説明

塗料、特に仕上げ塗料又はワニスにおける有機セリウムゾルの使用

本発明は、有機セリウムゾルを塗料、特に仕上げ塗料又はワニスに耐久性を改善させるために使用することに関する。より具体的には、使用されるゾルは、両親媒性酸系、有機相、及び、せいぜい5ナノメートルのd80、有利にはd90を有する凝集体の形の粒子であってその凝集体の90重量%が1〜5種、好ましくは1〜3種の微結晶を含むものを含むゾルであることができる。
セリウムゾルを取り入れた塗料は、改善された防水性の特性及び機械的性質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、特に仕上げ塗料又はワニスに有機セリウムゾルを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
家具、木工品、床材及び建築産業では、光及び悪天候による劣化から木材を保護するために多くの物質が日常的に使用されている。水及び酸素と共にUV放射がこのものを急速に脱色させることが知られている。さらに、木材を特に屋外で使用するときには、藻類、カビ類及び様々な微生物に対しても保護しなければならない。
【0003】
塗料、特に仕上げ塗料及びワニスは、木材を保護するために日常的に使用されている。
【0004】
しかしながら、例えば、イソシアネート複合物のような有機物質、酸化鉄のような無機物質又はUV吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール)のような保護用添加剤を主体とする複合処方を有する既知の仕上げ塗料及びワニスは、完全に満足のいく耐久性又はUV放射に対する保護を示すわけではない。有機UV吸収剤は時間と共に分解し得る(これらのものは表面に移動し、又は悪天候によって浸出する)。二酸化チタンのような既知の無機UV吸収剤は、UVに対して有効である程度に高濃度で使用しなければならないが、その濃度の増加は、ワニス又は仕上げ塗料の透明性、耐候性又は機械的性質に対して有害である。さらに、UV硬化性処方物がかなりの数使用されつつある。しかしながら、有機UV吸収剤は、木材への塗布中に該処方物の硬化を妨害し得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、より大きな耐久性を有する塗料及び仕上げ塗料又はワニスに対するニーズがある。このニーズは上記の木材産業だけでなく、化粧品、インク保護、感光性顔料、又は、より一般的には、UV、水及び酸素若しくはこれらの要素の一つの悪影響から保護されなければならない表面の裏に隠れている大きな分野のようなその他の分野にも存在している。
【0006】
従って、本発明の目的は、前記耐久性を改善させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明は、塗料型処方物、特に仕上げ塗料又はワニスに有機セリウムゾルを該処方物の耐久性を改善させる添加剤として使用することにある。
【0008】
該ゾルを取り入れた組成物は、改善された防水性及び機械的性質を有し、しかして、これはそれらの耐用年数又はこれらのものが保護する基材上に存在する期間を長くする。また、これらの老化特性も改善できる。
【0009】
本発明に従う解決法の使用は、UV硬化性組成物であっても前記利点を維持できる。
【0010】
本発明のさらなる特徴、詳細及び利点は、例示することを意図した様々な限定されない実施例を含めて、次の説明からさらに明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書において、用語「塗料」は、ある種の基材上に付着される重合体特性の塗料、より正確に言えば、本質的に有機塗料、ワニス及び仕上げ塗料を示すために使用するものとする。用語「仕上げ塗料」及び「ワニス」は、考慮中の技術分野における通常の意味を有するものとする。仕上げ塗料は、一般に、木材を保護するためにそれに塗布される透明又は半透明の組成物であって、このものが下塗りであるか又は上塗りであるかに依存してほぼ10重量%又は40重量%〜50重量%であることができる乾燥物含有量を有するものである。ワニスは、仕上げ塗料よりも濃縮された処方物又は組成物である。
【0012】
