説明

塗布装置

【目的】カップに付着した塗布液を、少量の洗浄液で均一にかつ短時間で効率よく洗浄除去でき、しかも装置の構造を簡素化する。
【構成】洗浄液供給ノズル40から導入口33を通じて洗浄治具30内に洗浄液Lを供給すると共に、スピンチャック20により洗浄治具30を回転する。この回転による遠心力により洗浄液Lは貯留部35に集まり、貯留部35に形成された吐出孔36より外カップ23及び内カップ24に向けて噴射する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、半導体ウエハ等の被塗布体を回転して塗布液を塗布する塗布装置に係り、特に回転により飛散される塗布液が付着する容器を洗浄することができる塗布装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体ウエハ等の被塗布体を回転して塗布液を塗布する塗布装置として、図7に示すようなレジスト回転塗布装置が試みられている。この塗布装置は、半導体ウエハ60を水平に保持して高速回転する回転保持手段であるスピンチャック61と、半導体ウエハ60上に塗布液としてレジスト液を滴下するレジスト供給ノズル62と、スピンチャック61上の半導体ウエハ60を包囲するように設けられた外カップ63及び内カップ64とを有している。
【0003】レジスト供給ノズル62から半導体ウエハ60上に滴下されたレジスト液は、スピンチャック61の回転により、半導体ウエハ60上に均一に塗布され、余分なレジスト液は半導体ウエハ60の周辺方向に飛散されて外カップ63及び内カップ64の内壁面に付着する。この外カップ63、内カップ64に付着したレジスト液層を放置しておくと、次第にレジストが積層し乾燥すると、衝撃などによってカップ63,64から剥離して、半導体ウエハ60を汚染してしまう。このため、カップ63,64を定期的に取り外して、洗浄除去することが行われている。しかし、この作業は非常に手間と時間がかかる。
【0004】そこで、この塗布装置には、カップ63,64に付着したレジストを自動的に除去する洗浄機構が設けられている。即ち、図7及び図8に示すように、カップ63,64には、レジストを溶解する洗浄液Lを導入する導入路65と、導入路65から導入された洗浄液Lをカップ63,64の全周に分配供給するための環状の供給路66と、供給路66の洗浄液Lをレジスト付着面へと流し出すための多数の小孔67とが形成されると共に、導入路65には、継手68を介して洗浄液導入用のチューブ69が接続されている。そして、供給路66に供給された洗浄液Lは各小孔67を通って流れ出し、外カップ63の内周面、内カップ64の外周面を伝わって流れ落ちるようになっている。
【0005】上記の他に、例えば、特開昭58−184725号,特開昭59−211226号,特開昭62−73629号,特開昭62−73630号,特公昭63−41630号,実公平1−25665号公報にて開示された技術がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の塗布装置における洗浄機構では、外カップ63及び内カップ64の構造が複雑であり、高価となるばかりでなく、加工、取付上も難しい。また、何百本もの小孔67から洗浄液Lを流しているが、洗浄液Lは一度流れた道筋を流れ易いことから、カップ63,64の全周面に亘って均一に洗浄液Lが拡がって流れず、洗浄むらができてしまうという問題があった。更に、洗浄液Lを少しずつ流してレジストを溶解除去する方式なので、洗浄時間が長く、洗浄液Lの消費量も多い。また、継手68等から洗浄液Lがリークするなどのトラブルが発生する虞れもあった。上記の他、洗浄液の飛散方向をコントロールすることが難しく、カップを効果的に洗浄できないなどの問題もあった。
【0007】この発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであり、少量の洗浄液で均一にかつ短時間で効率よく塗布液の洗浄を行うことができる構造簡単な塗布装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、被塗布体を保持して回転する回転保持手段と、この回転保持手段を取り囲むように設けられ、上記被塗布体に供給された塗布液の飛散を防止するための容器とを有する塗布装置であって、上記回転保持手段に設けられ、上記容器に付着した塗布液を洗浄するための洗浄液が供給される洗浄用治具を備え、この洗浄用治具は、上記洗浄液を貯留し得る貯留部を有すると共に、上記回転保持手段の回転により上記貯留部の洗浄液を上記容器に向って吐出する吐出孔を有するものである。
