説明

塗布装置および塗布方法

【課題】 塗布液供給ノズルと基板とが水平方向に相対的にずれて基板上に塗布液を塗布する塗布装置において、塗布開始位置と塗布終了位置との少なくともいずれか一方に塗布不良領域が形成されるのを防止することができる塗布装置を提供する。
【解決手段】 塗布液70を吐出するノズル開口11を有する塗布液供給ノズル10と、基板60への塗布に先立ってノズル開口11から吐出される塗布液70が塗布される塗布開始予備塗布シート21と、予備塗布シート21の移動および塗布液供給ノズル10の相対移動を制御する制御手段とを備える塗布装置100とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板などの基板表面に対して塗布液を塗布する塗布装置および塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、半導体素子等の製造プロセスにおいては、基板上に各種被膜を形成するために塗布液を塗布する塗布装置が使用されている。
【0003】
基板寸法が大型化する傾向にあわせ、基板を回転させながら塗布するスピンコーティングに代えて、幅広の塗布液供給ノズルを基板と相対的に一方向に移動させながら塗布を行うスリット塗布タイプの塗布装置が実用化されている。このような塗布液供給ノズルを備えた塗布装置は、大型基板であっても、その表面に均一な膜厚の塗膜を形成することができる。
【0004】
塗布液供給ノズルへの塗布液の供給は定容量ポンプによって行われるが、塗布開始時には、液不足による塗布むらを防止するために塗布液供給ノズル下端と基板表面の間に十分な塗布液溜り(ビード)を形成させる必要がある。しかしながら、塗布開始時のビードが大き過ぎると、塗布作業により塗布液供給ノズルが水平方向の移動を開始しても、塗布開始位置周辺のみが他の部分よりも盛り上がった状態で残ってしまい、これが塗布不良領域となる。
【0005】
また、塗布終了時には、塗布終了位置において塗布液供給ノズルの水平方向の移動を停止させるが、このときには塗布液供給ノズルと基板表面との間の塗布液は連続しているので、塗布液供給ノズルを真上に上昇させて塗布液の連続を断つとそのまま塗布液は落下し、塗布終了位置における塗膜の膜厚が他の部分に比べて異常に大きくなり、これが塗布不良領域となる。
【0006】
このような問題点を解決するために、特許文献1には、塗布開始位置における塗布液供給ノズル下端と基板との間のギャップが所定の範囲となるように設定し、その設定に基づいて塗布液供給ノズル下端を基板表面に接近させてビードを形成させ、塗布終了位置で塗布液供給ノズルを相対的に下降させつつ塗布液を吸引する塗布方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、塗布終了位置で塗布液供給ノズルを斜め前方または斜め後方に上昇させる塗布方法が開示されている。また、特許文献3には、塗布開始位置で塗布液供給ノズル下端を基板表面に接近させてビードを形成させ、このビード形成状態を所定時間維持した後、塗布液供給ノズルを水平方向に移動させて塗布を開始する塗布方法が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−113411号公報
【特許文献2】特開2005−270875号公報
【特許文献3】特開2007−75746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜3に開示される塗布方法を実現する塗布装置によって基板表面に塗布液を塗布することで、塗布開始位置または塗布終了位置における塗膜の膜厚が異常に大きくなって塗布不良領域が形成されるのを防止することができるが、その塗布不良領域形成防止効果は十分であるとは言えない。
【0010】
また、特許文献1〜3に開示される塗布方法を実現する塗布装置においては、塗布液供給ノズルと基板とのギャップの調整制御やノズルの移動制御が複雑なものとなる。
【0011】