次の樹脂を基材とする次の塗料は、本発明に関わる組成物である:アルキド樹脂であってその最も一般的に使用されてるのがグリセロフタル酸と呼ばれるもの、短鎖オイル又は長鎖オイルで変性された樹脂、アクリル酸及びメタクリル酸のエステル(メチル又はエチル)から誘導されるアクリル酸樹脂であって随意としてアクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル又はアクリル酸ブチルと共重合されたもの、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール及び塩化ビニル・酢酸ビニル/塩化ビニリデン共重合体のようなビニル樹脂、通常は変性されたアミノプラスト又はフェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース樹脂又はニトロセルロース樹脂。
【0013】
本発明は、木材産業における木材基材だけでなく、例えば、化粧品産業又は自動車産業におけるその他の基材上にも使用されるような、塗料、特にワニス又は仕上げ塗料に関するものである。
【0014】
表現「セリウムゾル」又は「セリウムのコロイド分散体」とは、コロイド寸法を有し、液体相の懸濁液状のセリウム化合物の細かな固体粒子であって随意として酢酸イオン又はアンモニウムイオンのような結合又は吸着イオンの残部量をも含有するものによって構成される任意の系をいう。用語「コロイド寸法」とは、約1nm〜約500nmの範囲の寸法を意味する。このような寸法では、セリウムは、全体的にコロイドの形であるか、又は同時にイオンの形とコロイドの形であるかのいずれかであることができることに留意すべきである。
【0015】
セリウムは、一般に、セリウムの酸化物及び/又は水酸化物の形のゾルで存在する(このセリウムは、主としてセリウム(IV)の形である)。例として、セリウム(IV)に対するセリウム(III)の量(Ce(III)/全Ceの原子比として表される量)は、好ましくは、せいぜい5%、具体的にはせいぜい1%、さらに具体的にはせいぜい0.5%である。
【0016】
セリウムゾルの粒子は、好ましくは、せいぜい200nm、より具体的にはせいぜい100nmの寸法を有する。
【0017】
ここで及びこの説明を通して、粒度分布は、一般的な態様の透過電子顕微鏡(TEM)によって、銅製格子上に担持された炭素の膜上で乾燥させた試料を使用して決定された。
【0018】
本発明で使用されるセリウム分散体又はゾルは、有機ゾル又は分散体である。このことは、液体相が有機相であることを意味する。
【0019】
挙げることのできる有機相の例は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンのような脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘプタンのような不活性脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、液状ナフテンのような芳香族炭化水素である。また、Isopar又はSolvesso型(エクソン社の商品名)のオイル留分、特に本質的にメチルエチルベンゼンとトリメチルベンゼンの混合物からなるSolvesso100、アルキルベンゼン、特にジメチルベンゼンとテトラメチルベンゼンの混合物を含むSolvesso150並びに実質的にC11及びC12イソ及びシクロパラフィン性炭化水素を含有するIsoparも好適である。
【0020】
また、有機相について、クロルベンゼン若しくはジクロルベンゼン又はクロルトルエンのような塩素化炭化水素を使用することも可能である。また、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酸化メシチルのようなエーテル並びに脂肪族及び脂環式ケトンも使用できる。
【0021】
エステルが予期され得るが、しかしこれらのものは、加水分解型になるという危険性がある。使用できるエステルで挙げることができるものは、酸とC1〜C8アルコールとの反応によって誘導されるようなもの、特に第二アルコール、例えばイソプロパノールのパルミチン酸エステルである。挙げることができる例は酢酸ブチルである。
【0022】
明らかに、有機相は、2種以上の炭化水素の混合物又は上記のタイプの化合物を主体とすることができる。
【0023】
挙げることのできる本発明で使用するのに非常に好適なセリウムゾルは、欧州特許EP−A−0671205号に記載されたタイプのものである。所望ならば参照されたい。該ゾルは、2種の実施形態で存在し得る。
【0024】
第1の実施形態では、セリウムゾルは、セリウム粒子の他に両親媒性酸系及び有機相を含む。
【0025】
有機相は、上記と同一のタイプである。
【0026】
両親媒性系は、両親媒性の酸又は両親媒性の酸の混合物によって構成される。これらの酸の全炭素数(使用される系が酸の混合物である場合にはその平均)は、有利には、6以上、好ましくは10以上、望ましくは約60以下である。
