好ましい。
【0011】
前記中央棒部は、中央棒本体及びこの中央棒本体全域に密に巻かれたワイヤーからなることが好ましい。また、前記耳支持棒部は、耳支持棒本体とこの耳支持棒本体に巻かれたワイヤーとからなることが好ましい。なお、前記耳支持棒と前記中央棒部とは連結棒により連結され、この連結棒の径は、前記耳支持棒の径と前記中央棒部の径とのいずれよりも小さいことが好ましい。
【0012】
前記中央棒部は、円筒状であって、両方の端面が凹む中央本体を備え、前記端面の凹みは前記空間と連通することが好ましい。また、前記中央本体の軸方向と鉛直方向とがなす断面において、前記中央本体の周面と前記凹み部とがなす角の角度は鋭角であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウェブのうち塗布液が塗布されるウェブ中央部のみを棒状の塗布手段で巻きかけ、ウェブ中央部の巻き掛けと並行して、ウェブ端部の支持を行なうため、塗布手段に巻き掛けられたウェブ中央部に対して塗布を行い、この塗布につき余剰となった塗布液を塗布手段の幅方向両端側から流下させる際、幅方向におけるウェブのたわみを防ぐことができる。したがって、本発明によれば、ウェブのたわみに起因する塗布膜の厚みのばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】積層体製造設備の概要を示す説明図である。
【図2】塗布装置の概要を示す側面図である。
【図3】塗布ヘッドの概要を示す斜視図である。
【図4】第1塗布バーの概要を示す正面図である。
【図5】塗布バーにより塗布膜が形成される過程の概要を示すV−V線断面図である。
【図6】塗布ヘッドを用いた塗布液の塗布の概要を示す斜視図である。
【図7】VII部分の拡大図である。
【図8】第2塗布バーの概要を示す正面図である。
【図9】第3塗布バーの概要を示す正面図である。
【図10】第4塗布バーの概要を示す正面図である。
【図11】第5塗布バーの概要を示す正面図である。
【図12】第6塗布バーの概要を示す側面図である。
【図13】XIII部分の拡大図である。
【図14】第7塗布バーの概要を示す断面図である。
【図15】第8塗布バーの概要を示す断面図である。
【図16】第9塗布バーを有する塗布ヘッドの概要を示す斜視図である。
【図17】第10塗布バーの概要を示す側面図である。
【図18】第11塗布バーの概要を示す断面図である。
【図19】第11塗布バーの概要を示す断面図である。
【図20】第11塗布バーの概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、積層体製造設備10は、ウェブ12を送り出すウェブ供給装置14と、送り出されたウェブ12を巻き取る巻き取り装置15とを有する。ウェブ供給装置14と巻き取り装置15との間には、搬送ローラ16が適宜配される。この搬送ローラ16により、ウェブ供給装置14と巻き取り装置15との間には、ウェブ12の搬送路が形成される。ウェブ12の搬送路には、上流側から順次、塗布装置17と乾燥装置18とが配される。塗布装置17は、溶剤及び固形分からなる塗布液をウェブ12に塗布して、塗布液からなる塗布膜をウェブ12の表面に形成する。乾燥装置18は、塗布膜に乾燥風をあてて、塗布膜から溶剤を蒸発させる。溶剤の蒸発により塗布膜は乾燥膜となり、ウェブ12は、乾燥膜を有する積層体となる。積層体となったウェブ12は、巻き取り装置15にて巻き取られる。
【0016】
(ウェブ)
ウェブ12は、有機材料、無機材料のいずれでも適用可能である。有機材料としては、例えば、セルロースアシレートフィルムやポリエチレンテレフタラートフィルムやポリイミドフィルムなどが挙げられる。ウェブ12の厚みは、特に限定されないが、例えば、25μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0017】
(塗布液)
塗布液は、固形物の溶液であってもよいし、固形物の分散液であってもよい。塗布液の粘度は、0.05Pa秒以上0.2Pa秒以下であることが好ましい。また、塗布液の表面張力は、20mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。固形分濃度は、20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0018】
(固形分)
