説明

塗布装置

【課題】配管の揺れによる吐出部の揺れを抑制すること。
【解決手段】基板に塗布液を塗布する塗布装置20であり、基板を保持する基板保持部と、基板に対して略平行な主走査方向Xに沿って延びる主走査方向ガイド部42と、主走査方向ガイド部42との間にエア層を介在させた状態で、主走査方向ガイド部42により主走査方向Xに沿って移動可能に支持されたスライダ44とを有する主走査機構と、スライダ44により主走査方向Xに沿って移動可能に支持され、基板に対して塗布液を吐出する吐出部50とを備えている。また、主走査方向Xに沿って吐出部50の移動に追従して移動可能な配管支持部材60が設けられ、配管80は、途中が配管支持部材60により支持された状態で、スライダ44及び吐出部50に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、PDP(Plasma Display Panel)用ガラス基板、有機EL表示パネル用ガラス基板、磁気或は光ディスク用のガラス或はセラミック基板等の各種被処理基板に塗布液を塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の塗布装置として、特許文献1に開示のものがある。
【0003】
特許文献1は、ノズルを移動自在に支持するヘッド移動機構として、走査方向に沿って延びるガイド部とノズルを支持するスライダとの間にガスを噴出することにより、スライダをガイド部に対して非接触状態にて移動可能に支持する構成を開示している。上記スライダに対してはガスチューブを介してガスが供給され、上記ノズルに対しては塗布液チューブを介して塗布液が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−131735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ヘッド移動機構では、スライダはガイド部に対して空気層を介して浮いた状態であるため、スライダ及びスライダに取付けられたノズルはガイド部周りに振動し得る。また、上記ノズル及びスライダには、上記ガスチューブ或は塗布液チューブ等のチューブが接続されているため、スライダ及びノズルが走査方向に沿って往復運動すると、チューブが鞭のようにしなって振動する恐れがある。
【0006】
そして、チューブが振動すると、その振動による外力がスライダ及びノズルに伝わって振動する恐れがある。このようにノズルがガイド部周りに振動してしまうと、基板上における塗布液の軌跡が蛇行してしまう(直進性の乱れ)恐れがある。
【0007】
上記現象は、チューブの本数増加、ノズル移動速度の高速化、基板の大型化に伴うチューブの長尺化等によって、顕著に生じ得る恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、配管の揺れによる吐出部の揺れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る塗布装置は、基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、基板を保持する基板保持部と、前記基板に対して略平行な主走査方向に沿って延びるガイド部と、前記ガイド部との間にエア層を介在させた状態で、前記ガイド部により前記主走査方向に沿って移動可能に支持されたスライダとを有する主走査機構と、前記スライダにより前記主走査方向に沿って移動可能に支持され、前記基板に対して塗布液を吐出する吐出部と、前記主走査方向に沿って前記吐出部の移動に追従して移動可能な配管支持部材と、途中が前記配管支持部材により支持されて、前記スライダ及び前記吐出部の少なくとも一方に接続された配管と、を備える。
【0010】
第2の態様に係る塗布装置は、第1の態様に係る塗布装置であって、前記配管支持部材を前記主走査方向に沿って移動可能に支持する配管支持用ガイド部をさらに備える。
【0011】
第3の態様に係る塗布装置は、第1又は第2の態様に係る塗布装置であって、前記主走査方向に沿って、前記スライダと前記配管支持部材とを同期駆動する主走査駆動機構をさらに備える。
【0012】
