説明

塗膜形成方法および圧電素子の製造方法

【課題】被塗布物に、簡単に塗膜を形成することができるとともに、塗膜の被塗布物の角部に対応する部分の膜厚を厚くすることができる塗膜形成方法、およびこの塗膜形成方法を用いることにより、信頼性の高い圧電素子を簡単に製造することのできる圧電素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】第1面27、側面28および角部Aを有する圧電素子片2にレジスト液Qを塗布してレジスト膜Lを形成する塗膜形成方法であって、レジスト液Qをノズル孔501から吐出し圧電素子片2の角部Aに着弾させることにより、角部Aに第1のレジスト膜L1を形成する第1のレジスト膜形成工程と、圧電素子片2を浸漬用塗布液Rに浸漬することにより、圧電素子片2および第1のレジスト膜L1の表面に第2のレジスト膜L2を形成する第2のレジスト膜形成工程とを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜形成方法および圧電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水晶等の圧電体材料で構成された圧電基板の表面に電極を形成する方法として次のような方法が知られている。すなわち、まず、圧電基板上に電極を形成するための金属膜をスパッタリング法により形成する。次いで、金属膜上にレジスト(フォトレジスト)を塗布し、電極の形状にパターニング(露光・現像)することによりレジストマスクを形成する。そして、レジストマスクを介して金属膜をエッチングした後、レジストマスクを除去することにより圧電基板上に電極を形成する。
【0003】
また、金属膜上にレジストを塗布する方法(塗膜を形成する方法)として、スプレーコート法や(特許文献1参照)、ディッピング法などが知られている。これらのうち、スプレーコート法は、ミスト状にしたレジストを気流に乗せて圧電基板に吹き付けることにより金属膜の表面にレジストを塗布する方法である。一方のディッピング法は、容器に満たされたレジスト液中に圧電基板を浸漬することにより、金属膜の表面にレジストを塗布する方法である。
【0004】
しかしながら、このようなスプレーコート法およびディッピング法では、ともに、金属膜上に塗布されたレジストに、その表面積が最も小さくなるような力(表面張力)が働く。そのため、塗布されたレジストを乾燥して形成したレジスト膜では、圧電基板の角部に対応する部分の膜厚が、レジストマスクとしての機能を発揮するには薄くなり過ぎる。その結果、前記レジスト膜で形成されたレジストマスクを介して金属膜をエッチングすると、圧電基板の角部に対応する部分(すなわち、レジストマスクが薄い部分)にて、不本意な金属膜の除去が行われ、短絡や断線が発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−87934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、被塗布物に、簡単に塗膜を形成することができるとともに、塗膜の被塗布物の角部に対応する部分の膜厚を厚くすることができる塗膜形成方法、およびこの塗膜形成方法を用いることにより、信頼性の高い圧電素子を簡単に製造することのできる圧電素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の塗膜形成方法は、上面、側面およびこれらが交差する角部を有する被塗布物に塗膜を形成する塗膜形成方法であって、
吐出法により液滴をノズルから吐出し、吐出された前記液滴を、前記被塗布物の前記角部に着弾させることにより、前記角部に第1の塗膜を形成する第1の塗膜形成工程と、
前記第1の塗膜が形成された前記被塗布物を浸漬用塗布液に浸漬することにより、前記被処理物および前記第1の塗膜の表面に第2の塗膜を形成する第2の塗膜形成工程とを有することを特徴とする。
【0008】
これにより、被塗布物に、簡単に塗膜を形成することができるとともに、塗膜の被塗布物の角部に対応する部分の膜厚を厚くすることができる。また、初めに吐出法により被塗布物の角部に第1の塗膜を形成するため、被塗布物の角部が露出しており、そのため角部の位置を把握し易く、より正確に、第1の塗膜を角部に形成することができる。また、第1の塗膜を形成した後に、浸漬法により被塗布物および第1の塗膜の表面に第2の塗膜を形成するため、表面が滑らかな塗膜(第1、第2の塗膜の集合体)を形成することができる。
【0009】
本発明の塗膜形成方法では、前記第1の塗膜形成工程では、前記角部の必要な部分に選択的に前記第1の塗膜を形成することが好ましい。
これにより、不必要な部分への第1の塗膜の形成が防止され、第1の塗膜形成工程の実施時間を短縮することができるとともに、液滴の使用量を削減することができる。
本発明の塗膜形成方法では、前記第1の塗膜形成工程は、第1の液滴を前記上面の法線方向から前記角部に衝突するように前記ノズルから吐出し、前記第1の液滴を前記角部に着弾させる第1の工程と、前記第1の液滴が乾燥した後に、前記第1の液滴の前記被塗布物への着弾位置に対して前記角部の延在方向にずれた位置から、第2の液滴を前記上面の法線方向から前記角部に衝突するとともに前記被塗布物への着弾状態にて前記第1の液滴と重なるように前記ノズルから吐出し、前記第2の液滴を前記角部に着弾させる第2の工程とを有することが好ましい。
これにより、被塗布物の角部に、膜厚の比較的厚い第1の塗膜を形成することができる。また、第1の塗膜形成工程において、液滴の吐出方向を一定(上面の法線方向)に保ったままで、延在方向の異なる全ての角部に対して液滴を塗布することができるため、角部に簡単に第1の塗膜を形成することができる。
【0010】
本発明の塗膜形成方法では、前記第1の塗膜形成工程において、前記第1の工程では、前記角部から前記上面の法線方向に引いた線分上を前記第1の液滴の中心が通過し、前記第2の工程では、前記角部から前記上面の法線方向に引いた線分上を前記第2の液滴の中心が通過することが好ましい。
