説明

塗料組成物および灯具

【課題】シリコーン保護膜、種々の難付着性な金属材料やプラスチック材料への付着性、耐熱性に優れ、かつ揮発成分の少ない塗膜を形成できる塗料組成物;長期間にわたって反射部材の品質が保持され、かつカバーへの揮発成分の付着がきわめて少ない灯具を提供する。
【解決手段】アミノ基を有するビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物を重合してなるビニル系重合体(A)と、一分子中にエポキシ基および加水分解性シリル基を有する化合物(B)とを含み、ビニル系重合体(A)のガラス転移温度が35〜70℃である塗料組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物およびこれからなる塗膜が形成された反射部材を有する灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(自動車、バイク等)等の灯具(ヘッドライト等)における反射部材(リフレクタ、エクステンションリフレクタ等)としては、例えば、プラスチック基材の表面に金属蒸着膜を形成し、その表面にシリコーン保護膜を形成した部材が用いられている。また、反射部材の一部(光源からの光が直接当たる部分等)には、耐熱性の点から、金属材料(ステンレス、アルマイト、アルミニウム等)からなる部材が用いられることもある。
【0003】
該反射部材においては、意匠性付与の目的から、シリコーン保護膜や金属材料の表面に塗料(着色クリア塗料、メタリック塗料等)からなる塗膜をさらに形成することがある。該塗料には、得られる塗膜がシリコーン保護膜や金属材料への高い付着性を有すること、得られる塗膜が耐熱性を有すること、得られる塗膜からの揮発成分が少ない(灯具のカバー(前面レンズ)への揮発成分の付着が少ない)こと、等が求められる。
【0004】
シリコーン保護膜への付着性に優れた塗膜を形成できる塗料組成物としては、アクリルシリコーン系塗料が知られている(特許文献1)。
しかし、従来から入手可能なアクリルシリコーン系塗料からなる塗膜は、耐熱性が不充分であり、さらなる改良が求められている。また、特許文献1に記載の塗料は、紫外線吸収剤を含んでいるため、得られる塗膜からの紫外線吸収剤の揮発がある。そのため、該塗膜が形成された灯具においては、カバーへの紫外線吸収剤の付着が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−079491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シリコーン保護膜、種々の難付着性な金属材料やプラスチック材料への付着性、耐熱性に優れ、かつ揮発成分の少ない塗膜を形成できる塗料組成物;長期間にわたって反射部材の品質が保持され、かつカバーへの揮発成分の付着がきわめて少ない灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の塗料組成物は、アミノ基を有するビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物を重合してなるビニル系重合体(A)と、一分子中にエポキシ基および加水分解性シリル基を有する化合物(B)とを含み、前記ビニル系重合体(A)のガラス転移温度が、35〜70℃であることを特徴とする。
前記アミノ基を有するビニル系単量体の含有量は、前記ビニル系単量体混合物(100質量%)中、2〜25質量%であることが好ましい。
【0008】
本発明の塗料組成物は、前記化合物(B)以外の、加水分解性シリル基を有する化合物(C)をさらに含むことが好ましい。
前記化合物(C)は、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合体(C1)およびテトラエトキシシランの部分加水分解縮合体(C2)の混合物であり、前記テトラメトキシシランの部分加水分解縮合体(C1)と前記テトラエトキシシランの部分加水分解縮合体(C2)との質量比(C1/C2)が、1/2〜1/4であることが好ましい。
【0009】
本発明の灯具は、光源と、前記光源からの光を反射する反射部材と、前記光を透過して外部へ出射させるカバーとを具備し、前記反射部材が、前記光源からの光を反射する面の表面に、本発明の塗料組成物からなる塗膜を有することを特徴とする。
前記カバーは、紫外線吸収剤および光安定剤のいずれか一方または両方が配合されたコーティング層を有する、または紫外線吸収剤および光安定剤のいずれか一方または両方が配合された材料からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗料組成物は、シリコーン保護膜、種々の難付着性な金属材料やプラスチック材料への付着性、耐熱性に優れ、かつ揮発成分の少ない塗膜を形成できる。