固形分としては、所定の樹脂材料やディスコティック化合物等を用いることができる。樹脂材料として、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などがあり、いずれも本発明で適用できる。
【0019】
ディスコティック(円盤状)化合物の例としては、例えば、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記ディスクティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであれば上記記載に限定されるものではない。また、前記公報において円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。さらに、ディスコティックネマティック相または一軸性の柱状相を形成し得る、円盤状化合物の少なくとも一種を含有し、かつ光学異方性を有することを特徴とする化合物を用いることが好ましい。また円盤状化合物がトリフェニレン誘導体であることが好ましい。ここで、トリフェニレン誘導体が、特開平7−306317号公報に記載の(化2)で表される化合物であることが好ましい。
【0020】
(溶剤)
溶剤としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などがあり、いずれも本発明で適用できる。
【0021】
(塗布装置)
図2に示すように、塗布装置17内には、所定の位置に並べられた搬送ローラ16により、ウェブ12の搬送路22が形成される。搬送路22の下方において、搬送ローラ16の間には塗布ヘッド25が設けられる。
【0022】
(塗布ヘッド)
図2及び図3に示すように、塗布ヘッド25は、塗布液をウェブ12に塗布するものであり、ウェブ12に塗布液を塗布する回転自在な塗布バー31と、塗布バー31を支持する支持台32と、塗布バー31に塗布液を供給する液供給部33とからなる。
【0023】
(支持台)
支持台32は、ウェブ12の幅方向に平行な水平軸35と、水平軸35の両側に配され、水平軸35を支持する軸支持部36と、水平軸35を駆動するモータ37とを有する。水平軸35には、塗布バー31が回動自在に取り付けられる。なお、図3では、水平軸35の両側に配された軸支持部36の一方を省略している。
【0024】
(液供給部)
液供給部33は、水平軸35に取り付けられた塗布バー31の下方に配される。液供給部33の上部には、ウェブ12の幅方向と平行なスロット41,42が形成される。スロット41は水平軸35よりも搬送方向上流側に配され、スロット42は水平軸35よりも搬送方向下流側に配される。スロット41、42の先端は、塗布バー31の周面に近接するように開口する。スロット41、42は、それぞれ、液供給部33内に設けられるマニホールド43、44と接続する。それぞれのマニホールドは、図示しない配管を介してポンプ45,46と接続する。
【0025】
(塗布バー)
図4に示すように、塗布バー31は、塗布バー31の中央に設けられたバー中央部54と、塗布バー31の両端に設けられたバー端部55と、バー中央部54とバー端部55と間に形成された周溝51とを有する。バー中央部54は、バー状であり、幅方向におけるウェブ12の中央部(以下、ウェブ中央部と称する)12aのみを巻きかける。バー端部55は、幅方向におけるウェブ12の端部(以下、ウェブ端部と称する)12bのみを巻きかけるためのものであり、バー状に形成され、バー中央部54から幅方向に離れるように配される。周溝51は周方向に伸び環状に形成される。
【0026】
ここで、ウェブ12の幅方向におけるウェブ中央部12aは、ウェブ12に形成される塗布膜の形成エリア、すなわち塗布液の塗布エリアとして設定される。また、バー中央部54の長さLaは、ウェブ中央部12aの長さと等しくなるように設定される。ウェブ端部12bの幅は、ウェブ12の幅及びウェブ中央部12aの幅によって決定されるが、例えば、5mm以上であることが好ましい。
【0027】
ウェブ12の幅方向において、バー中央部54の長さLa(図4参照)は、スロット41の長さLb(図3参照)よりも長いことが好ましい。なお、バー中央部54の長さLaは、スロット41の長さLbと等しくても良いし、スロット41の長さLbよりも短くても良い。
【0028】