これにより、第1の液滴が、角部を包み込むように被塗布物に塗布される。そのため、より確実に、第1の液滴を角部に塗布することができる。また、ノズルの位置が所定位置から若干ずれたり、液滴の吐出方向が上面の法線方向から若干ずれたりしても、そのずれを許容し、第1の液滴を角部に着弾させることができる。第2の液滴についても同様の効果が得られる。
【0011】
本発明の塗膜形成方法では、前記第1の塗膜形成工程において、前記第1の液滴および前記第2の液滴の径が、それぞれ等しく、前記第1の液滴および前記第2の液滴の中心間距離は、前記第1の液滴の直径よりも短いことが好ましい。
これにより、第1の塗膜の膜厚をより厚くすることができる。
本発明の塗膜形成方法では、前記第1の塗膜形成工程において、前記第1の工程では、複数の前記第1の液滴を前記被塗布物への着弾状態にて互いに重ならないように前記ノズルから吐出し、前記第2の工程では、複数の前記第2の液滴を前記被塗布物への着弾状態にて互いに重ならないように前記ノズルから吐出することが好ましい。
これにより、第1の塗膜形成工程の処理時間をより短くすることができる。
【0012】
本発明の塗膜形成方法では、前記液滴の径は、10μm〜50μmであることが好ましい。
これにより、液滴を角部に着弾させやすくなるとともに、角部に着弾した液滴を角部に留めておくことが容易となる(すなわち、自重で液滴が被塗布物の側面に流下するのを防止することができる)。
【0013】
本発明の塗膜形成方法では、前記液滴の粘度は、10cP〜20cPであることが好ましい。
これにより、液滴が角部に留まり易くなる。
本発明の塗膜形成方法では、前記被塗布物は、圧電体材料で構成された圧電素子片であることが好ましい。
これにより、例えば、圧電素子片上に所望の形状の電極を形成する際に用いるレジストマスクを形成するためのレジスト膜を簡単に形成することができる。そのため、圧電素子片上に電極が形成されてなる圧電素子を簡単に製造することができる。
【0014】
本発明の塗膜形成方法では、前記塗布液および前記液滴は、それぞれ、レジスト液であることが好ましい。
これにより、例えば、圧電素子片上に所望の形状の電極を形成する際に用いるレジストマスクを形成するためのレジスト膜を簡単に形成することができる。そのため、圧電素子片上に電極が形成されてなる圧電素子を簡単に製造することができる。
【0015】
本発明の圧電素子の製造方法は、上面、側面およびこれらが交差する角部を有する圧電素子片の表面に電極を形成することにより圧電素子を形成する圧電素子の製造方法であって、
前記圧電素子片の表面に前記電極形成用の金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜の表面にレジストマスクを形成するレジストマスク形成工程と、
前記レジストマスクを用いて前記金属膜をパターニングし、前記電極を形成する電極形成工程とを有し、
前記レジストマスク形成工程は、吐出法によりレジスト液をノズルから吐出し、吐出された前記レジスト液を、前記圧電素子片の前記角部に着弾させることにより、前記角部に第1のレジスト膜を形成する第1のレジスト膜形成工程と、前記第1のレジスト膜が形成された前記圧電素子片を浸漬用レジスト液に浸漬することにより、前記金属膜および前記第1のレジスト膜の表面に第2のレジスト膜を形成する第2のレジスト膜形成工程とを有し、前記第1のレジスト膜および前記第2のレジスト膜に露光、現像を行うことにより前記レジストマスクを形成するよう構成されていることを特徴とする。
【0016】
これにより、圧電素子片の表面に形成された金属膜上に形成されたレジスト膜(第1、第2のレジスト膜の集合体)の、圧電素子片の角部に対応する部分の膜厚を厚くすることができる。また、初めに吐出法により圧電素子片の角部に第1のレジスト膜を形成するため、圧電素子片の角部の位置を把握し易く、より正確に、第1のレジスト膜を角部に形成することができる。また、第1のレジスト膜を形成した後に、浸漬法により金属膜および第1のレジスト膜の表面に第2のレジスト膜を形成するため、表面が滑らかなレジスト膜を形成することができる。そのため、このようなレジスト膜をパターニングして形成されたレジストマスクを介して金属膜をエッチングすることにより、圧電素子片の角部付近における、不本意な、金属膜の除去を防止することができる。これにより、断線や短絡を防止することができ、信頼性の高い圧電素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の圧電素子の製造方法により製造される圧電素子を示す斜視図である。
【図2】図1に示す圧電素子の断面図(A−A線断面図)である。
【図3】本発明の圧電素子の製造方法の第1実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の圧電素子の製造方法の第1実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の圧電素子の製造方法の第1実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る塗膜形成方法を示す断面図および平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る塗膜形成方法を示す断面図および平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る塗膜形成方法を示す断面図および平面図である。
