説明

塗料

【課題】壁面等に塗布することにより、光がなくても良好な抗菌,抗ウイルス,消臭,防カビ効果を発揮できる塗料を提供する。
【解決手段】アパタイト2を被覆した二酸化チタン粒子1等の光触媒活性を有する酸化物半導体粒子と、アパタイト2を被覆した銀3,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属粒子を混合させた粉体物質が含まれている塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌,消臭,防カビ効果を発揮することができる塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、光活性を有する粉体物質が含まれて、壁面等に塗布することにより、良好に室内等の有害化学物質等を除去することのできる塗料が発明者らにより開発されている。
【特許文献1】特開2004−269737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているような塗料は、主として光触媒効果により抗菌力を発揮するものであるため、光がないと有効に有害化学物質等を除去することができない場合があるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、光のない状況でも良好に抗菌力を発揮できる塗料を提供するものであり、その請求項1は、アパタイト被覆した光触媒活性を有する酸化物半導体粒子と、アパタイト被覆した銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属粒子を混合させた粉体物質が含まれていることである。
【0005】
また請求項2は、光触媒活性を有する酸化物半導体粒子の表面に、アパタイトと銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を光が入る隙間を形成させて被覆させた粉体物質が含まれていることである。
【0006】
また請求項3は、光触媒活性を有する酸化物半導体の表面にアパタイトを光の入る隙間を形成させて被覆し、該アパタイトに銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を付着させた粉体物質が含まれていることである。
【0007】
また請求項4は、光触媒活性を有する酸化物半導体の表面に、銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を光の入る隙間を形成させて被覆し、該被覆させた金属にアパタイトを付着させた粉体物質が含まれていることである。
【0008】
また請求項5は、前記光触媒活性を有する酸化物半導体の表面の前記金属と金属との間の隙間内にもアパタイトを付着させた粉体物質が含まれていることである。
【0009】
また請求項6は、前記アパタイトに、更に銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を付着させた粉体物質が含まれていることである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗料は、アパタイト被覆した光触媒活性を有する酸化物半導体粒子と、アパタイト被覆した銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属粒子を混合させた粉体物質が含まれているため、このような塗料を室内の壁面等に塗布しておくと、光が当たる場所では、二酸化チタン等の光触媒活性を有する酸化物半導体粒子の光触媒効果により、また光の当たらない場所では、銀等の金属粒子の抗菌力により、良好な抗菌効果が発揮されるものであり、光触媒活性を有する酸化物半導体粒子及び銀等の金属粒子の表面に被覆されているアパタイトが、光触媒活性を有する酸化物半導体粒子の表面、あるいは銀等の金属粒子の表面にウイルス,菌等を吸着させて、これらの菌を確実に粒子の表面に接触させて良好な抗菌効果が得られるものである。
【0011】
また、光触媒活性を有する酸化物半導体粒子の表面に、アパタイトと銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を光が入る隙間を形成させて被覆させた粉体物質が含まれていることにより、このような塗料を室内の壁面等に塗布することにより、光が当たる場所では、光触媒活性を有する酸化物半導体粒子の光触媒効果により、また光の当たらない場所では、銀等の金属の抗菌力により、良好な抗菌作用が得られるものとなる。
【0012】
また、光触媒活性を有する酸化物半導体の表面にアパタイトを光の入る隙間を形成させて被覆し、該アパタイトに銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を付着させた粉体物質が含まれていることにより、このような塗料を室内の壁面等に塗布することにより、光が当たる場所では、光触媒活性を有する酸化物半導体の光触媒効果により、また光の当たらない場所では、銀等の金属の抗菌力により、良好な抗菌作用が得られるものとなる。
【0013】
また、光触媒活性を有する酸化物半導体の表面に、銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を光の入る隙間を形成させて被覆し、該被覆させた金属にアパタイトを付着させた粉体物質が含まれていることにより、このような塗料を室内の壁面等に塗布することにより、光が当たる場所では、光触媒活性を有する酸化物半導体粒子の光触媒効果により、また光の当たらない場所では、銀等の金属の抗菌力により、良好な抗菌作用が得られるものとなる。
