説明

塗料カートリッジ及びその洗浄方法

【課題】塗料バッグの洗浄を短時間で効率よく行うことができる塗料カートリッジを提供すること。
【解決手段】塗料カートリッジ10は、筒状本体部11a及びベース部11cからなるカートリッジ本体11と、カートリッジ本体11の内部領域を塗料室13及び塗料押出液室14に区画する塗料バッグ12とを備える。ベース部11cの内端面11gにはフィードパイプ16が突設されており、フィードパイプ16は塗料バッグ12の塗料室13内に挿入された状態で配置されている。フィードパイプ16はその基端側に2重構造部16aを有する。フィードパイプ16の2重構造部16aにおいて、中心部に充填用経路17aが設けられ、外周部に排出用経路17bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料充填装置または塗装機に着脱可能に取り付けられる塗料カートリッジ及びその洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ボディなどの被塗装物を塗装する塗装システムにおいては、高品質な塗装が要求されるため、塗着効率や塗膜の平滑性などに優れた静電塗装機が用いられている。
【0003】
静電塗装機では、静電塗装用水性塗料を霧化するための回転霧化頭が設けられており、その回転霧化頭に高電圧を印加することにより、回転霧化頭で霧化された塗料粒子が帯電されて静電塗装が行われる。この静電塗装機としては、塗料カートリッジを塗装機本体に装着して定量の塗料押出液(作動流体)を充填することにより、塗料カートリッジ内の塗料を押し出して回転霧化頭に供給し、塗装を行うようにした塗装機がある。
【0004】
ところで、静電塗装機では、塗料供給系を流れる塗料を介して電流がリークするおそれがあるため、それを防止する絶縁対策が必要となる。この対策としては、塗料が充填される塗料バッグ101を備えた塗料カートリッジ100(図5参照)を塗装機本体に装着することが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0005】
図5の塗料カートリッジ100を用いれば、塗料室102内(塗料バッグ101内)から塗料押出液室104への塗料漏れが完全に防止されるため、電流のリークを確実に防止することができる。この塗料カートリッジ100では、塗料押出液移動経路105を通じて塗料押出液を塗料押出液室104に充填して塗料バッグ101内の塗料を押し出すことにより、塗料移動経路106を介して回転霧化頭に塗料が供給されるようになっている。なお、塗料カートリッジ100は、塗装機だけでなく塗料充填装置にも装着される。塗料充填装置は、塗料カートリッジ100が装着された際に、塗料室102内に塗料を充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−18396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の静電塗装機では、塗装色に対応した専用カートリッジを使用して塗装が行われる。具体的には、自動車ボディの塗装ラインのように、自動車ボディに対応した複数色の色替え塗装を行う塗装システムでは、自動車ボディの塗装色と同数の塗料カートリッジ100が必要となる。この場合、複数の塗料カートリッジ100を収納するストッカや塗料カートリッジ100を交換するための移載装置などが必要となるため、装置全体が大型化してしまう。この対策として、塗料カートリッジ100の塗料バッグ101を洗浄することにより、1つの塗料カートリッジ100で複数色の色替え塗装を行う手法が検討されている。
【0008】
ところが、従来の塗料カートリッジ100では、塗料バッグ101への塗料の充填と排出とが共通の塗料移動経路106を通じて行われる構成であり、洗浄時における洗浄液の充填及び排出もその塗料移動経路106を通じて行われる。この場合、洗浄液の充填及び排出を交互に実施する必要があるため、洗浄時間が長くなり、洗浄液の使用量が多くなってしまう。