説明

塗布装置

【課題】気泡が混入した塗布液がグラビアロールに充填されることを防止できる塗布装置を提供すること。
【解決手段】塗布液充填装置6が、グラビアロール3の軸心方向に沿う貯留部形成体40と、グラビアロール3の回転方向で貯留部Dとの接触範囲よりも下手側又は接触範囲の下手側の端部においてグラビアロール3の外周表面に密接するドクターブレード35とを備えて構成され、貯留部形成体40に、グラビアロール3側に貯留部Dを形成しかつグラビアロール3とは反対側に排出塗布液が流入する排出塗布液流入部Rを形成する堰40aを、グラビアロール3の軸心方向に沿って設け、塗布液充填装置6が、貯留部Dから排出塗布液流入部Rに堰40aを回り込む状態で塗布液を通流させるオーバーフロー流路aを備えて構成されている塗布装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹状のセルが外周表面に多数個形成されて横軸心周りに回転自在に配設されたグラビアロールと、塗布液供給手段により加圧供給される塗布液を貯留する貯留部が前記グラビアロールの軸心方向に沿って形成され、かつ、この貯留部と前記グラビアロールの外周表面とが接触する状態で配置された塗布液充填装置とが設けられ、前記貯留部から前記グラビアロールの外周表面に塗布液を移動させ、前記グラビアロールの回転に伴って前記外周表面上の塗布液をシート状の基材に塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記塗布装置は、例えば、二次電池の電極となる銅やアルミの金属箔等の基材に、流動性のある電極活物質や多孔質絶縁膜等の塗布液を塗布した後、乾燥や圧縮等して、基材に所定厚の塗膜を形成するものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記塗布装置においては、グラビアロールのセルに塗布液が充填される気液交換過程で、セルを占有していた空気が気泡として貯留部に発生する。また、ドクターブレードにてグラビアロールの外周表面から掻き落とされた塗布液が、回転方向で下手側に位置する貯留部に貯留された塗布液に衝突することにより、塗布液の表面に気泡が発生する。さらに、グラビアロールが貯留部の塗布液に接触した状態で回転作動することで貯留部に貯留された塗布液が攪拌されて塗布液の表面に気泡が発生する。
【0004】
こうして発生する気泡がグラビアロールの外周表面に充填される塗布液に混入すると、塗膜の膜質低下や、ピンホールの形成や、塗布液の不均一性等の品質悪化の問題が発生する。そこで、従来から、例えば、特許文献1に記載されているように、ドクターブレードによりグラビアロールの外周表面から掻き落とされた塗布液が、貯留部に落下しないように構成したものがある。このように、従来では、極力気泡の発生しない構成を採用することにより、気泡発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−104851号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来では、貯留部における塗布液の表面にドクターブレードにより掻き落とされた余剰な塗布液が衝突することによる気泡の発生は抑制できるが、グラビアロールの外周表面と貯留部の塗布液が接触して行われる気液交換により発生する気泡を抑制することはできない。そのため、貯留部で発生した気泡が、グラビアロールの外周表面に充填される塗布液に混入するおそれがあった。
【0007】
例えば、特許文献1に記載されたものでは、気液交換により発生する気泡は塗布液の流れにより貯留部から排出されるが、排出先の空間は、グラビアロールの外周表面が位置し、一つの排出先を画定する面となっているため、貯留部から排出された気泡を含んだ塗布液がグラビアロールの外周表面に接触し、そのままグラビアロールの外周表面に付着して残り、転写側に送られるおそれがある。
【0008】
特に貯留部からグラビアロールに付着せずに残った余分な塗布液を排出する場合、一般には、グラビアロールの軸心方向で中間部に位置する排出箇所から塗布液を排出することとなるが、このような構造では、気泡の排出箇所への送りを軸心方向両端側でスムーズに行うことができず、両端側における気泡のグラビアロール側への移動が起こり易い。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、気泡が混入した塗布液がグラビアロールに充填されることを防止できる塗布装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明に係る塗布装置の第1特徴構成は、凹状のセルが外周表面に多数個形成されて横軸心周りに回転自在に配設されたグラビアロールと、塗布液供給手段により加圧供給される塗布液を貯留する貯留部が前記グラビアロールの軸心方向に沿って形成され、かつ、この貯留部と前記グラビアロールの外周表面とが接触する状態で配置された塗布液充填装置とが設けられ、前記貯留部から前記グラビアロールの外周表面に塗布液を移動させ、前記グラビアロールの回転に伴って前記外周表面上の塗布液をシート状の基材に塗布する塗布装置であって、