第4の態様に係る塗布装置は、第1〜第3のいずれか一つの態様に係る塗布装置であって、前記配管支持部材は、前記ガイド部又は前記配管支持用ガイド部との間にエア層を介在させた状態で、前記主走査方向に沿って移動可能に支持されているものである。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係る塗布装置によると、配管の途中が、前記主走査方向に沿って前記吐出部の移動に追従して移動可能な配管支持部材により支持されているため、配管の振動がスライダ及び吐出部に伝わり難い。このため、配管の揺れによる吐出部の揺れを抑制することができる。
【0014】
第2の態様に係る塗布装置によると、配管支持部材はガイド部とは別の配管支持用ガイド部によって支持されているため、走査方向に沿った方向において、スライダ及び吐出部と、配管支持部材とを略同じ位置で支持できる。これにより、配管の途中を、スライダ及び吐出部になるべく近い位置で支持でき、配管による吐出部の揺れをより抑制することができる。
【0015】
第3の態様によると、前記スライダと前記配管支持部材とを同期駆動するため、配管に引張り力が加わり難い。
【0016】
第4の態様によると、前記配管支持部材は、前記ガイド部又は前記配管支持用ガイド部との間にエア層を介在させた状態で、前記主走査方向に沿って移動可能に支持されているため、配管支持部材をスライダ及び吐出部に追従させて円滑に移動させ易い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る塗布装置を示す概略平面図である。
【図2】同上の塗布装置を示す概略正面図である。
【図3】図2におけるIII−III線概略断面図である。
【図4】配管の揺れ状態を示す説明図である。
【図5】変形例に係る配管支持部材を示す説明図である。
【図6】他の変形例に係る配管支持部材を示す説明図である。
【図7】さらに他の変形例に係る配管支持部材を示す説明図である。
【図8】さらに他の変形例に係る配管支持部材を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態に係る塗布装置について説明する。図1は実施形態に係る塗布装置20を示す概略平面図であり、図2は塗布装置20を示す概略正面図であり、図3は図2におけるIII−III線概略断面図である。なお、説明の便宜上、後述する主走査方向に沿った方向をX方向、当該X方向及び上下方向に直交する方向をY方向、上下方向をZ方向として説明することがある。この塗布装置20は、基板10に対して塗布液を塗布する装置である。基板10としては、方形状の基板、例えば、平面表示装置用のガラス基板等が想定される。また、塗布液としては、基板10に形成すべきパターン等の形成材料、例えば、有機EL表示装置の製造を想定した場合には、有機EL材料及びその溶媒等を含む液等が想定される。
【0019】
この塗布装置20は、基板保持部30と、主走査機構40と、吐出部50と、配管支持部材60と、配管80とを備えている。
【0020】
基板保持部30は、基板10を略水平姿勢で保持可能に構成されている。ここでは、基板保持部30は、一主面を所定高さ位置で上向き略水平姿勢に配設したステージ32を有している。そして、基板10の一主面をステージ32の上向き主面に当接させるように基板10をステージ32上に載置することで、基板10が一定位置及び姿勢で保持可能に構成されている。基板保持部は、その他、基板の周囲を把持することで当該基板を保持する構成であってもよい。
【0021】
また、基板保持部30の下方には、吐出部50に対して基板10をY方向(副走査方向)に沿って相対移動させる基板移動機構34が設けられている。ここでは、基板移動機構34は、上方にステージ32を支持する台部36と、一対のスライド受部37とを有している。スライド受部37は、台部36の下端部に設けられ、Y方向に沿って延びる副走査方向ガイド部39上をスライド移動可能に構成されている。そして、リニアモータ等の基板移動駆動部(図示省略)からの駆動力を受けることで、基板移動機構34が、上記ステージ32及び基板10と共に、Y方向に沿って移動する構成とされている。なお、基板10をY方向に沿って移動させる代りに、主走査機構40及び吐出部50を、基板10に対してY方向に沿って移動させる構成であってもよい。
【0022】
なお、上記ステージ32には、必要に応じて、基板10を加熱する加熱機構が設けられていてもよい。また、上記ステージ32は、基板移動機構34に対して鉛直軸周りに回転駆動可能に構成されていてもよい。