また、洗浄液の充填及び排出を繰り返しても塗料バッグ101の隅に塗料が残存してしまい、洗浄が不十分となることがある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料バッグの洗浄を短時間で効率よく行うことができる塗料カートリッジ及びその洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、塗料充填装置または塗装機に着脱可能に取り付けられるカートリッジ本体と、前記カートリッジ本体内にて変形可能に設けられ、そのカートリッジ本体の内部領域を、塗料が充填される塗料室及び前記塗料を前記塗料室から押し出すための塗料押出液が給排される塗料押出液室に区画する塗料バッグとを備えた塗料カートリッジにおいて、前記カートリッジ本体は、前記塗料バッグを収納する筒状本体部と、前記筒状本体部の下端部を塞ぐとともに前記塗料充填装置または前記塗装機に対して着脱可能な外端面を有するベース部と、前記ベース部の内端面にて突設されるとともに前記内端面に固定された前記塗料バッグの塗料室内に挿入された状態で配置されている袋支持体とを備え、前記ベース部及び前記袋支持体には、前記ベース部の前記外端面にて開口する充填用ポートと前記塗料室との間を連通する充填用経路と、前記ベース部の前記外端面にて開口する排出用ポートと前記塗料室とを連通する排出用経路とが互いに独立して設けられていることを特徴とする塗料カートリッジをその要旨とする。
【0011】
従って、手段1に記載の発明によると、塗料カートリッジを洗浄するときには、充填用ポートから充填用経路を通して塗料室に洗浄液が充填されるとともに、塗料室内の洗浄液が排出用経路を通して排出用ポートから排出される。しかも、充填用経路と排出用経路とが互いに独立して設けられているため、塗料室に流入してくる洗浄液と塗料室から排出される洗浄液とが混じり合わない。よって、従来技術とは異なり、洗浄液の充填及び排出を交互に行う必要がなくなり、洗浄液の充填及び排出を同時に行うことができる。そしてこの構造であると、塗料室内において洗浄液を流動させることができるため、塗料室内を短時間で効率よく洗浄することができ、洗浄液の使用量を低減することができる。また、本発明の塗料カートリッジを用いれば、1つのカートリッジで複数色の色替え塗装を行うことができるため、移載装置等の小型化を図ることができる。
【0012】
手段2に記載の発明は、手段1において、前記袋支持体はその基端側に2重構造部を有する中空状であり、前記充填用経路が前記袋支持体における前記2重構造部の中心部に設けられ、前記排出用経路が前記2重構造部の外周部に設けられていることをその要旨とする。
【0013】
従って、手段2に記載の発明によると、充填用経路を袋支持体における2重構造部の中心部に設けているため、充填用経路の終端を塗料室の上部領域まで延設しやすくなり、その結果塗料室内の多くの領域に洗浄液を行き渡らせることが可能となる。また、排出用経路の終端が袋支持体の基端側に位置することとなるため、塗料室の最下部領域にて洗浄液を効率よく回収することができる。よって、塗料室内において洗浄液を効率よく流動させることができ、洗浄効率を高めることができる。またこの場合、充填用経路と排出用経路とを別々の箇所に設ける場合と比較して、少ないスペースで各経路を設けることができ、ベース部の大型化を回避することができる。
【0014】
手段3に記載の発明は、手段2において、前記袋支持体において前記2重構造部よりも先端側の外周面には、複数の噴出穴が形成されていることをその要旨とする。
【0015】
従って、手段3に記載の発明によると、袋支持体の外周面に形成された複数の噴出穴から塗料室全体に洗浄液を効率よく流動させることができ、洗浄効率を高めることができる。また、複数の噴出穴は、袋支持体の先端部に位置するものほど仰角が大きくなっていることがより好ましい。このようにすると、各噴出穴から異なる角度で洗浄液が噴出されるため塗料室全体に洗浄液を拡散させることができ、洗浄効率をより高めることができる。
【0016】
手段4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗料カートリッジの洗浄方法であって、前記充填用経路を通じて洗浄液を前記塗装室内に供給するのと同時に、前記排出用経路を通じて前記洗浄液を前記塗装室内から排出することを特徴とする塗料カートリッジの洗浄方法をその要旨とする。
【0017】
従って、手段4に記載の発明によると、洗浄液の充填及び排出を同時に行うことにより、塗料室内において洗浄液を流動させることができる。このため、塗料室を短時間で効率よく洗浄することができ、洗浄液の使用量を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によると、塗料バッグの洗浄を短時間で効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態における塗装機を示す概略断面図。