【図9】第1のレジスト膜が形成された圧電素子片を示す平面図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る塗膜形成方法を示す断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る塗膜形成方法を示す平面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る塗膜形成方法を示す平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る塗膜形成方法を示す平面図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る塗膜形成方法にて、第1のレジスト膜を形成する場所を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の塗膜形成方法および圧電素子の製造方法を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の塗膜形成方法を備えた圧電素子の製造方法(本願発明の圧電素子の製造方法)の第1実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の圧電素子の製造方法により製造される圧電素子を示す斜視図、図2は、図1に示す圧電素子の断面図(A−A線断面図)、図3ないし図5は、それぞれ、本発明の圧電素子の製造方法の第1実施形態を示す断面図、図6〜図8は、それぞれ、本発明の第1実施形態に係る塗膜形成方法を示す断面図および平面図、図9は、第1のレジスト膜が形成された圧電素子片を示す平面図、図10は、本発明の第1実施形態に係る塗膜形成方法を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1〜図10の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。また、以下では、図1に示すように、互いに直交する3つの軸をx軸、y軸およびz軸とし、圧電素子片2の上面に平行な平面をxy平面とする。
【0020】
図1に示す圧電素子(振動子)1は、圧電素子片(振動片)2と、圧電素子片2上に形成された電極3とで構成されている。
圧電素子片(被塗布物)2は、板状(薄板状)をなしている。すなわち、圧電素子片2は、上面と、下面と、側面と、上面と側面とが交差する上側角部と、下面と側面とが交差する下側角部とを有している。
【0021】
また、圧電素子片2は、平面視形状が音叉型をなしている。具体的には、圧電素子片2は、基部21と、基部21から突出し同一方向に延在する一対の腕部22、23を有している。また、図2に示すように、腕部22には、上面に開放する上側凹部221と、下面に開放する下側凹部222とが形成されている。同様に、腕部23にも、上面に開放する上側凹部231と、下面に開放する下側凹部232とが形成されている。これら凹部221〜232は、それぞれ、腕部22、23の延在方向に沿って延在している。また、凹部221〜232は、互いにほぼ等しい形状(長さ、幅、深さ、開口形状、横断面形状、縦断面形状等)を有している。
このような圧電素子片2の構成材料としては、例えば、水晶、酸化亜鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、四硼酸リチウム等が挙げられる。これらの中でも、圧電素子片2の構成材料として、水晶を用いることにより、振動特性および温度特性等の優れる圧電素子1が得られる。
【0022】
図1に示すように、電極3は、互いに絶縁された第1の電極31および第2の電極32を有している。第1の電極31は、基部21の上面に形成された端子311と、腕部22の側面にその側面を囲むように形成された側面電極312と、腕部23の上側凹部231に形成された上側凹部電極313と、腕部23の下側凹部232に形成された下側凹部電極314とを有している。側面電極312は、基部21の側面に形成された配線を介して端子311に接続されており、上側凹部電極313は、基部21の上面に形成された配線を介して側面電極312に接続されており、下側凹部電極314は、基部21の下面に形成された配線を介して側面電極312に接続されている。
【0023】
このような第1の電極31とは対称的に、第2の電極32は、基部21の上面に形成された端子321と、腕部23の側面にその側面を囲むように形成された側面電極322と、腕部22の上側凹部221に設けられた上側凹部電極323と、腕部22の下側凹部222に設けられた下側凹部電極324とを有している。また、側面電極322、上側凹部電極323および下側凹部電極324は、それぞれ、配線を介して端子321に接続されている。
このような構成の圧電素子1は、例えば、基部21を固定した状態にて、第1の電極31および第2の電極32にそれぞれ交流電圧を印加することにより、腕部22、23を所定の周波数で振動させたり、反対に、腕部22、23の振動により発生する起電力を第1の電極31および第2の電極32により検知したりするのに使用される。
【0024】
次いで、圧電素子1の製造方法(本発明の圧電素子の製造方法)について図3ないし図5に基づいて説明する。なお、図3〜図5は、それぞれ、図1中のA−A線断面図を示している。
圧電素子1の製造方法は、圧電素子片(被塗布物)2を用意する圧電素子片用意工程と、圧電素子片2の表面に電極3を形成するための金属膜を形成する金属膜形成工程と、金属膜の表面にレジストマスクを形成するレジストマスク形成工程と、レジストマスクを用いて金属膜をパターニングし、電極3を形成する電極形成工程とを有している。以下、これら各工程について詳細に説明する。
【0025】
[圧電素子片用意工程]
まず、図3(a)に示すように、ソーワイヤー等により切り出した後、研磨加工および洗浄を行った薄板状(例えば、厚さが50μm〜200μm程度)の水晶ウエハ100を用意し、この水晶ウエハ100の上面に、クロム層Crおよび金層Auを、この順で、例えばスパッタ法により形成する。次いで、金層Au表面にレジストを塗布した後、このレジストを音叉形状のパターンに露光・現像し、音叉形状のレジストマスクM1を形成する。
【0026】