【0027】
該酸は線状又は分岐であることができる。これらのものは、アリール、脂肪族又はアリール脂肪族の酸であることができ、そしてこれらはその他の官能基を保持していてよいが、ただし、該官能基は、本発明の分散体に使用される媒体中で安定な状態を保持することを条件とする。使用できる例は、天然であるか合成であるかを問わず、約10〜40個の炭素原子を含有する脂肪族カルボン酸、脂肪族スルホン酸、脂肪族ホスホン酸、アルキルアリールスルホン酸及びアルキルアリールホスホン酸である。
【0028】
また、カルボン酸であってその炭素含有鎖がケトン官能基を有するもの、例えば、該ケトン官能基に対してα位で置換されたピルビン酸を使用することも可能である。また、これらのものは、α−ハロゲノカルボン酸又はα−オキシカルボン酸であることもできる。カルボン酸基に結合する鎖は不飽和結合を有し得る。しかしながら、一般には、過剰な二重結合は、セリウムが二重結合の硬化を触媒するため、避けるべきである。この鎖は、エーテル又はエステル官能基によって中断されていてよいが、ただし、これは、カルボン酸基を有するこの鎖の疎水性の性質を実質的に変化させないことを条件とする。
【0029】
挙げることのできる例は、トール油、大豆油、獣脂又は亜麻仁油の脂肪酸、また、オレイン酸、リノレン酸、ステアリン酸及びそれらの異性体、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸、ヘキソン酸、トルエンスルホン酸、トルエンホスホン酸、ラウリルスルホン酸、ラウリルホスホン酸、パルミチルスルホン酸及びパルミチルホスホン酸である。
【0030】
酸化セリウム1モル当たりの酸のモル数として表される両親媒性酸の使用量は、例えば、酸化セリウム1モル当たり1/10〜1モルで幅広く変化し得る。その上限は臨界的ではないが、多量の酸を使用する必要はない。好ましくは、両親媒性酸は、酸化セリウム1モル当たり1/5〜4/5モルの量で使用される。このモル比は、両親媒性酸のモルとして、有用な酸官能基の数nで掛けたモル数を得ることによって算出される。より正確に言えば、酸当量数は、使用される酸が1官能価であるときには酸の分子数を表し、そして二塩基及び三塩基酸については2倍又は3倍にしなければならない。より一般的には、多塩基酸の場合にはこれに酸官能基の数を掛けなければならない。
【0031】
有機相において、有機相と両親媒性酸との間の割合は臨界的ではない。有機相と両親媒性酸との間の重量比は、好ましくは、0.3〜2.0の間であるように選択される。
【0032】
第1の実施形態におけるゾルの主な特徴は、その粒子の構成にある。その粒子は、微結晶の凝集体の形であり、この微結晶において、そのd80、有利にはd90は、せいぜい5ナノメートルであり、その凝集体の90重量%は、1〜5種、好ましくは1〜3種の微結晶を含む。
【0033】
本明細書において、粒度分布の特徴は、dn型(ここで、nは1〜99の数である)の表記とする。この表記は、ある物体の寸法であってその物体の数のn%が該寸法以下である寸法を有するものを表す。例として、5ナノメートルのd80とは、物体の数による80%が5ナノメートル以下の寸法であることを意味する。
【0034】
粒子の凝集状態は、TEM(高分解能透過電子顕微鏡)下で又は極低温TEM技術を使用して分散体を検査することによって決定される。この技術は、天然媒体中で冷凍したままの試料を観察できることを意味し、ここで、この媒体は、水或いは有機希釈剤、例えば、Solvesso若しくはIsoparのような芳香族若しくは脂肪族溶媒又はエタノールのようなある種のアルコールである。
【0035】
約50〜100nmの厚さの薄いフィルムを水性試料については液体エタンで、又はその他の試料については液体窒素で凍結させる。
【0036】
第2の実施形態では、ゾルは、第1の実施形態の場合のように、セリウム粒子の他に両親媒性酸系及び有機相をも含有する。しかしながら、このゾルは、より具体的な両親媒性酸系によって特徴付けられる。該系は、11〜50個の炭素原子を含有する少なくとも1種の酸であってその酸の水素を保持している原子上に少なくとも1個のα、β、γ又はδ分岐を有するものを含む。
【0037】
好ましい範囲は、該両親媒性系の酸について15〜25個の炭素原子である。特に鎖が短い(14個の炭素原子以下)とき、1個のみの分岐が存在するとき及び特に鎖が酸の水素を保持している原子に対してγ又はδ位に位置するときに、最高の結果を得るためには、分岐が少なくとも2個の炭素原子の長さ、有利には3個の炭素原子の長さであることが非常に望ましい。
【0038】