【0023】
主走査機構40は、主走査方向ガイド部42と、スライダ44とを有している。主走査方向ガイド部42は、基板10の上方位置で、基板10に対して略平行な主走査方向(X方向)に沿って延びる長尺状部材に形成されている。スライダ44は、主走査方向ガイド部42を挿通配置可能な内部空間を有する部材であり、主走査方向ガイド部42の外周面との間にエア層を介在させた状態で、当該主走査方向ガイド部42によってX方向に沿って移動可能に支持されている。
【0024】
より具体的には、主走査方向ガイド部42は、略角棒状部材に形成されている。スライダ44の外形状は略直方体状に形成され、スライダ44内には、主走査方向ガイド部42の外周面を、間隔を有して囲繞可能な内部空間44Sが形成されている。また、スライダ44の内周面には、エア吐出部44aが形成されている。そして、外部より後述する配管等を介して供給されるエアがスライダ44に形成されるエア分岐経路を経由して当該各エア吐出部44aより吐出されるようになっている。そして、上記エア吐出部44aよりエアを吐出させることにより、スライダ44は、主走査方向ガイド部42の外周面との間にエア層を介在させた状態で(つまり、主走査方向ガイド部42の外周面に対して浮いた状態で)、X方向に沿って移動可能に支持された状態となる。これにより、スライダ44は、高速高加速移動可能かつ、耐久性に優れた態様で支持されることになる。もっとも、スライダ44は、主走査方向ガイド部42に対してエア層を介して支持されているため、そのエア層分、主走査方向ガイド部42周りで揺れる恐れがある。ここでは、かかる揺れ対策に関する技術を開示している。
【0025】
なお、ここでは、主走査方向ガイド部42の上面に、上方に開口しかつX方向に沿って延びる凹溝43が形成され、スライダ44の上部幅方向(Y方向)中間部に、上記凹溝43に対応する幅のスリット45aが形成されている。そして、このスリット45a部分に、ベルト取付ブラケット45が取付けられ、上記凹溝43内で、スライダ44を駆動するための駆動ベルト74がベルト取付ブラケット45に取付けられている。もっとも、これらの構成は必須ではない。例えば、主走査方向ガイド部は、単純な角棒状或は丸棒状で、スライダ内には当該単純な角棒状或は丸棒状よりも一回り大きな内部空間が形成された構成であってもよい。また、主走査方向ガイド部は、複数の棒状部材を有していてもよい。さらに、主走査方向ガイド部とスライダとの間にエア層が介在している場合には、それらの間に噴出されたエア圧の作用による場合の他、磁力の反発力等他の力の作用による場合を含む。
【0026】
また、ここでは、主走査方向ガイド部42の上方に、カウンタ用ガイド部46及びカウンタ用スライダ48が設けられている。
【0027】
カウンタ用ガイド部46は、X方向に沿って延びる長尺棒状部材に形成されている。カウンタ用スライダ48は、カウンタ用ガイド部46を挿通配置可能な内部空間を有する部材であり、カウンタ用ガイド部46の外周面との間にエア層を介在させた状態で、当該カウンタ用ガイド部46によってX方向に沿って移動可能に支持されている。
【0028】
ここでは、カウンタ用ガイド部46は、略丸棒状に形成され、上記主走査方向ガイド部42の上方に略平行状態で2本設けられている。また、カウンタ用スライダ48内には、各カウンタ用ガイド部46の外周面を、間隔を有して囲繞可能な丸穴状の内部空間48Sが形成されている。このカウンタ用スライダ48の内周面には、エア吐出部48aが形成されている。このカウンタ用スライダ48には後述するエア供給源86からのエア配管が接続されている。そして、外部より当該配管等を介して供給されるエアがカウンタ用スライダ48に形成されるエア分岐経路を経由して、周方向に亘って形成されたエア吐出部48aより吐出されるようになっている。そして、上記エア吐出部48aよりエアを吐出させることにより、カウンタ用スライダ48は、カウンタ用ガイド部46の外周面との間にエア層を介在させた状態で(つまり、カウンタ用ガイド部46の外周面に対して浮いた状態で)、X方向に沿って移動可能に支持された状態となる。
【0029】
なお、ここで、カウンタ用スライダがカウンタ用ガイド部に対して移動可能に支持される構成は、上記主走査機構40に関して述べたのと同様、種々構成を採用し得る。
【0030】