前記塗布液充填装置が、前記グラビアロールの軸心方向に沿う貯留部形成体と、前記グラビアロールの回転方向で前記貯留部との接触範囲よりも下手側又は前記接触範囲の下手側の端部において前記グラビアロールの外周表面に密接するドクターブレードとを備えて構成され、前記貯留部形成体に、前記グラビアロール側に前記貯留部を形成しかつ前記グラビアロールとは反対側に排出塗布液が流入する排出塗布液流入部を形成する堰を、前記グラビアロールの軸心方向に沿って設け、前記塗布液充填装置が、前記貯留部から前記排出塗布液流入部に前記堰を回り込む状態で塗布液を通流させるオーバーフロー流路を備えて構成されている点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、貯留部に塗布液が加圧供給されることで、貯留部と接触しているグラビアロールの外周表面に形成された凹状のセル内の空気と貯留部の塗布液とが交換され、グラビアロールの外周表面に対して塗布液が充填される。そして、グラビアロールの回転に伴って、貯留部との接触範囲よりも下手側又は接触範囲の下手側の端部においてグラビアロールの外周表面に密接するドクターブレードにより、グラビアロールの外周表面から余剰な塗布液が掻き落とされ、さらに回転方向下流側で、適量の塗布液がシート状の基材に塗布される。
【0012】
一方、貯留部とグラビアロールの外周表面との接触範囲において、セル内の空気と、貯留部の塗布液とが交換されることで、少なくともセルに詰まっていた空気が貯留部に気泡として遊離する。
【0013】
貯留部形成体には、グラビアロール側に貯留部を形成しかつグラビアロールとは反対側に排出塗布液が流入する排出塗布液流入部を形成する堰が、グラビアロールの軸心方向に沿って設けられているので、貯留部に塗布液が加圧供給されることで、貯留部における塗布液は、貯留部から排出塗布液流入部に堰を回り込む状態で塗布液を通流させるオーバーフロー流路に通流する。
【0014】
貯留部に遊離した気泡は、貯留部における塗布液の流れにより搬送されるが、上述のように、貯留部における塗布液は、貯留部から排出塗布液流入部に堰を回り込む状態で塗布液を通流させるオーバーフロー流路に沿って通流することから、貯留部に遊離した気泡も、塗布液の流れに乗って、グラビアロールの軸心方向に沿う堰を回り込む状態で、グラビアロールとは反対側排の出塗布液流入部に移動する。
【0015】
したがって、貯留部に遊離した気泡は、グラビアロールの外周表面に接触している貯留部から流出される塗布液と共に堰を越えて排出塗布液流入部に移動することで、グラビアロールから遠ざかる方向に移動するので、気泡が混入した塗布液がグラビアロールの外周表面に接触することが防止できる。さらに、上記のように、排出箇所をグラビアロールの軸心方向中間部に設ける場合も、堰を軸心方向に沿って設けているので、軸心方向両端部側での気泡のグラビアロール側への戻りを抑制でき、上記した課題を良好に解決できる。
【0016】
このように、本特徴構成によれば、気泡が混入した塗布液がグラビアロールに充填されること防止できる塗布装置を得るに至った。
【0017】
本発明に係る塗布装置の第2特徴構成は、前記塗布液充填装置が、前記堰が前記貯留部形成体において上方に突出する状態となる縦姿勢にて配置され、前記貯留部形成体が、前記塗布液供給手段にて供給された塗布液を、前記貯留部において上昇流動させ、前記排出塗布液流入部において下降流動させるように構成されている点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、貯留部における塗布液は、上昇流動したのち、堰を回り込む状態で乗り越えて、排出塗布液流入部において下降流動する。この場合、気泡が混入した塗布液は、堰のグラビアロール側で、液面を形成することができるため、この液面から気泡を良好に排除できる。これにより、グラビアロールに対して気泡が混入した塗布液が充填されることをより効果的に防止できる。
【0019】
本発明に係る塗布装置の第3特徴構成は、前記貯留部形成体が、前記グラビアロールの回転方向に関して下手側ほど前記外周表面に近づく傾斜面を備えている点にある。
【0020】
本特徴構成によれば、塗布液が貯留部を傾斜面に沿って流動することで、塗布液のグラビアロールの外周表面に対する接触圧が高められ、セルに詰まっている空気と塗布液との気液交換が行われ易くなり、セルに対する塗布液の充填が促進される。
【0021】
本発明に係る塗布装置の第4特徴構成は、前記貯留部が、前記グラビアロールの回転方向で上手側において前記外周表面に接触する第1貯留部と、同下手側において前記外周表面に接触する第2貯留部とが前記外周表面に接触する部分で連通する状態で形成され、前記貯留部形成体が、前記第1貯留部を形成する第1形成体と、前記第2貯留部を形成する第2形成体とを備えて構成され、かつ、前記第1形成体及び前記第2形成体の夫々に、前記堰が形成され、前記塗布液供給手段が、前記第1形成体及び前記第2形成体の夫々に対して塗布液を加圧供給するように構成され、前記グラビアロールの前記外周表面に先端部が密接して前記貯留部を前記第1貯留部と前記第2貯留部とに仕切る仕切り用ブレードが設けられている点にある。
【0022】
本特徴構成によれば、第1貯留部と第2貯留部の夫々に塗布液循環装置にて塗布液が加圧供給されることで、第1貯留部との接触によりまずセル内への塗布液の充填が行われ、気液交換が行われた後、第2貯留部との接触により塗布液がグラビアロールの外周表面に付着される。仕切り用ブレードが、第1貯留部より上流側と第2貯留部より下流側との連通箇所において貯留部を第1貯留部と第2貯留とに仕切ることにより、第1貯留部での気液交換により発生した気泡が塗布液と共に第2貯留部に移動することが防止できる。
【0023】