【図2】本実施の形態における塗料カートリッジを示す断面図。
【図3】本実施の形態における塗料充填システムを示す構成図。
【図4】別の実施の形態における塗料カートリッジを示す断面図。
【図5】従来技術における塗料カートリッジを示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、塗装機の構成について説明する。図1に示されるように、塗装機1は、塗装用ロボットのアーム2の先端に装着されている。塗装機本体3の正面には、塗装機本体3に内蔵されたエアモータ4bの管状回転軸4aを介して、回転霧化頭4が回転可能に取り付けられている。なお、この回転霧化頭4には、図示しない高電圧発生器から高電圧が印加されるようになっている。即ち、塗装機1は、塗料を負に帯電し、自動車ボディなどの被塗装物をアースした状態で、塗装を行う静電塗装機である。
【0022】
また、塗装機本体3の背面に設けられた装着部3aには、塗料カートリッジ10が着脱可能に取り付けられている。この塗料カートリッジ10が備えるカートリッジ本体11は、耐溶剤性の樹脂からなり、筒状本体部11a、蓋部11b及びベース部11cから構成されている。筒状本体部11aは、両端にて開口するとともに、上端部の開口部分が蓋部11bによって塞がれているとともに、下端部の開口部分がベース部11cによって塞がれている。ベース部11cは、塗装機本体3の装着部3aに接続可能な接続端面11f(外端面)を有している。
【0023】
図1及び図2に示されるように、カートリッジ本体11内には塗料バッグ12が設けられている。塗料バッグ12は、可撓性を有する樹脂製のバッグであり、変形可能となっている。塗料バッグ12は、カートリッジ本体11の内部領域を、塗料が充填される塗料室13と、塗料を塗料室13から押し出すための塗料押出液が給排される塗料押出液室14とに区画しており、塗料と塗料押出液との接触を防止するようになっている。塗料バッグ12は、一端側に開口部を有する袋状に形成されており、その内部が塗料室13となる。また、塗料バッグ12の開口端側にはスパウト15が設けられており、このスパウト15により塗料バッグ12がベース部11cに固定されている。スパウト15は、塗料充填時及び塗料排出時に塗料が通過する通路を有している。ここで、本実施の形態で用いられる塗料は、導電性を有する静電塗装用水性塗料であり、本実施形態で用いられる塗料押出液は、絶縁性を有する有機溶剤などの油性透明液体である。
【0024】
なお、塗料バッグ12は、塗料押出液室14内に塗料押出液が充填された際に変形して収縮する。これに伴い、塗料バッグ12内(塗料室13内)の塗料はカートリッジ本体11の外部領域に押し出される。また、塗料バッグ12は、内部(塗料室13内)に塗料が充填された際に変形して膨張する。これに伴い、縮小された塗料押出液室14内の塗料押出液は、カートリッジ本体11の外部領域に押し出される。本実施形態において、塗料室13(塗料バッグ12)の最大容量は約500ccに設定され、塗料押出液室14の最大容量は約1000ccに設定されている。
【0025】
図2に示されるように、塗料カートリッジ10は、塗料押出液室14とカートリッジ本体11の外部領域との間を連通しうる2系統の塗料押出液移動経路18a,18bを有している。一方の塗料押出液移動経路18aは、筒状本体部11aの内壁面近傍に配置され、他方の塗料押出液移動経路18bは、塗料押出液移動経路18aに対し塗料バッグ12を挟んで対向する内壁面近傍に配置されている。塗料押出液移動経路18aは、ベース部11cの外周部を貫通する貫通孔19aと、同貫通孔19a内に基端部が挿入される塗料押出液移動管20とによって構成されている。塗料押出液移動管20は、ベース部11cの内端面11gの外周部から塗料押出液室14内に突出している。一方、塗料押出液移動経路18bは、ベース部11cを貫通する貫通孔19bのみによって構成されるため、内端面11gから塗料押出液室14内に塗料押出液移動管20などが突出していない。
【0026】