【0009】この発明において、上記被塗布体としては、半導体ウエハ、プリント基板、LCD基板等があり、レジスト液塗布処理、現像液塗布処理、エッチング液塗布処理、磁性液塗布処理などを行う装置に適用される。
【0010】また、上記洗浄用治具は、塗布液を溶解する溶剤などの洗浄液に冒されずかつ回転支持手段により高速回転できるように比重が軽い材質のもの、例えばデルリン、テフロン(共に商品名)あるいは塩化ビニルなどを用いるのがよい。また、洗浄用治具の例えば吐出孔は、回転支持手段により回転走査する場合には、例えば上、中、下に各々1つ以上設ければよい。
【0011】
【作用】回転保持手段に載置された洗浄用治具には洗浄液供給ノズルなどから予めあるいは回転保持手段による回転中に洗浄液が適宜供給される。洗浄用治具に供給された洗浄液は、回転保持手段の回転に伴う遠心力により、洗浄用治具の周縁部側の貯留部に集められ、更に回転保持手段の回転による回転力及び遠心力を受けて、洗浄液は吐出孔から高速で吐出飛散しカップ内面に衝突する。洗浄液は貯留部に一旦貯えられ、大きな運動量を持った洗浄液が例えば連続的に吐出孔から吐出されるので、カップ内面に付着した塗布液は急速に洗浄除去される。また、吐出孔がカップに臨ませて上下に複数形成されているので、カップ内面に広く洗浄液が散布される。
【0012】
【実施例】以下に、この発明の実施例を図面に基いて詳細に説明する。この実施例はレジスト膜形成装置に適用したものである。
【0013】図1に示すように、このレジスト膜形成装置は、被塗布体例えば半導体ウエハ60(以下、単にウエハという)に種々の処理を施す処理機構が配設された処理機構ユニット10と、処理機構ユニット10にウエハ60を自動的に搬入・搬出するための搬入・搬出機構1とから主に構成されている。
【0014】搬入・搬出機構1は、処理前のウエハ60を収納するウエハキャリア2と、処理後のウエハ60を収納するウエハキャリア3と、ウエハ60を吸着保持するアーム4と、このアーム4をX,Y,Z及びθ方向に移動させる移動機構5と、ウエハ60がアライメントされかつ処理機構ユニット10との間でウエハ60の受け渡しがなされるアライメントステージ6とを備えている。
【0015】処理機構ユニット10には、アライメントステージ6よりX方向に形成された搬送路11に沿って移動自在に搬送機構12が設けられている。搬送機構12にはY,Z及びθ方向に移動自在にメインアーム13が設けられている。搬送路11の一方の側には、ウエハ60とレジスト液膜との密着性を向上させるためのアドヒージョン処理を行うアドヒージョン処理機構14と、ウエハ60に塗布されたレジスト中に残存する溶剤を加熱蒸発させるためのプリベーク機構15と、加熱処理されたウエハ60を冷却する冷却機構16とが配設されている。また、搬送路11の他方の側には、ウエハ60の表面にレジストを塗布する塗布機構17と、露光工程時の光乱反射を防止するために、ウエハ60のレジスト上にCEL膜などを塗布形成する表面被覆層塗布機構18とが配設されている。
【0016】まず、処理前のウエハ60は、搬入・搬出機構1のアーム4によってウエハキャリア2から搬出されてアライメントステージ6上に載置される。次いで、アライメントステージ6上のウエハ60は、搬送機構12のメインアーム13に保持されて、各処理機構14〜18へと搬送される。そして、処理後のウエハ60はメインアーム13によってアライメントステージ6に戻され、更にアーム4により搬送されてウエハキャリア3に収納されることになる。
【0017】次に、塗布機構(あるいは塗布装置)17について説明する。塗布機構17はスピンコーターで、図2に示すように、ウエハ60(図2には図示なし)を保持例えば吸着保持して回転する回転保持手段であるスピンチャック20を有し、スピンチャック20には、これを回転駆動するスピンモータ21が連結されており、スピンモータ21によりスピンチャック20を所望の回転数で回転制御できるようになっている。更に、スピンチャック20の下部外周には底板22が設けられ、底板22上には外カップ23と内カップ24とが、スピンチャック20上に載置されるウエハ60を包囲するように設けられている。外カップ23と内カップ24とはスピンチャック20の半径方向外方に向けて下降傾斜して形成され、レジスト液を底板22へと導くようになっている。底板22は緩やかに傾斜して設けられており、底板22の最下位にはレジスト液等を排出する排液管25が接続されている。また、底板22には排液の侵入を防止するための隔壁26が環状に立設されており、隔壁26の内側の底板22には、カップ内の排気を行うための排気管27が接続されている。
