説明

塗料供給システム

【課題】塗装ブース流路内の塗料の圧力変動を防止できる塗料供給システムの提供。
【解決手段】塗料供給システムBは、ポンプ吐出側11からブース流路入口側21へ至る塗料往路3と、塗装フィルタ30上流側の塗料送り圧を検出する送圧センサs3と、背圧弁44と塗料タンク42とを介設し、ブース流路出口側22からポンプ吸入側12へ至る塗料還路4と、背圧弁44へのエア圧を切り替える高圧・低圧切替電磁弁45、46と、送圧センサs3が検出する塗料送り圧が目標送り圧となる様に電動プランジャーポンプ1をPID制御するとともに、目標送り圧に基づいて高圧・低圧切替電磁弁45、46を高圧または低圧に設定する塗料供給制御器5とを備える。ブースでの塗料消費中における追従性が良いので塗装ブース流路2内の塗料の圧力変動を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボディ等に塗装を行う塗料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
塗料供給ポンプを常時、一定の出力で運転すると、塗料供給ポンプの消費電力が大きいとともに、塗料供給ポンプの寿命が短くなる。
【0003】
特許文献1には、塗装ガン装備部の運転状況に応じて正規運転とセーブ運転とを自動切り換えし、正規運転では塗料供給ポンプをその吐出流量が設定正規流量値となる状態に変速制御し、セーブ運転では塗料供給ポンプをその吐出流量が設定正規流量値よりも小さい設定セーブ流量値となる状態に変速制御する塗料供給設備が記載されている。
特許文献2には、塗装ガン装備部の運転条件の変化に応じて塗装供給ポンプの出力を自動調整することによりポンプ消費動力を節減した塗料供給設備が記載されている。
特許文献3には、塗料を循環させるためのポンプと、背圧調整器と、塗装ライン中の塗料圧力を検出する圧力センサと、ポンプおよび背圧調整器を制御する制御手段とを備え、流量モードでは背圧調整器を非活動状態にし、ポンプを定速度で動作させ、圧力モードでは背圧調整器を活動状態にし、ポンプ速度を制御して塗装圧を維持する塗料循環システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−154042号公報
【特許文献2】特開2008−86998号公報
【特許文献3】特表2009−507639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、下記の課題を有する。
塗装ブースでの塗料消費は、一定でないので、塗料流路中を流れる塗料の圧力が変動し、脈動する。脈動を放置すると塗装むら等が起きるので、サージタンク等の脈動抑制機器が必要である。
【0006】
上記特許文献2は、下記の課題を有する。
塗装ガン装備部の運転スケジュールと実際の塗料消費との間でズレが生じるので、塗装ガン装備部の運転条件の変化に応じて塗装供給ポンプの出力を増減する制御では、塗料流路内を流れる塗料の圧力変動を確実に抑えることができない。
【0007】
上記特許文献3は、下記の課題を有する。
圧力モードにおいて、ポンプ内蔵の圧力センサで塗料圧力を検出しているため、ポンプの挙動を圧力センサが検知してしまい、塗料流路を流れる塗料の圧力変動が解消されず、脈動が残る。
【0008】
流量モードにおいて、背圧調整器を非活動状態にしているので、塗装タンクに大量の塗料が流入して溢れてしまう。塗料流路内の塗料の圧力が場所によってバラつきとともに、塗料流路内にエアーが混入し易い。
流量モードから圧力モードへの移行する際に、塗料流路内の塗料圧力が所定の塗装圧になるのに時間がかかる。
上記の不具合は、塗料流路が長い場合や高低差がある場合には特に顕著である。
【0009】
本発明の目的は、塗装時(高圧運転)には塗料流路を流れる塗料の圧力変動を防止でき、非塗装時(低圧運転)には塗料流路を流れる塗料の挙動の安定化が図れる塗料供給システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(請求項1について)