次いで、図3(b)に示すように、レジストマスクM1を介して金層Auおよびクロム層Crをエッチング(ウェットエッチング、ドライエッチング等の各種エッチングを用いることができる。以下同様である)し、これら層をレジストマスクM1同様、音叉形状にパターニングする。
次いで、図3(c)に示すように、金層Auおよびクロム層Crをマスクとして、水晶ウエハ100をエッチングする。これにより、音叉型の平面視形状を有する、すなわち基部21および一対の腕部22、23を有する水晶ウエハ100が得られる。
【0027】
次いで、図3(d)に示すように、レジストマスクM1を除去した後、再度、金層Auの表面にレジストを塗布し、このレジストを、上側凹部221、231の開口パターンに露光・現像し、上側凹部221、231の形状に対応するレジストマスクM2を形成する。
次いで、図4(a)に示すように、レジストマスクM2を介して金層Auおよびクロム層Crをエッチングし、さらに、金層Auおよびクロム層Crをマスクとして、水晶ウエハ100をハーフエッチングする。これにより、水晶ウエハ100の上面に開放する上側凹部221、231が形成される。
【0028】
次いで、図4(b)に示すように、上側凹部221、231の形成と同様の方法で、下側凹部222、232を形成する。すなわち、水晶ウエハ100の下面にクロム層Crおよび金層Auを形成した後、金層Auの表面に下側凹部222、232に対応するパターンを有するレジストマスクを形成し、そのレジストマスクを介して水晶ウエハ100をハーフエッチングする。これにより、水晶ウエハ100の下面に開放する下側凹部222、232が形成される。なお、下側凹部222、232の形成は、上側凹部221、231の形成と同時に行ってもよいし、上側凹部221、231の形成に先立って行ってもよい。
次いで、図4(c)に示すように、水晶ウエハ100上に形成された全ての膜(レジストマスクM2、クロム層Crおよび金層Au)を除去する。以上の工程により、基部21、腕部22、23、上側凹部221、231および下側凹部222、232を有する圧電素子片2が得られる。
【0029】
[金属膜形成工程]
図5(a)に示すように、圧電素子片2の表面(上面、下面、側面、凹部221〜232の内面)に、電極3(第1の電極31および第2の電極32)を形成するためのクロム層Crおよび金層Auを、それぞれ、スパッタ法により形成する。
[レジストマスク形成工程]
図5(b)に示すように、後述する方法(本発明の塗膜形成方法)により、金層Auの表面にレジスト液を塗布し、これを乾燥することによりレジスト膜を形成する。その後、このレジスト膜を第1電極31および第2電極32のパターン形状に露光・現像することにより、第1の電極31および第2の電極32の外形パターンを有するレジストマスクM3を形成する。
【0030】
[電極形成工程]
図5(c)に示すように、レジストマスクM3を介して金層Auおよびクロム層Crをエッチングし、これら層を第1、第2の電極31、32の形状にパターニングする。エッチング終了後、レジストマスクM3を除去する。これにより、クロム層Crと金層Auが積層して構成された第1の電極31および第2の電極32が得られる。なお、第1の電極31と第2の電極32との短絡を防止するために、第1の電極31および第2の電極32を覆うように圧電素子片2の表面に表面保護膜を形成してもよい。
【0031】
以上の工程により、圧電素子1が製造される。
なお、このようにして圧電素子1を製造した後、圧電素子1の周波数調整を行ってもよい。この調整方法としては、例えば、金属膜形成工程にて圧電素子片2の表面に形成したクロム層Crおよび金層Auを用いて、腕部22、23の先端部分(第1、第2の電極31、32のパターン形状に重ならない領域)に錘部材を形成し、この錘部材の一部または全部をレーザートリミングにより除去して、腕部22、23の質量を減少させることにより(質量削減方式により)、圧電素子1の周波数調整を行う方法が挙げられる。
【0032】
次いで、前述したレジストマスク形成工程における、金層Au表面へのレジストの塗布方法(本発明の塗膜形成方法)を、図6〜図10に基づいて詳細に説明する。なお、図6〜図8では、説明の便宜上、クロム層Crおよび金層Auの積層構造を、単に一層構造の「電極膜4」として図示する。また、以下では、説明の便宜上、圧電素子片2の表面に電極膜4が形成されているものを単に「圧電素子片2」とも言う。
圧電素子片2へのレジスト液の塗布(レジスト膜Lの形成)は、インクジェット工程(第1のレジスト膜(塗膜)形成工程)と、ディッピング工程(第2のレジスト膜(塗膜)形成工程)とにより達成される。以下、これら2つの工程について、順次、詳細に説明する。
【0033】
[インクジェット工程]
本工程では、インクジェット法(吐出法)により、圧電素子片2の角部に、第1のレジスト膜L1を形成する。具体的には、インクジェットヘッド500からレジスト液(液滴)Qを吐出し、吐出したレジスト液Qを、圧電素子片2の角部に着弾させることにより、角部に第1のレジスト膜L1を形成する。
【0034】
インクジェットヘッド500としては、インクジェットプリンター等で使用されるものとほぼ同様の構成のものを用いることができる。インクジェットヘッド500の構成について簡単に説明すれば、インクジェットヘッド500は、例えば、複数のノズル孔(例えば、2列50行)が形成されたノズルプレートと、各ノズル孔に1対1の関係で連通する複数のインク室と、各インク室を収縮・膨張させる複数のピエゾ素子とを有しており、ピエゾ素子の駆動によりインク室が収縮・膨張すると、その内容量の変化に基づいて、そのインク室に充填されたレジスト液Qがノズル孔から液滴として前記ノズルプレートの法線方向へ吐出するように構成されている。
【0035】
まず、圧電素子片2を上側凹部221、231が開放する側の面(以下「第1面27」とも言う)が上側に位置するように、図示しない載置台に載置する。この図示しない載置台は、例えばヒーター等の加熱手段を備えており、載置された圧電素子片2を加熱することが可能である。