【0018】レジスト液塗布処理は、スピンチャック20上にウエハ60を載置し、ウエハ60上面にレジスト供給ノズル(図示せず)よりレジスト液を滴下し、スピンチャック20を回転して行う。このレジスト液塗布処理を何回も繰り返すと、飛散したレジストが外カップ23及び内カップ24に積層して付着する。そこで、この実施例では、自動化された洗浄機構を備えている。従って、洗浄工程を自動的にプログラムすることが可能である。即ち、洗浄治具30を用いて、このカップ壁面上に付着したレジスト液の洗浄除去を行うようにしている。
【0019】洗浄治具30は、例えば図2に示すように、ウエハ60とほぼ同形の円盤状の円板状体であり、洗浄治具30内は中空構造となっている。具体的には、図3に示すように、洗浄液を収容し得る受け部31と、受け部31の上部開口を覆って取り付けられる蓋部32とからなる。材料は耐溶剤性があり、比重が軽いデルリン(商品名)などを用いればよい。形状はウエハ60と必ずしも同一でなくても方形状でもよく、洗浄効果により選択可能である。又、材料もデルリンの他のもの例えば金属のAl板なども最適である。カップ洗浄時にはスピンチャック20の中心上方には、図2あるいは図4に示すように、洗浄液L(例えばシンナー)を供給する洗浄液供給手段例えば洗浄液供給ノズル40が設置されるが、洗浄液供給ノズル40から流下する洗浄液Lを洗浄治具30内に導入するために、蓋部32の中央には導入口33が形成されている。また、洗浄液Lが当る受け部31の中心には、洗浄液Lを洗浄治具30内全周に均等に分配供給すると共に洗浄液Lのはねを防止するために、円錐状の突起34が形成されている。更に、洗浄治具30内の外周部側には遠心力により集められる洗浄液Lを貯えることができる貯留部35が形成されている。また、貯留部35に集められる洗浄液Lをカップ23,24に向けて供給例えば吐出するために、吐出孔36が例えば複数形成されている。これら吐出孔は、受け部31の周壁に水平に形成された吐出孔36b及びその上方に水平より所定角度、半径方向外方に上向きにして形成された吐出孔36aと、受け部31の底壁に水平より所定角度、半径方向外方に下向きにして形成された吐出孔36c及び垂直方向に形成された吐出孔36dとを有する。これら吐出孔36a〜36dは、受け部31の外周に沿って等間隔に3箇所に設けられている。
【0020】カップ洗浄は、レジスト塗布処理が所定回数、実行された後、あるいはロット初めなどになされる。このときには、アライメントステージ6や冷却機構16などの上方に設けた待機ステーション(図示せず)に待機させておいた洗浄治具30をメインアーム13で保持してスピンチャック20上に載置する。また、レジスト液塗布処理のときに使用していたレジスト供給ノズル(図示せず)に代えて洗浄液供給ノズル40をセットする。そして、ノズル40から洗浄液Lを流下し、導入口33より洗浄治具30内に供給する。導入口33は洗浄治具30の回転中心が望ましい。なお、スピンチャック20の回転中にも供給する。洗浄治具30が停止のとき、あるいはスピンチャック20の駆動により低速回転されているときには、貯留部35の洗浄液は主に吐出孔36dから流下し、内カップ24の洗浄がなされる。更に、洗浄治具30が中速・高速で回転されるようになると、遠心力により貯留部35に集められてきた洗浄液Lは、主に吐出孔36a,36b,36cから高速で吐出されるようになる。吐出孔36a,36bから吐出された洗浄液Lは外カップ23内周面に衝突して、レジスト液の洗浄がなされる。また、吐出孔36cから吐出された洗浄液Lは内カップ24の外周上面に当って、内カップ24の洗浄が行われる。
【0021】このように、洗浄治具30の回転による遠心力によって外周部に移動する洗浄液Lを貯留部35に一旦貯留し、この貯留された洗浄液Lを吐出孔36から吐出するようにしているので、ある程度、まとまった量の洗浄液Lを高速で連続的に噴射することができ、有効な洗浄が行える。また、水平面より所定の角度(仰角、伏角)をなす吐出孔36を複数形成しているので、外カップ23、内カップ24の広範囲にわたって洗浄液Lを散布できる。
【0022】なお、上記実施例では、吐出孔36a〜36dを、図3で示すように、3箇所設けたが、図5に示すように、1箇所のみとしてもよい。これは、洗浄治具30はスピンチャック20により回転走査されるからであり、吐出孔(吐出孔群)36の数を減らすと、1つの吐出孔36からの吐出流量を増加できる。この場合、1箇所の吐出孔36へと洗浄液Lをガイドするために、図5R>5のような仕切壁37を設けるのがよい。仕切壁37を吐出孔36とは反対側にも延出させたのは、回転時のバランスをも考慮したためである。このように、吐出孔36a〜36dは各1つずつでよいが、これらのうち、いずれかを省略すると、カップ23,24に噴射供給される洗浄液Lの範囲が減少することとなる。
