説明

塗布方法及び装置

【課題】水系塗布液を両面逐次塗布する際に、塗布量を精度良く制御することのできる塗布方法及び装置を提供する。
【解決手段】塗布装置10は、ウエブ12のA面12Aに第1の水系塗布液を塗布する第1塗布部20と、その第1の水系塗布液が乾燥する前にウエブ12のB面12Bに第2の水系塗布液を塗布する第2塗布部40を備える。また、塗布装置10は、第1の水系塗布液が塗布されたウエブ12の含水量を測定する第1センサ部30と、第2の水系塗布液が塗布されたウエブ12の含水量を測定する第2センサ部50と、それぞれの測定値から第1の水系塗布液の塗布量と第2の水系塗布液の塗布量を求めるとともに、第1、第2の塗布部20、40による塗布量を制御する制御装置60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布方法及び装置に係り、特に水系塗布液を両面逐次塗布する塗布方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱現像画像記録材料等の製造において、ウエブ(支持体)の上に所望の厚さの塗布膜を得る方法としては、バー塗布方法(ロッド塗布方法ともいう)、リバースロール塗布方法、グラビアロール塗布方法、エクストルージョン塗布方法等がある。これらの塗布方法のなかでも、バー塗布方法は、装置が簡便であり、且つ、所望の塗布量の計量を行うことが可能であることから広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、所望の塗布量を塗布する装置が記載されている。この特許文献1は、ウエブに過剰に塗布した塗布液を、塗工ロッドで書き落として計量するとともに、供給した塗布液の流量と回収した塗布液の流量とに基づいて、実塗布量を管理している。
【特許文献1】特開2001−145846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、塗布量制御の精度が悪く、外乱による塗布量以上を早期に検出することができないという問題があった。また、特許文献1は、水系塗布液の場合に水分が蒸発するため、回収流量に基づいて制御しても、塗布量を正確に制御することができないという問題があった。さらに、特許文献1は、第1の水系塗布液をウエブの一方面に塗布し、その塗布液が乾燥する前に、第2の水系塗布液をウエブの他方面に塗布する両面逐次塗布の場合に、全く対応することができないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、水系塗布液を両面逐次塗布する際に、塗布量をオンラインで精度良く制御することのできる塗布方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、走行する支持体の一方面に第1の水系塗布液を塗布し、該第1の水系塗布液が乾燥する前に前記支持体の他方面に第2の水系塗布液を塗布する塗布方法において、前記第1の水系塗布液を塗布した前記支持体の含水量を第1の光透過型センサで測定して前記第1の水系塗布液の塗布量を求めるとともに、前記第2の水系塗布液を塗布した前記支持体の含水量を第2の光透過型センサで測定し、前記第1、第2の光透過型センサの測定値の差から前記第2の水系塗布液の塗布量を求めることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、第1、第2の水系塗布液の塗布後にそれぞれ支持体(ウエブ)の含水量を測定するようにしたので、第1、第2の水系塗布液の塗布量を求めることができる。したがって、第1、第2の水系塗布液の塗布量を高精度で制御することが可能となる。
【0008】
すなわち、第1の光透過型センサによって、支持体の一方面に塗布された第1の水系塗布液の含水量が測定され、この含水量から第1の水系塗布液の塗布量が求められる。また、第2の透過型センサによって、支持体の一方面に塗布された第1の水系塗布液の含水量と、支持体の他方面に塗布された第2の水系塗布液の含水量との合計量が測定され、この合計量から第1、第2の水系塗布液の合計塗布量が求められる。そして、この合計塗布量から、第1の光透過型センサにより求めた第1の水系塗布液の塗布量を引くことによって、第2の水系塗布液の塗布量を正確に求めてモニタリングすることができる。したがって、このモニタリング結果に基づいて塗布量を制御すれば、精度のよい塗布制御を行うことができる。
【0009】
なお、本発明の支持体は、光透過性を有する支持体を使用することが必要であり、たとえば透明プラスチックフィルム等を好適に使用できる。また、塗布してから含水量測定までは、時間をあけずに短時間で行うことが好ましい。