また、第1貯留部における堰、及び、第2貯留部における堰により、第1貯留部及び第2貯留部についての夫々のオーバーフロー流路を流動する塗布液とともに気泡が第1貯留部における堰や第2貯留部における堰を越えてグラビアロールから離れる方向に移動する。そのため、気泡を含んだ塗布液が堰を越えて第1貯留部や第2貯留部に戻ってくることはないので、気泡が滞留しない好適な状態でグラビアロールの外周表面が第1貯留部や第2貯留部と接触することになる。
【0024】
しかも、この構成では、第2貯留部の塗布液と接触する時点では、第1貯留部との接触によりすでにセル内の空気が塗布液と交換されており、しかも、仕切り用ブレードにより、第1貯留部での気液交換により発生した気泡が排出側に良好に導かれるとともに、気泡が塗布液と共に第2貯留部に移動することが防止されているので、第2貯留部では第1貯留部に比べて浮遊する気泡が大幅に少ない状態となっている。そのため、第2貯留部の塗布液との接触による塗布液の充填時に気泡がグラビアロールの外周表面に混入する虞が少ない。
【0025】
このように、セルの空気と塗布液の気液交換を第1貯留部にて一次的に行い、気泡が殆ど含まれない第2貯留部にて塗布液の付着を二次的に行うことで、気泡がグラビアロールの外周表面に混入することをより効果的に防止できる。
【0026】
本発明に係る塗布装置の第5特徴構成は、前記塗布液供給手段が、前記第2貯留部に対する塗布液の供給圧よりも大きな供給圧により前記第1貯留部に対して塗布液を供給するように構成されている点にある。
【0027】
本特徴構成によれば、第1貯留部との接触による気液交換を接触圧の高い状態で行うことで、セルにおける気液交換を十分に促進させることができ、しかも、第2貯留部との接触によるグラビアロールの外周表面への塗布液の移動を接触圧の低い状態で行うことで、グラビアロールの外周表面に密接するドクターブレードによる塗布液量の設定を精度よく行うことができる。
【0028】
本発明に係る塗布装置の第6特徴構成は、前記塗布液充填装置が、前記堰が前記貯留部形成体において上方に突出する状態となる縦姿勢にて配置され、前記貯留部形成体が、前記塗布液供給手段にて供給された塗布液を、前記貯留部において上昇流動させ、前記排出塗布液流入部において下降流動させるように構成され、前記仕切り用ブレードの先端高さが前記第1形成体における前記堰の上端高さよりも低く設定され、かつ、前記ドクターブレードの先端高さが前記第2形成体における前記堰の上端高さよりも低く設定されている点にある。
【0029】
本特徴構成によれば、第1貯留部及び第2貯留部の両貯留部でグラビアロールの貯留部側の外周表面に塗布液が存在することになるが、第1貯留部に関しては、多量に発生する気泡の除去を目的として、塗布液の気液接触面をグラビアロールに近い位置として、気泡の除去を迅速に行える。
【0030】
一方、第2貯留部に関しては、塗布液のグラビアロール外周表面への良好な付着状態を確保するため、塗布液の気液接触面を比較的高い位置として、グラビアロール外周表面部位の圧力を安定したものとできる。
【0031】
本発明に係る塗布装置の第7特徴構成は、前記塗布液充填装置の位置を、前記グラビアロールに装着される装着位置と、前記グラビアロールから離間してグラビアロール装着側部分が開口する離間位置とに切り換える位置切換手段が設けられている点にある。
【0032】
本特徴構成によれば、位置切換手段により、塗布液充填装置の位置を装着位置と離間位置とに切り換えることができるので、塗布液充填装置やグラビアロールのメンテナンス時に必要となる塗布液充填装置をグラビアロールから離脱させる作業及び装着させる作業を容易に行うことができる。また、塗布液充填装置を離脱位置に位置させることで、塗布液充填装置やグラビアロールのメンテナンス作業自体が行い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態におけるグラビアコーターの全体側面図
【図2】第1実施形態におけるグラビアチャンバーヘッドの斜視図
【図3】第1実施形態におけるグラビアチャンバーヘッドの拡大斜視図
【図4】第1実施形態におけるグラビアチャンバーヘッドの縦断断面図
【図5】第2実施形態におけるグラビアチャンバーヘッドの拡大一部分解斜視図
【図6】第2実施形態におけるグラビアチャンバーヘッドの縦断断面図
【図7】第2実施形態における塗布液を貯留している状態のグラビアチャンバーヘッドの縦断断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る塗布装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
本実施形態の塗布装置は、二次電池の電極板となる基材としてのアルミ箔や銅箔などの金属製のシートに電極活物質や多孔質絶縁膜などの塗布材を塗布する塗布装置である。
【0035】
塗布装置は、図1に示すグラビアコーター1の他、図外の巻き出し装置、ドライヤー、検査装置、巻き取り装置などを直線状に配置して構成されている。巻き出し装置は、コアに対してロール状に巻き取られた金属シート2をシート送り出し方向に巻き出す。巻き出し装置の送り出し作動を駆動する電動モータには、パウダブレーキが設けられたACサーボモータが用いられており、精度のよいトルク制御によりモータ回転速度が制御される。これによりロール状の金属シート2は、テンションを一定に保ちながら巻き出され、複数のガイドロールを経由する巻回経路に沿って送り出される。グラビアコーター1は、送り出される金属シート2に対して送り出し方向に連続する状態で、セラミックなどの塗布材を溶媒に溶かした流動性のある塗布液を塗布する。ドライヤーは、温調機能付きの複数の恒温槽を連続して接続して構成されており、グラビアコーター1にて塗布された塗布液を徐々に乾燥させる。検査装置は、金属シート2に対して塗布材が適正な位置及び領域に適正な厚みで塗布されているかを検査する。巻き取り装置は、塗布材が連続状態で塗布された金属シートをコアに巻き取る。
