説明

塗料組成物およびこの塗料組成物を用いた硬化塗膜形成性方法

【目的】
空気中にて低照射量の紫外線照射及び照射後の短時間加熱によって効率よく硬化して塗膜性能の優れた塗膜を形成できる塗料を提供する。
【構成】
(C)1分子中に、t−ブチルエステル基1個以上とグリシジル基1個以上とを有する化合物及び(D)光潜在性酸発生剤を含有し、さらに、1分子中にt−ブチルエステル基2個以上を有する化合物(A)及び/又は1分子中にグリシジル基2個以上を有する化合物(B)を含有することを特徴とする塗料組成物、及び該塗料組成物を塗装し、該塗膜に紫外線を照射した後、加熱することを特徴とする硬化塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な塗料組成物、更に詳しくは、紫外線照射と照射後の短時間加熱とを併用することによって塗膜性能に優れた硬化塗膜を形成でき、かつ一液での貯蔵安定性にも優れた塗料組成物および硬化塗膜形成性方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カルボキシル基を有する化合物とグリシジル基を有する化合物との組合せからなる塗料組成物は公知であり、この組合せの塗料組成物は、得られる塗膜の耐候性、耐薬品性、耐熱性などに優れていることから広く利用されている。しかしながら、カルボキシル基とグリシジル基とは反応性が高いため、この組合せの塗料組成物は、経時でゲル化が生じたり、可使時間が短くなるなどの問題があった。
【0003】
上記問題を解決するものとして、特開平1−104646号公報には、カルボキシル基をt−ブチルエステルとしてブロック化した共重合体とグリシジル基を有する化合物又は樹脂とからなる熱硬化型組成物が提案されており、ブロック化されたt−ブチルエステル基は、加熱によりイソブテン脱離分解して遊離のカルボキシル基を再生させ、再生されたカルボキシル基とグリシジル基との反応によって硬化することができるものである。しかしながら、この提案の組成物においては、t−ブチルエステル基の熱分解に170〜200℃程度の高温が必要とされ、硬化反応性、省エネルギー化の観点から満足できるものではなかった。
【0004】
また、特開平4−175376号公報には、t−ブチルエステル基を2個以上有する(共)重合体、カルボキシル基と反応性の官能基及び熱潜在性酸触媒を含有する熱硬化性組成物が提案されている。この組成物は、加熱により熱潜在性酸触媒から発生するプロトン酸を利用してt−ブチルエステル基のイソブテン脱離分解により遊離のカルボキシル基を再生することを促進させるものであるが、熱潜在性酸触媒を活性化させプロトン酸を発生させるための加熱時間が必要であり、短時間の加熱ではプロトン酸が発生せず、硬化が十分に進行しないので、短時間硬化性、省エネルギー化の観点から、必ずしも十分に満足しうるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平1−104646号公報
【特許文献2】特開平4−175376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、一液型でも良好な貯蔵安定性を有し、かつ短時間加熱によって塗膜性能などに優れる塗膜を形成できる塗料組成物を提供することである。
【0007】
また、本発明の目的は、上記塗料組成物を用いて短時間硬化ができる塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、t−ブチルエステル基を有する化合物とグリシジル基を有する化合物を用いた系に光潜在性酸発生剤を使用し、紫外線照射と加熱とを併用することによって、すなわち、紫外線照射によって塗装された塗膜中にプロトン酸が発生し、このプロトン酸の触媒作用によってt−ブチルエステル基が容易にイソブテン脱離分解して遊離のカルボキシル基を生成し、生成したカルボキシル基が塗膜中のグリシジル基と反応して硬化することによって上記目的を達成することができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
しかして、本発明によれば、(C)1分子中に、t−ブチルエステル基1個以上とグリシジル基1個以上とを有する化合物及び(D)光潜在性酸発生剤を含有し、さらに、1分子中にt−ブチルエステル基2個以上を有する化合物(A)及び/又は1分子中にグリシジル基2個以上を有する化合物(B)を含有することを特徴とする塗料組成物が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、上記塗料組成物を塗装し、該塗膜に紫外線を照射した後、加熱することを特徴とする硬化塗膜形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗料組成物は、t−ブチルエステル基及びグリシジル基を含有する化合物(C)をバインダ成分として含有し、さらにt−ブチルエステル基含有化合物(A)及び/又はグリシジル基含有化合物(B)をバインダ成分として含有しており、光潜在性酸発生剤(C)の存在下で、窒素封入などの設備を必要とすることなく、低照射量の紫外線照射及び照射後の短時間加熱によって効率よく硬化することができ、薄膜においても塗膜硬度などの塗膜性能に優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、本発明組成物について詳細に説明する。
【0013】
本発明組成物は、紫外線照射と加熱によって硬化可能な塗料組成物であり、本発明の組成物は、下記(C)及び(D)成分を含有し、さらに(A)及び/又は(B)成分を含有する組成物である。以下に本発明組成物における各成分について説明する。
【0014】
t−ブチルエステル基を有する化合物(A)
本発明組成物における(A)成分は、1分子中にt−ブチルエステル基を2個以上有する化合物であって樹脂をも包含するものであり、カチオンを触媒としてt−ブチルエステル基がイソブテンを脱離して遊離のカルボキシル基を生成できる化合物である。