各塗料押出液移動経路18a,18bは、塗料押出液室14内にて開口する開口部21a,21bをそれぞれ有している。それぞれの開口部21a,21bは、前記接続端面11fからの距離が互いに異なっている。具体的に言うと、接続端面11fから遠い位置にある開口部21a(即ち、塗料押出液移動経路18aを構成する塗料押出液移動管20の先端開口部)は、前記蓋部11bの中央部近傍に位置している。また、塗料押出液移動管20の先端開口部21aは、前記塗料バッグ12の上方にて開口しているため、塗料バッグ12に塗料押出液移動管20が引っ掛かることを防止できる。一方、接続端面11fから近い位置にある開口部21b(即ち、塗料押出液移動経路18bの開口部)は、カートリッジ本体11の内端面11gに位置している。
【0027】
図1及び図2に示されるように、各塗料押出液移動経路18a,18bには、塗料押出液ストップ弁22a,22bがそれぞれ設けられている。各塗料押出液ストップ弁22a,22bは、ベース部11cの接続端面11f側に開口する各ポート23a,23b内に設けられている。各塗料押出液ストップ弁22a,22bは、塗装機1に取り付けられたときに各塗料押出液移動経路18a,18bを開状態とし、塗料押出液室14とカートリッジ本体11の外部領域との間を連通させる。また、各塗料押出液ストップ弁22a,22bは、塗装機1に取り付けられていないときに各塗料押出液移動経路18a,18bを閉状態とし、塗料押出液室14とカートリッジ本体11の外部領域との間の連通を遮断させる。
【0028】
図2に示されるように、塗料カートリッジ10には、塗料室13とカートリッジ本体11の外部領域との間を連通しうる2系統の塗料移動経路(充填用経路17a及び排出用経路17b)を構成するフィードパイプ16が設けられている。フィードパイプ16は、ベース部11cの内端面11gにて突設されるとともにその内端面11gに固定された塗料バッグ12の塗料室13内に挿入された状態で配置されている。フィードパイプ16は、その基端側に2重構造部16aを有する中空状の袋支持体であり、その2重構造部16aがスパウト15内に挿入された状態で固定されている。このフィードパイプ16において、2重構造部16aの中心部が充填用経路17aを構成し、2重構造部16aの外周部が排出用経路17bを構成している。つまり、充填用経路17aは断面円形状の通路であり、排出用経路17bは断面円環状の通路であり、各経路17a,17bは同心円状(円の中心が重なるように)に設けられている。
【0029】
また、ベース部11cの接続端面11fにおける略中央部分には、充填用ポート25aと排出用ポート25bとが開口している。充填用ポート25aは、フィードパイプ16の充填用経路17aを通して塗料室13に連通している。また、排出用ポート25bは、フィードパイプ16の排出用経路17bを通して塗料室13に連通している。さらに、ベース部11cにおける充填用ポート25a及び排出用ポート25bには、充填用経路17a及び排出用経路17bを開閉するための塗料ストップ弁26a,26bが設けられている。
【0030】
フィードパイプ16において、2重構造部16aよりも先端側の外周面には、その外周面の全体にわたって、充填用経路17aに連通する複数の噴出穴16bが形成されるとともに、その先端部にも噴出穴16bが形成されている。フィードパイプ16の外周面に形成されている各噴出穴16bは、先端部に位置するものほど仰角が大きくなっている。即ち、フィードパイプ16において基端部寄りに形成されている噴出穴16bは、図2では斜め下方向に洗浄液を吐出するようになっている。フィードパイプ16において先端部寄りに形成されている噴出穴16bは、図2では斜め上方向に洗浄液を吐出するようになっている。それらの中間に位置する噴出穴16bは、図2ではほぼ水平方向に洗浄液を吐出するようになっている。また、フィードパイプ16における2重構造部16aの上端側には、排出用経路17bに連通する導入穴16cが設けられている。この導入穴16cは、塗料バッグ12の開口端(スパウト15)の近傍に設けられている。さらに、フィードパイプ16の先端部は、同フィードパイプ16の他の部分の外径よりも小さい小径部となっており、その小径部に、略円筒状をなす保護キャップ28が装着されている。
【0031】
図1に示されるように、フィードパイプ16の充填用経路17aは、前記塗料ストップ弁26a介して前記塗装機本体3内の塗料吐出通路5に連通している。塗料吐出通路5は、前記管状回転軸4aを挿通しており、前記塗料室13から押し出された塗料を前記回転霧化頭4に供給する通路である。また、塗料吐出通路5上には、塗料吐出通路5を連通または遮断するトリガバルブ7が設けられている。