長さLaが長さLbよりも長い場合、ウェブ12の幅方向におけるスロット41の一端からバー中央部54の一端までの長さLa−bは、5mm以上15mm長いことが好ましい。同様に、スロット41の他端からバー中央部54の他端までの長さLa−bは、5mm以上15mm長いことが好ましい。これにより、ウェブ12の幅方向端部において塗布される塗布液の量が最適なものとなる。長さLa−bが5mm未満の場合には、ウェブ12の幅方向端部に集まる塗布液の量が多くなるために、幅方向端部における塗布膜の厚みが厚くなりやすい。一方、長さLa−bが15mmを超える場合には、ウェブ12の幅方向端部に集まる塗布液の量が少なくなるために、幅方向端部における塗布膜の厚みが薄くなりやすい。
【0029】
バー中央部54の径D1とバー端部55の径D2とは等しい。また、バー中央部54やバー端部55の径D1は、6mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0030】
周溝51の溝幅Wxは、ウェブ端部12bの幅よりも狭く、塗布液がバー中央部54の両端から流下できる程度のものであればよい。溝幅Wxは、例えば、4mm以上であることが好ましい。周溝51の溝深さDxは、塗布液が流下できる程度のものであれば良く、例えば、4mm以上6mm以下であることが好ましい。
【0031】
バー中央部54は、バー状の中央本体54aと、中央本体54aの長さ方向において密に巻かれたワイヤー54bとからなる。ワイヤー54bの径は、100μm以上500μm以下であることが好ましい。ワイヤー54bは、螺旋巻きであってもよいが、その他の公知の巻き方であっても良い。
【0032】
次に、本発明の作用を説明する。図1及び図2に示すように、ウェブ供給装置14から送り出されたウェブ12は、搬送路22上を搬送される。塗布装置17において、塗布ヘッド25の搬送方向上流側及び下流側に配された搬送ローラ16により、ウェブ12は塗布バー31に所定のラップ角で巻き掛けられながら搬送される。ウェブ12の搬送張力は3N/m以上12N/m以下であることが好ましい。塗布装置17は、塗布ヘッド25を用いて、中央部巻き掛け工程と両端部支持工程とが同時に行われる。更に、中央部巻き掛け工程では、塗布工程と、液落とし工程とが順次行われる。
【0033】
(中央部巻き掛け工程及び両端部支持工程)
図5及び図6に示すように、塗布ヘッド25において、ウェブ12は、塗布バー31に巻き掛けられながら長手方向に搬送される。モータ37により、塗布バー31は、ウェブ12の搬送速度と等しい周速度で、同方向に回転する。
【0034】
ウェブ中央部12aは、位置Psにおいてバー中央部54の周面との接触が開始し、位置Peにおいてバー中央部54の周面との接触が終了する。また、ウェブ端部12bも同様に、位置Psにおいてバー端部55の周面との接触が開始し、位置Peにおいてバー端部55の周面との接触が終了する。位置Ps及びバー中央部54の中心を通る線分と、位置Pe及びバー中央部54の中心を通る線分との交差角度θは、8°以上16°以下であることが好ましい。
【0035】
(塗布工程)
図2に示すように、ポンプ45により、塗布液がスロット41から押し出される。図5及び図6に示すように、スロット41から押し出された塗布液は、回転状態のバー中央部54の周面に付着し、バー中央部54の回転によりピックアップされる。バー中央部54によりピックアップされた塗布液は、位置Psに向かって送られる。この結果、ウェブ12とバー中央部54との隙間には、塗布液が溜まる液溜まりが形成する。
【0036】
液溜まりにおける塗布液は、バー中央部54の回転により、位置Psに向かうものの、ウェブ12とバー中央部54との隙間、すなわち隣り合うワイヤー54bとウェブ12の下面12uとにより囲まれた部分70(図7参照)に充填された塗布液のみが位置Ps、Pc、Peを順次通過する。そして、位置Peを通過した後のウェブ12の下面12uには、幅Laの塗布膜65が形成される。
【0037】
(液落とし工程)
一方、液溜まりにある塗布液のうち部分70(図7参照)に充填されなかった塗布液は、液溜まりに留まる、または位置Psから位置Pcにかけてバー中央部54の両端から周溝51に向かって流下する。この結果、ウェブ中央部12aの塗布に余剰な塗布液がウェブ12に塗布されない結果、ウェブ12に形成される塗布膜65の厚みを幅方向において均一にすることができる。
【0038】
本発明によれば、ウェブ中央部12aがバー中央部54に巻きかけられる間、バー端部55を用いて、ウェブ12が幅方向において水平となるようにウェブ端部12bを支持することができるため、塗布工程及び液落とし工程において、ウェブ12の幅方向でのたわみを抑えることができる。したがって、本発明によれば、このたわみに起因する塗布膜の厚みムラを抑えることができる。