塗料供給システムは、塗料フィルタを往路中に介設し、電動プランジャーポンプの吐出側から塗装ブース流路の入口側へ至る塗料往路と、塗装ブース流路に接続した塗料塗布ガンと、塗料フィルタ直前の塗料往路に配され、塗料フィルタ上流側の塗料送り圧を検出する送圧センサと、エアオペレート式の背圧弁と塗料を貯留する塗料タンクとを還路中に介設し、前記塗装ブース流路の出口側から電動プランジャーポンプの吸入側へ至る塗料還路と、背圧弁直前の塗料還路に配され、背圧弁上流側の塗料戻り圧を検出する戻圧センサと、電動プランジャーポンプを駆動するためのインバーターと、背圧弁にエア圧を加えて駆動する電空レギュレータと、マイクロコンピュータを有し、インバーターおよび電空レギュレータを制御する塗料供給制御器とを備える。
【0011】
塗装ブース流路に接続した塗料塗布ガンから被噴射体へ塗料噴射が成されて塗料が消費されると、各塗装路(塗装ブース流路、塗料往路、塗料還路)内の塗料圧力が低下する。 塗料フィルタ直前の塗料往路内に配され、塗料フィルタ上流側の塗料送り圧を検出する送圧センサが検出する塗料送り圧が目標送り圧となる様にマイクロコンピュータがPID演算を行ってインバーターへ送出する制御電圧を加減して電動プランジャーポンプをフィードバック制御するため塗料送り圧が目標送り圧に維持される。
また、背圧弁上流側の塗料還路内の塗料戻り圧を検出する戻圧センサが検出する塗料戻り圧が目標戻り圧となる様にマイクロコンピュータが電空レギュレータへ送出する電気信号のレベルを調整して背圧弁を制御するため、塗料戻り圧が目標戻り圧に維持される。
【0012】
この塗料供給システムは、塗料フィルタ直前の塗料往路内の塗料送り圧が目標送り圧に維持され、背圧弁上流側の塗料還路内の塗料戻り圧が目標戻り圧に維持されるので、塗装ブース流路内の塗料の圧力変動を防止できる。
なお、塗料フィルタ直前の塗料往路内に送圧センサを配し、塗料フィルタ上流側の塗料送り圧を検出しているため、塗料往路中を流れる塗料の圧力とズレが生じ難い。また、塗料フィルタの使用期間に係わらず正確に塗料送り圧を検出できる。
【0013】
送圧センサが検出する塗料フィルタ直前の塗料送り圧が目標送り圧となる様にマイクロコンピュータがPID演算を行ってインバーターへ送出する制御電圧を加減して電動プランジャーポンプをフィードバック制御しているので、塗料往路内の塗料圧力の変化に対する追従性が良い。
【0014】
(請求項2について)
塗料塗布ガンから被噴射体への塗料噴射を司る塗装ロボットの運転状況に応じて出力される運転信号に基づいて、マイクロコンピュータが目標送り圧および目標戻り圧を設定しているので、塗料供給ポンプの消費電力を低減できる。
【0015】
具体的には、塗装ロボットが塗料塗布ガンから被噴射体へ塗料を噴射する期間は、被噴射体へ塗料が適切に噴射される様に、マイクロコンピュータが目標送り圧および目標戻り圧を高く設定する。
しかし、塗装ロボットが塗料塗布ガンから被噴射体へ塗料を噴射しない期間は、塗料固化や塗料沈降を防ぐ程度の塗料流量で塗装路内を塗料を循環させれば良いので、マイクロコンピュータが目標送り圧および目標戻り圧を低く設定する。
【0016】
(請求項3について)
塗料供給システムは、塗料フィルタを往路中に介設し、電動プランジャーポンプの吐出側から塗装ブース流路の入口側へ至る塗料往路と、塗装ブース流路に接続した塗料塗布ガンと、塗料フィルタ直前の塗料往路に配され、塗料フィルタ上流側の塗料送り圧を検出する送圧センサと、背圧弁と塗料を貯留する塗料タンクとを還路中に介設し、塗装ブース流路の出口側から電動プランジャーポンプの吸入側へ至る塗料還路と、電動プランジャーポンプを駆動するためのインバーターと、背圧弁の背圧を高圧と低圧の二段階に切り替える高圧・低圧切替電磁弁と、マイクロコンピュータを有し、インバーターおよび高圧・低圧切替電磁弁を制御する塗料供給制御器とを備える。