好ましくは、最も長い線状部分は、少なくとも6個、好ましくは8個の炭素原子の長さである。
【0039】
有利には、酸の少なくとも1種のpKaは、せいぜい5、好ましくは4.5である。
【0040】
有利には、分岐酸の側鎖は、少なくとも2個の原子、好ましくは3個の炭素原子を含有する。
【0041】
挙げることのできる特に有利な酸は、イソステアリン酸として知られている酸の混合物の成分たる酸である。
【0042】
また、第1の実施形態についての有機相に関する説明もここで適用できる。粒度の特徴は、第1の実施形態について与えたものよりも特異性が小さく、又はそれとは異なり得る。従って、微結晶凝集体によって構成される粒子のd80、有利にはd90は、せいぜい10ナノメートル、より具体的にはせいぜい8ナノメートルであることができる。凝集体、しかして粒子を構成する微結晶は、せいぜい5ナノメートルの寸法である。しかしながら、第2の実施形態のゾルは、随意として第1の実施形態に関して上に挙げた成分及び粒度特性をも有することができる。
【0043】
考慮中のこの2つの実施形態及びさらなる変形例について、凝集体の80重量%が3〜4種の微結晶を含む。
【0044】
ゾルの水分は、好ましくはせいぜい1%、より具体的にはせいぜい0.1%、さらに好ましくはせいぜい100ppmである。
【0045】
上記の2つの実施形態のゾルは、欧州特許EP−A−0671205号に開示された方法を使用して製造できる。所望ならば参照されたい。この方法は、本質的に、セリウムを含有する水性相、一般的にはセリウム(IV)塩の水溶液を加水分解させて酸化セリウムを沈殿させることからなる。加水分解は、該水性相を少なくとも80℃であることができる温度に加熱することによって実施される。第2段階で又はそれと同時に、得られた酸化セリウムの懸濁液を前記両親媒性系を含む有機相と接触させる。
【0046】
また、第3の実施形態では、国際特許出願公開WO−A−01/10545号に記載されたタイプのセリウムゾルを使用することも可能である。所望ならば参照されたい。
【0047】
より正確に言えば、該第3の実施形態におけるゾルは、セリウム粒子、両親媒性酸系及び有機相を含むタイプであり、これは、該粒子の少なくとも90%が単結晶であることを特徴とする。用語「単結晶」とは、その分散体が上記のようにTEM下で検査されるときに、別個であり且つ単一の微結晶によって構成される粒子を意味する。さらに、この粒子は、細かくて狭い粒度分布を有し得る。これらのものは、1〜5nmの範囲、好ましくは2〜3nmの範囲のd50を有し得る。両親媒性酸及び有機相に関して、2つの前記実施形態に関する説明がここでも適用される。
【0048】
セリウムゾルは、塗料、仕上げ塗料又はワニスに該ゾルを該塗料、仕上げ塗料又はワニスと単に混合することによって使用される。ゾルの使用量は、塗料組成物中の酸化セリウムの最終所望量の関数である。この量は、任意の量であることができる。塗料、仕上げ塗料又はワニスの防水性又は機械的性質を損なうことなく高セリウム含有量で操作することが可能であることに留意すべきである。一般に、ゾルは、酸化セリウム含有量が全組成物に対してせいぜい25重量%、好ましくはせいぜい10重量%、好ましくはせいぜい3重量%であるような量で使用される。この量は、同時に、UVに対する基材(特に木材)の効果的な保護を増大した耐久性で保証する塗料、仕上げ塗料又はワニスを与えるのに十分なものである。
【0049】
また、上記のタイプのゾルを、例えば蒸発によって乾燥させて粉末又はゲル状の生成物を得ることも可能である。次いで、この生成物を上記のタイプの有機相中に分散させて、再度上記の態様で塗料、仕上げ塗料又はワニスに取り入れられ得るゾルを得ることができる。
【0050】
本発明は、任意のタイプの有機塗料又は溶媒相塗料、特に任意の基材上に使用されるタイプの仕上げ塗料又はワニスに適用できる。該基材は、特に、木材又は金属から形成でき、そして後者の場合には、例えば、本発明は、自動車用塗料に適用できる。また、基材は、建物に使用されるガラスのタイプのガラス又は感光性物質若しくは材料を含有するように意図されたガラスであることもできる。その他の見込まれる基材は、特に可視領域内で透明性を保持しようとするときの有機又は無機包装用の保護被覆である。
【0051】
また、本発明は、化粧品に使用されるワニスにも適用できる。さらに、本発明は、有利には、UV硬化性である組成物、特に仕上げ塗料、即ち、基材(特に木材)上に付着後直ちに紫外線照射による処理を受けて乾燥する仕上げ塗料に適用できる。
【0052】