したがって本発明の目的は、塗布液供給ノズルを基板表面に対して相対的に移動させて、基板表面に塗布液を塗布する塗布装置および塗布方法において、塗布開始位置、塗布終了位置に塗布不良領域が形成されるのを防止することができる塗布装置および塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ノズル開口から塗布液を吐出する塗布液供給ノズルを基板の表面に対して相対的に移動させて、基板表面に塗布液を塗布する塗布装置であって、
前記塗布液供給ノズルのノズル開口の延在方向と同一方向に延在するシート状であり、基板への塗布に先立ってノズル開口から吐出される塗布液が塗布される塗布開始予備塗布シートと、
前記塗布開始予備塗布シートの移動および前記塗布液供給ノズルの基板表面に対する相対移動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記塗布液供給ノズルがノズル開口から塗布液の吐出を開始するときに、前記塗布開始予備塗布シートがノズル開口と対向して前記基板の端部を覆うように、塗布開始予備塗布シートを移動させ、
前記塗布液供給ノズルを、塗布液を吐出させながら、基板表面に対して相対的に移動させて、ノズル開口が基板表面の塗布開始位置近傍の所定位置となったときに、前記塗布開始予備塗布シートを塗布方向と反対方向に移動させるように構成されることを特徴とする塗布装置である。
【0013】
また本発明は、前記塗布液供給ノズルのノズル開口の延在方向と同一方向に延在するシート状であり、基板表面の塗布終了位置近傍においてノズル開口から吐出される塗布液が塗布される塗布終了予備塗布シートをさらに含み、
前記制御手段は、
前記塗布液供給ノズルを基板表面に対して相対的に移動させて、ノズル開口が基板表面の塗布終了位置となる前に、前記塗布終了予備塗布シートの塗布方向上流側端部が塗布終了位置と一致するように塗布終了予備塗布シートを移動させて配置させ、
ノズル開口が、前記塗布終了予備塗布シートと対向した状態のまま、基板表面の塗布終了位置から所定の位置だけ塗布方向下流側方向にずれたときに、塗布終了予備塗布シートを塗布方向と同一方向に移動させるように構成されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記塗布装置によって、基板表面に塗布液を塗布することを特徴とする塗布方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、塗布装置は、塗布液を吐出するノズル開口を有する塗布液供給ノズルと、基板への塗布に先立ってノズル開口から吐出される塗布液が塗布される塗布開始予備塗布シートと、塗布開始予備塗布シートの移動および塗布液供給ノズルの相対移動を制御する制御手段とを備える。そして、制御手段は、塗布液供給ノズルがノズル開口から塗布液の吐出を開始するときに、塗布開始予備塗布シートがノズル開口と対向するように、塗布開始予備塗布シートを移動させる。これによって、ノズル開口から塗布液の吐出が開始される塗布開始時に形成される塗布液溜り(ビード)は、ノズル開口と塗布開始予備塗布シートとの間に形成されることになり、ビードに由来する塗布不良が、基板表面の塗布開始位置に発生するのを防止することができる。
【0016】
そして、制御手段は、塗布液供給ノズルを基板表面に対して相対的に移動させて、ノズル開口が基板表面の塗布開始位置近傍の所定位置となったときに、塗布開始予備塗布シートを塗布方向と反対方向に移動させる。これによって、基板表面の塗布開始位置から塗布方向下流側においては、ノズル開口から吐出される塗布液は、基板表面上に向けて吐出されることになり、基板表面に塗膜を形成することができる。また、ノズル開口が基板表面の塗布開始位置近傍の所定位置となったときに、塗布開始予備塗布シートを塗布方向と反対方向に移動させず、基板に対して相対的に停止した状態とした場合、塗布開始予備塗布シートと基板の例えば1mm以下の隙間に塗布液が毛細管現象によって吸収されることで、基板が汚染されると共に近傍の膜厚が変動するが、本発明によれば、塗布開始予備塗布シートを塗布方向と反対方向に移動させることによって、塗布開始予備塗布シートと基板の隙間に塗布液が吸収されることを防止し、塗布表面に汚染のない均一な塗膜を形成することができる。
【0017】