【0032】
一方、塗料押出液移動経路18aは、前記塗料押出液ストップ弁22aを介して塗装機本体3内の塗料押出液通路6に連通している。塗料押出液通路6は、前記塗装用ロボットのアーム2に沿って延びる配管9を介して前記塗料カートリッジ10の塗料押出液室14内に塗料押出液を供給する通路である。また、塗料押出液通路6上には、塗料押出液通路6を連通または遮断するトリガバルブ8が設けられている。なお、本実施形態のトリガバルブ7,8は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。
【0033】
本実施の形態における塗料カートリッジ10は、図3に示される塗料充填システム30に取り付けられた状態で塗料バッグ12の塗料室13内に塗料が充填されるようになっている。塗料充填システム30は、塗料充填装置31、塗料押出液戻り配管33、塗料押出液送り配管34などを備えている。塗料充填装置31は、塗料押出液戻り配管33及び塗料押出液送り配管34を介して塗料押出液貯留容器(図示略)に接続されている。塗料押出液貯留容器は、塗料押出液を溜めておくための容器である。
【0034】
塗料充填装置31にはカートリッジ取付部35が設けられ、カートリッジ取付部35の上面には塗料カートリッジ10が前記接続端面11fを下向きにして着脱可能に取り付けられる。この塗料カートリッジ10の取付時において塗料押出液ストップ弁22a,22bは開状態となる。このため、塗料充填装置31は、前記充填用経路17aを介して前記塗料室13内に塗料を充填することができる。
【0035】
カートリッジ取付部35の下面には、エア供給バルブ36a、洗浄用バルブ36b、及び複数のカラーバルブ36cを有する塗料マニホールド37が取り付けられている。塗料マニホールド37内には、カラーバルブ36cを開状態に切り替えた際に、塗料タンク38内に溜められた塗料P1を塗料室13内に導く塗料充填経路37aが設けられている。また、本実施の形態の塗料充填経路37aには、エア供給バルブ36aを開状態に切り替えた際にエア供給源39から洗浄エアA1が供給されるとともに、洗浄用バルブ36bを開状態に切り替えた際に洗浄液貯蔵タンク40から洗浄液W1(例えばシンナー)が供給されるようになっている。さらに、カートリッジ取付部35の下面には、開状態に切り替えられた際に塗料P1や洗浄液W1などを排出する排出バルブ41が取り付けられている。
【0036】
そして、カートリッジ取付部35内には、塗料室13内の塗料を排出バルブ41を介して外部に排出する塗料排出経路42が設けられている。この塗料排出経路42は、塗料カートリッジ10の排出用ポート25bに設けられている塗料ストップ弁26bに接続されている。また、塗料カートリッジ10の充填用ポート25aに接続する塗料充填経路37a上には、トリガバルブ43が設けられている。なお、本実施形態のエア供給バルブ36a、洗浄用バルブ36b、カラーバルブ36c、排出バルブ41及びトリガバルブ43は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。
【0037】
前記塗料押出液送り配管33上には、塗料押出液送り配管33を開状態または閉状態に切り替える液体供給バルブ44が設けられている。液体供給バルブ44は、開状態に切り替えられた際に、塗料押出液送り配管33及びカートリッジ取付部35を介して前記塗料押出液室14に塗料押出液W2を充填可能とするようになっている。なお、本実施形態の液体供給バルブ44は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。
【0038】
また、前記塗料押出液戻り配管34上には、塗料押出液戻り配管34を開状態または閉状態に切り替える液体排出バルブ45が設けられている。液体排出バルブ45は、開状態に切り替えられた際に、塗料押出液室14内の塗料押出液W2を排出可能とするようになっている。なお、本実施形態の液体排出バルブ45は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。
【0039】