【0017】
塗装ブース流路に接続した塗料塗布ガンから被噴射体へ塗料噴射が成されて塗料が消費されると、各塗装路(塗装ブース流路、塗料往路、塗料還路)内の塗料圧力が低下する。 塗料フィルタ直前の塗料往路内に配され、塗料フィルタ上流側の塗料送り圧を検出する送圧センサが検出する塗料送り圧が目標送り圧となる様にマイクロコンピュータがPID演算を行ってインバーターへ送出する制御電圧を加減して電動プランジャーポンプをフィードバック制御するため塗料送り圧が目標送り圧に維持される。
また、目標送り圧に基づいてマイクロコンピュータが高圧・低圧切替電磁弁を高圧または低圧に設定するため、目標戻り圧に塗料戻り圧が近づく。
【0018】
この塗料供給システムは、塗料フィルタ直前の塗料往路内の塗料送り圧が目標送り圧に維持され、背圧弁より上流の塗料還路内の塗料戻り圧が適圧に近づくので、塗装ブース流路内の塗料の圧力変動を防止できる。
なお、塗料フィルタ直前の塗料往路内に送圧センサを配し、塗料フィルタ上流側の塗料送り圧を検出しているため、塗料往路中を流れる塗料の圧力とズレが生じ難い。また、塗料フィルタの使用期間に係わらず正確に塗料送り圧を検出できる。
【0019】
送圧センサが検出する塗料フィルタ直前の塗料送り圧が目標送り圧となる様にマイクロコンピュータがPID演算を行ってインバーターへ送出する制御電圧を加減して電動プランジャーポンプをフィードバック制御しているので、塗料往路内の塗料圧力の変化に対する追従性が良い。
【0020】
電空レギュレータを用いず、目標送り圧に基づいてマイクロコンピュータが高圧・低圧切替電磁弁を高圧・低圧の二段階に切替えているので安価である。
【0021】
(請求項4について)
塗料塗布ガンから被噴射体への塗料噴射を司る塗装ロボットの運転状況に応じて出力される運転信号に基づいて、マイクロコンピュータが目標送り圧を設定しているので、塗料供給ポンプの消費電力を低減できる。
【0022】
具体的には、塗装ロボットが塗料塗布ガンから被噴射体へ塗料を噴射する期間は、被噴射体へ塗料が適切に噴射される様に、マイクロコンピュータが目標送り圧を高く設定し、高圧・低圧切替電磁弁を高圧側に切替えて塗料戻り圧を高くする。
しかし、塗装ロボットが塗料塗布ガンから被噴射体へ塗料を噴射しない期間は、塗料固化や塗料沈降を防ぐ程度の塗料流量で塗装路内を塗料を循環させれば良いので、マイクロコンピュータが目標送り圧を低く設定し、高圧・低圧切替電磁弁を低圧側に切替えて塗料戻り圧を低くする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1に係る塗料供給システムの説明図である。
【図2】その塗料供給システムの全体の制御フローを示す説明図である。
【図3】その塗料供給システムの電動プランジャーポンプのPID制御フローを示す説明図である。
【図4】本発明の実施例2に係る塗料供給システムの説明図である。
【図5】その塗料供給システムの全体の制御フローを示す説明図である。
【図6】その塗料供給システムの電動プランジャーポンプのPID制御フローを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図4に示す塗料供給システムBは、ポンプ吐出側11からブース流路入口側21へ至る塗料往路3と、塗装フィルタ30上流側の塗料送り圧を検出する送圧センサs3と、背圧弁44と塗料タンク42とを介設し、ブース流路出口側22からポンプ吸入側12へ至る塗料還路4と、背圧弁44へのエア圧を切り替える高圧・低圧切替電磁弁45、46と、送圧センサ3が検出する塗料送り圧が目標送り圧となる様に電動プランジャーポンプ1をPID制御するとともに、目標送り圧に基づいて高圧・低圧切替電磁弁45、46を高圧または低圧に設定する塗料供給制御器5とを備える。これにより、ブースでの塗料消費中における追従性が良いので塗装ブース流路2内の塗料の圧力変動を防止できる。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1(請求項1、2に対応)に塗料供給システムAを図1〜図3に基づいて説明する。