また本発明によれば、塗布装置は、塗布液を吐出するノズル開口を有する塗布液供給ノズルと、基板表面の塗布終了位置近傍においてノズル開口から吐出される塗布液が塗布される塗布終了予備塗布シートと、塗布終了予備塗布シートの移動および塗布液供給ノズルの相対移動を制御する制御手段とを備える。そして、制御手段は、塗布液供給ノズルを基板表面に対して相対的に移動させて、ノズル開口が基板表面の塗布終了位置となる前に、塗布終了予備塗布シートの塗布方向上流側端部が塗布終了位置と一致するように塗布終了予備塗布シートを移動させて配置させる。これによって、ノズル開口が基板表面の塗布終了位置となる前に、塗布終了予備塗布シートが、基板表面の塗布終了位置から塗布方向下流側に延びて配置されることになる。
【0018】
そして、制御手段は、ノズル開口が、塗布終了予備塗布シートと対向した状態のまま、基板表面の塗布終了位置から所定の位置だけ塗布方向下流側方向にずれたときに、塗布終了予備塗布シートを塗布方向と同一方向に移動させる。これによって、ノズル開口が、基板表面の塗布終了位置に対して塗布方向下流側方向にずれた位置であり、塗布終了予備塗布シートと対向した状態で、塗布液供給ノズルの基板表面に対する相対的な移動を停止させることができる。そのため、塗布終了時に、塗布液供給ノズルを真上に上昇させて塗布液の連続を断つことによって発生する塗膜異常は、基板表面の塗布終了位置とは異なる位置であり、塗布終了予備塗布シート上に形成されることになる。したがって、基板表面の塗布終了位置に、塗布不良が発生するのを防止することができる。
【0019】
また本発明によれば、前記塗布装置によって、基板表面に塗布液を塗布する。そのため、基板表面に均一な塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の一形態である塗布装置100の構成を示す斜視図である。塗布装置100は、ガラス基板などの基板に対して塗布液を塗布する装置であり、スリットコータを用いることができる。スリットコータとしては、CAPコータやポンプ吐出型コータを挙げることができる。CAPコータは、塗布液にスリットを指し込んで毛細管現象を利用して塗布液面を上昇させ、スリットから塗布液を吐出させるコータである。また、ポンプ吐出型コータは、ポンプの回転を利用してスリットから塗布液を吐出させるコータである。以下では、ポンプ吐出型コータを例にして、本実施の形態を説明する。
【0021】
塗布装置100は、塗布液供給ノズル10と、予備塗布手段20と、シート洗浄ユニット30と、ノズル洗浄ユニット40と、基板60が載置される基台50とを含んで構成される。塗布液供給ノズル10は、ポンプ13と接続されたスリット状のノズル開口11を有し、基台50に載置された基板60の上方に配置されている。塗布液供給ノズル10は、基板60表面に対してノズル開口11の延在方向と直交する方向に水平移動可能となっている。なお、塗布液供給ノズル10が固定された状態で基台50が水平移動してもよく、塗布液供給ノズル10および基台50がそれぞれ異なる速さで共に移動していてもよい。
【0022】
また、塗布液供給ノズル10のノズル開口11の延在方向の長さは、基板60の幅手方向の長さと略等しくなっている。また、塗布液供給ノズル10のノズル開口11の開口幅は、たとえば30〜500μm程度とすることができる。
【0023】
ポンプ13は、塗布液貯蔵タンク12の塗布液70を塗布液供給ノズル10のノズル開口11から吐出させ、また塗布液供給ノズル10のノズル開口11から塗布液70を吸引させる。すなわち、塗布装置100は、基台50上に載置された基板60に対し、塗布液供給ノズル10のノズル開口11から基板60上に塗布液70を塗布して塗布膜72を形成する。なお、ポンプ13としては、回転式のものを用いてもよいし、非回転式のものを用いてもよいが、通常、シリンジ・ポンプ、ベローズ・ポンプ等の非回転式の精密ポンプが好ましく用いられる。また、塗布液70としては、たとえば、レジスト膜などのパターニング用の塗布液や、カラーフィルタを構成する遮光層、着色樹脂層、保護層などの樹脂膜形成用の塗布液等、種々の塗布液を用いることができる。
【0024】