本実施の形態の塗料充填システム30は、従来周知のCPU、ROM、RAM、入出力回路等からなるパーソナルコンピュータを主体とした制御装置(図示略)を備えている。制御装置は、エア供給バルブ36a、洗浄用バルブ36b、カラーバルブ36c、排出バルブ41、トリガバルブ43、液体供給バルブ44、及び液体排出バルブ45等と電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
【0040】
次に、上記実施の形態の塗料充填システム30を用いて塗料カートリッジ10に塗料P1を充填する充填方法を説明する。なおここでは、自動車ボディの色替え塗装を行うために前回充填された塗料とは異なる色の塗料を塗料カートリッジ10に充填する場合について説明する。
【0041】
先ず、塗装機1から塗料カートリッジ10が取り外された後、そのカートリッジ10が塗料充填装置31のカートリッジ取付部35に取り付けられる。このとき、排出用ポート25bの塗料ストップ弁26bが開状態とされるとともに、塗料押出液移動経路18a,18bの塗料押出液ストップ弁22a,22bが開状態とされる。さらに、塗料押出液送り配管33上の液体供給バルブ44が開状態とされるとともに、排出バルブ41が開状態とされる。一方、塗料押出液戻り配管34上の液体排出バルブ45と塗料充填経路37a上のトリガバルブ43とは閉状態とされる。そして、塗料押出液貯留容器(図示略)に溜められた塗料押出液W2が塗料押出液送り配管33、塗料押出液移動経路18aを介して塗料押出液室14に供給される。これにより、塗料バッグ12が収縮することで塗料室13に残存している塗料が押し出され、フィードパイプ16の排出用経路17b、ベース部11cの排出用ポート25b、カートリッジ取付部35の塗料排出経路42、及び排出バルブ41を介して塗料が排出される。この塗料の排出が完了した時点で、液体供給バルブ44が閉状態とされ、液体排出バルブ45が開状態とされる。
【0042】
さらに、塗料ストップ弁26a及びトリガバルブ43が開状態とされた後、塗料充填装置31のエア供給バルブ36a及び洗浄用バルブ36bが交互に開閉されることにより、洗浄エアA1と洗浄液W1とが塗料充填経路37a、ベース部11cの充填用ポート25aを介してフィードパイプ16の充填用経路17aに供給され、フィードパイプ16の各噴出穴16bから塗料室13内に洗浄液W1及び洗浄エアA1が噴射される。この洗浄液W1及び洗浄エアA1によって、塗料室13内に残存する塗料が洗浄され除去される。またこのとき、塗料室13内を洗浄した洗浄液W1や洗浄エアA1は、フィードパイプ16の導入穴16cから排出用経路17bに導入され、ベース部11cの排出用ポート25b、塗料排出経路42、及び排出バルブ41を通して排出される。
【0043】
そして、エア供給バルブ36a及び洗浄用バルブ36bを閉状態にして、塗料カートリッジ10の塗料バッグ12(塗料室13)内の洗浄処理を終了する。その後、所定のカラーバルブ36cが開状態とされると、塗料タンク38内の塗料P1が塗料充填経路37aやフィードパイプ16の充填用経路17a等を介して塗料バッグ12内の塗料室13に充填される。このとき、塗料バッグ12が膨張するのに伴い、塗料押出液室14が収縮される。このため、塗料押出液室14内の塗料押出液W2は、塗料押出液移動経路18bや塗料押出液戻り配管34等を介して塗料押出液貯留容器(図示略)に戻される。
【0044】
その後、塗料バッグ12内への塗料P1の充填が終了すると、塗料カートリッジ10は、塗料充填装置31のカートリッジ取付部35から取り外されて塗装機1に取り付けられる。そして、アーム2内の配管9や塗装機本体3内の塗料押出液通路6を介して塗料カートリッジ10の塗料押出液室14内に塗料押出液W2が供給されると、塗料バッグ12が収縮する。その結果、塗料バッグ12内の塗料P1は、トリガバルブ7などを介して回転霧化頭4より吐出され、塗装が実施される。
【0045】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0046】