【0039】
上記実施形態では、底が平坦な周溝51を設けたが、本発明はこれに限られず、図8に示すように、底がV字状の周溝51を設けてもよいし、底がU字状の周溝51を設けてもよい。
【0040】
なお、バー端部55としては、前述したものの他、図9に示すように、バー状の端本体55aと、バー状のバー端部本体にワイヤー55bとからなるものを用いても良い。ワイヤー55bは、ワイヤー54bと同一のものでも良いし、異なるものでも良い。
【0041】
上記実施形態では、中央部巻き掛け工程の開始から完了までの間継続して両端部支持工程を行ったが、本発明はこれに限られない。中央部巻き掛け工程の開始から途中までの間、または、中央部巻き掛け工程の途中からその完了までの間に、継続してまたは間欠的に両端部支持工程を行っても良い。なお、最も好ましい形態は、中央部巻き掛け工程の開始から完了までの間、継続して両端部支持工程を行うことである。
【0042】
上記実施形態では、バー中央部54とバー端部55とが一体となった塗布バー31を用いたが、本発明はこれに限られず、図10及び図11に示すように、円筒状のバー中央部54と円筒状のバー端部55とがそれぞれ水平軸35に回動自在に取り付けられたものを塗布バー31としてもよい。バー端部55は、バー中央部54の両端側において、バー中央部54から離隔するように配される。バー端部55とバー中央部54との間には、ウェブ12の塗布につき余剰となった塗布液をバー中央部54両端から落とすための空間75が形成される。なお、バー中央部54とバー端部55とをそれぞれ異なる軸に取り付けても良い。この場合には、バー中央部54とバー端部55とを水平に配することが良い。また、図11及び図12に示すように、バー中央部54の軸とバー端部55の軸とが、同一直線上ではなく互いに平行となるように配することが好ましい。図12のように、バー端部55に代えて、ウェブ端部12bを支持する複数のバー端部55s、55c、55eを用いても良い。バー端部55sは位置Psに設けられ、バー端部55cは位置Pcに設けられ、バー端部55eは位置Peに設けられる。なお、複数のバー端部55s、55c、55eの全てを用いずに、いずれか1つまたは2つを用いても良い。
【0043】
上記実施形態では、モータ37により、塗布バー31の回転方向がウェブ12の搬送方向と同じ方向となるように、かつ、塗布バー31の周速度がウェブ12の搬送方向と同速度となるように制御したが、本発明はこれに限られず、塗布バー31の回転方向がウェブ12の搬送方向と異なる方向としてもよい。また、塗布バー31の周速度がウェブ12の搬送方向と異なる速度としてもよい。なお、モータ37を省略し、ウェブ12の搬送に従って塗布バー31を回転させてもよい。
【0044】
上記実施形態では、ウェブ端部12bを支持する部材として、バー状のものを用いたが、本発明はこれに限られず、ブロック状、板状のものを用いても良い。
【0045】
なお、図4に示すようなバー中央部54において、中央本体54aに密に巻かれたワイヤ54bによって形成された周溝80に半田81等を充填してもよい(図13参照)。この場合において、バー中央部54の周溝80のうち最端からバー中央部54の端82までの長さLyは2mm以下であることが好ましい。長さLyが2mmを超える場合、半田81が充填された箇所は、塗布液がピックアップされる量が少なくなる結果、薄塗りが発生する。
【0046】
上記実施形態では、バー中央部54の径D1とバー端部55の径D2とが等しいとしたが、本発明はこれに限られず、径D1と径D2とが異なっていても良い。径D1と径D2とが異なる場合には、図14及び図15に示すように、直線L54−55と、水平方向の直線Lとがなす角の角度φは25°以下であることが好ましい。ここで、図14及び図15は、水平に配された塗布バー31において、軸方向及び鉛直方向がなす面における断面図である。そして、直線L54−55は、バー中央部54の角部X54とバー端部55のうちバー中央部54側の角部X55とを結ぶ直線であり。また、角部X54は、中央本体54aに巻きつけられたワイヤー54bの頂点を結ぶ仮想線Li1と、中央本体54aの端面を延長した仮想面Si1とが交わる点である。なお、中央本体54aに巻きつけられたワイヤー54bのうち、最も端に位置するワイヤー54bの頂点X54bを角部X54としてもよい。
