説明

塗膜、水性被覆材及びこれを用いた塗膜の製造方法、並びに塗膜の形成された塗装物

本発明の要旨は、重合体(I)を含む被覆成分と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)とを含有した塗膜であって、前記重合体(I)100質量部に対してコロイダルシリカ(II)を固形分含有量で0.5〜20質量部含有し、塗膜表面に露出したコロイダルシリカの面積が、塗膜表面の35%以上を占める塗膜にある。 本発明の塗膜によれば、優れた耐汚染性を発現し、且つ、透明性、耐候性、耐水性、塗膜伸度に優れた塗膜を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗膜、水性被覆材、およびこの水性被覆材を用いた塗膜の製造方法ならびに前記塗膜を有する塗装物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料分野においては、環境保全、安全衛生の面から有機溶剤系塗料から水性塗料への変換が図られている。しかし、水性塗料は耐候性、耐水性、耐凍害性、ことに耐汚染性の塗膜性能が溶剤系に比べて低位であり、解決すべき課題が多いのが現状である。
【0003】
これらの課題の解決を目的とした水性塗料の開発及び塗膜の積層方法の開発は種々行われている。例えば、水性塗料用の樹脂としては、乳化重合によるアクリル樹脂のエマルションが、得られる塗膜の耐候性等が比較的良好であるという特長を有するので、注目されている。また、水性エマルションを用いて、下塗り、中塗り、上塗りにそれぞれ性能を付与して積層塗装し、積層材全体として耐汚染性などの塗膜性能を付与する工夫などがなされている。
【0004】
耐汚染性向上の技術手法としては、(i)塗膜の硬度を高くする(樹脂のガラス転移温度(Tg)を高くする)方法、(ii)塗膜表面を親水化し、雨水で汚染物質を洗い流す自浄作用を付与する方法、(iii)帯電性を制御して、静電気的な汚れを付着し難くする方法などが挙げられる。
【0005】
しかし、(i)のようにガラス転移温度を高くして塗膜の硬度を高くすると造膜性が低下し、冬場にヒビなどが発生する(凍害性)問題があり、また、耐汚染性の大幅な改善は困難である。(ii)のように塗膜表面を親水化する手法において、モノマー組成的な親水化は耐候性が低下する問題があり、また界面活性剤等の添加は耐水性が低下し、耐汚染性の効果の持続にも問題がある。(iii)のように帯電性を制御する手法において、帯電防止剤の添加は耐候性、耐水性に悪影響を及ぼし、効果の持続性にも問題がある。
【0006】
上記問題を解決し、水性塗料の性能を向上させる手段として、無機物を含有させる手法が知られている。例えば、特許文献1には、ビニルシランとアクリル系モノマーを共重合した水性エマルションにコロイダルシリカを含有させた被覆組成物が提案されており、塗膜の耐熱性、耐水性、密着性に優れるという特徴を有する。
【0007】
しかし、この被覆組成物は、該水性エマルションの固形分100質量部に対して、固形分含量500〜20000質量部という多量のコロイダルシリカを必要としている。コロイダルシリカを多量に用いると、塗膜の透明性、耐候性、被覆組成物の貯蔵安定性、塗装作業性が劣るという問題点がある。
【0008】
これに対して、比較的少量のコロイダルシリカを必須成分とする特許文献としては、特許文献2及び特許文献3がある。
【0009】
特許文献2には、不飽和ビニルモノマーがポリオルガノシロキサンに対し10〜90質量%グラフト共重合されたポリオルガノシロキサン系グラフト共重合体エマルション100質量部と、コロイダルシリカ1〜50質量部とを含有する難燃性塗材が提案されており、塗膜の難燃性、伸長性、接着性、感温特性、透湿性及び耐汚染性に優れるという特徴を有する。
【0010】
しかし、この塗材は、該ポリオルガノシロキサン系グラフトブロック共重合体エマルションの固形分100質量部中、ポリオルガノシロキサン成分が52質量部以上と多量の撥水性シリコーン成分を有していることから、塗膜の親水性が不十分であるため耐汚染性が低位であり、また、塗膜の透明性、硬度の点でも問題がある。
【0011】
特許文献3には、ポリオルガノシロキサン系グラフト共重合体エマルション100質量部と、コロイダルシリカ1〜300重量部とを含有する水性被覆組成物が提案されており、水性被覆組成物の貯蔵安定性、塗膜の硬度、耐水性及び耐汚染性に優れるという特徴を有する。しかし、特許文献2記載の塗材からなる塗膜と比較すると、耐汚染性については大幅に改善されているものの、更なる塗膜の親水化による低汚染化が求められている。
【0012】
また、特許文献4や特許文献5などでは、セメント系材料の表面塗装において、下塗り、中塗り、上塗りの多層構成にして、それらの全てにシリケート又はシリカゾルを配合し、積層材全体の静電気滞留を防ぐことにより、静電気による汚れ付着を防止し、塗膜に耐汚染性を付与する手法が提案されている。
【0013】
しかし、下塗り、中塗り、上塗りのどれか一層が樹脂のみの塗膜であると、静電気滞留が起きて、汚れが付着するという問題があった。
【0014】
また、特許文献6にはフェニル基を含むシリコーン構造を有する水性分散体、スルフォコハク酸系界面活性剤、アルキレンオキサイド基を有する界面活性剤、およびコロイド状無機粒子(コロイダルシリカ)を含有する水性汚染防止被覆組成物が提案されている。しかしながら、特許文献6記載の水性汚染防止被覆組成物においても、耐汚染性については未だ十分なレベルには達していない。
【特許文献1】特公平1−41180号公報
【特許文献2】特開平4−23857号公報
【特許文献3】特開平9−165554号公報
【特許文献4】特公昭53−34141号公報
【特許文献5】特開平5−96234号公報
【特許文献6】特開2004−149668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は前記課題を解決する為になされたもので、優れた耐汚染性を発現し、且つ、透明性、耐候性、塗膜伸度に優れた塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の塗膜の要旨は、重合体(I)を含む被覆成分と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)とを含有した塗膜であって、前記重合体(I)100質量部に対してコロイダルシリカ(II)を固形分含有量で0.5〜20質量部含有し、塗膜表面に露出したコロイダルシリカの面積が、塗膜表面の35%以上を占める塗膜にある。
【0017】
また、本発明の水性被覆材の要旨は、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位(a)0.1〜20質量部、その他の共重合単量体単位(b)80〜99.9質量部((a)及び(b)の質量部の合計は100質量部)より構成される重合体(I)と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)と、下記(III)に示される少なくとも1種のアニオン系界面活性剤と、ノニオン系界面活性剤とを含有し、前記重合体(I)100質量部に対してコロイダルシリカ(II)を固形分含有量で0.5〜20質量部含有する水性被覆材にある。
【0018】
(III):ポリオキシアルキレンアリールエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリールエーテルの硫酸エステル塩のホルマリン縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩のホルマリン縮合物
また、本発明の水性被覆材の要旨は、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位(a)4〜20質量部、その他の共重合単量体単位(b)80〜96質量部((a)及び(b)の質量部の合計は100質量部)より構成される重合体(I)と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)とを含有し、前記重合体(I)100質量部に対してコロイダルシリカ(II)を、固形分含有量で0.5〜20質量部含有する水性被覆材にある。
【0019】
また、本発明の水性被覆材の要旨は、重合体(I)100質量部に対して、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)を固形分含有量で0.5〜20質量部と、オクタノール/水分配係数が0.8未満である有機溶剤0.5〜20質量部とを含有することを特徴とする水性被覆材にある。
【0020】
本発明の塗膜の製造方法の要旨は、前記水性被覆材を塗布することにより、重合体(I)を含む被覆成分と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)とを含有した塗膜であって、前記重合体(I)100質量部に対してコロイダルシリカ(II)を固形分含有量で0.5〜20質量部含有し、塗膜表面に露出したコロイダルシリカの面積が、塗膜表面の35%以上を占める塗膜を製造する方法にある。
【0021】
更に本発明の塗装物の要旨は、前記の塗膜を有する塗装物にある。
【発明の効果】
【0022】
本発明の塗膜によれば、優れた耐汚染性を発現し、且つ、透明性、耐候性、塗膜伸度、に優れた塗膜を提供することができる。
【0023】
また、本発明の水性被覆材によれば、これを塗布することにより、前述した塗膜を形成することができる。
【0024】
そして、前記塗膜を物品に形成することにより、高い耐汚染性、透明性、耐候性、塗膜伸度を有する塗装物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の塗膜は、重合体(I)を含む被覆成分と、平均粒子径が1〜60nmのコロイダルシリカ(II)とを含有しており、その塗膜中に占めるコロイダルシリカの固形分含有量が、重合体100質量部に対して0.5〜20質量部であり、塗膜表面に露出したコロイダルシリカの面積が、塗膜表面の35%以上を占める塗膜である。
【0026】
前記被覆成分は、塗膜に成膜性、耐候性、耐水性、耐凍害性等を与える必須成分であり、前記コロイダルシリカは塗膜に耐汚染性や制電性、硬さ、耐候性を与える成分である。
【0027】
以下に詳説する。
【0028】
[コロイダルシリカ]
本発明では、コロイダルシリカが塗膜の表面に特定の割合で存在する。そのようにすることで、表面に露出、分散させたコロイダルシリカが塗膜に著しい親水性を付与し、雨水による自浄作用を発揮させるようになる。さらに、コロイダルシリカ粒子同士が塗膜表面で接触するようになるので、塗膜表面が導電性を持ち、静電気による汚れの付着が抑制される。これらの結果、この塗膜は優れた耐汚染性を発揮する。
【0029】
塗膜全体に占めるコロイダルシリカの量は、被覆成分に含まれる重合体100質量部に対して固形分含有量で0.5〜20質量部である。この含有量が0.5質量部以上であることにより塗膜の耐汚染性、水接触角、制電性が向上する。他方、20質量部以下であることにより塗膜の透明性、耐候性、耐水性、耐凍害性(塗膜伸度)を低下させることなく塗膜の耐汚染性、水接触角、制電性をさらに向上することができる。また、20質量部を超えると塗膜の白化が生じる。更に好ましい含有量は、コロイダルシリカの量は1〜18質量部である。
【0030】