【0015】
t−ブチルエステル基を有する化合物(A)としては、例えば、ジフェノール酸−t−ブトキシカルボニルメチルエステル類、ビスーt−ブトキシカルボニルメチルチモールフタレイン、トリスフェノール類のt−ブトキシカーボネート、t−ブトキシカルボニルアミノ基を有するエチレン性芳香族化合物など;また、t−ブチルアクリレートまたはt−ブチルメタクリレートの単独重合体、あるいはt−ブチルアクリレートまたはt−ブチルメタクリレートと下記の如きその他の重合性不飽和基含有モノマーとの共重合体などを挙げることができる。
【0016】
上記共重合体を構成するその他の重合性不飽和基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のC1 〜C24のアルキルまたはシクロアルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のC2 〜C8 ヒドロキシアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸のC2 〜C8 ヒドロキシアルキルエステルにε−カプロラクトンを開環付加してなるε−カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有不飽和モノマー類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート等の含フッ素不飽和モノマー類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチ ロール(メタ)アクリルアミドブチルエーテル等の重合性アミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の重合性ニトリル類;シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、「アロニックスM110」(東亜合成(株)製、商品名、パラクミルフェノール・エチレンオキシド変性アクリレート)、アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0017】
上記共重合体は、該共重合体1kg中に、t−ブチルエステル基を0.7モル/kg〜6.4モル/kg、好ましくは2.0モル/kg〜5.0モル/kgの濃度の範囲内有することが適当であり、また、数平均分子量が3,000〜50,000の範囲内にあることが適当である。
【0018】
グリシジル基含有化合物(B)
本発明組成物における(B)成分は、1分子中にグリシジル基を2個以上有する化合物であり樹脂をも包含する。化合物(B)は、(B)成分中のグリシジル基が、化合物(A)中のt−ブチルエステル基がカチオンを触媒としてイソブテンを脱離して生成される遊離のカルボキシル基と、加熱下に反応して架橋することができる。
【0019】
1分子中にグリシジル基を2個以上有する化合物の具体例としては、例えば、ジグリシジルエーテル、2−グリシジルフェニルグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性不飽和モノマーと、必要に応じて、その他の重合性不飽和モノマーとの(共)重合体等を挙げることができる。
【0020】
上記(B)成分であることができる共重合体を構成する、その他の重合性不飽和モノマーとしては、前記t−ブチルエステル基を有する化合物(A)が共重合体である場合の、その他の重合性不飽和モノマーと同様のモノマーを挙げることができる。この共重合体は、該共重合体1kg中に、グリシジル基を0.7モル/kg〜6.4モル/kg、好ましくは2.0モル/kg〜5.0モル/kgの濃度の範囲内有することが適当であり、また、数平均分子量が3,000〜50,000の範囲内にあることが適当である。
【0021】
t−ブチルエステル基及びグリシジル基を含有する化合物(C)
本発明組成物の(C)成分であるt−ブチルエステル基及びグリシジル基を含有する化合物は、1分子中にt−ブチルエステル基1個以上とグリシジル基1個以上とを有する化合物であり、樹脂も包含する。化合物(C)は、カチオンによってt−ブチルエステル基がイソブテンを脱離して生成される遊離のカルボキシル基とグリシジル基とを有するため、生成されるカルボキシル基とグリシジル基との反応により化合物(C)同志で自己架橋することができる。
【0022】
化合物(C)としては、例えば、t−ブチル(メタ)アクリレートとグリシジル(メタ)アクリレートと必要に応じて、その他の重合性不飽和モノマーとを構成モノマー成分とする共重合体を挙げることができる。上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、前記t−ブチルエステル基を有する化合物(A)が共重合体である場合における、該共重合体を構成するその他の重合性不飽和モノマーと同様のモノマーを挙げることができる。
【0023】
化合物(C)となりうる上記共重合体は、該共重合体1kg中に、グリシジル基を0.7モル/kg〜6.4モル/kg、好ましくは2.0モル/kg〜5.0モル/kgの濃度の範囲内有し、t−ブチルエステル基を0.7モル/kg〜6.4モル/kg、好ましくは2.0モル/kg〜5.0モル/kgの濃度の範囲内有することが適当であり、また、数平均分子量が3,000〜50,000の範囲内にあることが適当である。
【0024】
光潜在性酸発生剤(D)
本発明の(D)成分である光潜在性酸発生剤は、紫外線の照射によってプロトン酸やカチオン性成分を発生する化合物であり、例えば、下記式(1)〜(15)で表わされるヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩及ぴその他の光潜在性酸発生剤を挙げることができる。
【0025】
Ar・X (1)
(式中、Arはアリール基、例えばフェニル基を表わし、XはBF、PF、SbF(OH)、SbF又はAsF又は下記式
【0026】
【化1】