(1)本実施の形態の塗料カートリッジ10では、充填用ポート25aと塗料室13との間を連通する充填用経路17aと、排出用ポート25bと塗料室13とを連通する排出用経路17bとの2系統の経路がフィードパイプ16とベース部11cとに設けられている。従って、塗料バッグ12内の塗料室13に充填用ポート25aから充填用経路17aを通して洗浄液W1が充填されるとともに、塗料室13内の洗浄液W1が排出用経路17bを通して排出用ポート25bから排出される。つまり、同じ経路を辿ることなく一方通行で洗浄液W1が流れることになる。しかも、充填用経路17aと排出用経路17bとが互いに独立して設けられているため、塗料室13に流入してくる洗浄液W1と塗料室13から排出される洗浄液W1とが混じり合わない。よって、従来技術とは異なり、洗浄液W1の充填及び排出を交互に行う必要がなくなり、洗浄液W1の充填及び排出を同時に行うことができる。そしてこの構造であると、塗料室13内において洗浄液W1を流動させることができるため、塗料室13内を短時間で効率よく洗浄することができ、洗浄液W1の使用量を低減することができる。また、本発明の塗料カートリッジ10を用いれば、1つのカートリッジ10で複数色の色替え塗装を行うことができるため、塗料充填装置31等を含む移載装置の小型化を図ることができる。
【0047】
(2)本実施の形態の塗料カートリッジ10では、フィードパイプ16が塗料室13の中央部近くに配置され、そのフィードパイプ16の基端側の2重構造部16aにおいて充填用経路17aの外周部に排出用経路17bが設けられている。このようにすると、塗料室13内において洗浄液W1を効率よく流動させることができ、洗浄効率を高めることができる。またこの場合、充填用経路17aと排出用経路17bとを別々の箇所に設ける場合と比較して、少ないスペースで各流路17a,17bを設けることができ、ベース部11cの大型化を回避することができる。
【0048】
(3)本実施の形態の場合、フィードパイプ16の2重構造部16aよりも先端側の外周面には、複数の噴出穴16bが形成されている。また、複数の噴出穴16bは、フィードパイプ16の先端部に位置するものほど仰角が大きくなっている。このようにすると、フィードパイプ16の各噴出穴16bから異なる角度で洗浄液W1が噴出されるため、塗料室13全体に洗浄液W1を拡散させることができる。さらに、フィードパイプ16の基端側(2重構造部16aの上端側)に導入穴16cが設けられており、その導入穴16cから洗浄液W1が排出されるので、塗料室13内における洗浄液W1の流動性をより高めることができる。
【0049】
(4)本実施の形態の場合、フィードパイプ16の充填用経路17aを介して塗料室13内に洗浄液W1と洗浄エアA1とが交互に供給されるので、少量の洗浄液W1にて塗料室13を効率よく洗浄することができる。因みに、図5に示す従来の塗料カートリッジ100では、塗料室102を洗浄するのに2リットル程度の洗浄液W1が必要であったが、本実施の形態では、0.3リットルの洗浄液W1で効率的に塗料室13を洗浄することができる。
【0050】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0051】
・上記実施の形態では、フィードパイプ16はその基端側に2重構造部16aを有し、2重構造部16aの中央部が充填用経路17aを構成し、外周部が排出用経路17bを構成するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、充填用経路及び排出用経路を構成するフィードパイプを別々に形成し、それらフィードパイプを左右に分けて配置する構成としてもよい。
【0052】
また、充填用経路17a及び排出用経路17bを構成する2重構造部16aをフィードパイプ16に形成するものであったが、袋支持体として機能するスパウト15とフィードパイプ16とによって2重構造部を構成してもよい。
【0053】
・上記実施の形態の塗料カートリッジ10では、2系統の塗料押出液移動経路18a,18bを有する構成であったが、これに限定されるものではなく、1系統の塗料押出液移動経路のみの構成に変更してもよい。
【0054】
・上記実施の形態では、フィードパイプ16の先端部に保護キャップ28を設けるものであったが、塗料バッグ12の強度が十分に保てる場合には、保護キャップ28を省略してもよい。
【0055】
・上記実施の形態の塗料カートリッジ10では、塗料バッグ12内にはフィードパイプ16のみが挿入される構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、図4に示される塗料カートリッジ10Aのように、フィードパイプ16に加えて、液体の流れを促すための液体流入材51を設けてもよい。この液体流入材51は、フィードパイプ16の外周面から張り出しており、フィードパイプ16と垂直に交わる方向に延設されている。このように液体流入材51を設けることにより、塗料バッグ12の洗浄時において、塗料室13内における洗浄液W1の流動性が向上するため、洗浄効率をより高めることができる。