【0036】
図1及び図2に示すように、グラビアコーター1は、金属シート2に塗布される塗布液が充填される金属性のグラビアロール3、グラビアロール3に塗布液を充填する塗布液充填装置としてのグラビアチャンバーヘッド6(以下単に、チャンバーヘッド6と略称する)、チャンバーヘッド6に連続して塗布液を加圧供給する塗布液供給手段としての塗布液循環装置7などを備えて構成されている。
【0037】
図1に示すように、グラビアロール3は、横軸心Y1周りに回転自在に配設されている。すなわち、床面Fに固定されたベースフレーム8に、金属シート2の幅方向で左右一対のロール取り付け用マスト9が接続されており、この一対のロール取り付け用マスト9の夫々に取り付けられた横軸心Y1の軸受け10により、グラビアロール3が回転自在に支持されている。また、グラビアロール3の外周表面には、塗布液が充填される微細な凹状のセル4(図4参照)がレーザー加工等により多数個形成されている。
【0038】
図2に示すように、グラビアロール3の一方側の端部には、カップリング31を介してグラビアロール3を回転駆動させる電動モータ32が接続されている。そして、グラビアコーター1では、電動モータ32によりグラビアロール3を一定速度で回転作動させることで、チャンバーヘッド6に形成される塗布液の貯留部Dからグラビアロール3の外周表面に移動した塗布液がグラビアロール3の回転に伴って外周表面上の塗布液が金属シート2に塗布されるようになっている。
【0039】
図1に示すように、チャンバーヘッド6は、左右に分散配置された一対の補強用リブ17aを備えたヘッド取り付けブラケット17にボルトにて固定されている。チャンバーヘッド6の背面部における一対のリブ17aの間に位置する部分には、塗布液循環装置7から供給される塗布液の供給口18が下側に、チャンバーヘッド6から塗布液循環装置7により回収される塗布液の排出口19が上側に位置する状態で上下に並んで形成されている。ヘッド取り付けブラケット17は、ヘッド取り付け台20との間に設けられた図外のリニアガイドにて直動案内される状態で、かつ、当該ヘッド取り付け台20に対する平面視姿勢及び位置が調節できる状態で設けられている。これにより、チャンバーヘッド6のグラビアロール3に対する姿勢及び距離を調節自在となっている。
【0040】
ヘッド取り付け台20には、ヘッド位置調整用電動シリンダ11が設けられている。ヘッド位置調整用電動シリンダ11を伸張させると、ヘッド取り付けブラケット17がグラビアロール3から離間する側にリニアガイドのガイドレールに沿って移動し、ヘッド位置調整用電動シリンダ11を縮退させると、ヘッド取り付けブラケット17がグラビアロール3に接近する側にリニアガイドのガイドレールに沿って移動する。
【0041】
ヘッド取り付け台20は、床面Fに固定されたベースフレーム8の夫々の上端部に設けられた軸受け21により横軸心Y3周りに回転自在に支持された支持シャフト22に固定されている。この支持シャフト22の一方側の端部には、支持シャフト22を横軸心Y3周りに回転操作して、ヘッド取り付け台20を回転操作するクランク機構K2が設けられている。クランク機構K2は、支持シャフト22の端部から回転半径方向の外方側に延設されて支持シャフト22と一体回転自在な操作アーム23と、この操作アーム23の回転半径方向で外方側箇所に連結されたヘッド位置切り換え操作用のエアシリンダー24とで構成されている。
【0042】
このような構成により、ヘッド位置切り換え操作用のエアシリンダー24を伸張状態から縮退状態に切り換えると、ヘッド取り付け台20が横軸心Y3周りに図1で右回りに設定角度(約90度)だけ回転操作された状態となり、この状態でヘッド位置調整用電動シリンダ11を伸張させて装着位置(図1の囲い枠内の拡大図において二点鎖線で示す位置)に位置させることで、チャンバーヘッド6がグラビアロール3に装着された状態となる。
【0043】
逆に、チャンバーヘッド6がグラビアロール3に装着された状態でヘッド位置調整用電動シリンダ11を縮退させてチャンバーヘッド6をグラビアロール3から離間した状態としてから、ヘッド位置切り換え操作用のエアシリンダー24を縮退状態から伸張状態に切り換えると、ヘッド取り付け台20が横軸心Y3周りに図1で左回りに設定角度(約90度)だけ回転操作されて離間位置(図1の囲い枠内の拡大図において実線で示す位置)に変更される。このとき、チャンバーヘッド6のグラビアロール装着側部分が略真上に向く状態で開口することになる。
【0044】
このように、本実施形態の塗布装置では、チャンバーヘッド6が装着位置と離間位置とに切り換え自在となっており、チャンバーヘッド6を装着位置と離間位置とに切り換える位置切換手段としてヘッド位置調整用電動シリンダ11及びヘッド位置切り換え操作用のエアシリンダー24が設けられている。
【0045】
図4に示すように、塗布液循環装置7は、塗布液が収容された塗布液タンク25と、この塗布液タンク25とチャンバーヘッド6の背面部左右中央箇所の下部に形成された供給口18とを接続して、塗布液タンク25の塗布液をチャンバーヘッド6の供給口18に供給する供給チューブ26と、チャンバーヘッド6の背面部左右中央箇所の上部に形成された排出口19と塗布液タンク25とを接続して、チャンバーヘッド6の排出口19から排出された塗布液を塗布液タンク25に回収する回収チューブ27と、供給チューブ26の途中箇所に設けられて塗布液タンク25内の塗布液を吸引してチャンバーヘッド6に塗布液を加圧給送する供給ポンプ28とを備えている。また、チャンバーヘッド6に設けられた液受け29から排出される塗布液を回収するドレンチューブ30も塗布液タンク25に接続されている。