最後に、本発明の実施形態によって得られた塗料、仕上げ塗料及びワニスの組成物は、酸化セリウムが非毒性であるため、環境上の要求を満足することに留意すべきである。
【実施例】
【0053】
ここで、実施例を与える。実施例においては、次の試験を実施した。
比色法
測定条件:
比色測定は、国際標準ISO7724に従ってミノルタCM3610D分光比色計を使用して実施した。
測定条件を次に記す。
・鏡面を含む(逆拡散強度の全てを測定した)
・紫外線照射は、100%フィルターにかけた
・それらの結果を光源/観測器C/10°の対として表した。
これらの測定を対照カードであって塗料が150ミクロンの厚さに塗布されたもの(未乾燥塗料)について実施した。透明度を測定するために、該対照カードの黒色背景上で測定を実施した。
【0054】
防水性
測定条件:
防水性は、水の液滴と仕上げ塗料の間の接触角をRAME&HARTゴニオメーターを使用して測定することによって算出した。液滴の該角度が大きければ大きいほど仕上げ塗料の疎水性が大きく、しかして水に対する感受性が小さい。仕上げ塗料を対照カードに塗布した。仕上げ塗料は、塗膜印刷機を使用して150ミクロンの厚さに塗布した。
【0055】
老化
2種の老化試験法を使用した。
第1の試験は、QUVA型の試験であった。これは次の条件下で実施した。
・照射:340nmに集中したピークを有するUVAランプ
・チャンバー温度:60℃
・機能サイクル:乾燥相内で60℃の温度で4時間照射、次いで暗所で60℃の温度で4時間凝縮。
湿気を、器具(水蒸気を生じさせるための)の底部に位置した水のタンクを加熱することによって供給し、そのときに該水は塗布プレート上で凝縮した。
第2の試験は、キセノン燈耐候試験(ISO4892)と呼ばれる促進老化試験であり、次の条件下で実施した。
・照射:太陽光(ただし約100倍強い)をシミュレートするスープラックスフィルターを備えたキセノンアーク燈。放射出力を65W/m2に調節した。
・チャンバー温度:30℃
・機能サイクル:乾燥相内でt=30℃で27分照射、次いで湿相内でt=30℃で3分照射。
湿気は、液状水をノズルを使用して試験プレート上に直接噴射することによって供給した。
【0056】
機械的性質
仕上げ塗料の機械的性質を次の2種の方法で測定した。
仕上げ塗料の塗膜の硬度を、ペルゾ硬度試験法を使用して測定した。この試験は、NFT30−016に従って実施した(塗料及びワニス:ペルゾ振子を使用した塗料又はワニスの塗膜の硬度の測定)。この試験は、校正膜厚塗布器を使用して150μmの厚さでガラスプレート上に塗布されたワニスの塗膜について実施した。この特徴付けの原理は、試験される塗膜上にある2個のスチールビーズによって得られる振子の減衰時間を測定することである。硬度は、開始時での定位に対して12°及び該試験の終了に相当する4°に傾いたときの振子の振幅数に対応して秒で表される(1回の振幅の時間)。
耐引掻性の測定は、BRAIVE硬度計を使用して実施した。この硬度計は、タングステンポイントを備えた針であり、それに校正バネを使用して変圧を加える(この圧力はグラムで表される)。耐引掻性は、その針のタングステンポイントが跡を残さない最大の圧力(グラムで表す)である。この試験を、校正膜厚塗布器を使用して150μmの厚さでガラスプレート上に塗布されたワニスの塗膜(湿塗料)について実施した。
以下の例において、本発明のゾルは、ゾルであってその粒子が微結晶の凝集体の形であるもの(そのd80はせいぜい8ナノメートルであり、該粒子は2〜5種の微結晶を含む)であった。このゾルの有機相はIsoparLによって構成され、そして両親媒性酸はイソステアリン酸であった(ユニケマ・インターナショナル社製のPrisorine3501)。
実施例を通して、有機UV吸収剤を主体とする比較物質はチバ社製のTINUVIN1130であり、無機UV吸収剤(酸化チタン)を主体とする比較物質は、ザハトレーベン社製のHombitec RM400であった。
【0057】
例1
この例は、42%の乾燥抽出物を有する慣用の長鎖油アルキド型のホワイトスピリット処方物の仕上げ塗料への使用に関する。
本発明のゾルを、全処方物に対して1.63%の活性材料(酸化セリウム)の量にまで単に混合することによって取り入れた。有機UV吸収剤を主体とする比較物質(2)を先と同様の態様で全処方物に対して1%の量で取り入れた。無機UV吸収剤を主体とする比較物質(3)を上記と同一の態様で全処方物に対して1.63%の乾燥物の量にまで取り入れた。
製造した処方物を異なる支持材に塗布し、制御雰囲気下(21℃±2℃、55%±5%の相対湿度)での空気中で蒸発前の1週間にわたって状態調整した。
【0058】
【表1】