塗膜表面に露出したコロイダルシリカの面積は、塗膜表面積の35%以上を占める。塗膜表面に露出したコロイダルシリカが占める面積が35%未満であると十分な耐汚染性、水接触角、制電性が得られない。好ましくは50%以上である。更に好ましくは70%以上であり、最も好ましいのは90以上である。
【0031】
尚、本発明でいう塗膜表面に露出したコロイダルシリカが占める面積は、塗膜表面の走査型電子顕微鏡写真の二次電子像を画像処理することにより求めた面積をいう。また、コロイダルシリカに覆われていない被覆成分の分布状態や大きさは、走査型電子顕微鏡の二次電子像を用いて目視で判断することができる。具体的な電子顕微鏡写真撮影条件と画像処理に用いたソフトウェアの一例を以下に挙げる。
【0032】
・電子顕微鏡写真
日本電子製 JSM−6340F型 電界放射形走査型電子顕微鏡
加速電圧 2.5kV、倍率50,000倍・画像処理解析
Planetron Inc.Image−Pro Plus
解析対象最小面積 1e−5μm
尚、成膜時にコロイダルシリカは重合体粒子の間をすり抜けるように塗膜表面に浮上し、重合体粒子を覆うような形で成膜すると考えられる。従って、塗膜の表面形態について、コロイダルシリカに覆われていない重合体部分の形状は、被覆成分中の重合体粒子の形状を反映し、円形又はそれに近い形状、もしくはそれらが付着した形状が主となる。電子顕微鏡写真において、これらとコロイダルシリカのコントラストが不十分であると実態に即した画像処理結果が得られにくい。従って電子顕微鏡写真のデジタル画像にコントラストを付ける為にPhoto Shopなどのソフトウェアで処理してから画像処理することも有効である。
【0033】
また、塗膜表面においてコロイダルシリカに覆われていない重合体部分は、その直径が0〜1μmであって、塗膜表面に均等に分布していることが好ましい。重合体粒子がコロイダルシリカに覆われずに露出している部分が過剰に大き過ぎたり、重合体の露出している部分が塗膜の一部に偏っていたりすると、塗膜全体の耐汚染性が低下する傾向にある。
【0034】
さらに、塗膜の表層におけるコロイダルシリカ由来のシリコン濃度は10atm%以上であることが好適である。シリコン濃度が10atm%未満であると塗膜の耐汚染性、水接触角、制電性が低下する傾向にある。
【0035】
塗膜の表層におけるコロイダルシリカ由来のシリコン濃度は、X線光電子分光法にて求められる。具体的なX線光電子分光法の測定条件の一例を以下に示す。
【0036】
・X線光電子分光法
VG社 ESCA LAB 220iXL
X線源 単色化Alkα,200W
レンズモード Large XLモード
Pass Energy 100eV(wide scan)
20eV(narrow scan)
本発明で用いるコロイダルシリカ(II)の平均粒子径は、1〜60nmであり、好ましくは40nm未満、更に好ましくは20nm未満である。コロイダルシリカの粒径が60nm以下であることにより、成膜時にコロイダルシリカが塗膜表層に浮上し易くなる。塗膜表層においては、コロイダルシリカが被覆成分の重合体粒子の間隙を密に埋めるように、かつ重合体粒子を被覆するように成膜し、重合体とコロイダルシリカ、あるいはコロイダルシリカ同士が化学結合又は物理吸着して塗膜表面に存在するようになり、これによって高い耐汚染性が発現する。また、コロイダルシリカの平均粒子径が60nmを超えると塗膜表面に当たる光や透過光を乱反射するようになり、塗膜が白化するなどの問題が生じる。
【0037】
コロイダルシリカは市販品を使用することができ、水を分散媒にしたものでも有機溶剤を分散媒としたものでも良い。
【0038】
例えば、酸性を示す水性コロイダルシリカとしては、商品名:スノーテックスOXS(SiO固形分10%)、スノーテックスOS(SiO固形分20%)、スノーテックスO(SiO固形分20%)、スノーテックスO−40(SiO固形分40%)、スノーテックスOL(SiO固形分20%)、スノーテックスOUP(SiO固形分15%)(以上は日産化学工業(株)製)、アデライトAT−20Q(旭電化工業(株)製、SiO固形分20%)、カタロイドSN(触媒化成工業(株)製、SiO固形分20%)、シリカドール−20A(日本化学工業(株)製、SiO固形分20%)、シリカドール−20GA(日本化学工業(株)製、SiO固形分20%)などが挙げられる。
【0039】
アルカリ性を示す水性コロイダルシリカとしては、例えば、商品名:スノーテックスXS(SiO固形分20%)、スノーテックス20(SiO固形分20%)、スノーテックス30(SiO固形分30%)、スノーテックス40(SiO固形分40%)、スノーテックス50(SiO固形分50%)、スノーテックスC(SiO固形分20%)、スノーテックスN(SiO固形分20%)、スノーテックスS(SiO固形分30%)、スノーテックスCM(SiO固形分30%)、スノーテックスUP(SiO固形分20%)、スノーテックス20L(SiO固形分20%)、スノーテックスXL(SiO固形分40%)、(以上は日産化学工業(株)製)、アデライトAT−20(SiO固形分20%)、アデライトAT−20N(SiO固形分20%)、アデライトAT−20A(SiO固形分20%)、アデライトAT−30、アデライトAT−40、アデライトAT−50、アデライトAT−30A、アデライトAT−300、アデライトAT−300S(以上は旭電化工業(株)製)、カタロイドS−20L(SiO固形分20%)、カタロイドS−20H(SiO固形分20%)カタロイドS−30L(SiO固形分30%)、カタロイドS−30H(SiO固形分30%)、カタロイドSI−30(SiO固形分30%)、カタロイドSI−40(SiO固形分40%)、カタロイドSI−50(SiO固形分47%)、カタロイドSI−350(SiO固形分30%)、カタロイドSI−500(SiO固形分20%)、カタロイドSI−45P(SiO固形分40%)、カタロイドSI−80P(SiO固形分40%)、カタロイドSA(SiO固形分30%)、カタロイドSC−30(SiO固形分30%)(以上は触媒化成工業(株)製)、シリカドール−20(SiO固形分20%)、シリカドール−30(SiO固形分30%)、シリカドール−40(SiO固形分40%)、シリカドール−30S(SiO固形分30%)、シリカドール−20AL(SiO固形分20%)、シリカドール−20A(SiO固形分20%)、シリカドール20B(SiO固形分20%)、シリカドール−20G(SiO固形分20%)、シリカドール−20GA(SiO固形分20%)、アンモニウムシリケート(SiO固形分40%)(以上は日本化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0040】
カチオン性コロイダルシリカとしては、スノーテックスAK(日産化学工業(株)製、SiO固形分19%)、シリカドール−20P(日本化学工業(株)製、SiO固形分20%)などが挙げられる。
【0041】
本発明においては、これらのコロイダルシリカを1種で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
また、本発明に用いるコロイダルシリカ(II)としては、下記一般式(1)で示されるシラン化合物で表面処理を施したものでもよい。
【0043】
SiRn+1(OR3−n (1)
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、Rは水素原子またはエーテル結合を含みうる炭素数1〜10の炭化水素基、nは0〜2の整数を示す。)
上記一般式(1)で示されるシラン化合物の具体例としては、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシフェニルシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジエトキシフェニルシラン等を挙げることができる。これらは単独または2種以上を併用して使用することができるが、特にトリメトキシメチルシランが好ましい。
【0044】
コロイダルシリカをシラン化合物で表面処理する方法としては、重合体(I)を含む水性樹脂分散液にコロイダルシリカ、および上記シラン化合物から選ばれる少なくとも一種のシラン化合物を添加し、室温から100℃の温度で任意の時間攪拌する方法が挙げられる。
【0045】
また、別の方法としては、予めコロイダルシリカ、およびシラン化合物の少なくとも一種を室温から100℃の温度で任意の時間攪拌することによって得られた、シラン化合物で表面処理されたコロイダルシリカを重合体(I)の水性樹脂分散液中に添加する方法等が挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0046】
コロイダルシリカを表面処理する際に使用されるシラン化合物の量は、コロイダルシリカの固形分含量100質量部に対して、1〜60質量部の範囲であることが好ましい。この含有量が1質量部以上であると塗膜の耐候性が向上し、60質量部以下であると、貯蔵安定性や塗膜の耐汚染性および耐水性を低下させることなく塗膜の耐候性をさらに向上することができる。より好ましい含有量は、5〜40質量部である。
【0047】
[被覆成分]
被覆成分は重合体(I)を主成分とする。
【0048】
重合体(I)としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等種々挙げられるが、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、耐凍害性の観点からアクリル系樹脂及びアクリルシリコーン系樹脂が好ましく、アクリルシリコーン系樹脂が最も好ましい。
【0049】
本発明において重合体(I)に用いられる単量体としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等のビニルシラン類;γ−アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等のアクリロイルオキシアルキルシラン類;γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等のメタクリロイルオキシアルキルシラン類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、p−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(3−)ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体類;ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレンオキシド基含有(メタ)アクリレート類;p−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシシクロアルキル(メタ)アクリレート類;ラクトン変性ヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体類;2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート類;ジアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛等の金属含有ラジカル重合性単量体;2−(2‘−