このような載置台によって圧電素子片2を加熱しながら(所定温度に保ちながら)レジスト液を圧電素子片2表面に着弾させることにより、圧電素子片2に着弾したレジスト液を迅速に乾燥することができる。また、例えば、圧電素子片2の温度を適宜調節することにより、レジスト液が圧電素子片2に着弾してから乾燥するまでの時間を制御することもできる。
【0036】
次いで、圧電素子1の第1面27(上面)とインクジェットヘッド500とを対向させるとともに、インクジェットヘッド500の姿勢を、ノズルプレートと第1面27とが略平行となるように設定する。これにより、インクジェットヘッド500から吐出されるレジスト液の吐出方向が、第1面27の法線方向、すなわちz軸方向と一致する。
このときのインクジェットヘッド500のノズルプレート(ノズル孔)と第1面27との離間距離は、特に限定されないが、0.5mm〜2mm程度であるのが好ましい。このような範囲とすることにより、インクジェットヘッド500と圧電素子片2との接触を防止しつつ、ノズル孔から吐出したレジスト液Qを圧電素子片2の所望位置に高精度に着弾させることができる。
次いで、圧電素子片2の角部に、複数のレジスト液Q(第1のレジスト液QR1〜第nのレジスト液)を着弾させ、第1のレジスト膜L1を形成する。以下、これについて具体的に説明するが、本実施形態では、インクジェットヘッド500から吐出される複数のレジスト液Qの径は、それぞれ、ほぼ等しく設定されている。
【0037】
[第1の工程]
まず、図6(a)に示すように、インクジェットヘッド500を、所定のノズル孔501が、側面28と第1面27とが交差する角部A上にくるように位置させる。次いで、ノズル孔501から第1のレジスト液Q1をz軸方向(第1面27の法線方向)に吐出する。吐出された第1のレジスト液Q1は、その中心が角部Aからz軸方向に引いた線分S1上を通過して、角部Aに着弾する。
【0038】
図6(b)に示すように、角部Aに着弾した第1のレジスト液Q1は、角部A付近に留まる。そして、図6(c)に示すように、第1のレジスト液Q1を乾燥することにより、角部A上に第1のレジスト膜片L11を形成する。
ここで、第1のレジスト液Q1の中心が通過する線分S1の位置は、第1のレジスト液Q1を角部Aに着弾させることができれば特に限定されないが、上述のように、角部Aからz軸方向に引いた線分と一致する位置であるのが好ましい。これにより、第1のレジスト液Q1が、角部Aを中央にして、角部Aを包み込むように塗布される。そのため、角部Aに、より確実に、第1のレジスト膜片L11を形成することができる。また、ノズル孔501の位置が所定位置から若干ずれたり、第1のレジスト液Q1の吐出方向がz軸方向から若干ずれたりしても、そのずれを許容し、第1のレジスト液Q1を角部Aに着弾させることができる。後述する第2のレジスト液Q2〜第nのレジスト液についても同様である。
【0039】
[第2の工程]
次いで、図7(a)に示すように、インクジェットヘッド500(ノズル孔501)をy軸方向(角部Aの延在方向)に所定距離dずらし、ノズル孔501から第2のレジスト液Q2をz軸方向に吐出する。吐出された第2のレジスト液Q2は、圧電素子片2への着弾状態にて、第1のレジスト膜片L11と重なり合う部分を有するように、その中心が線分S2上を通過して角部Aに着弾する。線分S2は、線分S1に対してy軸方向に所定距離dずれている。
図7(b)に示すように、角部Aに着弾した第2のレジスト液Q2は、角部A付近に留まる。そして、図7(c)に示すように、第2のレジスト液Q2を乾燥することにより、角部Aに、第2のレジスト膜片L12を形成する。図7(c)に示すように、第2のレジスト膜片L12は、第1のレジスト膜片L11と重なり合う領域を有している。
【0040】
[第3の工程]
次いで、図8(a)に示すように、インクジェットヘッド500をy軸方向に所定距離dずらし、ノズル孔501から第3のレジスト液Q3をz軸方向に吐出する。吐出された第3のレジスト液Q3は、圧電素子片2への着弾状態にて、第2のレジスト膜片L12と重なり合う部分を有するように、その中心が線分S3上を通過して角部Aに着弾する。線分S3は、線分S2に対してy軸方向に所定距離dずれている。
図8(b)に示すように、角部Aに着弾した第3のレジスト液Q3は、角部A付近に留まる。そして、図8(c)に示すように、第3のレジスト液Q3を乾燥することにより、角部Aに、第3のレジスト膜片L13を形成する。図8(c)に示すように、第3のレジスト膜片L13は、第2のレジスト膜片L12と重なり合う領域を有している。
【0041】
[第4の工程〜第nの工程]
上述したような、角部Aへの第1のレジスト膜片L11〜第3のレジスト膜片L13の形成方法と同様にして、角部Aに、第4のレジスト膜片L14〜第nのレジスト膜片L1nを形成する。これにより、図9に示すように、角部Aの全域に形成された第1のレジスト膜L1(第1のレジスト膜片L11〜第nのレジスト膜片L1nの結合体)が得られる。
【0042】
このような角部Aへの第1のレジスト膜L1の形成と同様に、第1面27側に位置する、その他の角部(例えば、上側凹部221、231の内面と、第1面27とが交差する角部等)にも、第1のレジスト膜L1を形成する。
以上により、圧電素子片2の第1面27側に位置する角部への第1のレジスト膜L1の形成が終了する。
【0043】
次いで、圧電素子片2の上下を引っくり返し、圧電素子片2の第2面29側に位置する角部(側面28と第2面29とが交差する角部、下側凹部222、232の内面と第2面29とが交差する角部等)に、第1のレジスト膜L1を形成する。なお、第2面29側の角部への第1のレジスト膜L1の形成方法は、前述した第1面27側の角部への第1のレジスト膜L1の形成方法と、同様のため、その説明を省略する。
これにより、インクジェット工程(第1のレジスト膜形成工程)が終了する。
【0044】