本発明の灯具は、長期間にわたって反射部材の品質が保持され、かつカバーへの揮発成分の付着がきわめて少ない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】自動車用前照灯の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の灯具における反射部材の一例を示す拡大断面図である。
【図3】図1の自動車用前照灯において光源の光軸が下向きになった様子を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
また、本明細書において「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。
また、本明細書において「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0013】
<塗料組成物>
本発明の塗料組成物は、アミノ基を有するビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物を重合してなるビニル系重合体(A)と、一分子中にエポキシ基および加水分解性シリル基を有する化合物(B)とを含み、必要に応じて加水分解性シリル基を有する化合物(C)、灯具のカバーへの揮発成分の付着が問題にならない範囲で添加剤(ただし、紫外線吸収剤および光安定剤を除く。)を含み、紫外線吸収剤および光安定剤を含まない塗料組成物である。
【0014】
(ビニル系重合体(A))
ビニル系重合体(A)は、アミノ基を有するビニル系単量体と他のビニル系単量体とを含むビニル系単量体混合物を、重合開始剤を用いて重合して得られる重合体である。
【0015】
アミノ基を有するビニル系単量体としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等)、N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類(N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、塗膜硬度の点から、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類が好ましい。
【0016】
アミノ基を有するビニル系単量体の含有量は、ビニル系単量体混合物(100質量%)中、2〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。アミノ基を有するビニル系単量体の含有量が2質量%以上であれば、得られる塗膜の耐湿性、耐温水性、耐ガソリン性が良好となる。アミノ基を有するビニル系単量体の含有量が25質量%以下であれば、得られる塗膜の耐酸性が良好となる。
【0017】
他のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類、カルボキシル基含有ビニル系単量体、不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類、酸無水基含有ビニル系単量体、カルボン酸アミド基含有ビニル系単量体、スルホンアミド基含有ビニル系単量体、(ペル)フルオロアルキル基含有ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体等が挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
カルボキシル基含有ビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類としては、ジメチルマレート、ジメチルフマレート等が挙げられる。
酸無水基含有ビニル系単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0020】
カルボン酸アミド基含有ビニル系単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
スルホンアミド基含有ビニル系単量体としては、p−スチレンスルホンアミド等が挙げられる。
(ペル)フルオロアルキル基含有ビニル系単量体としては、ペルフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0021】
重合開始剤としては、例えば、過酸化物(過酸化ベンゾイル、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等)、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等)等が挙げられる。