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールや、1−(メタ)アクリロイル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−アミノ−4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の耐紫外線基含有(メタ)アクリリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートメチルクロライド塩、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等の他の(メタ)アクリル系単量体;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニトリルアクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルデヒド基又はケト基に基づくカルボニル基含有単量体;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル系単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン系単量体;(メタ)アクリル酸や、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸やそのハーフエステル等、2−(メタ)アクリロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基含有単量体;酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、プロピオン酸ビニル等のラジカル重合性単量体;及び後述するグラフト交叉剤を有するシリコーンポリマー、さらに、必要に応じて、グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラン基含有ラジカル重合性単量体やN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミドのアルキロール又はアルコキシアルキル化合物等の自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体が挙げられるが、ラジカル重合可能なものであればこれらに限られるものではない。
【0050】
本発明に使用する重合体(I)には、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性を向上させる目的で加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体を使用することが好ましい。この加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体によって、重合体とコロイダルシリカの結着やコロイダルシリカの塗膜表面への露出量を向上させ、耐汚染性、耐候性、耐水性をより向上させることができる。この含有量は、重合体(I)の合計を100質量部とするとき、0.1〜20質量部の範囲内が好ましい。この含有量が0.1質量部以上であると、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性が向上し、20質量部以下であると、塗膜の耐凍害性を低下させることなく耐汚染性、耐候性、耐水性をさらに向上できる。より好ましくは0.5〜18重量部である。
【0051】
加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体は、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性を向上させる目的で使用するが、耐凍害性を低下させる成分でもある。したがって、少ない含有量で塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性を向上させることが好ましい。
【0052】
少ない含有量で塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性を向上させるためには、多層構造のエマルション粒子とし、最外層に加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体を共重合することによりこの目的は達成できる。
【0053】
更に、耐凍害性の低下を抑制するには加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体の加水分解性部位を重合過程で加水分解させないことが好ましく、そのためには70℃以下での低温で重合することが好ましい。
【0054】
この加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体の具体例としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等のビニルシラン類;γ−アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等のアクリロイルオキシアルキルシラン類;γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等のメタクリロイルオキシアルキルシラン類などが挙げられる。中でも、ビニル重合反応性、耐汚染性、耐候性、耐水性を考慮すると、アクリロイルオキシアルキルシラン類、メタクリロイルオキシアルキルシラン類が好ましく、更にはアクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン類、メタクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン類が好ましい。
【0055】
また、グラフト交叉点を有するシロキサン重合体を用い、特定の構造を有する重合体(I)とすることにより、より高度な塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、耐凍害性を発現することができる。
【0056】
重合体(I)の特定の構造とは、ジメチルシロキサンを繰り返し単位とする重合体ブロック(A)、ラジカル重合性単量体を繰り返し単位とする重合体ブロック(B)、および該重合体ブロック(A)と該重合体ブロック(B)に共重合したケイ素含有グラフト交叉単位(C)から構成されるグラフトブロック共重合体である。
【0057】
グラフトブロック共重合体を構成する重合体ブロック(A)は、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジメチルジアルコキシシラン類や、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン、ジメチルサイクリックス(ジメチルシロキサン環状オリゴマー3〜7量体混合物)等のジメチルシロキサン環状オリゴマー類や、ジメチルジクロロシラン等を原料として合成することができる。得られる樹脂の熱安定性等の性能やコストを考慮すると、重合体ブロック(A)の原料として最も好適なのは、ジメチルシロキサン環状オリゴマーである。
【0058】
また、重合体ブロック(A)の重量平均分子量は10,000以上であることが好ましい。重量平均分子量が10,000未満では、得られる塗膜の耐久性が低下する傾向にあるためである。より好ましくは50,000以上である。
【0059】
重合体ブロック(B)はラジカル重合性単量体を繰り返し単位とするものであり、グラフトブロック共重合体100質量部中、50〜99.7質量部の範囲内で含有されていることが好ましい。重合体ブロック(B)の含有量が50質量部以上であれば、塗膜の硬度、強度および耐汚染性が向上する傾向にある。また、99.7質量部以下であれば、塗膜の耐候性、耐水性および耐凍害性の低下を抑制できる傾向にある。より好ましい含有量は、60〜99.5質量部である。
【0060】
グラフトブロック共重合体を構成するケイ素含有グラフト交叉単位(C)は、得られる塗装塗膜の透明性を確保する成分であり、前述した加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体を使用することができる。
【0061】
このようなグラフトブロック共重合体のエマルションは、環状ジメチルシロキサンオリゴマーと、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体からなるグラフト交叉剤を酸性乳化剤の存在下で乳化重合した後に、重合体ブロック(B)を構成する重合性単量体をラジカル重合開始剤の存在下でグラフト共重合して得ることができる。
【0062】
なお、本発明において、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体はグラフト交叉剤として使用するだけでなく、重合体ブロック(B)を重合する際に添加して使用することが好ましい。
【0063】
また、水性被覆材の貯蔵安定性、顔料や添加物を入れ塗料化する際の配合安定性および塗膜の耐汚染性の点から、本発明に使用する重合体の共重合成分として、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を使用することが好ましい。この含有量は、重合体(I)の合計を100質量部とするとき、0.1〜10質量部の範囲内が好ましい。含有量が0.1質量部以上であると水性被覆材の貯蔵安定性が向上し、本発明の水性被覆材に顔料を入れて着色した場合、凝集物が発生するような問題を回避することができ、さらに塗膜の耐汚染性も向上する。また、この含有量が10質量部以下であると、塗膜の耐候性および耐水性を低下させることなく貯蔵安定性、配合安定性、および塗膜の耐汚染性をさらに向上することができる。より好ましい含有量は、0.5〜8質量部である。
【0064】
前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは必要に応じて1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0065】
また、水性被覆材の配合安定性や塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性および各種素材に対する密着性の点から、重合体に使用する共重合成分として、ヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体および/またはポリオキシアルキレン基含有ラジカル重合性単量体を使用することが好ましい。この含有量は、重合体(I)の合計を100質量部とするとき、0.5〜20質量部の範囲内が好ましい。この含有量が0.5質量部以上であると水性被覆材の配合安定性や塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性および各種素材に対する密着性が向上し、20質量部以下であると、塗膜の耐候性および耐水性を低下させることなく水性被覆材の配合安定性や塗膜の耐汚染性および各種素材に対する密着性をさらに向上することができる。より好ましい含有量は、1〜12質量部である。
【0066】
前記ヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレー等が挙げられる。