【0046】
このような構成の塗布液循環装置7により、チャンバーヘッド6内部から排出口19に排出される塗布液とチャンバーヘッド6の外部から液受け29に排出される塗布液の双方が塗布液タンク25に回収され、供給ポンプ28により塗布液タンク25からチャンバーヘッド6に塗布液が加圧供給されるようになっている。つまり、塗布液循環装置7は、塗布液をチャンバーヘッド6に加圧供給する塗布液供給手段7として機能する。なお、チャンバーヘッド6の排出口19や液受け29から供給ポンプ28までの循環経路途中に塗布液中に含まれる不純物や凝固物を取り除くフィルタを設けてもよい。
【0047】
次にチャンバーヘッド6の構成について説明する。図3及び図4に示すように、チャンバーヘッド6は、装着位置でグラビアロール3側となる前面側において、グラビアロール3の横軸心Y1方向に沿う凹入部33gが形成されたヘッド本体33の下方側部分にはシール用の入口ドクターブレード34が設けられ、上方側部分にはグラビアロール3に対する塗布液の充填量を設定する出口ドクターブレード35が設けられている。チャンバーヘッド6における出口ドクターブレード35は、グラビアロール3の回転方向で塗布液の貯留部Dとの接触範囲の下手側の端部においてグラビアロール3の外周表面に密接している。
【0048】
入口ドクターブレード34及び出口ドクターブレード35は、基端側がヘッド本体33にボルト固定されるドクターサポータ36の先端側部分と、ヘッド本体33において横軸心Y1方向に沿って設定されたドクターブレード取付部分33aとにより、基端部が挟み込まれた状態で互いに先端部が対向する姿勢で、かつ、装着位置においてグラビアロール3の外周表面に対して夫々が所定の接触角度を為す状態で取り付けられている。
【0049】
図3に示すように、チャンバーヘッド6の左右の側面部には、ポリエチレン等の弾力性のある樹脂材料にて構成されたサイドシール部材37が、ヘッド本体33の凹入部33gの両端部を塞ぐ状態で装着されており、その外側においてヘッド本体33にボルト固定される板状の固定金具38により、サイドシール部材37がヘッド本体33に押し付けられた状態で固定されている。なお、サイドシール部材37をフッ素樹脂プレートにて構成して、このサイドシール部材37をヘッド本体33の凹入部33gの両端部に圧入する予圧構造としてもよい。
【0050】
なお、入口ドクターブレード34のドクターサポータ36には、グラビアロール3の下方に位置する前述の液受け29が横軸心Y3方向に沿って延設されている。また、ヘッド本体33の上面にはヘッド内における塗布液の流動状態を視認できる確認窓39が設けられている。
【0051】
チャンバーヘッド6は、このように外部空間と遮蔽された構造となっているため、外部への塗布液の臭いの拡散を防止でき、外気の湿度変化等が発生しても塗布液の粘土変化が生じ難く、また、外部空間から塵埃等の異物が混入する虞がほとんどない。
【0052】
図4に示すように、チャンバーヘッド6のヘッド本体33の凹入部には、グラビアロールの横軸心Y1方向に沿う貯留部形成体40が、ヘッド本体33の背面側からボルト固定されて設けられている。凹入部33gの下部側部分を形成する端面、入口ドクターブレード34、貯留部形成体40、及び、グラビアロール6の外周表面に囲まれる領域にて、塗布液を貯留する貯留部Dがグラビアロールの横軸心Y1方向に沿って形成されている。チャンバーヘッド6は、装着位置において、貯留部Dとグラビアロール3の外周表面とが接触する状態で配置されることになる。
【0053】
貯留部形成体40は、グラビアロール3の回転方向に関して下手側ほどグラビアロール3の外周表面に近づく傾斜面40sを備えている。これにより、塗布液が貯留部Dを傾斜面40sに沿って上昇流動することで、塗布液のグラビアロール3の外周表面に対する接触圧が高められ、セル4に詰まっている空気と塗布液との気液交換が行われ易くなり、セル4に対する塗布液の充填が促進される。
【0054】
貯留部形成体40には、グラビアロール3側に貯留部Dを形成しかつグラビアロール3とは反対側に排出塗布液が流入する排出塗布液流入部としてのオーバーフロー溝Rを形成する堰40aがグラビアロール3の軸心方向(横軸心Y1方向)に沿って設けられている。堰40aが設けられた貯留部形成体40がチャンバーヘッド6内に配設されることで、貯留部Dからオーバーフロー溝Rに堰40aを回り込む状態で塗布液を通流させるオーバーフロー流路が形成されている。図4では、塗布液循環装置7により塗布液がチャンバーヘッド6内部に加圧供給されることで貯留部Dに貯留されている塗布液がオーバーフローしてオーバーフロー流路aに沿って流動している様子が示されている。
【0055】
図4に示すように、装着位置においてチャンバーヘッド6は、堰40aが貯留部形成体40において上方に突出する状態となる縦姿勢にて配置されている。貯留部形成体40は、塗布液循環装置7にて加圧供給された塗布液を、貯留部Dにおいて上昇流動させ、オーバーフロー溝Rにおいて下降流動させることになる。
【0056】