【0022】
ビニル系重合体(A)のガラス転移温度は、35〜70℃であり、40〜50℃がより好ましい。ビニル系重合体(A)のガラス転移温度が35℃以上であれば、得られる塗膜の耐熱性が良好となる。ビニル系重合体(A)のガラス転移温度が70℃以下であれば、得られる塗膜におけるクラックの発生が抑えられる。
【0023】
ビニル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、単量体a,b,c・・・からなる共重合体の場合は、以下の式(FOXの式)で求められる。
1/Tg=ma/Tga+mb/Tgb+mc/Tgc+・・・
ma:単量体aの質量分率、Tga:単量体aから得られる単独重合体のTg[K]、
mb:単量体bの質量分率、Tgb:単量体bから得られる単独重合体のTg[K]、
mc:単量体cの質量分率、Tgc:単量体cから得られる単独重合体のTg[K]。
【0024】
ビニル系重合体(A)の質量平均分子量は、10,000〜50,000が好ましく、15,000〜30,000がより好ましい。ビニル系重合体(A)の質量平均分子量が10,000以上であれば、得られる塗膜の耐ガソリン性が充分となる。ビニル系重合体(A)の質量平均分子量が50,000以下であれば、塗装の際に糸引き等が発生することなく、塗工性がよくなる。ビニル系重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるスチレン換算の値である。
【0025】
(化合物(B))
化合物(B)は、一分子中にエポキシ基および加水分解性シリル基を有する化合物である。化合物(B)としては、エポキシ基を有するシランカップリング剤(B1)、エポキシ基および加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(B2)が挙げられる。
【0026】
エポキシ基を有するシランカップリング剤(B1)としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
ビニル系重合体(B2)は、エポキシ基を有するビニル系単量体および加水分解性シリル基を有するビニル系単量体、さらに必要に応じて他のビニル系単量体を重合して得られる重合体である。エポキシ基を有するビニル系単量体としては、(β−メチル)グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。加水分解性シリル基を有するビニル系単量体としては、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。他のビニル系単量体としては、上述の他のビニル系単量体等が挙げられる。
【0028】
(化合物(C))
化合物(C)は、前記化合物(B)以外の加水分解性シリル基を有する化合物である。
化合物(C)としては、アルコキシシラン類、アルケニルオキシシラン類、アシロキシシラン類、ハロシラン類、アルコキシシラン類の部分加水分解縮合体、アルケニルオキシシランル類の部分加水分解縮合体等が挙げられる。
【0029】
アルコキシシラン類としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、 テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
アルケニルオキシシラン類としては、テトライソプロペニルオキシシラン、フェニルトリイソプロペニルオキシシラン等が挙げられる。
アシロキシシラン類としては、テトラアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
ハロシラン類としては、テトラクロルシラン、フェニルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0030】
これらのうち、塗膜の耐ガソリン性の点から、アルコキシシラン類の部分加水分解縮合体が好ましく、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合体(C1)およびテトラエトキシシランの部分加水分解縮合体(C2)の混合物が特に好ましい。また、(C1)としては、テトラメトキシシランの3〜5量体が好ましく、(C2)としては、テトラエトキシシランの4〜6量体が好ましい。
該混合物において(C1)と(C2)との質量比(C1/C2)は、1/2〜1/4が好ましい。(C1)と(C2)との質量比がこの範囲にあれば、指触乾燥性がよい。すなわち、(C1)と(C2)との質量比がこの範囲にない場合と比較して、塗料を塗装し、乾燥した後、常温に冷却したときに、塗膜を指で触ってもタックがない状態にするために必要な乾燥時間が短くなる、あるいは必要な乾燥温度が低くなる。