【0010】
請求項2に記載の発明は請求項1の発明において、前記第1、第2の光透過型センサは、透過ファイバー型多成分計であり、該透過ファイバー型多成分計は、前記支持体から60mm以上100mm以下の距離に設置されることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、透過ファイバー型多成分計を用いたので、支持体の含水量を支持体と非接触に且つ高精度で求めることができる。特に、支持体から60mm以上離したので、支持体が接触することを確実に防止することができ、支持体から100mm以下に設置したので、支持体の含水量を高精度で求めることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は請求項1又は2の発明において、前記第1、第2の水系塗布液は、バー塗布によって塗布されることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明によれば、計量の可能なバー塗布によって第1、第2の水系塗布液を塗布しているので、第1、第2の光透過型センサの測定値から求めた第1、第2の水系塗布液の塗布量に基づいて、第1、第2の水系塗布液の塗布量をフィードバック制御することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は請求項1〜3のいずれか1の発明において、塗布の開始時に、前記第1の水系塗布液を塗布した支持体の含水量を、前記第1、第2の光透過型センサで測定することによって、該第1、第2の光透過型センサの校正を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明によれば、第1、第2の光透過型センサの校正を行うので、第1、第2の水系塗布液の塗布量の制御をより高精度で行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は前記目的を達成するために、走行する支持体の一方面に第1の水系塗布液を塗布する第1の塗布手段と、前記第1の塗布手段で塗布された第1の水系塗布液が乾燥する前に、前記支持体の他方面に第2の水系塗布液を塗布する第2の塗布手段を備えた塗布装置において、前記支持体の走行方向に対して前記第1の塗布手段の後段で且つ第2の塗布手段の前段に設けられ、前記支持体の含水量を測定する第1の光透過型センサと、前記支持体の走行方向に対して前記第2の塗布手段の後段に設けられ、前記支持体の含水量を測定する第2の光透過型センサと、前記第1の光透過型センサの測定値から前記第1の水系塗布液の塗布量を求め、前記第1の光透過型センサの測定値と前記第2の光透過型センサの測定値との差から前記第2の水系塗布液の塗布量を求めるとともに、前記第1、第2の塗布手段による塗布量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、第1、第2の光透過型センサを設けて、第1、第2の水系塗布液の塗布後の支持体の含水量を測定するようにしたので、第1、第2の水系塗布液の塗布量を求めることができる。したがって、第1、第2の水系塗布液の塗布量を精度良く制御することが可能となる。これにより、第1、第2の水系塗布液を支持体の両面に高精度で逐次塗布することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1、第2の水系塗布液の塗布後にそれぞれ支持体の含水量を測定するようにしたので、第1、第2の水系塗布液の塗布量を求めることができ、第1、第2の水系塗布液の塗布量を精度良く制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下添付図面に従って本発明に係る塗布方法及び装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る塗布装置の構成を示す模式図である。同図に示す塗布装置10は、ウエブ12の表裏両面に水系塗布液を逐次塗布する装置であり、ウエブ12は、パスローラ14、16、18にガイドされ、矢印方向にたとえば20〜60m/分の速度で走行するようになっている。なお、水系塗布液やウエブ12の具体例については後述する。
【0021】
塗布装置10は主として、第1塗布部20、第1センサ部30、第2塗布部40、第2センサ部50、及び、制御装置60で構成されており、ウエブ12の走行方向に沿って第1塗布部20、第1センサ部30、第2塗布部40、第2センサ部50が順に配置されている。
【0022】