もっとも、カウンタ用スライダは、上記のようにカウンタ用ガイド部に対してエア層を介在させた状態で移動自在に支持されている必要はない。例えば、カウンタ用スライダは、長尺状のカウンタ用ガイド部に対して、他の低摩擦部材、転動体等を介して接触した状態で、移動自在に支持される構成であってもよい。
【0031】
吐出部50は、上記スライダ44によってX方向に沿って移動可能に支持されると共に、基板10に対して塗布液を吐出可能に構成されている。ここでは、吐出部50は、ノズル支持部52と少なくとも一つのノズル54とを有している。ここでは、ノズル54は複数、より具体的には、3つ設けられている。
【0032】
ノズル支持部52は、スライダ44の一側面に取付けられる基端部52aと、基端部52aの下端部より外方に向けて延出するノズル取付板部52bとを有している。そして、複数のノズル54が、X方向及びY方向に位置をずらしつつ、ノズル取付板部52bに取付固定されている。各ノズル54は、それぞれ塗布液を吐出可能な吐出口を有しており、当該吐出口をノズル取付板部52bの下向きにした姿勢で、ノズル取付板部52bに固定されている。そして、上記スライダ44をX方向に移動させつつ、各ノズル54から塗布液を吐出することで、当該塗布液がステージ32上に載置された基板10に塗布されるようになっている。
【0033】
なお、上記スライダ44のうち吐出部50に対して反対側の側部に、ノズルカウンタ44Cが設けられている。
【0034】
配管支持部材60は、X方向に沿って吐出部50の移動に追従して移動可能に構成されている。ここでは、配管支持部材60は、上記主走査機構40とは別に設けられた配管支持用ガイド部62によって移動可能に支持されている。
【0035】
すなわち、配管支持用ガイド部62は、基板10の上方位置で、前記X方向に沿って延びる長尺状部材に形成されている。また、配管支持部材60は、配管支持用ガイド部62を挿通配置可能な内部空間を有する部材であり、当該配管支持用ガイド部62の外周面との間にエア層を介在させた状態で、当該配管支持用ガイド部62によってX方向に沿って移動可能に支持されている。
【0036】
より具体的には、配管支持用ガイド部62は、略角棒状の部材に形成されている。配管支持部材60の外形状は略直方体状に形成され、配管支持部材60内には、配管支持用ガイド部62の外周面を、間隔を有して囲繞可能な内部空間64Sが形成されている。また、配管支持部材60の内周面には、エア吐出部60aが形成されている。そして、外部より後述する配管等を介して供給されるエアが、配管支持部材60に形成されるエア分岐路等を経由して各エア吐出部60aより吐出されるようになっている。そして、上記エア吐出部60aよりエアを吐出させることにより、配管支持部材60が、配管支持用ガイド部62の外周面との間にエア層を介在させた状態で(つまり、配管支持用ガイド部62の外周面に対して浮いた状態で)、X方向に沿って移動可能に支持された状態となる。
【0037】
なお、ここで、配管支持部材60が配管支持用ガイド部62に対して移動可能に支持される構成は、上記主走査機構40に関して述べたのと同様、種々構成を採用し得る。
【0038】
もっとも、この配管支持部材は、上記のように配管支持用ガイド部に対してエア層を介在させた状態で移動自在に支持されている必要はない。例えば、配管支持部材は、長尺状の配管支持用ガイド部に対して、他の低摩擦部材、転動体等を介して接触した状態で、移動自在に支持される構成であってもよい。
【0039】
配管80は、上記スライダ44及び吐出部50の少なくとも一方に接続されている。ここでは、配管80は、エア配管80aと、少なくとも一つ(ここでは複数)の塗布液配管80bとを含んでいる。各配管80a、80bは、エア又は塗布液の送り方向上流側でエア供給源86或は塗布液供給源88に接続されると共に、本塗布装置20の上方で吊すように支持されている。以下の説明において、両配管を区別する場合には、エア配管80a或は塗布液配管80bといい、総称する場合には配管80という場合がある。
【0040】
エア配管80aは、エア供給源86からのエアを導く、可撓性を有する管によって構成されており、ここでは、2つのエア配管80aを有している。2つのエア配管80aの一端部はそれぞれエア供給源86に接続されている。一方のエア配管80aの他端部は配管支持部材60にエア供給可能に接続され、他方のエア配管80aの他端部はスライダ44にエア供給可能に接続されている。他方のエア配管80aの他端部は、スライダ44に直接的に固定されていてもよいし、吐出部50への固定箇所を経由してスライダ44に接続されていてもよい。