【0059】
比色測定の結果を以下の表2に示す。
【表2】

【0060】
表2は、本発明の仕上げ塗料の色合いが実際に全く変化を受けなかったことを示している。
【0061】
防水性測定の結果を以下の表3に示す。
【表3】

【0062】
防水性の特性が改善されたことに留意されたい。本発明の仕上げ塗料は、疎水性を与える真珠効果を示した。
【0063】
以下の表4は、QUVA型試験から得られた老化の結果をまとめている。仕上げ塗料をはけを使用して松のボードに325g/m2のGSMを生じさせるように塗布した。
色合いの変化(dE*)を2つの暴露時間で記録した:25サイクル及び135サイクル。
【0064】
【表4】

【0065】
時間は、8時間のサイクルで表している。
塗料の老化特性は、物質4で実質的に改善された。
【0066】
例2
この例は、アーチ・コーティングス社(仏国)社製の商品番号SU4030のタイプのセルロースである慣用型産業用処方物の仕上げ塗料への使用に関する。
本発明のゾルを全処方物に対して1.4%の活性材料(酸化セリウム)の量にまで単に混合することによって取り入れた。有機UV吸収剤を主体とする比較物質(6)を上記と同様の態様で、該物質がこのタイプの物質について十分である必要なUVフィルター効果を有する全最適照射量に対して0.3%の量で取り入れた。
製造された処方物を異なる支持材に塗布し、そして蒸発前の1週間にわたって空気中で状態調整した。
【0067】
【表5】

【0068】
防水性測定の結果を以下の表6に与える。
【表6】

【0069】
防水性の特性が改善していることに留意されたい。本発明の仕上げ塗料は、疎水性を与える真珠効果を示した。
【0070】
以下の表7は、QUVA型試験から得られた老化の結果をまとめている。仕上げ塗料を、吹きつけ器を使用してアメリカンチェリー木材のボードに2×120g/m2のGSMを生じさせるように2層で塗布した(この2回の塗布の間に研磨を実施した)。
色合いの変化(dE*)を2つの暴露時間で記録した:10サイクル及び35サイクル。
【0071】
【表7】

【0072】
時間は8時間のサイクルで表している。
塗料の老化特性は物質7で改善された。
以下の表8は機械的性質の結果をまとめている。
【0073】
【表8】

仕上げ塗料の機械的性質は、物質7で実質的に改善された。
【0074】
例3
この例は、アークコーティングス社(仏国)社製の商品番号TH790の硬化剤で触媒された商品番号TU7425の慣用の産業用ポリウレタン型処方物の仕上げ塗料への使用に関する。
本発明の物質(10)を全処方物に対して1.3%の活性材料(酸化セリウム)の量にまで単に混合することによって取り入れた。UV吸収剤を主体とする比較物質(9)を上記と同一の態様で、このタイプの物質とって最適なUVフィルター効果を与えるのに必要且つ十分な照射量に対応する、全組成物に対して0.3%の量で取り入れた。
触媒TH790を塗布の直前に処方物TU7425に10部の処方物TU7425に対して1部の触媒の量で添加した。
製造された処方物を異なる支持材に塗布し、そして蒸発前の1週間にわたって空気中で状態調整した。
【0075】
【表9】

【0076】
比色測定の結果を以下の表10に示す。
【表10】

【0077】
表10は、本発明の仕上げ塗料の色合いが実際に全く変化を受けなかったことを示している。
防水性測定の結果を以下の表11に与える。
【0078】
【表11】