第1塗布部20は、ウエブ12の一方の面(以下、A面12Aという)に第1の水系塗布液を塗布する装置であり、たとえば、バー22を用いて塗布と計量を同時に行う一体型バー塗布装置が用いられる。
【0023】
第2塗布部40は、ウエブ12の他方の面(以下、B面12Bという)に第2の水系塗布液を塗布する装置であり、たとえば、バー42を用いて塗布と計量を同時に行う一体型バー塗布装置が用いられる。この第2塗布部40の位置は、第1塗布部20によって塗布された第1の水系塗布液が乾燥する前に、第2の水系塗布液を塗布するように配置される。
【0024】
ウエブ12を挟んで第2塗布部40の反対側には、ターンバー62が設けられている。ターンバー62は円筒状に形成されるとともに、その外周面に多数の孔(不図示)を備えている。そして、多数の孔からエアを噴出することによって、ウエブ12を無接触で搬送することができる。これにより、第1塗布部20で塗布した第1の水系塗布液の塗布膜を損傷することなく、ウエブ12を搬送することできる。
【0025】
なお、図1の符号64は、ウエブ12の無接触搬送装置であり、この無接触搬送装置64もターンバー62と同様に、エアを噴出することによってウエブ12を無接触で搬送することができる。
【0026】
第1センサ部30は、ウエブ12の走行方向において、第1塗布部20と第2塗布部40との間に配置される。この第1センサ部30は、光透過型センサ、好ましくは赤外線水分分析計の一種である透過ファイバー型多成分計が用いられ、ファイバセンサ32、32と、センサ本体34とで構成される。
【0027】
ファイバセンサ32、32は、ウエブ12を挟んで対向して配置されており、一方のファイバセンサ32から赤外線を投光し、もう一方のファイバセンサ32によってウエブ12を透過した光を受光し、その光量を検出するようになっている。そして、センサ本体34において、ウエブ12で吸収された光量がウエブ12の含水量に変換され、第1の水系塗布液を塗布したウエブ12の含水量が求められる。
【0028】
ファイバセンサ32、32は、ウエブ12に対して60mm以上100mm以下離れた位置に配置される。このようにファイバセンサ32、32をウエブ12に対して60mm以上離れた位置に配置することによって、ウエブ12がファイバセンサ32、32に接触して損傷することを防止できる。また、ファイバセンサ32、32をウエブ12に対して100mm以下の位置に配置することによって、ファイバセンサ32、32による測定を高精度で行うことができる。
【0029】
第2センサ部50は、ウエブ12の走行方向において、第2塗布装置40の後段で近傍位置に配置される。第2センサ部50は、第1センサ部30と同様に、光透過型センサ、好ましくは赤外線水分分析計の一種である透過ファイバー型多成分計が用いられ、ファイバセンサ52、52と、センサ本体54とで構成される。
【0030】
ファイバセンサ52、52は、ウエブ12を挟んで対向して配置されており、一方のファイバセンサ52から赤外線を投光し、もう一方のファイバセンサ52によってウエブ12を透過した光を受光し、その光量を検出するようになっている。そして、センサ本体54において、ウエブ12で吸収された光量がウエブ12の含水量に変換され、第1、第2の水系塗布液を塗布したウエブ12の含水量が求められる。
【0031】
ファイバセンサ52、52は、ウエブ12に対して60mm以上100mm以下離れた位置に配置される。このようにファイバセンサ52、52をウエブ12に対して60mm以上離れた位置に配置することによって、ウエブ12がファイバセンサ52、52に接触して損傷することを防止できる。また、ファイバセンサ52、52をウエブ12に対して100mm以下の位置に配置することによって、ファイバセンサ52、52による測定を高精度で行うことができる。
【0032】
なお、第1センサ部30や第2センサ部50として用いる透過型ファイバは、たとえば、IR−WCTO2(チノー製)の投光側P偏光フィルタ付きを好適に用いることができる。また、上記の透過型ファイバに代えて、赤外線多成分計、たとえば、IRMA2100S(チノー製)の3波長塗工計を用いてもよい。
【0033】
第1センサ部30と第2センサ部50は、制御装置60に接続されており、第1センサ部30の測定値のデータと第2センサ部50の測定値のデータは制御装置60に送られる。制御装置60には、含水量と塗布量との関係が予め試験等により得られた検量線がインプットされており、制御装置60は、第1センサ部30で測定した含水量の値から、第1塗布部20で塗布した第1の水系塗布液の塗布量を求めるとともに、第1センサ部30で測定した含水量の値と、第2センサ部50で測定した含水量の値との差から、第2塗布部40で塗布した第2の水系塗布液の塗布量を求める。さらに、制御装置60は、求めた塗布量に基づいて、第1塗布部20及び第2塗布部40をフィードバック制御し、所望の塗布量に制御する。