【0027】
で表わされる基を示す)
Ar・X (2)
(式中、Ar及びXは上記と同じ意味を有する)
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表わし、nは0〜3の整数を表わし、Xは上記と同じ意味を有する)
【0030】
【化3】

【0031】
(式中、YはPF、SbF、SbF(OH)又はAsFを表わす)
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、Xは前記と同じ意味を有する)
【0034】
【化5】

【0035】
(式中、Xは前記と同じ意味を有する)
【0036】
【化6】

【0037】
(式中、Xは前記と同じ意味を有する)
【0038】
【化7】

【0039】
(式中、Rは炭素原子数7〜15のアラルキル基又は炭素原子数3〜9のアルケニル基、Rは炭素原子数1〜7の炭化水素基又はヒドロキシフェニル基、Rは酸素原子又は硫黄原子を含有していてもよい炭素原子数1〜5のアルキル基を示し、Xは前記と同じ意味を有する)
【0040】
【化8】

【0041】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数1〜12のアルキル基又は炭素原子数1〜12のアルコキシ基を表わす)
【0042】
【化9】

【0043】
(式中、R及びRは上記と同じ意味を有する)。
【0044】
【化10】

【0045】
光潜在性酸発生剤(D)の市販品としては、例えば、サイラキユアUVI−6970、同UVI−6974、同UVI−6990(以上、いずれも米国ユニオンカーバイド社製)、イルガキュア261、同264(以上、いずれもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、CIT−1682(日本曹達(株)製)、BBI−102(みどり化学社製)、アデカオプトマーSP−150、同SP−170(以上、いずれも旭電化社製)等を挙げることができる。上記化合物中、毒性、汎用性の点からPFをアニオンとする塩が好ましい。
【0046】
本発明の塗料組成物
本発明組成物はt−ブチルエステル基及びグリシジル基を含有する化合物(C)及び光潜在性酸発生剤(D)を含有し、さらに1分子中にt−ブチルエステル基2個以上を有する化合物(A)及び/又は1分子中にグリシジル基2個以上を有する化合物(B)を含有する組成物である。
【0047】
本発明組成物は、バインダ成分がt−ブチルエステル基及びグリシジル基を含有する化合物(C)に加えて、さらにt−ブチルエステル基を有する化合物(A)及び/又はグリシジル基含有化合物(B)を含有する。上記化合物(A)及び/又は化合物(B)の配合割合は特に限定されるものではないが、上記バインダ成分におけるt−ブチルエステル基の総数とグリシジル基の総数との比(当量比)が、前者/後者の比で、1.0/0.5〜1.0/1.3、好ましくは1.0/0.7〜1.0/1.0の範囲内にあることが塗膜性能、硬化性などの点から適当である。
【0048】
本発明組成物において、光潜在性酸発生剤(D)の量は、(A)、(B)及び(C)成分の合計固形分量100重量部に対して、0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部の範囲内とすることが紫外線照射、加熱後の塗膜硬度、塗膜外観(非黄変性)及び耐候性などの点から適当である。
【0049】
本発明組成物は、それぞれ、さらに必要に応じて、着色顔料、シリカなどの体質顔料、ワックス類、塗面調整剤などを含有することができる。
【0050】
本発明の塗料組成物は、以上に述べた各成分を混合し、均一な塗料組成物となるように撹拌することにより調製することができる。例えば、各成分を混合し、室温で、又は必要に応じて加温(例えば50℃程度)し、ディゾルバーなどの撹件機にて均一になるまで、例えば10分間程度撹拌することにより調製することができる。
【0051】
本発明の塗料組成物は、被塗物に塗装し、塗膜に紫外線照射し、照射後、加熱することによって硬化させることができる。塗膜が溶剤を含んでいる場合には、塗装後、加熱などにより溶剤を除去した後、紫外線が照射される。本発明の塗料組成物の塗膜に紫外線を照射すると、(A)成分又は(C)成分中のt−ブチルエステル基が分解しイソブテンが脱離して遊離のカルボキシル基が生成する。ついで加熱により、生成した遊離のカルボキシル基と(B)成分又は(C)成分中のグリシジル基とが反応し硬化がさらに進行して、塗膜性能に優れた塗膜を形成することができる。
【0052】
本発明の塗料組成物を塗装する被塗物は、特に限定されるものではなく、例えば、モルタル、コンクリート、ガラス、紙、プラスチックス;ブリキ、アルミニウム、ティンフリースチール、鉄、亜鉛、銅、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛と他の金属との合金メッキ鋼板などの金属板(この金属板には燐酸亜鉛処理やクロメート処理などの化成処理が施されていてもよい);これらの金属板に、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニルなどの樹脂フィルムが積層されてなる樹脂フィルム積層金属板;これらの金属板を成型した金属缶などを挙げることができる。