予備塗布手段20は、基板60における塗布開始位置近傍または塗布終了位置近傍で生じる塗布膜の不均一性を小さくして塗布膜の膜厚の均一性を向上させる手段である。以下では、まず、基板60における塗布開始位置近傍での塗布膜の膜厚均一性を向上させる予備塗布手段20について説明する。
【0025】
予備塗布手段20は、塗布開始予備塗布シート21と、シート支持部22とを含む。塗布開始予備塗布シート21は、塗布液供給ノズル10のノズル開口11の延在方向と同一方向に延在するシート状に形成され、シート支持部22に支持された状態で、基台50に載置された基板60の上方に配置されている。塗布開始予備塗布シート21を構成する材料は、特に限定されないが、たとえば、ポリエチレンを挙げることができる。
【0026】
そして、塗布開始予備塗布シート21は、シート支持部22に支持された状態で、基板60表面に対してシートの延在方向と直交する方向に水平移動可能となっており、塗布液供給ノズル10が基板60における塗布開始位置近傍にあるときには、塗布液供給ノズル10と基板60との間に配置されるようになっている。このようにして、塗布開始予備塗布シート21は、塗布液供給ノズル10による基板60への塗布に先立ってノズル開口11から吐出される塗布液70が塗布されるようになっている。
【0027】
このとき、塗布開始予備塗布シート21は、板状に形成されるシート案内板51表面に接するようになっている。このシート案内板51は、基板60に対して、塗布液供給ノズル10が水平移動して基板60に塗布液70を塗布する方向(塗布方向)上流側端部に接して基台50上に載置されている。そして、シート案内板51は、その厚みが、基板60の厚みと同等か、または1mm以下の範囲内で基板60の厚みよりも大きくなるように形成されている。つまり、シート案内板51表面に接する塗布開始予備塗布シート21は、基板60の塗布開始位置近傍において、基板60表面と接するか、または1mm以下の範囲内で基板60表面に隙間がある状態で配置されることになる。
【0028】
また、塗布開始予備塗布シート21は、延在方向の長さが基板60の幅手方向の長さよりも大きく、厚みが100μm以下である。塗布開始予備塗布シート21の厚みを100μm以下に設定することによって、詳細は後述するが、塗布液供給ノズル10から吐出される塗布液70が塗布開始予備塗布シート21から基板60に移るときの段差を小さくすることができ、塗布液70が塗布開始予備塗布シート21と基板60との間に回り込んで基板60表面を汚染してしまうのを防止することができる。
【0029】
シート洗浄ユニット30は、塗布開始予備塗布シート21表面を洗浄する。シート洗浄ユニット30は、シート洗浄部31と、シート洗浄案内部32とを含む。シート洗浄部31は、シート洗浄案内部32に案内されて、塗布開始予備塗布シート21の延在方向に移動して、塗布開始予備塗布シート21表面を掻き取ったり、吸引したり、溶剤を吐出したりして、塗布開始予備塗布シート21表面に付着した塗布膜72を除去して洗浄する。
【0030】
ノズル洗浄ユニット40は、待機ポット14上に移動してきた塗布液供給ノズル10のノズル開口11先端部を洗浄する。ノズル洗浄ユニット40は、ノズル洗浄部41と、ノズル洗浄案内部42とを含む。ノズル洗浄部41は、ノズル洗浄案内部42に案内されて、塗布液供給ノズル10の延在方向に移動して、ノズル開口11先端部を掻き取ったり、吸引したり、溶剤を吐出したりして、ノズル開口11先端部に付着した余分な塗布液70を除去して洗浄する。
【0031】
また、本発明の塗布装置100は、基板60表面に対する塗布開始予備塗布シート21の水平方向の移動および塗布液供給ノズル10の水平方向の移動を制御する制御手段(不図示)を備える。図2および図3は、塗布装置100により塗布液を基板60に塗布する工程を説明するための図である。
【0032】
制御手段は、塗布液供給ノズル10がノズル開口11から塗布液70の吐出を開始するときに、まず図2(a)に示すように、塗布開始予備塗布シート21が基板60における塗布開始位置Qと、シート案内板51および基板60が接する位置Pとを覆うように、塗布開始予備塗布シート21を水平方向Aに移動させて、配置させる。このとき、塗布開始予備塗布シート21は、基板60表面の塗布方向に対して5〜10mm程度重なった状態で配置される。また、シート支持部22は、鉛直方向下方Eに塗布開始予備塗布シート21を押圧して、塗布開始予備塗布シート21が平坦性を維持するようにしている。