【0014】
また、前記光触媒活性を有する酸化物半導体の表面の前記金属と金属との間の隙間内にもアパタイトを付着させた粉体物質が含まれていることにより、アパタイトが、光触媒活性を有する酸化物半導体粒子の表面、あるいは銀等の金属の表面にウイルス,菌等を吸着させて、これらの菌を確実に酸化物半導体粒子の表面あるいは銀等の金属の表面に接触させて良好な抗菌効果が得られるものとなる。
【0015】
また、前記アパタイトに、更に銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を付着させた粉体物質が含まれていることにより、光の当たらない場所では、銀等の金属の抗菌力により、良好な抗菌作用が得られるものとなる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施例の塗料中の粒子の拡大構成図であり、図1では、二酸化チタン粒子1の表面に隙間を形成させてアパタイト(リン酸カルシウム)2が被覆されており、また、銀粒子3の表面にもアパタイト2が被覆されており、これらの二酸化チタン粒子1と銀粒子3が混合された粉体物質が含まれて塗料が形成されている。
二酸化チタン粒子1にアパタイト2を被覆させた粉体物質が含まれた塗料は、既に発明者が上記特開2004−269737号公報に開示しているが、これにアパタイト2を被覆した銀粒子3を混合させて新たに塗料を形成させたものである。
【0017】
なお、このような塗料は、二酸化チタン粒子1と銀粒子3の混合割合を適宜異なるものに調整して、例えば、光の少ない押入れや下駄箱内に塗布する場合には、銀粒子3の混合割合の多いものが使用され、また、光の当たる室内の壁面等に塗布する場合は、二酸化チタン粒子1の混合割合の多いものが使用される。
即ち、光の当たる所に塗布された塗料では、光が二酸化チタン粒子1に当たると、二酸化チタン粒子1の光触媒作用により抗菌力が発揮されるものであり、この場合にアパタイト2が被覆されているため、アパタイト2の吸着力により室内のウイルス,雑菌等は、良好に二酸化チタン粒子1の表面に接触し、良好にウイルス,菌等を分解することができるものであり、また、銀粒子3は、光がなくても良好に抗菌力を発揮することができ、銀粒子3の表面に被覆されているアパタイト2が吸着力を発揮して、室内のウイルス,菌等を良好に銀粒子3の表面に接触させることができるものである。
【0018】
このように、アパタイト被覆した二酸化チタン粒子1とアパタイト被覆した銀粒子3を混合した塗料を塗布すれば、光がなくても抗菌,消臭,防カビ効果を発揮することができ、また更に、光があれば相乗的に抗菌,消臭,防カビ効果が増大されることとなる。
【0019】
なお、このような、アパタイト被覆した二酸化チタン粒子1と、アパタイト被覆した銀粒子3を混合させた塗料によるインフルエンザウイルスの不活性化試験を財団法人日本食品分析センターで行ったところ、インフルエンザウイルス20万個に対して24時間後に320個となり、減菌率99%以上の結果が得られている。なお、インフルエンザウイルスについては、試験結果が得られているが、その他、SARS,鳥インフルエンザ等のウイルスもインフルエンザウイルスと同じ膜を作るため、これらのウイルスに対しても不活性化できるものと考えられ、その他、MRSA等にも有効に作用できるものと考えられる。
【0020】
なお、本例では、銀粒子3を用いたものを例示しているが、銀粒子3に代えて、例えば銅,亜鉛,金等の抗菌力を有する金属粒子の表面にアパタイト2を被覆したものであっても良い。また、二酸化チタン粒子1に代えて、酸化チタン等の光触媒活性を有する酸化物半導体の表面にアパタイト2を被覆したものであっても良い。
【0021】
図2は第2実施例であり、図2では、二酸化チタン粒子1の表面に、隙間を形成させてアパタイト2と銀3を付着させて被覆させたものであり、このような構造の二酸化チタン粒子1を混合した塗料においても、塗布することにより、アパタイト2の吸着力で室内のウイルス,菌等を吸着して、良好に銀3に接触させて、抗菌力を発揮させることができ、更に二酸化チタン粒子1の表面に菌等を接触させて、光が当たることによる光触媒効果による菌等の除去が行えるものである。
【0022】
更に、図3は第3実施例を示すものであり、図3では、二酸化チタン粒子1の表面に隙間を形成させてアパタイト2を付着させ、更にこのアパタイト2に銀イオン3を付着させたものであり、このような構造の二酸化チタン粒子1を混合した塗料においても、室内の壁面等に塗布することにより、アパタイト2の吸着力でウイルス,菌等を良好に吸着して、銀3に接触させて抗菌力を発揮させ、更に光が当たる場所では、二酸化チタン1の光触媒効果で良好に菌等を除去できるものとなる。
【0023】
なお、図4は第4実施例を示すものであり、図4に拡大して示す粒子を塗料中に含ませることもできる。
図4では、二酸化チタン粒子1の表面に、光の入る隙間を形成させて銀3,3,3を付着させ、更に銀3にアパタイト2を付着させたものであり、また、二酸化チタン1の表面の銀3と銀3間の隙間内にもアパタイト2を付着させたものである。
【0024】
なお、更には、各アパタイト2,2に銀イオンを付着させて構成することもでき、このような構造の二酸化チタン粒子1を混合した塗料においても、室内の壁面等に塗布することにより、アパタイト2の吸着力でウイルス,菌等を良好に吸着して銀3に接触させて抗菌力を発揮させ、更に光が当たる場所では、二酸化チタン1の光触媒効果で良好に菌等を除去できるものとなる。