【0079】
本発明の仕上げ塗料についての防水性の特性が改善されていることに留意されたい。
以下の表12は、キセノン燈耐候型試験を使用して得られた老化の結果をまとめている。仕上げ塗料を、吹き付け器を使用してアメリカンチェリー木材のボードに2×120g/m2のGSMを生じさせるように2層で塗布した(この2回の塗布の間に研磨を実施した)。
色合いの変化(dE*)を234時間暴露後に記録した。
【0080】
【表12】

【0081】
塗料の老化特性は物質10で実質的に改善された。
以下の表13は機械的性質の結果をまとめている。
【0082】
【表13】

仕上げ塗料の機械的性質は、物質10で実質的に改善された。
【0083】
例4
この例は、アーチ・コーティングス社(仏国)社製の商品番号HZ0294のUV硬化性型の慣用産業用処方物の仕上げ塗料への使用に関する。
本発明の物質(12)を全処方物に対して2.25%の活性物質(酸化セリウム)の量にまで単に混合することによって取り入れた。
製造した処方物をブナ材に吹き付け器を使用して2×40g/m2のGSMを生じさせるように2層で塗布した(2回の塗布の間に研磨を実施した)。10分の脱溶媒和期間後に、それぞれの層を2個のパス内で7m/分の速度で水銀UV燈下に露出させることによって硬化させた。試料が受けたエネルギーを表14に示す。
【0084】
【表14】

【表15】

【0085】
以下の表16は、QUVA型試験から得られた老化の結果をまとめている。仕上げ塗料を、吹き付け器を使用してブナ材ボードに2×40g/m2のGSMを生じさせるように2層で塗布した(2回の塗布の間に研磨を実施した)。
色合いの変化(dE*)を2つの暴露時間で記録した:10サイクル及び35サイクル。
【0086】
【表16】

【0087】
時間は8時間のサイクルで表されている。
塗料の老化特性は物質12で改善された。
【0088】
例5
この例は、仕上げ塗料の塗布及びUV硬化型の慣用の産業用処方物の系への使用に関する。この系は、アーク・コーティングス社(仏国)社製の商品番号HL0106の含浸仕上げ塗料及び商品番号HL0121の上塗り仕上げ塗料を含んでいた。
本発明の物質(14)を全処方物に対して1.7%の活性物質(酸化セリウム)の量にまで単に混合することによって取り入れた。
製造した処方物を、ブナ材に吹き付け器を使用して2×40g/m2のGSMを生じさせるように2層で塗布した(2回の塗布の間に研磨を実施した)。3分の脱溶媒和期間後に、それぞれの層を1個のパスで7m/分の速度でガリウムUV燈の下で露出させることによって硬化させた。
【0089】
【表17】

【0090】
比色測定の結果を以下の表18に示す。
【表18】

【0091】
表18は、本発明の仕上げ塗料の色合いが実際に全く変化を受けなかったことを示している。
防水性の測定の結果を以下の表20に与える。仕上げ塗料をブナ材ボードに2×40g/m2のGSMで塗布した。
【0092】
【表19】

【0093】
また、防水性特性を、水との接触後の仕上げ塗料の色合いの変化(dE*)を測定することによっても評価した。この試験は、塗布された仕上げ塗料と水の液滴との50分の接触の前後に比色測定によって評価した。色合いの差異が大きければ大きいほど仕上げ塗料の親水性が大きく、しかして水に対してより敏感であった。仕上げ塗料をブナ材ボードに2×40g/m2のGSMで塗布した。
結果を以下の表20に与える。
【0094】
【表20】

【0095】
本発明の仕上げ塗料について防水性の特性が改善されていることに留意されたい。
以下の表21は、キセノン燈耐候試験型の老化試験から得られた結果を示している。
仕上げ塗料を、ブナ材ボードに吹き付け器を使用して2×40g/m2のGSMを生じさせるように2層で塗布した(2回の塗布の間に研磨を実施した)。
色合いの変化(dE*)を40サイクル及び160サイクル暴露後に記録した。
【0096】
【表21】

仕上げ塗料の老化特性は、物質14で実質的に改善された。
さらなるQUVA型老化試験を実施した。
仕上げ塗料をブナ材に吹き付け器を使用して2×40g/m2のGSMを生じさせるように2層で塗布した(2回の塗布の間に研磨を実施した)。
色合いの変化(dE*)を2つの露出時間で記録した:5サイクル及び20サイクル。
以下の表22は、第2の試験で得られた老化の結果をまとめている。
【0097】
【表22】