【0041】
塗布液配管80bは、塗布液供給源88からの塗布液を導く、可撓性を有する管によって構成されており、ノズル54と同数設けられている。各塗布液配管80bの一端部はそれぞれ塗布液供給源88に接続されており、他端部はそれぞれノズル54に塗布液を供給可能に接続されている。塗布液配管80bの他端部は、吐出部50に直接的に固定されていてもよいし、スライダ44或はノズル支持部52への固定箇所を経由してノズル54に接続されていてもよい。
【0042】
これらのエア配管80a及び塗布液配管80bは、中間部分で結束されていることが好ましく、結束形態としては、例えば、エア配管80aを中心として複数の塗布液配管80bで囲むような形態を採用することができる。
【0043】
また、スライダ44に接続されたエア配管80a及び塗布液配管80bの途中部分は、配管固定部61を介して配管支持部材60に支持固定されている。配管固定部61としては、挿通孔又は凹部内にエア配管80a及び塗布液配管80bを挿通して固定する構成、エア配管80a及び塗布液配管80bを配管支持部材60に結束固定する構成、エア配管80a及び塗布液配管80bを挟んで配管支持部材60に固定する構成等を採用することができる。
【0044】
スライダ44に接続されたエア配管80a及び塗布液配管80bのうち配管固定部61に固定される途中部分は、エア供給源86又は塗布液供給源88に接続された端部と、スライダ44又は吐出部50に固定された端部との間であればよい。もっとも、当該固定される途中部分は、比較的スライダ44又は吐出部50に固定された端部に近い部分であることが好ましい。
【0045】
また、この塗布装置20は、X方向に沿って、スライダ44と配管支持部材60とを同期駆動する主走査駆動機構70を備えている。ここで、スライダ44と配管支持部材60とを同期駆動するとは、スライダ44と配管支持部材60とを、それらの間を通る配管80に対して大きな引張り力が作用するのを抑制し得る範囲内で、略同速度及び略同移動範囲で移動駆動することをいう。
【0046】
ここでは、主走査駆動機構70は、スライダ44を駆動するスライダ駆動機構72と、配管支持部材60を駆動する配管支持部材駆動機構76とを有している。
【0047】
スライダ駆動機構72は、主走査方向ガイド部42の両端部に設けられた一対のプーリ体73、73と、一対のプーリ体73、73に巻掛けられた駆動ベルト74と、一方のプーリ体73を正逆両方向に回転駆動可能なモータ75とを有している。一対のプーリ体73、73間を走行する2経路の駆動ベルト74のうち一方側(下側)には、上記スライダ44のベルト取付ブラケット45が連結固定されている。また、一対のプーリ体73、73間を走行する2経路の駆動ベルト74のうち他方側(上側)には、上記カウンタ用スライダ48が連結固定されている。なお、カウンタ用スライダ48は、スライダ44の往復移動範囲の中央位置(通常は、一対のプーリ体73、73の中央位置)を挟んでスライダ44と略対称位置に配設されるように、駆動ベルト74に連結固定されている。そして、回転方向及び回転速度、回転量等を制御しつつモータ75を回転駆動することで、スライダ44及び吐出部50がX方向に沿って往復移動駆動される。また、この際、カウンタ用スライダ48は、スライダ44に対して、一対のプーリ体73、73の中央位置を挟んで対称位置を保ちつつ、X方向に沿って往復移動するようになっている。
【0048】
配管支持部材駆動機構76は、配管支持用ガイド部62の両端部に設けられた一対のプーリ体77、77と、一対のプーリ体77、77に巻掛けられた駆動ベルト78と、一方のプーリ77を正逆両方向に回転駆動可能なモータ79とを有している。一対のプーリ体77、77間を走行する2経路の駆動ベルト78のうち一方側(下側)には、上記配管支持部材60が連結固定されている。そして、上記スライダ44と配管支持部材60とを同期駆動するように、回転方向及び回転速度、回転量等を制御しつつモータ79を回転駆動することで、配管支持部材60がX方向に沿って往復移動駆動される。もっとも、上記したように、スライダ44と配管支持部材60との間を通る配管80に対して大きな引張り力が作用するのを抑制し得る範囲内では、配管支持部材60とスライダ44とがX方向に沿って多少ずれてもよい。