塗料供給システムAは、電動プランジャーポンプ1の吐出側11から塗装ブース流路2の入口側21へ至る塗料往路3と、塗装ブース流路2に接続される塗料塗布ガン31、32と、塗料往路3中に介設される塗料フィルタ30と、塗料フィルタ上流側の塗料送り圧を検出する送圧センサs1と、背圧弁41と塗料タンク42とを還路中に介設し、塗装ブース流路2の出口側22から電動プランジャーポンプ1の吸入側12へ至る塗料還路4と、背圧弁41より上流の塗料還路4内の塗料戻り圧を検出する戻圧センサs2と、電動プランジャーポンプ1を駆動するためのインバーター13、背圧弁41にエア圧を加えて駆動する電空レギュレータ40、マイクロコンピュータ51を有するPLC50(プログラマブルロジックコントローラ)を配設した塗料供給制御器5とを備える。
【0026】
電動プランジャーポンプ1は、シリンダの入口側、出口側流路にボールを配し、モータシャフトの回転力をクランク機構で往復動に変換し、ロッドをシリンダ内でピストン運動させる4ボール二連式である。
塗装ブース流路2は、ツーパイプ方式であり、手吹の塗料塗布ガン31および多軸多関節の塗装ロボットにより操作される塗料塗布ガン32を流路に接続している。
【0027】
塗料フィルタ30の上流側の塗料往路3には溶接ボールバルブ33aが介設され、溶接ボールバルブ33aの上流側の塗料往路3には、塗料フィルタ30直前の塗料圧力を検出するための送圧センサs1がねじ込みバルブ33bを介して接続されている。
【0028】
塗料フィルタ30の下流側の塗料往路3には溶接ボールバルブ34が介設され、その溶接ボールバルブ34の下流には温調水熱交換器35が介設されている。
塗料タンク42は、塗料を貯溜する容器であり、電動プランジャーポンプ1の吸入側12より上流の塗料還路4に介設されている。
【0029】
背圧弁41は、エアオペレート式であり、塗料タンク42の入口側42aと塗装ブース流路2の出口側22との間の塗料還路4内に介設されている。
この背圧弁41は、弁体内を通過する塗料に背圧を加え、塗料還路4上流の塗装ブース流路2内の塗装圧を所定値に維持するためのものである。この背圧弁41の上流側は、溶接ボールバルブ43を介して塗装ブース流路2の出口側22に接続されている。
【0030】
塗料送圧に対応して送圧センサs1が出力する電気出力(4mA〜20mA)は、PLC50のA/D変換ユニット55へ送出され、PLC50のマイクロコンピュータ51は、塗料送り圧が目標送り圧となる様にPID演算を行う。
そして、D/A変換ユニット56を介してインバーター13へ送出する周波数指令(4mA〜20mA)を増減してパルス幅のデューティサイクルを変え(周期は一定)、電動プランジャーポンプ1をPWM制御する。
【0031】
また、戻圧センサs2は、背圧弁41より上流の塗料還路4内の塗料戻り圧を検出し、その塗料戻り圧に対応した電気出力(4mA〜20mA)は、PLC50のA/D変換ユニット53へ送出される。
電空レギュレータ40は、PLC50のCC−LINKユニット54が出力する電気信号(塗料圧力指令;デジタル値)に比例した、背圧弁41へ送る空気圧力を無段階に増減する器具である。
PLC50のマイクロコンピュータ51は、戻圧センサs2が検出する塗料戻り圧が目標戻り圧となる様にPID演算を行って、電空レギュレータ40へ送出する電気信号のレベルを調整して背圧弁41を制御する(図2、図3参照)。
【0032】
運転モードが自動の場合、運転目標送り圧および目標戻り圧は、塗料塗布ガン32から被噴射体への塗料噴射を司るロボット工程盤6の運転状況に応じてCC−LINKコントローラユニット57へ出力される運転信号61に基づいてマイクロコンピュータ51が設定する。なお、所定の運転状態における最適な、目標送り圧および目標戻り圧は、予め試験運転を行って決定され、タッチパネル52(図1、図2参照)で設定される。