【0033】
次に、制御手段は、図2(b)に示すように、待機ポット14上に配置される塗布液供給ノズル10を水平方向Aに移動させて、ノズル開口11が塗布開始予備塗布シート21と対向するようにする。このように、ノズル開口11が塗布開始予備塗布シート21と対向した時点で、塗布液供給ノズル10は、図3(a)に示すように、塗布液70の吐出を開始する。これによって、ノズル開口11から塗布液70の吐出が開始される塗布開始時に形成される塗布液溜り(ビード)71は、ノズル開口11と塗布開始予備塗布シート21との間に形成されることになり、ノズルと基板とのギャップを調整制御する方法に比べて簡単な制御で、ビード71に由来する塗布不良である塗布膜端部73が、基板60表面の塗布開始位置Qに発生するのを防止することができる。塗布液供給ノズル10は制御手段に制御されて、塗布液70を吐出しながら水平方向A(塗布方向A)への移動を継続し、塗布開始予備塗布シート21上には塗布膜72が形成される。
【0034】
そして、制御手段は、図2(c)および図3(b)に示すように、塗布液供給ノズル10の塗布方向Aへの移動および塗布液70の吐出を継続させて、ノズル開口11がシート案内板51と基板60とが接する位置Pとなったときに、塗布開始予備塗布シート21を塗布方向Aと反対方向Bに移動させる。そして、図3(c)に示すように、塗布開始予備塗布シート21の端部および塗布液供給ノズル10が、基板60表面の塗布開始位置Qになったときに、塗布液70の基板60への塗布がはじまることになる。
【0035】
このとき、塗布開始予備塗布シート21を塗布方向Aと反対方向Bに移動させるときのシート移動速度は、塗布液供給ノズル10を水平移動させるノズル移動速度の2〜4倍に設定するのが好ましい。シート移動速度をノズル移動速度の2倍以上に設定することによって、塗布液供給ノズル10から吐出されている塗布液70が塗布開始予備塗布シート21から基板60に移るときに、塗布液70が塗布開始予備塗布シート21と基板60との間に毛細管現象で吸収され、基板60表面を汚染したり、周辺の膜厚を変動させたりしてしまうのを防止することができる。また、シート移動速度をノズル移動速度の4倍以下に設定することによって、塗布液供給ノズル10から吐出されている塗布液70が塗布開始予備塗布シート21から基板60に移るときに、塗布ぎれが発生するのを防止することができる。
【0036】
さらに、塗布液供給ノズル10が制御手段に制御されて塗布方向Aへの移動を継続することにより、図2(d)および図3(d)に示すように、ノズル開口11から吐出される塗布液70は、基板60表面上に向けて吐出されることになり、基板60表面に塗布膜72を形成することができる。このとき、制御手段は、塗布開始予備塗布シート21をシート洗浄ユニット30が配置される位置まで移動させる。
【0037】
塗布開始予備塗布シート21がシート洗浄ユニット30が配置される位置まで移動してくると、図2(e)に示すように、シート洗浄ユニット30は、シート洗浄部31が、シート洗浄案内部32に案内されて、塗布開始予備塗布シート21の延在方向Cに移動して、塗布開始予備塗布シート21表面に付着した塗布膜72を除去して洗浄する。塗布開始予備塗布シート21表面の洗浄が終了すると、制御手段は、塗布開始予備塗布シート21をシート案内板51と基板60とが接する位置Pに移動させて配置させる。
【0038】
そして、基板60表面に対する塗布液70の塗布が完了すると、図2(f)に示すように、制御手段は、塗布液供給ノズル10を塗布方向Aと反対方向Bに移動させて、ノズル待機位置に移動させる。ここで、ノズル待機位置は、基板60への塗布を連続して行う場合には塗布開始予備塗布シート21と対向する所定の位置であり、基板60への塗布を連続して行わない場合には待機ポット14上である。
【0039】
次に、塗布装置100での、基板60における塗布開始位置Q近傍での塗布膜72の膜厚均一性を向上させる効果を確認する実験を行った。
【0040】
(実験)