【0047】
また、バー中央部54の端部によりピックアップされた塗布液のうち余剰のものを掻き落とすために、図16及び図17に示すように、ブレード85を設けても良い。ブレード85の先端は、位置Psよりも回転方向上流側のバー中央部54の端部と当接する。ブレード85により、幅方向端部における塗布膜65が、幅方向中央部における塗布膜65よりも厚くなることを抑え、塗布膜65の厚みを幅方向において均一にすることができる。
【0048】
なお、バー中央部54の両端から流下した塗布液が周溝51、特にバー中央部54の側面に滞留する場合には、ウェブ12と塗布バー31とにより掻き取られた塗布液が、バー中央部54の両端から流下しにくくなる。この結果、幅方向端部における塗布膜65が、幅方向中央部における塗布膜65よりも厚くなってしまう。かかる弊害を防止する場合には、図18〜図20に示すように、バー中央部54の両端面に凹み部90を設けても良い。ここで、図18〜図20は、水平に配された塗布バー31において、軸方向及び鉛直方向がなす面における断面図である。凹み部90は、中央本体54aの側面54asから凹むように設けられる。凹み部90は、バー中央部54とバー端部55との間に形成される周溝51と連通する。凹み部90を設けることにより、バー中央部54の両端から流下した塗布液が周溝51やバー中央部54の側面に滞留しにくくなる。これにより、幅方向端部における塗布膜65の厚みが、幅方向中央部における塗布膜65よりも厚くなることを抑え、塗布膜65の厚みを幅方向において均一にすることができる。
【0049】
また、図19〜図20に示すように、中央本体54aの周面54amと凹み部90の面90mとがなす角の角度ψは鋭角であることが好ましい。角度ψが鋭角であると、塗布液が中央本体54aの両端に滞留しにくくなる結果、中央本体54aの両端からの塗布液の流下を確実に行うことができる。これにより、幅方向端部における塗布膜65の厚みが、幅方向中央部における塗布膜65よりも厚くなることを確実に抑えることができる。
【0050】
なお、バー中央部54の両端面に凹み部90を設ける場合、両方のバー端部55を省略しても良い。
【0051】
なお、凹み部90において、図16及び図17に示すようなブレード85を設けても良い。
【0052】
上記実施形態では、塗布手段としてワイヤーバーコーティングに用いられる塗布バーを用いたが、本発明はこれに限られず、ロッドコーティングに用いられる塗布ロッドに用いてもよい。
【実施例】
【0053】
本発明の効果を確認するために、実験1〜6を行った。以下、実験1についてはその詳細を説明し、実験2〜6については、実験1と同じ部分の説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0054】
(実験1)
厚み100μmのトリアセチルセルロースフィルム(フジタック 富士フイルム(株)社製)に、液を25cc/m塗布した。この液として、長鎖アルキル変形ポバール(MP−203 クラレ(株)社製)の溶液(濃度:2質量%)を用いた。この液の塗布後、1分間乾燥処理を行った。乾燥処理の温度は60℃であった。こうして、トリアセチルセルロースフィルム上に配向膜用樹脂層を形成した。
【0055】
次に、配向膜用樹脂層を有するトリアセチルセルロースフィルムを20m/分で搬送しながら、配向膜用樹脂層にラビング処理を行い、幅700mmの配向膜を形成した。
【0056】
その後、図4に示す塗布バー31であって、バー中央部54の径D1とバー端部55の径D2とが等しい塗布ヘッド25を用いて、配向膜に塗布液を塗布した。塗布液の塗布エリアは配向膜全域とし、スリット41の幅Lbは、660mmであった。こうして配向膜には塗布膜(目標厚みTHx:5μm)が形成された。
【0057】
塗布液としては、メチルエチルケトンに固形分が溶解したものを用いた。塗布液における固形分濃度は40質量%であった。固形分としては、一般式1に示すディスコティック化合物のR(1)と、一般式1に示すディスコティック化合物のR(2)とを重量比4:1で混合したものに光重合開始剤(イルガキュア907 日本チバガイギー(株)社製)を1質量%添加したものを用いた。塗布バー31において、バー中央部54の長さLa、周溝51の幅Wxは、表1に示すとおりであった。
【0058】
【化1】

【0059】
塗布液の塗布後、乾燥装置18において乾燥処理を1分間行った。その後、ネマチック相の形成処理(処理温度は130℃)を1分間行った。ネマチック相の形成処理の後、紫外線照射を行って、塗布液からなる膜(以下、塗布膜と称する)の硬化を行った。