【0033】
本実施例の塗料供給システムAは、以下の様に作動する。
塗料塗布ガンから被噴射体への塗料噴射を司るロボット工程盤6の運転状況に応じて出力される運転信号61に基づいて高圧運転を行うか低圧運転を行うかをPLC50が決定し、決定内容に基づいて目標送り圧および目標戻り圧を設定する。
なお、ロボット工程盤6が出力する運転信号61は、塗装ラインが稼働中であるか否かのライン稼働情報、塗装色の塗色情報、塗装が完了したか否かの塗装完了情報、および運転予定日時のカレンダタイマ情報である。
【0034】
塗装ロボットが塗料塗布ガン32から被噴射体へ塗料を噴射する高圧運転時は、被噴射体へ塗料が適切に噴射される様に、目標送り圧および目標戻り圧は高く設定される。また、塗装ロボットが塗料塗布ガン32から被噴射体へ塗料を噴射しない低圧運転時は、目標送り圧および目標戻り圧が低く設定される。
【0035】
塗装ブース流路2に接続した塗料塗布ガン32(または塗料塗布ガン31)から被噴射体へ塗料噴射が成されて塗料が消費されている高圧運転時は、各塗装路(塗装ブース流路2、塗料往路3、塗料還路4)内の塗料圧力が低下する。
【0036】
このため、PLC50のマイクロコンピュータ51は、送圧センサs1が検出する塗料送り圧が、高く設定した目標送り圧となる様にPID演算を行い、D/A変換ユニット56からインバーター13へ送出する周波数指令(4mA〜20mA)の電流値を増減してパルス幅のデューティサイクルを変え(周期は一定)、電動プランジャーポンプ1をPWM制御する(図2、図3参照)。
【0037】
また、PLC50のマイクロコンピュータ51は、戻圧センサs2が検出する塗料戻り圧が、高く設定した目標戻り圧となる様に、CC−LINKユニット54から電空レギュレータ40へ送出する電気信号(塗料圧力指令)のレベルを増減して背圧弁41を制御する(図2、図3参照)。
これにより、塗料塗布ガン32から被噴射体への塗料噴射に適した高い目標送り圧に塗料送り圧が維持される。
【0038】
塗装ブース流路2に接続した塗料塗布ガン32から被噴射体への塗料噴射を停止して塗料が消費されない低圧運転時は、各塗装路(塗装ブース流路2、塗料往路3、塗料還路4)内の塗料圧力が上昇していく。
【0039】
このため、PLC50のマイクロコンピュータ51は、送圧センサs1が検出する塗料送り圧が、低く設定した目標送り圧となる様にPID演算を行い、D/A変換ユニット56からインバーター13へ送出する周波数指令(4mA〜20mA)の電流値を増減してパルス幅のデューティサイクルを変え(周期は一定)、電動プランジャーポンプ1をPWM制御する(図2、図3参照)。
【0040】
また、PLC50のマイクロコンピュータ51は、戻圧センサs2が検出する塗料戻り圧が、低く設定した目標戻り圧となる様に、CC−LINKユニット54から電空レギュレータ40へ送出する電気信号(塗料圧力指令)のレベルを増減して背圧弁41を制御する(図2、図3参照)。
これにより、塗料送り圧が低い目標送り圧に維持される。
【0041】
本実施例の塗料供給システムAは、以下の利点を有する。
高圧運転時において、塗料供給システムAは、塗料フィルタ30上流側の塗料往路3内の塗料送り圧が高圧運転に好適な高い目標送り圧に維持され、背圧弁41上流側の塗料還路4内の塗料戻り圧が高圧運転に好適な高い目標戻り圧に維持されるので、各塗装路(塗装ブース流路2、塗料往路3、塗料還路4)内の塗料の圧力変動を防止できる。
【0042】
また、低圧運転時では、塗料フィルタ30上流側の塗料往路3内の塗料送り圧が低圧運転に好適な低い目標送り圧に維持され、背圧弁41上流側の塗料還路4内の塗料戻り圧が低圧運転に好適な低い目標戻り圧に維持されるので、各塗装路(塗装ブース流路2、塗料往路3、塗料還路4)内の塗料の圧力変動を防止できる。