【0067】
また、このポリオキシアルキレン基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等の末端ヒドロキシ型ポリアルキレンオキシド基含有ラジカル重合性単量体や、メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端型ポリアルキレンオキシド基含有ラジカル重合性単量体が挙げられる。これらは必要に応じて1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0068】
また、塗膜の耐候性、耐水性の点から、重合体に使用する共重合成分として、t−ブチルメタクリレートおよび/またはシクロヘキシルメタクリレートを使用することが好ましい。この含有量は、重合体(I)の合計を100質量部とするとき、5〜70質量部の範囲内が好ましい。この含有量が5質量部以上であると、塗膜の耐水性および耐候性が向上し、70質量部以下であると、塗膜の耐凍害性を低下させることなく耐候性および耐水性をさらに向上できる。より好ましい含有量は、10〜60質量部である。
【0069】
また、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性および各種素材に対する密着性の点から、重合体に用いられる共重合成分として、自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体を含有することが好ましい。この含有量は、重合体(I)の合計を100質量部とするとき、0.1〜15質量部の範囲内が好ましい。この含有量が0.1質量部以上であると塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性および各種素材に対する密着性が向上し、15質量部以下であると、塗膜の耐水性および耐候性を低下させることなく塗膜の耐汚染性および各種素材に対する密着性をさらに向上することができる。より好ましい含有量は、0.5〜12質量部である。
【0070】
ここで、自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体とは、樹脂が樹脂分散液中に分散し、室温で保管されている間は化学的に安定であって、塗装時の乾燥、加熱あるいはその他の外的要因によって側鎖官能基同士の反応を生じ、該側鎖基間に化学結合を生じるような官能基を有するラジカル重合性単量体を指す。この自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラン基含有ラジカル重合性単量体、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミドのアルキロールまたはアルコキシアルキル化合物が挙げられる。これらは必要に応じて1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0071】
また、塗膜の耐候性の点から、重合体に用いられる共重合成分として、耐紫外線ラジカル重合性単量体を含有することが好ましい。この含有量は、重合体(I)の合計を100質量部とするとき、0.1〜10質量部の範囲内が好ましい。この含有量が0.1質量部以上であると塗膜の耐候性が向上し、10質量部以下であると、重合安定性を低下させることなく塗膜の耐候性をさらに向上することができる。より好ましい含有量は、0.5〜8質量部である。
【0072】
前記耐紫外線ラジカル重合性単量体としては、代表的には、光安定化作用を有する(メタ)アクリレート、紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。光安定化作用を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−アミル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは必要に応じて1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0073】
上述した好ましい加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、ヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体および/またはポリオキシアルキレン基含有ラジカル重合性単量体、t−ブチルメタクリレートおよび/またはシクロヘキシルメタクリレート、自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体、耐紫外線ラジカル重合性単量体は、必要に応じて2種以上を併用することも好ましい。
【0074】
被覆成分の製法としては、乳化重合又は溶液重合後に水希釈する方法、溶液重合後に水希釈し脱溶剤する方法などが挙げられ、これらの製法により得られる水性被覆組成物を塗料として利用することが良く、より好ましくは乳化重合により得られる水性被覆組成物が良い。
【0075】
乳化重合法によりエマルションを得る為には、例えば、界面活性剤の存在下、ラジカル重合性単量体混合物を重合系内に供給し、ラジカル重合開始剤により重合を行わせる方法等の公知の方法を使用することができる。
【0076】
開始剤は一般的にラジカル重合に使用されるものが使用可能であり、その具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物類や2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2´−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)およびその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}およびその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)およびその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]およびその塩類等の水溶性アゾ化合物、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物類等が挙げられる。これらの開始剤は単独でも使用できるほか、2種類以上の混合物としても使用できる。また、重合速度の促進、および70℃以下での低温の重合を望まれるときには、例えば、10時間半減期温度が70℃以下である2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類等の水溶性アゾ化合物、もしくは重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
【0077】
特に、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体の加水分解性部位を重合過程で加水分解させないためには70℃以下での低温重合が好ましいため、上記の開始剤系を使用することが好ましい。中でも、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性の点から2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類等の水溶性アゾ化合物を使用することがより好ましい。
【0078】
ラジカル重合開始剤の添加量は、通常、ラジカル重合性単量体の全量に対して0.01〜10重量%の範囲であるが、重合の進行や反応の制御を考慮に入れると、0.05〜5重量%の範囲が好ましい。
【0079】
重合体(I)の分子量を調整する場合には、分子量調整剤として、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー等の公知の連鎖移動剤を用いることで、その調整が可能である。通常、ラジカル重合性単量体の全量に対して1重量%以下である。
【0080】
また、水性被覆材は、重合体(I)の合計100質量部に対し、界面活性剤を0.1〜10質量部含むことが好ましい。界面活性剤が0.1質量部以上存在することによって、水性被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。また、界面活性剤を10質量部以下とすることによって、耐水性を損なうことなく塗料化配合時の安定性、経時的安定性等を維持することができる。より好ましい含有量は、0.5〜8質量部である。
【0081】
界面活性剤としては、従来より知られる各種のアニオン性、カチオン性、またはノニオン性の界面活性剤、さらには高分子乳化剤が挙げられる。また、界面活性剤成分中にエチレン性不飽和結合を持つ、いわゆる反応性乳化剤も使用できる。
【0082】
乳化重合法により得たエマルションは、重合後、塩基性化合物の添加により系のpHを中性領域〜弱アルカリ性、すなわちpH6.5〜10.0程度の範囲に調整することで系の安定性を高めることができる。この塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0083】
請求項2に示す水性被覆材について説明する。(以下、本水性被覆材を第1の水性被覆材と略する。)
第1の水性被覆材は、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体(a)0.1〜20質量部、その他の共重合成分(b)80〜99.9質量部((a)及び(b)の質量部の合計は100質量部)より構成される重合体(I)と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)と、下記(III)で示されるアニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを含有し、前記重合体(I)100質量部に対してコロイダルシリカ(II)を固形分含有量で0.5〜20質量部含有する水性被覆材であり、この水性被覆材を塗布することにより、請求項1に記載する塗膜を得ることができる。
【0084】
(III):ポリオキシアルキレンアリールエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリールエーテルの硫酸エステル塩のホルマリン縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩のホルマリン縮合物
本水性被覆材においては、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体を含有することにより、塗膜の耐汚染性、耐候性および耐水性を向上させる。この含有量は、重合体(I)の合計を100質量部とするとき、0.1〜20質量部である。この含有量が0.1質量部以上であると、塗膜の耐汚染性、耐候性および耐水性が向上し、20質量部以下であると、塗膜の耐凍害性を低下させることなく耐汚染性、耐候性および耐水性をさらに向上できる。好ましい含有量は0.5〜18質量部、更に好ましくは1〜15質量部である。
【0085】
また、本水性被覆材においては、塗膜の耐汚染性の点から、前記(III)で示されるアニオン系界面活性剤と、ノニオン系界面活性剤とを含有することが必要である。これらの特定の界面活性剤を使用することにより、塗膜表面に露出したコロイダルシリカが占める面積を非常に大きくさせ、効率的かつ効果的に著しい親水性と制電性を有する塗膜を得ることができる。