以下の実験条件に基づいて、基板表面への塗布液の塗布を行った。塗布開始予備塗布シートを備える塗布装置によって基板表面に塗布膜を形成し、塗布膜の膜厚を接触式段差計を用いて測定した。このとき、塗布液供給ノズルおよび塗布開始予備塗布シートの移動動作は、前述したように、制御手段が制御した。なお、比較のために、塗布開始予備塗布シートを備えない以外は同様の塗布装置を用いて基板表面に塗布膜を形成した。
【0041】
[実験条件]
塗布液供給ノズル:ノズルの延在方向長さ160mm、ノズル開口の開口幅500μm
ノズル移動速度:50mm/sec
塗布開始予備塗布シート:ポリエチレンフィルム、厚み100μm、塗布方向長さ80mm
シート移動速度:100mm/sec(ノズル移動速度の2倍)
基板:幅手方向長さ100mm、長手方向長さ200mm、厚み1.0mm
塗布ギャップ(塗布液供給ノズル先端から基板までの距離):200μm
塗布液供給ノズル先端から塗布開始予備塗布シートまでの距離:100μm
塗布液:レジスト液(東友ファインケム社製、YS−G102)
塗布膜の目標膜厚:1.5μm
【0042】
[実験結果]
塗布開始予備塗布シートを備えた塗布装置で基板表面に形成した塗布膜においては、塗布開始位置から塗布方向に70mmまでの膜厚変動(最大膜厚−最小膜厚)は、1.0μmであった。
【0043】
これに対して、塗布開始予備塗布シートを備えていない塗布装置で基板表面に形成した塗布膜においては、塗布開始位置から塗布方向に70mmまでの膜厚変動は、2.7μmであり、塗布開始位置にはビードに由来する塗布不良が発生した。
【0044】
また、塗布開始予備塗布シートを備えた塗布装置において、ノズル開口が基板表面の塗布開始位置近傍の所定位置となったときに、塗布開始予備塗布シートを塗布方向と反対方向に移動させずに相対的に停止した状態で塗布を行った場合、塗布液供給ノズルが塗布開始予備塗布シートから基板側へ移動した後に、塗布開始予備塗布シートと基板の隙間に塗布液が吸収され、基板が汚染されている状態が観察された。
【0045】
以上の結果から明らかに、塗布開始予備塗布シートを備えた塗布装置は、塗布開始位置近傍での塗布膜の膜厚均一性を向上させることができることがわかる。
【0046】
図4は、塗布装置100における待機時の動作を説明するための図である。塗布装置100は、基板60に対する塗布が所定の期間行われず待機期間が長くなる場合には、次回の始動に備えて準備作業を行うように構成されている。基台50に基板60が載置されていない状態で、制御手段は、図4(a)に示すように、塗布液供給ノズル10を塗布開始予備塗布シート21と対向する範囲内で水平移動させて、塗布開始予備塗布シート21上に塗布液70を吐出させる。これによって、待機期間が長くなってノズル開口11で塗布液70が詰まってしまうのを防止することができる。塗布開始予備塗布シート21上に形成された塗布膜72は、図4(b)に示すように、シート洗浄部31が塗布開始予備塗布シート21の延在方向Cに移動して、洗浄除去される。
【0047】
以上のように、基板60における塗布開始位置近傍での塗布膜の膜厚均一性を向上させる予備塗布手段20を有する塗布装置100について説明してきたが、類似した構成で、塗布終了位置近傍での塗布膜の膜厚均一性を向上させる構成とすることができる。以下に、塗布終了位置近傍での塗布膜の膜厚均一性を向上させる構成について説明する。
【0048】
塗布装置は、基板60表面の塗布終了位置近傍においてノズル開口11から吐出される塗布液70が塗布される塗布終了予備塗布シートを備える。ここで、塗布終了予備塗布シートは、前述した塗布開始予備塗布シートと同様に構成されている。そして、制御手段は、塗布液供給ノズル10を水平移動させて、ノズル開口11が基板60表面の塗布終了位置となる前に、塗布終了予備塗布シートの塗布方向上流側端部が塗布終了位置と一致するように塗布終了予備塗布シートを移動させて配置させる。これによって、ノズル開口11が基板60表面の塗布終了位置となる前に、塗布終了予備塗布シートが、基板60表面の塗布終了位置から塗布方向下流側に延びて配置されることになる。
【0049】