【0043】
本実施例の塗料供給システムAは、各塗装路内の塗料の圧力変動を防止できるため、サージタンク等の脈動抑制機器が不要である。
【0044】
本実施例の塗料供給システムAは、手動背圧弁を手動操作したり、圧力センサの目視値に基づいて塗装ポンプ能力を調整する等の手動操作が不要であり、塗料供給制御器5側で全て行えるので手間がかからないとともに、安全性に優れる。
【0045】
送圧センサs1が検出する塗料送り圧が目標送り圧となる様にPLC50のマイクロコンピュータ51がPID演算を行い、D/A変換ユニット56がインバーター13へ送出する周波数指令(4mA〜20mA)の電流値を増減して電動プランジャーポンプ1をフィードバック制御しているので、塗料往路3内の塗料圧力の変化に対する追従性が良い。
【0046】
塗料塗布ガン32から被噴射体への塗料噴射を司るロボット工程盤6の運転状況に応じて出力される運転信号61に基づいて高圧運転を行うか低圧運転を行うかをPLC50が決定し、決定内容に基づいて目標送り圧および目標戻り圧を設定しているので、低圧運転を行う分だけ電動プランジャーポンプ1の消費電力を低減できる。
【0047】
具体的には、塗装ロボットが塗料塗布ガン32から被噴射体へ塗料を噴射する高圧運転時は、被噴射体へ塗料が適切に噴射される様に、PLC50のマイクロコンピュータ51が目標送り圧および目標戻り圧を高く設定する。また、塗装ロボットが塗料塗布ガン32から被噴射体へ塗料を噴射しない塗装停止時は、塗料固化や塗料沈降を防ぐ程度の塗料流量で塗装路内を塗料を循環させれば良いので、PLC50のマイクロコンピュータ51が目標送り圧および目標戻り圧を低く設定する。
【実施例2】
【0048】
本発明の実施例2(請求項3、4に対応)に塗料供給システムBを図4〜図6に基づいて説明する。
塗料供給システムBは、電動プランジャーポンプ1の吐出側11から塗装ブース流路2の入口側21へ至る塗料往路3と、塗装ブース流路2に接続される塗料塗布ガン31、32と、塗装往路3中に介設される塗料フィルタ30と、塗料フィルタ30上流側の塗料送り圧を検出する送圧センサs3と、背圧弁44と塗料タンク42とを還路中に介設し、塗装ブース流路2の出口側22から電動プランジャーポンプ1の吸入側12へ至る塗料還路4と、電動プランジャーポンプ1を駆動するためのインバーター13、背圧弁44の背圧を切替えるための高圧・低圧切替電磁弁45、46、およびマイクロコンピュータ51を有するPLC50を配設した塗料供給制御器5とを備える。
【0049】
電動プランジャーポンプ1は、実施例1と同じもので、シリンダの入口側、出口側流路にボールを配し、モータシャフトの回転力をクランク機構で往復動に変換し、ロッドをシリンダ内でピストン運動させる4ボール二連式である。
塗装ブース流路2は、実施例1と同様のツーパイプ方式であり、手拭の塗料塗布ガン31および軸多関節の塗装ロボットにより制御される塗料塗布ガン32を流路に接続している。
【0050】
塗料フィルタ30の上流側の塗料往路3には溶接ボールバルブ33aが介設され、溶接ボールバルブ33aの上流側の塗料往路3には、塗料フィルタ30直前の塗料圧力を検出するための送圧センサs3がねじ込みバルブ33bを介して接続されている。
【0051】
塗料フィルタ30の下流側の塗料往路3には溶接ボールバルブ34が介設され、その溶接ボールバルブ34の下流には温調水熱交換器35が介設されている。
塗料タンク42は、塗料を貯溜する容器であり、電動プランジャーポンプ1の吸入側12より上流の塗料還路4に介設されている。
【0052】
背圧弁44は、塗料タンク42の入口側42aと塗装ブース流路2の出口側22との間の塗料還路4内に介設され、弁体内を通過する塗料に背圧を加えている。
高圧・低圧切替電磁弁45、46は、背圧弁44の背圧を、高圧または低圧に設定するためのものである。
【0053】