【0060】
(実験2〜6)
バー中央部54の長さLa、周溝51の幅Wxを表1に示すものとしたこと以外は、実験1と同様にして行った。
【0061】
【表1】

【0062】
(評価)
硬化処理後の塗布膜の厚みを測定した。厚みの測定値THm及び目標厚みTHxから算出される指標P(=100×(THm−THx)/THx)について、以下基準に基づいて、判定を行った。
○:Pは、−0.05%以上0%以下であった。
×:Pは、−0.05%未満であった。
【符号の説明】
【0063】
17 塗布装置
31 塗布バー
51 周溝
54 バー中央部
55 バー端部
65 塗布膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に配された棒状の塗布手段に巻き掛けてウェブを長手方向へ搬送し、前記塗布手段を用いて前記塗布手段の周面に供給された液から前記ウェブの幅方向中央部のみに塗布膜を形成する塗布膜の形成方法において、
前記ウェブの搬送路の下方に設けられた前記塗布手段を用いて前記幅方向中央部のみを巻き掛けながら、前記ウェブの搬送路の下方にて前記塗布手段から前記ウェブの幅方向へ離隔するように配された支持手段を用いて、前記ウェブが幅方向において水平となるように前記ウェブの幅方向両端部のみを支持し、
前記ウェブ及び前記塗布手段によって形成される前記搬送方向上流側の隙間に溜められた前記液を前記幅方向中央部に塗布し、
前記幅方向中央部の塗布につき余剰の前記液を前記塗布手段の前記幅方向両端から落とすことを特徴とする塗布膜の形成方法。
【請求項2】
棒状の前記支持手段を用いて、前記ウェブが幅方向において水平となるように前記ウェブの幅方向両端部のみを巻き掛けることを特徴とする請求項1記載の塗布膜の形成方法。
【請求項3】
長手方向に搬送されるウェブの下方に水平に配され、前記ウェブを巻き掛け、前記ウェブの幅方向中央部のみに液を塗布する棒状の塗布手段において、
前記幅方向中央部のみを巻き掛け、前記幅方向中央部とによって形成される前記搬送方向上流側の隙間に溜められた前記液を前記幅方向中央部に塗布する中央棒部と、
前記ウェブの下方にて前記中央棒部から離隔するように前記ウェブの幅方向両側に配され、前記ウェブが幅方向において水平となるように前記ウェブの幅方向両端部を支持する耳支持手段とを有し、
前記ウェブのうち前記中央棒部に巻き掛けられている部分及び前記耳支持手段により支持されている部分の間の下側には、前記塗布につき余剰となった前記液を前記中央棒部の両端から落とすための空間が形成されたことを特徴とする塗布手段。
【請求項4】
前記耳支持手段は、前記幅方向両端部を下方から支持する耳支持棒部を有し、
この耳支持棒部は前記中央棒部と同一直線上に配されることを特徴とする請求項3記載の塗布手段。
【請求項5】
前記中央棒部と前記耳支持棒部との径が略等しいことを特徴とする請求項4記載の塗布手段。
【請求項6】
前記中央棒部は、中央棒本体及びこの中央棒本体全域に密に巻かれたワイヤーからなることを特徴とする請求項3ないし5のうちいずれか1項記載の塗布手段。
【請求項7】
前記耳支持棒部は、耳支持棒本体とこの耳支持棒本体に巻かれたワイヤーとからなることを特徴とする請求項4ないし6のうちいずれか1項記載の塗布手段。
【請求項8】
前記耳支持棒と前記中央棒部とは連結棒により連結され、
この連結棒の径は、前記耳支持棒の径と前記中央棒部の径とのいずれよりも小さいことを特徴とする請求項4ないし7のうちいずれか1項記載の塗布手段。
【請求項9】
前記中央棒部は、円筒状であって、両方の端面が凹む中央本体を備え、
前記端面の凹みは前記空間と連通することを特徴とする請求項3ないし8のうちいずれか1項記載の塗布手段。
【請求項10】
前記中央本体の軸方向と鉛直方向とがなす断面において、前記中央本体の周面と前記凹み部とがなす角の角度は鋭角であることを特徴とする請求項9記載の塗布手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−71265(P2012−71265A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218810(P2010−218810)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】