【0053】
本発明の塗料組成物は、塗装膜厚は特に限定されるものではなく、用途によって適宜選択することができ、通常、乾燥塗膜厚として約2〜50μm、好ましくは約2〜20μmの範囲内とすることができる。また、本発明の組成物は、例えば、ロールコート塗装、スプレー塗装、刷毛塗り、バーコート塗装、ローラー塗装、スクリーン印刷、輪転印刷などの方法によって塗装することができる。
【0054】
塗装後、塗膜が溶剤を含有する場合には、通常、加熱などによって溶剤を除去した後に、紫外線照射が行われる。紫外線の照射条件は塗装された組成物の種類や膜厚等に応じて適宜変えることができる。照射する紫外線の波長としては、通常、200〜450nmの範囲が適当であり、光潜在性酸発生剤の種類に応じて、感度の高い波長を有する照射源を適宜選択して使用することができる。
【0055】
紫外線の照射源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光などを挙げることができる。塗膜への照射条件は、通常、波長約200〜450nmの光で、照射量が約10〜約3000mJ/cm、特に50〜1000mJ/cmの範囲内で行うことができる。
【0056】
本発明の塗料組成物からの塗膜は、紫外線を照射後、加熱することによって硬化させることができる。その加熱条件は、塗膜中のカルボキシル基とグリシジル基とが反応可能な条件であればよく、例えば100〜250℃、好ましくは120〜230℃の温度で30秒間〜1時間、好ましくは5〜30分間程度の範囲の加熱条件が適当である。本発明の塗料組成物の塗装塗膜は、例えば、200〜230℃で30秒間〜3分間程度の短時間の硬化条件でも十分に硬化することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。また、以下、「部」及び「%」は、特に断りのない限りそれぞれ重量基準によるものとする。
【0058】
アクリル樹脂溶液の製造例
製造例1〜4
4つ口フラスコ中にトルエン58部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル30部を配合し、108℃に加熱、保持しながら、撹拌下にて、後記表1に示すモノマーと重合開始剤との混合溶液を窒素気流下で4時間かけて等速滴下した。上記混合溶液の滴下終了時から30分後、トルエン8部と2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.3部との混合溶液を窒素気流下で30分かけて等速滴下した。滴下終了後、同温度で約2時間保持した後、室温まで冷却して固形分50%の各アクリル樹脂溶液を得た。製造例4は比較例用である。得られた各アクリル樹脂溶液の樹脂固形分のDSC(示差走査型熱分析)測定によるガラス転移温度、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定による数平均分子量および1分子中の官能基の個数を合わせて表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
実施例1〜3および比較例1〜4
光を遮光した部屋で後記表2に示す組成の配合物を50℃に保持して撹拌機を用いて20分間撹拌して均一な塗料組成物を得た。
【0061】
表3における(註)はそれぞれ下記のとおりの意味を有する。
【0062】
(*1)エピコート828EL:油化シェルエポキシ(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
(*2)サイラキュアUVI−6990:ユニオンカーバイト社製、アンチモネートアニオン(SbF)を有する光潜在性酸発生剤、有効成分50%、
(*3)CIT−1682:日本曹達(株)製、光潜在性酸発生剤、
(*4)Nacure5225:米国、キング・インダストリイズ社製、熱潜在性酸発生剤、有効成分25%。
【0063】
試験塗板の作成
上記実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた各塗料組成物を、ガラス板に、乾燥膜厚が5μmとなるように塗装した。得られた塗装板に高圧水銀灯(160W/cm)を用い、塗装板との距離15cmから、エネルギー線量が80mJ/cmとなる条件にて紫外線照射を行なった後、210℃で1分間焼き付けを行ってなる塗装板を試験塗板とした。
【0064】
得られた各試験塗板について下記の試験方法に基づいて試験を行なった。また、各実施例及び比較例で得た各塗料組成物の貯蔵安定性の試験も行なった。
これらの試験結果を後記表2に示す。
【0065】
試験方法
鉛筆硬度:20℃の室内において、試験塗板の塗膜にJISK−5400 8.4.2(1990)に規定する鉛筆引っかき試験を行った。評価はやぶれ法で行った。
【0066】
貯蔵安定性:塗料組成物を100mlのガラス容器に密封した後、40℃の恒温室にて30日間貯蔵した。貯蔵前後の塗料状態を確認した。○は増粘がなく良好なことを示す。
【0067】
【表2】