【0049】
なお、ここでは、スライダ44と配管支持部材60とを別々のモータ75、79によって駆動する例で説明したが、共通するモータからの回転駆動力を歯車或はプーリ及びベルト等を用いた伝達機構によって2つに分けて伝達することによって駆動するようにしてもよい。また、スライダ44と配管支持部材60とを共通する駆動ベルトに連結することによって同期駆動するようにしてもよい。また、スライダ44或は配管支持部材60を駆動する機構、特に、配管支持部材60を駆動する機構は、上記例に限られず、その他、リニアモータ等の各種リニアアクチュエータを用いてもよい。
【0050】
また、この塗布装置20は、本装置全体の動作制御を司る制御部90を備えている。制御部90は、CPU、ROMおよびRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータによって構成されており、予め格納されたソフトウェアプログラムに従って塗布装置20の動作制御を行う。ここでは、制御部90は、エア供給源86からエアを供給すると共に、塗布液供給源88からの塗布液供給を開始して各ノズル54から塗布液を吐出させた状態で、スライダ44と配管支持部材60とを同期駆動するように、各モータ75、79を駆動制御する処理を行うように構成されている。
【0051】
このように構成された塗布装置20では、スライダ44及び吐出部50をX方向に沿って往復移動させると、配管支持部材60もそれらスライダ44及び吐出部50に追従して往復移動する。すると、図4に示すように、その移動によって、配管80がX方向、Y方向において鞭のようにしなって振動する恐れがある。しかしながら、配管80の途中が配管支持部材60によって支持されているため、配管80のうち配管支持部材60よりもエア供給源86側或は塗布液供給源88側の部分の振動は、配管支持部材60によって受止められる。この際、配管支持部材60自体は、塗布液を吐出、塗布しているわけではないため、配管80の振動、しなり等によって配管支持用ガイド部62周りに振動しても特に問題はない。このように、配管80の振動、しなり等による外力が、スライダ44或は吐出部50に伝わり難くなる。このため、ノズル54の揺れが抑制され、基板10上に塗布されたと塗布液の蛇行を抑制することができる。
【0052】
また、配管支持部材60は、主走査方向ガイド部42に対して略平行姿勢で隣接配置された配管支持用ガイド部62によって支持されているため、X方向に沿った方向において、スライダ44及び吐出部50と、配管支持部材60とを略同じ位置で移動するように支持することができる。これにより、配管80の途中を、スライダ44及び吐出部50になるべく近い位置で支持でき、配管80の振動等によるノズル54の揺れをより抑制できる。
【0053】
また、スライダ44及び吐出部50と配管支持部材60とを同期駆動しているため、それらの間で配管80に引張り力が加わり難く、それらの間で配管80が可及的に一定の配設形態に保持され易い。このため、スライダ44及び吐出部50と配管支持部材60との間での配管80の揺れを抑制し、もって、ノズル54の揺れをより抑制できる。
【0054】
また、配管支持部材60は、配管支持用ガイド部62との間にエア層を介在させた状態で、X方向に沿って移動可能に支持されているため、配管支持用ガイド部62を、スライダ44及び吐出部50に追従させて円滑に移動させ易い。
【0055】
<変形例>
以下、各種変形例について説明する。
【0056】
まず、上記実施形態において、上記配管支持部材60の走行位置は上記例に限られない。例えば、配管支持部材60は、主走査方向ガイド部42の上方で往復走行する構成であってもよいし、或は、ノズル54に対して+Y方向或は−Y方向に向けて離れた外側方位置で往復走行する構成であってもよい。
【0057】
また、上記実施形態において、配管支持部材を駆動する配管支持部材駆動機構を省略し、スライダの移動によって配管支持部材を移動させるようにしてもよく、そのような変形例について下記に説明する。
【0058】