【0031】
(添加剤)
本発明の塗料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて加水分解−縮合用触媒、着色顔料、染料、体質顔料、酸化防止剤、金属粉末、マイカ粉末等の添加剤(ただし、紫外線吸収剤および光安定剤を除く。)を含んでいてもよい。
【0032】
本発明の塗料組成物は、紫外線吸収剤および光安定剤を含まない。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シュウ酸アニリド系等が挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系等が挙げられる。
【0033】
(組成)
化合物(C)を添加しない場合、ビニル系重合体(A)の含有量は、(A)+(B)の合計100質量%中、60〜98質量%が好ましく、80〜98質量%がより好ましい。ビニル系重合体(A)の含有量がこの範囲にあれば、長期間にわたってシリコーン保護膜や金属材料への高い付着性を維持し、かつ耐酸性に優れる塗膜を形成できる。
化合物(C)を添加しない場合、化合物(B)の含有量は、(A)+(B)の合計100質量%中、2〜40質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。化合物(B)の含有量がこの範囲にあれば、長期間にわたってシリコーン保護膜や金属材料への高い付着性を維持し、かつ耐酸性に優れる塗膜を形成できる。
【0034】
化合物(C)を添加する場合、化合物(C)の含有量は、(A)+(B)+(C)の合計100質量%中、2〜40質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。化合物(C)の含有量がこの範囲にあれば、塗膜の耐ガソリン性が向上する。化合物(C)を添加する場合、(A)+(B)+(C)の合計100質量%中、ビニル系重合体(A)の含有量は、60〜90質量%が好ましく、70〜80質量%がより好ましく、化合物(B)の含有量は、5〜20質量%が好ましく、10〜15質量%がより好ましい。
【0035】
(作用効果)
以上説明した本発明の塗料組成物にあっては、アミノ基を有するビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物を重合してなるビニル系重合体(A)と、一分子中にエポキシ基および加水分解性シリル基を有する化合物(B)とを含むため、シリコーン保護膜、種々の難付着性な金属材料やプラスチック材料への付着性に優れる塗膜を形成できる。また、ビニル系重合体(A)のガラス転移温度が35℃以上であるため、耐熱性に優れる塗膜を形成できる。また、紫外線吸収剤および光安定剤を含まないため、揮発成分のきわめて少ない塗膜、言い換えると、フォギング性の良好な塗膜を形成できる。
【0036】
<灯具>
本発明の灯具は、光源と、光源からの光を反射する反射部材と、光を透過して外部へ出射させるカバーとを具備し、反射部材が、光源からの光を反射する面の表面に、本発明の塗料組成物からなる塗膜を有する。
灯具としては、車両(自動車、バイク、鉄道車両等)の前照灯、航空機の前照灯等が挙げられる。
【0037】
図1は、自動車用前照灯の一例を示す概略断面図である。
自動車用前照灯20は、前面側(光の出射側)に開口部を有し、かつ内面がエクステンションリフレクタとされたランプボディ22と、ランプボディ内に収納された光源24と、光源24の背面に配置された略御椀形のリフレクタ26(反射部材)と、ランプボディ22の開口部を覆う前面レンズ28(カバー)とを具備する。
【0038】
(光源)
光源としては、放電ランプ、LED、白熱電球等が挙げられる。
【0039】
(ランプボディ)
ランプボディとしては、プラスチック成形品等が挙げられる。プラスチック成形品の材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリブチレンテレフタラート−ポリエチレンテレフタラート樹脂(PBT/PET樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート樹脂(ASA樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、PC/ASA樹脂、PC/ABS樹脂、PC/PBT樹脂、PC/PET樹脂等が挙げられる。
【0040】
(前面レンズ)