塗料送圧に対応して送圧センサs3が出力する電気出力(4mA〜20mA)は、PLC50のA/D変換ユニット55へ送出され、PLC50のマイクロコンピュータ51は、塗料送り圧が目標送り圧となる様にPID演算を行う。
そして、D/A変換ユニット56を介してインバーター13へ送出する周波数指令(4mA〜20mA)を増減してパルス幅のデューティサイクルを変え(周期は一定)、電動プランジャーポンプ1をPWM制御する。
更に、PLC50のマイクロコンピュータ51は、目標送り圧の大きさに基づいて高圧・低圧切替電磁弁45、46を高圧または低圧に設定する。
【0054】
運転モードが自動の場合、運転目標送り圧は、塗料塗布ガン32から被噴射体への塗料噴射を司るロボット工程盤6の運転状況に応じてMELSEC NET/H ユニット58へ出力される運転信号61に基づいてマイクロコンピュータ51が設定する。なお、所定の運転状態における最適な、目標送り圧は、予め試験運転を行って決定され、タッチパネル52(図4、図5参照)で設定される。
【0055】
本実施例の塗料供給システムBは、以下の様に作動する。
塗料塗布ガン32から被噴射体への塗料噴射を司る塗装ロボットの運転状況に応じてロボット工程盤6から出力される運転信号61に基づいて、マイクロコンピュータ51が目標送り圧を設定する。
【0056】
塗装ロボットが塗料塗布ガン32から被噴射体へ塗料を噴射する高圧運転時は、被噴射体へ塗料が適切に噴射される様に、目標送り圧は高く設定される。また、塗装ロボットが塗料塗布ガン32から被噴射体へ塗料を噴射しない低圧運転時は、目標送り圧が低く設定される。
【0057】
塗装ブース流路2に接続した塗料塗布ガン32(または塗料塗布ガン31)から被噴射体へ塗料噴射が成されて塗料が消費されている塗装運転時は、各塗装路(塗装ブース流路2、塗料往路3、塗料還路4)内の塗料圧力が低下する。
【0058】
このため、PLC50のマイクロコンピュータ51は、送圧センサs3が検出する塗料送り圧が、高く設定した目標送り圧となる様にPID演算を行い、D/A変換ユニット56からインバーター13へ送出する周波数指令(4mA〜20mA)の電流値を増減してパルス幅のデューティサイクルを変え(周期は一定)、電動プランジャーポンプ1をPWM制御する。
更に、PLC50のマイクロコンピュータ51は、高く設定した目標送り圧に対応して、出力ユニット59を介して高圧・低圧切替電磁弁45、46を高圧側に設定し、背圧弁44の背圧を高圧側に切り替える。
これにより、塗料塗布ガン32から被噴射体への塗料噴射に適した高い目標送り圧に塗料送り圧が維持される。
【0059】
また、塗装ブース流路2に接続した塗料塗布ガン32から被噴射体への塗料噴射を停止して塗料が消費されない低圧運転時は、各塗装路(塗装ブース流路2、塗料往路3、塗料還路4)内の塗料圧力が上昇していく。
【0060】
このため、PLC50のマイクロコンピュータ51は、送圧センサs3が検出する塗料送り圧が、低く設定した目標送り圧となる様にPID演算を行い、D/A変換ユニット56からインバーター13へ送出する周波数指令(4mA〜20mA)の電流値を増減してパルス幅のデューティサイクルを変え(周期は一定)、電動プランジャーポンプ1をPWM制御する(図5、図6)。
【0061】
また、PLC50のマイクロコンピュータ51は、低く設定された目標送り圧に対応して高圧・低圧切替電磁弁45、46を低圧側に設定し、背圧弁44の背圧を低圧側に切り替える。
これにより、塗料固化や塗料沈降を防ぐ程度の塗料流量で塗料が塗装路内を循環する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の塗料供給システムを用いれば、塗装路内の塗装圧力の変動を防止できる。
【符号の説明】
【0063】
A、B 塗料供給システム
s1 送圧センサ
s2 戻圧センサ
s3 送圧センサ
1 電動プランジャーポンプ
2 塗装ブース流路