【0086】
(III)で示されるアニオン系界面活性剤は重合体(I)の合計100質量部に対し、0.1〜10質量部を含むことが好ましい。この界面活性剤が0.1質量部以上存在することによって、塗膜の耐汚染性、塗料化配合時の安定性、水性被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。また、界面活性剤を10質量部以下とすることによって、塗膜の耐水性を損なうことなく、塗膜の耐汚染性、塗料化配合時の安定性、水性被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。より好ましい含有量は、0.5〜8質量部である。
【0087】
また、塗膜表面に露出したコロイダルシリカが占める面積を非常に大きくさせ、効率的かつ効果的に著しい親水性と制電性を有する塗膜を得るためには、(III)で示されるアニオン系界面活性剤におけるポリオキシアルキレン部はポリオキシエチレンが好ましく、その繰り返し単位数は30以下が好ましく、20以下がより好ましい。
【0088】
(III)で示されるアニオン系界面活性剤のアリール部は、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、クミルフェニル、(モノ〜ペンタ)ベンジルフェニル、(モノ〜ペンタ)スチリルフェニル、(モノ〜ペンタ)スチリルシクロヘキシルフェニル、(モノ〜ペンタ)ベンジルビフェニル、スチリルクミルフェニル等が挙げられる。
【0089】
また、(III)で示されるアニオン系界面活性剤の硫酸エステル塩としては、例えば硫酸エステルナトリウム塩、硫酸エステルカリウム塩、硫酸エステルカルシウム塩、硫酸エステルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0090】
(III)で示されるアニオン系界面活性剤のうち、例えば、ポリオキシアルキレンアリールエーテルの硫酸エステル塩についてはCPシリーズ(商品名、東邦化学(株)製)として入手することができる。また、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩としてはNewcol 707SF(商品名、日本乳化剤(株)製)として入手できる。また、ポリオキシアルキレンアリールエーテルの硫酸エステル塩のホルマリン縮合物としてはSP−185FNa(商品名、東邦化学(株)製)として入手できる。また、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩のホルマリン縮合物としてはAntox MS−60(商品名、日本乳化剤(株)製)として入手することができる。
【0091】
(III)で示されるアニオン系界面活性剤のうち、もっとも好ましいのは、下記一般式(1)、一般式(2)以下に示す2種のアニオン系界面活性剤である。これら乳化剤は、商品名CP−12Na(商品名、東邦化学(株)製、n=12)、SP−185FNa(商品名、東邦化学(株)製、n=13)として入手することができる。



【0092】
本水性被覆組成物において使用するノニオン系界面活性剤は、重合体(I)の合計100質量部に対し、0.1〜10質量部を含むことが好ましい。この界面活性剤が0.1質量部以上存在することによって、塗膜の耐汚染性、塗料化配合時の安定性、水性被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。また、界面活性剤を10質量部以下とすることによって、塗膜の耐水性を損なうことなく、塗膜の耐汚染性、塗料化配合時の安定性、水性被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。好ましい含有量は、0.5〜9質量部である。より好ましい含有量は1〜8質量部である。
【0093】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン誘導体、ポリオキシアルキレンアリールエーテルのホルマリン縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルのホルマリン縮合物が挙げられるが、塗膜表面に露出したコロイダルシリカが占める面積を非常に大きくさせ、効率的かつ効果的に著しい親水性と制電性を有する塗膜を得るためには、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが特に好ましい。
【0094】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのアルキル部は、例えば炭素数1〜36の直鎖型もしくは分岐型アルキル基が挙げられる。また、塗膜表面に露出したコロイダルシリカが占める面積を非常に大きくさせ、効率的かつ効果的に著しい親水性と制電性を有する塗膜を得るためには、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのポリオキシアルキレン部はポリオキシエチレンが好ましい。また、ポリオキシエチレンの繰り返し単位数は、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。ポリオキシエチレンの繰り返し単位数が大きいほど前述した効果が高くなる。
【0095】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのうち、最も好ましいのは下記一般式(3)に示す界面活性剤である。この乳化剤は、エマルゲン1150S−70(商品名、花王(株)製、R:主に炭素数が11、n=50)として入手することができる。
【0096】
RO−(C0)−H ・・・(3)
(但しn=0または正の数、Rは1〜36の直鎖型もしくは分岐型アルキル基)
本水性被覆材においては、塗料化配合時の安定性、水性被覆材の貯蔵安定性、界面活性剤存在下に乳化重合する場合の重合安定性を向上するために、従来より知られる各種のアニオン性、カチオン性、高分子乳化剤、界面活性剤成分中にエチレン性不飽和結合を持つ反応性乳化剤等の(III)に示すアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤以外の界面活性剤を併用することもできるが、塗膜表面に露出したコロイダルシリカが占める面積を非常に大きくさせ、効率的かつ効果的に著しい親水性と制電性を有する塗膜を得るためには、(III)に示すアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤のみを使用することが好ましい。
【0097】
さらには、(III)に示すアニオン系界面活性剤及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ノニオン系界面活性剤)のみを使用することが好ましい。
【0098】
(III)で示されるアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤の添加方法については、重合体(I)の製造工程中の添加及び重合体(I)の製造後の添加等があるが限定されるものではない。
【0099】
請求項3に示す水性被覆材について説明する。(以下、本水性被覆材を第2の水性被覆材と略する。)
第2の水性被覆材は、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位(a)4〜20質量部、その他の共重合単量体単位(b)80〜96質量部((a)及び(b)の質量部の合計は100質量部)より構成される重合体(I)と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)とを含有し、前記重合体(I)100質量部に対してコロイダルシリカ(II)を、固形分含有量で0.5〜20質量部含有する水性被覆材であり、この水性被覆材を塗布することにより、請求項1に記載する塗膜を得ることができる。
【0100】
本水性被覆材においては、塗膜の耐汚染性、耐候性および耐水性の点から、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体を含有することが必要である。この含有量は、重合体(I)の合計を100質量部とするとき、4〜20質量部の範囲内にある。この含有量が4質量部以上であると、塗膜の耐汚染性、耐候性および耐水性が向上し、20質量部以下であると、塗膜の耐凍害性を低下させることなく耐汚染性、耐候性および耐水性をさらに向上できる。好ましい含有量は、4.5〜18質量部である。より好ましい含有量は、5〜15質量部である。
【0101】
本水性被覆材においては、使用する乳化剤は特に限定されない。
【0102】
また、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体や、他の単量体については前述したものを使用することができる。
【0103】
請求項4に示す水性被覆材について説明する。(以下、本水性被覆材を第3の水性被覆材と略する。)
第3の水性被覆材は、重合体(I)100質量部に対して、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)を固形分含有量で0.5〜20質量部と、オクタノール/水分配係数が0.8未満である有機溶剤0.5〜20質量部とを含有することを特徴とする水性被覆材であり、この水性被覆材を塗布することにより、請求項1に記載する塗膜を得ることができる。
【0104】
本水性被覆材においては、使用する乳化剤の種類や、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位の含有量は特に限定されない。
【0105】
[有機溶剤]
有機溶剤は、コロイダルシリカの分散性を向上させる成分であり、オクタノール/水分配係数が0.8未満のものを使用する。オクタノール/水分配係数が0.8未満の有機溶剤を使用することにより、水性被覆材から形成される塗膜において表面へのコロイダルシリカの露出量が増加し、成膜時の耐汚染性が向上する。さらに、塗膜中のコロイダルシリカの分散性が高くなり、耐候性や耐凍害性が向上する。
【0106】
有機溶剤のオクタノール/水分配係数は、日本工業規格Z7260−107(2000)「分配係数(1−オクタノール/水)の測定−フラスコ振とう法」で定められた方法に準じて測定された値である。
【0107】
オクタノール/水分配係数が0.8未満の有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、i−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール、アリルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、2,4−ペンタジオン、ε−カプロラクトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート、カルビトールアセテートなどのエステル類、アセトニトリル等が挙げられ、これらを単独で、或いは2種以上を組み合わせて適宜使用できる。また、これら有機溶剤は、その純度に制限は無く、市販品を適用できる。
【0108】