前面レンズとしては、プラスチック成形品、ガラス等が挙げられる。プラスチック成形品の材料としては、PC樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
前面レンズ(カバー)は、表面にコーティング層を有していてもよい。コーティング層としては、前面レンズの外側表面に形成されるハードコート層等が挙げられる。
本発明の塗料組成物からなる塗膜は紫外線吸収剤および光安定剤を含まないため、塗膜の耐光性の点から、前面レンズ(カバー)は、紫外線吸収剤および光安定剤のいずれか一方または両方が配合されたコーティング層を有する、または紫外線吸収剤および光安定剤のいずれか一方または両方が配合された材料からなることが好ましい。
【0041】
(反射部材)
反射部材としては、リフレクタ、エクステンションリフレクタ等が挙げられる。
図2は、反射部材の一例を示す拡大断面図である。反射部材10は、プラスチック基材12と、プラスチック基材の表面に形成された金属蒸着膜14と、金属蒸着膜14の表面に形成されたシリコーン保護膜16と、シリコーン保護膜16の表面に形成された、本発明の塗料組成物からなる塗膜18とを有する。
【0042】
プラスチック基材12の材料としては、前記ランプボディの材料と同様のものが挙げられる。
金属蒸着膜14としては、アルミニウム蒸着膜等が挙げられる。金属蒸着膜14は、公知の蒸着法によって形成される。
シリコーン保護膜16は、シリコーン樹脂を塗装する方法、プラズマ重合による方法(特開平10−147876号公報)等によって形成される。
【0043】
塗膜18は、本発明の塗料組成物、溶剤等を混合して調製された塗料を、シリコーン保護膜16の表面に塗装し、乾燥させることによって形成される。
溶剤としては、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、ナフサ等)、アルコール系溶剤(2−ブトキシエタノール等)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
塗装方法としては、スプレー塗装、フローコート、デイッピング、刷毛塗り、ロールコート等が挙げられる。
塗膜18の膜厚は、10〜100μmが好ましい。
【0044】
(他の形態)
なお、本発明における反射部材は、光源からの光を反射する面の表面に本発明の塗料組成物からなる塗膜を有するものであればよく、図示例のものに限定はされない。
例えば、金属材料(ステンレス、アルマイト、アルミニウム等)の表面に本発明の塗料組成物からなる塗膜を形成したものであってもよく;シリコーン保護膜16を設けることなく金属蒸着膜14の表面に本発明の塗料組成物からなる塗膜を形成したものであってもよい。
金属材料は、例えば図3に示すように、光源24の光軸が下向きにされた際に、ランプボディ22の内面のエクステンションリフレクタにおいて、光源からの光が直接当たることによって高温になる部分22aに設けられる。
【0045】
(作用効果)
以上説明した本発明の灯具にあっては、反射部材が、光源からの光を反射する面の表面に、本発明の塗料組成物からなる塗膜、すなわちシリコーン保護膜、種々の難付着性な金属材料やプラスチック材料への付着性、耐熱性に優れる塗膜を有するため、長期間にわたって塗膜の剥離や変色が抑えられる。そのため、反射部材の品質が保持される。また、反射部材が、揮発成分の少ない塗膜を有するため、カバーへの揮発成分の付着がきわめて少ない。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を示して本発明を詳しく説明する。
(不揮発分(NV))
ビニル系重合体(A)溶液のNVは、下記のようにして求めた。
簡易キャップに秤取した塗料2gを105℃の恒温槽中で3時間乾燥させ、乾燥後のキャップの質量からキャップの風袋を差し引き、これと、始めに採取した塗料質量との質量比をNVとした。
(ガラス転移温度(Tg))
ビニル系重合体(A)のTgは、前記FOXの式を用いて算出した。
(質量平均分子量(Mw))
ビニル系重合体(A)のMwは、日本分光(株)製のGPC装置を用い、スチレン換算で求めた。
【0047】
(初期付着性)
アルミニウム蒸着膜、シリコーン保護膜、ステンレス、アルマイトまたはアルミニウムの表面に塗膜を形成した試験片について、JIS K 5400に準拠した碁盤目法にて付着性を評価した。
具体的には、試験片の塗膜にカッターで碁盤目状に切り込み(1mm間隔、100マス)を入れ、セロハンテープを密着させた後、これを引きはがし、アルミニウム蒸着膜、シリコーン保護膜、ステンレス、アルマイトまたはアルミニウムからはがれた塗膜のマスを数え、後述する評価基準にて評価した。
【0048】
(耐熱性)