【0023】また、上記実施例では、吐出孔36a〜36dを半径方向に沿って、即ち放射状に形成したが、半径方向より傾斜して形成するようにしてもよい。このようにすると、スピンチャック20の回転方向に対する吐出孔の半径方向に対する傾斜方向及び角度並びにスピンチャック20の回転速度によって、吐出孔36から洗浄治具30のほぼ接線方向に吐出される洗浄液Lの飛び出し方向を、半径方向側へと変更することも可能となる。
【0024】また、上記実施例では、吐出孔36を洗浄治具30の壁に穿設して形成したが、貯留部35よりノズルを延出して吐出孔としてもよい。また、洗浄治具は円盤状でなく、楕円形状や多角形状としてもよく、更にスピンチャック20上に保持可能に載置できるならば盤状でなくてもよい。更に又、洗浄治具の回転速度は、洗浄液の飛散状態から選択し、例えば300〜3000RPMが望ましい。
【0025】なお、上記説明の洗浄治具のもう一つの他の実施例として、図6に示すようなものに構成してもよい。この洗浄治具130は、周縁部下面側に、洗浄液Lの貯留部135、洗浄液Lの吐出孔136を設けたものである。そして、この洗浄治具130をスピンチャック20に吸着保持し、スピンチャック20の近傍に配置した洗浄液供給ノズル140から洗浄液Lを吐出させ貯留部135内に洗浄液を導入するものである。
【0026】なお、洗浄の動作等については、先の実施例と同等のため、ここではその説明を省略する。
【0027】
【発明の効果】以上の説明により明らかなように、回転保持手段に載置されて回転保持手段よりカップに向けて洗浄液を吐出する洗浄治具が設けられているので、従来のカップ頂部より洗浄液を流す方式のものに比較して、構造を簡素化できる。また、被塗布体と同様に回転保持手段に洗浄治具を載置すればよいので、特別な取扱いも不要であり、容易に洗浄の自動化ができる。更に、一旦、貯留部に洗浄液を貯えているので、吐出孔からカップに向けて大きな運動量をもった洗浄液を連続的に吐出でき、カップ面に付着した塗布液を効果的に短時間で洗浄除去でき、洗浄液の使用量も低減できる。また、吐出孔をカップに臨ませて上下に複数形成しているので、洗浄液がカップ面により広く均一に散布供給されるので、洗浄むらも大幅に減少できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明をレジスト膜形成装置に適用した一実施例を示す概略平面図である。
【図2】この発明の塗布装置を概略的に示す側断面図である。
【図3】この発明における洗浄治具を示す分解斜視図である。
【図4】図2の一部を拡大して示す側断面図である。
【図5】この発明における洗浄治具の他の実施例を示す断面図である。
【図6】この発明における洗浄治具の更に他の実施例を示す側断面図である。
【図7】従来のレジスト塗布装置を示す側断面図である。
【図8】図6の外カップの一部を拡大して示す断面斜視図である。
【符号の説明】
20 スピンチャック(回転保持手段)
23 外カップ
24 内カップ
30,130 洗浄治具
31 受部
32 蓋部
33 導入口
34 突起
35,135 貯留部
36(36a〜36d),136 吐出孔
40,140 洗浄液供給ノズル
L 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被塗布体を保持して回転する回転保持手段と、この回転保持手段を取り囲むように設けられ、上記被塗布体に供給された塗布液の飛散を防止するための容器とを有する塗布装置において、上記回転保持手段に設けられ、上記容器に付着した塗布液を洗浄するための洗浄液が供給される洗浄用治具を備え、この洗浄用治具は上記洗浄液を貯留しうる貯留部を有すると共に、上記回転保持手段の回転により上記貯留部の洗浄液を上記容器に向って吐出する吐出孔を有することを特徴とする塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平5−82435
【公開日】平成5年(1993)4月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−268644
【出願日】平成3年(1991)9月20日
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000109554)東京エレクトロン九州株式会社 (2)