貯留部Dの塗布液がグラビアロール3のセル4に充填されることでセル4に詰まっていた空気がセル4から貯留部D側に移動し、塗布液の流れに乗って塗布液とともに上昇移動し、堰40aからグラビアロール3から離れる側に移動して、堰40aを回り込んでオーバーフロー溝Rに移動する。そのため、貯留部Dとグラビアロール3の外周表面との接触による気液交換が行われて発生する気泡や、グラビアロール3の回転作動による塗布液の攪拌により発生する気泡が、塗布液の流れに乗って塗布液とともにオーバーフロー溝Rに排出される。したがって、グラビアロール3の外周表面に気泡が混入した塗布液が充填されることによる塗布膜の膜質低下や塗布液の不均一性等の問題が発生し難い。
【0057】
塗布液は、貯留部形成体40のグラビアロール3の軸心方向で左右全体にわたってオーバーフロー溝Rに排出され、左右中央に形成された排出口19まで溝状のオーバーフロー溝Rに案内されて流動する。図4に示すように、排出口19は、その外周部の下端がオーバーフロー溝Rの底面高さよりも低くかつその外周部の上端がオーバーフロー溝Rの底面高さよりも高くなるように形成されている。これにより、オーバーフロー溝Rに塗布液が溜まって堰40aの高さを超えてしまうことがないようになっている。したがって、塗布液と共に気泡が堰40aを一旦越えてしまえば、その塗布液及び気泡がグラビアロール3側へ逆方向に移動することがないので、グラビアロール3に対して気泡が混入した塗布液が充填されることを防止できる効果がより確実となる。
【0058】
このように、本実施形態の塗布装置におけるグラビアコーター1では、チャンバーヘッド6の貯留部Dに、塗布液循環装置7から塗布液が加圧供給されることで、貯留部Dの塗布液が堰40aを回り込むようにして乗り越えてグラビアロール3から離れる側にオーバーフロー流路aに沿ってオーバーフローする。このオーバーフロー流路aに沿った塗布液の流れにより気泡が搬送されることで、堰40aを乗り越えるときに塗布液の液面から気泡が分離される。これにより、貯留部Dの上面に気泡が滞留することを防止して、グラビアロール3に対して塗布液を充填するときの気泡が混入することを防止できる。
【0059】
〔第2実施形態〕
第2実施形態における塗布装置は、第1実施形態に例示した塗布装置と、チャンバーヘッド6の構成及び塗布液循環装置7の構成が異なる以外は、同様の構成であるので、以下では、チャッバーヘッド6及び塗布液循環装置7の構成について説明する。なお、第1実施形態におけるチャッバーヘッド6及び塗布液循環装置7の構成に対応するものは同じ符号を付けて説明を省略する。
【0060】
図5及び図6に示すように、チャッバーヘッド6内において、貯留部Dとして、グラビアロール3の回転方向で上手側において外周表面に接触する第1貯留部D1と、同下手側において外周表面に接触する第2貯留部D2とが形成され、これらは、グラビアロール3の外周表面に接触する部分で連通する状態で形成されている。
【0061】
チャッバーヘッド6の内側面には、グラビアロール3の軸心方向に沿って、第1形成体41と第2形成体42とが上下に並べて取り付けられている。第2形成体42の先端部分には、グラビアロール3の外周表面に先端部が密接して貯留部Dを第1貯留部D1と第2貯留部D2とに仕切る仕切り用ブレード43がグラビアロール3の横軸心Y1方向に沿って設けられている。仕切り用ブレード43は、第1貯留部D1と第2貯留部D2との連通箇所において貯留部Dを第1貯留部D1と第2貯留部D2とに仕切ることにより、第1貯留部D1及び第2貯留部D2の連通箇所における塗布液の通流を阻止している。
【0062】
図6に示すように、第1貯留部D1は、ヘッド本体33の下部と、入口ドクターブレード34と、グラビアロール3の外周表面のうち入口ドクターブレード34の先端及び仕切り用ブレード43の先端の間に位置する部分と、第1形成体41の外周部と、第2形成体42の下面部とで囲まれた領域にて形成されている。第2貯留部D2は、第2形成体42の上面部と、仕切り用ブレード43と、グラビアロール3の外周表面のうち仕切り用ブレード43の先端及び出口ドクターブレード35の先端の間に位置する部分と、出口ドクターブレード35と、ヘッド本体33の上部におけるドクターブレード取付部分33aとで囲まれた領域にて形成されている。
【0063】
第1形成体41の上面側には、第1堰41aが形成され、第2形成体の上面側には第2堰42aが形成されている。第1貯留部D1に、塗布液循環装置7から塗布液が加圧供給されることで、第1貯留部D1の塗布液が第1堰41aを回り込むようにして乗り越えてグラビアロール3から離れる側に位置する、第1堰41aについての排出塗布液流入部としての、第1オーバーフロー溝R1に第1オーバーフロー流路a1に沿ってオーバーフローする。同様に、第2貯留部D2に、塗布液循環装置7から塗布液が加圧供給されることで、第2貯留部D2の塗布液が第2堰42aを回り込むようにして乗り越えてグラビアロール3から離れる側に位置する、第2堰42aについての排出塗布液流入部としての、第2オーバーフロー溝R2に、第2オーバーフロー流路a2に沿ってオーバーフローする。
【0064】
ヘッド本体33の背面には、第1貯留部D1に塗布液を供給するための第1供給口46、第1貯留部D1から第1オーバーフロー溝R1に排出された塗布液をチャンバーヘッド6の外部に排出するための第1排出口47、第2貯留部D2に塗布液を供給するための第2供給口48、第2貯留部D2から第2オーバーフロー溝R2に排出された塗布液をチャンバーヘッド6の外部に排出するための第2排出口49が上下に並んで形成されている。
【0065】