アルミニウム蒸着膜、シリコーン保護膜、ステンレス、アルマイトまたはアルミニウムの表面に塗膜を形成した試験片を160℃で360時間加熱した後、表面温度が室温になるまで放置したものについて、後述する評価基準にて外観を評価し、また、初期付着性と同様にして付着性を評価した。
【0049】
(耐湿性)
アルミニウム蒸着膜、シリコーン保護膜、ステンレス、アルマイトまたはアルミニウムの表面に塗膜を形成した試験片を50℃、95%RHの環境下で、240時間放置した後、表面温度が室温になるまで放置したものについて、後述する評価基準にて外観を評価し、また、初期付着性と同様にして付着性を評価した。
【0050】
(耐温水性)
アルミニウム蒸着膜、シリコーン保護膜、ステンレス、アルマイトまたはアルミニウムの表面に塗膜を形成した試験片を40℃の温水中に30時間浸漬し、これを温水中から取り出し、塗膜の表面の水分を除去し、表面温度が室温になるまで放置したものについて、後述する評価基準にて外観を評価し、また、初期付着性と同様にして付着性を評価した。
【0051】
(耐光性)
シリコーン保護膜の表面に塗膜を形成した試験片について、スガ試験機(株)製のフェードメータ(FOM)を用い、紫外線吸収剤および光安定剤が配合されたハードコート層を有するポリカーボネート板を試験片の塗膜の上に被せた状態にて、ブラックパネル温度で83℃にて1200時間の耐光性試験を実施した後、コニカミノルタ(株)製の色差計を用いて塗膜の色差ΔEを測定し、また、BYKガードナー社製の光沢計を用いて光沢(60°)を測定し、後述する評価基準にて耐光性を評価した。
【0052】
(フォギング性)
ISO6452の規格に準拠した装置を用意した。ガラス容器を、160℃に温度調節したオイルバスに、ガラス容器の上部が液面から出るように浸漬して加熱した。これに50mm×50mmのブリキ板上に膜厚約25μmの塗膜を形成した試験片を投入し、HAZE値が0.1%以下になるように調整したガラス板をガラス容器口部に置いて密封し、20時間試験を実施した。試験後1時間以内に、JIS K 7105に準拠してガラス板のHAZE値を測定し、後述する評価基準にて評価した。
【0053】
(耐酸性)
シリコーン保護膜の表面に塗膜を形成した試験片を10質量%の硫酸水溶液中に25℃で10分間浸漬した後、後述する評価基準にて外観を評価した。
【0054】
(耐ガソリン性)
シリコーン保護膜の表面に塗膜を形成した試験片を無鉛レギュラーガソリン中に30分間浸漬した後、ガソリンを拭き取り、後述する評価基準にて外観を評価した。
【0055】
(指触乾燥性)
シリコーン保護膜の表面に塗料を塗装し、80℃で10分間乾燥し、常温に冷却した後塗膜を指で触った際のタックの有無を確認し、後述する評価基準にて指触乾燥性を評価した。
【0056】
(付着性の評価基準)
○:はがれた塗膜のマスの数が0であり、剥離部分が全くない。
△:はがれた塗膜のマスの数が0であり、わずかな欠けがある。
×:はがれた塗膜のマスの数が1以上である。
【0057】
(外観の評価基準)
○:表面の荒れ、クラック、変色および膨潤が、塗膜に見られない。
×:表面の荒れ、クラック、変色および膨潤のうちの1つ以上が、塗膜に見られる。
【0058】
(耐光性の評価基準)
○:試験前に対する試験後の色差ΔEが3.0以下であり、かつ試験前に対する試験後の光沢(60°)の保持率が80%以上である。
×:試験前に対する試験後の色差ΔEが3.0超である、または試験前に対する試験後の光沢(60°)の保持率が80%未満である。
【0059】
(フォギング性の評価基準)
○:試験前に対する試験後のHAZE値の変化が1%以下である。
×:試験前に対する試験後のHAZE値の変化が1%超である。
【0060】
(指触乾燥性の評価基準)
○:塗膜を指で触った際にタックがない。
△:塗膜を指で触った際にわずかにタックがある。
×:塗膜を指で触った際にはっきりとタックがある。
【0061】
[合成例1]
撹拌装置、温度計、窒素導入管および還流冷却器を備えた反応器に、トルエンの50質量部、iso−ブタノールの50質量部を仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。反応器内の温度を100℃に保持しながら、これに、メチルメタクリレート(MMA)の10質量部、n−ブチルメタクリレート(BMA)の64質量部、n−ブチルアクリレート(BA)の16質量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMMA)の10質量部、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)の1質量部からなる混合物を90分かけて滴下した。滴下終了後、100℃で1時間保持し、さらにAIBNの0.2質量部を追加した。その後、100℃で30分保持し、さらにAIBNの0.5質量部を追加した。その後、100℃で3.5時間保持し、ビニル系重合体(A1)溶液を得た。NV、Mw、Tgを表1に示す。