なお、代表的な溶剤のオクタノール/水分配係数は、メタノール:0.25、エタノール:−0.31、イソプロパノール:0.05、1−プロパノール:0.25、メチルセロソルブ:−0.77、エチルセロソルブ:−0.32、カルビトール:−0.54、エチレングリコール:−1.36、アセトン:−0.24、メチルエチルケトン:0.29、アセトニトリル:−0.34である。
【0109】
水性被覆材中に占める有機溶剤の含有量は、重合体100質量部に対して0.5〜20質量部であり、好ましくは1〜18質量部である。有機溶剤の含有量が0.5質量部以上であることにより、成膜時におけるコロイダルシリカの分散性や塗膜表面への露出量が向上し、耐汚染性、水接触角、制電性、水濡れ性が向上する。また、20質量部以下であることにより、貯蔵安定性や成膜性を低下させることなく塗膜表面へのコロイダルシリカの露出量が増加し、成膜時における耐汚染性、水接触角、制電性、水濡れ性が向上する。
【0110】
次に、本水性被覆材においては、重合体(I)100質量部と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)0.5〜20質量部(固形分として)とを混合し、これにより得られる混合物に、オクタノール/水分配係数が0.8未満の有機溶剤0.5〜20質量部添加する方法により得ることができる。上記有機溶剤は、重合体とコロイダルシリカを混合した直後から塗装直前までの間に添加すればよい。より好ましくは、塗装直前に添加すると効果的である。各成分を混ぜ合わす際には、攪拌機付きの容器などを用いればよい。この製造方法によれば、オクタノール/水分配係数が0.8未満の有機溶剤を添加することにより、塗膜表面へのコロイダルシリカ露出量がより増加し、更には、塗膜中におけるコロイダルシリカの分散性が向上する。その結果、耐汚染性に極めて優れ、より高い透明性、耐候性、耐凍害性が発現する。
【0111】
本水性被覆材は、重合体100質量部に、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ0.5〜20質量部(固形分として)とオクタノール/水分配係数が0.8未満の有機溶剤0.5〜20質量部とをあらかじめ混合した混合物を添加する方法によっても製造することができる。上記混合物は、塗装直前までに添加すればいつ添加しても良い。より好ましくは、塗装直前に添加するとより効果的である。各成分を混ぜ合わす際には、攪拌機付きの容器などを用いればよい。この製造方法によれば、オクタノール/水分配係数が0.8未満の有機溶剤と平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカをあらかじめ混合した混合物を重合体に添加することにより、塗膜表面へのコロイダルシリカ露出量がより増加し、更には、塗膜中におけるコロイダルシリカの分散性が向上する。その結果、耐汚染性に極めて優れ、より高い透明性、耐候性、耐凍害性が発現する。
また、本水性被覆材は、前述した方法以外にも、重合体100質量部と、オクタノール/水分配係数が0.8未満の有機溶剤0.5〜20質量部とを混合し、これにより得られた混合物に、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ0.5〜20質量部(固形分として)を添加する方法により製造することもできる。
【0112】
第1〜第3の水性被覆材は、通常、固形分10〜80質量%の範囲で使用される。また、コーティング材料として高度な性能を発現させるために、各種顔料、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤、可塑剤、造膜助剤等の各種添加剤を含んでもよく、さらに他のエマルション樹脂、水溶性樹脂、粘性制御剤、メラミン類等の硬化剤と混合して使用してもよい。
【0113】
造膜助剤としては、通常水性塗料で用いられているものが使用でき、例えば、炭素数5〜10の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族アルコール類、芳香族基を含有するアルコール類;一般式HO−(CHCHXO)n−R(R;炭素数1〜10の直鎖又は分岐状のアルキル基、X;水素又はメチル基、n≦5の整数)で示される(ポリ)エチレングリコール又は(ポリ)プロピレングリコール等のモノエーテル類、一般式RCOO−(CHCHXO)n−R(R、R:炭素数1〜10の直鎖又は分岐状のアルキル基、X:水素又はメチル基、n≦5の整数)で示される(ポリ)エチレングリコールエーテルエステル又は(ポリ)プロピレングリコールエーテルエステル類、トルエン及びキシレン等の芳香族系有機溶剤、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールのモノ又はジイソブチレート、3−メトキシブタノール、3−メトキシブタノールアセテート、3−メチル−3−メトキシブタノール及び3−メチル−3−メトキシブタノールアセテート等が挙げられる。
【0114】
第1〜第3の水性被覆材を用いて各種材料の表面に塗膜を形成する為には、例えば、噴霧コート法、ローラーコート法、バーコート法、エアナイフコート法、刷毛塗り法、ディッピング法等の各種塗装法を適宜選択することができ、常温乾燥、又は40〜200℃に加熱乾燥することで十分に成膜した塗膜を得ることができる。また、常温あるいは50℃程度の低温乾燥で塗膜を形成させた後、重合体のガラス転移温度以上の加熱でエマルション粒子同士の結着を強固にして、より耐候性の良い塗膜とすることもできる。この際、塗膜表面に露出するコロダルシリカの多少の沈みが観測される為、短時間での加熱が有効である。
【0115】
本発明の塗膜は、特にその塗膜形成箇所に制約はなく、種々の物品(便宜的に、基体と称する)に成膜して塗装物とすることができる。そのような基体としては、例えば、セメントモルタル、スレート板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート、金属、ガラス、磁器タイル、アスファルト、木材、防水ゴム材、プラスチック、珪酸カルシウム基材等が挙げられ、本発明の塗膜をこれらの各種基体の表面仕上げ等として位置付けることができる。
【0116】
また、本発明の塗膜を有する塗装物としては、例えば、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、板材、乗物の外装、機械装置や物品の外装、防塵カバー、道路標識用反射板、視線誘導標示体、路面標示、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、道路用化粧板、信号機用光源カバー、屋外表示板、橋梁、ガードレール、トンネル内装、トンネル内照明装置、ガラス、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、道路用鏡、車両用鏡、二輪車用計量カバーおよび計量盤、ガラスレンズ、プラスチックレンズ、ヘルメットシールド、ゴーグル、家屋ならびに自動車および鉄道車両用窓ガラス、乗物風防ガラス、ショーケース、保温ショーケース、膜構造材、熱交換用フィン、種々場所のガラス表面、ブラインド、タイヤホイール、屋根材、屋根樋、アンテナ、送電線、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器収納器、食器洗浄機、食器乾燥機、流し、調理レンジ、キッチンフード、食品包装材、換気扇、鑑賞用水槽材料、循環水利用施設において循環水と接触する部分の表面材料、皮革、抗血栓性材料、抗蛋白質付着材料、脂質付着防止性材料、コンタクトレンズ、導尿カテーテル、経皮デバイス、人工臓器、血液バック、採血バック、肺ドレナージ、船底、テント地キャンバス、滑走具、機能性繊維、テレビやパソコン等の表示画面であるディスプレイ、および上記物品に貼付させるフィルム等が挙げられる。
【0117】
すなわち、建築物、土木構造物等の躯体保護に使用する水性被覆組成物を始めとする様々な被覆用途に用いることが可能であり、工業上極めて有益である。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」は質量基準である。水性被覆材の物性試験については、下記方法に従って試験を実施した。
【0119】
<塗膜表面に露出したコロイダルシリカが占める面積の割合>
塗膜表面の走査型電子顕微鏡写真の二次電子像を画像処理することにより求めた。電子顕微鏡写真撮影条件と画像処理に用いたソフトウェアを以下に示す。
【0120】
・電子顕微鏡写真
日本電子製 JSM−6340F型 電界放射形走査型電子顕微鏡
加速電圧 2.5kV、倍率50,000倍・画像処理解析
Planetron Inc.Image−Pro Plus
解析対象最小面積1e−5μm
<水接触角、耐カーボン汚染性、耐候性および耐水性の評価用試験板の作製>
リン酸亜鉛処理鋼鈑(ボンデライト#100処理鋼鈑、板厚0.8mm、縦150mm×横70mm)に、製造例で得られた水性被覆組成物を40℃の雰囲気下で、バーコーター#60にて塗装し、130℃で5分間乾燥した。その後、室温で1日間乾燥したものを、水接触角、耐カーボン汚染性、耐候性および耐水性の評価用塗板とした。
【0121】
<制電性の評価用試験板の作製>
MMA板(三菱レイヨン(株)製)に、製造例で得られた水性被覆組成物を40℃の雰囲気下でバーコーター#60にて塗装し、130℃で5分間乾燥した。その後、室温で1日間乾燥したものを約4cm角に切り出して制電性の評価用塗板とした。
【0122】
<耐屋外曝露汚染性の評価用試験板の作製>
リン酸亜鉛処理鋼鈑(ボンデライト#100処理鋼鈑、板厚0.8mm、縦300mm×横100mm)に、中塗りとしてダイヤナールLX−2011(三菱レイヨン(株)商品名)を使用した白エナメル塗料(PVC=40%)を乾燥膜厚が50μmになるように室温にてスプレー塗装し、130℃で5分間乾燥した。次いで、製造例で得られた水性被覆組成物を乾燥膜厚が30μmになるように室温にてスプレー塗装し、130℃で5分間乾燥した後、室温で1日間乾燥したものを、耐屋外曝露汚染性の評価用塗板とした。
【0123】
<塗膜伸度評価用塗膜の作製>
PETフィルムに、製造例で得られた水性被覆組成物を室温でアプリケーター10MILにて塗装し、80℃で12時間乾燥した後、室温で1日間乾燥した。この塗装フィルムをダンベル形状2号型に裁断し、塗膜をPETフィルムから剥がしたものを、塗膜伸度評価用塗膜とした。
【0124】
<試験方法>
(1)透明性
ガラス板に40℃の雰囲気下で評価用クリヤー塗料を4MILアプリケーターにて塗装し、130℃で5分間乾燥し、評価用塗板を得た。その塗膜の透明性を目視にて目視にて観測し、以下の基準で判定した。
【0125】
「○」:透明
「△」:半透明
「×」:白濁
(2)水接触角
協和界面科学(株)製CA−X150型FACE接触角計を用い、評価用塗板に0.4μL(画面上目盛り;3目盛り)の水滴を滴下し、30秒経過後の水接触角を測定した。
【0126】
(3)制電性
評価用試験板をシシド静電気株式会社製STATIC HONES TMETER S−5109に取り付け、JIS L 1094に示される半減期測定を行い、以下の基準で判定した。この際、プラス10kVの印加を30秒行った後、印加を止め、ターンテーブルを回転させたまま印加開始より180秒間測定した。
【0127】
「◎」:30秒未満
「○」:30秒以上、90秒未満