このように、ディッピング工程に先立って、インクジェット工程により圧電素子片2の角部に第1のレジスト膜L1を形成することにより、当該インクジェット工程を、圧電素子片2の角部が露出した状態で行うことができる、そのため、圧電素子片2の角部の位置を把握し易く、レジスト液Qを、正確に、圧電素子片2の角部に着弾させることができる。そのため、正確に、角部に第1のレジスト膜L1を形成することができる。
【0045】
このようなインクジェット工程では、圧電素子片2の角部に留まったレジスト液Q(第1のレジスト液Q1〜第nのレジスト液)を乾燥することにより、第1のレジスト膜L1を形成するため、第1のレジスト膜L1の膜厚を比較的厚くすることができる。
また、このようなインクジェット工程では、圧電素子片2に対するインクジェットヘッド500の姿勢を一定に保ったまま、延在方向の異なる全ての角部にレジスト液Qを塗布することができる。そのため、第1のレジスト膜L1の形成の簡易化を図ることもできる。
【0046】
特に、本実形態では、隣り合うレジスト膜片(例えば第1、第2のレジスト膜片L11、L12)を、互いに重なり合うように形成するため、第1のレジスト膜L1を複数のレジスト膜片が重なり合った(積層された)構成とすることができる。そのため、第1のレジスト膜L1の膜厚をより厚くすることができる。
このような理由から、ノズル孔501からの吐出位置が隣り合う一対のレジスト液Qの中心間距離(所定距離d)としては、これら一対のレジスト液Qが、圧電素子片2への着弾状態で、重なり合うことができる距離であるのが好ましい。
【0047】
また、このような距離のうちでも、所定距離dとしては、特に、レジスト液Qが着弾した液滴の直径より小さい距離であるのが好ましい。これにより、第1のレジスト膜L1の膜厚が厚くなり過ぎるのを防止できるとともに、レジスト液Qの使用量を削減することができる。
また、レジスト液Qの直径としては、特に限定されないが、10μm〜50μm程度であるのが好ましく。15μm〜25μmであるのがより好ましい。レジスト液Qの直径をこのような大きさとすることにより、レジスト液Qを圧電素子片2の角部に着弾させやすくなるとともに、レジスト液Qを角部に留めておくことが容易となる。すなわち、レジスト液Qが自重で側面28に流下し、これにより、第1のレジスト膜L1の膜厚が薄くなるのを防止することができる。
また、レジスト液Qの粘度としては、特に限定されないが、1cP〜20cP(0.001Pa・s〜0.02Pa・s)程度であるのが好ましい。これにより、より確実に、圧電素子片2の角部にレジスト液Qを留めておくことができる。
【0048】
[ディッピング工程]
本工程では、圧電素子片2および第1のレジスト膜L1の表面に、第2のレジスト膜L2を形成する。本工程は、図10(a)に示すように、容器を、ディッピング用レジスト液(浸漬用レジスト液、浸漬用塗布液)Rで満たした後、このディッピング用レジスト液Rに第1のレジスト膜L1が形成された圧電素子片2を浸漬する。
【0049】
次いで、図10(b)に示すように、圧電素子片2をディッピング用レジスト液Rから取り出し、圧電素子片2に付着した余分(過剰)なディッピング用レジスト液Rを、例えば、遠心力等を利用して除去する。次いで、図10(c)に示すように、圧電素子片2の表面に塗布されたディッピング用レジスト液Rを乾燥することにより、第2のレジスト膜L2を形成する。
【0050】
これにより、ディッピング工程が終了する。
このように、インクジェット法により第1のレジスト膜L1を形成した後に、ディッピング工程により、圧電素子片2および第1のレジスト膜L1の表面に第2のレジスト膜L2を形成することにより、表面が滑らかなレジスト膜Lを形成することができる。
なお、本工程に用いられるディッピング用レジスト液Rの粘度としては、特に限定されないが、比較的低い粘度であることが好ましい。具体的には、例えば、1cP〜100cP程度であるのが好ましい。これにより、ディッピング用レジスト液Rの圧電素子片2および第1のレジスト膜L1に対する密着性が向上するとともに、圧電素子片2に塗布されるディッピング用レジスト液Rの膜厚が、厚くなり過ぎることを防止することができる。
【0051】
以上説明したインクジェット工程およびディッピング工程を経て、圧電素子片2に、第1のレジスト膜L1および第2のレジスト膜L2が形成され、これら第1、第2のレジスト膜L1、L2からなるレジスト膜Lが得られる。このレジスト膜Lによれば、第1のレジスト膜L1の存在により、圧電素子片2の角部に対応する部分の膜厚を厚くすることができる。そのため、レジスト膜Lの全域を、レジストマスクM3としての機能を発揮するのに十分な膜厚、すなわちエッチングに耐えられる程度の厚さとすることができる。
【0052】
したがって、前述の電極形成工程にて、レジストマスクM3を介して電極膜4をエッチングする際、圧電素子片2の角部(例えば角部A)付近にて、不本意に、電極膜4が除去されるのを防止することができる。その結果、電極3の断線、短絡等が防止され、信頼性の高い圧電素子1を製造することができる。
上述したような第1のレジスト膜形成工程および第2のレジスト膜形成工程により、圧電素子片2に第1のレジスト膜L1および第2のレジスト膜L2からなるレジスト膜Lを形成した後、レジスト膜Lを、第1電極31および第2電極32のパターン形状に露光・現像することにより、第1、第2の電極31、32の外形パターンをしたレジストマスクM3を形成することができる。
【0053】
<第2実施形態>
次に、本発明の塗膜形成方法を備えた圧電素子の製造方法(本願発明の圧電素子の製造方法)の第2実施形態について説明する。
図11ないし図13は、それぞれ、本発明の第2実施形態に係る塗膜形成方法を示す平面図である。
【0054】
以下、第2実施形態の圧電素子の製造方法について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第2実施形態にかかる圧電素子の製造方法では、インクジェット工程(第1のレジスト膜形成工程)が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0055】