3 塗料往路
4 塗料還路
5 塗料供給制御器
11 吐出側
12 吸入側
13 インバーター
21 入口側
31 塗料フィルタ
40 電空レギュレータ
41 背圧弁
42 塗料タンク
42a 入口側
51 マイクロコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料フィルタを往路中に介設し、電動プランジャーポンプの吐出側から塗装ブース流路の入口側へ至る塗料往路と、
塗装ブース流路に接続した塗料塗布ガンと、
塗料フィルタ直前の塗料往路に配され、塗料フィルタ上流側の塗料送り圧を検出する送圧センサと、
エアオペレート式の背圧弁と塗料を貯留する塗料タンクとを還路中に介設し、前記塗装ブース流路の出口側から電動プランジャーポンプの吸入側へ至る塗料還路と、
背圧弁直前の塗料還路に配され、背圧弁上流側の塗料戻り圧を検出する戻圧センサと、 前記電動プランジャーポンプを駆動するためのインバーターと、
前記背圧弁にエア圧を加えて駆動する電空レギュレータと、
マイクロコンピュータを有し、前記インバーターおよび前記電空レギュレータを制御する塗料供給制御器とを備えた塗料供給システムであって、
前記マイクロコンピュータは、前記送圧センサが検出する塗料送り圧が目標送り圧となる様にPID演算を行って前記インバーターへ送出する制御電圧を加減して前記電動プランジャーポンプをフィードバック制御するとともに、
前記戻圧センサが検出する塗料戻り圧が目標戻り圧となる様に前記電空レギュレータへ送出する電気信号のレベルを調整して前記背圧弁を制御することを特徴とする塗料供給システム。
【請求項2】
前記マイクロコンピュータは、前記塗料塗布ガンから被噴射体への塗料噴射を司る塗装ロボットの運転状況に応じて出力される運転信号に基づいて、前記目標送り圧および前記目標戻り圧を設定することを特徴とする請求項1に記載の塗料供給システム。
【請求項3】
塗料フィルタを往路中に介設し、電動プランジャーポンプの吐出側から塗装ブース流路の入口側へ至る塗料往路と、
塗装ブース流路に接続した塗料塗布ガンと、
塗料フィルタ直前の塗料往路に配され、塗料フィルタ上流側の塗料送り圧を検出する送圧センサと、
背圧弁と塗料を貯留する塗料タンクとを還路中に介設し、前記塗装ブース流路の出口側から電動プランジャーポンプの吸入側へ至る塗料還路と、
前記電動プランジャーポンプを駆動するためのインバーターと、
前記背圧弁の背圧を高圧と低圧の二段階に切り替える高圧・低圧切替電磁弁と、
マイクロコンピュータを有し、前記インバーターおよび前記高圧・低圧切替電磁弁を制御する塗料供給制御器とを備えた塗料供給システムであって、
前記マイクロコンピュータは、前記送圧センサが検出する塗料送り圧が目標送り圧となる様にPID演算を行って前記インバーターへ送出する制御電圧を加減して前記電動プランジャーポンプをフィードバック制御するとともに、前記目標送り圧の大きさに基づいて前記高圧・低圧切替電磁弁を高圧または低圧に設定することを特徴とする塗料供給システム。
【請求項4】
前記マイクロコンピュータは、前記塗料塗布ガンから被噴射体への塗料噴射を司る塗装ロボットの運転状況に応じて出力される運転信号に基づいて、前記目標送り圧を設定することを特徴とする請求項3に記載の塗料供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−152710(P2012−152710A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15453(P2011−15453)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【特許番号】特許第4938896号(P4938896)
【特許公報発行日】平成24年5月23日(2012.5.23)
【出願人】(592001403)株式会社IEC (5)
【Fターム(参考)】