【0034】
次に上記の如く構成された塗布装置10の作用について図1、図2に基づいて説明する。図2は、塗布装置10における塗布処理のフローを示している。
【0035】
まず、第1塗布部20、第2塗布部40がともに塗布をしない状態で、第1センサ部30の校正、すなわちゼロ調整を行う(ステップS1)。
【0036】
次に、第1塗布部20での塗布を開始し、ウエブ12のA面12Aに第1の水系塗布液を計量塗布する(ステップS2)。そして、この第1の水系塗布液を塗布した状態で、第2センサ部50の校正すなわちゼロ調整を行う(ステップS3)。その際、第1センサ部30の測定値と第2センサ部50の測定値が等しくなるようにする。この校正によって、後述する第2の水系塗布液の塗布量を精度良く求めることができる。
【0037】
次に、第2塗布部40での塗布を開始し、ウエブ12のB面12Bに第2の水系塗布液を計量・塗布する(ステップ4)。これにより、第1塗布部20と第2塗布部40の両方で塗布が行われ、ウエブ12のA面12AとB面12Bの両方に塗布が行われる。その際、第1センサ部30では、第1の水系塗布液が塗布された状態のウエブ12の含水量が測定され、第2センサ部50では、第1、第2の水系塗布液が塗布された状態のウエブ12の含水量が測定される。
【0038】
制御装置60は、この状態で第1センサ部30と第2センサ部50の測定値を監視する(ステップS5)。すなわち、第1センサ部30の測定値から、第1の水系塗布液の塗布量を求める一方で、第1センサ部30の測定値と第2センサ部50の測定値との差から、第2の水系塗布液の塗布量を求める。さらに、制御装置60は、求めた塗布量に基づいて、第1塗布部20及び第2塗布部40をフィードバック制御し、所望の塗布量に制御する。これにより、第1、第2の水系塗布液の塗布量を高精度で制御することができる。
【0039】
このように本実施の形態によれば、第1の水系塗布液の塗布後と、第2の水系塗布液の塗布後にそれぞれウエブ12の含水量を測定したので、第1の水系塗布液の塗布量だけでなく、第2の水系塗布液の塗布量を正確に求めることができる。したがって、本実施の形態によれば、第1の水系塗布液の塗布量、及び、第2の水系塗布液の塗布量を高精度で制御することができる。
【0040】
なお、本発明に係る塗布方法は、たとえば感光材料の下塗層・帯電防止層などの水系塗布液を塗布する際に適用することができる。以下にその適用例をあげて説明する。図3は、本発明に係る塗布方法の一例を示すフロー図であり、図4は、その塗布方法で塗布して製造した感光材料の断面図である。
【0041】
図3に示す塗布方法では、まず、支持体の表面側にラテックス系下塗液を塗布し(ステップS11)、これを乾燥させることにより(ステップS12)、ラテックス系下塗層を形成する。次に、ラテックス系塗布層の表面にゼラチン系下塗液(第1の水系塗布液に相当)を塗布した後(ステップS13)、支持体の裏面側に帯電防止剤層塗布液(第2の水系塗布液に相当)を塗布し(ステップS14)、さらにこれを乾燥させることにより(ステップS15)、ゼラチン系下塗層と帯電防止剤層を形成する。次いで、ゼラチン系下塗層の裏面側にプロテクト層塗布液を塗布し(ステップS16)、これを乾燥させることによって(ステップS17)、プロテクト層を形成する。そして、ゼラチン系下塗層の表面側に感材塗布液を塗布し(ステップS18)、乾燥させることによって(ステップS19)、感材塗布層を単層又は多層で形成する。これにより、図4の感光材料が形成される。
【0042】
本発明に係る塗布方法は、上述したステップS13〜S15において適用することができる。すなわち、本発明を適用することによって、ゼラチン系下塗層と帯電防止層とを高い精度で塗布することができる。
【0043】
図5は、本発明に係る塗布方法のさらに別の適用例を示したフロー図であり、図6は、その塗布方法で塗布して製造した感光材料の断面図である。
【0044】