【0062】
[合成例2〜6]
MMA、BMA、BAの仕込量を表1に示す量に変更した以外は、合成例1と同条件で重合を行い、Tgが異なるビニル系重合体(A2)〜(A6)を得た。NV、Mw、Tgを表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
[合成例7〜13]
MMA、BMA、DMMAの仕込量を表2に示す量に変更した以外は、合成例1と同条件で重合を行い、DMMA量が異なるビニル系重合体(A7)〜(A13)を得た。NV、Mw、Tgを表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
[比較例1]
ビニル系重合体(A1)溶液の200質量部(NV:100質量部、(A)+(B)の合計100質量%中90質量%)、化合物(B)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの17質量部((A)+(B)の合計100質量%中10質量%)および混合溶剤の274.8質量部を混合し、塗料を調製した。混合溶剤としては、酢酸エチル8.7質量%、トルエン72.3質量%、キシレン19質量%からなるものを用いた。
【0067】
PBT/PET樹脂板の表面にアルミニウム蒸着膜を形成し、該アルミニウム蒸着膜の表面に塗料を乾燥膜厚が25±2μmとなるようにスプレー塗装し、80℃で20分間乾燥させ、25℃、55%RHの環境下で7日間放置して塗膜を形成し、試験片(1)を得た。
【0068】
PBT/PET樹脂板の表面にアルミニウム蒸着膜を形成し、該アルミニウム蒸着膜の表面にプラズマ重合によってシリコーン保護膜を形成し、該シリコーン保護膜の表面に塗料を乾燥膜厚が25±2μmとなるようにスプレー塗装し、80℃で20分間乾燥させ、25℃、55%RHの環境下で7日間放置して塗膜を形成し、試験片(2)を得た。
【0069】
ステンレス板の表面に塗料を乾燥膜厚が25±2μmとなるようにスプレー塗装し、80℃で20分間乾燥させ、25℃、55%RHの環境下で7日間放置して塗膜を形成し、試験片(3)を得た。
【0070】
アルマイト処理したアルミニウム板の表面に塗料を乾燥膜厚が25±2μmとなるようにスプレー塗装し、80℃で20分間乾燥させ、25℃、55%RHの環境下で7日間放置して塗膜を形成し、試験片(4)を得た。
【0071】
アルミニウム板の表面に塗料を乾燥膜厚が25±2μmとなるようにスプレー塗装し、80℃で20分間乾燥させ、25℃、55%RHの環境下で7日間放置して塗膜を形成し、試験片(5)を得た。
【0072】
50mm×50mmのブリキ板の表面に塗料を乾燥膜厚が25±2μmとなるようにスプレー塗装し、80℃で20分間乾燥させ、25℃、55%RHの環境下で7日間放置して塗膜を形成し、フォギング性評価用の試験片(6)を得た。
これら試験片について、前記評価を行った。結果を表3に示す。
【0073】
[実施例1〜4、比較例2]
ビニル系重合体(A2)〜(A6)について、比較例1と同様にして、塗料を調製し、試験片(1)〜(5)を作製し、これら試験片について前記評価を行った。結果を表3に示す。
【0074】
[比較例3]
紫外線吸収剤(BASF社製、チヌビン328)の2.8質量部、光安定剤(BASF社製、チヌビン292)の1.2質量部を追加した以外は、実施例2と同様にして、塗料を調製し、試験片(1)〜(5)を作製し、これら試験片について前記評価を行った。結果を表3に示す。
【0075】
[比較例4]
紫外線吸収剤(BASF社製、チヌビン900)の2.8質量部、光安定剤(BASF社製、チヌビン292)の1.2質量部を追加した以外は、実施例2と同様にして、塗料を調製し、試験片(1)〜(5)を作製し、これら試験片について前記評価を行った。結果を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
ビニル系重合体(A)のTgが低すぎると、耐熱性の評価にて塗膜の表面が荒れてしまう。ビニル系重合体(A)のTgが高すぎると、耐熱性の評価にて塗膜にクラックが発生する。紫外線吸収剤や光安定剤を含むと、フォギング性試験にてHAZE値が高くなる。
【0078】
[比較例5、実施例5〜10]
ビニル系重合体(A7)〜(A13)について、実施例1と同様にして、塗料を調製し、試験片(1)〜(5)を作製し、これら試験片について前記評価を行った。結果を表4に示す。
【0079】
【表4】

【0080】