【0068】
比較例3及び比較例4の塗料組成物については、紫外線照射を行なわず210℃で1分間焼き付けを行った塗装板についても試験を行ったが、紫外線照射した後210℃で1分間焼き付けした試験塗板と同様の試験結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(C)1分子中に、t−ブチルエステル基1個以上とグリシジル基1個以上とを有する化合物及び(D)光潜在性酸発生剤を含有し、さらに、1分子中にt−ブチルエステル基2個以上を有する化合物(A)及び/又は1分子中にグリシジル基2個以上を有する化合物(B)を含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
化合物(C)が、t−ブチルエステル基含有重合性不飽和化合物及びグリシジル基含有重合性不飽和化合物を構成モノマー成分として含有する共重合体である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
上記化合物(C)、化合物(A)及び化合物(B)の合計におけるt−ブチルエステル基の総数とグリシジル基の総数との当量比が、前者/後者の比で、1.0/0.5〜1.0/1.3の範囲内にある請求項1又は2記載の塗料組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物を塗装し、該塗膜に紫外線を照射した後、加熱することを特徴とする硬化塗膜形成方法。

【公開番号】特開2010−95729(P2010−95729A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7780(P2010−7780)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【分割の表示】特願平11−126882の分割
【原出願日】平成11年5月7日(1999.5.7)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】