[インクジェット工程]
[第1の工程]
まず、図11(a)に示すように、インクジェットヘッド500の、互いにy軸方向に離間する2つのノズル孔501、502から、第1のレジスト液Q1a、Q1bをほぼ同時にz軸方向に吐出し、これら第1のレジスト液Q1a、Q1bを、圧電素子片2の角部Aに着弾させる。図11(b)に示すように、第1のレジスト液Q1a、Q1bは、圧電素子片2への着弾状態にて、互いに重ならないように十分に離間している。そして、図11(c)に示すように、第1のレジスト液Q1a、Q1bを乾燥することにより、角部Aに、互いに離間した第1のレジスト膜片L11a、L11bを形成する。
【0056】
[第2の工程]
次いで、図12(a)に示すように、インクジェットヘッド500をy軸方向に所定距離dずらし、ノズル孔501、502から第2のレジスト液Q2a、Q2bをほぼ同時にz軸方向に吐出する。図12(b)に示すように、吐出された第2のレジスト液Q2aは、圧電素子片2への着弾状態にて、第1のレジスト膜片L11aと重なり合う部分を有するように角部Aに着弾し、これと同様に、第2のレジスト液Q2bは、圧電素子片2への着弾状態にて、第1のレジスト膜片L11bと重なり合う部分を有するように角部Aに着弾する。そして、図12(c)に示すように、第2のレジスト液Q2a、Q2bを乾燥することにより、角部Aに、互いに離間した第2のレジスト膜片L12a、L12bを形成する。
【0057】
[第3の工程〜第nの工程]
上述したような、角部Aへの第1のレジスト膜片L11a、L11bおよび第2のレジスト膜片L12a、L12bの形成と同様にして、角部Aに、第3のレジスト膜片L13a、L13b〜第nのレジスト膜片L1na、L1nbを形成する。これにより、図13に示すように、角部Aの全域に形成された第1のレジスト膜L1を得ることができる。
その他の角部についても、同様にして第1のレジスト膜L1を形成する。
【0058】
このようなインクジェット工程によれば、各工程(第1の工程〜第nの工程)にて、複数のレジスト膜片を同時に形成するため、例えば第1実施形態のインクジェット工程に比べて、当該工程に要する時間(処理時間)を短縮することができる。
以上のような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0059】
<第3実施形態>
次に、本発明の塗膜形成方法を備えた圧電素子の製造方法(本願発明の圧電素子の製造方法)の第3実施形態について説明する。
図14は、本発明の第3実施形態に係る塗膜形成方法にて、第1のレジスト膜を形成する場所を示す斜視図である。
【0060】
以下、第3実施形態の圧電素子の製造方法について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第3実施形態にかかる圧電素子の製造方法では、インクジェット工程(第1のレジスト膜形成工程)が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0061】
本実施形態のインクジェット工程では、圧電素子片2の全ての角部(角部A等)の全域に第1のレジスト膜L1を形成するのではなく、角部のうちの必要な部分にのみ第1のレジスト膜L1を形成するよう構成されている。
具体的には、少なくとも、圧電素子片2の角部に配線が形成されている箇所、すなわち、図14中、P1〜P4のように、上面と側面とが交差する角部を跨ぐように配線が形成されている箇所や、P5、P6のように上面と上側凹部221、231の内面とが交差する角部を跨ぐように配線が形成されている箇所や、図示されていないが、下側凹部222、232と下面とが交差する角部を跨ぐように配線が形成されている箇所等において、電極膜4の不本意な除去を防止することができれば、断線等が防止された信頼性の高い圧電素子1を形成することができる。
【0062】
そのため、本実施形態では、圧電素子片2の角部のうち、上述したような、圧電素子片2の角部に配線を形成する必要がある箇所にのみ、第1のレジスト膜L1を形成する。これにより、角部の、不必要な部分への第1のレジスト膜L1の形成を省略でき、インクジェット工程の実施時間を短縮することができるとともに、レジスト液Rの使用量を削減することができる。
以上のような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0063】
以上、本発明の塗膜形成方法および圧電素子の製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や、工程が付加されていてもよい。
また、前述した実施形態では、浸漬用塗布液および液滴としてレジスト膜を形成するためのレジスト液を用いた構成について説明したが、浸漬用液滴および液滴としてはこれに限定されず、例えば、絶縁膜を形成するための絶縁性の浸漬用液滴および液滴や、電極膜や配線膜を形成する導電性の浸漬用液滴および液滴であってもよい。
【0064】
また、前述した実施形態では、被塗布物として、圧電材料で構成された圧電体基板を用いた構成について説明したが、被塗布物としては、これに限定されず、例えば、各種樹脂材料で構成された樹脂基板(合成樹脂基板)や、Au、Ag、Cu、Fe等の各種金属材料で構成された金属基板や、各種セラミックスで構成されたセラミックス基板や、シリコン基板等の半導体基板や、石英ガラス等の各種ガラス材料で構成されたガラス基板、サファイア基板、ダイヤモンド基板等であってもよい。