【0098】
時間は8時間サイクルで表されている。
塗料の老化特性は、物質14で実質的に改善された。
以下の表23は、ブナ材ボード上に吹き付けることによって2×40g/m2の量で塗布されたワニスの塗膜について実施された試験に関する機械的性質の結果をまとめている。
【0099】
【表23】

仕上げ塗料の機械的性質は、物質14で実質的に改善された。
【0100】
例6
この例は、ラ・セニョリ社製の商品名「ANTER SATIN」のグリセロフタル酸型の内装サテン仕上げ塗料への使用に関する。
本発明のゾルを全処方物に対して1.5%の活性剤(酸化セリウム)の量で単純に混合することによって取り入れた。形成された処方物を異なる支持材に塗布し、そして制御雰囲気(21℃±2℃、55%±5%相対湿度)下の空気中で蒸発前の1週間にわたって状態調整した。
【0101】
【表24】

【0102】
防水性測定の結果を以下の表25に与える。
【表25】

【0103】
防水性の改善又はさらにそれ自体疎水性を与える本発明の塗料についての真珠効果に留意されたい。
以下の表26は、機械的性質の結果をまとめたものである。
【0104】
【表26】

仕上げ塗料の機械的性質は、物質16で改善された。
【0105】
例7
この例は、ブランカラー社製の商品名「RESPIR’BOIS」のグリセロフタル酸型の木材用の装飾用半光沢微孔質ラッカー塗料への使用に関する。
本発明のゾルを全処方物に対して1.5%の活性物質(酸化セリウム)の量にまで単に混合することによって取り入れた。形成された処方物を異なる支持材に塗布し、そして制御雰囲気(21℃±2℃、55%±5%相対湿度)下の空気中で蒸発前の1週間にわたって状態調整した。
【0106】
【表27】

【0107】
防水性測定の結果を以下の表28に与える。
【表28】

【0108】
防水性の改善又はさらにはそれ自体疎水性を与える本発明の塗料についての真珠効果に留意されたい。
以下の表29は機械的性質の結果をまとめたものである。
【0109】
【表29】

【0110】
仕上げ塗料の機械的性質は、物質18で改善された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料型組成物、特に仕上げ塗料又はワニスにおける、該組成物の耐久性を改善させる添加剤としての有機セリウムゾルの使用。
【請求項2】
セリウムゾルがせいぜい200nmの寸法を有する粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
セリウムゾルがせいぜい100nmの寸法を有する粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
セリウムゾルがセリウムの粒子、両親媒性系及び有機相を含み、該粒子が、d80、有利にはd90がせいぜい5ナノメートルである微結晶の凝集体の形であり、該凝集体の90重量%が1〜5種、好ましくは1〜3種の微結晶を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
セリウムゾルがセリウムの粒子、両親媒性酸系及び有機相を含み、該両親媒性酸系が11〜50個の炭素原子を含有する少なくとも1種の酸であってその酸の水素を保持している原子上に少なくとも1個のα、β、γ又はδ分岐を有するものを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
セリウムゾルが、微結晶であってそのd80がせいぜい10ナノメートル、より具体的にはせいぜい8ナノメートルであるものの凝集体の形のセリウムの粒子を含むことを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
凝集体の80重量%が3又は4種の微結晶を含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
セリウムゾルがセリウムの粒子、両親媒性酸系及び有機相を含み、該粒子の少なくとも90%が単結晶であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
粒子が1〜5nmの範囲、好ましくは2〜3nmの範囲のd50を有することを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
両親媒性系の酸とセリウム元素とのモル比が1/5〜4/5の範囲にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
両親媒性酸系がイソステアリン酸を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
組成物中のセリウム含有量(酸化セリウムとして表される)が全組成物に対してせいぜい25重量%、好ましくはせいぜい3重量%であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
組成物がUV硬化性の組成物、特に仕上げ塗料であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2006−505631(P2006−505631A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−571357(P2003−571357)
【出願日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【国際出願番号】PCT/FR2003/000624
【国際公開番号】WO2003/072663
【国際公開日】平成15年9月4日(2003.9.4)
【出願人】(503124252)ロディア エレクトロニクス アンド カタリシス (13)
【Fターム(参考)】