図5に示す塗布方法では、まず、支持体の表面側にラテックス系下塗液Aを塗布し(ステップS21)、これを乾燥させることにより(ステップS22)、ラテックス系下塗層Aを形成する。次に、ラテックス系塗布層の表面側にゼラチン系下塗液A(第1の水系塗布液に相当)を塗布した後(ステップS23)、支持体の裏面側にラテックス系下塗液B(第2の水系塗布液に相当)を塗布し(ステップS24)、さらにこれを乾燥させることにより(ステップS25)、ゼラチン系下塗層Aとラテックス系下塗層Bを形成する。次いで、ラテックス系下塗層Bの裏面側にゼラチン系下塗液Bを塗布し(ステップS26)、これを乾燥させることによって(ステップS27)、ゼラチン系下塗層Bを形成する。そして、ゼラチン系下塗層Aの表面側とゼラチン系下塗層Bの裏面側に感材塗布液を塗布し(ステップS28)、これを乾燥させることによって(ステップS29)、感材塗布層を単層又は多層で形成する。これにより、図6の感光材料が形成される。
【0045】
本発明に係る塗布方法は、上述したステップS23〜S25において適用することができる。すなわち、本発明を適用することによって、ゼラチン系下塗層Aとラテックス系下塗層Bとを高い精度で塗布することができる。
【実施例】
【0046】
[基体(支持体)の準備]2軸延伸(縦、横それぞれ3.3倍)し、240℃で10分間熱固定化した後、両側の表面にコロナ放電処理を施した、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。
【0047】
[支持材の作製]下記組成から成る第一下塗層形成用の塗布液(第一下塗層用塗布液)、及び、第二下塗層形成用の塗布液(第二下塗層用塗布液)を調製した。
【0048】
上記PETフィルムの一方の表面に、まず第一下塗層用塗布液をバーコーターにより塗布し、140℃で30秒間乾燥して、0.6μm厚の第一下塗層を形成した。
【0049】
<第1下塗層(ラテックス)用塗布液の組成>
・スチレン/ブタジエン共重合体ラテックス:319.2mg/m(共重合比67/33)
・2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩:11.1mg/m
【0050】
次に第一下塗層の層上に第二下塗層用塗布液をバーコーターにより塗布し、続いて、基体の下塗層が設けられていない面に、下記組成から成る帯電防止層用塗布液をバーコーターにより塗布し、140℃30秒間乾燥して、0.16μm厚の第二下塗層と、0.15μm厚の帯電防止層を形成した。
【0051】
<第2下塗層(ゼラチン)用塗布液の組成>
・脱灰高分子ゼラチン:134.4mg/m
・硫酸バリウムストロンチウム(粒径1.5μm):23.5mg/m
・イソチアゾリン:0.5mg/m
・グリシン:3.4mg/m
【0052】
<帯電防止層用塗布液>
・アクリル酸エステル共重合体(ジュリマ−ET−410、日本純薬(株)製):38mg/
・ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(サンデットBL、三洋化成工業(株)製):4.1mg/
・二酸化スズ・アンチモン(針状の金属酸化物粒子)(FS−10D、長軸/短軸比=20〜30、長軸0.2〜2.0μm、短軸0.01〜0.02μm、石原産業(株)製):122.9mg/
・ポリオキシエチレンフェニルエーテル:4.1mg/
・メチル化メラミン系樹脂(スミテクス レンジM−3、住友化学工業(株)製):24.1mg/
【0053】
次に、帯電防止層の上に下記組成よりなる保護層用塗布液をバーコーターにより塗布し、140℃で30秒間乾燥して0.033μm厚の保護層を積層した。
【0054】
<保護層用塗布液>
・ポリオレフィンアイオマー(ケミパールS−120、三井石油化学(株)製):30.5mg/
・ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル・グリシドール付加物:4.1mg/
・ポリオキシエチレンフェニルエーテル:4.1mg/
・コロイダルシリカ(スノーテックスC、粒子径0.020μm、日産化学(株)製):6.8mg/
・ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(エポキシ架橋剤;デナコールEX−521、ナガセ化成(株)製):12.0mg/
・ヘキサデシルオキシスルホン酸ナトリウム(硫酸エステル系界面活性剤;NIKKOL SCS、日光ケミカルズ(株)製):6.2mg/
【0055】
上記の塗布工程において、第二下塗層と帯電防止層を形成する際に、本発明を適用することによって、塗布精度を向上させることができた。
【0056】