図5に示す変形例では、スライダ44に対応するスライダ144と、配管支持部材60に対応する配管支持部材160との間に、移動力伝達部材180が設けられている。移動力伝達部材180は、スライダ144の側部に突設された中間伝達片182と、配管支持部材160側に突設された一対の両側伝達片184とを有している。一対の両側伝達片184は、X方向において中間伝達片182を挟込み可能に突設されている。一対の両側伝達片184間の間隔は、中間伝達片182のX方向厚みよりも大きい(好ましくは、配管支持部材160の揺れがスライダ44に伝達されない程度に僅かに大きく)ことが好ましい、一対の両側伝達片184は、中間伝達片182を非接触状態で挟んでいることが好ましい。
【0059】
そして、スライダ144がX方向に沿って移動駆動されると、中間伝達片182が一対の両側伝達片184のいずれか一方の内面に当接し、スライダ144の移動力が中間伝達片182からいずれか一方の両側伝達片184を介して配管支持部材160に伝達される。これにより、配管支持部材160がスライダ144に追従してX方向に沿って往復移動する構成とされている。また、一対の両側伝達片184間の間隔は、中間伝達片182のX方向厚みよりも大きいため、両側伝達片184と中間伝達片182との接触による摩擦力は小さい。このため、スライダ144及び配管支持部材160の移動中において、配管80の振動によって配管支持部材160が揺れたとしても、その揺れはスライダ144には伝達され難い。このため、上記実施形態と同様に、スライダ144及び吐出部50の揺れを有効に抑制することができる。
【0060】
また、図6に示す変形例では、スライダ44に対応するスライダ244と、配管支持部材60に対応する配管支持部材260との間に、移動力伝達リンク部材280が設けられている。移動力伝達リンク部材280は、スライダ244と配管支持部材260との間に配設される長尺棒状部材であり、その両端部がスライダ244及び配管支持部材260に対して揺動可能な状態で連結支持されている。ここでは、移動力伝達リンク部材280の両端部は、支軸部281を介して回転可能な状態でスライダ244及び配管支持部材260に連結されている。
【0061】
そして、スライダ244がX方向に沿って移動駆動されると、その移動力が移動力伝達リンク部材280を介して配管支持部材260に伝達される。これにより、配管支持部材260がスライダ244に追従してX方向に沿って往復移動する構成とされている。また、移動力伝達リンク部材280の両端部は、スライダ244及び配管支持部材260に対して揺動可能に連結されているため、スライダ244及び配管支持部材260の移動中において、配管80の振動によって配管支持部材260が揺れたとしても、その揺れは前記揺動可能な部分で吸収され、スライダ244には伝達され難い。このため、上記実施形態と同様に、スライダ244及び吐出部50の揺れを有効に抑制することができる。
【0062】
なお、移動力伝達リンク部材の構成は上記に限られない。移動力伝達リンク部材は、上記のように軸部周りに回転可能な部分により揺れを吸収する構成の他、バネ、ゴム等の弾性部材等によって揺れを吸収する構成であってもよい。また、その揺れ吸収部分は、移動力伝達リンク部材の端部或は中間部、或は全体等、少なくとも一部に設けられていればよい。
【0063】
また、図7に示す変形例では、配管支持部材を駆動する配管支持部材駆動機構と配管支持用ガイド部を省略している。
【0064】
すなわち、配管支持部材60に対応する配管支持部材360は、主走査方向ガイド部42により移動可能に支持されている。配管支持部材360については、上記実施形態と同様に、主走査方向ガイド部42に対してエア層を介在させた状態で移動可能にする構成を採用することができる。
【0065】
また、配管支持部材360は、X方向において間隔を有してスライダ44と隣設して配設されている。これらの配管支持部材360と上記スライダ44に対応するスライダ344との間には、介在伝達部材380が設けられている。介在伝達部材380は、配管支持部材360とスライダ344とを連結しつつ揺れを吸収する部材であり、コイルバネ等のバネ、その他の弾性部材等を用いることができる。ここでは、介在伝達部材380としてコイルバネを用いている。
【0066】