「△」:90秒以上、180秒未満
「×」:180秒以上
(4)カーボン汚染除去性
評価用塗板に霧吹きにて水を噴霧した直後に、スポイトを用いてカーボンMA100(三菱化学(株)製)の10%石油ベンジン溶液を垂らし、5秒後に水道水にて洗い流した。カーボン溶液を垂らした部分について、カーボンの塗膜への付着程度を目視にて観測し、以下の基準で判定した。
【0128】
「◎」:全く付着無し
「○」:部分的に僅かに付着
「△」:全面に薄く付着
「×」:全面に濃く付着
(5)耐屋外曝露汚染性
縦300mm×横100mmの試験板を上方から3分の1の長さのところで、内角が135度になるように折り曲げ、その試験板を三菱レイヨン(株)豊橋事業所内(豊橋市牛川通)で南面に向かせ、面積が広い面(垂直面)を垂直にし、さらに面積の狭い面(上部面)が上部になるように設置して6ヶ月間曝露したのち、塗装被膜上部面における曝露前後の白さの差ΔLを色差計により測定し、垂直面は雨筋汚れの有無を目視にて評価した。判定基準を以下に示す。
【0129】
(塗装被膜上部面における曝露前後の白さの差ΔL)
「◎」:2.5未満
「○」:2.5以上、5.0未満
「△」:5.0以上、7.5未満
「×」:7.5以上
(垂直面の雨筋汚れの有無)
「◎」:雨筋汚染なし
「○」:わずかに雨筋汚染が見られる
「×」:明らかに雨筋汚染が見られる
(6)耐候性
試験板を70mm×50mmの大きさに切り取り、ダイプラ・メタルウエザーKU−R4−W型(ダイプラ・ウィンテス(株)社製)にこの試験板を入れ、試験サイクル:照射4時間(噴霧5秒/15分)/結露4時間、UV強度:85mW/cm、ブラックパネル温度:照射時63℃/結露時30℃、湿度:照射時50%RH/結露時96%RH、の条件で、96時間(12サイクル)経過毎の60°グロスの保持率を耐候性の指標とし、以下の基準で判定した。尚、最長で480時間(60サイクル)継続した。
【0130】
「◎」:90%以上
「○」:70%以上、90%未満
「△」:50%以上、70%未満
「×」:50%未満、もしくは塗膜の剥離・クラックが生じたもの
(7)耐水性
試験板を60℃の純水に5日間浸漬後、室温にて2時間乾燥した塗膜の60°グロスの光沢保持率を耐水性の指標とし、以下の基準で判定した。
【0131】
「◎」:90%以上
「○」:70%以上、90%未満
「△」:50%以上、70%未満
「×」:50%未満
(8)塗膜伸度
塗膜伸度評価用塗膜の伸度測定は、テンシロン測定機を用いて測定した。尚、この試験速度は50mm/min、ロードセル定格1kN、測定時の環境温度は25℃で行った。
【0132】
<製造例1>ポリオルガノシロキサン重合体水分散液の調製
環状ジメチルシロキサンオリゴマー3〜7量体混合物95質量部と、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5質量部、脱イオン水250質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4質量部及びドデシルベンゼンスルホン酸0.4質量部からなる組成物を、ホモミキサーで予備混合し、圧力式ホモジナイザーを用いて200kg/cmの圧力で強制乳化して、原料プレエマルションを得た。
【0133】
次いで、水55質量部及びドデシルベンゼンスルホン酸5質量部を、攪拌機、還流冷却管、温度制御装置及び滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコの内温を85℃に保ちながら、上記原料プレエマルションを4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を進行させ、冷却して、ドデシルベンゼンスルホン酸と当モル量のアンモニアを加えてポリオルガノシロキサン共重合体水分散液(SiEm)を調製した。固形分は22.7%であった。
【0134】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水:80質量部、CP−12Na(東邦化学(株)製、非反応型アニオン性界面活性剤、固形分30%):2.5質量部および下記表1の「1段目(内層)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物を仕込んだ。フラスコの内温を50℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム:0.15質量部/脱イオン水:1質量部の開始剤水溶液を添加し、更に亜硫酸水素ナトリウム:0.05質量部/脱イオン水:1質量部の還元剤水溶液を添加した。重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を65℃に保持し、上記還元剤水溶液添加1時間後にエマルゲン1150S−70(花王(株)製、非反応型ノニオン性界面活性剤、固形分70%):1.43質量部/脱イオン水:1.9質量部の界面活性剤水溶液を添加した。
【0135】
上記界面活性剤水溶液添加0.5時間後に、下記表1の「2段目(外層)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物、脱イオン水:21質量部、CP−12Na:6.7質量部及びAMP−90(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールの90%水溶液):0.115部を予め乳化分散させたプレエマルション液と、VA−061(和光純薬工業(株)製):0.1質量部/メタノール:2質量部/脱イオン水:3質量部の開始剤溶液とを、1.5時間かけて2系列滴下した。この滴下中はフラスコの内温を65℃に保持し、滴下が終了してから65℃で1時間保持した。28%アンモニア水を0.63質量部添加後、さらに65℃で0.5時間保持した。
【0136】
その後、室温まで冷却し、スノーテックスO(日産化学工業(株)製、コロイダルシリカ水分散液、SiO固形分=20%)を25質量部(固形分として5質量部)添加して水性被覆材を得た。
【0137】
さらに、造膜助剤としてブチルセロソルブを5質量部添加して塗料とした。
【0138】
得られた塗料を用いて塗膜を作製し、透明性、水接触角、制電性、耐カーボン汚染性、耐屋外曝露汚染性、耐候性、耐水性の物性試験を行った。その結果を下記表4に示す。
【0139】
[実施例2]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水:80質量部、CP−12Na:2.5質量部、SiEm:4質量部(固形分0.9質量部)および下記表1の「1段目(内層)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物を仕込んだ。フラスコの内温を50℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム:0.15質量部/脱イオン水:1質量部の開始剤水溶液を添加し、更に亜硫酸水素ナトリウム:0.05質量部/脱イオン水:1質量部の還元剤水溶液を添加した。重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を65℃に保持し、上記還元剤水溶液添加1時間後にエマルゲン1150S−70:1.43質量部/脱イオン水:1.9質量部の界面活性剤水溶液を添加した。
【0140】
上記界面活性剤水溶液添加0.5時間後に、下記表1の「2段目(外層)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物、脱イオン水:21質量部、CP−12Na:6.7質量部及びAMP−90:0.115部を予め乳化分散させたプレエマルション液と、VA−061:0.1質量部/メタノール:2質量部/脱イオン水:3質量部の開始剤溶液とを、1.5時間かけて2系列滴下した。この滴下中はフラスコの内温を65℃に保持し、滴下が終了してから65℃で1時間保持した。28%アンモニア水を0.63質量部添加後、さらに65℃で0.5時間保持した。
【0141】
その後、室温まで冷却し、スノーテックスOを25質量部(固形分として5質量部)添加して水性被覆材を得た。
【0142】
さらに、造膜助剤としてブチルセロソルブを5質量部添加して塗料とした。
【0143】
得られた塗料を用いて塗膜を作製し、透明性、水接触角、制電性、耐カーボン汚染性、耐屋外曝露汚染性、耐候性、耐水性、塗膜伸度の物性試験を行った。その結果を下記表4に示す。
【0144】
[実施例3]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水:80質量部、CP−12Na:1.7質量部、SiEm:22質量部(固形分5質量部)、下記表1の「1段目(内層)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物、およびパーブチルH69(日本油脂(株)製):0.09質量部を仕込んだ。フラスコの内温を55℃に昇温した後、硫酸第一鉄:0.0002質量部/EDTA:0.0005質量部/ロンガリット:0.05質量部/脱イオン水:1質量部の還元剤水溶液を添加した。重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を65℃に保持し、上記還元剤水溶液添加1時間後にエマルゲン1150S−70:1.43質量部/脱イオン水:1.9質量部の界面活性剤水溶液を添加した。
【0145】
上記界面活性剤水溶液添加0.5時間後に、下記表1の「2段目(外層)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物、脱イオン水:21質量部、CP−12Na:6.7質量部及びAMP−90:0.115部を予め乳化分散させたプレエマルション液と、VA−061:0.1質量部/メタノール:2質量部/脱イオン水:3質量部の開始剤溶液とを、1.5時間かけて2系列滴下した。この滴下中はフラスコの内温を65℃に保持し、滴下が終了してから65℃で1時間保持した。28%アンモニア水を0.63質量部添加後、さらに65℃で0.5時間保持した。
【0146】
その後、室温まで冷却し、スノーテックスOを25質量部(固形分として5質量部)添加して水性被覆材を得た。
【0147】
さらに、造膜助剤としてブチルセロソルブを5質量部添加して塗料とした。
【0148】
得られた塗料を用いて塗膜を作製し、透明性、水接触角、制電性、耐カーボン汚染性、耐屋外曝露汚染性、耐候性、耐水性、塗膜伸度の物性試験を行った。その結果を下記表4に示す。
【0149】
[実施例4〜18及び21、22]
実施例3のコロイダルシリカ水分散液の種類・添加量、界面活性剤の種類、「1段目(内層)」に示す共重合体の構成成分、「2段目(外層)」に示す共重合体の構成成分を表1、2に記載の通り変更した以外は実施例3と同様にして水性被覆材を作製した。
【0150】
但し、実施例13については水性被覆材のpHが7以下であったため、AMP−90を更に添加しpHを8.8とした。
【0151】
さらに、造膜助剤としてブチルセロソルブを5質量部添加して塗料とした。
【0152】
但し、実施例10、11、21、22についてはブチルセロソルブ5部では成膜不良が生じたため、ブチルセロソルブを17部添加して塗料とした。
【0153】