図7に示すように、仕切り用ブレード43の先端高さが第1形成体41における第1堰41aの上端高さよりも低く設定され、かつ、ドクターブレード34の先端高さが第2形成体42における第2堰42aの上端高さよりも低く設定されている。これにより、第1貯留部D1では、仕切り用ブレード43の先端がグラビアロール3に密接している部分よりも高い位置まで塗布液が貯留される。また、第2貯留部D2では、出口ドクターブレード35の先端がグラビアロール3に密接している部分よりも高い位置まで塗布液が貯留される。
【0066】
つまり、グラビアロール3の外周表面のうち入口ドクターブレード34の先端位置から出口ドクターブレード35の先端位置までの範囲全体が塗布液と接触するように、第1貯留部D1及び第2貯留部D2が形成されている。これにより、グラビアロール3の外周表面を塗布液とできるだけ長い時間に亘って接触させることで、セル4に詰まっている空気と塗布液との気液交換をできるだけ促進させることができるとともに、塗布液が充填された後のグラビアロール3への気泡の混入を防止できる。
【0067】
図6に示すように、塗布液循環装置7には、供給経路途中に第1供給ポンプ50を備えて塗布液タンク25と第1供給口46とを接続する第1供給チューブ51、及び、供給経路途中に第2供給ポンプ52を備えて塗布液タンク25と第2供給口48とを接続する第2供給チューブ53が設けられており、第1貯留部D1及び第2貯留部D2の夫々に対して塗布液を各別に加圧供給する。チャンバーヘッド6の背面における第1排出口47及び第2排出口49から排出される塗布液は、共通回収チューブ54により塗布液タンク25に回収される。
【0068】
このように、本実施形態の塗布装置におけるグラビアコーター1では、第1貯留部D1と第2貯留部D2の夫々に塗布液循環装置7にて塗布液が加圧供給されることで、第1貯留部D1との接触によりまずセル4に関して気液交換が行われた後、第2貯留部D2との接触により塗布液がグラビアロール3の外周表面に付着される。したがって、第2貯留部D2の塗布液と接触する時点では、すでにセル4内の空気が塗布液と交換されているので、気液交換による気泡が発生し難い状態となっている。そのため、第2貯留部D2の塗布液との接触による塗布液の付着時に気泡がグラビアロール3の外周表面に混入する虞が極めて少ない。
【0069】
また、第1貯留部D1における第1堰41a、及び、第2貯留部D2における第2堰42aにより、オーバーフローする塗布液とともに気泡が第1堰41aや第2堰42aを越えてグラビアロール3から離れる方向に移動して第1貯留部D1や第2貯留部D2に戻ってくることはないので、気泡の滞留しない好適な状態でグラビアロール3の外周表面が第1貯留部D1や第2貯留部D2と接触することになる。
【0070】
さらに、塗布液循環装置7の第1供給ポンプ50による第1貯留部D11に対する塗布液の供給圧は、第2供給ポンプ51による第2貯留部に対する塗布液の供給圧よりも大きな供給圧により第1貯留部に対して塗布液を供給するように構成されている。すなわち、第1供給ポンプ50の供給圧は、第2供給ポンプ51の供給圧より高い。これにより第1貯留部D1との接触による気液交換を接触圧の高い状態で行うことで、十分な気液交換が行うことができ、しかも、第2貯留部D2との接触によるグラビアロール3の外周表面に対する塗布液の充填を接触圧の低い状態で行うことで、グラビアロール3の外周表面に密接する出口ドクターブレード35による充填量の設定を精度よく行うことができる。
【0071】
〔別の実施形態〕
以下、本発明の別実施形態について説明する。
【0072】
(1)上記第1及び第2実施形態では、基材としてロール状に巻き取られた金属シートを例示したが、これに限らず、基材としては、プラスチックフィルムや紙やこれらが積層された積層材料であってもよい。また、基材は、巻き取り状態のシートでなくてもよく、枚葉状態のシートであってもよい。
【0073】
(2)上記第1及び第2実施形態では、塗布液として、流動性を持たせた電極活物質や多孔質絶縁物質を例示したが、塗布液としてはこれに限られるものではない。
【0074】
(3)上記第1及び第2実施形態において、チャンバーヘッド6における出口ドクターブレード35は、グラビアロール3の回転方向で貯留部Dとの接触範囲よりも下手側においてグラビアロール3の外周表面に密接するように設けてもよい。
【0075】
(4)上記第1及び第2実施形態において、チャンバーヘッド6を装着位置において背面が下向きになる横姿勢にてグラビアロール3の下方に位置するように配設してもよいし、或いは、チャンバーヘッド6を装着位置において傾斜姿勢となるように配設してもよい。これらの場合、チャンバーヘッド6は、必ずしも入口ドクターブレード34を備えていなくてもよい。
【0076】
(5)上記第1及び第2実施形態において、位置切換手段が設けられたものを例示したが、これに代えて、位置切換手段が設けられていないものであってもよい。
【0077】
(6)上記第1及び第2実施形態において、グラビアコーター1は、送り出される金属シート2に対して送り出し方向に連続する状態で塗布液を塗布するものを例示したが、これに代えて、塗布液が充填されたグラビアロール3に金属シート2を周期的に圧接させる間欠塗布ユニットを設けて、送り出し方向に一定長さ毎に間隔が空いた間欠状態で塗布液を塗布するものであってもよい。
【0078】
(7)上記第2実施形態において、塗布液供給手段が、第2貯留部に対する塗布液の供給圧よりも大きな供給圧により第1貯留部に対して塗布液を供給するように構成されているものを例示したが、第1貯留部及び第2貯留部に共通の供給チューブから分岐して塗布液を供給するなどして、第1貯留部及び第2貯留部に対して同様の供給圧にて塗布液を供給してもよい。
【0079】