そして、スライダ344がX方向に沿って移動駆動されると、その移動力が介在伝達部材380を介して配管支持部材360に伝達される。ここでは、スライダ344を(+X)方向に移動させると、介在伝達部材380は伸張しつつ配管支持部材360を同(+X)方向に引張るように移動させる。また、スライダ344を(−X)方向に移動させると、介在伝達部材380は弾性圧縮しつつ配管支持部材360を同(−X)方向に押すように移動させる。これにより、配管支持部材360がスライダ344に追従してX方向に沿って往復移動する構成とされている。また、スライダ344及び配管支持部材360の移動中において、配管80の振動によって配管支持部材360が揺れたとしても、その揺れは介在伝達部材380によって吸収され、スライダ344には伝達され難い。このため、上記実施形態と同様に、スライダ344及び吐出部50の揺れを有効に抑制することができる。なお、介在伝達部材380は、少なくとも一部に揺れを吸収する部分を有していればよい。
【0067】
さらに、図8に示すように、駆動ベルト74に対応する駆動ベルト474のうち下側を走行する部分に、スライダ44に対応するスライダ444と配管支持部材60に対応する配管支持部材460とがそれらの間に間隔をあけた状態で連結される構成であってもよい。この場合、駆動ベルト474のうちスライダ444と配管支持部材466との間の部分が介在伝達部材480を兼ねる構成となる。
【0068】
これらの変形例においては、スライダを駆動するスライダ駆動機構と、その駆動力をスライダから配管支持部材に伝達する各種伝達部材(移動力伝達部材180、移動力伝達リンク部材280、介在伝達部材380)とが、スライダ及び吐出部と配管支持部材とを同期駆動する機構を構成している。この場合、スライダから配管支持部材に駆動力を伝達する各種伝達部材は、上記各変形例のように、主として移動方向(X方向)の駆動力を伝達し、移動方向(X方向)周りの配管支持部材の揺れをスライダになるべく伝達しないような構成とされていることが好ましい。
【0069】
なお、図7に示す変形例において、配管支持部材360が、スライダ344を駆動する駆動機構によって直接的に駆動されていてもよく、また、これとは別の駆動機構によって駆動されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 基板
20 塗布装置
30 基板保持部
40 主走査機構
42 主走査方向ガイド部
44 スライダ
50 吐出部
54 ノズル
60、160 配管支持部材
61 配管固定部
62 配管支持用ガイド部
70 主走査駆動機構
72 スライダ駆動機構
76 配管支持部材駆動機構
80 配管
80a エア配管
80a エア配管
X 主走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板に対して略平行な主走査方向に沿って延びるガイド部と、前記ガイド部との間にエア層を介在させた状態で、前記ガイド部により前記主走査方向に沿って移動可能に支持されたスライダとを有する主走査機構と、
前記スライダにより前記主走査方向に沿って移動可能に支持され、前記基板に対して塗布液を吐出する吐出部と、
前記主走査方向に沿って前記吐出部の移動に追従して移動可能な配管支持部材と、
途中が前記配管支持部材により支持されて、前記スライダ及び前記吐出部の少なくとも一方に接続された配管と、
を備える塗布装置。
【請求項2】
請求項1記載の塗布装置であって、
前記配管支持部材を前記主走査方向に沿って移動可能に支持する配管支持用ガイド部をさらに備える塗布装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の塗布装置であって、
前記主走査方向に沿って、前記スライダと前記配管支持部材とを同期駆動する主走査駆動機構をさらに備える塗布装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の塗布装置であって、
前記配管支持部材は、前記ガイド部又は前記配管支持用ガイド部との間にエア層を介在させた状態で、前記主走査方向に沿って移動可能に支持されている、塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−72974(P2011−72974A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230345(P2009−230345)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】