得られた塗料を用いて塗膜を作製し、実施例4〜7、21、22については透明性、水接触角、制電性、耐カーボン汚染性、耐屋外曝露汚染性、耐候性、耐水性の物性試験を、実施例8〜18については透明性、水接触角、制電性、耐カーボン汚染性の物性試験を行った。その結果を下記表4に示す。
【0154】
[実施例19]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水:40質量部、CP−12Na:1.7質量部、SiEm:44質量部(固形分10質量部)、下記表2の「1段目(内層)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物、およびパーブチルH69:0.09質量部を仕込んだ。フラスコの内温を55℃に昇温した後、硫酸第一鉄:0.0002質量部/EDTA:0.0005質量部/ロンガリット:0.05質量部/脱イオン水:1質量部の還元剤水溶液を添加した。重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を65℃に保持し、上記還元剤水溶液添加1時間後にエマルゲン1150S−70:1.43質量部/脱イオン水:1.9質量部の界面活性剤水溶液を添加した。
【0155】
上記界面活性剤水溶液添加0.5時間後に、下記表2の「2段目(外層)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物、脱イオン水:21質量部、CP−12Na:6.7質量部及びAMP−90:0.115部を予め乳化分散させたプレエマルション液と、VA−061:0.1質量部/メタノール:2質量部/脱イオン水:3質量部の開始剤溶液とを、1.5時間かけて2系列滴下した。この滴下中はフラスコの内温を65℃に保持し、滴下が終了してから65℃で1時間保持した。28%アンモニア水を0.63質量部添加後、さらに65℃で0.5時間保持した。
【0156】
その後、室温まで冷却し、スノーテックスOを25質量部(固形分として5質量部)添加して水性被覆材を得た。
【0157】
さらに、造膜助剤としてブチルセロソルブを5質量部添加して塗料とした。
【0158】
得られた塗料を用いて塗膜を作製し、透明性、水接触角、制電性、耐カーボン汚染性、耐屋外曝露汚染性、耐候性、耐水性の物性試験を行った。その結果を下記表4に示す。
【0159】
[実施例20]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水:10質量部、CP−12Na:1.7質量部、SiEm:88質量部(固形分20質量部)、下記表2の「1段目(内層)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物、およびパーブチルH69:0.09質量部を仕込んだ。フラスコの内温を55℃に昇温した後、硫酸第一鉄:0.0002質量部/EDTA:0.0005質量部/ロンガリット:0.05質量部/脱イオン水:1質量部の還元剤水溶液を添加した。重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を65℃に保持し、上記還元剤水溶液添加1時間後にエマルゲン1150S−70:1.43質量部/脱イオン水:1.9質量部の界面活性剤水溶液を添加した。
【0160】
上記界面活性剤水溶液添加0.5時間後に、下記表2の「2段目(外層)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物、脱イオン水:21質量部、CP−12Na:6.7質量部及びAMP−90:0.115部を予め乳化分散させたプレエマルション液と、VA−061:0.1質量部/メタノール:2質量部/脱イオン水:3質量部の開始剤溶液とを、1.5時間かけて2系列滴下した。この滴下中はフラスコの内温を65℃に保持し、滴下が終了してから65℃で1時間保持した。28%アンモニア水を0.63質量部添加後、さらに65℃で0.5時間保持した。
【0161】
その後、室温まで冷却し、スノーテックスOを25質量部(固形分として5質量部)添加して水性被覆材を得た。
【0162】
さらに、造膜助剤としてブチルセロソルブを5質量部添加して塗料とした。
【0163】
得られた塗料を用いて塗膜を作製し、透明性、水接触角、制電性、耐カーボン汚染性、耐屋外曝露汚染性、耐候性、耐水性の物性試験を行った。その結果を下記表4に示す。
【0164】
[実施例23]
実施例22と同様にして水性被覆材を作製し、エタノールを5質量部添加した。
【0165】
さらに、造膜助剤としてブチルセロソルブを17質量部添加して塗料とした。
【0166】
得られた塗料を用いて塗膜を作製し、透明性、水接触角、制電性、耐カーボン汚染性の物性試験を行った。その結果を下記表4に示す。
【0167】
[比較例1〜3]
実施例3のコロイダルシリカ水分散液の種類・添加量を下記表3に記載の通り変更した以外は実施例3と同様にして水性被覆材を作製した。
【0168】
さらに、造膜助剤としてブチルセロソルブを5質量部添加して塗料とした。
【0169】
得られた塗料を用いて塗膜を作製し、比較例1、2については透明性、水接触角、制電性、耐カーボン汚染性、耐屋外曝露汚染性、耐候性の物性試験を、比較例3については透明性、水接触角、制電性、耐カーボン汚染性、耐屋外曝露汚染性、耐候性、塗膜伸度の物性試験を行った。その結果を下記表4に示す。
【0170】
[比較例4]
実施例3の「1段目(内層)」に示す共重合体の構成成分を下記表3に記載の通り変更した以外は実施例3と同様にして水性被覆材を作製した。
【0171】
さらに、造膜助剤としてブチルセロソルブを5質量部添加して塗料とした。
【0172】
得られた塗料を用いて塗膜を作製し、透明性、水接触角、制電性、耐カーボン汚染性、耐屋外曝露汚染性、耐候性、耐水性の物性試験を行った。その結果を下記表4に示す。






【0173】
表1、2中の略号は、以下の化合物を示す。
【0174】
MMA:メチルメタクリレート
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
t−BMA:ターシャリーブチルメタクリレート
n−BA:ノルマルブチルアクリレート
St:スチレン
SZ−6030:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
n−BMA:ノルマルブチルメタクリレート
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
i−BMA:イソブチルメタクリレート
2−EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
スノーテックスO:(商品名、日産化学工業(株)製、粒子径は10〜20nm)
スノーテックス20:(商品名、日産化学工業(株)製)、粒子径は10〜20nm)
スノーテックスZL:(商品名、日産化学工業(株)製)、粒子径は70〜100nm)
CP−12Na:(商品名、東邦化学(株)製)
SP−185FNa:(商品名、東邦化学(株)製)
ラテムルE−118B:(商品名、花王(株)製)
アデカリアソープSR−1025:(商品名、旭電化工業(株)製)
エマルゲン1150S−70:(商品名、花王(株)製)
エマルゲン1135S−70:(商品名、花王(株)製)


【0175】
表4から明らかなように、実施例の塗膜は、水接触角及び制電性が良好であるため耐汚染性(カーボン汚染除去性及び耐屋外曝露汚染性)に優れるとともに高い透明性、耐候性、耐水性、塗膜伸度のを兼ね備えている。これに対して、比較例の塗膜は、耐汚染性、透明性、耐候性、耐水性、塗膜伸度の物性バランスに劣るものである。特に、比較例1、2、4の塗膜では塗膜表面に露出したコロイダルシリカの面積が小さくなり、耐汚染性が低位である。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の塗膜は、特に高い耐汚染性、透明性、耐候性、耐水性、塗膜伸度が求められる物品への塗装に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(I)を含む被覆成分と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)とを含有した塗膜であって、前記重合体(I)100質量部に対してコロイダルシリカ(II)を固形分含有量で0.5〜20質量部含有し、塗膜表面に露出したコロイダルシリカの面積が、塗膜表面の35%以上を占める塗膜。
【請求項2】
加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位(a)0.1〜20質量部、その他の共重合単量体単位(b)80〜99.9質量部((a)及び(b)の質量部の合計は100質量部)より構成される重合体(I)と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)と、下記(III)に示される少なくとも1種のアニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを含有し、前記重合体(I)100質量部に対してコロイダルシリカ(II)を固形分含有量で0.5〜20質量部含有する水性被覆材。
(III):ポリオキシアルキレンアリールエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリールエーテルの硫酸エステル塩のホルマリン縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩のホルマリン縮合物
【請求項3】
加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位(a)4〜20質量部、その他の共重合単量体単位(b)80〜96質量部((a)及び(b)の質量部の合計は100質量部)より構成される重合体(I)と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)とを含有し、前記重合体(I)100質量部に対してコロイダルシリカ(II)を、固形分含有量で0.5〜20質量部含有する水性被覆材。
【請求項4】
重合体(I)100質量部に対して、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)を固形分含有量で0.5〜20質量部と、オクタノール/水分配係数が0.8未満である有機溶剤0.5〜20質量部とを含有することを特徴とする水性被覆材。
【請求項5】
請求項2〜4の何れか1項記載の水性被覆材を塗布することにより、重合体(I)を含む被覆成分と、平均粒子径が60nm以下のコロイダルシリカ(II)とを含有した塗膜であって、前記重合体(I)100質量部に対してコロイダルシリカ(II)を固形分含有量で0.5〜20質量部含有し、塗膜表面に露出したコロイダルシリカの面積が、塗膜表面の35%以上を占める塗膜を製造する方法。
【請求項6】
請求項1記載の塗膜を有する塗装物。

【国際公開番号】WO2005/075583
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517696(P2005−517696)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001489
【国際出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】