なお、二酸化チタン1に代えて、酸化チタン等の光触媒活性を有する酸化物半導体の表面に、銀3あるいは抗菌力を有する銅,亜鉛等の金属を付着させ、この付着させた金属に対してアパタイト2を付着させて構成しても良く、同様な効果を期待できるものである。
【0025】
このような各実施例の二酸化チタン粒子1等の粉体物質が含まれている塗料は、室内の壁に限らず、外壁に塗布しても良く、更には壁紙等の内装材の表面に塗布しても良く、建築材料等から発生する有害物質をも良好に分解することができ、例えば建築材料等から発生するホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等を除去することができ、更に煙草の臭いやペットの臭い等の原因となるアンモニアや硫化水素,メチルメルカプタン等の化学物質も有効に除去できるものである。
【0026】
なお、上記塗料は、バインダー,増粘剤,分散剤,水等を所定の量混合した塗料であって、アパタイト被覆した二酸化チタン粒子1とアパタイト被覆した銀粒子3の粉体は疎水性で、その比重が1.2〜4.0g/cmに設定され、アパタイト被覆した二酸化チタン粒子1とアパタイト被覆した銀粒子3の粉体が2〜50vol%の量混合されている。なお、粉体の粒径は1〜1000nmであり、またバインダーの量は粉体の量に対し0.2〜30%に設定され、バインダーのガラス転移点が−20℃〜30℃に設定されたものである。
【0027】
このような塗料を吹き付け塗装して塗膜を形成させると、塗料中の水分と一緒に二酸化チタン粒子1と銀粒子3の粉体が塗膜の表層に良好に移動して、光が当たらなくても空気中の有害物質を良好に分解でき、抗菌,抗カビ性に優れ、大気による汚染や油分が雨で流された後等の汚れを目立ち難いものとすることができ、定期的な洗浄や塗り替えを行わなくても汚れない塗膜が得られるものである。
【0028】
なお、上記塗料に使用した材料は、アパタイト被覆酸化チタン(株式会社丸武産業製、商品名アパテック)、バインダーとして、アクリルエマルジョン(ガンツ化成製、商品名ウルトラゾールV−280)、増粘剤として、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学製、商品名HECダイセルSP600)、および、水ガラス(大阪珪曹製、商品名3号水ガラス)、分散剤として、界面活性剤(日本油脂製、商品名マリアリムAKM−0531)を用いた。消泡剤としては、日本油脂製CC118を用いた。
塗料作成は、ガラスビーカーの中に、全体として400ccとなるように、体積比で混合し、塗料作成用攪拌機を用いて、攪拌しながら原料を添加した。
塗料作成時における分散状態を確認する目的で、出来上がりの粘度と分散状態の関係を調査した。方法は、それぞれに水を加えて粘度を調査した。その結果、塗料粘度が200mP.S付近以上では、塗料分散状態が良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施例の塗料内に含まれる二酸化チタン粒子と銀粒子の拡大構成図である。
【図2】第2実施例の塗料内に含まれる二酸化チタン粒子の拡大構成図である。
【図3】第3実施例の塗料内に含まれる二酸化チタン粒子の拡大構成図である。
【図4】第4実施例の塗料内に含まれる二酸化チタン粒子の拡大構成図である。
【符号の説明】
【0030】
1 二酸化チタン粒子
2 アパタイト
3 銀粒子(銀イオン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アパタイト被覆した光触媒活性を有する酸化物半導体粒子と、
アパタイト被覆した銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属粒子を
混合させた粉体物質が
含まれていることを特徴とする塗料。
【請求項2】
光触媒活性を有する酸化物半導体粒子の表面に、
アパタイトと
銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を
光が入る隙間を形成させて被覆させた
粉体物質が含まれていることを特徴とする塗料。
【請求項3】
光触媒活性を有する酸化物半導体の表面にアパタイトを光の入る隙間を形成させて被覆し、
該アパタイトに銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を付着させた
粉体物質が含まれていることを特徴とする塗料。
【請求項4】
光触媒活性を有する酸化物半導体の表面に、銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を光の入る隙間を形成させて被覆し、該被覆させた金属にアパタイトを付着させた
粉体物質が含まれていることを特徴とする塗料。
【請求項5】
前記光触媒活性を有する酸化物半導体の表面の前記金属と金属との間の隙間内にもアパタイトを付着させた
粉体物質が含まれていることを特徴とする請求項4に記載の塗料。
【請求項6】
前記アパタイトに、更に銀,銅,亜鉛等の抗菌力を有する金属を付着させた
粉体物質が含まれていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の塗料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−50559(P2008−50559A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324976(P2006−324976)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000225430)
【Fターム(参考)】