また、圧電素子片の形状としては、2本の腕部を有する音叉型のものについて説明したが、これに限定されず、例えば、ジャイロセンサ等に用いられる6本の腕部を有する「王」型をなすものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1……圧電素子 2……圧電素子片 21……基部 22、23……腕部 221、231……上側凹部 222、232……下側凹部 27……第1面 28……側面 29……第2面 3……電極 31……第1の電極 311、321……端子 312、322……側面電極 313、323……上側凹部電極 314、324……下側凹部電極 32……第2の電極 4……電極膜 500……インクジェットヘッド 501、502……ノズル孔 100……水晶ウエハ Cr……クロム層 Au……金層 A……角部 M1、M2、M3……レジストマスク L……レジスト膜 L1……第1のレジスト膜 L11、L11a、L11b……第1のレジスト膜片 L12、L12a、L12b……第2のレジスト膜片 L13、L13a、L13b……第3のレジスト膜片 L14……第4のレジスト膜片 L1n、L1na、L1nb……第nのレジスト膜片 L2……第2のレジストマスク Q……レジスト液 Q1、Q1a、Q1b……第1のレジスト液 Q2、Q2a、Q2b……第2のレジスト液 Q3……第3のレジスト液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、側面およびこれらが交差する角部を有する被塗布物に塗膜を形成する塗膜形成方法であって、
吐出法により液滴をノズルから吐出し、吐出された前記液滴を、前記被塗布物の前記角部に着弾させることにより、前記角部に第1の塗膜を形成する第1の塗膜形成工程と、
前記第1の塗膜が形成された前記被塗布物を浸漬用塗布液に浸漬することにより、前記被処理物および前記第1の塗膜の表面に第2の塗膜を形成する第2の塗膜形成工程とを有することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】
前記第1の塗膜形成工程では、前記角部の必要な部分に選択的に前記第1の塗膜を形成する請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
前記第1の塗膜形成工程は、第1の液滴を前記上面の法線方向から前記角部に衝突するように前記ノズルから吐出し、前記第1の液滴を前記角部に着弾させる第1の工程と、前記第1の液滴が乾燥した後に、前記第1の液滴の前記被塗布物への着弾位置に対して前記角部の延在方向にずれた位置から、第2の液滴を前記上面の法線方向から前記角部に衝突するとともに前記被塗布物への着弾状態にて前記第1の液滴と重なるように前記ノズルから吐出し、前記第2の液滴を前記角部に着弾させる第2の工程とを有する請求項1または2に記載の塗膜形成方法。
【請求項4】
前記第1の塗膜形成工程において、前記第1の工程では、前記角部から前記上面の法線方向に引いた線分上を前記第1の液滴の中心が通過し、前記第2の工程では、前記角部から前記上面の法線方向に引いた線分上を前記第2の液滴の中心が通過する請求項3に記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
前記第1の塗膜形成工程において、前記第1の液滴および前記第2の液滴の径が、それぞれ等しく、前記第1の液滴および前記第2の液滴の中心間距離は、前記第1の液滴の直径よりも短い請求項3または4に記載の塗膜形成方法。
【請求項6】
前記第1の塗膜形成工程において、前記第1の工程では、複数の前記第1の液滴を前記被塗布物への着弾状態にて互いに重ならないように前記ノズルから吐出し、前記第2の工程では、複数の前記第2の液滴を前記被塗布物への着弾状態にて互いに重ならないように前記ノズルから吐出する請求項3ないし5のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項7】
前記液滴の径は、10μm〜50μmである請求項1ないし6のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項8】
前記液滴の粘度は、10cP〜20cPである請求項1ないし7のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項9】
前記被塗布物は、圧電体材料で構成された圧電素子片である請求項1ないし8のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項10】
前記塗布液および前記液滴は、それぞれ、レジスト液である請求項1ないし9のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項11】
上面、側面およびこれらが交差する角部を有する圧電素子片の表面に電極を形成することにより圧電素子を形成する圧電素子の製造方法であって、
前記圧電素子片の表面に前記電極形成用の金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜の表面にレジストマスクを形成するレジストマスク形成工程と、
前記レジストマスクを用いて前記金属膜をパターニングし、前記電極を形成する電極形成工程とを有し、
前記レジストマスク形成工程は、吐出法によりレジスト液をノズルから吐出し、吐出された前記レジスト液を、前記圧電素子片の前記角部に着弾させることにより、前記角部に第1のレジスト膜を形成する第1のレジスト膜形成工程と、前記第1のレジスト膜が形成された前記圧電素子片を浸漬用レジスト液に浸漬することにより、前記金属膜および前記第1のレジスト膜の表面に第2のレジスト膜を形成する第2のレジスト膜形成工程とを有し、前記第1のレジスト膜および前記第2のレジスト膜に露光、現像を行うことにより前記レジストマスクを形成するよう構成されていることを特徴とする圧電素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−227817(P2010−227817A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77821(P2009−77821)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】