【0056】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0057】
(1)手段1乃至3のいずれかにおいて、前記塗料は、静電塗装を行うための静電塗装用塗料であることを特徴とする塗料カートリッジ。
【0058】
(2)手段1乃至3のいずれかにおいて、前記塗料バッグの内部に液体の流れを促す液体流入材を設けたことを特徴とする塗料カートリッジ。
【0059】
(3)技術的思想(2)において、前記液体流入材は前記袋支持体の外周面から張り出していることを特徴とする塗料カートリッジ。
【0060】
(4)手段3において、複数の噴出穴は、前記袋支持体の先端部に位置するものほど仰角が大きくなっていることを特徴とする塗料カートリッジ。
【0061】
(5)技術的思想(4)において、前記噴出穴は、前記袋支持体の先端部にも形成されていることを特徴とする塗料カートリッジ。
【0062】
(6)手段4において、前記充填用経路を介して前記塗料室に前記洗浄液と洗浄エアとを交互に供給するようにしたことを特徴とする塗料カートリッジの洗浄方法。
【符号の説明】
【0063】
1…塗装機
10,10A…塗料カートリッジ
11…カートリッジ本体
11a…筒状本体部
11c…ベース部
11f…外端面としての接続端面
11g…内端面
12…塗料バッグ
13…塗料室
14…塗料押出液室
16…袋支持体としてのフィードパイプ
16a…2重構造部
16b…噴出穴
17a…充填用経路
17b…排出用経路
25a…充填用ポート
25b…排出用ポート
31…塗料充填装置
P1…塗料
W1…洗浄液
W2…塗料押出液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料充填装置または塗装機に着脱可能に取り付けられるカートリッジ本体と、
前記カートリッジ本体内にて変形可能に設けられ、そのカートリッジ本体の内部領域を、塗料が充填される塗料室及び前記塗料を前記塗料室から押し出すための塗料押出液が給排される塗料押出液室に区画する塗料バッグと
を備えた塗料カートリッジにおいて、
前記カートリッジ本体は、前記塗料バッグを収納する筒状本体部と、前記筒状本体部の下端部を塞ぐとともに前記塗料充填装置または前記塗装機に対して着脱可能な外端面を有するベース部と、前記ベース部の内端面にて突設されるとともに前記内端面に固定された前記塗料バッグの塗料室内に挿入された状態で配置されている袋支持体とを備え、
前記ベース部及び前記袋支持体には、前記ベース部の前記外端面にて開口する充填用ポートと前記塗料室との間を連通する充填用経路と、前記ベース部の前記外端面にて開口する排出用ポートと前記塗料室とを連通する排出用経路とが互いに独立して設けられている
ことを特徴とする塗料カートリッジ。
【請求項2】
前記袋支持体はその基端側に2重構造部を有する中空状であり、前記充填用経路が前記袋支持体における前記2重構造部の中心部に設けられ、前記排出用経路が前記2重構造部の外周部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の塗料カートリッジ。
【請求項3】
前記袋支持体において前記2重構造部よりも先端側の外周面には、複数の噴出穴が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の塗料カートリッジ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗料カートリッジの洗浄方法であって、前記充填用経路を通じて洗浄液を前記塗装室内に供給するのと同時に、前記排出用経路を通じて前記洗浄液を前記塗装室内から排出することを特徴とする塗料カートリッジの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−264350(P2010−264350A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116074(P2009−116074)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】