ビニル系重合体(A)のDMMA量が多いと、塗膜の耐酸性が低下する傾向にある。ビニル系重合体(A)のDMMA量が少ないと、塗膜の耐湿性、耐温水性、耐ガソリン性が低下する傾向にある。
【0081】
[実施例11]
ビニル系重合体(A3)溶液の200質量部(NV:100質量部、(A)+(B)+(C)の合計100質量%中77質量%)、化合物(B)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン20質量部((A)+(B)+(C)の合計100質量%中10.2質量%)、化合物(C)として、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合体(C1)(多摩化学工業(株)製、Mシリケート51)およびテトラエトキシシランの部分加水分解縮合体(C2)(多摩化学工業(株)製、シリケート40)の混合物(C1/C2=1/3質量比)の20質量部((A)+(B)+(C)の合計100質量%中12.8質量%)、および前記混合溶剤の238.8質量部を混合し、塗料を調製した。塗料を変更し、かつ乾燥条件を80℃で10分間に変更した以外は、実施例2と同様にして試験片(1)〜(5)を作製し、これら試験片について前記評価を行った。結果を表5に示す。
【0082】
[実施例12]
乾燥条件を80℃で10分間に変更した以外は、実施例2と同様にして試験片(1)〜(5)を作製し、これら試験片について前記評価を行った。結果を表5に示す。
【0083】
【表5】

【0084】
テトラメトキシシランの部分加水分解縮合体(C1)およびテトラエトキシシランの部分加水分解縮合体(C2)の混合物を所定の比率で添加することにより、塗膜の指触乾燥性が向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の塗料組成物は、灯具における反射部材の表面に意匠性を付与する灯具用塗料として有用である。
【符号の説明】
【0086】
10 反射部材
12 プラスチック基材
14 金属蒸着膜
16 シリコーン保護膜
18 塗膜
20 自動車用前照灯
22 ランプボディ
22a 高温になる部分(金属材料)
24 光源
26 リフレクタ
28 前面レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基を有するビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物を重合してなるビニル系重合体(A)と、
一分子中にエポキシ基および加水分解性シリル基を有する化合物(B)と
を含み、
前記ビニル系重合体(A)のガラス転移温度が、35〜70℃である、塗料組成物。
【請求項2】
前記アミノ基を有するビニル系単量体の含有量が、前記ビニル系単量体混合物(100質量%)中、2〜25質量%である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記化合物(B)以外の、加水分解性シリル基を有する化合物(C)をさらに含む、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記化合物(C)が、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合体(C1)およびテトラエトキシシランの部分加水分解縮合体(C2)の混合物であり、
前記テトラメトキシシランの部分加水分解縮合体(C1)と前記テトラエトキシシランの部分加水分解縮合体(C2)との質量比(C1/C2)が、1/2〜1/4である、請求項3に記載の塗料組成物。
【請求項5】
光源と、
前記光源からの光を反射する反射部材と、
前記光を透過して外部へ出射させるカバーと
を具備し、
前記反射部材が、前記光源からの光を反射する面の表面に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物からなる塗膜を有する、灯具。
【請求項6】
前記カバーが、紫外線吸収剤および光安定剤のいずれか一方または両方が配合されたコーティング層を有する、請求項5に記載の灯具。
【請求項7】
前記カバーが、紫外線吸収剤および光安定剤のいずれか一方または両方が配合された材料からなる、請求項5に記載の灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−18958(P2013−18958A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−49447(P2012−49447)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】