次に、上記の図3の塗布工程において、センサとウエブとの距離を変えて塗布試験を行った。その結果を図7の表に示す。この試験では、塗布速度40m/分でセンサとウエブとの距離を変えて試験を行い、その際の、ウエブの接触、測定精度、測定の応答性を評価した。ウエブの接触は、加速実験として通常より30%低い、張力10.5kg/巾で塗布を行ってバタツキによって接触したものを△、接触しないものを○とした。なお、通常のテンションは8〜20kg/巾であり、このテンションでは、△の場合にも接触がなかった。測定精度は、塗布量を6水準変えて塗布を行い、計測値と実厚みとの校正線を作成し、測定誤差を算出した。また、実厚みの変動と計測値の変動とを比較して、測定の応答性を判断した。
【0057】
なお、比較例として、図8に示すバッチ式秤量の塗布装置(特開2001−145846号公報参照)で試験を行った。この塗布装置1は、タンク2内の塗布液をポンプ3によりバーコーター5に送液して塗布を行い、その際の送液量を流量計4で計測するとともに、バーコーター5で掻き落とした塗布液をロードセル6で測定し、演算装置7によって流量を演算した。
【0058】
図7から分かるように、バッチ式秤量を用いた比較例では、応答性が悪かったのに対し、赤外線多成分計を用いた本実施例は、応答性がよく、監視/制御に適していた。特に、センサとウエブとの距離を60〜100mmとした実施例1〜3は、ウエブの接触がなく搬送性に優れるとともに、高い測定精度を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る塗布装置の構成を示す模式図
【図2】図1の塗布装置における塗布処理を示すフロー図
【図3】本発明を適用した塗布方法を示すフロー図
【図4】図3の塗布方法で製造した感光材料の断面図
【図5】図3と異なる適用例の塗布方法を示すフロー図
【図6】図5の塗布方法で製造した感光材料の断面図
【図7】試験結果を示す表図
【図8】比較例の装置構成図
【符号の説明】
【0060】
10…塗布装置、12…ウエブ、20…第1塗布部、30…第1センサ部、40…第2塗布部、50…第2センサ部、60…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する支持体の一方面に第1の水系塗布液を塗布し、該第1の水系塗布液が乾燥する前に前記支持体の他方面に第2の水系塗布液を塗布する塗布方法において、
前記第1の水系塗布液を塗布した前記支持体の含水量を第1の光透過型センサで測定して前記第1の水系塗布液の塗布量を求めるとともに、
前記第2の水系塗布液を塗布した前記支持体の含水量を第2の光透過型センサで測定し、前記第1、第2の光透過型センサの測定値の差から前記第2の水系塗布液の塗布量を求めることを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記第1、第2の光透過型センサは、透過ファイバー型多成分計であり、該透過ファイバー型多成分計は、前記支持体から60mm以上100mm以下の距離に設置されることを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記第1、第2の水系塗布液は、バー塗布によって塗布されることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布方法。
【請求項4】
塗布の開始時に、前記第1の水系塗布液を塗布した支持体の含水量を、前記第1、第2の光透過型センサで測定することによって、該第1、第2の光透過型センサの校正を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の塗布方法。
【請求項5】
走行する支持体の一方面に第1の水系塗布液を塗布する第1の塗布手段と、前記第1の塗布手段で塗布された第1の水系塗布液が乾燥する前に、前記支持体の他方面に第2の水系塗布液を塗布する第2の塗布手段を備えた塗布装置において、
前記支持体の走行方向に対して前記第1の塗布手段の後段で且つ第2の塗布手段の前段に設けられ、前記支持体の含水量を測定する第1の光透過型センサと、
前記支持体の走行方向に対して前記第2の塗布手段の後段に設けられ、前記支持体の含水量を測定する第2の光透過型センサと、
前記第1の光透過型センサの測定値から前記第1の水系塗布液の塗布量を求め、前記第1の光透過型センサの測定値と前記第2の光透過型センサの測定値との差から前記第2の水系塗布液の塗布量を求めるとともに、前記第1、第2の塗布手段による塗布量を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−237126(P2007−237126A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66500(P2006−66500)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】