(8)上記第2実施形態において、第2貯留部形成体が第2堰を備えているものを例示したが、これに変えて、第2貯留部形成体が第2堰を備えていないものであってもよい。
【0080】
(9)上記第2実施形態において、仕切り用ブレードの先端高さが第1形成体における堰の上端高さよりも低く設定され、かつ、ドクターブレードの先端高さが第2形成体における堰の上端高さよりも低く設定されているものを例示したが、これに限らず、例えば、仕切り用ブレードの先端高さが第1形成体における堰の上端高さよりも高く設定されたものや、ドクターブレードの先端高さが第2形成体における堰の上端高さよりも高く設定されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
Y1 横軸心
D 貯留部
D1 第1貯留部
D2 第2貯留部
R、R1、R2 排出塗布液流入部
a、a1、a2 オーバーフロー流路
2 基材
3 グラビアロール
4 セル
6 塗布液充填装置
7 塗布液供給装置
11、24 位置切換手段
35 ドクターブレード
40 貯留部形成体
40s 傾斜面
40a、41a、42a 堰
41 第1形成体
42 第2形成体
43 仕切り用ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状のセルが外周表面に多数個形成されて横軸心周りに回転自在に配設されたグラビアロールと、
塗布液供給手段により加圧供給される塗布液を貯留する貯留部が前記グラビアロールの軸心方向に沿って形成され、かつ、この貯留部と前記グラビアロールの外周表面とが接触する状態で配置された塗布液充填装置とが設けられ、
前記貯留部から前記グラビアロールの外周表面に塗布液を移動させ、前記グラビアロールの回転に伴って前記外周表面上の塗布液をシート状の基材に塗布する塗布装置であって、
前記塗布液充填装置が、前記グラビアロールの軸心方向に沿う貯留部形成体と、前記グラビアロールの回転方向で前記貯留部との接触範囲よりも下手側又は前記接触範囲の下手側の端部において前記グラビアロールの外周表面に密接するドクターブレードとを備えて構成され、
前記貯留部形成体に、前記グラビアロール側に前記貯留部を形成しかつ前記グラビアロールとは反対側に排出塗布液が流入する排出塗布液流入部を形成する堰を、前記グラビアロールの軸心方向に沿って設け、
前記塗布液充填装置が、前記貯留部から前記排出塗布液流入部に前記堰を回り込む状態で塗布液を通流させるオーバーフロー流路を備えて構成されている塗布装置。
【請求項2】
前記塗布液充填装置が、前記堰が前記貯留部形成体において上方に突出する状態となる縦姿勢にて配置され、
前記貯留部形成体が、前記塗布液供給手段にて供給された塗布液を、前記貯留部において上昇流動させ、前記排出塗布液流入部において下降流動させるように構成されている請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記貯留部形成体が、前記グラビアロールの回転方向に関して下手側ほど前記外周表面に近づく傾斜面を備えている請求項1又は2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記貯留部が、前記グラビアロールの回転方向で上手側において前記外周表面に接触する第1貯留部と、同下手側において前記外周表面に接触する第2貯留部とが前記外周表面に接触する部分で連通する状態で形成され、
前記貯留部形成体が、前記第1貯留部を形成する第1形成体と、前記第2貯留部を形成する第2形成体とを備えて構成され、かつ、前記第1形成体及び前記第2形成体の夫々に、前記堰が形成され、
前記塗布液供給手段が、前記第1形成体及び前記第2形成体の夫々に対して塗布液を加圧供給するように構成され、
前記グラビアロールの前記外周表面に先端部が密接して前記貯留部を前記第1貯留部と前記第2貯留部とに仕切る仕切り用ブレードが設けられている請求項1又は2記載の塗布装置。
【請求項5】
前記塗布液供給手段が、前記第2貯留部に対する塗布液の供給圧よりも大きな供給圧により前記第1貯留部に対して塗布液を供給するように構成されている請求項4記載の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布液充填装置が、前記堰が前記貯留部形成体において上方に突出する状態となる縦姿勢にて配置され、
前記貯留部形成体が、前記塗布液供給手段にて供給された塗布液を、前記貯留部において上昇流動させ、前記排出塗布液流入部において下降流動させるように構成され、
前記仕切り用ブレードの先端高さが前記第1形成体における前記堰の上端高さよりも低く設定され、かつ、前記ドクターブレードの先端高さが前記第2形成体における前記堰の上端高さよりも低く設定されている請求項4又は5記載の塗布装置。
【請求項7】
前記塗布液充填装置の位置を、前記グラビアロールに装着される装着位置と、前記グラビアロールから離間してグラビアロール装着側部分が開口する離間位置とに切り換える位置切換手段が設けられている請求項1〜6の何れか1項に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−245448(P2011−245448A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123170(P2010−123170)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(510150237)株式会社暁機械製作所 (3)
【Fターム(参考)】