そして、制御手段は、ノズル開口11が、塗布終了予備塗布シートと対向した状態のまま、基板60表面の塗布終了位置から所定の位置だけ塗布方向下流側方向にずれたときに、塗布終了予備塗布シートを塗布方向と同一方向に移動させる。これによって、ノズル開口11が、基板60表面の塗布終了位置に対して塗布方向下流側方向にずれた位置であり、塗布終了予備塗布シートと対向した状態で、塗布液供給ノズル10の水平移動を停止させることができる。そのため、塗布終了時に、塗布液供給ノズル10を真上に上昇させて塗布液の連続を断つことによって発生する塗膜異常は、基板60表面の塗布終了位置とは異なる位置であり、塗布終了予備塗布シート上に形成されることになる。したがって、基板60表面の塗布終了位置に、塗布不良が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の一形態である塗布装置100の構成を示す斜視図である。
【図2】塗布装置100により塗布液を基板60に塗布する工程を説明するための図である。
【図3】塗布装置100により塗布液を基板60に塗布する工程を説明するための図である。
【図4】塗布装置100における待機時の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0051】
10 塗布液供給ノズル
11 ノズル開口
12 塗布液貯蔵タンク
13 ポンプ
14 待機ポット
20 予備塗布手段
21 塗布開始予備塗布シート
22 シート支持部
30 シート洗浄ユニット
31 シート洗浄部
32 シート洗浄案内部
40 ノズル洗浄ユニット
41 ノズル洗浄部
42 ノズル洗浄案内部
50 基台
51 シート案内板
60 基板
70 塗布液
71 ビード
72 塗布膜
73 塗布膜端部
100 塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口から塗布液を吐出する塗布液供給ノズルを基板の表面に対して相対的に移動させて、基板表面に塗布液を塗布する塗布装置であって、
前記塗布液供給ノズルのノズル開口の延在方向と同一方向に延在するシート状であり、基板への塗布に先立ってノズル開口から吐出される塗布液が塗布される塗布開始予備塗布シートと、
前記塗布開始予備塗布シートの移動および前記塗布液供給ノズルの基板表面に対する相対移動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記塗布液供給ノズルがノズル開口から塗布液の吐出を開始するときに、前記塗布開始予備塗布シートがノズル開口と対向して前記基板の端部を覆うように、塗布開始予備塗布シートを移動させ、
前記塗布液供給ノズルを、塗布液を吐出させながら、基板表面に対して相対的に移動させて、ノズル開口が基板表面の塗布開始位置近傍の所定位置となったときに、前記塗布開始予備塗布シートを塗布方向と反対方向に移動させるように構成されることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布液供給ノズルのノズル開口の延在方向と同一方向に延在するシート状であり、基板表面の塗布終了位置近傍においてノズル開口から吐出される塗布液が塗布される塗布終了予備塗布シートをさらに含み、
前記制御手段は、
前記塗布液供給ノズルを基板表面に対して相対的に移動させて、ノズル開口が基板表面の塗布終了位置となる前に、前記塗布終了予備塗布シートの塗布方向上流側端部が塗布終了位置と一致するように塗布終了予備塗布シートを移動させて配置させ、
ノズル開口が、前記塗布終了予備塗布シートと対向した状態のまま、基板表面の塗布終了位置から所定の位置だけ塗布方向下流側方向にずれたときに、塗布終了予備塗布シートを塗布方向と同一方向に移動させるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塗布装置によって、基板表面に塗布液を塗布することを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−254926(P2009−254926A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104016(P2008−104016)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】